座長三宅裕司が語る、劇団スーパー・エキセントリック・シアター第50回記念本公演 ミュージカル・アクション・コメディー『上海ローズ』。[インタビュー]

 今年で劇団創立33年目を迎えるSET。今や毎年恒例となっている本公演だが、昨年は座長の三宅裕司が腰部椎間板ヘルニアのため病気療養という事態に見舞われ、中止を余儀なくされていた。そして2012年、三宅裕司は見事復活! 晴れて本公演が実現する。奇しくも今回は記念すべき第50回目の本公演。劇団員が一丸となって2年分のパワーと情熱を凝縮して贈るのはもちろん、三宅自身の大きな想いも込められた、“次へとつなげていく”一作となっている。


 

座長三宅裕司が語る!

――今回、チラシなどに書かれている “自分が産まれ育った大好きな日本が、最近はなにか少しおかしくなってしまったのでは?”という内容の三宅さんのあいさつ文を拝見して、「確かにそうだよな」と感じました。その思いが本作誕生のきっかけにもなっているそうですが。

 なんでしょう…ここ何年か、いつもなにをやろうか考えていると、その様なところに行き着くんですよ。自然と「日本」という国を考えてしまう。それはもちろん今の社会情勢を見ていると考えざるを得ないことだとも思います。SET自体、このところの何作かは特に日本の良さとか日本人の素晴らしさとか、そういうモノをもう一回考え直そうといった公演になってますよね。だから、特に次の作品をやるにあたってそういうところに着目したということではなく、もうずっと考えていることの必然的な流れじゃないかな。

――では三宅さんが感じる日本人の素晴らしさとは?

 最近だと特に海外からの評価っていうところにも注目してます。例えば昨年あれだけの災害に襲われ、ましてや復興支援も遅れている中にあって、日本人は暴動も起こさず、きちっと辛抱強く、非常に紳士的に待っている。そしてなんとかしようと前向きに笑顔で頑張っている。そんな日本人の強さには僕も含め世界の誰もが感動した。そういう事実に触れるにつれ、そこをもっともっと考えていけば、日本人はさらに世界で生きて行けるのに、と感じるんです。

――日本人の誇りを自覚しよう、ということですよね。

 そういうのをお客さんに対して一方的に押しつけることなく、伝えていきたい。もともとSETを作ったのは、新劇とかアングラとかテーマを押しつける…解らない人は解らなくていいって、やたら難しくするようなモノに対しての反発があったので。ストレートに解らせてもいいんだけど、お客さんが楽しみながら観て、最終的に「でも言ってることには深いテーマがあるんだな」っていうのが後から解る。テーマはちゃんとあるけれど、押しつけやお説教にならないために、そこにギャグであり音楽でありアクションがある楽しい“ミュージカル・アクション・コメディー”を、というつくり方をもう33年やっているわけです。

――『上海ローズ』はヒット曲を生み出すことのできる上海ローズの“奇跡のレコード”をめぐり、音楽業界の仕掛人たちと“売れたい”ミュージシャンたちが繰り広げる争奪戦を描いた作品。なんとなく、実際の音楽業界の実情にも警鐘を鳴らしているように感じられて…。

 そうですか? 実は音楽業界になにか一石投じるっていう考えはそんなにないんですけどね。僕らは気持ちが昂って急に歌い出す、というようなミュージカルではなく、「そりゃあ当然ここで歌うだろう」という必然性のある音楽を入れたミュージカルをつくりたいので、音楽業界を舞台にすればとても自然にたくさんの音楽を入れられるな、という発想がまず先でした。なので業界がどうこうというよりも、今の日本の状況や閉塞感、そこに対しての「もっと日本の素晴らしさを見つめ直した方がいいんじゃないですか?」ってところが大切で、それを音楽と音楽ギャグでやりたいなと考えてます。でもまぁギャグっていうのはどうしても風刺したりとか権力へのなにか皮肉のようなモノを言ってみたりすることが多いので、多少は音楽や音楽業界という切り口からもそういうことが感じられるような部分はあるのかもしれないですけどね。

 

――では「これが50本目の本公演」、という部分での特別な思いなどはありますか?

