十年以上構想を温めた、ラサール石井オリジナル・ミュージカル「HEADS UP!」製作発表!![製作発表レポート]

 舞台を支える裏方たちの奮闘を描くオリジナル・ミュージカル「HEADS UP!」の製作発表がこのほど行なわれた。出席者は、原案・作詞・演出のラサール石井、哀川翔(ベテラン舞台監督役)、相葉裕樹(新人舞台監督役)、橋本じゅん(大道具スタッフ役)、大空祐飛(女優役)、中川晃教(劇場スタッフ役)、入野自由(アルバイト演出部スタッフ役)、芋洗坂係長(演出部スタッフ役)、MINAMI(衣装助手役)。青木さやか(制作スタッフ役)は等身大パネルでの参加だ

劇場を愛する多くの人々にとって見逃せない作品となりそうだ。

 この作品は、学生時代、早稲田のミュージカル研究会で、小池修一郎や宮本亜門といったメンバーとミュージカルを作り、上演していたラサールが、十年以上構想を温めてきたもの。神奈川県知事・黒岩祐治も当時の後輩で、その縁あってKAAT神奈川芸術劇場での上演が実現したという。

 「役者というものは舞台の楽日には終わって飲みに行くことばかり考えていて、自分たちでも舞台のバラシを見ることはなかなかない。一度見学してみたところ、これは大変な作業だなと。舞台スタッフたちに光を当て、“見えるものは見えないものに支えられている”ことをテーマに描いていきたい。自分は劇場が好きだが、なかでも装置が組まれていない素舞台が好き。素舞台から始まって、素舞台に終わる、普段お客様が見ることのない舞台の仕込みとバラシをすべて見られる、いまだかつてない作品にしたい」と意気込みを述べた。

 脚本を手がける倉持裕からも、「最初に企画を聞いたとき、素舞台からセットを組んでいくのはイメージできたが、また元の素舞台に戻っていくのをどうドラマティックに描けばいいのか悩んだ。打ち合わせを重ねるうち、これは、スタッフの活躍を描くのと同時に、作っては壊すを繰り返す、演劇特有のはかなくも永遠の営みを表しているのだとわかってきた。演劇に携わる喜びに満ちた作品になると思う」とのメッセージが寄せられ、舞台芸術を愛する者の心をくすぐる作品となることが予感された。

 そこで、具体的な物語やナンバーについてラサールに質問。――ミュージカル・ファンなら誰もが知っている名作「ドル・ガンチェの馬」は1000回公演を迎えた。しかし、少々ボケの入っている主演俳優の鶴の一声で、セットもキャストもスタッフも不足する中、某地方都市の古い劇場で1001回目の公演を行なうことに。語り手となり、舞台の夢を歌う劇場スタッフ(中川)。足りないセットを何とかつなげて大きくしようとする大道具(橋本)。この日で引退する舞台監督(哀川)は何事にもノーと言いたくない男だ。これでは上演は無理と思う演出サイドに、チケットが売れている以上やるしかない! と告げる制作スタッフ(青木)――。説明を聞くだけで、そのおかしさに取材陣から笑いが起きる。一幕で素舞台にパンチ(カーペット)やリノリウムを敷き、二幕でまたそれを剥がすナンバーがあると聞き、「え、敷いたり剥がしたりを自分たちでやるの?」(哀川)、「しかも歌って踊りながらだから、三倍しんどいじゃないですか!」(橋本)と、出演者たちも絶句。「キャストが実際に舞台上でやる分、自分たちでやらなくてもいい本物のスタッフさんたちが楽かも」と、ラサールが涼しい顔で答え、さらなる笑いを誘う。

 「自分もライブで経験があるけれども、素舞台と、仕込みでものが建った舞台って全然違っていて、客席から見ると面白いんだよね。お客さんは今回、それを見られるわけだ」と、哀川も次第に作品の面白さに合点が行ってきた様子で、「自分でも楽しみになってきた」と抱負を。劇場を愛する多くの人々にとって見逃せない作品となりそうだ。

[取材・文=藤本真由(舞台評論家)]
[撮影=坂野則幸]

公演概要

ミュージカル HEADS UP!

<公演日程・会場>
2015/11/13(金)〜11/23(月・祝) KAAT神奈川芸術劇場 ホール (神奈川県)
2015/11/26(木)〜11/29(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール (兵庫県)

<出演・キャスト>
出演: 哀川翔・相葉裕樹 
橋本じゅん 
青木さやか・入野自由 
今拓哉 上原理生 陰山泰 芋洗坂係長  
岡田誠 川本昭彦 井上珠美 新良エツ子 MINAMI
青柳塁斗 遠藤瑠美子 香月彩里 嶌村緒里江 
谷 須美子 福永吉洋 渡部又吁
大空祐飛・中川晃教 

脚本:倉持 裕 
原案・作詞・演出:ラサール石井 
作曲・音楽監督:玉麻 尚一 
振付:川崎 悦子

2015-08-31 15:44 この記事だけ表示