坂東玉三郎、壇れい、松田悟志の顔合わせで贈る名舞台『ふるあめりかに袖はぬらさじ』。その初日直前に行われた、舞台稽古の模様をご紹介![観劇レポート]

 有吉佐和子の傑作戯曲『ふるあめりかに袖はぬらさじ』が歌舞伎界の至宝・坂東玉三郎主演で上演されるのは、今秋の赤坂ACTシアターバージョンが記念すべき10回目となる。この『ふるあめりか〜』はそもそも1972年に杉村春子が主人公のお園役で初演。その後、玉三郎が1988年にお園役に初挑戦し、相手役や劇場を変えながら再演を重ねてきた名舞台だ。今年はちょうど作品誕生40年にあたり、壇れい、松田悟志らとの新鮮な顔合わせが実現することでも大きな話題となっている。その待望の初日直前に、マスコミに公開された舞台稽古を観ることができた。


坂東玉三郎と壇れい、二人の美の競演は眼福そのもの

 舞台は幕末、尊王攘夷の機運が盛り上がる港町・横浜。

 歌舞伎よろしく、チョン!と澄んだ柝(き)の音が劇場に鳴り響き、幕が上がるとそこは港を行き交う船の汽笛が聞こえる海沿いの遊郭・岩亀楼。薄暗い行燈部屋では、壇れい扮する花魁・亀遊が病気のために床に臥せっている様子だ。そこへパタパタとにぎやかに現れるのが、気風のよい世話焼きの芸者・お園を演じる坂東玉三郎。薄幸そうながらも可憐な美しさを輝かせる亀遊に対し、姉のような気安さで遠慮なくズケズケとものを言う明るいお園。この二人の美しさは当然ながら、それぞれの立場などのバランスが実に絶妙で、幕開き直後からすっかり目は釘付け。グイグイと引きつけられて、この導入部分からすぐに物語世界に浸ることができる。

 そして、この二人の会話に加わってくるのが松田悟志扮する、亀遊に心を寄せる藤吉。彼は遊郭を訪れる異人の通訳(通辞)として岩亀楼で働いており、二人は人目を忍ぶ恋仲になっていたのだった。目ざとく、その関係に気づくお園を玉三郎は陽気に、軽妙かつ存在感たっぷりに演じていく。

 登場するのはこの三人のみで濃密な芝居をしっとりと堪能できる一幕から一転、二幕は大勢の遊女や芸者たちが登場し、三味線や太鼓の生演奏も華やかに遊郭の一室が舞台となる。岩亀楼にアメリカ人のイルウス(団時朗)がやって来たことで、亀遊やお園たちの運命が大きく変わっていく。藤吉が通訳をする目の前でイルウスに見初められてしまった亀遊は、藤吉の思惑とは裏腹にどんどんと身請けの話が進んでしまう。片言の英語のセリフのやりとりで進んでいく亀遊の宿命に、藤吉の焦燥、お園のとまどいがこちらにもじわじわと伝わってくる。そして自分たちの恋が叶わぬことを察した亀遊は、なんと自害してしまうのだが……。その亀遊の悲恋をめぐって物語は後半、コミカルな語りや三味線の演奏なども含めた玉三郎による見せ場がたっぷりのドラマティックな展開となっていく。

 今回で10演目になるとはいえ、赤坂ACTシアターでは初お目見えの作品でもあり、この劇場に合わせた舞台装置や照明、衣裳などの監修も兼ねている玉三郎。舞台稽古中も二幕の前半で自分の出番がない間は、そっと客席に設置してある演出席に姿を現し、演出を手がける齋藤雅文らスタッフとさまざまな点の確認をしている様子が窺えた。通し稽古の最中にも細部のチェックを怠らないその姿からは、厳しさと同時に作品への思い入れや愛情を感じさせられた。

 

壇のはかなげな美しさ、松田の爽やかな好青年ぶりに注目したいのはもちろんのこと、なんといってもただただ美しいだけではない、貫禄も漂う玉三郎の軽やかな演技はこの作品でしか味わえない醍醐味と言える。特に壇と玉三郎、この二人の顔合わせが楽しめるというのはまさに眼福そのもので、今だけのチャンスでもある。この貴重な機会が目撃できるのもいよいよ10/21(日)の千秋楽まで! どうぞお見逃しなく!!

〔取材・文/田中里津子〕

 

公演概要

「ふるあめりかに袖はぬらさじ」

<公演日程・会場>
2012/9/28(金)〜10/21(日) 赤坂ACTシアター (東京都)

<キャスト&スタッフ>
作:有吉佐和子
演出:齋藤雅文
出演:坂東玉三郎 檀れい
松田悟志 伊藤みどり 藤堂新二 団時朗 他

 
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2012-10-02 12:33 この記事だけ表示
 
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