オール男子キャストで上演するスポ魂活劇『露出狂』を引っ提げ、柿喰う客・中屋敷法仁がパルコ劇場に堂々初登場![インタビュー]

 ここ数年、人気、実力が急上昇し注目を集めている劇団、柿喰う客を率いる中屋敷法仁が、パルコ劇場に初進出を果たすことになった。『露出狂』は、とある高校のサッカー部を舞台に展開する愛憎入り混じった群像劇。キャストのほとんどは、中屋敷自ら審査員となってオーディションをし、今、勢いのある男子ばかり14人を集めた。個性派イケメンたちが真剣に取り組む演技バトル!真夏のパルコ劇場で、ハンパなくアツいものが観られそうだ。果たしてどんな舞台を作り出そうとしているのか、中屋敷の企みに迫ってみた。


 

「男の子ってナルシストでシャイで、ナイーブな人が多い。彼らをいろいろな意味で脱がしたいですね」

――パルコ劇場に初登場ということですが、声がかかった時はどう思われましたか。

 僕は演劇を始めた時から「ゆくゆくは大劇場に進出すべきだよ!」みたいなことをずっと言っていたんです。当時は静かな演劇が流行り出した時期で、同年代の若い演出家はいわゆる大劇場での派手な舞台には興味がなく、僕だけ浮いていました。だからつまり僕としては念願叶ったというか。言い続ければ叶うものなんですね(笑)。もちろん、大勢のお客さんに観ていただけるレベルのものを作っている自信はあったので、ここでやっと挑戦できるなという思いもあります。

 

――今回、この作品をやろうと思った理由は?

 『露出狂』は2010年に劇団で初演した作品なんですが、その頃、世間ではスポーツものがとても流行っていて。でも僕はすごく疑問を感じていたんです。まず運動部っていうのは、こんなに爽やかなものじゃないだろうと。本当は練習に一番時間を費やして、それに対して試合の瞬間はもっと短い時間のはず。なのに、その試合だけでドラマが展開していくのはどうなんだろう、外から見てる感が強いなと思っていたんですね。それで部活動の、10代の若い人間がコミュニティを形成している気持ち悪さみたいなものをもっと出してみたいと思って、この作品を作ったんです。ちなみに初演時のキャストは女性ばかりだったんですよ。まだ、なでしこジャパンが流行ってない時ですから、先見の明がありましたよね(笑)。

――それを、男子ばかりのキャストでいこうとした狙いは。

 初演時に女の子たちでやった時からこれは部活動内の友情と愛情を履き違えて同性愛になってしまうという、すごく気持ち悪い話なんですが、それを男でやってみたらどうだろうという発想をプロデューサーサイドからいただきまして。それに、そろそろボーイズラブ、BLという文化を無視できなくなっているんじゃないかとも僕は思うんですよ。かつては男の子の同性愛というと固い文学作品でしか描かれていませんでしたが、最近はそれがアニメとかゲームなど、若者文化、いわゆるオタク・腐女子文化へとスライドしてきている。そろそろこのムーブメントに対して、演劇としてアンサーを出さなきゃいけないんじゃないかなということです。

――女子よりも男子でやるほうが、なんだか生々しいような気がします(笑)。

 生々しいですよね。僕自身は家族に女が多かったせいか、男の人がそこそこ苦手なんです。だって僕、中学に入った時に体育の授業で男子がみんな脱いでいるのを見てビックリして気持ち悪くなったこともあるんですよ。家には男の裸がないので「うわ、なんだこれ」って。女の子同士だと着替える時は多少隠すものなのに、男の子って平気で上半身裸で歩きまわるので、これはなんて危険なものだろうと。しかも、この危険さをおそらく本人たちはわかっていない、それがよけいに危険に思えてね。

――今回、キャスティングをする際の一番のポイントはどこでしたか。

 オーディションをしたんですが、どれくらいその人の生身の部分がカッコイイか、素敵かをかなり重要視しました。それが60分踊りっぱなしという、とんでもないオーディションだったんですよ。しかも僕は審査員なので、1日中踊りっぱなし。参加者は60分で入れ替わるからいいですけど、僕はずっと踊ってなきゃいけなくて。

 

――えっ、参加者と一緒に踊っていたんですか?審査員なのに??

