演出の岩松了と主演の大森南朋に意気込みを聞いた!M&Oplays プロデュース 「不道徳教室」[インタビュー]

大森南朋を主演、二階堂ふみをヒロインに迎え、岩松了が取り組む新作「不道徳教室」は、ノーベル文学賞に輝く文豪・川端康成の「みずうみ」にインスパイアされた作品。自分のクラスの女生徒を尾行する高校教師を主人公に、教師と生徒の禁断の恋を描く。岩松と大森に作品への意気込みを聞いた。


意気込みを聞いた!

――まず、川端康成の「みずうみ」を取り上げようと思った理由からおうかがいできますか。
岩松 嫌いじゃないんですよ、川端康成。僕が最初に感動した小説って、「伊豆の踊子」ですし。こう、心が洗われるなあと。それで、あるとき「みずうみ」を読んでいたら、先生が生徒をストーカーする話で、ああ、これは芝居になるなあという発想が浮かんだんです。舞台化にあたっては、時代設定や人間関係、結末なども変わってきますが。


――そのような設定の主人公の役をという話があったとき、どう思われましたか。
大森 ああ、ヘンタイか、最近多いなと思いました(笑)。でも楽しみです。今回は真ん中で演じさせてもらえるわけなので。CMでいい人を演じつつ、ヘンタイも演じる、それくらいの振り幅があっていいなと思います。しかも久しぶりの岩松作品なので。
岩松  いや、なんか、この役には大森くんがいいなと。それで、女子高生役って難しいなと思ったんだけど、現役女子高生の二階堂ふみさんが演じてくれることになったので。

――これまでのお互いの印象は?
岩松  大森くんは「隣の男」と「恋する妊婦」に出てもらっていて、三度目の仕事になりますが、これまで二回とも再演作品だったんですよね。今回が初めてオリジナルということになるんです。さっき本人が、いい人もやり、ヘンタイもやりって言ってたけれども、僕の中で、大森くんって、あんまりこれと決まった印象がなくて。何かこれを武器に役者をやっているという感じがないというか、染まっていない印象というか。だから、過去二回も全然違うタイプのキャラクターをやってもらっているんですよね。かといってそれが大森くんの本質に近かったかどうかは全然わからないですし。そういう意味で、染まっていないというよさがあるんじゃないかなと。
大森  染まってないかもしれないですね。あまり偏ってないというか、突出したイケメンでもなければ運動能力が高いわけでもないですし。みんながあまりやらなさそうな役を演じてみたいタイプですし、そういう立ち方でいいのかなと。
 僕は岩松さんのこと、最初は漠然とこわいイメージがありまして。一本目とかすごいギューギュー詰められてた気がするし。もう一回!みたいな感じで、どんどん追いつめられていく感じがしました(笑)。一緒にご飯とか行かせていただく様になって、大丈夫になってきたといいますか、だんだん優しくなってきたというか。最初の人にこわいのかな、岩松さん。「恋する妊婦」のときは、若手がそうやってギューギューやられているのを聞いているだけでこわくて、タバコ吸いに逃げてました。今回も何があるかわかりませんが(笑)。

――岩松作品の印象はいかがですか。
大森  僕はなんか好きだったんです。やっぱり言葉がすごくいいし、よけいな大芝居を要求されないですし。そういう意味ではすごく居心地のいいところだなって感じます。

――そして今回、岩松さんが大森さんに書き下ろすのはストーカーという役どころです。
岩松  僕は、大森くんがやるんだと思って書いているのがとても楽しいですね。しかもストーカーなんて、なんとなくはわかるけど、その心の中までは読めないじゃないですか。それを、書きながら勉強していくというか、その人に近づいていく感じがおもしろくて。なんかね、女がいないから女を追いかけていくんじゃ、つまらないでしょう。そういうことじゃない気がして、その本質は。
 人には、恋人とか夫婦とか、一緒にご飯食べたり飲んだり、近い存在の人っているわけですけど、街ですれ違うだけの人間って、会わないわけじゃないですか。なぜか近しい人と、近しくない人がいるわけで。あの人と俺はなぜ知りあいじゃないんだろうって振り返って考えてみたときに、人生で一瞬しか出会わない人っていっぱいいるわけで、それを不思議に考え始めると、ちょっとストーカーに近づけるかなっていう感じがするんですよ。いっぱい時間を一緒に過ごす人がいるけれども、この人とはなぜこうやって一度きりしか会わないんだろうっていう。それがストーカーの原型なんじゃないかっていう気が、今はしているんですけれども。
 川端康成の小説ってけっこう、そういう一瞬のすれ違いの人たちが出てきて、ああ、この人はそういうことを考えていた人なんだなって。「みずうみ」はもちろん、「伊豆の踊子」にも「雪国」にも「山の音」にも出てくるんですよね。そういうおもしろさがあって。川端康成自体、ヘンタイですよね。つらつら読んでいてそう思う。

大森  ストーカーと言われるとなんだかとても固定したイメージがありますが、そこにはとらわれない感じの役になるのかなと、今の話を聞いていて思いました。ストーカーはたぶん、自分がストーカーという自覚はないと思うんで。川端康成さんの世界にはストーカーという言葉もないですし。例えば、子供のとき、好きな人の家の前を通って帰ったりするじゃないですか。それも今でいうストーカーになってしまうのかなとか。
岩松  ただ、ストーカーって行動力がすごいよね。みんな想像はするだろうけど、実際に尾けていっちゃうわけだから。我が身の危険も顧みていないというか。目的に沿って行動できるってすごいことですよね。ある意味、健全(笑)。隠れているものがあまり表に出てこない感じの作品というか、静かなというか、音楽で言ったら、あまり街中で聞かない、流れていない印象の音楽みたいな感じの芝居になればいいなと思っています。感情が表に出ない、圧縮した感じの大森くんが見られる芝居になるんじゃないかな。

[取材・文=藤本真由(舞台評論家)]
[インタビュー写真=渡辺マコト]

公演概要


M&Oplays プロデュース「不道徳教室」

<公演日程・会場>
2013/5/29(水)〜6/4(火) KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ (神奈川県)
2013/6/8(土)〜6/23(日) シアタートラム(小劇場) (東京都)

<キャスト&スタッフ>
作・演出:岩松了
出演:大森南朋/二階堂ふみ/趣里/大西礼芳/黒川芽以/岩松了



2013-03-29 14:16 この記事だけ表示