『しとやかな獣』オリガト・プラスティコの中心人物であるKERA&広岡さんにいろいろ聞いちゃいました[インタビュー]
ナイロン100℃主宰で、日本を代表するコメディ作家・演出家の1人でもあるケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)。元東京乾電池の看板女優で、退団後も数々の舞台で不可思議な魅力を発揮する広岡由里子。この2人による演劇ユニット「オリガト・プラスティコ」が、3年ぶりに新作を発表する。今回上演する『しとやかな獣』は、夭逝の天才監督・川島雄三が62年に発表した映画が原作(脚本は新藤兼人)。豊かな生活を維持するために悪事を重ねる4人家族を中心に、アンチモラルな人々の激辛な人間模様が描かれるブラックコメディだ。オリガトの中心人物であるKERA&広岡に、意外と世間では知られていないオリガトの結成秘話や、本作の見どころなどをいろいろ聞いてきました。
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──まずオリガト・プラスティコが結成された経緯から教えていただけますか?

KERA (オリガトのプロデューサーの)大矢(亜由美)さんから「広岡と一緒に芝居をしませんか?」と持ちかけられたんですよ。その時に「いっそのことユニットにしたらどうか」という話になって。だから最初は広岡抜きでというか(笑)、多分広岡も大矢さんと話し合って、みたいな感じだったと思う。

広岡 そうですね、本当に「KERAさんと芝居作りたいですよね」「じゃあ聞いてみましょうか」みたいなノリでした(笑)。私自身は、KERAさんの芝居は(劇団)健康時代から毎回観ているぐらい好きで、一度ご一緒したいなあとは昔から思っていたんです。でも私がナイロンの舞台に客演で入るというのは、ちょっと違う気がして。だったらじゃあ、KERAさんをこっちの方に呼び込んでしまおうと。

KERA 確かに当時の広岡は、乾電池とかJIS企画(註:竹内銃一郎と佐野史郎による演劇ユニット)の舞台に出ていたりして、僕とは畑が違う人という感じがありましたね。

──じゃあ巷のユニットでよくあるような「気が合うので一緒に芝居を作ることにしました」みたいな感じではなく……。

KERA うん、その頃は直接話をしたことすらなかった。というのも柄本(明)さんがね、広岡のことを「日本で一番すごい女優だ。あいつにはかなわない」って言ってたんですよ。あの柄本さんにそう言わせるなんて、何か怖いじゃないですか?(笑)だからあえて、こっちから仲良くなろうとは考えなかったんです。

広岡 本人は、こんなにゆるい人間なんですけどねえ(笑)。

KERA でも「すごく積極的にプランを立てて動くような人じゃないな」という印象もあったんで、そういう人とユニットを組むのも面白いかもなあと思ったんですよ。

広岡 そうですね。年に1回とかだったら、あわただし過ぎてここまで続いてなかったかもしれない。2・3年に1回ぐらいの単位でちょうど良かったです。

──マイペースを守れたからここまで続いた、ということですか?

KERA うん。窮屈じゃないし、ダラダラとした感じがいい。でも守るっていうよりは「取りあえず終わりじゃない」という気配があるだけ(笑)。

──でも旗揚げ公演の頃は、お互い探り探りだったとうかがいましたが。

KERA そうですね、広岡はどうもつかみどころがないというか……「実は心の中でどう思われてるのかわかんねぇぞ」みたいに感じながら演出していました(笑)。

広岡 まさか、そんなことを思われていたとは(笑)。

KERA でも前回の『漂う電球』ぐらいから、細かくカッチリと演出を付けることができるようになって、ようやく楽しくなってきましたね。それと公演を打つたびに、自ずと次の展開が見えてくるというのも、このユニットの楽しいところ。だいたい公演中に「次はこれをやりたいね」という話になるんですよ。

広岡 公演中じゃないと、そんなに会う機会がありませんからね(一同笑)。

──今回の『しとやかな獣』も、前回公演中に決まったんですか?

KERA 前作はウディ・アレンの芝居だったんで、次は日本映画をやってみようかな、と。そこで昔広岡が、乾電池の舞台で『しとやかな獣』をやっていて、あれは面白かったなあという話になったんです。日本にはないタイプの、ドライなブラックコメディで。昨年ぐらいから僕の芝居は、ブラック具合が影を潜めて人間味のある優しい世界になってきているので(笑)、ああいう乾いた笑いを久々にやりたいと思ったんですよね。

──この取材のために初めてその映画を観たんですけど、めっちゃくちゃアナーキーで面白かったですねえ!

KERA そうでしょ? すっごく面白いでしょ? パーフェクトな映画なんですよ。

広岡 もっとみんなに広めたい! って思いますよね。

KERA コメディではあるけれど、いわゆるギャグ芝居ではない。やっぱりブラックコメディって、ゲラゲラ笑うものじゃなく、ニヤニヤ笑うものなんですよ。外国の映画だと『毒薬と老嬢』とか、そういうテイストの作品は多いんですけどね。すごく暗くてシリアスにも描ける題材を、ユーモラスに作ってるというジャンル。そういう外国のブラックコメディと同じ匂いがする、すごくカッコイイ作品です。

──東京乾電池公演の時は、広岡さんは魔性の女・幸枝役を演じてらっしゃったとか。

広岡 そうですね。母親役をふられるかと思いきや、まさかの幸枝役で。「魔性の女」感を出すために一応努力はしたんですが、間違った方向の努力だったみたいで(笑)、実を結ばなかったですねえ、あの時は。

