越前リョーマ役の古田一紀を稽古場で直撃──ミュージカル『テニスの王子様』3rdシーズン 青学(せいがく)vs聖ルドルフ公演直前のインタビュー&レポート!

 ミュージカル『テニスの王子様』3rdシーズンの第2弾「青学(せいがく)vs聖ルドルフ」公演の開幕が迫る中、取材陣が訪れた稽古場。そこには作品の総仕上げに向けて精度を上げ、集中を高めようと目の前の課題に取り組み続けるカンパニーの姿があった。12年目を迎えたテニミュの歴史の中、守るモノ・壊すモノ・新たに生み出されるモノとは──。動き続ける稽古場の熱と、その真っ只中にいる座長・古田一紀の決意をレポート。

稽古場レポート

 広いスタジオ内、壁にはチーム別に整理されたラケットがかけられ、傍らのデスクの上には原作漫画が全巻並べられている。これぞ、テニミュの稽古場だ。通常、役者は稽古開始時刻より早目に入ってくることが多く、稽古着に着替えた者から思い思いに準備を始め、アップを開始する。もちろん、それはここでも同じ。それぞれが自分のコンディションにあった“いつものやりかた”で少しずつ身体をほぐし、温めながら、徐々に声も出して行く。いつしかメンバーが揃い始める。心地よい緊張感はあるが、お互いにストレッチをしたり、笑顔で身体を動かしたりと、室内は和やかな空気。

 歌練習用のピアノの周りに集まり、青学(せいがく)・聖ルドルフと学校別に歌う場面では、互いの声を聞きながらハーモニーを整え合う姿も。不動峰公演で聞き慣れた青学(せいがく)の歌声は変わらず力強く、この場で初めて聴く機会を得た聖ルドルフの歌声はルーキー感のあるフレッシュな聴き心地。彼らが全員で歌ったときの爆発力も想像しつつ、「今回はこの声が数々のナンバーを彩っていくのか」と、密かに期待が膨らむ。鏡の前で決めポーズのバランスを確認する場面でも、青学(せいがく)・聖ルドルフそれぞれにキャラクターの個性を生かした並びで魅せてくれた。

 その後もバランスボールを使った発声などの準備を行なった後、本日の集中稽古へ。オリジナル演出の上島雪夫の監修のもと、青学(せいがく)・不二vs聖ルドルフ・観月の試合後の芝居の流れを組み立てて行く。ここではとある台詞を終えてから曲へ行くか、曲を終えた余韻にその芝居を組み込むか──という構成も含めての検証が行なわれていた。「この舞台を頭から観ていたら、どちらのほうがより入り込めるか」を大前提に、丁寧にシーンが固められていく。視線の交わし方、台詞のタイミング、不動峰も交えた各校の交錯の仕方。立体的な視点から場が整理されていくのに対し、求められた表現を追加し、指摘された箇所を修正しながら素早く反応し再び動き出す役者たち。全員が「同じ物語ではあるが、毎回が新作なんだ」という気持ちで、新たなテニミュワールドを立ち上げていくチャレンジは欠かさない。“3rdシーズン 青学(せいがく)vs聖ルドルフ”公演、その完成型が待ち遠しい。

越前リョーマ役 古田一紀にインタビュー

――まずは古田さんにとって最初のテニミュとなった、前回の不動峰公演の感想からお聞かせください。

「長い公演で、プレビュー公演から東京凱旋公演まで状況の変化もありましたけど、自分自身は基本なにも変わらずというか…常にそのときのベストでやろうと思い、新鮮な気持ちで舞台に立っていました。ただ、やはり最初の頃は一公演終わるとヘトヘトだったんですけど(笑)、段々とダンスも前より激しく踊れるようになり、それも全然前よりも疲れずにできるようになって…回を重ねるごとに体力的にも精神的にも自分のリズムができて、どんどん慣れてタフになれたのは事実ですね」

――積み重ねによるいい変化はたくさんあった、と。

「とはいえ、実は公演中、自分もみんなも“思ったように成長できてないんじゃないか”と感じている時期もあって。それまで僕は“自分のことは自分でしっかりやっていけばいい”と思ってたんです。人になにか言うのって、その人のやってることに口出しすることになるとも思ってましたし。でもやっぱり僕らはまだ俳優として未熟で経験も少ないので、いくら自分で誠実に一生懸命やっていても、自分の力だけでは足りないところもたくさんあったんですよね。それでスタッフさんの助言もあって、舞台について、みんなで積極的に話し合うようにしたんです。自分が見てて気づいたこととか、やっていて気になっていたこととか。そうしたらそこからグンと良くなれた実感があって!」

――馴染むごとに「なにが必要か」を、段階を追ってさらに追求するようになったんですね。

「そうですね。実体験を積むことで、知らなかったことが見えてきたり、なにが必要かがわかって来た。もちろん日々の中での上り下がりはどうしてもあるんですけど、そういうところも含め、チームで解決することもできるようになりました。教え合うということだけじゃなく、さらに意識を高められるようにもっともっと互いに競い合おうというのも、みんなで確認して。それはもうずっと継続してやっています」

――不動峰公演では海外公演も経験しました。

「めったにできることではないので、海外公演に関してもすごく自分たちの自信になりましたね。ほんと、“やったぞ!”っていう実感。向こうのお客様はたくさん笑うし、客席が賑やかというか、かしこまって観る感じがないのも新鮮でした。日本のお客様はほんとにじーーっくり観てくださって、それももちろん嬉しいんですけど、同時に細かいところまでしっかり観られてるぞっていう緊張感もすごくあるので(笑)。特にプレビュー公演の初日は忘れられませんね。一番最初に舞台に出たとき、“客席からめちゃめちゃじっくり観られている!”っていうこれまで体験したことのないような張りつめた空気があって…そこで初めて“テニミュをやるんだ”というプレッシャーを感じました。これが、たくさんの人に愛されている作品に新しく出ていくってことなんだって。お客様は“どんな青学(せいがく)が出てくるんだ?”って、ホントにすべて見極めてやるぞっていう強い気持ちで観に来てくださっている。そこで自分たちも“これが僕ら青学(せいがく)です”って、自分たちが伝えられる全部をちゃんと表現して伝えないといけないですからね」

