井上ひさしの傑作喜劇が10年ぶりに復活!『もとの黙阿弥』囲み取材&ゲネプロレポート[ゲネプロ]

 歌舞伎俳優・片岡愛之助が座頭をつとめ、貫地谷しほり、波乃久里子、浜中文一、真飛聖、そして早乙女太一らが出演する舞台『もとの黙阿弥』が8月1日より新橋演舞場で幕を開けた。文明開化の波が押し寄せる明治の浅草で暮らす人々を描いたこの作品は、1983年に井上ひさしが新橋演舞場公演のために書き下ろした戯曲で、今回愛之助が演じる男爵家の跡取り・河辺隆次を初演では叔父の十五代目片岡仁左衛門がつとめていた。演出は、多くの井上作品を手がけてきた栗山民也。初日前日には公開舞台稽古が行われ、直前の囲み取材では、片岡愛之助、貫地谷しほり、波乃久里子、浜中文一、真飛聖、早乙女太一といった多彩なキャスト陣が作品への想い、見どころについて語った。

<e+貸切>8/22(土)16:30公演

キャストコメント

河辺隆次役:片岡愛之助
音楽劇や写実劇、歌舞伎などがたくさん盛り込まれていて、演出の栗山さん曰く“井上ひさしコント集”です。初めての方でも楽しめますので、大いに笑って下さい。

長崎屋お琴役:貫地谷しほり
素敵なメンバーで井上ひさし作品に取り組めることが嬉しい。劇中劇で挑戦した歌舞伎は、愛之助さんに教えていただいてなんとか形になりました。

坂東飛鶴役:波乃久里子
脚本が素晴らしい作品。できたら出演しないで客席から見たいくらい(笑)。“このせりふを言いたい”と思うせりふばかりなので、きちんと覚えて世界観をお伝えできればと。あとは早乙女太一くんの登場が見どころです(笑)。

安吉役:浜中文一
みなさんがすべて言ってくださったので何も言うことはありません!(笑)僕も歌のシーンがあるので、頑張りたいと思います。

船山お繁役:真飛聖
とても楽しい喜劇です。どんどん世界観に引きこまれていくお芝居なので、ラストまで楽しんでいただけると思います。

久松菊雄役:早乙女太一
歌を歌うシーンがあるのですが、宝塚で活躍されていた真飛さんと一緒に歌うのが死ぬほど嫌です(笑)。嫌だという気持ちに負けないで頑張りたいと思います。

 最後に愛之助が言った、「笑いだけではなく、現代の日本と重ねあわせて観ていただくと“なるほど”と考えさせられる深い作品です。今この作品を上演する意味を考えながら演じたいと思っています」という言葉が印象に残った。

ゲネプロレポート

 花道から登場した楽隊のにぎやかな演奏とともに幕が開き、大和座の座頭、坂東飛鶴(波乃久里子)が番頭の飛太郎(大沢健)と、芸者連中や野菜売りの安吉(浜中文一)といった近所の人々に「かっぽれ」を指南している。黙阿弥の新作のパロディを上演して興行停止となった大和座は「よろず稽古指南所」としてなんとか食いつなぐ日々。そこに飛び込んできたのは、以前、大和座の世話になっていた久松菊雄(早乙女太一)。再会を喜んでいると、久松の現在の主人で男爵家の跡取りである河辺隆次(片岡愛之助)がやってくる。いかにも「おぼっちゃま」な、浮世離れした風情がおかしい。隆次は姉の賀津子(床嶋佳子)が勝手に決めてきた縁談の相手と鹿鳴館の舞踏会で踊らねばならず、久松の勧めで飛鶴に西洋舞踏を習うことに。

 隆次と久松が帰ったあとに現れたのは、一代で財を成した長崎屋新五郎(渡辺哲)。娘のお琴(貫地谷しほり)に良縁が舞い込み、鹿鳴館で踊らなければならなくなったので西洋舞踊を指南して欲しいと言うが、どこかで聞いたような話に飛鶴の勘が働く。

 翌日、お琴と女中のお繁(真飛聖)がやってくるが、お琴ではなくお繁に西洋舞踊を教えて欲しいと言う。お琴は親が決めた縁談に乗り気ではなく、入れ替わって相手の人柄を確かめたいと。ところが、続いてやってきた隆次と久松も同じ理由で入れ替わっていて……!複雑に絡み合った“お見合い”の行方は一体どうなるのか!?

多彩なキャストが魅せる“嘘”と“真実”

 一幕だけでもテンポよく畳み掛けるようにエピソードが展開されていき、知らずしらずのうちに芝居の世界に引き込まれていく。歌舞伎の「誰々だと思っていたら実は誰々」というスタイルとシェイクスピアの「主従入れ替わり」、劇中劇を上手く使いながら、大人の思惑に揺れる男女2組の恋、文明開化の時代に生きる民衆、新しい時代の演劇の移り変わりなどを描き出していく。遅筆で有名な井上ひさしだったが、こんな緻密な構成を考えているのだから仕方なかったのかもしれない。

 二幕の劇中劇で「粋な女」を演じた真飛聖の圧倒的な歌唱力は見もの。囲み取材で早乙女が「(一緒に歌うのは)死ぬほど嫌です」と言った気持ちがよくわかった。だが、早乙女も遜色なしのキレの良いダンスと肉体美で「紳士」を粋に演じていた。

 自分ではない人物を演じ“嘘”をつくことによって、隆次とお琴は“真実”を見つけていくのだが、現代よりも身分の格差がよりはっきりしていたこの時代。別の人物になりきったことで歯車が狂ってしまう人も……。笑っていたらストンと現実に引き戻されるようなラストシーンもまた、一筋縄ではいかない井上作品の魅力だ。

 歌舞伎に新派、元大衆演劇、元タカラジェンヌにジャニーズと、さまざまなジャンルで活躍してきたキャストが集結した2015年版『もとの黙阿弥』は、8月に新橋演舞場での公演を終えたあと、9月には大阪松竹座で上演される。どうぞお見逃しなく!

[取材・文=石本真樹]

公演概要

「もとの黙阿弥」

<公演日程・会場>
<e+貸切>2015/8/22(土)16:30公演 新橋演舞場 (東京都)
2015/8/1(土)〜8/25(火) 新橋演舞場 (東京都)
2015/9/1(火)〜9/25(金) 大阪松竹座 (大阪府)

<出演・キャスト>
作:井上ひさし
演出:栗山民也
出 演:片岡愛之助、貫地谷しほり、浜中文一(関西ジャニーズJr.)、大沢健
波乃久里子、床嶋佳子、渡辺哲、真飛聖、早乙女太一

<e+貸切>8/22(土)16:30公演
2015-08-07 11:41 この記事だけ表示