稲垣吾郎×中越典子の甘く危険なふたり芝居、『ヴィーナス・イン・ファー』開幕!主演の稲垣吾郎・中越典子からのコメントも! [観劇レポート]


 『CHICAGO』の演出家ウォルター・ボビーの手により2010年にオフ・ブロードウェイで開幕、2012年にオン・ブロードウェイで大成功を収めたふたり芝居『ヴィーナス・イン・ファー』の日本初演が幕を開けた。“マゾヒズム”という禁断の愛の形をテーマにした戯曲をめぐる、男と女の刺激的なかけひき。刻々と表情を変え続ける男女のパワーゲームを、稲垣吾郎と中越典子が息つく間もなく演じ切る、濃密な時間の始まりだ。

稲垣吾郎・中越典子からのコメント!

観劇レポート

 長机、ライトスタンド、椅子、コーヒーメーカー、資料の束…。窓の外は雨。素っ気ない、どこにでもあるようなスタジオの一室にいるのは劇作家で演出家のトーマス(稲垣)だ。彼が求めているのは自作戯曲のヒロインを演じる女優。しかし、この現代にマゾッホの小説「毛皮を着たヴィーナス」を翻案した物語を担う有能な女優=19世紀の魅惑的な貴婦人を演じる美貌と教養とセンスを持ち合わせた若い女性などいるわけもなく、目的が果たせないまま湧いて出るのは愚痴ばかり。そこへひとりの女性(中越)が駆け込んでくる。戯曲のヒロインと同じヴァンダという名の女優。とはいえ、求めているイメージとはほど遠いその様子に再びトーマスは落胆する。ところがヴァンダは持ち前の勢いの良さでトーマスにかけあい、その場で読み合わせのオーディションを行なうことに──。

 トーマスが書いた戯曲に登場するのは、美貌の未亡人・ヴァンダと、彼女の倒錯した愛に惹かれ自ら奴隷になる契約を結ぶ青年・ゼヴェーリン。支配する側とされる側が情熱的に思いをぶつけあう複雑な愛の構図が、そこにはある。  未亡人・ヴァンダが低く支配力のあるトーンで語れば、セヴェーリンとしてのトーマスはその欲求に絡み取られるように従っていく。また、女優としてのヴァンダが高い声の早口でトーマスをやりこめようとまくしたてれば、トーマスは演出家としての威厳をもって彼女の高慢な態度を一喝してみせる。舞台上でふたりが交わす会話は、戯曲の台詞の応酬かと思えばヒラリと本人同士の会話へと展開し、また、どちらともいえないない交ぜの状況のまま激しく議論を展開しているうちに、その議論がスルリと戯曲の中へと反映されていく。心地よい混沌。こうして本読みが熱を帯びるほどに、女優・ヴァンダとトーマスの関係もまた、複雑にからみあっていくこととなるのだった。

 トーマス役の稲垣は知的な雰囲気をまとい、将来のある有能な演出家としての空気を嫌味なく表現。自作についての絶対的な自信を裏付けに、戯曲の読み合わせをしながら見慣れぬ女優の品定めにかかっていく。高揚もするがあくまで上品な“静”の存在感も、観客を確実にひきつける力になっていた。対するヴァンダは一見がさつだが、実は戯曲の裏側にも神経を払い、折々に博識ぶりを披露する幅の広さ。中越は核心を突きつつ自由奔放に振る舞うヴァンダを溌剌と演じ(声色の使い分けも見事!)、チャーミングで謎めいた魅力を放ってくれた。

 フリルの奇麗な純白のドレスをスルリと脱いでは、黒のピンヒール&ボンテージスタイルで官能的なシーンを瞬時に演じるヴァンダのあたりまえの女優魂。そのプレゼンテーションに刺激され戯曲に新たな着想を得ては嬉々とするトーマスの作家魂。スタジの照明をon/offするだけで戯曲の場面が変わり、戯曲のページをめくるごとにふたりの主従関係も目まぐるしく転換。スタジオ内は猛スピードで知的な興奮に満ちて行く。あとはもう分刻み、秒刻みで互いのパワーバランスが変化するスリリングな瞬間の積み重ねの連続に身を任せるだけ。男と女、ふたり芝居ならではの小回りの効いた応酬は一瞬たりとも目が離せない速度で進み続けるのだから。
 果たして、現実と戯曲の世界を行き来しながら互いに剥き出しで対峙しあうふたりの関係はどこへ行き着くのか。愛の多様さを愉しめる一作である。

キャストコメント!

稲垣吾郎
 舞台はすごく好き。ふたり芝居は台詞の量とかも多くて大変だし最初に台本を見たときはやっぱりびっくりしましたけど、本番がはじまってしまえば後はもうノンストップ! ジェットコースターのように…って、実際は僕ジェットコースターが苦手で乗れないんですけどね(笑)、でも舞台という名のジェットコースターにはぜひみなさんと一緒に乗っていきたいと思ってます。  この物語は一見ポルノ的要素もあるし、舞台だからできるギリギリの内容とも言えますが、根底にあるのは「人間って誰もがシチュエーションや相手によって違う自分になるよね」ということ。それってとても楽しいテーマですよね。このひと月、ボンテージ姿の中越さんが夢に出てくるくらい(笑)、のめり込んで稽古してきました。みなさんにもぜひこの刺激的でオトナっぽい世界に触れていただけたら嬉しいです。

中越典子
 台詞にもあるんですが「暮らしの中で得ることのできないパッション」がこの作品にはたくさん詰まっていると思います。知的で優しいけれど時折“毒気”を見せてドキッとさせてくれる稲垣さんは、本当にトーマスにぴったり。そんな稲垣さんとノンストップで台詞をかけあったり、縛ったりもして(笑)、すごく楽しく舞台に立たせてもらっています。  役としては瞬時にふたつのキャラクターを切り替える場面がたくさん出てくるのですが、そこはもうスパッと、そしてワンパターンにならないように…まだまだ完璧に自分の身体をコントロールできているとは言えなくて悔しいところもあるんだけど、そこが決まってきちんと会話ができるととても心地いいので、さらに日々高めていければと。ヴァンダとして最後までノンストップで突っ走っていきたいですね。よかったらみなさんもぜひ一緒に突っ走りましょう。

[取材・文=横澤 由香]
[撮影=引地 信彦]

公演概要

舞台「ヴィーナス・イン・ファー/Venus in Fur」

<公演日程・会場>
2013/6/8(土)〜6/23(日) Bunkamura シアターコクーン (東京都)
2013/6/27(木)〜6/30(日) 森ノ宮ピロティホール (大阪府)

<キャスト&スタッフ>
出演:稲垣吾郎/中越典子
脚本:デヴィッド・アイヴス
ブロードウェイ オリジナル演出:ウォルター・ボビー
日本版演出:ロス・エヴァンズ



2013-06-13 11:15 この記事だけ表示
 
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