風間俊介、真野恵里菜、中村 中、片桐 仁が愛し、憎み、笑い、慰め、癒し、戦う四人芝居。鴻上尚史作・演出の舞台『ベター・ハーフ』の制作発表会見をレポート![制作発表レポート]

 鴻上尚史作・演出の書き下ろし新作舞台『ベター・ハーフ』。風間俊介、真野恵里菜、中村 中、片桐 仁という、それぞれにジャンルを軽々と越えて活躍中の魅力的な4人が集まった。1月下旬、鴻上とキャスト4人が顔を揃え、制作発表が行われた。さらに、制作会見終了後には真野と中村に作品への想い、本番への意気込みなどを語ってもらった。

「あなたのことをいとしく思う」と言う感情を、ある意味ドロッドロに、そしてアッケラカンと描きます

 “ベター・ハーフ”とは、まだ一般的な日本人には耳馴染みのない言葉だが「自分が必要とする、もう一人のこと。天国で一つだった魂は、この世に生まれる時に男性と女性に分けられて別々に生まれてくる。だから現世で天国時代のもう片方の自分に出会うと、身も心もぴたりと相性が合うと言われている。その相方を“ベター・ハーフ”と呼ぶ」とのこと。この“ベター・ハーフ”をキーワードに、4人の男女の恋愛模様が描かれていく。

 広告代理店勤務の諏訪(風間)は上司の沖村(片桐)から、ネットで知り合った女性と身代わりデートを依頼され、待ち合わせ場所にいた若い女性、平澤(真野)と出会う。しかし平澤も友人のトランスジェンダー・小早川(中村)の身代わりでそこに来ていたのだった……。

 まずはこの舞台『ベター・ハーフ』の制作発表会見においてのキャスト4名と鴻上のコメントをご紹介。

風間俊介

「今、このメンツが横に並んだだけで必ず面白いものになるという確信が生まれました。確信した理由は、今ここに登壇している人たちがみんな、僕が以前から好きな人たちばかりだからです。なので今回の出演のお話をいただいてキャストと鴻上さんのお名前を聞いた時には、単純にうれしかったですね。自分の好きな人たちと一緒に時間を過ごせるというのは、本当にありがたいので。だけど今日、ここで鴻上さんがしゃべるたびに「へえ、そうなんだ!」「あ、僕らも踊るんだ?」とか、いちいちビックリしているので(笑)。たぶん、稽古が始まったらチャレンジすることがきっとたくさん出てくるんだろうなあと思っているところです」

真野恵里菜

「こういった舞台は私、これまでに経験したことがないんですが、でもせっかくこの4人のメンバーの中に入れたので、なにかしらそこに自分の色を添えられるようにがんばりたいと思います。鴻上さんとは1年ちょっと前にとある作品で共演させていただいているんです。その前から舞台は観に行かせていただいていて、いつかお仕事できたらな、演出してもらえたらなと思っていたのでお声をかけていただいてとにかくうれしかったです。キャストのみなさんもカラフルな方ばかりなのでその中で自分が何色を発することができるのかちょっと不安もありますが、みなさんの力もお借りしながらも自分がすごく成長できるんだろうなとも思っています」

中村 中

「先ほどみなさんから「中村 中って本名なの?」って聞かれて「はい、本名なんです」と答えたところなんですが、でも実は風間さんも真野さんも片桐さんも、鴻上さんもみんな本名だそうで。本名だからということでもないですが、お互いになんの嘘もなくぶつかりあえそうな気がしてとても楽しみです。私は男として生まれて女として生きておりますが、今回はトランスジェンダー役なのでその実体験が近道になるかもしれないと思いつつも、遠回りにもなるのかなとも思っていて。自分が見てきた景色とはきっと差があると思うので。そこは体験したことや先入観にとらわれず、キャストのみなさんや鴻上さんと一緒に役づくりをしていきたいと思っています」

片桐 仁

「さっき中村さんが「嘘がなくぶつかりあえそう」とおっしゃいましたが、本当はこのお芝居のテーマが「嘘」だったりするので、そのあたりをお客さんにもぜひ体感してもらいたいです。みなさんもきっと登場人物の誰かに共感するんだろうと思いますので、その点も稽古でがんばって作っていきたいところです。鴻上尚史さんと言えば演劇界の重鎮で、本は僕も何冊も読ませていただいていて。僕の場合はお笑いとしてスタートしたので演劇の基本を理路整然とは習っていなくて、実はそこがすごくコンプレックスなんです。だから今回は呼んでいただいたことを光栄に思い、緊張感を持って、キャストのみなさんにも助けてもらいながらがんばりたいです!」