――まさに真剣勝負、ですね。

「はい。そこで…最初の最初だけは“今日は負けたかも(汗)”って、初めての体験に精神的な衝撃は受けました。でもそこからスタートしたことで逆に“絶対負けないぞ”っていう強い気持ちで毎日挑み続けることができたし、大千秋楽を迎えたときは本当にすべてやり遂げられたことにホッとしました。“僕たちのテニミュはこれです”っていうのを、一通りは伝え切れたかな、と」

――そんな不動峰公演を経て、今、聖ルドルフ公演を前にしての心境は?

「シンプルな気持ちです、とても。今回はゼロからではなく、前回形づくったモノをさらに深めていくところから始められることの自信もありますし」

――先日のTEAM Liveはいかがでしたか?

「それも大きいですね。TEAM Liveの課題は自分が役としてどう舞台上にいるか。本公演と違って台本もないですしそこはもう基本的に自分で考えていくしかなかったんですが、当たり前だけど稽古ではお客様の反応はないので、みんなでキャラクターでフリートークをやっても自分が考えているこのリョーマ像は果たして合っているかどうかっていうのが本番になるまでわからなくて。ある意味、ぶっつけ本番ですよね。実際やってみては…うーん、リョーマらしくというか、みんながトークしている中、ホントに言いたいことだけ言うっていうスタンスでいたんですけど…たぶん“全然違う”っていう空気にはならなかったので(笑)、そこは合格かな? 少しは自信が持てたと思います。他の青学(せいがく)メンバーみんなもそうやって試行錯誤しつつ互いの関係性でキャラクターを深められたのが、TEAM Liveの成果だったかもしれませんね。あとはやっぱりお客様の力の凄さ。歌ってて“ちょっとキツい。ヤバい”っていうときにも、ペンライトの光や聞こえてくる歓声に“応援されてる!”っていうのがすっごく伝わって来て、“あー、よし、頑張ろう!”って思えるんですよね。リアルタイムでエネルギーをもらっているっていうのは、ホントに素敵な体験でした」

――そしていよいよ3rdシーズン第2作、聖ルドルフ公演が迫っています。今回のリョーマの試合は、青学(せいがく)の不二の弟である裕太とのシングルス戦。

「聖ルドルフは徹底した分析によるテニスをするエリート校で、みんな確かに強いんですけど、すべては司令塔・観月の指示によるゲーム展開なんです。リョーマはそんな聖ルドルフに対して、あまり驚異は感じてないんじゃないかな。青学(せいがく)のデータマン・乾にも勝った経験から、データに縛られたテニスばかりをやってても先はないだろうなって思ってるし、手塚部長とも闘ったばかりなので、自分自身“上しか見てない”ところなので。今回の試合は、裕太は新技を出して来たりリョーマを揺さぶりはしますけど、リョーマも最初から飛ばしていってるから…さらに強くなっていこうとする強気なリョーマの姿を魅せていければと考えています」

――稽古も後半〜終盤ですね。ここでもう一段階ギアを上げて…

「いや、もう四段階くらい、上げたいです! 聖ルドルフのみんなはこれが初のテニミュだから大変なこともたくさんあると思いますけど…でもね、まだまだ行けるぞ!って思うので、まだまだ行きたいです(笑)。やっぱり闘いなので、稽古場でもできる限り競い合いたいし。僕は、互いが互いを脅かす存在として最大限バチバチっとなったときに発揮されるパワーを信じてます。それが出てくるのは…まだこれからですね。前からおなじみの曲はもちろん、新曲も多いので、今回も見どころはたくさん! 残りの時間も目一杯追い込んで追い込まれて、最後までいいモノを創るために刺激し合いたいな。そして晴れて迎える本番では、ライブ感溢れるパワフルで愉しいステージをお届けしたいです」

[取材・文=横澤由香]
[撮影=平田貴章]

公演概要

ミュージカル『テニスの王子様』3rdシーズン 青学(せいがく)vs 聖ルドルフ


©許斐 剛/集英社・NAS・新テニスの王子様プロジェクト
©許斐 剛/集英社・テニミュ製作委員会

<公演日程・会場>
2015/9/5(土)〜9/13(日)  TOKYO DOME CITY HALL (東京都)
2015/9/19(土)〜9/20(日)  多賀城市民会館 大ホール (宮城県)
2015/9/25(金)〜9/27(日)  名古屋文理大学文化フォーラム 大ホール (愛知県)
2015/10/2(金)〜10/12(月・祝)  大阪メルパルクホール (大阪府)
2015/10/23(金)〜10/25(日)  キャナルシティ劇場 (福岡県)
2015/10/30(金)〜11/3(火・祝)  TOKYO DOME CITY HALL (東京都)

<出演・キャスト>
公式HPでご確認ください。
http://www.tennimu.com/

原作:許斐 剛『テニスの王子様』(集英社 ジャンプ・コミックス刊)
オリジナル演出:上島雪夫 音楽:佐橋俊彦/坂部 剛 脚本/作詞:三ツ矢雄二 振付:本山新之助/上島雪夫 演出:富田昌則 

2015-09-04 21:57 この記事だけ表示