井上ひさしの傑作喜劇を片岡愛之助主演で10年ぶりに上演![制作発表レポート]

井上ひさし原作の傑作喜劇『もとの黙阿弥 浅草七軒町界隈』が、片岡愛之助を始めとする粒ぞろいのキャスト、栗山民也演出によって10年ぶりに上演される。しかも東京、大阪の2都市で2ヶ月連続(8月新橋演舞場、9月大阪松竹座)だ。製作発表記者会見で語られた内容をお届けする。

片岡愛之助の新たな表情に出会える、笑いと涙の物語

『もとの黙阿弥』は1983年に井上ひさしが初めて大劇場に書き下ろした作品で、新橋演舞場で初演された折に主役を務めたのは愛之助の叔父である片岡仁左衛門(当時=孝夫)。文明開化まっただ中の明治時代、興行停止処分を受けてしまった芝居小屋を舞台に2組の主従が入れ替わって起こる騒動を描いた笑いと涙の物語だ。

2組の主従とは、男爵家の跡取りである河辺隆次(片岡愛之助)と男爵家の書生の久松菊雄(早乙女太一)、それに成金の政商「長崎屋」の令嬢・お琴(貫地谷しほり)と女中のお繁(真飛聖)。河辺とお琴に縁談が持ち上がるのだが、当人の気持ちを無視しての取り決めに反発した河辺とお琴は偶然にも同じことを思いつく。主従が入れ替わって相手の本当の姿を見極めようというのである。

四民平等の明治といえども高貴な身分の河辺を演じる片岡愛之助は、「品を持って素敵だと思われるように演じたいと思います。(河辺を)演じている上で(久松)を演じることになり、そこに(河辺としての)素顔が見え隠れするのが非常に面白く、また難しいところです。栗山先生の演出でどんなふうになっていくのか、非常に楽しみです」。

久松役の早乙女太一は、「自分が生まれる前からある歴史ある作品に出られることが幸せです。これまでに挑戦したことない色のお芝居ですので、自分にとってはチャレンジ。いろんなことを探りながら皆さんと一緒にできたらと思います。初めての井上作品を存分に味わいたいと思います」。

井上作品は『泣き虫なまいき石川啄木』以来2度目というお琴役の貫地谷しほりは、「ゲラゲラ笑いながら台本を読みました。自分が感じたことをちゃんと伝えられるように、自分の中で深めていきたい。(共演者が)舞台のスペシャリストの方々ばかりなのですごく緊張していますが、とても楽しみです」。

宝塚の男役スターから一転してお繁を演じる真飛聖は、「女性として着物での立ち居振る舞いは初めてですので、男が出てしまうのではという不安があります。お嬢様になりきれないお繁には、その不慣れな部分が逆にリアルかも。演技なのか必死なのか紙一重だと思いますがそこをうまくやれたらと思います」。

物語の舞台はタイトルにもあるように浅草。お見合い前に2組が偶然、顔を合わせる芝居小屋には、暮らしは豊かでないが日々を楽しく過ごす庶民が出入りしている。そのひとりが、関西ジャニーズJr.の浜中文一演じる安吉だ。
「台本を読んで(出番が多いので)僕、こんなに出ていいのかな、と思いました。とにかく皆さんと一緒に、必死にがむしゃらにやっていきたいと思います」。

そして芝居小屋の座主であり一座を率いる坂東飛鶴を演じるのは、新派の看板女優である波乃久里子だ。
「初演を見て『何で私が出ていないの』とプロデューサーに食ってかかりました(笑)。なので、ようやく念願かないました。けれど見ると演るとは大違い。たいへんな役です。旧態依然とした江戸を引きずっているような女で、狂言回し的役割でもあります。古風に面白く演じられたらと思います」。

舞台ではオペレッタや歌舞伎作品をもじった劇中劇があり、愛之助は河辺隆次として浪人の役を演じる場面も。ここでは芝居の素人らしく演じなければならない。
「腕の上げ方や足の出し方、せりふ、型通りに動かないようにするのはすごく難しいですね。そこが苦しみであり、楽しみでもあります」。

どうやらこれまでに見たことのない愛之助に出会えそう。歌あり立廻りありの愉快な展開の中、懸命に生きる人々の姿が感動を呼ぶ物語だ。

[取材・文=清水まり]

公演概要

「もとの黙阿弥」

<公演日程・会場>
2015/8/22(土) 新橋演舞場 (東京都)

<出演・キャスト>
作:井上ひさし
演出:栗山民也
出 演:片岡愛之助、貫地谷しほり、浜中文一(関西ジャニーズJr.)、大沢健
波乃久里子、床嶋佳子、渡辺哲、真飛聖、早乙女太一

2015-05-28 14:53 この記事だけ表示