あの名作映画がついに舞台化!舞台「おくりびと」 中村勘太郎にインタビュー![インタビュー]

 2008年に日本で公開後、翌年には米国のアカデミー賞外国語映画賞に輝き、そのほかにも数々の映画賞を受賞して大きな話題となった映画『おくりびと』(滝田洋二郎監督)。なりゆきで死者を棺に納める“納棺師”という仕事に就くことになった主人公と、その家族や周囲の人々の姿を通して生と死を描いたこの秀作が、2010年春、なんと舞台化されることになった。
 物語は、映画版のエンディングから7年後の世界。主人公と妻の間には無事に息子が生まれ、幸せに暮らしてはいたのだが……。主人公・小林大悟に扮するのは、歌舞伎だけでなく映像に現代劇にと精力的に活動している中村勘太郎。その妻・美香には、2008年『思い出トランプ』で初舞台を踏み舞台女優としての才能も見事に開花させた田中麗奈。さらには真野響子、柄本明といった演技派共演陣が顔を揃える。
 また、舞台の脚本を初めて手がけるという小山薫堂が映画と同じく今回の脚本も手がけるほか、音楽も久石譲が担当。そして、ここ数年は自身のプロデュース公演だけではなく、時代劇にミュージカルにと幅広いジャンルの舞台に引っ張りだこのG2が演出にあたる。
 社会現象ともなったあの大ヒット映画に、果たしてどのような形で新しい息吹が吹きこまれるのか。現代劇としては実に6年ぶりの出演となる中村勘太郎に、作品への思いや意気込みなどを語ってもらった。

「映画版の気持ちというか、魂は引き継いでいきたいと思っています」

――映画版はご覧になっていたんですか?

 もちろん!公開中に観にいきまして、凄い映画だなあ〜と思っていましたね。ただ単に感動させるというだけではなく、本当にいろいろな想いが込められている作品で。納棺師という職業のことも、そのときに初めて知りました。生と死というものをいろんな形で表現している作品で、とてもおもしろかったです。

――でも、まさかそのときは、舞台版でご自分が演じることになるとは?

 ええ、夢にも思っていませんでしたよ!(笑)

――では、この舞台化のオファーを聞かれたときは、どう思われましたか。

 いやー、映画の舞台版って難しいじゃないですか!(笑) ましてや、あんなにヒットした映画ですからね。どうなのかなあ?と最初は思ったんですけれども。でも、この舞台版は物語が7年後の世界になる完全オリジナルだというので、それだったら!と思いまして(笑)。だって、あの作品をあのまんま舞台化するというのは、相当難しいことだろうと思うんですよ。

――確かに7年後ということであれば、また全然違う切り口になりそうですね。

 そうですよね。映画の終わりの方で、主人公の奥さんが身ごもってらっしゃった子供が、7年後の世界では生まれていて、小学生になっているくらいですから。あの夫婦も父親になり、母親になっていて、また違う形で親子の絆が描かれるのではないでしょうか。主人公は今回、子供に自分の職業が納棺師というのを言い出せないわけなんですが。

――映画版では、奥さんになかなか言い出せなかったように。

 そうそう(笑)。で、そのことをめぐって周囲がどう変わっていくかというような作品になるんじゃないかと思いますね。

――映画では本木雅弘さんがやられた納棺師の役を演じるということに関しては、いかがですか。

 この作品は、そもそも本木さんが15年間もあたためていたという大切なものじゃないですか。ですから、その気持ちというか、魂は引き継いでいきたいなということはすごく思いますね。題材は死という重いものにはなりますけれど、映画を観たときに僕はとてもあたたかいものを感じたんです。なので、舞台版も同じようにあたたかいものに見えたらいいなというのはありますね。

――舞台版を演出されるのはG2さんです。G2さんとお仕事をされるのは。

 はい、初めてなんですよ。だけど、叔父(中村橋之助)が『魔界転生』(2006年)と『憑神』(2007年)で二度ほどお世話になったので、よく芝居を観に来てくださるんです。なので、歌舞伎座の楽屋とかで、ちょこちょことはお会いしていたんですね。だけど、おそらく物語的には派手なものではないですし、まだ現時点では具体的なプランはお聞きしていないので、どう演出されるのかは想像もつかないですねえ!(笑) 今はとにかく、稽古に入るのが楽しみです。

――田中麗奈さんと夫婦役で共演することに関してはいかがですか。

 歌舞伎のときにも夫婦役を演じることはよくあるんですけど、なにしろ相手は男ですから、そこはかなり大きな違いがあります(笑)。でも本当に、田中さんも最近いろいろなことをやられていらっしゃるので、ずっと発信し続けている方なんだなーと思いましたね。

