田村孝裕 作・演出の新作PARCO PRESENTS『カーディガン』で初舞台に挑む 市原隼人にインタビュー![インタビュー]

 等身大の熱さと若さあふれるダイナミックな演技で映画やドラマで大活躍の市原隼人。主演級の若手俳優の中でも今や注目度ナンバーワンの彼が、この秋新たなフィールドとなる“舞台”に挑戦する。稽古突入を前に沸き上がる闘志と期待をこめて、作品への思いを語ってもらった。





映像にはない良さ、舞台ならではの表現方法を追求したい。

――これが初舞台とはちょっと意外でした。

 周りにも良く言われますよ。「お前はライブ感あるし、舞台はとっくにやってると思ってた」って。でも正真正銘、今回が初舞台です。

――舞台への憧れはありましたか?

 もちろんです。舞台にはずっと前から興味がありました。以前、どうしても舞台の上の“表現者”が観たくて、ブロードウェイに行ったんですよ。劇場では観客としてではなくてそこにあるすべてのことを感じようとあらゆるところに注目して観ていたんですけど、舞台上の演者の芝居を観ているお客様の表情も素敵だったし、演じる側と観る側の感情が現在進行でひとつになっていくっていうあのライブ感は素晴らしかったです。劇場が持つ独特の空気も大好きになって、ぜひ自分もこんな風にいろんな人たちを巻き込んでいけるような舞台をやりたい!って思いました。

――そして今回念願の初舞台。初挑戦を前に、生ならではの“怖さ”を感じることは?

 もちろんありますけど、それは今はいらない感情なので捨ててます。それよりも映像にはない良さ、舞台ならではの表現方法を追求したいなって。例えばこうした(パンッと手を叩く)音ひとつでも、どのくらいの大きさにするかで伝わることが変わるだろうし、カットされないので間もすべて自分のものですし。舞台ならではの物語の波、感情の波を作っていきたいですね。

――2時間なら2時間ずっと芝居が続いていく。舞台ならではの“カットされない芝居”というのはやはり新しい感覚だと。

 自分にとっては芝居が途切れないのは映像も同じですね。現場に入ってそこにあるアイテムを見て自分はどうすればここにもっと溶け込めるのか、どういう自分の位置が一番落ち着くのかってことを何度も何度も声に出して確認するし、「今いいテンションがここだな」って思ったらそこを維持するために出来ることをする。本番前に食事を制限したり、芝居前に煙草を吸うのか、水を飲むのか、お茶を飲むのか。女の子と話すのか男の子と話すのか…それだけでも感情って変わると思うんですよ。そういう“本番前の本番”、映像には映っていないけれど絶対に必要でひとつも手を抜いていないフリーな時間。そこを大事にして芝居のテンションを保つってところは映像でも舞台でも一緒なのかな、とは思います。

今は舞台に向かって生きている、舞台に向けての生活を送っているんだっていうこの状況を思い切り楽しんでいるところ。

――作・演出の田村さんとはお会いになりましたか?

 先日少しお話しすることができたんですけど、柔軟な方ですよね。役に人を当てはめていくんじゃなくて、人間にどんどん役をあてはめていくという感じで。こういう方だからより一層人間愛っていうか、活き活きとした人間臭さが描けるんだろうなって思いました。

――では今回の市原さんの役どころというと?

 僕が演じるミキオという役は、交換輸血によって中井貴一さんが演じる男性と人格が入れ替わってしまう青年。荒々しい人間が、突然やさしくなってしまうんですよ。自分自身単純に「性格が入れ替わったらどんな自分が発見出来るんだろう」っていう興味は湧きますし、新しい自分になることで“今までの自分”が見えてくれば「ああ、俺って周りからこんな風に見えてたんだ」って気づくだろうし、今までの自分がまた違う自分になれば、それによって周りの人たちの様子や環境も変化して―その変化はプラスかマイナスかはわからないけど―それがまた自分にも返ってくる。よく知っているはずの自分について改めてたくさんの発見があるなんて…! ストーリーを聞いただけでもすごく新鮮で面白いなって思いました。

