e+イチオシの必見若手劇団・ゴジゲン新作『ハッピーエンドクラッシャー』築いてきた幸せをぶち壊せ!?[公演情報]
慶應義塾大学の演劇サークルで知り合ったメンバーが集まり、2008年に正式に独立したコメディユニット「ゴジゲン」。悲劇的なテーマを、笑えるが優しい世界観へ昇華させる、軟弱なシチュエーションコメディが作品の特徴。結成以来、東京のみならず全国を視野に入れて活動を展開し、既に大阪と福岡でも公演を行っている。一方で、映像製作にも力を入れ、主宰者はTVドラマの脚本も手がける。そんな順風満帆な彼らだが、最新公演のタイトルは『ハッピーエンドクラッシャー』(新宿THEATER BRATS 9/9〜9/15)。どういう心境で今回の舞台に臨むのか。全ての作・演出を手がけている、主宰の松居大悟に話を聞いた。



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慶應のおしゃれな雰囲気に溶け込めない寂しさから旗揚げ

――まず、今回のインタビューが「e+ Theatrix!」に掲載される心境を教えてください。

「きたな!」と。いや違う(笑)。ありがたいです。でも、他の取材を受けている方々と肩を並べたとは全然思ってないので、プレッシャーを感じてます。ゴジゲンは知名度もまだまだなので、この記事を読んでくれた方には、とりあえず興味を持って頂きたいです。観に来てもらえたら最高で、作品で答えたい。ゴジゲンは出会いで今までやってきたので、これがまた新しい出会いを生むきっかけとなれば、と思います。

――ゴジゲンは、旗揚げしてから1年足らずで1公演1000人以上を動員するようになりましたね。来年の4月には吉祥寺シアター公演も決定とのことで、小劇場の劇団としては、順調な経歴だと思います。それなのに、いつも描くテーマは「悲劇」なんですね。最新公演に至っては、「幸せをぶっ壊す」と?

うーん……僕は全然順調だとは思っていないです。というのも、全然一つの場所に留まっていたくなくて。演劇だけじゃなくて、映画もラジオも喫茶店もやりたい。ミーハーですね(笑)。変化し続けること。これ、人生の目標にもなってます。

――どこからその気持ちが来るのでしょうか?ゴジゲンを旗揚げするに至った経緯を教えてください。

元々芝居にそんなに興味はなかったんです。高校生まではずっと漫画家になりたかった。でも、上京して出版社に漫画を持ち込みしたら、「こういうのは芸人さんがやってるよ」と言われたんです。悔しいから、じゃあ芸人目指そうと思って。そのために大学でコントや演技を勉強しようと。第一志望は早稲田大学でした。でも、早稲田全部落ちて、慶應しか受からなくて。いざ入学しても、慶應のおしゃれな雰囲気にとけこめなくて、毎日学校の図書館にある立入禁止の場所に入り、1人でお昼食べてました(笑)。

――その後、「創像工房 in front of.」という演劇サークルに入りますね。

友達欲しいなと思って。そしたら、同じように下を向いてる人たちばかりが集まってる演劇サークルがあったんです。飲み会でもコールなんてしないし、自虐ネタとか下ネタとか下世話なことばっかり話してるけど、絶対人を傷つけようとしない。どこか暖かくて、コントも出来るって言うし、最高だなと思って入りました。そんな気持ちで入ったから、1年ちょっとで演劇自体に飽きてしまった。そんな時に、ヨーロッパ企画の『サマータイムマシン・ブルース2005』を観て、衝撃が走った。こんなに面白いことができるならと、それがきっかけで、僕も芝居を書いてみようと思ったんです。仲間にも「ヨーロッパ企画みたいなことやろう」って言って。

――それが、2006年5月、事実上の第1回公演『かけぬけない球児』ですね。この時はサークル「創像工房 in front of.」としての公演で、ゴジゲンはまだ旗揚げされてませんが。

その後、第2回公演『ロックンロール逃げる』で池袋シアターグリーンの学生芸術祭に参加して、大阪選抜に選んで頂いて。その大阪で第3回公演『エイトビートニート』をやっている頃ですね、劇団を旗揚げしようと思ったのは。4年間、ずっと芝居しかしてなくて、気がついたらサークルを卒業しちゃう。しかも休学中。寂しくなって、慌てて1人で劇場を押さえた。それまで、全ての作品に出演してくれていた同期の目次立樹(めつぎりっき)と第3回公演で制作をしてくれていた後輩の半田桃子をメンバーに誘いました。そうして、今でもサークルの延長で、ズルズルと続けてしまっている感じです(笑)。

カッコ悪い人やダサい人を肯定したくて、コメディ作ってます

――ヨーロッパ企画の第26回公演『あんなに優しかったゴーレム』では、文芸助手を務めていますね。どんな影響を受けましたか?

