辻仁成×堂珍嘉邦コラボレーションによる新たな演劇の可能性。イマジネーションあふれる“愛の物語”、音楽劇「醒めながら見る夢」始動![インタビュー]

 作家・映画監督・ミュージシャンと感性の赴くままに様々なフィールドで創作活動を続ける辻仁成が、新たな可能性を求めて舞台の世界に挑む。タッグを組むのはボーカルデュオCHEMISTRYの堂珍嘉邦。デビュー10周年を迎えた記念すべき年に、この舞台のために書き下ろされた物語とラブソングを携え、自身の内に眠る未知の力を呼び覚ますべく舞台俳優としての表現にチャレンジする。


 

辻さんとの出会いから生まれた“モノ創りのワクワク感”

――本作が初舞台とのことですが、以前から舞台には興味があったんですか?

 CHEMISTRYで10年歌って来て、今、自分的にもさらなる経験値を求めているというか…舞台に限らず、「違うモノをみたい」という思いが強いんですね。やっぱり同じところに留まっていても自分の“歌”っていうものも進化していかないと思いますし、そういう意味でもこの先、11年目に向けてフレキシブルに活動していきたいという気持ちでいたときこの舞台のお話しがあって。タイミングが見事に合った。それで「やってみよう」と。また、作・演出・音楽を辻仁成さんが担当されているというところにも大きく心を動かされましたね。


――互いに“音楽”という強い共通項がある。

 直感で「なんか面白そうだな」って感じました。もちろん実際お会いしてその気持ちはさらに膨らみましたね。辻さんはすごく自分というモノを大切にされている方。何よりもまず自分がピュアに創作活動を楽しんでいる感じが伝わってきて…時々、モノ創りをしているはずなのに頭でばっかり考えていて、「これってこういうことだよね」って物事を見切っちゃってる人っていますけど、やっぱりそういう人とは作業しづらい。こちらも先が見えちゃってつまらないというか、全然ワクワク出来ないですから。だから辻さんの醸し出すあのピュアな雰囲気は創作するのに一番大切なオーラ。素直に「うわ〜、いいなぁ」って思いました。「やってみたい」という気持ちにさせてくれる方ですね。


――辻さんから俳優・堂珍嘉邦へのリクエストはありましたか?

 要求、ではないですけど「堂珍くん、これをやったらすごく景色が変わると思うよ」とは言われました。「舞台を経験すれば、たぶん怖い物なんてなくなるからさ」って。確かに、いっぱい恥かいたっていい、舞台っていう特殊なシチュエーションで歌とはまた違う表現を思い切り体現できるのはきっと面白いに違いないって思いますし、恐いモノがなくなるなんてね、そんな素敵なことはないですから。

 

――堂珍さんにとっての怖いモノ、とは?

 なんだろう…あ、でも歌を歌っているときに自分のパートが来る前っていうのはけっこう怖いというか、苦だったりしましたよ。歌ってないのに見られてるし音も鳴ってる、でも何もしてないっていう…“順番を待ってる”みたいな状況で。


――そうだったんですか!?

 (笑)。もちろん今は全然苦じゃないです。ステージでもナチュラルに立っていることが出来るし、お客さんの様子を見ることもできるようになったし。まあそこまで行くのに9年くらいかかりましたけど、すべては自分が過ごした時間や経験から得た感覚というか、「俺、10年かかってこんな感じですよ」って(笑)。やっぱり人間ってひとつひとつの体験、知識、教養…そういうモノの積み重ねで豊かになっていけるのが素晴らしいと思うので、そうやって自分のスタンスで自分という人間を深めていければいいですよね。歌も芝居もそこは共通していると思います。


――では、舞台の上で演技する自分を想像すると?

