前田美波里インタビュー!ブロードウェイ・ミュージカル『イン・ザ・ハイツ〜そして、僕は、歌い、踊りだす〜』[インタビュー]

 キービジュアルも公開され、4月の上演に向けていよいよ動き出したブロードウェイ・ミュージカル『イン・ザ・ハイツ』より、演出・振付のTETSUHARU(増田哲治)主演の松下優也に続き、前田美波里のインタビューをお届け。NYはマンハッタンの最北端、中南米からの移民が多く住む「ワシントン・ハイツ」で起こる悲喜こもごもを描いた物語で、ハイツのおばあちゃんとして皆に慕われるアブエラ・クラウディア役を演じる彼女に、作品に懸ける想いを訊いた。

前田美波里インタビュー

――『イン・ザ・ハイツ』という作品は、元々ご存じでしたか?
 私自身は拝見していないんですが、観た人がみんな、最高に良い作品だって言うんですよ。私が演じるアブエラも、1曲しか歌わないのに観た人の心に強く残る、すごく良い役だと聞きました。でも正直言って、出演するかどうかは、すごく迷ったんです。アメリカに渡ってきた移民が、自分の故郷は一体どこなのかを模索しながら必死に生きている、そんな生き様を表現することが、日本人の私たちにできるのだろうか、と。

――迷われた結果、ご出演を決められたのは…?
 待てよ、よく考えたら私自身、出演したことのある『ウエスト・サイド・ストーリー』だって移民の話だったじゃないか、って(笑)。それに、『イン・ザ・ハイツ』で描かれている家族の絆とか友情っていうのは、今の日本が一番必要としてるものじゃないかと思ったんです。これからの時代、日本にも外国の血を引いた子どもが多くなってくるだろうし、そういう意味でも、日本に置き換えることのできる作品だと思うようになりました。

――音楽の斬新さに注目が集まりがちな作品ですが、テーマに惹かれてのご決断だったのですね。
 そう。私が演じるアブエラは、いい仕事に就きたくても、教育を受けていないから叶わなかった。彼女が息子のように育ててきたウスナビは、アメリカンドリームを夢見た両親に連れられてNYに来たけれど、本当は国に帰りたい。彼の幼馴染のニーナは、ハイツ中の期待を背負って名門大学に進学したものの、お金がなくて退学せざるを得ない…。ただ楽しいだけではない、大きなテーマを持ったミュージカルなんです。セリフだけでは重くなりがちなテーマを、音楽と踊りによって親しみやすく訴えかけることができるのがミュージカルの良さですから、日本版もそんな作品にできたら最高ですね。

――チラシの写真はとても明るい印象ですが、このイメージで役作りをするわけではないということでしょうか。
 本番ではもっと質素な衣装を着る予定ですし、もしかしたら白髪にもするかもしれません。だから撮影の時、用意された衣装を見て私もちょっとたまげちゃった(笑)。きっとこの写真は、苦労しながらも笑顔を忘れずに生きている、彼らの心の中や夢を表しているのでしょうね。見た目はヨボヨボのおばあちゃんでも、中身はこの写真みたいに輝いている、そんなイメージカット。この笑顔は、辛さを知っている人だからできる笑顔なんです。

――現時点で、アブエラ役をどのように捉えていらっしゃいますか?
 みんなをじっと見守ってあげられるような、包容力のある女性。今回は華やかさは捨てて、思い切ってそこに徹してみようかなと思っています。私は移民とは違うけれど、ハーフとして生まれたということで、彼女には共感できる部分があるんですよね。若い時は、日本人に溶け込みたくて、外国人である父親の血を抑えよう、抑えようとしていました。私は私でいいんだ、と思えるようになるまで何年かかったか。いろいろなことを受け止められるようになった今、この役に出会えたのは、良いタイミングだったと思います。

――稽古に向けて、すでに何か準備していらっしゃることは?
 音楽はなるべく聞くようにしていて、だんだん体に入ってきました。ヒップホップについては、息子(真木蔵人さん)がCDを出しておりまして。最初は「どこがいいのやら」という感じだったのが、もうイヤっていうほど聞かされて、教育されました(笑)。ラップって、根底にあるものは実はすごく暗いんですよね。叫びだったり怒りだったり嘆きだったり、そういうのを全部詞にしている。『イン・ザ・ハイツ』なんて、特にそうですよね。

――アブエラには「PACIENCIA Y FE(忍耐と信念)」というビッグナンバーがありますが、こんな風に歌おうというビジョンはありますか?
 ヒップホップ系の歌が多い中で、数少ないミュージカルらしいナンバーです。こう「歌おう」というのはないですね、「訴えよう」という気持ちはあるけれど。そこにメロディーがあるからのっけているだけの、魂の叫びのようなものをお届けできたらと思っています。

――前田さんにも、アブエラの「忍耐と信念」にあたるような座右の銘があれば教えてください。
 「努力するだけ報われる」。人間、努力しないとやっぱり誰にも認めてもらえないんですよね。だから若い頃は、誰よりもお稽古しました。クラシックバレエなんて、もうどれだけ通ったかわからないくらい。けっこうコツコツ派なんですよ(笑)。

――これから始まる稽古、そして本番に向けての意気込みをお願いします。
 今回、初共演の方がすごく多いんです。ですからお稽古は、まず皆さんがどんな魅力的な俳優さんなのかを知って、その中で自分の居場所を探すところからですね。そこで空気を吸いながら、私のアブエラを作っていけたら。この作品は、一人ひとりが自分の役が抱えている悩みをきちっと表現して、舞台上で魅力的に生きていないと成り立ちません。どんなに辛いことがあっても、卑屈にならず、笑顔を忘れずに生きている人間がいる。そんなことを伝えられる舞台にできたらと思います。


 [取材・文=町田麻子]

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公演概要

Broadway Musical IN THE HEIGHTS イン・ザ・ハイツ

<公演日程・会場>
2014/4/4(金)〜4/20(日) Bunkamuraシアターコクーン (東京都)
2014/4/25(金)〜4/27(日)森ノ宮ピロティホール(大阪府)
2014/4/30(水)福岡市民会館(福岡県)
2014/5/3(土・祝)〜5/4(日・祝)中日劇場 (愛知県)
2014/5/10(土)〜5/11(日)KAAT神奈川芸術劇場(神奈川県)

<キャスト&スタッフ>
作:リン-マニュエル・ミランダ
演出・振付:TETSUHARU
翻訳・訳詞:吉川徹
歌詞:KREVA
出演:松下優也・Micro(from Def
Tech)・梅田彩佳(AKB48)・大塚千弘・中河内雅貴・大野幸人・植原卓也・エリアンナ・安崎求・樹里咲穂・マルシア/ 前田美波里
丘山晴己・KEN(S☆RUSH)・平田愛咲・TOMOMI・菅谷真理恵・渡部沙智子




2014-01-23 11:17 この記事だけ表示