シベリア少女鉄道vol.23『あのっ、先輩…ちょっとお話が……ダメ!だってこんなのって…迷惑ですよね?』 作・演出の土屋亮一さん&新顔の女優さんからお話をうかがいました![インタビュー]

(左より)小関えりか、土屋亮一、岸茉莉

卓抜なトリッキーさと究極のバカバカしさが同居する、予測不能の劇展開。一体これは演劇なのか? はたまた演劇に名を借りた壮大な笑いの実験なのか? 旗上げから15年、観客に圧倒的な興奮と脱力を同時に味あわせながら、21世紀小劇場界に独特のポジションを築いてきた劇団、シベリア少女鉄道(以下、シベ少)が4月に久々の新作公演をおこなう。題して『あのっ、先輩…ちょっとお話が……ダメ!だってこんなのって…迷惑ですよね?』……と、こんな珍妙なタイトルの芝居を作・演出するのは劇団主宰・土屋亮一をおいて他にいない。最近ではテレビ東京の人気シットコム『ウレロ☆未体験少女』やNHK『LIFE!〜人生に捧げるコント〜』などの放送作家として、ぶいぶい言わせているとかいないとか。そんな絶好調の彼が春一番の風と共に初参加の女優ふたり引き連れて、e+のオフィスにやって来た!

インタビュー

―― まず、この変なタイトル。どこか意味深な感じですが、芝居の内容とは当然関係あるんですよね?
土屋  はい。もう、そのまんまのタイトルです。それがどういうことかは芝居を観てのお楽しみということで。

―― チラシも、なんだかドキドキ感を誘うイラストですね。これも芝居の内容にリンクしてくるのですか?
土屋 この、公演のイメージビジュアルは、漫画家のふみふみこさんに依頼しました。これが出来上がるまでに、僕とふみさんとの間では意外と細かいやりとりを重ねています。ですから、それなりの意味を帯びていると思っていただいてけっこうです。

―― そして、今回は初参加のかたが多いとか。
土屋 オーディションをおこなったところ、百数十名もの方々の応募がありまして、最終的に今回は4人を選ばせてもらいました。高度な演技テクニックを持つ人も多数来てくれたのですが、結果的に残ったのは「うちの舞台に出て欲しい」「うちの舞台に合ってる」と思えた人。…なんて言うと「じゃあ、私はヘタだったのか」というツッコミが入りそうですが…。オーディション組は男性2名、女性2名。男性のうちひとりは、いままでうちにいなかったタイプ。甘いマスクの可愛い男子で…

―― おっ、イケメンですか?
土屋 …まあ、“がっかりイケメン”ですね(笑)。そして、もうひとりの男性は年長者で、かなりインチキくさい感じのする、面白い人です。

―― そして、本日ご同伴のおふたりが女性の新顔さんですよね。
土屋 はい。まず、小関さん。オーディションでは、見た目に似合わず非常にふてぶてしいエチュードを披露してインパクトがあった。それと声がキャラクターっぽくて面白いなあと。(小関嬢に)じゃあ、自己紹介して。
小関 小関えりかです。何を話せばいいんでしょうかね。土屋さんが言ったように、声が特徴的とよく言われるんですが…それくらいですかね(笑)。
土屋 …で、もうひとりが、岸さんです。彼女は、可愛らしい雰囲気でありながら、いろいろ器用に演じる部分もあり、目に留まりました。
  どうも、岸茉莉と申します。芝居を始めてからまだ日が浅いので、テクニックとか全然わからずアワアワしてるんですけど…まあ、こういう人間もいるんだってことで、そのへんを編集でうまくまとめてくれますか?

―― え…
土屋 まとめるには要素が足らなすぎる(笑)

―― シベリア少女鉄道に初参加する感想をお聴かせいただけますか。まず小関さん。
小関 文学座の研究所を今年卒業したのですが、卒業すると外にポイと放り出されてしまうんです。どうしようかと思っていた時に、ツイッターでオーディションのことがリツィートされてきて。そういうものを受けた経験がなかったので「じゃあ試しに」と、軽い気持ちで受けました。シベ少は一本も見たことがなかったんです。合格が決まってから過去作品の映像を見て、かなり不安になりました。コメディっていうんですか?こういうの私に出来るかなって。
土屋 こんなご時世にコメディなんかやってていいのかと?(笑)
小関 いやいやいや、そうではなくて。私は岸さんとは違い、器用なほうではないので、自分にコメディが務まるのかという不安が。

