会見&観劇レポート!ブロードウェイミュージカル「シカゴ」宝塚歌劇100周年記念 OGバージョンは大阪・愛知・東京凱旋公演へ![製作発表レポート]

 11月1日、東京国際フォーラムホールCにて、ブロードウェイミュージカル「シカゴ」宝塚歌劇100周年記念 OGバージョンが開幕した。世界中で上演されているブロードウェイ・ミュージカルの傑作を宝塚出身者で上演しようという意欲的な試みだ。大阪、愛知公演を経て、12月には同じ劇場で東京凱旋公演も行なわれる。

プレスコール

 東京公演初日を前に開催されたプレスコールでは、「シカゴ」の代表的なナンバーが次々とキャストを替えて上演された。「シカゴ」の象徴ともいえるオープニングの「All That Jazz」をかっこよく歌い踊ったのはヴェルマ役の湖月わたる。続いてビリー役の峰さを理が、「All I Care About」をたっぷりと歌い上げる。「We Both Reached For The Gun」では、ビリー役の姿月あさとがロキシー役の朝海ひかるを膝に乗せ、シンギング腹話術を披露。男女の声の差を2オクターブつけて歌い分けるのは、「Dancin' Crazy 2 」(2012)で「シカゴ」の抜粋バージョンを上演した際、ビリーを世界で初めて女性として演じた姿月が考案した世界初の技だ。「Roxie」では、モノローグに続いて朝海が自らのファンタジーをコケティッシュに歌い踊る。一幕ラストの「My Own Best Friend」では、共にこのナンバーが好きだと語っていたヴェルマ役の水夏希とロキシー役の貴城けいが、それぞれのエゴを歌いながらもハーモニーを響かせる。

 二幕から上演されたのは「Razzle Dazzle」と「Nowadays」〜「Hot Honey Rag」〜「Finale」。「Razzle Dazzle」を歌うビリー役の麻路さきは、大きな手を生かしてナンバーのエッセンスを粋に表現。作品をしめくくるシークエンスを披露したのは、ヴェルマ役の和央ようかとロキシー役の大和悠河。全身ではじける大和を、2008年にもこの役を経験していて落ち着きを感じさせる和央が受け止め、楽しいコンビネーション。どのキャストもそれぞれ異なる魅力を発揮しており、公演への期待を大いに抱かせるパフォーマンス披露となった。

囲み会見

 プレスコールに続いて行なわれた囲み会見に登場したメイン・キャスト9名の主なコメントは以下の通り。

峰さを理 いよいよ初日が開くという緊張感とわくわく感とがわき起こってきました。ビリー役の3人共、振付家のゲイリー(・クリスト)さんに「これだけ羽根の似合うビリーは初めて見た」と言っていただいて。ただ、3人共、背中にオヤジの哀愁があり、オヤジ化してきたなと(笑)。ゲイリーさんはどの通し稽古を観ても「ファンタスティック!」、そしてとにかく楽しんで舞台をやるようにとおっしゃってくださいました。ビリーはさすが弁護士だけあってよくしゃべる役ですが、いかにとうとうとしゃべれるか、そして周りに負けないよう、しっかり大人の男としていたい、それが理想です。

麻路さき 3人共何年かぶりの男役で、同じ楽屋にいて、みんな男っぷりが上がってくるものだなと。タイムスリップして昔に戻ったような気持ちで、それでいて「シカゴ」という新しい作品に取り組んでいるので、現役時代の初日が開く前のようなわくわく感が甦ってきました。体当たりでくるこの女性陣を相手にどこまでやれるか、みんなナチュラルに自分らしさを出してきているので、対峙できる男でいたいですし、楽しいミュージカルですので明るくやりたいです。

姿月あさと ブロードウェイをはじめ世界各国で上演されてきた中で、女性だけの「シカゴ」はこの公演が初めて。私たちの「シカゴ」がいよいよ始まったという気持ちです。宝塚時代は与えていただくのが低い音域でしたが、退団してから高い音域も出せるようになったので、男性ではできないこと、女性ならではというところで、腹話術のシーンで2オクターブ差を提案して、おもしろいねと言っていただいたのでトライしてみたのですが、挑戦してよかったと思っています。宝塚100周年ということで企画されたこの作品ですが、宝塚も次の100年に向かっていかなくてはなりませんし、私自身、女優、ボーカリストとして進化していく自分を見ていただきたいです。

