気鋭の劇作家・前川知大の作品を蜷川幸雄が演出!綾野剛、成宮寛貴、前田敦子ら豪華キャストも注目の『太陽2068』製作発表レポート[製作発表レポート]

今年25周年を迎えた東京・渋谷のBunkamuraで、この夏、シアターコクーン芸術監督の蜷川幸雄と、劇団「イキウメ」主宰で気鋭の劇作家・前川知大の初タッグが実現することとなり、製作発表が行われた。最近ではスーパー歌舞伎IIの作・演出を手がけるなど、活動の幅を広げている前川は、身近な日常の中に異界が現れる超常的な世界観の作風が特徴。前川の戯曲が、蜷川の演出、新鮮な顔ぶれのキャストによってどのように生まれ変わるのか、興味深い公演となりそうだ。

製作発表レポート

 『太陽2068』は、2011年に劇団イキウメで上演され、第63回読売文学賞、第19回読売演劇大賞・大賞を受賞した『太陽』を、前川が蜷川のために新たに書き直した作品。バイオテロにより拡散したウイルスによって変異した「ノクス」(=若く強い肉体を長く維持し、高い知能を持つが、太陽光の下で活動できない新たな人間)と、古くなってしまった普通の人間「キュリオ」が共存する社会を描いている。

 製作発表では、蜷川作品に初出演、舞台初主演の綾野剛、蜷川作品は『お気に召すまま』以来7年ぶりの成宮寛貴、今回が初舞台となる前田敦子のほか、蜷川組常連の中嶋朋子、大石継太、横田栄司、内田健司、そしてベテラン勢の山崎一、六平直政、伊藤蘭という、個性豊かな豪華俳優たちが顔を揃えた。

■製作発表レポート
 まずは、東急文化村社長よりBunkamura25周年についての挨拶があり、蜷川、前川がそれぞれ意気込みを語った。

演出・蜷川幸雄
「渋谷の町がどんなに清潔に、高度な科学によって作られようと、そこに住むばい菌が必要なんです。ばい菌のように、また猛毒を持った獣のように荒れ狂い、人々に毒をふきかける。美しい芝居もやりますが、できるだけ迷惑になるような、世界は混濁したものと同時に成立するんだということを忘れずにがんばりたいと思います。今回はご覧の通り(六平と目が合って笑いながら)、“毒の集まり”とは言いませんが、強烈な個性が揃ったので、大変だなと思いながら、楽しみにしています。まあ体力勝負ですね。ぜひいい仕事をしたいと思います」

作・前川知大
「劇作家にとって戯曲は子供みたいなものです。戯曲の幸せというのは、たくさんの演出家と出会うことだと思うんですけど、そういう点で、いきなりすごい演出家に出会ってしまい、幸福な作品だと思っています。蜷川さんと出会うことで、今回の素晴らしいキャストにも出会うことができました。台本は、蜷川さんにお渡しすること、今回のキャストということをイメージしてかなり細かく手を入れたので、それがどんな形で立体化するのかすごく楽しみです。いろいろなな世代の人に見てもらいたい作品です」

 続いてキャスト10人が、それぞれの役の紹介の後、ひとことずつ挨拶とコメント。

綾野剛 <奥寺鉄彦:純子(中嶋)の息子。キュリオとして育ちノクスに憧れる>
「気の狂った前川さんの台本と、怪獣・蜷川幸雄さんと一緒に闘えるのが非常に楽しみです。まあ怖くもあるんですけど、とにかく毒の根源になれるように、お二人の餌になろうと思っています」

成宮寛貴 <森繁富士太:ノクスとして生まれながらキュリオに理解を示す>
「蜷川さんとは7年ぶりにお仕事をさせてもらいます。自分の中ですごく磨耗してきた部分があるとしたら、そのナイフをもうちょっと尖らせたいという気持ちで、恐ろしい蜷川さんにまた立ち向かおうと思っています。素晴らしいキャストのみなさんと共演できるのも楽しみです。舞台の上で猛毒な自分を見せられたらいいなと思います」

前田敦子 <生田結:草一(六平)の娘。キュリオ>
「お話をいただいたときは本当にびっくりしました。初めての舞台なので、とても悩ませてもらっちゃったんですけど、蜷川さんにお会いして、ぜひ違う世界に連れて行って欲しいな、と純粋に思うことができました。これから自分がどんな風に変わっていくのか、何かを見つけられるのか、すごく楽しみにしています」

中嶋朋子 <奥寺純子:克哉(横田)の姉>
「すごい刺激的な作品に、刺激的なみなさんと、そして刺激そのものである蜷川さんのもとでご一緒できることは幸せです。この幸せを堪能したいと思います」

大石継太 <金田洋次:村を捨てノクスになった医師>
「今から稽古がすごく楽しみですが、この中で蜷川さんに一番怒られるのは僕なんじゃないかと思って、ちょっと憂鬱です(笑)。蜷川さんの罵声をかわしながら、みんなで稽古していきたいと思います」

横田栄司 <奥寺克哉:純子(中嶋)の弟。事件を起こして失踪>
「経験を重ねるほどに、芝居に参加するのがだんだん怖くなってきているんですが、いい準備、いい稽古をして初日の舞台に立っていたいと思います」

内田健司 <佐々木拓海:村の少年>
「どうも、こんにちは。さいたまネクスト・シアターの内田健司です。誰だ?っていう感じだと思うんですけど、よろしくお願いします(おっとりとした挨拶に周囲から笑いが…)先ほどから、“荒れ狂った”とかいう(刺激的な)言語が出ていて、僕には似合わないんですが、なんとか食らい付いていきたいと思います」

