まもなく初日!稽古場レポート『見上げればあの日と同じ空』再演[稽古場レポート]

 かつて、死ぬために空を飛ぶことを余儀なくされた若者たちがいた――。第二次世界大戦中、“神風特攻隊”と呼ばれた若者たちの恋と友情を描く「見上げればあの日と同じ空」。昨年上演された舞台が今年、一部新キャストを交え再演される。初日を二週間後に控えた稽古場を訪れた。

稽古場レポート

 1945年、夏。大学陸上部、そして恋のよきライバルでもあった成瀬(平埜生成)と大橋(戸谷公一)は、九州の航空基地で再会する。お互い、死ぬために飛ぶ訓練をする身となった二人だが、恋の相手さゆり(木下美咲)を成瀬に託した気持ちだった大橋としては納得が行かない。成瀬の方はといえば、死にゆく身が故、さゆりへのやりきれない思いを抱えていた――。この二人に、ナレーター的役割の渡辺(溝口琢矢)、映画好きの玉置(松島庄汰)、明るい小原(伊藤直人)、妹思いの永島(向野章太郎)らが絡み、死と向き合う青春を描き出す。上演時間約二時間、場面場面の転換はテンポよく、くすぐり的ギャグもふんだんに盛り込まれ、決して深刻一辺倒ではない作品だ。
 今回、成瀬役を務める平埜は、8月の“NINAGAWA×SHAKESPEARE LEGENDT” 「ロミオとジュリエット」ティボルト役での出演も発表されたばかり。生き生きとナチュラルで、まっすぐなものを感じさせる一方、明るい笑顔の裏にどこか翳りのある思いつめた表情も見せ、死への覚悟を表現する。幼なじみで、成瀬に思いを寄せるさゆり役の木下も、今回が作品初登場。クラシックで落ち着いたたたずまいの中に、死に向かう者を愛する者の静かな覚悟を感じさせ、平埜とのやりとりでは、男と女の覚悟がぶつかり合う。キャストの中で紅一点、清涼剤的存在だ。
 大橋役の戸谷は、さわやかなイケメンながらも、さゆりへのボケ風味の熱い勘違い横恋慕ぶりがおかしい。さゆりの手紙を手で撫で、その字の美しさを愛でるシーンは爆笑もの。初演に引き続いての登場で、役が手の内に入っている感がある。渡辺役の溝口はきらきらと必死な目が印象的。松島演じる映画好きの玉置をめぐるエピソードは涙を誘う。小原役の伊藤の明るさと滑舌のよさが光り、妹を守る一心で軍人気質を貫く永島役の向野には、思いつめた切迫感がある。本番に向け、それぞれさらに熱量を増し、キャラクターを粒立てていけば、さらに熱き青春が描き出されることだろう。
 皆が所属する分隊の隊長、小笠原役の土屋裕一は、渋く重みのある声に迫力がある。冷酷な上官に見えて、彼が実は抱える思いにも注目だ。さゆりの父高部役の久々沢徹が、アドリブをふんだんに交えてのやりとりのうちに、ベテランならではの落ち着きを作品に与えていく。


[取材・文=藤本真由(舞台評論家)]


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公演概要

『見上げればあの日と同じ空』再演

<公演日程・会場>
2014/5/21(水)〜5/25(日) 本多劇場 (東京都)
2014/5/31(土) サンケイホールブリーゼ (大阪府)

<キャスト&スタッフ>
脚本:小峯裕之
演出:及川拓郎
出演:平埜生成、戸谷公人、松島庄汰、木下美咲、溝口琢矢、伊藤直人、向野章太郎/土屋裕一(*pnish*)、久ヶ沢徹

2014-05-14 15:38 この記事だけ表示