『今ひとたびの修羅』演出 いのうえひでのりさん×主演 堤真一さん対談 〜読売新聞夕刊スペシャルインタビュー(東京本社版・1/15掲載)[インタビュー]

劇団☆新感線の人気演出家いのうえひでのりが、2009年『怪談 牡丹燈籠』に続いてシス・カンパニー公演に登場!新感線では幾度もタッグを組んだ堤真一を主演に、宮本研の傑作『今ひとたびの修羅』で任侠の世界に生きる男女の修羅をじっくり魅せるという。痛快娯楽活劇が身上の新感線とは趣を変え、「昭和が似合う男」堤とどんな舞台を作り上げてくれるのか。


「昭和」の香り漂う至極のラブストーリー

――まだ稽古前ですが作品を読んでみての印象はいかがですか。

いのうえ 近ごろでは珍しい、男と女の情念の物語ですね。最近の商業演劇や映画には少ない、ストレートな純愛もので面白いなと思いました。僕のイメージは五社英雄監督の世界です(笑)。
 昭和初期の侠客の話で男の意地の張り方も今の時代とは違うから、演じる側が照れちゃうとできないですよね。そこは難しいかな。
いのうえ そう、現代的な照れを入れず、圧倒的な熱量をもってやらないと。そういう時代の日本人だったんだ、という説得力でね。
 気をつけたいのは、単に任侠映画の真似事にはならないように、ってこと。形だけ真似たところでコスプレショーになるだけだから。
いのうえ でも堤くんはたぶん、昭和初期の男を演じられるギリギリ最後の世代じゃないですか。
 僕、思いっきり昭和ですよ。
いのうえ いや、無骨でゴツゴツした昭和の匂いがするという意味でね。今回の飛車角という役も不器用な昭和の男なんです。特に何をするわけじゃなくてもお客さんがつい目で姿を追ってしまう色気が必要で、そこは堤くんの"朴訥フェロモン"を信頼してますから。
 それ、久々に言われた!(笑)。
いのうえ 今回こそまさに"朴訥フェロモン"が必要なんですよ。「お前が好きだ」としか言っていないようなシンプルな男だけど、女の人が放っておけない魅力がある。若い時にはできない役でしょうね。堤くんもついにその境地へ参られたか、と(笑)。宮沢りえちゃんとの宣伝写真も映画みたいで。
 あの撮影はドキドキしましたよ。本当に綺麗だったなぁ。あんなりえちゃんを前にしたら、「好き」って言わざるを得ないじゃないですか!それを、セリフとはいえ「俺にはもう何のかかわりもねえ」とか言うなんて……。
いのうえ やせ我慢の美学(笑)。そんなところも古典的というか、ロマンチックなんです。宮本研さんが書いたセリフがまた綺麗でいいんですよ。

――今回は男女のラブストーリーが主軸の一方で、侠客同士の「出入り」などは男らしさ全開の場面になりそうですね。

いのうえ スペクタクル感というか、立ち回りなどのアクションはちゃんとやりたいですね。物語を盛り上げる欠かせない要素のひとつではあるので。
 今、立ち回りのあるシーンをちゃんと演出できる演出家って、いのうえさんが一番じゃないかな。いのうえさんの立ち回りは動線が考え抜かれているし、密度が濃くてドラマがあるんです。セリフの掛け合いのようなものだから、やっていても楽しいんですよね。
いのうえ お互いの意地や生きざまが出る立ち回りは見応えがあるよね。今回はあくまでドラマがメインで大立ち回りがあるわけではないけれど、ある程度の期待には応えられると思います。
 立ち回りも芝居も、相手役と「会話」がちゃんと絡み合っていれば空間は埋められると思うんです。今回のカンパニーは風間杜夫先輩を筆頭にすごい役者さんばかりだから楽しみですね。芝居をする上での緊張感を持っている方たちだし、稽古場は絶対に楽しくなるはず。問題は"飲み"だけか(笑)。
いのうえ 風間先輩が帰してくれないからね(笑)。でも演出家としても信頼できる役者さんが揃っているのは非常に心強いですよ。僕にとってはあまりなじみのないジャンルだから怖さもあるけれど、前回の『怪談 牡丹燈籠』も面白かったので。どんなシーンの空気が作れるのか楽しみは大きいです。新しい商業演劇の雰囲気を出せたらいいなと思います。
 いのうえさんは演出家としての責任を全部負ってくれるから、役者は自由にできるのがありがたいんですよね。飛車角はりえちゃん演じる「おとよ」と直接絡む場面は意外と多くないけれど、その分、断ち切れない二人の太いつながりをしっかり出さないといけないなと思います。でもまぁ、「宮沢りえ」を前にしたら、誰でも好きになるからなぁ(笑)。
いのうえ 話が戻ってる(笑)。

[取材・文/市川安紀]
[撮影/加藤 孝]


プロフィール

つつみ しんいち
1964年、兵庫県出身。俳優。87年にドラマ主演デビュー。以降、舞台、映画、TVドラマ、CM、ナレーションなど幅広く活躍中。6月に主演映画「俺はまだ本気出してないだけ」の公開が控える。

いのうえ ひでのり
1960年、福岡県出身。演出家、劇作家。80年に劇団☆新感線を旗揚げ、ほぼ全作品の演出を担当。06年芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。近年は劇団公演以外にも数多くのプロデュース公演の演出も手掛ける。

公演概要


「今ひとたびの修羅」

<公演日程・会場>
2013/4/5(金)〜4/29(月・祝)  新国立劇場 中劇場 (東京都)

<キャスト&スタッフ>
原作:尾崎士郎 「人生劇場」より 
脚本:宮本研 演出:いのうえひでのり
出演:堤真一/宮沢りえ/岡本健一/小出恵介/小池栄子
風間杜夫/村川絵梨/鈴木浩介/浅野和之
逆木圭一郎/村木仁/インディ高橋/礒野慎吾/他


2013-01-18 13:58 この記事だけ表示