鴻上尚史

「昨今は世の中がとてもギスギスしていて不寛容な時代になっているので、人間と人間をつなぐ愛というものをもう一回ちゃんと描きたいなと思ったんです。もちろん描くのは恋愛ですが、恋愛そのものというよりは、恋愛と自分の人生とか、恋愛と仕事とか、結局人間と人間がつながる一番基本的な好きと嫌いという感情を僕たちはどうやってつないでいけばいいのか、ということなんですね。“ベター・ハーフ”という言葉ですが、最近は英語圏ではボーイフレンドとかガールフレンド、ハズバンドとかワイフという言葉の代わりに“ベター・ハーフ”を使うようになってきているんですね。男女問わず、自分のめぐり合うべき存在とどういう風に関係をつないでいったらいいのか。そういうお話を、このメンバーですから単に深刻になるだけではなくて刺激的に楽しく、あでやかに、笑えるような感じで作っていきたい。結局は、人間と人間をつなぐのは「あなたのことをいとしく思う」という感情なので。若い男女と、中年のおじさん、それからトランスジェンダーという、この立場の違う4人がどんなふうにお互いにつながって、別れていくのか。ある意味でドロッドロに、楽しい意味でアッケラカンと描けたらいいなと思っています。踊りも入れたいと思っておりますし、中村さんには歌を歌ってもらうつもりです。愛の深みまでたどりつけたらいいなと思っています、ご期待ください!」

「舞台のお仕事も大好きで、ザ・演劇!という作品にも出てみたかった」(真野)
「音楽活動よりお芝居に出ている時のほうが自分の素に近い気がします」(中村)

 そして、この会見終了直後には真野と中村に独占インタビューを敢行! 作品への想いや意気込みなどをたっぷり語ってもらった。

インタビュー

――まずは先ほどの会見の感想から。とてもいい雰囲気でしたね。

中村ホント、和気あいあいとしていましたねえ。

真野楽しかったですよね。こういう場だといつもすごく緊張するんですけど、みなさんのおかげでリラックスしていられました。

中村風間さんが最初に「みんな会う前から好きな人たちだった、うまくいくと思う」って言ってくれたから。あんなに頼もしいことはないですよ。

真野「座長!ついていきます!!」って感じでした(笑)。

――そもそも出演が決まった時のお気持ちは、どんな感じだったんですか。

中村私は鴻上さんとお会いしたのが3年ほど前の話で。『深呼吸する惑星』(2011)という、第三舞台が一度復活して解散するという公演を観に行った時に、折り込みにワークショップのチラシが入っていたんです。私はそのころ、ちょうどお芝居をちゃんとやりたいと思っていた時期だったんですね。歌手なんですけど、でもせっかくならストレート・プレイもやりたいと思って、それでそのワークショップに応募したんです。

真野 へえー。

中村そこから2年ほどたって今回のオファーが来て。うれしかったですね。そのワークショップが、真野さんも経験されていると思うけど、楽しくて。みんなで遊びながら、自分のこととかも話すんですけど。そういう時の鴻上さんって、先生気質なんですよね。

真野あ、私もそう思いました(笑)。

中村話をしていると、自然と先生に相談をしているような感じになるんです(笑)。それで今回、私が演じる小早川という役はトランスジェンダーになったのも、そういう相談を聞いてもらっていたこともヒントになったのかなって思いました。

真野私は鴻上さんの舞台は『キフシャム国の冒険』(2013)を観させていただいているんですが、ああいう舞台をすごくやりたいと思っていたんです。まったく違う世界の話で、みんなが王子様とかいろいろなキャラクターの衣裳を着て、歌ったり踊ったりするエンターテインメントな舞台。それと、1年ほど前に『THE NEXT GENERATIONパトレイバー』という作品に鴻上さんがゲスト出演された時、共演はしていたんです。その時は私は警察官で鴻上さんが爆弾魔の役だったんですけどね(笑)。

中村鴻上さんをつかまえたんだ(笑)。

真野ふふふ。その時はあまりお話する機会がなかったんですが『キフシャム国〜』を観たことだけは伝えさせていただいて。でももともと私、舞台のお仕事も大好きでいろいろな作品に参加させていただいているんですが、ザ・演劇!という作品にも出てみたいと思っていたんですよ。そんな時に今回のお話を聞いたので、これはやるしかないな!と。お芝居の部分で何かひとつ抜けたいという気持ちもすごく今あるので、このみなさんと一緒ならきっと殻を破ってもらって新しい私を引き出してくれそうだなっていう、ちょっと甘えもあるんですけど(笑)。今回は、本当に運命を感じています。

中村だけど今回は、この4人が好きになったり、憎み合ったり、戦ったりする話ってリリースにも書いてあったんですけど。どんなふうになるんでしょうね。

真野どんな愛が描かれるんでしょう。愛って言われても私自身、何も浮かばないんですけど。でも今まで私が見たことのない愛の形が見られるのかなとも思っています。それこそ私が演じる平澤は、芸能界にデビューするという夢を持ちつつもデリヘルで働いている役柄で。このデリヘル嬢役だという言葉だけが先行して世に出まわってしまっていますが(笑)。だけど本当に描きたいのは、それぞれみんなの愛なので。それは男女間の恋愛だったりもするけど、仕事への愛とか同僚に対する愛とか、いろんな愛があるんだろうなと思っています。でも私、本当は人見知りで大勢の人がいる場でコミュニケーションをとったりすることが苦手なんですよ。でもお芝居をしていくうえでは、いろんな人に出会って、いろんな人を観察して自分の引き出しを作っていかなきゃいけないので。実体験だけでは表現できないものがこれからどんどん増えていくと思うので、自分が壁を作ってしまっていたら変われないじゃないですか。

