シリーズ最新作にしてあらたな展開の予感! 『メサイア─翡翠ノ章─』ゲネプロレポート[ゲネプロ]

 5月13日、東京・サンシャイン劇場にて舞台『メサイア』シリーズの第4弾となる『─翡翠ノ章─』のゲネプロが行なわれた。国家スパイ〔サクラ〕の育成機関〔チャーチ〕に所属する若者たちの生き様を描く群像劇である本作。今回もまた、それぞれの“青春の葛藤”が刻み込まれていた。

引き継がれていく“メサイアの精神”

 物語の舞台は現代に近い時代と思われるパラレルワールドの日本。世界各国が軍事協定を結び、表面上は戦争が消え去った平和な世界だ。しかし国家間では逆に水面下での熾烈な情報戦が繰り広げられることとなり、その中で一流のスパイとして活躍するべく育成されているのが、サクラだった。今回ストーリーのメインとなるのは、チャーチに所属するサクラ候補生の鋭利(松田凌)と珀(小野建斗)。“周囲はすべて敵”と孤独な生き方を強いられるスパイ活動の中にあって唯一サクラ同士に許されている〔メサイア〕と呼ばれるバディ的な存在のふたりが挑む、過酷過ぎる卒業ミッションの行く末である。

 「自分のメサイアは必ず死ぬ」というジンクスを持ち長い間卒業できずにいる珀と、「なにがあっても絶対死なない」というジンクスを持ちふたり一緒に卒業ミッションをクリアすることを誓う鋭利のソウルメイト的な“メサイア関係”は、ふたりの下で研鑽を積むサクラ候補生の後輩たちにとっても理想の関係。鋭利と珀はそんな後輩たちのサポートも得つつ、ハプニングも共に乗り越えながら着実にミッションをこなしていく。しかし、珀の過去にまつわる悲しい事実と、抑えきれない巨大な陰謀の影とが複雑に絡み合い始め、事態は混沌。そしてふたりに下された、非情な最終ミッションとは……。

 本作の魅力は、大きな正義のぶつかりあいを描きつつ、そこにある瑞々しい青春ドラマ──複雑な生い立ちやさまざまな事情を抱え、過去も国籍も生存の痕跡も持たないサクラとなるしか道のない若者たちが、ギリギリの中でも仲間同士の信頼、真の友情、そして自身のトラウマを乗り越えて自分だけの生きる目的を見出していく姿──を浮かび上がらせているところだろう。この『─翡翠ノ章─』では政治的な部分を警察省・志倉(大澄賢也)と北方連合・我妻(金山一彦)のアダルトチームが重厚に担い、物語をひとつ引き締めてくれる。

 また、チャーチ学長の神北(郷本直也)&黒子(小谷嘉一)は、かつての自分を重ねながらサクラ候補生を厳しく優しく指導する兄貴分として、ナイーブな若者たちの頼れる存在になっていた。一方、事態を掻き回す三栖(中村龍介)や芹沢(寿里)のヒリヒリとした危険な存在感もかなり魅力的だ。

 幕開け直後から高低差のあるソリッドな舞台セットを縦横無尽に使って繰り広げられる派手でスピーディーなアクションは一瞬も目が離せず、銃撃戦の魅せ方なども多彩。いわゆる殺陣とは違うバラエティに富んだファイトシーンは、本作の大きな見どころのひとつとなっている。「これぞスパイもの」というキャラクターの特性を織り込んだ、芝居パートとはまた違う役者陣の身体能力のきらめきもしっかりと見届けよう。

 これまでのシリーズで断片的に描かれてきたエピソードも含め、出会いから卒業ミッション完了までの「鋭利と珀の物語」は、文字通りふたりが命がけの闘いを経て、相手を、そして自分自身を改めて深く知った上での新たなバディストーリーを感じさせるラストシーンで一旦、エンドマークに。そんなふたりを眩しく見つめる白崎(赤澤燈)・悠里(廣瀬大介)・間宮(染谷俊之)・有賀(井澤勇貴)。彼ら後輩たちの物語もまた、さらにステップアップしていくはず。引き継がれていく“メサイアの精神”。そんな余韻も感じさせてくれる、未来ある一作。

[取材・文=横澤由佳]
[写真提供:CLIE]

公演概要

メサイア『翡翠ノ章』

<公演日程・会場>
2015/5/13(水)〜5/24(日)  サンシャイン劇場 (東京都)
2015/5/30(土)〜5/31(日)  新神戸オリエンタル劇場 (兵庫県)

<スタッフ・キャスト>
出演:松田凌/小野健斗/赤澤燈/染谷俊之/井澤勇貴/金山一彦/中村龍介/郷本直也/寿里/小谷嘉一/大澄賢也 他
原案:高殿円
脚本:毛利亘宏(少年社中)
演出:西森英行(Innocent Sphere)

2015-05-20 15:31 この記事だけ表示