――真野響子さん、柄本明さんと共演することについてはいかがでしょう。

 お二方とも、とても素敵な役者さんですよね。真野さんはもちろん存じ上げてはいるんですけど、本当に初めてお会いする感じなのでやはり楽しみですし。柄本さんとは『ご存じ浅草パラダイス』(2000年)という、父(中村勘三郎)と藤山直美さんとでやられている舞台に僕も一度出させていただいているので、そのときにご一緒させていただきました。それに、実はふだんでもよくお会いしているので、柄本さんがいてくださることは心強いです。柄本さんって、やっぱりカッコイイですし、で、怖いですしね(笑)。本当に尊敬する人でもありますから、今回共演できるのはとてもうれしいです。

「舞台版も、映画と同様に心があたたまる作品になるはずです!」

――今回は、映画版を観たお客さまも大勢いらっしゃる気もしますが。

 そうですよね。だけどもちろん観ていない方でも、オリジナルの脚本なので充分に楽しんでいただけると思います。でもまあ、あの映画を観ていない方はあまりいないんじゃないですかね(笑)。映画を観終わった後ってやっぱり、この夫婦はこの先どうなっていくんだろう?とか、想像するじゃないですか。今回の舞台は、その姿が確かめられる続編になるわけですし。また、それをいい意味で、裏切ってみたいとも思いますけどね。

――映画と同じく脚本は小山薫堂さんですし、音楽は久石譲さんなので。

 ええ、すぐに『おくりびと』の世界に入り込んでいただけるんじゃないかと思います。それと僕、映画を観に行ったときにも思ったんですけど、お年寄りから若い人たちから、すごく幅広い年齢層の方が観ていらっしゃって。だから舞台版のほうも、同じように幅広い年齢層の方に観ていただけるような作品になるんじゃないかなとも思いますね。

――そして今日は勘太郎さん、チェロをお持ちのようなので、それもとても気になるんですが……。

 はい。でも実はあれ、カバンなんですよ(笑)。……というのはもちろん冗談で、今、実は練習中なんです。

――ということは、舞台上で披露されるかもしれないんですか?

 うーん、どうですかね? まあ、納棺師ではありますけど、でも元チェロ奏者の役なので……。

――そういうシーンがあるかも?

 ハハハ、どうでしょう? とりあえず、あったら困るんで稽古しているという感じです。たぶん、今後の稽古次第、その出来次第ということになるんじゃないでしょうか(笑)。

――まだやりはじめたばかりなんですね。手ごたえはいかがですか?

 それが……ダメですね(笑)。洋楽器はまったくやったことがないんです。ギターすら弾いたことがないですから。

――お稽古で三味線とかはやられていても。

 いやいや、だって全然違いますから! 糸の太さも本数も弾き方もまったく違うし(笑)。

――それはそうですね(笑)。では、相当苦労されている。

 はい、しております。本当に大変です(笑)。だけど、こうやっておかげさまでいろいろなことをやらせていただけるのは楽しいことでもあるので。だってなかなか、普通はできないことばかりじゃないですか。

――そういう意味では、納棺の儀式の稽古というのもしなければいけないですね。あの所作も、美しく見せるようにやるのが難しそうだなと思ったんですが。

 既に納棺協会の方にお話を伺いました。ただ、形よりも気持ちだと思います。もちろん形も美しくなければいけないんですけれども、そこに気持ちがなかったらただの形なので。その点は歌舞伎と同じです。

――そうですね。舞踊をやられるときと、似た感じなのかなとも思いました。

 うんうん。やはりどんなときも、ここ(胸を指す)ありきです。

――では、最後にお客様にメッセージをお願いします。

 やはり、とにかくいろんな方に観ていただきたいなというのはあります。映画を観た方、特に登場人物のそののちの物語が気になる方にはぜひ来ていただきたい! また、舞台を観てから映画を観直しても、たぶん感じ方が違ってくるような気もするんですよね。もちろんこの舞台版も映画と同様に心があたたまる作品になるはずですので、みなさんどうぞ劇場にお越しください!

(取材・文/田中里津子)
(写真/渡辺マコト)

公演概要

【東京公演】
公演日:5/29(土)〜6/6(日)
会場:赤坂ACTシアター

【大阪公演】
公演日:6/9(水)〜6/13(日)
会場:イオン化粧品 シアターBRAVA!

【愛知公演】
公演日:6/16(水)〜10/6/24(木)
会場:御園座


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2010-04-07 17:30 この記事だけ表示