極限の愛を情念たっぷりに描く!『FLAMENCO曽根崎心中』音楽稽古レポート[稽古場レポート]

(左より)宇崎竜童、三浦祐太朗、佐藤浩希

 近松門左衛門の『曽根崎心中』×阿木燿子・宇崎竜童×フラメンコという新鮮なミクスチャーから生まれ、2001年の初演以来、進化と変容を続けながら上演されて来た意欲作『FLAMENCO曽根崎心中』。その最新バージョンが新国立劇場にて上演される。本番に先がけ行われた公開音楽稽古では、和洋の楽器が入り乱れる生バンドの演奏に乗せてひとりの登場人物をダンサーと歌い手それぞれが受け持つという『FLAMENCO曽根崎心中』ならではのスタイルでの表現を披露。また、音楽監督・作曲を担当する宇崎竜童、徳兵衛役(踊り)で振付と演出も担当する佐藤浩希、今公演から新たに徳兵衛役(歌)で参加する三浦祐太朗が、公演に向けて意気込みを語ってくれた。

※本稽古場レポートは2014年公演時のものです。
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音楽稽古レポート

 都内のスタジオで行われた音楽稽古は、バンドメンバー、シンガー、ダンサーが一堂に会してのリハーサル。ミュージシャンはギター、ピアノ、ベース、パーカッションに加え、土佐琵琶、篠笛、和太鼓といった邦楽の奏者も。もちろん、フラメンコには欠かせないパルマ(手拍子)も揃っている。

 最初に演奏されたのは第一幕に登場するナンバー「風の噂」。お初役のダンサー・鍵田真由美のエッジの利いた感情的なダンスと、同じくお初役のシンガー・三原みゆきの強さをたたえながら柔らかさをまとった歌声の一体感によって、お初の物哀しい生き様が伝わってくるよう。

 続けて披露された第三幕のナンバー「恋の道行き 死の手本」は、まさに“死”に向かっていく男女の無念と情熱と激しい愛が混じり合った一曲。ふたりの行き場のない感情の高まりがぐいぐいと迫ってくるうねりが強烈だ。憂いの中にやさしさと静かな決意を秘めたような三浦のボーカルと共に踊る佐藤が、青年期ならではの瑞々しさがにじむパワフルなパフォーマンスでスタジオ内を激しく揺さぶっていく。

 この日披露されたのはこの2曲のみだが、いずれも凛としたピアノの響きやギターと琵琶の弦の共鳴に、打楽器と手拍子、そしてダンサーたちが踏みならす足音が重なりあうことで生まれる感情の波がほとばしる情熱的なナンバー。どこかせきたてられるようなギリギリ感も含め、近松×フラメンコの相性のよさを体感させるのには充分で、日本語の美しさを大事にした歌詞もまた、古風な中にいつの世も変わらぬ“愛する魂”の存在を立ち上がらせてくれる個性となって際立っていた。  リハーサルの様子を正面から見守っていた宇崎が「最後の盛り上がり、あともうひとつ上にいきたいよね」と、バンドにサウンド面での提案を投げかける。その横で汗をにじませながら「ここ、今は元の振付ですけど本番までに変えていきますから」と宣言する佐藤。ダンサーの動きを追いながら心情を探りつつ歌っていた三浦の表情にも、まだ多少の堅さと初々しさが垣間見えている。リハーサルは始まったばかり。まずは肩ならし、この先まだまだ互いに熟成のしがいがたっぷりとあるからな、とでも言うように微笑みを交わし合うカンパニーのメンバーたち。この、現在進行形の創作現場の空気が心地よい。本番までの切磋琢磨が楽しみだ。

▼コメント

宇崎竜童
『FLAMENCO曽根崎心中』、8年振りの東京公演、しかも新国立劇場ということで…今、ちょっと力入り過ぎてるかな(笑)。今回はキャストも変わって少し若返っていたりするし、祐太朗さんの声に合わせて透明感のあるメロディーが欲しいと思い、3曲ほどナンバーを作り替えてもいます。最近の若いミュージシャンの方はどちらかというと歌声にドライな印象を受けるのですが、祐太朗くんは役柄を歌で演じるというか、歌に情の世界があり、徳兵衛の真っすぐさ、一途さ、そして深い情念の漂う世界を聴かせてくれるので、僕らもとても創りがいがあります。佐藤くんもそんな祐太朗さんの歌を聴いて、さらに踊りへのイマジネーションも高まっているんじゃないかな。今回も命がけで取り組んでいきたいと思っています。

三浦祐太朗
今回、歌でオファーをいただいたということで…本当に身の引きしまる思いですし、とても嬉しく思っています。光栄です。今までの自分の音楽人生にフラメンコはなかったので、今回のお話しをいただいてから改めて勉強しました。12拍子が難しいですね(笑)。ただ、この『FLAMENCO曽根崎心中』は、フラメンコではあるけれどすごく和、日本的な匂いがあるんです。その日本ならではのエッセンスを生かしながら、初挑戦のフラメンコというジャンルの中にもしっかり自分の色を出して歌っていきたいです。

佐藤浩希
祐太朗さんの声は繊細で憂いがあって徳兵衛にピッタリ! 生きている中で無条件に「ピッタリ」と思うことはなかなかないですが、本当に「この人しかいない」と思えるくらいの素晴らしい歌声だと思いました。僕は10年間この作品で踊り続けてきましたが、今回はまたそうして新たな血が入って来たということで、メロディーが変わるのに合わせ、振りも新しいモノを考えている真っ最中。フラメンコはもともと歌→ギター→踊りと発展してきたものなので、やはり歌い手によって自然と踊りも変わりますからね。祐太朗さんとの出会いから、また新しい振り、いい踊りが生まれるといいなぁ…と、自分自身、期待しています。


[取材・文=横澤 由香]

公演概要


FLAMENCO 曽根崎心中

<公演日程・会場>
2014/4/2(水)〜4/6(日)  新国立劇場 中劇場 (東京都)

<キャスト&スタッフ>
原作:近松門左衛門
プロデュース・作詞:阿木燿子
音楽監督・作曲:宇崎竜童
出演:鍵田真由美 佐藤浩希
カンテ(歌):三浦祐太朗(徳兵衛) 三原ミユキ(お初) 野本有流(九平次)
バンド:横田明紀男(Fried Pride)(Gt) 鈴木尚(Gt) 斎藤誠(Gt) 大儀見元(Per) 木村まさし(B) 北島直樹(P) 村上二朗(篠笛) 黒田月水(琵琶) 前田剛史(鼓童)(和太鼓) ほか


※本稽古場レポートは2014年公演時のものです。
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2014-03-06 17:47 この記事だけ表示
 
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