人種を越えた音楽と愛の力を描くブロードウェイ・ミュージカル『メンフィス』 に 山本耕史が主演![インタビュー]

 トニー賞4冠に輝くブロードウェイ・ミュージカル、『メンフィス』が来年初頭、日本で初めて上演される。1950年代のメンフィスで、音楽を通じて人種差別に風穴を開けた実在のDJの半生を、デヴィッド・ブライアン(ボン・ジョヴィ)の心躍る音楽にのせて描いた作品だ。いかにもアメリカらしい題材だけに、翻訳上演のニュースを聞いた時には意外な気がしたが、キャストを知って納得。山本耕史と濱田めぐみなら、説得力ある日本語版を成立させてくれることだろう。白人でありながら、黒人専用のナイトクラブから流れてくる音楽と歌手のフェリシア(濱田)の歌声の虜になるDJ、ヒューイを演じる山本に訊いた。

人間が作ったルールに、人間のソウルが勝る物語

――『メンフィス』という作品のことは元々ご存じでしたか?
 観たことはないんですけど、周りから「カッコいい」という噂は聞いていました。それに出演することになってから、僕の演じるヒューイ役を過去に、『RENT』のオリジナルキャストだったアダム・パスカルもやっていたと知って。『RENT』のメンバーとはこれまでも作品がかぶることが多かったので、今回も自然と僕に声がかかったのかなと思いました。ただ僕は、稽古に入る前にいっぱい調べるタイプじゃないので、まだ作品のことはよく知らないです(笑)。だって稽古場で立ってみないと、何も分からないですから。


――ということは、台本や音楽もまだ…?
 全部はまだですけど、大体つかめてますよ。人間が作ったルールに、人間の感性とかソウルが勝っちゃう、という作品だと感じています。要するにテーマは愛で、人種差別が始まったのもきっと原因は愛なんだけど、そこからいがみ合う人間同士の間でルールが生まれて、でもそれをまた別の愛が中和させる。白人と黒人という二つの「主流」の真ん中に、白人でありながら黒人音楽や黒人女性を愛するヒューイという「亜流」の人間が登場して、その亜流がやがて主流になる瞬間を描いた作品なんじゃないかな。主流と亜流って、常に行ったり来たりしていて、それが歴史を作っているんですよね。

――「亜流」であるヒューイ役について、もう少し詳しく教えてください。
 ブラックミュージックを公の場で流すことが禁じられていたなかで、勇気をもってそれを流したDJ……いや、勇気というのはちょっと違う気がするな。それよりももっと、ブラックミュージックを愛するがゆえの情熱に動かされて、「絶対流したほうがいいでしょ!」って信じて引っ張っていった人という感じがします。でもキャラクターとしては、カッコいいヒーローというよりは、ちょっとドンくさい(笑)。細かい設定はまだ考えていませんが、ちょっと残念だけどなんか愛せる、みたいな可愛らしさのある役かなと今は思っています。


――そんなヒューイと山本さんの間に共通点はありますか?
 うーん、まあ、共通点なくてもやらなきゃいけないからね(笑)。僕じゃない人を演じるわけだから、共通点は別になくてもいい。俳優にもいろんなタイプがあって、役を自分に寄せる人もいるけど、僕は自分を捨てて役に寄っていくから。役と自分との共通点って、よく聞かれる質問ですけど、いつもけっこう無理やり探してるんですよ(笑)。

――「自分を捨てている」のに、どんな役を演じていても自然というか、全く無理がないように見えるのですが、そこには何か極意があるのでしょうか?
 いやいやそんな。でもまあ、自分の「こうしたい」「ああしたい」じゃなく、周りの「こうなってほしい」を感じることなのかな。周りとのバランスを見ながら、ガーンって前に出たほうがよければそうするけど、ここは引いたほうが効果的だなと思ったら前には出ない。例えば一直線で突き通す役が他にあれば、そこに僕も一直線で対抗するんじゃなく、グラウンドを広げて迎えるようなイメージというか。一直線の人物より、どこに向かっているか分からないほうが、観てるほうとしても最後まで引き付けられますよね。今回のヒューイも、一直線の正義を持った人たちの間にふわっと存在する役だから、そういう意味ではすごく魅力的だなと思います。

――これからそうしたバランスを一緒に探っていくことになる、演出のエド・イスカンダルさんや共演者の皆さんの印象を聞かせてください。
 今回は、こんなに知らない人ばっかりの作品はないっていうぐらい、初めての方が多いんですよ。でもだからといって構えたりすることは、全くないですね。外国人の演出家だと「どうしたらいいんだ」みたいになる人も多いみたいですけど、僕は別に、普通(笑)。俳優として普通に稽古場で歩き、発していくので、演出家にも普通に演出し、質問に答え、修正してもらえたら、というだけです。キャストでは、ちゃんと共演したことがあるのはジェロぐらい。2年前に僕が演出・主演した『tick,tick…BOOM!』に出てもらったんですけど、何にも左右されず、全てを自分で判断する人なんです。こういう作品に必要な感覚を持った人だと思うので、共演が楽しみです。

――人種差別問題を描いた作品を、日本人が日本でやる難しさについては、どのように感じていらっしゃいますか?
 確かになかなか日本には根付かない、というかそもそもない問題ですよね。1950年代のアメリカを描いてるというのは、要するに日本で言えば、「太平洋戦争を忘れるな」っていうテーマの舞台と同じことかなと思うんですよ。つまりはアメリカ国内の歴史を描いた作品だから、僕らがどんなに勉強して突き詰めたところで、絶対にリアルには演じられない。だから今の僕が感じる、今の僕たちが捉える『メンフィス』になればいいんじゃないかと思ってます。観た人が、難しいことは抜きに「カッコいいね!」って思える舞台にしたいですね。

[ 取材:文=町田 麻子]
[ 撮影=渡辺 マコト]

山本耕史さんにインタビュー ブロードウェイミュージカル「メンフィス」

公演概要

ブロードウェイミュージカル「メンフィス」

<公演日程・会場>
2015/1/30(金)〜2/10(火)
赤坂ACTシアター (東京都)

<キャスト&スタッフ>
出演:山本耕史/濱田めぐみ
ジェロ/JAY’ED/吉原光夫
原 康義・根岸季衣 他
脚本・作詞 ジョー・ディピエトロ
音楽・歌詞:デヴィッド・ブライアン
演出:エド・イスカンダル

2014-09-26 15:09 この記事だけ表示