――入れ替わってしまう相手、中井貴一さんとは初共演ですね。

 大先輩ですし、とにかく盗めるところはすべて盗んでいきたいです。まだお会いしてないんですけど、芝居はやっぱり相手の役者さんを感じなければ成立しないと思うので、どんな性格でどんな趣味を持っててどんなことが好きなのかっていうその人自身を知りたいと思いますし、その上でなにより芝居でちゃんと会話をしていきたいですよね。1%から100%までひとつずつ丁寧に積み上げて…稽古の中のひとつひとつ、ムダな時間なんて絶対にないはず。常に今やっていることは何に向けての時間なのかってことをしっかり掴んで、皆さんが向かって行こうとする方向への感覚、感情、言葉、動き。そういったことを自分から積極的に感じて行きたいです。

――市原さんの言葉のひとつひとつから舞台への情熱、感情のほとばしりを感じます!「稽古に入るのが待ち遠しくてしょうがないんだ」って、おあずけをくらっているような感じ(笑)。

 (笑)。まさにそういう心境ですね〜。舞台は10年役者をやって来て初。初めてのことってやっぱりその後の自分にもものすごく影響を与えるし、学ぶこともたくさんある。自分の人生でたった一度しかない“初舞台”、それがあと2ヶ月後くらいに迫って来ている。…まぁ稽古を前にしての嵐の前の静けさというか、今はビックリするくらい冷静な気分なんですけど、今自分は間違いなく舞台に向かって生きている、舞台に向けての生活を送っているんだっていうこの状況を思い切り楽しんでいるところです。

――特に準備を進めていることなどはありますか?

 いろんなことが待ち受けていて精神的に辛くなるかもしれないけど、それすらも全部「ああこれが舞台の楽しみなんだ!」って思えるように気持ちを持っていくことは意識してます。それと、稽古場であっても「ここが劇場だったら?」「目の前にお客様がいるなら?」っていうことを常に意識して、だったらどう表現すればいいのかってことを考えていたい。声の大きさは?モーションは?歩く早さは?…考えだすともうドキドキ!楽しくて――

――止まらなくなっちゃう?(笑)

 なっちゃいます(笑)。一度でも稽古すれば一気にスイッチ入るんですよ、自分は。一旦芝居すればそこからはもう本番が始まってるって思うので、皆さんとお会いする顔合わせの日が待ち遠しいです。舞台で演じる上ではいろんなところにカメラを飛ばしたいと思っていて。自分の視線、他者の視線、俯瞰の視線、全体の引き。映像ならひとつしか映らないものが、舞台なら全体が見える。芝居をしている“部分”にレスポンスを受けている役者がその周りにはいるわけで、観るところ、魅せるところ、楽しむ場所はたくさんありますからね。そこの意識を忘れずにカメラを飛ばす。あとはもういつもと同じなんですけど、作品・役・共演者・スタッフのみんなを全力で愛し、常に感度いっぱいのアンテナを張って全力でこの作品を“生きる”、みんなで創る。稽古の中で経験する相手のひと言や動きのひとつひとつからいろんなことを感じて、読み取って、作品創りのビジョンにつなげていきたい。それだけですね。

「芝居って楽しそうだなぁ」「役者の仕事に興味持ったなぁ」なんて思ってもらえたらそれはもうとても幸せです。

――記念すべき初舞台。ファンの皆さんも“生・市原隼人”の芝居を心待ちにしていると思います。

 お客様には新しい自分を観て頂きたいのはもちろんですけど、まずは作品を楽しんでもらいたいですね。自分も“市原隼人”じゃなくて“感情のカタマリ”くらいの気持ちで芝居をしますので。そこから「あ、いつもとちょっと生き方変えてみようかな」とか、なにか心に届く発見をしてもらえたら…そうだな、生の芝居のチカラに触れることで「芝居って楽しそうだなぁ」「役者の仕事に興味持ったなぁ」なんて思ってもらえたらそれはもうとても幸せです。

――そして、病み付きに。

 そうですね! 舞台はまた絶対やりたくなるって、今から確信してます。なんだろう…初舞台を前にした今のこの自分の感情も全部覚えていたいし、もう…全部全部をしっかり捕え刻み込みながら、先に向かって進んでいこうと思います。

(撮影/渡辺 マコト)
(取材・文/横澤 由香)
(ヘアメイク/高橋幸一)

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2010-09-30 10:48 この記事だけ表示