若手劇団・ガレキの太鼓『吐くほどに眠る』作・演出の舘そらみにインタビュー![インタビュー]

 青年団所属の若手劇作家・舘(だて)そらみ。帰国子女、ヤンチャに過ごした青春時代。学生時代の世界一周旅行や医療コ ンサルタント会社勤務を経て、劇団旗揚げ、という少し風変わりな経歴をもつ。そんな彼女の主宰する「ガレキの太鼓」は“ 人間の孤独”に焦点をあて、たっぷりとした愛情表現で人間を描く作品を上演し続けている。劇団は旗揚げ3年目を迎え、今春 からは青年団リンクとしてますます活動の幅を広げている。
2012年1月に6回目の本公演となる『吐くほどに眠る』がこまばアゴラ劇場で日仏若手演出家シリーズ参加作品として上演され る。2010年に上演され、好評を得た本作品を「今こそ」と再演を決めた意気込みを語ってもらった。


 

みんなみんな孤独。そこからが出発点。

――ガレキの太鼓について簡単に教えてください。

 「舘そらみがやりたいこと=ガレキの太鼓」だと思っています。今まで本公演を5回と番外公演という劇場以外の場所で 演劇をやって、年に3回ペースでやっています。
 そもそも演劇をはじめたきっかけは、慶應大学の創像工房 in front of.という演劇サークルです。ただ、失礼ながら「芝居 人は人生から逃げた人。社会で働く人が偉い!」と思っていたので(笑)、卒業後はイラクに病院を建設する医療コンサルタン ト会社に就職しました。 ガムシャラ新入社員だったのですが、ふと、本当にやりたいのは創作活動なんじゃないかと思うようになりました。もともと 、会社の仕事でイラクなどの紛争地に行けるので、将来はエッセイストかルポライターになりたいと思っていました。でも、 働けば働くほど、実務をする人間は世界中にいる。私じゃなくてもいい。それなら、私は文化面からアプローチしていきたい 。「書きたい!」と思って。
学生時代に2本の演劇作品を上演していたので、私がいま一番世の中に発信できるのは演劇という手法だと思いました。演劇や っても意味あるのかな、紛争地に行って井戸掘った方が意味あるんじゃないかと悩みもしたのですが、これだけ書きたいと思 うのは何か意味があるはずだ、と一年間働いた会社を辞めて、劇団を旗揚げしました。

――ガレキの太鼓のコンセプトでもある“人間の孤独”についても教えてく ださい。

 だって、みんなみんな孤独じゃないですか。結局、人と本質的に通じ合うことも、相手が何を考えているか、本当の意味 で知ることも、一生出来ないんです。人は孤独な集団であることが大前提だと思っています。決してネガティブな意味ではな く、「孤独こそが出発点じゃん!」と言いたい。本当に理解し合いたいと思うから、他者を羨ましく思い、嫉妬するんです。 それを強調している作品が、今回の『吐くほどに眠る』ですね。それまでの作品とは大きくスタイルを変えました。群像劇に よって社会の縮図を描いていたのに対して、はじめて一人の人間にクローズアップして、その内面を探っていく作品になりま した。

 

毎日新しい景色を見たい!という好奇心から生まれる行動力

――ところで、舘さんが演劇を始められる前の経歴が気になるのですが。

 生まれた場所は神奈川ですが、父が転勤族で、小学校は6校いきました。その間でトルコやコスタリカと海外も転々とし ています。日本人という意識もなく、どこにいても愛国心を感じないです。地球人、コスモポリタンですよ。根無し草でいい じゃないかと思います。ただ、悲しいことに、基本ずっとさみしい。なう、さみしいですよ(笑)。

海外で生活していた時は父の影響で、戦後の東映の時代劇が大好きになりました。萬屋錦之介さんが主役の映画作品が特に好 きで、ブロマイドも持っているし、亡くなる直前の歌舞伎の舞台も観ました。表現の力の根本の部分として影響をうけていま す。