 踊りましたね。会場に入ると僕がまず踊っていて、みんなもどんどん踊ってきてくださいというような形で、僕が踊りながらからみにいくわけです。そこでちゃんとカッコよくとかセクシーにとか、なんでもいいんですけどちゃんと返してくれる人がいいなと思って。

――そのスタイルで何人を審査したんですか。

 2日間に分けて80人くらいですかねえ。終了後、体重が減っていました(笑)。もちろん疲れるんですけど、やっぱり素敵な人とからむと元気になるんですね。そういう元気をくれる人を選んだ気もします。だけど僕も、キャスト全員が男というのは初めての経験なので期待と不安でいっぱいですよ。男の子ってナルシストでシャイで、ナイーブな人が多いし、実は男の子のほうが女の子よりも脱ぐのは苦手なんじゃないかとも思うので、一体どうしたらいいやら。よく“仮面をはぐ”といいますが、『露出狂』なんてタイトルをつけたのももっといろんなものをむき出しにしたいという、そういう欲求もあってつけたタイトルだったので。

――結構、脱がす感じになりそうですか。

 彼らをいろいろな意味で脱がしたいですね。だけど裸にすることが問題じゃなく、裸になった結果どういう芝居をするだろうということです。いわゆる武器がなくなった瞬間に、人は何をしでかしてくれるだろうと。どのくらいみんなむき出しになってくれるだろう、そしてむき出しにして本当に素敵になれるかどうか。そういう期待は、すごくあります。

「キャストにとっても僕にとってもすごくいい青春にしたいし、とんでもない経験にしなきゃいけないと思う」

――演出的な狙いとしては。

 ちょっと今、脚本をまとめたりしている段階で、まだあまり演出プランを考えていないんですが。とりあえずこの座組にかける思いとしては、キャストにとっても僕にとっても、本当にすごくいい青春になればいいなということですね。

――青春ですか?(笑)

 だって、みんな若いですし(笑)。でもこの舞台をいい経験にするみたいな、そういう考えではいかないほうがいいと思うんです。もうなんか、とにかくとんでもない経験にしなきゃいけない。というのは、僕は全然大物の演出家でもないですし、みんなもとんでもなく大物のキャストではない。20代、もう30代に入った人もいますけど、これからどう評価されていくのか、まだまだこれから試される年代なので。そんなメンバー14人と僕を含めて15人で、どんなものを出していけるのか。言い方は悪いかもしれないですが単純に、そんじょそこらの若手のイケメン舞台とは違うぞ、ということは言っておきたいですね。

 

――では、これから本番に向けて中屋敷さんが一番楽しみにしていることは。

 途中で1ステージだけ“乱痴気公演”の回があって、これは僕の劇団のほうでもいつもやっている試みなんですけど、1ステージのみシャッフルしてキャストを入れ替えるんです。今回は、これも非常に楽しみですね。誰かがずっとやっていた役を、1日だけ代わりにやることになったら、どうなってしまうのか。たぶん、ぐっちゃぐちゃになるんじゃないかな(笑)。だけど当然、俳優も僕も悲惨な結果にはしたくないわけで。そこをどういう風にクリアしていくかが、ものすごく楽しみです。

――どうやってシャッフルするんですか。

 今回はどうしましょうね、まだ何も決めていないんです。劇団のほうではくじ引きで決めたり、俳優の希望を聞いたり、僕が勝手に決めたりといろいろなやり方でやってきたんですが。今回はどうしようかなあ。だけど、俳優さんはみんな瞳孔が開きっぱなしで本番を迎えたりして、この回はすごい緊張感になるんですよ。

――では最後に、お客様にお誘いのメッセージをいただけますか。

 そもそも僕が、世の中で言われてるイケメン舞台が嫌いになったのは、あのみんなの爽やかすぎる笑顔が苦手で。歌舞伎とかもそうですけど、いわゆる色男がダメになっていく姿が本当は一番カッコイイと僕は思うんですよね。「俺と一緒に死んでくれ!」みたいな(笑)。本当に素敵な瞬間というのは爽やかな笑顔なんかではなく、苦しんでいる顔とか悲しんでいる顔、感情をむき出しにしている顔だと僕は思うんです。なるべく、えげつない顔のほうがセクシーですよね。まあ、今回はフライヤーからして、すでにえげつなくなってはいますが(笑)。だから決して清涼感のあるものではなく、本当にもうどろっどろの、汗どろな、血みどろな、それでいてすごく生々しいイケメンが観られる舞台になるんじゃないかという気がしています。そういう、僕自身が観たいものを作るつもりです。

――お客様にはぜひそこに注目しつつ、観ていただきたい。

 はい。観ていただきたいですし、言っちゃ悪いけど僕は観るべきだと思うんですよ。そろそろそういうものを観ておかないと。本当のセクシーがわからないまま青春を過ごしてしまうなんて、もったいないですよ!(笑)

〔取材・文/田中里津子〕
〔インタビュー写真/坂野則幸〕

公演概要

パルコ・プロデュース 『露出狂』

<公演日程・会場>
<東京公演>2012/7/26(木)〜8/4(土)
PARCO劇場(渋谷パルコパート1 9F)
<愛知公演>2012/12/8/27(月)
中京大学文化市民会館 プルニエホール

<キャスト&スタッフ>
作・演出:中屋敷法仁
出演:柄本時生/遠藤要/
入野自由/玉置玲央/
畑中しんじろう/磯村洋祐/
板橋駿谷/稲葉友/
孔大維/遠山悠介/
永島敬三/松田凌/間宮祥太朗/
森崎ウィン


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2012-05-28 18:49 この記事だけ表示