中島みゆき 夜会 VOL.17 「2/2」 開幕![観劇レポート]


舞台写真より


 11月19日に赤坂ACTシアターにて初日の幕を開けた「夜会」。シンガーソングライターの中島みゆきが主演、構成・演出・脚本・作詞・作曲を手がけ、1989年から上演の始まったこのシリーズは、「夜会」スタイルとでもいうべき独自の魅力をもつ音楽劇として、数多くの観客を引きつけてきた。VOL.17となる今回の「2/2」は、1995年と1997年に上演され、中島自身の手で小説化、その後、瀬戸朝香主演で映画化もされた作品。今回、構成にさらなる改訂が行なわれての上演となり、新たに書き下ろされたナンバーは、11月16日に発売されたばかりのニュー・アルバム「荒野より」にも収められている。
 中島扮する主人公、編集の莉花は、仕事で出会った日本画家と恋に落ちる。しかしながら彼女は、いつの日からか心の内にずっと棲み続ける“もう一人の自分”に悩まされ続けてきていた。彼女を見張り続け、憎み続け、決して幸せにはすまいと責めさいなみ続ける、鏡に映る己のようなその存在ゆえに、恋人を得ても彼女の自己破滅的衝動はいっこうに収まることはなかった。一人苦しみ続ける彼女は会社を突然辞め、恋人を愛しながらも彼の前から忽然と姿を消してしまう。彼女が向かった先はベトナム・ホーチミン。テト(旧正月)の混乱の中、アクシデントに襲われたり、美しい自然の中、現地の人々とふれあったり。そんな彼女の元に、彼女の出生時の秘密を知った恋人がやってきて……。
 物語の約半分の舞台がベトナムということで、オリエンタルな情緒もたっぷりとまじえた美しい旋律に乗せて、聴く者の心の琴線をそっとなでてゆくような、呪術的な懐かしささえ湛えた“みゆき節”が流れる。世界と自分との距離をどこか手探りし、不器用ながらも一歩一歩歩み続けてゆくような、そしてときに自分の生を、運命をどこか呪い、その深い哀しみゆえに淡々と透き通ってゆくような、彼女の歌の魅力を感じずにはいられない。心の深くに刻まれた傷をさらけ出し、それでもなお飄々と強くそこに立ちて静かに微笑んでいるような「1人で生まれて来たのだから」の歌唱がとりわけ心を打つ。ドラマティックなメロディをさらに心寄りそうものとして盛り上げてゆく、音楽監督も務める瀬尾一三のアレンジが素晴らしい。
 クライマックス、自身の出生時の秘密を知った主人公は、自分を苦しみ続けてきたもう一人の自分の正体と対峙することとなる。中島の絶唱に伴われて、それはどこか、人誰しも、成長の過程でいつか手放し、別れを告げなくてはならない、過去の自分との対決、赦しの行為であるような余韻を残し、物語は終わる。

〔取材・文/藤本真由(舞台評論家)〕

公演概要

中島みゆき 夜会 VOL.17 「2/2」

<キャスト>
中島みゆき/植野葉子/香坂千晶/コビヤマ洋一

<公演日程>
2011/11/19(土)〜12/19(月) 赤坂ACTシアター (東京都)
2012/2/5(日)〜2/21(火) イオン化粧品 シアターBRAVA! (大阪府)




2011-11-21 12:03 この記事だけ表示
 
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