―― しかし文学座研究所で演技を学んできたというのは相当な強味ですよ。
小関 全然そんなことないです。いつも先生たちから怒られっぱなしでしたから。
土屋 いや、僕よりもよっぽど演技の何たるかを知ってる(笑)。彼女は、うちの劇団史上、最も演技を知ってる人間ですよ。

―― 岸さんはシベ少の芝居がどんなものか、あらかじめわかってたんですか?
  私もシベ少の舞台は見たことなかったんですが、『ウレロ』シリーズや『LIFE!』を見ていたから、土屋さんの作風はなんとなく知ってました。それで面白そうだから、オーディションを受けてみようと応募したんです。シベ少の一員として楽しい感じでやれたらいいなと思ってます。
小関 私もそうですね。さっきは不安と言いましたが、自分が楽しいと思えるようにやってゆこうと思います。
土屋 今はそう言っていても、やがてうちに出たことが黒歴史になったりするんです(笑)

―― 将来、彼女たちのプロフィールからシベ少出演の履歴が抹消されてしまうわけですね(笑)
小関・岸 いえいえいえ(笑)

―― おふたりから見て、ぶっちゃけ土屋さんはどういう人なんですか。
小関 最初に会った時、すっごい業界人ぽいなと(笑)。
土屋 まじっすか?!
小関 帽子が。いっかにもテレビの仕事してますって感じで。今まで会った人の中で一番そう感じました(笑)。
土屋 今まで会った人の中で一番…
小関 ええ、帽子が。

―― 帽子以外で何かありませんか?
小関 うーん。そうですねえ(間)…やっぱり帽子の印象ばかりが強すぎて…(笑)。

―― 岸さんは土屋さんと会ってみてどうでした?
  奇抜なお芝居を作る人だから、神経質で尖った感じのタイプなのかと思っていたのですが、実際に会ってみると意外と温和で優しそうな人でした。

―― 業界臭さは感じましたか? プンプン漂わせていた?
  あ、それはありましたね。やはり帽子が…(笑)
土屋 帽子、替えようかな…。

―― とまあ、業界臭さを漂わさずにいられないほどに(笑)土屋さんは今、売れっ子放送作家として多忙を極めておられますが、にもかかわらず劇団活動をしっかりと続ける理由、演劇にこだわる理由というのは、どういうものなんでしょうかね。
土屋 外の仕事は、演出の人が別にいて、作家チームにもチーフの人がいるので、責任が分散されている。その点、劇団のほうは100%自分が責任を負ってます。しんどいけれど全責任と引き換えに、自分のやりたいようにできるというのはやはり大きいことです。そして自分が一番やりたいのは、やはり90分なり2時間なりをお客さんに劇場で生で見ていただくという、演劇の形式でないと表現できないことなんです。ただし、外で仕事をやっているからこそ、いい形で演劇に還元されることもあります

―― と、いうと?
土屋 テレビの場合、広く色々な視線にさらされているということへの配慮が特に強くあるんです。よって、ここはこうすると分かりやすく視聴者に届く、というポイントがある。そういうノウハウを、テレビの仕事を通じて勉強させてもらってます。もちろん、笑いは分かりやすさだけがすべてではないから、尖ったものと分かりやすさを両手に持ちながら、そのブレンドを考えるようになりました。放送作家をすることで得られたのはそういうことだと思ってます。

―― ただ、シベ少といえば、パロディ的な構造に支えられている作品がこれまで多いですよね。たとえば旗揚げ公演『笑ってもいい、と思う』(2000年)は、切なく甘酸っぱい青春恋愛劇が、あろうことか『笑っていいとも!』の番組進行と完全に同期してしまうという驚愕の展開となりました。『耳をすませば』(2002年)では、3つの異なるエピソードがある時点で束ねられるなり、アニメ『アルプスの少女ハイジ』まるまる一本分の台詞に変貌してしまう、といった突飛な荒技をやってのけました。しかし、『笑っていいとも!』や『アルプスの少女ハイジ』の場合は、パロディの元ネタがいずれも国民的な番組ということで、ある程度、理解されやすい普遍性がありました。しかし、元ネタによっては世代的あるいは環境的な事情から、それを分かる人が限定される可能性もあると思うんです。そうなると、作品が特定の限られた観客にしか向き合わなくなるのではありませんか?
土屋 基本的には、真面目に進められていたはずの演劇が崩壊してゆくっていうスタイルを面白いと思っていますし、パロディも大好きなんです。ただ、元ネタのことについて言えば、きょうび誰でも知ってる共通項が存在しないご時世ですよね。それに、自分たちの間でも、同じようなパターンで演る、ということにはテレがあります。だから近年、そういう元ネタありきのパロディ劇というのは、ど真ん中に据えないでやっているつもりなんです。たとえば、2012年の『ステップ・アップ』も、特定の元ネタをすみずみまで知らないと笑えない、という作りではありませんでした。くだらなさの本質は別のところに仕込んである。だからお客さんも今後、元ネタのことは切り捨てて見ていただいたほうが楽しめると思います。もっとも、そういう見方をされてしまうのは、かつて僕がそういうことをやってきたからなのだと思いますが、これからはそういう作り方を避けてゆこうと思っているので。