 今ちょうどCHEMISTRYでツアーをやってるんですけど、歌っているときにもなんとなく“演じている”雰囲気で立ってみたりしていて。それはたぶん「今度舞台をやるんだ」っていうスイッチが自然と入っちゃってるからだと思うんですけど…“歌ってないときに語る”というか、まあ、少しずつ体感でトライしているところはあります。
 あとはとにかくたくさん舞台を観にいくようにしてますね。大きい劇場、小さな劇場…この距離感だと役者さんはどれくらいの声を出しているんだろう、とか、こういうときはどんな仕草や身体さばきをするのかな、とか。結構冷静に観ているので「こういう声の出し方はちょっと生理的に自分とは合わないな」って思うこともありますし、そうは言っても完全に観客の気持ちで物語に引き込まれていることもある。でも基本的には勉強というか、ひたすら観察、観察。ステージ上では何が起きるか分からないし、まずは実際に目の前で演じている役者さんたちの動きを眼で入れてイメージとして自分に植え付けておく。そうすることで自分が舞台に立つときにも生きてくるはずだし、何かの助けというか、表現の助け引き出しとなってくれたらいいなって思って。


初舞台だからと気負わず、“自分らしい表現”を追求したい

――今回、物語は書き下ろしのラブストーリーだそうですが、堂珍さんの役どころなどお聞かせ頂けますか?

 作曲家の役なんです。地位とか名誉とか今まで積んで守って来た成功っていうモノを、ひとつの恋愛によって投げ出してもいいかな、と悩む男。大切なモノを大切にしようとするが故の葛藤、仕事と愛とのプライオリティが激しく揺れていく中で、自分の人生、相手の人生…彼はどういう風に人生の選択をしていくのか、というお話です。

 

――音楽もオリジナルですね。

 はい。この曲のときはすごくハッピーなんだな、この曲では後半に向けて自分がガッツ入れてかなきゃいけないぞっていうモノも見えてきて、どんどん作品の世界観に近づいていけてます。どの楽曲も、すごくシンパシーを感じるんです。歌詞のコトバや音が聴こえたときに見えてくる背景がとてもイメージ豊かで…説明がなくても音楽が説明してくれる、そんな瞬間も多いです。
 台本も既に決定稿を頂いているので、とにかく7月中には一通りセリフを入れておこうと。なにしろ舞台稽古も初めての経験ですから、始まるまでに自分の中でいろいろ準備出来ることはすべてやっておくつもり。辻さんがどこまで僕のことを見て書いて下さっているのかはわからないですけど、結構普段の自分に近いキャラクターなので役には入って行きやすいかな、とは思ってるんですけど。


――では最後にあらためて本作出演への意気込みをお願いします。

 自分は舞台俳優を目指していたわけではないですし、そんな僕が舞台に立つということ、そこに自分がいる意味というのは、たぶん“自分らしくやること”だと思うんです。 “人間力”に対しての経験値を重ねたい、未知なモノを体験したいっていう気持ちに突き動かされ、「やってみたい!」と思った初舞台。やるからにはやっぱり観に来て下さる方に「つまらない」とは思われたくないですし…物語を最後の最後までしっかりと引っ張って、楽しんでもらえる作品にしていかないと、と思っています。
 稽古での目標は自分が「いいな」と思えるレベルまで粘ること。常に僕を見つめている自分の中の“客観君”が「いい」とお墨付きをくれるまでしっかりこだわって、じっくりと取り組んでいくつもりです。


〔取材・文/横澤由香〕
〔写真/坂野則幸〕

公演概要

音楽劇「醒めながら見る夢」

【公演日程】
東京公演:2011/9/16(金)〜9/25(日) 東京グローブ座
長崎公演:2011/10/10(月・祝) 長崎市公会堂
広島公演:2011/10/14(金) 広島市文化交流会館(旧 広島厚生年金会館)
福岡公演:2011/10/15(土) キャナルシティ劇場
大阪公演:2011/10/21(金)〜10/23(日) 森ノ宮ピロティホール

【脚本・演出・音楽】
辻仁成
※「辻仁成」の「辻」はしんにょうの点がふたつ

【出演】
堂珍嘉邦(CHEMISTRY)、村川絵梨、松田賢二、華城季帆、古川雄大、村井良大


2011-07-21 14:30 この記事だけ表示