一部新たなキャストを迎えて再演『見上げればあの日と同じ空』!平埜生成、戸谷公人、松島庄汰、久ヶ沢徹にインタビュー![インタビュー]


(左より)松島庄汰、平埜生成、戸谷公人、久ヶ沢徹

 第二次世界大戦下、自らの命を賭けて飛んだ特攻隊の若者たちの姿を描く青春群像劇「見上げればあの日と同じ空」。昨年4月に上演されたこの舞台が、一部新たなキャストを迎えて再演される。主人公・成瀬を演じる平埜生成は作品初参加。初演に引き続き登場する戸谷公人、松島庄汰、久ヶ沢徹と共に、作品への想いを語ってくれた。

インタビュー!

――お三方は初演に引き続いての参加となります。
久ヶ沢 これは、初演の楽日に一言と言われたとき、冗談っぽく言ったことでもあるんだけど。この座組の場合、観に来るのは若い女の子たちになるわけだけれども、その層に向けてこの作品を今やることの意義、そして内容がどれだけ受け入れられるのか、最初のうちは正直よくわからなかったんです。参加しながらも不安というか、大丈夫かなと思っていて。それが、若者たちが実に真面目で、真剣にお芝居に取り組み、難しい題材についてもよく勉強して。茨城の予科練平和祈念館に行って、いろいろ資料を見て、実際に特攻隊の生き残りの方にお話を聞いたとき、みんな泣いたもんな。
戸谷・松島 (うなずく)
久ヶ沢 どんなに大変だったんだろうとか、ぐっと来るものがあって。自分だって映像とかでしか知らなかったことについて、実際に体験したことのある人が目の前で語ってくれる、そのすごさがあって。その後も稽古していくうちに、そういう方たちの想いをみんなが立派に背負っていったなと思う。特攻隊の生き残りの方が舞台を観に来てくれて、カーテンコールで、特攻隊が飛び立つときの礼を客席からやってくださって、それを見てみんなまた涙で。観に来てくれたお客さんがこちらの想いをしっかり受け止めてくれたと実感できる公演で、当初の心配は杞憂に終わりましたね。そのときから再演すべきだと思っていたし、これからも末永く上演していってほしい作品だなと思っていました。
戸谷 戦争の話というと遠いことのように思えるかもしれないけれども、結局は僕らと同年代の人たちの話なので、そこにどれだけ寄せられるかでしたね。
松島 僕たちと同世代の人々にあの時代の物語をまた伝えられるんだと思うと再演は非常に楽しみでもありますし、その一方で、今の時代を生きてきた僕が、いつ死ぬかわからないという、特攻隊の人々が経験した過酷さや緊張感をどれだけ伝えられるのかなというこわさもあるなと、今回も感じますね。