ヨーロッパ企画の上田さんとは、2007年の池袋シアターグリーンの学生芸術祭をきっかけに知り合いました。とにかくストイックで、笑いだけではなく、その芝居の世界観を大切にしているんです。しかも、上田さんは役者からボランティアスタッフの方まで、色んな意見を聞くんですよ。辛い意見もあるはずなのに、受け止める。一方で、「努力する姿は人に見せちゃいけない。作品で伝えればいい」と言っていて、それがまたカッコいい!完全に憧れて、上田さんと同じノートパソコンとスケッチブックを使ってます。ストーカーみたいだけど、面白くなれるんじゃないかと思って。これ読まれたらやばいです(笑)。上田さんだけじゃなく、ヨーロッパ企画の方々には、お世話になりっぱなしです。でも、先にヨーロッパ企画がいるから、コメディでは太刀打ちできないと思って、より一層コンプレックスを描くようになりました。

――そもそも、何故コメディを作ろうと思うのですか?

コメディにするのは舞台だからです。実際、自主制作で作った映画は、完全な悲劇で、何も笑えないんです。笑いって、お客さんの反応の中で一番分かりやすい。お客さんの笑いによって、役者の演技も変わって、芝居の形までも変わっていく様子が面白い。映画や小説じゃ出来ないことですよね。それに、笑ってしまうっていうことは気持ちが理解できたということだから。僕は、カッコ悪い人やダサい人が好きで、それを肯定したくてコメディをつくっています。稽古でも、笑いについては特に言及しません。

――今までの稽古場で一番インパクトに残っている役者さんは?

最新公演に出演する予定の田中美希恵ちゃんですね。インパクトのある外見なのに、シャイ。でも、シャイゆえの堂々とした演技が面白いんです。ゴジゲンのメンバーの目次もストイックですよ。チェ・ゲバラに憧れている役の時は、ゲバラの映画20本くらい見てた。「チェ・ゲバラ」ってワードは一言しか出てこないのに(笑)。とにかく役目線で、想像以上のことをしてくるんです。だから、演技の上手下手じゃなくて、次の瞬間何をするか分からない人をキャストに選んでいます。演出の言うことは聞かなくていいんです。

――じゃあ、何を演出しているんですか?(笑)

最低限、話が分かるように演出しています。それと、とにかく傷つきたくないんで、人を傷つけるような表現はできるだけ遠まわしに見せます。あとは空間の見栄え。見栄えはこだわります、視覚的情報は何よりも強いと思うんです。だから、舞台はいつもグチャグチャしているし、小道具もやたらと多い。

――過去6回の公演で一番気に入ってるシーンは?

第2回公演の『ロックンロール逃げる』で、主人公たちがパンツ被りながら、女の子のパンツ覗くシーン。あれは芸術ですね(笑)。負け組で、汚くてダサいんだけど、目的を達成するために必死で。いやらしさを超えた、切なさと愛があるシーンなんです。今年5月にやった第6回公演『チェリーボーイ・ゴッドガール』でも「女子なんかムカつく」と言いながら、女の子の匂いが残る座布団をみんなで嗅ぐ。「やっぱり好きなんじゃん!(笑)」と。台詞と行動が逆になっていた方が、気持ちがお客さんに伝わる気がするんですよ。感情が溢れすぎて、バレたら恥ずかしいから、言えない。気持ちを素直に伝えられる人より、素直に伝えられない人の方が、その気持ち自体は勝ってると思うんです。思いたいんです。

テーマは現実逃避。見えないフリをするという思いやり

――今回の公演のストーリーとテーマを教えてください。

簡単に言うと、不幸な人たちが不幸だと悟られないように、幸せなフリをするけど、結局最後はぐちゃぐちゃになってしまう話。テーマは現実逃避。過去の事件のせいで、彼らの関係が変わりそうなんだけど、主人公は変わりたくない。一見幸せそうに見えても、本当は不幸せ。だけど、それを見ないフリをする、という思いやり。そんな、壊れそうでギリギリな世界ですね。まあ壊れるんですけど(笑) 。

――今までの公演と違うところは?

毎回世界観が違うのでなんとも言えませんが、今までは皆で一つの目標に向かっていたけど、今回は自殺・漫才・告白・謝罪…と、皆の行動や動機がそれぞれ違っていて、色んな話が錯綜します。役者もワークショップで色んなところから集めたので、テーマは決まってるけど、どうなるか分からないです。気を抜くと調子に乗ってしまいそうな自分をぶっ殺していきたいですね。ラストも、『ハッピーエンドクラッシャー』と銘打ってハードルも上げていますが、まだ悩んでます。僕の中でやりながら、答えを見つけていきたいです。

――最後に今回のテーマに因んで、人生最大の現実逃避を教えてください。

与那国島に行ったことですね。日本の最西端に。その時は失恋して、体調も悪化しちゃって。もうわかんないですけど、世界変えてやろう、と思って。そのためにひとまず、日本の端に行けば日本のトップになれるんじゃないかと思いました。あれは寂しかったですね。

(取材・文:上野紗代子)


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