松尾スズキの伝説作「悪霊-下女の恋-」稽古場レポート&出演の三宅弘城と賀来賢人インタビュー![稽古場レポート]
稽古場レポート

うだるような暑さが続く8月のある一日 ―― 「悪霊」の稽古場では、大道具の仮組みも終え、綿密に返し稽古が続いていた。
再再演ということもあり、前回の完成形を取り入れるところは取り入れながら、細かい松尾の指示で、またまったく新しい2013年の「悪霊」が構成されつつある。
時には自ら動いて、役者に指示を与える松尾。それによって芝居は確実に面白くなってゆく。「特に時代や場所を特定することなく、いつの時代でも変わらない、人間の奥底にある関係性を描きたい」という演出意図のもと、しかし時節柄の細かいネタも織り込みながら、緻密に劇を作り上げてゆく。
出演者が4人ということもあり、気を抜く暇もなく稽古に集中する面々。ときどき起こる笑いの中にも程よい緊張感を保ちながら、2013年版「悪霊」は日々、進化している。

[稽古場写真=引地信彦]

インタビュー!


(左より) 賀来賢人、三宅弘城

 1997年に初演され、2001年にも再演された松尾スズキの伝説作「悪霊」が新たなキャストを得て甦る。お笑いコンビと彼らをめぐる女性たち、男女二人ずつで繰り広げる濃密な四人芝居だ。今回、相方を演じることとなる三宅弘城と賀来賢人に話を聞いた。


――今回が三度目の上演となりますが、作品や役どころの印象についておうかがいできますか。
三宅 資料映像を見たんですが、早く稽古したいなと思いましたね。役どころについては、頭がよさそうな人だなと。なんせ、今までこの役を演じてきたのが、松尾(スズキ)さんに宮藤(官九郎)さんと、劇作家二人なんですよね。(自分のような)この四角い筋肉男がそういう感じに見えるのかどうか、心配はあったりしますが。
賀来 漫才師という設定ですが、セリフのやりとりすべてが漫才に見えてくるというか、すごくテンポのいい作品ですよね。脚本を見ると「間」とだけ書いてあって、そういう箇所がすごく多いんですが、その「間」がすごく大事なんだろうなと思っています。

――松尾さんの作品やお人柄の印象はいかがですか。
賀来 いろいろ見させていただいているんですけれども、暴力なり、社会的なことなり、テーマがあって、頭がぐるぐるしながら見ているんです。でも、終わった後、あ、おもしろかったとか、あ、すごかったって、爽快感みたいなものがあって。自分の中でそんな完結ができた作品ばかりで、そこが松尾さんの作品ならではの魅力なのかなと思いますね。僕はまだ松尾さんには二回くらいしかお会いしたことがないんですが、しゃべらない方だなと。僕も人見知りする方ではあるんですが。そのとき、今回自分の演じる役について、フットボールアワーの後藤輝基さんみたいな感じと言われたことが印象に残っています。ちょっとインテリっぽいというか、うまいこと言っている感じというか。
三宅 僕も松尾さんの作品に出るのは初めてで。念願のというか、ようやくというか、やっとという感じです。しかも、やるなら他の作品かなと思っていたのが、「悪霊」なんだという意外感もあって、それもモチベーションになっています。僕、実は「大人計画」の第三回公演かな、見に行って、そのころはまだちらしに書いてある劇団の連絡先が松尾さんの家だったんですよね。それで、「劇団健康の三宅ですが、何かあったら使ってください」って松尾さんの留守電に入れたことがあって(笑)。何もレスポンスはなかったんですが(笑)。最近の松尾さんの作品はまた変わってきていると思いますけれども、「悪霊」のころでいうと、ひりひり感というか、(胸のあたりを指しながら)こう、痛いところをえぐられているような世界がありますよね。松尾さんの「愛の罰」を見に行ったときも、脚本を買って読みながら帰っていたら、めちゃくちゃ引き込まれて、降りる駅を乗り過ごしたことがありました。



――今回お二人はコンビを務められますが、お互いの印象はいかがですか。
賀来 以前、「モンティ・パイソンのスパマロット」で皆川(猿時)さんと共演したとき、三宅さんが見に来て下さったんです。それで、人見知りっておうかがいしてたんですが、僕、人見知りの人が好きなんで、すごくうれしかったですね。なんか、お互いもじもじするのって楽しくないですか?(笑)



三宅 (笑)いや、人見知りは人見知りなんだけど、人見知りしてばっかりじゃだめだと思って自分から飛び込んでいったりもするから、人見知りだって言う人と、人懐っこいねと言う人と両方いるかも。でも、そうは言っても、やっぱり探っている、人見知ってるんだけれども(笑)。そのときはまだ全然共演するとかっていうことはなかったんだけれども、僕は見に行って賀来くん、すごくおもしろかったです。だから声をかけに行ったりして。なんか、若いんだけれども、いい意味でギラギラしてなかった。笑いがほしい、笑いがほしいっていう感じじゃなくて、ああ、この人はわかってやってるなあと思って。そこがすごくおもしろかった。
賀来 三宅さんの舞台はナイロン100℃や劇団☆新感線に出られたのを見ていますが、すごくおもしろくて動きもキレキレで。筋肉もすごいし、かっこよくて色気があるなあと思って見てましたね。

――この作品には初演から出演されている広岡由里子さん、それに平岩紙さんが女性の共演陣です。
賀来 平岩さんとはドラマで共演させていただいたとき、大人計画に興味があったのでいろいろお話を聞いたりして。広岡さんはポスター撮りでお会いしただけなので、稽古場でご一緒するのが楽しみですね。
三宅 僕も平岩さんとはこれまでがっつり芝居したことはないかな。おもしろい人だし、本物の大阪人なんで、今回、大阪弁を習わないとなと思いますね。広岡さんは鎌塚氏シリーズでご一緒してますけど、とてもおもしろい方です。出てくるとこう、喜劇感というか、それだけでもう、おもしろくて笑える作品になりそうな感じがするというか。あと広岡さん本番中に後ろ向いて笑うんです。それも、どこに地雷があるかわからない(笑)。自分がセリフを言って、決まった!と思った瞬間笑い出したりとか、周りは今何が起きたんでしょうかっていう感じなんだよね。
賀来 やばいな〜(笑)。
三宅 今回「悪霊」っていうタイトルだけれども、あくまで喜劇作品なので、とにかくおもしろいものにしていきたいと思います。
賀来 僕が今まで出演してきた舞台よりも演技、芝居の要素が非常に濃い作品だと思いますし、松尾さん演出も初めてなら、共演の方々も活躍されている方ばかりなので、幕が開いたときに違和感がないよう、染まれるように舞台にいられたらなと思っています。

[取材・文=藤本真由(舞台評論家)]
[インタビュー写真=坂野則幸]

公演概要

悪霊 -下女の恋-

<公演日程・会場>
2013/8/29(木)〜9/16(月・祝) 本多劇場(東京都)
2013/9/21(土) シアター・ドラマシティ(大阪府)
2013/9/23(月・祝) 名鉄ホール(愛知県)

<キャスト&スタッフ>
作・演出:松尾スズキ
出演:三宅弘城、賀来賢人、平岩 紙、広岡由里子


2013-05-23 19:02 この記事だけ表示