――初参加の平埜さんですが、初演の舞台をご覧になっての感想はいかがでしたか。
平埜 こういう作品に出ているみんなを見て、うらやましかったですね。自分もこういう作品をやりたいなと思っていたのが、今回の話をいただいて、やったと思いました。僕は失礼ながら久ヶ沢さんの舞台を観たのが初めてだったのですが、初演で成瀬役を演じた平間壮一くんに、「あのお父さん、何者なんですか?」と聞いてしまったくらい、壮一くんと久ヶ沢さんのシーンがめちゃめちゃ印象に残りました。久ヶ沢さん演じるお父さんが、壮一くんに向かって「娘はやらん」と言うんですけれども、それが、娘を思うお父さんというものの僕のイメージにぴったりで。
久ヶ沢 僕は、成瀬(平埜)と大橋(戸谷)が取り合うさゆりの父の役で、特攻に行くまでは成瀬くんのこともすごく気に入っていて、彼になら娘を…と思っているんだけれども、特攻に行くことになって、父としても気持ちが揺らぐという。せつないですよね。そのことがなければ、相思相愛の二人として気持ちよく送り出してあげたかったわけですし。それまでも切実な話ではあるんだけれども、あのやりとりのあたりから物語がとりわけ深刻になっていくから、緩急をつけたいなと思っていて。死ぬとわかっている男に娘はやれないと言われて、うすうすわかっていた自分の死について、成瀬自身も気づくわけだし。今回、平埜くんとあの場面をできるのが楽しみで。
平埜 頑張ります!
戸谷 僕が演じる大橋と成瀬とは同級生で親友で、駅伝のチームメイトで、恋をめぐってもライバルなんですけれども、予科練に入ってからは、僕の方が上官で、階級差がでるんですね。成瀬とがっちり組む役どころなので、今回、成瀬役が平埜くんに変わるということで、同じ作品でも違ったものになると思うし、楽しみですよね。初演の際に培ったものに加えて、さらに新たなものをお見せしていきたいなと思います。
松島 僕が演じる玉置も特攻隊の一人で、飛行技術が抜群という設定なんです。彼は映画が大好きで、特攻に行く前に監督として一本映画を仕上げたいという夢をもっていて、死ぬまでにかなえたいその夢のために、訓練以外の時間は脚本を書くことに没頭して、そういうところにすごくぐっときます。映画作りが唯一の楽しみだったんだなと思うと、複雑な感情が湧いてきます。強い男だと思いますね。

――作品に臨むにあたり、平和祈念展示資料館や遊就館、予科練平和祈念館などでフィールドワークを重ねたとうかがいました。
久ヶ沢 この作品は特攻隊のことが描かれてはいるんですけれども、青春群像劇なんです。それで、特攻隊の生き残りの方と、特攻隊について研究している方にお話をうかがったんだけれども、最初は何を質問していいかもよくわからなかったんです。それが、誰かが、「彼女とかいたんですか?」と聞いて。
戸谷 それ聞いたの僕です。それまでは相手の方と距離感を感じていたんですよね。どこかに共通点がないかなと考えていて、あ、女の子の話題だ、と思って。そういうことって、時代は変わっても同じだったりするじゃないですか。
久ヶ沢 あれはいい質問だったよね。その方たちにもその時代時代で恋の淡い思い出というのがあるわけで、そういう意味では自分たちと全然変わらないんだ、と思いましたね。
戸谷 ずっと真面目な顔で話されていたのが、ぽわんと表情が変わったんですよね。
久ヶ沢 そうそう。それで、特攻隊ができる前は、予科練ってエリート中のエリートなんですよ。全国から選りすぐられた成績優秀者で、身体能力も優れていて。そうじゃないと飛行機一機を任せられない。そのためには、飛行機が操縦できて、給料もいいから家に孝行できる、そういう理由で志望してきたそうです。それが、その後戦況が変わり、人命尊重の思想から、一億玉砕へと変わっていった。みんな、そんなつもりはまったくなく予科練に入ったのに、特攻を志願するかどうか聞かれると、いやとは言えないピリピリした雰囲気があったと言うんですよね。誰か一人が俺が行く!というと、俺も俺もということになって、本当はそんなことは嫌なのに、爆弾を抱えて敵に突っ込んでいくことになったと聞いています。
松島 僕が驚いたのは、こんなに厳しい訓練をして特攻隊として飛び立っていっても、実際に敵までたどり着いたのは数パーセントで、その前に撃たれて落とされた方が多かったという…。虚しすぎると思いました。それと、飛び立つときみんな笑顔だったという話を聞いて、僕だったら泣きじゃくってしまうな…と、強さを感じましたね。その強さをちゃんと演じられるか、自分の中では、葛藤がありました。
平埜 僕は作品未経験なので、稽古場に入っていろいろ考えることになるんだと思うんですが、神風特攻隊という、非日常が日常であった世界はどんな感じなんだろうと思っています。稽古していく中で、その世界に入っていけるというのがとても興味深いですよね。みんなが言っているように、人間としては本当に今の僕たちと変わらないと思うんです。けれども、死が当たり前のこととしてあったわけで、そういう中でいったいどういう気持ちだったんだろうって、資料を調べながら考えていますし、稽古場でいろいろな考えに出会えそうだなと思っています。
松島 あの時代だって、みんなが集まれば楽しい話をしたりしていたと思うし、そういう雰囲気は作品の中できちんと出していきたいよね。
戸谷 ところどころにある、僕が演じる大橋とお父さんのやりとりは、全体的に張りつめた空気の中で気を抜けるシーンかなと思ってます(笑)。
久ヶ沢 僕としては、成瀬は娘の相手として認めているんだけれども、そこに大橋がちょこちょこちょっかい出してくる感じで。
戸谷 お父さん! って呼んじゃいますし(笑)。
久ヶ沢 君にお父さんと呼ばれる筋合いはない! という(笑)。緊迫した中で、こういう人いるよなという感じを出せたらいいよね。
戸谷 戦争の時代にだって絶対いましたよね、こういう人(笑)。めちゃくちゃ暗い話ではないんですよね。この時代、こういう生き方をしていた人たちがいたということを描いていて、それに対してどう感じていただけるかはお客様次第だし。
久ヶ沢 友達への思い、恋心、そういうものが描かれているという意味ではまったく普通の青春群像劇だよね。
戸谷 観終わった後めちゃめちゃ落ち込む作品では決してないですよね。
久ヶ沢 そう、ぐずぐずに泣いているけれども、何か希望の光が見える所があると思います。

