『スワン』でヒロイン・ドラを演じる一路真輝さんに、作品への思いを聞いた。[インタビュー]

 ミュージカルのみならず幅広い分野で活躍する一路真輝。このたび主演する「スワン」は、女と男と突然現れた一羽の白鳥とで織り成すファンタジックな物語だ。夫に逃げられ、愛人として生きるヒロイン・ドラを演じる彼女に、作品への思いを聞いた。


一路真輝にインタビュー

――一羽の白鳥が青年の姿をして現れるという、不思議な物語です。
 そうですね。でも、不思議だけれども実際ご覧になったらそんなに複雑ということはなく、暗いお話でもなくて、希望をもって劇場を後にできる作品になると思います。

 夫と離婚し、二人目の夫は自殺され、三人目の夫には逃げられ、そんな過去を抱えて精神的に病んでしまった女性が、海に接していないアメリカの内陸部、貨物トラックの通過点であるような町で一人、救いのない気持ちで暮らしているんです。牛乳を運んでくる男性と愛人関係ではあるものの、逃げた夫をどこか待っていて、ボロボロの状況で。どうしていいかわからない、ただただ日々が過ぎていく、そんなさみしい彼女の前に、白馬に乗った王子様ではなく、白鳥がどこかから出没し、彼女の心のよりどころになっていく。私も含め、現代に生きている女性は、何もかもうまくいってハッピーっていう人はそんなにいないと思うんですよね。何か自分の中で、もっと違う、もっと違うと思って生きているんじゃないか。この戯曲を読んで面白いなと感じたのは、たとえ想像の世界でも、何か自分の生きる希望となるものが見えたとき、人間は変わっていくんだろうなと思えたことなんです。

――一路さんご自身、「もっと違う」と思われることがあるんですか?
 それはもうずっとですよね〜。私は、大好きだった宝塚に入って、トップスターまでさせていただけたし、退団後もミュージカルで素敵な役をたくさん演じさせていただけた。でもそこで何か・・・、これからの自分をどうしたらいいんだろうと思ったときに、白鳥じゃないですけど子供が舞い降りてきて、自分はその世界に行くべきなのかなと思ったんですよね。でも、時間を過ごしていく中で、やっぱり演じるということは私の身体の一部になっている、これでいいのかなと思っていたときに、ミュージカルのお話をいただいて、もう一回やってみることになった。子供を産んでから仕事をすると、こんなにも役への集中、切り替えが必要なんだと勉強になって、新しい発見があるなと思って。そんな思いもつかの間、一年間で5作品も新しい作品に出るとなると、そんな理屈も通らなくなってきて(笑)。私、子供の前では一切仕事の顔を見せないでかっこよくやろうと決めてたんですけど…。

――いいお母さんを演じてしまっていたんですか?(笑)
 そうなんです。これだけ台本が積まれてくると、子供が寝た後にやろうというのは無理で…。人間って本当に理想と現実が…。そして今は、子供に台本の相手をしてもらってます(笑)。もう、間に合わない〜みたいな。ついにそこまで来てしまった(笑)。しかも子供は一言一句にめちゃめちゃ厳しくて、順番ちょっと間違えただけで怒られて。私生活は絵に描いたようなコメディですね、私(笑)。こっちに行ってみてもだめで、違う方に行ってみても…というところは、ヒロイン・ドラとちょっと似た感じかもしれない。いつまで経っても答えが見えないなあと。この作品も、最後に一つの答えがあったとしても、その先また悩むだろうし…。生きていくってすべて試練で、それがいいんだと思うんですけどね。

――白鳥という存在に、かつて一路さんが演じられた「エリザベート」のトートを思い浮かべたりしました。
 私も実は思ったんですよ。白鳥はドラの想像の中の存在のようにも思えます。でも、トートってエリザベートにしか見えないじゃないですか?ところがこのスワンは他の人にも見えているから。ただ、ドラ以外の人には男性として見えていて、見え方が違っているんですよね。白鳥役の細貝(圭)くんが演出の深作(健太)さんとあれこれ試行錯誤して作っていっているのを見ると、日本初演でトートを作り上げたときのことを思い出したりしますね。三人芝居なので、白鳥がこうなら私たちはこうだよねなんて、愛人役の大澄(賢也)さんとも密に相談できたりして、やりやすいし、すごく楽しいですね。

――ミュージカルとストレートプレイとで表現の違いの意識などありますか。
 私はミュージカル畑出身なので、これまで音楽に頼っていたなと感じますね。ミュージカルだと一番大切なところは音楽になっていて、リズムがあり、メロディがあるわけですから、表現するにしてもある程度道筋はついているんです。ストレートプレイの場合はそこを自分で表現しなくてはいけないわけですから、その分のエネルギーがいりますね。

――女優業に復帰されてから、舞台上、どこかふっきれたような印象を受けたりもするのですが。
 それは子供を産んだからなのか、休んだからなのかわからないんですけれども…。休業前にやっていたのが「エリザベート」という緊迫感ある作品で、しかもシングル・キャストでしたから、絶対に穴を開けられないという精神的、肉体的プレッシャーでギリギリのところでやっていて、自分自身も社会を遮断して生きていたようなところがあったんですよね。だからどちらかというと、もともとの自分に戻ってきた感じなんです。もちろん、休んでいた四年間で、自分自身の変化があったのかもしれないですけれども。ワンクッションおいたことでいい方向に変わったと思いたいですね。今は幅広い作品、役柄を与えていただけていて、本当にありがたいなと思っています。

[ 取材・文=藤本真由(舞台評論家)]
[ 撮影=坂野 則幸]

公演概要

『スワン』

<公演日・会場>
12/6(土)〜12/7(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール (兵庫県)
12/13(土)〜12/14(日) 水戸芸術館ACM劇場(茨城県)
12/17(水)〜12/23(火・祝) 紀伊國屋ホール (東京都)

<出演・スタッフ>
出演:一路真輝、細貝圭、大澄賢也
作:エリザベス・エグロフ
演出:深作健太
翻訳:高橋知伽江



2014-11-28 20:03 この記事だけ表示