 ないなぁ(笑)。ただ、数字で見ると面白いですよね。33年で50本ってことは、年に2本以上やった年があるんだなって思って調べてみたら、最初の3年間で15本やってるんですよ! そのうち新作が11本ですから、どんな生活してたんだろう?って。相当暇で芝居しかやることなかったんでしょうけど(笑)、それにしてもスゴイなと。ただ、忙しさはそのあとのほうが大変でしたね。テレビ、映画、ラジオ…いろいろやりながら毎年公演を打っていくことのほうが大変。だから初めの3年は「大変」の前、楽しさのほうが大きかったんじゃないかな。

――3年で15本! あらためて劇団の勢いを感じますね。ただ昨年は三宅さん自身療養されている期間もあり、ちょっとそれまでの「大変」から離れて、じっくりいろいろなことを考える時間も取れたかと思いますが。

 入院中にゆっくりと自分の人生を考える時間ができましたね。そして、自分がなぜ生かされているのか、このあとなにをやればいいのかっていうところが明確になって来た。

――演劇人としての使命とか?

 いやいやいや(笑)。やっぱり「笑い」ですよね。これはもうずっと言ってきてるんですけど、テレビの笑いが、瞬間芸とかトークとか、すぐに面白くなきゃいけないモノになっている。視聴率は取れなきゃいけないけど、いい番組なら視聴率を取れるというわけでもなく、当然ザッピングもされちゃうわけですから、すぐ笑ってもらわなきゃチャンネルも変えられちゃう。だからもうそれはそれでひとつの芸、「テレビの笑わせ方」っていうものとしてあってもいいとは思うんですが…それだけだとちょっとまずいんじゃないかと。一方でもっと台本を作ってリハーサルをしてキチッとフリがあってオチがあるような、手間のかかる笑いもなきゃいけないんじゃないか?と考えるようになったんです。 そうするとSETがやっているミュージカル・アクション・コメディーですとか、熱海五郎一座でやっている軽演劇とか、そういうものがなくならないよう継承し、しっかり後輩に伝えていくのが僕の役目だということが明確になったんです。笑いというのはその時代に生きるモノなので、新しいモノは絶対必要なんですよ。でも、表現の仕方が偏りすぎてはいけない。新しいんだけど、昔から今まで培って来たやり方のいいところだけは残していくのがいいんじゃないかな。

――『三宅さんの笑い』を言葉で表現するとしたら?

 非常に難しいんですけど、これはもう『三宅裕司の笑い』と言うしかないんですよね。笑いを表現する人はたくさんいて、お客様はそれぞれが自分の好きな「笑い」のところに行くわけだから。そういう意味では「『三宅裕司の笑い』が好きな人はウチに来てください」、というシンプルなことですよね。

――『上海ローズ』ではどんな笑いが待っているんでしょう?

 “ミュージカル・アクション・コメディー”ということで言えば、特に今回はミュージカルの部分が非常に強いですね。歌、ダンス、音楽ギャグ。そういうところで特に楽しんで頂けると思います。ただ僕らの舞台は誰もが楽しめる作品ですから。予備知識もまったくいらないですし、もうなにも考えずにただいらして頂ければ全然大丈夫ですよ。芝居を観たことのない人も、初めて芝居を観たいと思ったときにぜひSETを選んで欲しいです。わかりやすくて、たくさんサービスして、楽しんで頂いて、元気になってもらって。でもちょっとね、テーマがちゃんとあるんです。そこはもうずっとやってますし、変わることはないです。

――そして60回、70回公演…と?

まあ、やっていればね(笑)。おかげさまで今はすっかり元気なんですけど、それでも僕も60過ぎましたからね。もうそろそろSETをどうするのか…三宅一代で終わらせるのか、誰かに継承するか──みたいなことも、ちょっと考えながらこれからはやっていくんだな、と思っています。

〔取材・文/横澤由香〕
〔インタビュー写真/坂野則幸〕

公演概要

劇団スーパー・エキセントリック・シアター
第50回本公演 「上海ローズ」

<公演日程・会場>
2012/11/1(木)〜11/18(日) サンシャイン劇場 (東京都)
2012/11/22(木) 新潟県民会館 大ホール (新潟県) ※新潟公演はイープラスでの取り扱いはございません。

<キャスト&スタッフ>
原案:大沢直行
演出:三宅裕司
上演台本:野坂実
出演:三宅裕司 小倉久寛 劇団スーパー・エキセントリック・シアター 他




2012-10-15 13:24 この記事だけ表示
 
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