―― 一方で、お客さんは様式美も好むんですよね。おなじみのところで「ヨッ。待ってました」って声を掛けたくなる(笑)。
土屋 そうなんですよ。同じパターンを喜ぶお客さんは多いんです。そこが難しいところなんです。だから、さっきの質問も意地悪だなあと(笑)。

―― 劇団を15年やってきて、変わってないことは何でしょう?逆に変わったことはありますか?
土屋 変わってないことですか。くだらないもの、なんだこれはっていうもの、今まで見たことのないもの、そういうのが好きで追求してきたというのは、旗揚げの頃から全くブレてないですね。変わったことはなんだろう。昔の公演映像とか見返してみると、拙くて「うっ」と絶句してしまうことがあるんですが、これは成長したということなんでしょうかね?

―― 最近の演劇界を見まわして、土屋さんが気になっているところとかありますか?
土屋 ナカゴーは、「えっ!何やってんの?!」と声をあげたくなるようなことを毎回続けてくれているので、とても楽しく見ています。なるべく仲良くならずに、純粋な一観客という立場で見続けていたい劇団ですね。あと、少し前になりますが、ブルースカイさんがアゴラ劇場でやっていた『音楽家のベートーヴェン』。あれは見ててすごく嬉しかったですね。以前は、ああいうタイプのくだらないナンセンスの芝居がもっと沢山あったと思うんですが。

―― たしかに最近くだらないバカ芝居は減少気味ですね。そういう時代なんでしょうか。そんな中、シベ少の新作はどのようなものに?
土屋 けっこう頭の悪い感じになると思います。今回、自分がどうしても見たいひとつの光景というかシーンというか、すごくくだらないヴィジョンがありまして、その状態に至らしめたいがためだけに全体を作っています。

―― では最後にe+をご利用いただいているお客様に、皆さんからメッセージをいただけますか。
  e+のお客様は眼が肥えていると思いますが、この際テクニックとかは脇に置いていただいて、私の新鮮な感じを見ていただけたら嬉しいです。一所懸命頑張りますので。
小関 私はシベ少を見たことがなかったんですけど、話を聞くうちに面白いと思えてきて、実際に映像でみたら本当に面白かったんです。だから、今までシベ少を見たことのない人にもきっとお楽しみいただけると確信してます。私も頑張ります。
土屋 近年では珍しく、初めて係わる人がどっと入ってきて、フレッシュな感覚や、ある種の客観性を帯びることになるのではないかと思ってます。他所の芝居では絶対に見られない、くだらないものを出せると思いますので、短い上演期間ですが、僕らのことをお忘れなく、お見逃しなく、よろしくお願いします。


[取材・文=うにたもみいち]

公演概要

シベリア少女鉄道vol.23『あのっ、先輩…ちょっとお話が……ダメ!だってこんなのって…迷惑ですよね?』

<公演日程・会場>
2014/4/16(水)〜4/20(日) 座・高円寺1 (東京都)

<キャスト&スタッフ>
作・演出:土屋亮一
出演:篠塚茜/川田智美/加藤雅人(ラブリーヨーヨー)/小関えりか/岸茉莉/雨宮生成/竹岡常吉

◎公演初日から3日間(平日の計4ステージ)にご来場のお客様には、ふみふみこ書き下ろしイラストのプリントされた「おたのしみコンテンツ入り特製クリアファイル」をプレゼント!
◎稽古期間中には劇団ホームページでスペシャルメイキング動画を配信予定。




2014-03-24 13:10 この記事だけ表示
 
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