NODA・MAP第19回公演『エッグ』に挑む仲村トオル インタビュー[インタビュー]

 勝手に寡黙な人だというイメージを持っていたが、聞かせ上手、例え上手だ。難解とも言われるNODA・MAPの作品について、こう表現した。

「初演の時のインタビューで、似たようなことを言った記憶があるんですけど……。ある美術館のある部屋に入ったら、入り口で羊の絵だと思ったものが、正面に回るとライオンに見えて、出口から振り返って観ると人間の絵だった。ところが、よくよく観ると実は地図だった、そういう作品なんじゃないかって」

「今は恐ろしさの方が多いけれど。」 作品に挑む仲村トオルの意気込みをきいた。

 NODA・MAPを観たことがある人なら、思わずうなずく言葉だと思う。特に一昨年、上演された『エッグ』は、その傾向が顕著な舞台だった。野田秀樹が作・演出した壮大な物語は、工事中の劇場を見学する修学旅行の生徒達とガイドの賑やかな会話から始まり、60年代から70年代に大活躍した劇作家が遺したという幻の戯曲が出てきたところからはじまり、エッグという名の架空のスポーツ競技や、人気シンガーソングライターのコンサートの熱狂、そこからさらに、時間と空間を飛び越えて、想像もつかないところへとこの物語は展開していく。脳内の離れた場所にある神経を次々と刺激され、イメージを追いかけるうちに歴史の暗部にたどり着くような内容だったからだ。『エッグ』でNODA・MAPに初参加した仲村は、どんな思いで、この嵐の中にいたのだろう。 「さっきの地図の話で続けるなら、それは、秘密基地の場所が記されていたり、獣道まで細かく描かれていたりする緻密なもので、僕がすべてを正確に伝えるなんてとても無理だと考えていました。でもお客さんが、その場ではわからないけど、僕らが渡した地図をお土産として持って帰って、ある日突然、秘密基地の場所に気付くとか、すごく大事な獣道を発見するとか、そういうことがあるかもしれない。そんな感覚でやっていたような気がします」

 仲村が演じたのは、前半ではエッグのベテラン選手、後半では物語の中枢に携わっていた粒来幸吉という男性。

「自分が演じた人物について誰かに“あいつはなぜこんなことをしたの?”と聞かれたら、1番説明できる人間でありたいなと思うほうが多いですけど、たまに“それ、俺も全然わからないんだよ”と答えようと感じる役もある。でもそのつもりでやっていたら、ある瞬間に“あれ、もしかしてこういうことなのか?”と気付く場合もあるからおもしろいんですけど(笑)。粒来に関しては、“ひとりの死よりも大勢を助ける”というせりふがあるんですが、世界の未来のためなら少々の犠牲者が出るのは仕方ないという彼なりの正義を信じていた。ただ、そのせりふひとつを取っても、初演の時に僕が考えていたよりずっと多くの情報量があったんだってことを、今になって思います。もちろん、すべてを理解したり把握したりしようと思うこと自体が間違いの大きな作品ですけど、作品についても人物についても改めて考えてみたい」

 仲村のその願いを叶えるように、全キャスト初演のままという奇跡的な形で『エッグ』の再演ツアーが決定した。そのスケジュールにはなんと、パリ公演も含まれる。仲村、妻夫木聡、深津絵里、野田秀樹、橋爪功らの演技を観たパリ国立シャイヨー劇場のディレクターがぜひにと招聘し、6ステージの公演が組まれている。

「これは僕、他人事だったら無謀なチャレンジだって言うかもしれません。だって、相当難しいですよね。日本のお客さんにとっても大変な量の情報をすごいスピードで伝えているのに、それをフランスのお客さんに伝えられるのか。言霊みたいなものがあったとしても“それを誰がフランス語に!?”と思いますよね(笑)。だから今のところ恐ろしさのほうが大きいですけど、でもどこかで“この人達と一緒だから、もしかしてそれができたりして”と思えるチームなんです。野田さんを始め、心強いメンバーばかりが揃っていて、こんな無謀なチャレンジだけど“あれ? 伝わっちゃったよ?”という瞬間があるかもしれない。もしあったら、それはやっぱり感動するだろうし、そこを目指したいなって思えるチームなんですよね」

 そんな人達が使い込んだ地図は、初演を観た人にはさらに緻密で雄大な風景を、初めて観る人には秘密基地や獣道への楽しいアクセスを届けてくれるに違いない。

[取材・文=徳永 京子]
[撮影=二石 友希]

公演概要


NODA・MAP 第19回公演『エッグ』

<公演日程・会場>
2015/2/3(火)〜2/22(日) 東京芸術劇場 プレイハウス (東京都)
2015/3/26(木)〜4/8(水) シアターBRAVA! (大阪府)
2015/4/16(木)〜4/19(日) 北九州芸術劇場大ホール(福岡)
※北九州公演はイープラスでのお取扱いはございません。

<スタッフ>
作・演出 野田秀樹
音楽 椎名林檎

<キャスト>
妻夫木聡 深津絵里 仲村トオル 秋山菜津子 大倉孝二 藤井隆 野田秀樹 橋爪功




2014-11-13 11:19 この記事だけ表示
 
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