和央ようか 今日プレスコールでやらせていただいた最後の場面は明るく楽しくにぎやかにと思いましたが、とても緊張しました。ヴェルマという女性が本当に大好きなので、どう魅力的に演じられるか、楽しみです。フォッシー・スタイルのダンスは本当に独特で難しいですが、とても素敵ですし、いい勉強になります。「I Can't Do It Alone」はロキシーに認めてもらいたい、楽しんでもらいたいというシーン。劇中では無惨な言われ方をしますが、楽しんでもらえるものを目指してやりたいです。

湖月わたる 今回トリプル・キャストということで、リハーサルも客席から観る機会があり、宝塚100年の歴史と「シカゴ」がコラボレーションしているのを目の当たりにして本当にエキサイティングな経験でした。今日もいい緊張感の中でパフォーマンスできました。フォッシーの振りのシンプルさとニュアンスの魅力にまたとりつかれた感じです。衣装はちょっと丈が足りのうございまして、踊ったら大変なことになりそうだったので、ブロードウェイから取り寄せました。いろいろなことがあってもへこたれず、自分らしく生きる道を前向きに突き進むヴェルマにとても魅力を感じるので、自然体に楽しく演じられたらいいなと思っています。

朝海ひかる リハーサルの時間がタイトだったのですが、記者の皆様の前で演じさせていただき、初日の緊張感を一つ手前で味わえていい準備期間になりました。今回、結婚している役ですが、結婚しているのってこんなに幸せな気分なんだと思ってうれしくて、結婚指輪をいじっています。そこを見てください。

貴城けい プレスコールで改めていいナンバーがたくさんあるなと感じたので、この緊張とわくわく感、ドキドキ感を保ち続けて、皆様に楽しんでいただけたらいいなと思っています。トリプル・キャストなのでそれぞれの役作りも違いますし、それぞれの組み合わせでもまた変わっていくので、周囲のキャストが変わることによって私のロキシーも変化していくところを観ていただけたら、2倍も3倍も楽しんでいただけると思います。

水夏希 「I Can't Do It Alone」のコケティッシュな感じ、特にヘビの箇所を観ていただきたいと思い、力を入れてやってきて、自分自身も楽しんでいます。お稽古場から何もかもがブロードウェイ・スタイルで普段と違うことも多く、舞台に来てからもさらにいろいろと違うことがありました。いかにいろいろとキャッチしていけるか、そして緊張感もありますが、いい舞台をお見せできるよう頑張りたいです。

大和悠河 今日は最後の場面の歌と踊りをさせていただきましたが、出る前は緊張しました。舞台に出てスポットライトを浴びたら、宝塚時代もスポットライトはまぶしいと思っていたのが、今日は特にまぶしく感じて。でも踊っているうちに楽しくなり、すごくわくわくしてきたので、この気持ちを大切に演じたいです。「Roxie」のモノローグはやっていて一番楽しいシーン。ロキシー役の3人が3人共全然違う感じになる場面なので、そこをぜひ観ていただけたらと思います。

観劇レポート

姿月ビリー×湖月ヴェルマ×朝海ロキシー(11月2日12時半の部)
 「Dancin' Crazy 2 」(2012)で「シカゴ」の抜粋バージョンを初めて上演した際と同じ組み合わせ。姿月ビリーは"manipulate(操る)"の一語がまざまざと浮かぶような舞台で、すべてを動かしているのはビリーであるという作品構造を具現化する。「男役ではなく、男を演じたい」と語っていただけあって、宝塚の現役時代とただよう雰囲気も大きく異なり、攻撃的でハードな男性像。それだけに、「We Both Reached For The Gun」の、2オクターブ差をつけて男女の声を歌い分ける腹話術では、男性の姿をした姿月自身が本来もつ女性性が、膝の上に乗せたロキシーに仮託して表現されてくる妙味がある。「Razzle Dazzle」はニヒルでシニカルかつ妖しいムード満載。派手なことをやれば客の目はごまかせる――作品のもともとのクリエイター、ボブ・フォッシーが、ショービジネスのアイロニーと真実とをこのナンバーにいかに忍ばせたか、感じ入らずにはいられない。