 高校生時代は、すごく遊んでいました。一人でも多くの人に会って、毎日新しい景色を見たいと思っていて。そうするこ とで、寂しさを紛らわしていました。一方、まじめな面もあって、ダンス部に所属して全国大会3位になったり、政治家の事務 所でボランティアしたり、アルバイトもしていましたね。あとは…風俗店の経営者とも知り合いになって経営アドバイスをし たり(笑)。今の100倍社交的でしたよ。400〜500人と常に連絡取り合っていたので、ケータイはメモリー常にいっぱいでした。 今でも「ヘーイ、フレンド」って感じで誰とでも仲良くなれます。キャバクラのキャッチのお兄さんとも話しこんじゃう。こ のインタビューに向かう前もちょっと話してきました(笑)。

 

――大学生活では、一年間の世界旅行に旅立たれますよね。

 世界中の人々の笑顔を自分の記憶の中に落とし込めば、考えが凝り固まった頑固親父にならなくて済むという結論に至っ て(笑)。旅行中、自分の体験はものすごく貴重なことであって、多くの人に伝えたいと思い、メモや日記帳を大量に記すよう になりました。言葉を連ねることに惹かれてしょうがなかった。おこがましいながらも、書くという行為に使命感を感じるよ うになりました。旅行中の手記は今でもいろんな人に見せています。世界旅行の経験を基に上演した『止まらずの国』の出演 者にも記録のノートを見せたりしました。

大きな運命に飲み込まれていく人間の心の叫びを聴きたい。

――第4回公演『吐くほどに眠る』を再演しようと思った理由は。

 お客さんの反応も良かったし、自分でも新しいことをやっている感覚がありました。内容は全然エンターテインメントじ ゃないんだけど、見ている方にとっては喜怒哀楽を感じることが出来るエンターテインメントになったかなと。再演をしよう と思った理由は二点あります。こまばアゴラ劇場に合うなと思ったのが一つ目。もう一つは主人公の「ナオちゃん」の心の叫 びをみんなに聞いて欲しいと思いました。3.11のあと、被災地に行って、その経験を踏まえて第5回公演『いないいない』を上 演しました。その後、今後何をすべきか、と考えた時に、大きい運命に飲み込まれながらも、それに必死にあらがおうとして 、結局あらがいきれない人間の心の叫びを私自身が聴きたいな、と思ったんです。それが『吐くほどに眠る』だな、と。

 


『吐くほどに眠る』初演舞台写真より

――再演に当たり、パワーアップさせたいと思う点は。

 2011年3月を経た東京で上演することで、時代性を踏まえたい。さらに、「ナオちゃん」を私たちに近づけたいと思って います。前回、罪を犯した「ナオちゃん」は特殊な人だと思われてしまったのがショックで。彼女は私たちの電車の隣に座っ ていたかもしれない人。私は、みんなにもっと愛されて、もっと距離を縮めて感じてもらえる人になって欲しいんです。

――最後に、どういう方に観に来て欲しいですか。

 ほとんどの方がガレキの太鼓を知らないとは思うのですが、年始めに感情をゆさぶられたいな、人に会いたいな、と思う 方はぜひ観に来てください。人間に会いに、劇場まで足を運んでいただければ、全身全霊をもってお迎えします。

 

〔取材・文/上野紗代子〕
〔インタビュー写真/村田まゆ〕

公演概要

ガレキの太鼓 第6回公演
『吐くほどに眠る』

<公演日程>
公演日:2012/1/6(金)〜1/15(日)
会場:こまばアゴラ劇場

<作・演出>
舘そらみ

<出演>
井上三奈子(青年団)、北川裕子、小瀧万梨子(青年団)、橋智子(青年団)
富田真喜(青年団)、南波 早(なんばしすたーず)、由かほる(青年団)、吉田紗和子



2011-12-02 17:58 この記事だけ表示