山崎一 <曽我征治:玲子(伊藤)の夫。キュリオへの差別感情を抱くノクス>
「前川さんは数年前からずっと気になっていた脚本家。今回声をかけていただいて、ぜひやりたいと思って参加させていただきました。作品はSFチックと言われていますけど、映画『デイ・アフター・トゥモロー』に近いようなものが出せるんじゃないかと思って、すごく期待しています。しかもこのメンバーですので、とても楽しみにしています」

六平直政 <生田草一:結(前田)の父。ノクスを毛嫌いする>
「昨日、息子と映画『キャプテン・アメリカ』を見たんですけど、ものすごく面白いなと思ってね。なんで面白いのかなと思ったら、近未来の話なんですよ。今回の作品も“ノクス”と“キュリオ”っていう、昼と夜の民族の話なんですね。剛君、成君、あっちゃんという旬の俳優に、蘭さん、朋子さん、一さんもいて、チケットは、即完売だろうということなので(笑)、あとはゆっくり楽しく稽古すればいいかなって蜷川さんに言いました。あっちゃんと親子の役なので、“きらめくような親子の愛”を表現できたらいいなと思って。ねッ♪(振り向いて大きくうなづく前田)」

伊藤蘭 <曽我玲子:征治(山崎)の妻。草一(六平)の元妻>
「私は蜷川さんの舞台は3度目なんですが、いまだに初心者の感じが抜けなくて、始まるんだなと思ってドキドキしています。今回は、人間であって人間ではないような難しい役どころです。稽古場でもできないことや、わからないことたくさんあると思うんですけど、ここにいらっしゃる若い俳優さんたちの新鮮なパワーと、熟年の俳優さんたちのパワーをいただきながら、最後までつとめられたらいいなと思っています」

■記者からの質問
――キャスティングについて
蜷川「綾野君とは前から仕事をしたくて、やろうやろうと口説いていました。それがようやくスケジュールが合って実現しました。成宮君は、ほかの読み物を見ていたら“蜷川幸雄とは絶対仕事をしたくない”って(笑)。傷ついてトラウマを持っているからって。でも、出るかどうかちょっと聞いてみたら、“やる”って言うから、よかったと思って。傷は舐めてあげようと思ってます。前田さんは、事前に“秋元(康)さんが心配してる”とか間接的な声は聞こえてきたんですけど、直接お会いしたら、大丈夫と思いました。俺たちはものすごく仲良くなるか、大喧嘩するかどちらかだ、とか言いながら、まあ、きっと楽しく仕事ができると思います」

――蜷川の演出で作品が上演されることについて
前川「蜷川さんとやらせていただくことは、劇作家としてすごく光栄だし、ものすごく楽しみです。もとの台本は自分の劇団のために書いたものですから、自分の中でできる演出というのを考えて無意識にブレーキをかけてしまうところがあるんです。でも蜷川さんは僕の演出とは全然違いますし、同じ戯曲でも光が当たる場所が全然違うんだろうな、と思います。ビジュアル的なものがすごく強くて魅力的なので、そこが戯曲とうまく絡めばいいなと意識して書き直しました。SFというので少し抵抗を感じる方もいらっしゃるかと思いますが、今生きている人が共感できる人間模様が書かれているので、ぜひいろいろな方に見ていただきたいと思います」

――舞台初主演について
綾野「主役であることで何か気負うということはとうに捨てたので、今そういう感覚はないです。単純に、挑戦できる幅が広がるのであれば、主役ということをあえてポジティブに使えたらいいなと思っています。成宮さんは過去にも蜷川さんの舞台をやっているので、胸を借りられる部分はたくさんあるだろうし、前田さんは僕と一緒で、蜷川さんの舞台は始めてなので、一緒に奮闘できたらいいなと思います。面白がってもらって、自分の中にあるものをおもちゃのように扱って欲しいですね。そのほうが…。(急にニヤリとして)フフッ。そのほうが…言葉にするのはやめときます」

――蜷川演出作品が初めての綾野、前田にアドバイスは?
成宮「そうですね…。(蜷川のほうを見て苦笑しつつ)アドバイスなんてないですよー。そんな。そう、蜷川さんのそばにね、あまり硬いものを置かないようにスタッフに言っておくことでしょうか。自分自身も精一杯のところで挑むことになると思います。蜷川さんと同じ熱で負けないように闘って、言葉ではなく、気持ちでつながれたらいいな、と思います。前田さん、綾野剛君、みなさんと一緒に作っていければいいなと思っています」

――初舞台に向けて今の心境は?
前田「舞台って多分みなさんとのコミュニケーションがすごく必要なのかなと思うので、私はまずそこから始めたいと思います。みなさんと仲良くなるところから。じゃないと自分らしくいられないのかなと思うので。でも父親役の六平さんにお会いしたら、少し楽になりました(前田が笑いながら後ろを振り向くと、六平は「大の仲良しだよ!」とニッコリ)

 取材陣が多い中、初舞台とあってか緊張気味の前田を、父親役となる六平がリラックスさせて盛り上げ、終始ムードメーカーとなっていたのが印象的な会見だった。

 前川の独特の世界観が、蜷川の手によってどう表現されるのか、また綾野、成宮、前田ら若手俳優が、六平、伊藤らベテランの胸を借りて、どのように舞台で花開くのか、見どころの多い公演となりそうだ。


 [取材・文=郡司真紀]
[撮影=平田 貴章]

公演概要


Bunkamura25周年記念
太陽2068

<公演日程・会場>
2014/7/7(月)〜8/3(日) Bunkamura シアターコクーン (東京都)

<キャスト&スタッフ>
作:前川知大 演出:蜷川幸雄
綾野 剛/成宮寛貴/前田敦子/中嶋朋子/大石継太/横田栄司/内田健司/山崎 一/六平直政/伊藤 蘭 ほか


2014-05-13 19:41 この記事だけ表示