平埜 今、「永遠の0」もヒットしていて、そういう時代背景に対する距離感が近くなってきているんじゃないかと思うんですよ。だから、「永遠の0」を観て強く感銘を受けた方は、この作品もそう感じていただけたら嬉しいなと思います。男性、女性関係なく観ていただける作品だと、初演のとき、客席で観ていた僕としては思うので、頑張ります。
久ヶ沢 客席で観ていた平埜くんがそういう風に言ってくれた上で今回参加してくれるのは力強いよね。
松島 こういう時代があったからこそ今の日本があるわけで、この時代、こう生きた人々について、この作品を通じてぜひ知って、感じてもらいたいですよね。難しい題材ではありますが、必ず何か感じるところのある作品だと思います。
戸谷 僕はタイトル通りの作品だと思うんですね。今も昔も変わらず、「見上げればあの日と同じ空」。空を見上げて悲しむ人ってあまりいないじゃないですか。どちらかというとプラスの方向になるというか。笑って泣ける話なので、最後、涙を流しているけれども笑っているみたいなお客様の表情が見られたらいいなと思います。
久ヶ沢 目の前に死があるという世界が70年前に存在したということを、舞台上からどれだけリアリティをもってお客さんに伝えられるか、それが僕たちの第一の使命だと思いますね。前回はかなり伝わったという自負があるので。観劇の際にはタオル持参をお勧めしますね。バスタオルとは言わないけど、ちょっと大きめな方がいいかもしれない。実際にご覧になったお客さんで、小さいタオルじゃ間に合わなかったっていう方がいたので。
平埜 人間についてもよく書かれていて、観客として観て心を揺さぶられた作品に出られるのがうれしいです。僕は、人と人も、何事も縁だと思っているんですが、この記事を読んでくださった方にとっては何かの縁だと思うので、ぜひその縁を大切にしていただいて、実際に劇場に足を運んでいただけたらうれしいなと思います。


[取材・文=藤本真由(舞台評論家)]
[撮影=渡辺マコト]

公演概要

『見上げればあの日と同じ空』再演

<公演日程・会場>
2014/5/21(水)〜5/25(日) 本多劇場 (東京都)
2014/5/31(土) サンケイホールブリーゼ (大阪府)

<キャスト&スタッフ>
脚本:小峯裕之
演出:及川拓郎
出演:平埜生成、戸谷公人、松島庄汰、木下美咲、溝口琢矢、伊藤直人、向野章太郎/土屋裕一(*pnish*)、久ヶ沢徹




2014-04-04 22:16 この記事だけ表示