三島由紀夫の傑作戯曲「サド侯爵夫人」「わが友ヒットラー」の交互上演に挑む魅惑の企画「ミシマダブル」製作発表[製作発表レポート]

 演出家・蜷川幸雄が、東山紀之&生田斗真をはじめとする強力キャストと共に、三島由紀夫の傑作戯曲「サド侯爵夫人」「わが友ヒットラー」の交互上演に挑む魅惑の企画「ミシマダブル」の製作発表が、11月上旬、都内で行なわれた。「サド侯爵夫人」では、東山、生田、木場勝己、大石継太、岡田正、平幹二朗のオールメールキャストが6人の女性の登場人物を演じ、独裁者ヒットラーがかつての同志を粛清するレーム事件を下敷きにた「わが友ヒットラー」では、東山がレーム、生田がヒットラーの役どころに挑戦、平と木場のベテラン勢が共演するという趣向で、昼と夜とで異なる演目が上演される日程も予定されている。


 会見には、演出家と6人の男性キャストが勢揃い。本年度の文化勲章を受章したことにふれ、会場から「おめでとうございます」との声が飛ぶと、照れくさそうにさえぎった蜷川は、今回の企画について、「昨日の夜、二作品を読み返して、改めて難しいなと思った。とんでもないことを始めてしまったなと思っています。女形で上演してほしいとの劇作家の意向があり、ある種の様式美が必要であるとの考えに則って、女形での『サド侯爵人』に取り組みますが、平さん、東山さんは僕と一緒の仕事ですでに女形を演じていて、いい思い出がある。2年前、東山くんと『さらば、わが愛 覇王別妃』で仕事をした際、また何か違う作品で高いハードルを課し、苦しめてやれと思った(笑)」と意気込みを。

 「以前、蜷川さんにこの二作品の本をいただいたとき、まさか、立て続けに二本上演することになるとは思ってもみなかった。どちらの作品とも、望んだ人生とは違う道を歩まざるを得ない、宿命をもった人々の物語だと思う。それぞれが人間として成長していく過程を、三島作品は非常に奥深い読み取り方をしていて、それが僕にとってはおもしろい描き方だなと感じられる。大変な挑戦になるけれども、やった後にすばらしい景色が見えるのではないか。そして、そのことによって人間的な成長ができればうれしいなと思っています」(東山)と抱負を述べる。

 「ある種無謀なチャレンジですが、光栄に思っています。僕は一時期、生まれ変わったら歌舞伎役者になりたいと思っていた時期があったくらいなので、一日で男役、女役を演じられることもできるのがとても楽しみ。女形については、この中で一番若いので、一番きれいと言われたい(笑)。ヒットラーについても、20代で演じられる機会はなかなかない役。セリフを家で覚えていると、言葉がきれいで、歌っていて気持ちいいのですがそれは表面的なことだと思うので、舞台の上では、そういったこと以前にしみこんでくるような三島作品の真髄を表現したい」と、生田。

 演出家に、「およそ女形になりそうにないけれども」と評された木場だが、「自分の中にはおそらく、男性的な部分と女性的な部分、両方があって、そのどちらかをより強く押し出して生きているに過ぎないのだと思う。今は隠れている自分の女性的な部分を呼び出していければいいと思っている」と、非常に興味深い考察を。

 「初めての女性役で、ビジュアル面が心配ですが、木場さんに負けないようにしたい」(大石)、「蜷川演出の『じゃじゃ馬馴らし』で居酒屋のおかみ役をやったばかりなので、ごっついおばさんは任せてほしいです」(岡田)と、共演陣も意気込みのほどを語る。

 「ずっと出たかった『サド侯爵夫人』、実は、東山くんが演じるルネが一番やりたい役だった。やっと出演できるとなったらそのお母さんのモントルイユ夫人役だったけれども(笑)、これを逃したらもう出られる機会はないと思うので、日程的にはちょっときつい中、話に飛びつきました。蜷川作品の場合、稽古までにセリフを覚えていくのだけれども、今回はスケジュール的にそれがちょっと無理そうなので……。三島作品は、言葉を剣として、お互いに一騎打ちしていくような、激しい、厳しい芝居だと思う。みんなで力をあわせて、お互いにいい勝負をしていけたらと思っている」と、「わが友ヒットラー」「鹿鳴館」への出演経験もある平は、さすがベテランらしいコメントを。

 当日は大勢の報道陣が集結し、作品への注目度の高さを大いに感じさせた。

取材・文=藤本真由(舞台評論家)

2010-11-19 16:16 この記事だけ表示