“ピナ・バウシュやシルヴィ・ギエムが愛してやまない” クラウド・ゲイト・ダンスシアター(雲門舞集) リン・フアイミン芸術監督インタビュー[特集:演劇・ミュージカル]
Bunkamura 20周年記念特別企画のひとつとして、台湾のコンテンポラリーダンスカンパニー「クラウド・ゲイト・ダンスシアター(雲門舞集)」の来日公演が、3月にオーチャードホールで上演される。カンパニーの芸術監督・振付を務めるリン・フアイミンは、あのピナ・バウシュやシルヴィ・ギエムをもって「愛してやまない」と言わしめる、舞踊界の旗手。今回、数ある作品の中でも秀逸と絶賛されている『WHITE ホワイト』の上演を控えた、リン・フアイミン芸術監督に話を聞くことができた。>>チケットの詳細・申込み
―73年にカンパニーを創設して以来、あなたは実に様々な作品を手がけてきました。処女作『The Tale of the White Serpent』(74)ではグラハムメソッドを用いて中国の伝統民話を舞踊化し、その4年後の『Legacy』(78)では台湾の歴史を題材に政治的な作品を生み出します。そして90年代に入ってからは、よりミニマルで抽象的なダンスを創作しつづける。なぜこのような創作的変遷を辿ったのか簡単に教えてください。
リン まず言えることは、すべての時期のすべての作品は私の人生の日記のようなものだということです。なので創作的変遷の話をすることは、おのずと私とは何者かという話につながっていきます。特に台湾人である私は、まず西洋の模倣ではないダンスを作る決意からすべてを始めました。そこで70年代のアメリカでグラハムメソッドを学び台湾に帰国した私は、クラウドゲイト、という中国最古の儀式舞踊から名前をとり、カンパニーを創設することにしたのです。また『Legacy』では台湾史上初めて、国の歴史を題材にとる舞台芸術作品を作りました。オランダ植民地時代から、日本統治時代、蒋介石により厳戒令が敷かれていた時代と、いつでも台湾人には戦うべき「壁」がそこにあった。それを作品化することは、私にはとても意義深いことに思えたのです。―けれどその壁が90年代半ばに崩れてしまう。
リン そうです。それまで押したり、蹴飛ばしたり、体当たりしたりし続けていた壁が突然なくなってしまった。そして気づいたら、目の前には青い空と白い雲が広がっていた。すると途端に、自分は、どうすべきかまったく分からなくなってしまった。それまでのように壁からの反動で自己存在を認識することができなくなってしまったのです。そして私は変わりにひとつの問いを突きつけられることになった。その問いとは「自分の想像力をどこまでのばせるか見せてごらんなさい」ということ。これは、なにも拠り所がないという意味でとても怖い問いです。けれど私はこの問いにぶつかって初めて、自分が本質的に向き合うことができるのは「この身ひとつだけだ」ということを認識した。そして深く自分の内面と向きあい、台湾の政治とも歴史とも関係のない「自由な身体」を生み出していった。なので私はいまだに、自分のカンパニーのダンサーたちが舞台上に立つ姿を見て感動することがあるんです。彼らは伝統的役柄も政治的意味も背負うことなく、ただ自分自身としてそこにいる。「なんて自由なんだ」と。その事実に心から感動するのです。―今回、日本で上演される『WHITE ホワイト』について教えてください。
リン 私は98年に本作の第一部を40歳以上のダンサーのために創作し、3年前により若いダンサーのために第二部と三部を創りました。なのでこの作品で提示される「白」をひとことで言い表すことはできません。あえて例をあげるなら、この作品の後ろには竜安寺の穏やかな石庭があります、とても純粋な白さを保つ台湾磁器の影響があります、中国の一望千里の景色のなかにふと佇む空白の間が見られます。またより肉体的なことを語るなら、白さのまえでは、何もごまかしがききません。絶対的な適確さが要求されます。つまり光のまえでは、身体のすべてが衆人環視に晒されることになるのです。そんな空間に身を置きながらも、白黒の明るさと暗さ、そしてエネルギーとただ奔放に戯れる、ダンサーたちの自由な姿をぜひご見にいらしてください。(インタビュー:岩城京子)
クラウド・ゲイト・ダンスシアター 『WHITE ホワイト』
2009年3月4日(水)〜6日(金) Bunkamura オーチャードホール
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