中村本当に、そうですよねえー。ところで、4人という人数は多いと思いますか。

真野ちょうどいいです(笑)。すぐに顔が見られる距離というか。

中村人間観察は好きですか。

真野 大好きですね!

中村私も!(笑)実は私もちょっと人見知りなところがあるし、でも今回のキャストは全員が人見知りなんじゃないかと思ったの、私。さっきの会見の途中で。そのせいで、お互いの距離感がちょうどいい感じになっている気がします。

真野そう、なんだか空気が合うというか。本当に不思議な感覚でした。

中村初めて4人が揃ったチラシ撮影の時にも、そう感じませんでした?

真野うん、思いました! どこかしらみんな似ている部分があるんですかね。

中村そうなのかなあ。よし、これから探していきましょう!(笑)だけど私、自分のコンサートとか音楽活動をしている時よりも、お芝居に出ている時のほうが自分の素に近い状態でいられるような気がするんですよ。それにこういう舞台のお仕事って、どんな人と出会えるかわからない、出会いが降ってくる感覚があって、それがすごく楽しい。だって真野さん、私のことなんて知らなかったでしょう?(笑)

真野いえいえ、もちろん知ってましたよ!(笑)

中村本当に? でもまさか一緒に仕事をするなんて。

真野それは思っていなかったですねえ。

中村ね。こういうことが起こるから。私だってこんなかわいこちゃんとご一緒できるなんて(笑)。可愛さの秘訣をいろいろ教えてもらわなくちゃ。絶対、ワザを持っていると思うから!

――本番に向けて今、一番楽しみにしていることは。

中村私はね、ダンス!

真野ああ! 私もダンスは楽しみです。

中村人にお見せするのは初めてのことなので、楽しみですね。

真野私も全然得意ではないんですけれども、職業柄ダンスは好きなほうなので。鴻上さんはさっき「風間さんには役者としてのダンスをしてほしい」っておっしゃっていたので、私もアイドルの時とは違う、役者としてのダンスを経験できるのかなと思っているんです。

――では最後に、お客様に向けておふたりからお誘いのメッセージをお願いします。

中村私は実は、天国で一つだった魂が二つに分かれたから地上でしっくりくる人がいて……っていうっていうこと自体は、それほど信じていないんです。

真野 ふうん、そうなんですか?

中村これは私の、中村 中論ですけどね。どの人とでもこちらの構えしだいで“ベター・ハーフ”にはなりうると思うんですよ。パズルのピースみたいに、私の凸にハマってくれる凹じゃないとダメって思いこんでいたら、そんなにバッチリ当てはまる人なんて見つからないでしょ。たとえどんな人でも受け入れられるように、自分自身が柔軟になればいいんです。今回は、きっとそういうことにも気がつける作品になると思うので、さみしいなって思っている人はぜひ遊びに来ていただきたいですよね。口説きたい人を誘ってきてもいいと思う。それこそ『ベター・ハーフ』を一緒に観に行きませんかってSNSで募集して、この舞台を観るために出会うっていうのもオシャレかもしれませんよね!

真野うわあー。この公演にこの日に一緒に行きましょうって? 

中村『ベター・ハーフ』デート、みなさん、いかがでしょうか(笑)。

真野ふふふ、いいですね。私自身はまず、この4人が集まったことでどんな化学変化が起こるのかがものすごく楽しみなんです。たぶん私自身がこの4人の中に入っていなくても、今回のチラシを見た時には絶対興味を持ったと思うし。そしてこれからワークショップや稽古を経て、そこから脚本ができあがるということはきっとこの4人にしかできない『ベター・ハーフ』になるんだと思う。誰一人欠けてもまったく違う作品になるでしょうし。

中村確かにそうですよね。そこのところも楽しみに、ぜひとも劇場にお越しください!

[取材・文=田中里津子]
[撮影=渡辺マコト]

公演概要

「ベター・ハーフ」

<公演日程・会場>
2015/4/3(金)〜4/20(月) 本多劇場 (東京都)
2015/4/25(土)〜4/26(日) サンケイホールブリーゼ (大阪府)
2015/5/3(日・祝)〜5/5(火・祝) よみうり大手町ホール (東京都)

<キャスト・スタッフ>
【作・演出】 鴻上尚史
【出演】 風間俊介 真野恵里菜 中村 中 片桐 仁

2015-02-05 19:54 この記事だけ表示