 湖月ヴェルマは長身の体躯もあり、見た目からして“世界最強"の趣。オープニングの「All That Jazz」でも女豹のようにワイルドな魅力を発揮し、姐さん! ついて行きます! と思わせる迫力がある。それでいて、ロキシーにたびたびしてやられてしまうドジな姿に、頑張って! とエールを送らずにはいられない。ダンサーとして定評がある朝海ロキシーは、フォッシー・スタイルの髄を集めた「Me And My Baby」でのダンスの軽快さ、小気味よさが光る。周囲が抱く小悪魔的イメージを、そう見えるならそれでいいわと一身に引き受けているような、どこか男前な魅力のあるロキシーだ。

麻路ビリー×水ヴェルマ×貴城ロキシー(11月3日13時半の部)
 芝居の巧さが光り、エロティックなムードただよう組み合わせ。麻路ビリーは、「We Both Reached For The Gun」の腹話術が実に見事。口が動いていない様にぜひ注目されたし。「Razzle Dazzle」でも手の美しい動きが巧みで、その大きな掌の上で、キャストのみならず観客も転がされているかのような感覚が気持ちよい。セクシーないでたちの周囲の女性陣に向けるまなざしや、すべてを包み込むような雰囲気が、麻路ビリーが女性に対して博愛主義者であることを感じさせる。饒舌な中に次から次へと思考が回り、その饒舌に自らも酔う。弁護士という職業に人がどこか抱きがちなある種のうさんくささも体現、ビリーらしいビリーである。

 筋肉質かつエレガント。水ヴェルマには、1996年のロンドン初演でこの役を演じて好評を博したウテ・レンパーや、日本でも艶姿を見せたアムラ・フェイ・ライトに通じる魅力がある。肩回りなど実にがっちりしていながらも、いや、がっちりしているからこそ繰り出せる優美な動き。「Velma Takes A Stand」での椅子に向かっての腕立て伏せなど、スピーディかつ流麗。自嘲のトーンもいかにも外人女性らしくカラッとしており、そこに女性としてのかわいらしさもふわっと加わる。貴城ロキシーは、女性の武器を巧みに用いることのできるしたたかな女性像を、演技力で巧みに構築。周りとの芝居も間合いが絶妙で、歌声にも表情がある。そして、ときにドキッとしてしまうほど女性としてエロティック。セクシー実力派美人女優、開花である。声質がぴったりなのか、水ヴェルマと貴城ロキシーのハーモニーが心地よい。

峰ビリー×和央ヴェルマ×大和ロキシー(11月7日13時半の部)
 よき時代に宝塚のトップスターとして育てられた者がもつ舞台人としての大らかな魅力がただよう峰ビリー。羽根をもったガールズに囲まれる「All I Care About」でも馥郁たる香りをふんだんにふりまき、ビリーが自らを“ビッグ・スター"と語るのにも大きく頷ける舞台姿だ。“公明正大"のモットーを口にするとき、空に言葉を浮かび上がらせるような手の動きも印象的。いたずらっ子っぽい茶目っ気で周囲をかき回して自分のペースにもっていく感のある、それでいて渋いビリーである。

 2008年にもこの役を演じている和央ヴェルマは、歌、踊り、芝居とも役柄がさらに深く手に入った感があり、その上で女性としての魅力が増している。プライドで守りに守った心の内のナイーヴさを、ぎりぎりの瞬間にはっとのぞかせてしまう、その様が美しい。必死に歌い踊る「I Can't Do It Alone」も、しなやかな魅力いっぱいである。これまでさまざまな人物の演じるロキシーを観てきたが、ロキシーってこういう人だったんだ!と目を拓かされるのが大和ロキシー。何の計算も打算もない、状況状況に応じて必死に生き抜こうとする本能が、生のきらめきとなる。天真爛漫、天衣無縫、大和悠河なのかロキシーなのかわからなくなってくるほど自然体だ。突拍子なく飛び出す魅力、美貌ながら繰り出す顔芸がつまった「Roxie」モノローグも楽しさいっぱい。「Nowadays」〜「Hot Honey Rag」も、はじけまくる大和ロキシーを、和央ヴェルマが包容力で受け止めるというコンビネーションの妙がある。

