「人形の家」演出のデヴィッド・ルヴォー氏へこの作品の構想を伺ってきました![インタビュー]
 宮沢りえと堤真一という人気俳優2人が主演する『人形の家』が、この秋、渋谷のシアターコクーンで上演される。ノルウェーの作家イプセンの代表作で、1879年の初演以来、そのメッセージ性と社会性により、世界中で取りあげられている名作である。今回の演出家は、世界的に活躍するデヴィッド・ルヴォー。夫と子どもを棄てて自分の生きる道を探すノラは「新しい女」として、フェミニズムの象徴にもなっているが、ルヴォーは、彼ならではの斬新な解釈と現代的な演出によって、現代にも通じる男女の愛の問題として再構築するという。その演出家ルヴォーにこの作品の構想と解釈を聞いた。

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■■■ 男女のストロングな格闘 ■■■ 

──ルヴォーさんが考えるこの『人形の家』の素晴らしさとは、どういうところですか?

 100年以上も前に書かれたものなのに、結婚生活のなかで男女が話し合わなければならないさまざまな問題点が、ダイレクトに取り上げられています。日本でも最近、結婚しない人が増えているようですが、それは若い女性が自立したいと思っていることが大きいと思います。この戯曲はまず、どのようにすれば結婚はうまくいくのだろうか?というテーマを与えてくれています。また1つのケースとして、この戯曲を通して自分たちのありかたを見直すことになればいいし、どうしたら男女関係がうまくいくかという答えの1つになると思います。

──「新しい女」ノラの自立の物語として長く受け止められてきましたが、ルヴォーさんの視点では、男女の愛の戦いということですか?

 この戯曲には、男女のエネルギーのぶつけ合いが描かれています。格闘するストロングな関係です。ノラは戦う女性で諦めないし、おもしろい女性だと思います。そして最終的にはこの物語には1つの視点があります。女性の自立というテーマは、もちろんこの戯曲に存在していますが、問題はそんなに簡単ではないんです。ノラの場合は子供がいますし、しかも結婚が失敗だったという単純な判断はできません。夫のトルヴァルはノラを愛しているんですから。ただその愛し方が、彼の生きている社会の価値観によるものであり、彼自身がそのことに気づいていないのが問題なのです。単に暴力的な夫に立ち向かう妻の話ではないんです。またノラは夫にいつも子供扱いされているのですが、彼女のなかにあるものがそれを許しています。つまりこの戯曲は男性と女性の両方が対等であること、互角に話し合うことが大事だと言っています。



■■■ 自由と困難がノラを待っている ■■■ 


宮沢+堤_s.jpg──主演の宮沢りえさんと堤真一さんにはどんな感想を持っていますか?

 2人がコンビを組むのは初めてということで、楽しみです。堤くんとは1990年にTPTのプロジェクトで出会って、それからたくさんの舞台を一緒に作ってきました。今の彼は人間としても俳優としても大きくなってますし、舞台にこだわり続けていることは素晴らしいと思います。彼が演じるトルヴァルという役は、とても視野の狭い世界観を持っている男性ですが、大きな教訓を学びます、どれだけ自分が変わらなくてはいけないかに気づくんです。もちろん彼だけでなくみんなが変わらないといけないのですが。ノラ役の宮沢りえさんとは初めての仕事になりますが、独特な魅力を持った女性であり女優だと思います。現代的で自立心を持っている。そんな彼女がノラとして、人形から1人の人間になっていくプロセスを見せてくれることは、とてもエキサイティングだし期待しています。

──ルヴォーさんの演出は、とても洗練されていて現代的で、どんな古典作品でも今の時代にフィードバックしてしまうのがみごとだなと。

 私はノスタルジックな作品は作りたくないし、今の時代に適応した方法で戯曲をアダプテーションしていきたいと、いつも思っています。現代的な装置やビジュアルは、観客を物語に入りやすくさせます。まだ現段階では決め込んではいませんが、たとえば衣装だけはクラシックにするのも面白いかもしれません。なぜなら、違う時代のものを持ち込むことで対照が生まれるからです。現代のレンズ越しに見ることで、古くからある世界がより明確に見えるということなんです。シアターコクーンという劇場がある渋谷は、現代的な街で若者も多いところです。そこで『人形の家』が、どこまでリアリティを持てるか、それが私の挑戦でもあります。

──この芝居の最後は、ノラが家を出ていくことで終わりますね。ルヴォーさんは、その後のノラについて答えをお持ちですか?

 ノラのしたことは勇敢な行為ではありますが、それが成功かどうかといえば難しいです。ノラが出ていく社会は、まだ現代のように成熟していませんし、夫だけでなく子どもまで棄ててくることは批判されると思います。たくさんの困難がノラを待っているでしょう。出ていくぎりぎりまで、彼女は戦っています。なんとかこの結婚を破局から救いたいと思っているからです。彼女が最後に締めるドアの音は勝利感ではないんです。でも彼女が踏み出した1歩は、100年後の私たちが手にしている自由への1歩です。また、この物語を観ることで、観客はうまくいく結婚生活を思い描くことが可能です。男女双方が少しだけ自分を変えればいいのだと教えてくれています。でも、それは簡単なことではありません。『人形の家』は、女性の自立というテーマだけでなく、いつの時代にも男女の愛の厳しさは変わらないということも描いています。だから、いつまでも普遍的なのです。

取材・文/榊原和子





■ 公演概要 ■

日時:2008/9/5(金)〜9/30(火)
会場:Bunkamura シアターコクーン (東京都)

出演:宮沢りえ/堤真一/山崎一/千葉哲也/神野三鈴/松浦佐知子/明星真由美/他

作:ヘンリック・イプセン 

演出:デヴィッド・ルヴォー


e+プレオーダー:7/1(火)12:00〜7/8(火)18:00
一般発売:7/19(土)10:00〜


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