KERA 乾電池の舞台は若干コミカルだったよね、映画版よりも。

広岡 そうですね。笑わせるポイントは、すごくわかりやすく作っていたと思います。でも結構、映画の完全コピーを目指してたんですよ。夫婦役の柄本さんと角替(和枝)さんなんか「夫婦で毎日映画を観てんじゃないか」ってぐらいのテンポでしたし(笑)。

KERA へええ。僕はそういう完コピのような演出をしたことがないけど、方法としては有効かもね。映画版のキャストと舞台版のキャストとは、当然身体が違うわけだから、同じことをしようとしても完全に一致なんかしないじゃないですか? そのズレを楽しむというのは、1つあるかもしれない。ただ完コピをするには、自分があまり繰り返し映画を観たくないというのが(笑)。毎日確認に追われるというのは、不毛な気がするなあ。

広岡 でも完コピをしながら、この人間関係の状態に持っていくというのはアリだと思いますね。あの嫌らしい夫婦や家族の関係性を保つというか、そこに行き着くためにコピーから入ってみるというやり方は。その関係性がピタッと来たら、きっとそこから、今回演じる役者同士で成り立つ芝居に変わっていくんじゃないかなあと思います。

KERA ……すごいこと言ったね、今。

広岡 え? そうですか?

KERA うん、主宰のようなこと言ってたよ(一同笑)。

広岡 いやあ、出過ぎたマネを(笑)。

──今回は特に加筆・訂正などは加えず、そのまま上演するんですか?

KERA 基本変更はしないというか、できない(笑)。もともとが団地の一室を舞台にした演劇的な脚本だし、あまり「舞台だからこう変えなきゃ」みたいなのがないんですよ。でも原作の脚本を読むと、川島監督が後から付け足したのかな? って部分も案外多いんです。映画では自衛隊や安保の話題が出てくるけれど、原作にはそれがない。

──監督の方が、後から戦争とか時代の影を反映させたってことですか?

KERA そうだと思います。それと映画の方が、1人1人が悪人になっていった、それぞれの動機がわかりやすくなっている。「あの貧乏な生活に戻りたいのか!」とかって。でも僕は、そういうのって説明しちゃうと野暮だと思うんですよ。

──確かに悪いことをする動機がわからない方が、ずっと怖いですよね。

KERA うん。動機なんて、お客さんが勝手に想像したらいいこと。そんな説明をしなくたって十分面白い話だし、むしろ根拠レスな現代の方が「こういう人もいるんだ」と、あっさり思ってもらえるんじゃないかな。でもそういう、原作になくて映画版で加わっているシーンも、生かす部分は多々あると思います。

──ただ映画の方は、家族の生活を全方向からのぞき見るようなカメラワークが、1つの魅力となってますよね? あの雰囲気を舞台でどう出すのかは、すごく気になります。

KERA 確かに舞台だと、映画ほど縦横無尽に視点を回り込ませることができないという、物理的な制約がありますからねえ。でもそれを逆手に取る、という手もある。直接姿を見せなくても、観客に「あ、今盗み聞きしていたな」という風に思わせるやり方はいろいろあるし。それ以外にも時間が飛んだり、イメージが挟まるなどの映画的な見せ方をするシーンがあったりするけど、その辺りをどう演劇的に処理できるかでしょうね。

──もう1つ気になるといえば、登場人物の中で一番イチモツ抱えてそうなあの母親役を広岡さんが演じるというのが、楽しみなような怖いようなって感じなんですが(笑)。

KERA 決して前面には出ないけど、この母親が家族の中で一番弱みを見せてないからね。

広岡 しとやかな役なんですけどねえ(笑)。でもしとやかにすればするほど、あの秘めた怖さみたいなのは出るんじゃないかなあと。ただこの役に関しては、父親役の浅野(和之)さんと、いかに「2人のトーン」みたいなものがうまく作れるか、でしょうね。

──自分の役作りというよりも、2人のコミュニケーションの取り方の方が大事だと?

広岡 そうですね。いい感じに台詞がやり合えれば成立するんじゃないでしょうか。

KERA あの夫婦は、水面下で駆け引きが行われてるって印象があるんですよ。仲は良いけど「仲良し」って感じじゃない。力関係のバランスというか、お互いが了解しながらバランスを取っているという夫婦関係ですね。

広岡 でも「ああ、夫婦だなあ」というか……“The 夫婦”って感じ。ただ「理想の夫婦か?」と聞かれると、理想ではないなあ(笑)。

──まあいろいろと興味が尽きない作品ですが、特に見どころとなりそうな所などはありますか?

KERA やっぱり広岡じゃないですか? 乾電池時代のリベンジなるか?! みたいな(笑)。

広岡 ええー?! 何ですか、いやいやいや。

KERA 毎回オリガトは、主宰者の広岡の見どころを作るために公演をしているから(笑)。

──座長芝居だったんですか?!(笑)

広岡 とんでもない! もう、縁の下の力持ちのようなものです。

KERA まあでも見どころは、登場人物たちのアンサンブルでしょうね。誰かが主役という世界でないので、1人だけが目立っちゃうような作り方をすると失敗すると思います。あと原作を基本的にはいじらないから、上演時間も映画と同じ90分ぐらいになるはず。2時間を超えることはないです、今回は(笑)。

(取材・文:吉永美和子)

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