こまつ座&ホリプロ公演「組曲虐殺」、高畑淳子さんにインタビュー![インタビュー]

――初演を振り返って。最初に多喜二の姉チマを演じると聞いてどう感じましたか?
3歳年上と聞いて、「私でいいのかしら?」と。「多喜二のお母さん」って言われるんじゃないかと思って(笑)。まぁ、3つ違いというのは“伏字”にしておいてください(笑)。
ただ、井上先生が、有名な多喜二の母親ではなく、姉を登場させたのは分かる気がします。母親にとって息子を亡くすということはあまりにも辛過ぎて、そこから距離が置けなくなってしまいますから。先生はそれを少しでも薄めるために、母親的な存在として姉を選んだんだと思いますね。

――チマさんはどういう人物ですか?
『闇に咲く花』などもそうですが、先生の作品には、黙々と、日々のことを大切にして生きている女性がたくさん登場するんです。この作品のチマさん、瀧子さん、ふじ子さんを合わせた3人、皆そうだと思います。
多喜二との関係について言えば、肉親だからこその渇いたところもあるんじゃないですかね。肉親として応援し、同調もしているけど、多喜二の主義主張の奥まで自分が入り込んではいけないとも思っている。でも果敢に生きている人ですよね。自分は結婚していて、裏では旦那さんから色々言われたりしているはずなのに。

――元気で明るい女性ですよね。
そうですね。何があっても女はやはり明るく生きていくしかないんでしょう。私、多喜二さんもすごく明るい人だったと思いますよ。面白いことが好きで、ひょうきんなこと、美味しいものを食べることや、音楽も好きだった。国家に反逆するような思想を持って地下に潜っていたのも、みんなが明るく楽しく生きていければいいのにという純粋な思いがあったからこそだと感じますね。

――特にお好きなシーンを教えてください。
やはり最後に、みんなで押しくら饅頭をしているところですかね。多喜二に向かって想いを募らせているのか、井上先生に向かって思っているのか分からないような……。「これから先、ちゃんと遺志を引き継ぎます」っていうような気持ちにどうしてもなってしまうあのシーンがたまらなく好きです。
その一方で、蟇口を開けて「お金がない」みたいなことを言い合って(笑)、それでも割と現実に対してケロっとしているところも、井上作品での登場人物らしくて好きです。私の娘も、「蟇口ソング」が、歌の中で一番好きだと言っています(笑)。

――この作品は音楽もとても素敵ですよね。
小曽根さんの音楽はすばらしいです。肩に力が入っていない名曲というか、お互いがお互いの味を出し合っているっていうか。小曽根さんは「僕は何も作っていません。井上さんの言葉があったから旋律が出てきただけ」って言いますけど…。

――再演での課題はありますか?
あくまでも一寸先のことは誰も知らないという感じの芝居にしていけたらと思っています。多喜二が拷問を受けて死ぬという未来は思いもよらないという感じで、人物たちがそこに息づいているといいですね。実際、悲惨な出来事の前後って、きっとそんなものだと思うんです。何が起こっているのかあまりよく分からないというか。そうした中でもとにかく生きているというような、渇いた匂いがあればいいなって。とにかくタフに、今を生きたいですね。

――高畑さんにとって、井上さんの作品とは?
井上作品に出演する時はいつも、 “人間としての温度”が問われている気がします。人間としての温度が低い俳優が先生の台詞を話すと芝居が一気につまらなくなって、「そんな歴史の教科書みたいなことを延々と言われても、困っちゃうよ、つまんないよ」ってお客様に思われてしまう。じゃあ、熱く演じればいいのかというと、それは自己満足の熱演になってしまう。演じる本人がどこまで人間として豊かで大きいのかということを、まるでリトマス試験紙のように測られるようなところがあるように思います。

――劇場にいらっしゃる方にメッセージを。
このお話は、辛い時代や状況を乗り越えて生きようとする人々が、明るく、たくましく描かれていています。そんな彼らの姿を通して、「言いたいことも言えない、言いたいことも書けない、戦争へと向かった時代がかつてあった。そして、今後も1歩間違えば、またその方向に進んでしまう」ということを考えさせてくれる。そんなメッセージを内包しています。それを押しつけがましくなく観せられるのが井上作品の魅力であり、何より、演劇や映画の役割でもあると思うんです。

>井上芳雄さんのインタビューはこちら
>石原さとみさんのインタビューはこちら


公演概要

こまつ座&ホリプロ公演『組曲虐殺』

<公演日程・会場>
2012/12/7(金)〜12/30(日) 天王洲 銀河劇場 (東京都)
2013/1/12(土)〜1/13(日) キャナルシティ劇場 (福岡県)
2013/1/19(土)〜1/21(月) シアター・ドラマシティ (大阪府)
2013/1/26(土) 市川市文化会館 大ホール (千葉県)
2013/1/29(火) 広島市文化交流会館 (広島県)
2013/2/3(日) 愛知県芸術劇場大ホール (愛知県)

<キャスト&スタッフ>
作:井上ひさし 演出:栗山民也
出演:井上芳雄/石原さとみ/山本龍二/山崎一/神野三鈴/高畑淳子
音楽・演奏:小曽根真




2012-09-28 18:22 この記事だけ表示
 
×

この広告は180日以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。