 トリプル・キャストの舞台を支えているのが、ロキシーの夫エイモス役で全公演出演している磯野千尋。異なる魅力をたたえたキャストの演技をきっちり受け止めて返し、それぞれに違った表情を見せる。ソロのビッグ・ナンバー「Mister Cellophane」でも、その飄々とした素朴な味わいが心に残る。

 星奈優里と蒼乃夕妃、二大セクシーダンサー元トップ娘役も全公演に出演。腰を左右に揺らしながら舞台前方へと迫り来る「All I Care About」は、二人の色っぽい魅力全開である。星奈は硬質ながらもしなやかな踊りにエロティシズムを香らせ、母国語及び「ムザイ」しか話せないハンガリー人女性ハニャック役を演じては大ボケ演技が笑いを誘う。“ハンガリアン・ロープ"を披露する際の緊迫感は、作品のムードをきっちり変える効果大。蒼乃は「地獄に落ちろ!」と毒づきまくるゴー・トゥ・ヘル・キティ役に扮して奔放な魅力を発揮。図抜けた身体能力から繰り出すのびやかなダンスで発散型のエロスを放ち、星奈と好対照を成す。

 看守ママ・モートンは、初風諄とちあきしんのダブル・キャスト。「ベルサイユのばら」の初代マリー・アントワネット、ソプラノの女王のイメージの強い初風が、清濁併せ呑むママ役でイキのいいパフォーマンスを見せる。ソロ・ナンバー「When You're Good To Mama」での、一つ一つの語句の奥深い響かせ方が魅力的だ。ちあきの歌声にもブルージーな味わいがある。女性ながら男性のフォッシー・スタイルのダンスに果敢に挑戦中のジェントルメン(珠洲春希・牧勢海・桐生園加・真波そら・大凪真生・祐澄しゅん・美翔かずき・香音有希・鳳樹いち・光海舞人)には盛大な拍手を送りたい。殺されてしまう間男フレッド・ケイスリーを演じるのは、今年宝塚を退団したばかりの香音有希と美翔かずき。香音はがっちりとした体躯も生き、裁判の場面でのコミカルな演技にボケの魅力を大いに発揮。美翔はチャラ男ぶりが楽しく、男役度がさらに増したかのよう。宝塚では楚々とした魅力を発揮することが多い元娘役陣が、迫力いっぱいのレディースとして登場しているのも味わいがある(舞城のどか・美鳳あや・神麗華・夢華あやり・稀鳥まりや・麗百愛)。小柄な美鳳あやが、「Cell Block Tango」で隣にいる長身の湖月ヴェルマに勝るとも劣らない凄みを発揮している。

 そして、宝塚出身者に交じった“黒"一点、メアリー・サンシャイン役ですばらしい舞台を見せているのが、ソプラニスタの岡本知高。コメディセンスの光る演技は無論のこと、歌声だけで笑いの取れる芸達者ぶりである。女性たちが演じるビリーが、“彼女"の手をとって口づけるとき、そこに倒錯美が生まれる。

 今後、大阪・愛知・東京凱旋公演と、ビリー×ヴェルマ×ロキシーの組み合わせも変化していくことで、舞台にもさらなる活気が期待される。

[ 取材・文=藤本真由(舞台評論家)]
[ 撮影=宮川舞子/岩村美佳/引地信彦]


公演概要


ブロードウェイミュージカル「シカゴ」宝塚歌劇100周年記念 OGバージョン

<日程・会場>
2014/11/19(水)〜11/30(日) 梅田芸術劇場 メインホール (大阪府)
2014/12/4(木) 刈谷市総合文化センター 大ホール(愛知県) <追加公演>
2014/12/5(金)〜12/7(日) 刈谷市総合文化センター 大ホール(愛知県)
2014/12/10(水)〜12/19(金)東京国際フォーラム ホールC (東京都)
※12/13(土)12:30開演は【e+貸切公演】です(チケット発売中!)

<キャスト&スタッフ>
出演:峰さを理、麻路さき、姿月あさと、和央ようか、湖月わたる、朝海ひかる、貴城けい、水夏希、大和悠河、初風諄、ちあきしん ほか

※出演者のスケジュールは変更になる場合がございます。あらかじめご了承ください。出演者変更の場合でも、他の日時への振り替え・払い戻しは致しかねます。
※キャストは日時により異なります。

2014-11-20 12:07 この記事だけ表示