作詞&作曲家コンビ 阿木燿子・宇崎竜童の舞台『フラメンコ曽根崎心中』が、大阪で8年ぶりに上演!夫婦でもある2人にインタビュー![インタビュー]


撮影=清水俊洋

 70年代の伝説のアイドル・山口百恵とのコラボを始め、40年以上に渡って作詞&作曲家コンビとして一線で活躍している阿木燿子と宇崎竜童。実生活でも夫婦である2人が、2001年に発表したライフワーク的な舞台『フラメンコ曽根崎心中』が、大阪で8年ぶりに上演される。文楽や歌舞伎ではおなじみの題材を、フラメンコの技法と和洋折衷の音楽を使って熱く切なく表現し、何度も再演を重ねてきた作品だ。プロデューサーも兼ねている阿木が「私たちの子どものようなもの」という、2人にとって大切な本作について、阿木&宇崎にそろって話を聞いた。

日本人の誇りになり得る作品と自負しています(阿木)

――これはもともと、文楽作品として上演された作品だったそうですね。


撮影=清水俊洋

阿木80年代に東京のある劇場から主人の方に、文楽とジョイントをして何か面白いことをやってみませんか、と声をかけていただいたのがきっかけです。まずはダウン・タウン・ブギウギ・バンドが語り部を務める形で『ROCK曽根崎心中』という作品に仕上げて、文楽の方と一緒にやらせていただきました。でも様々な事情で休眠状態になっていたところ、スタッフの一人がフラメンコ版はどうでしょうか?と言ってくれたので主人と相談し作ることにしました。その際フラメンコでリニューアルするならこのお二人しかないと閃いたのが鍵田真由美さんと佐藤浩希さんでした。もともとご夫婦でもいらっしゃるし、佐藤さんは才能溢れる振り付け師で演出家。そして鍵田さんは素晴らしいフラメンコダンサー。お話を持っていったらお二人共快諾して下さって、すぐアレンジ打ち合わせに入らせていただきました。

宇崎『ROCK…』はロック寄りのリズムだったけど、フラメンコの基本は12拍子なんです。そうしたらお2人が「こうやって12拍子に置き換えたら踊れる」というアイディアをくれたので、半分ぐらいはフラメンコ向けに書き直しました。

阿木フラメンコの中にも、(ロックやポップスでよく使われる)4拍子系の踊りがあるので、それで対応できるものは残したわよね?


撮影=清水俊洋

宇崎そうだね。特にこの舞台に関しては、普通のフラメンコとは違う表現がかなりあるよね。モダンダンスの動きがあったり、日本舞踊的な動きがあったり…もともとお2人は歌舞伎好きなので、身体の中に歌舞伎の動きが多少入ってると思うから、無意識にそういうものが出ている所もあるし。

阿木基本的にフラメンコって、背筋をピッと伸ばして踊る感じですが、その辺も通常とは違っていて…。とくに敵役の九平次は背中を丸めるポーズが多いので、立ち姿からして演劇的ですよね。だから純粋なフラメンコファンが見たら、「これはフラメンコじゃない」とおっしゃるかもしれません。

宇崎楽曲の方も、カンテ(歌)が全部日本語だし。

阿木フラメンコはスペイン語以外の歌詞で踊るってことは、あまりないんじゃないかしら。

宇崎バンドの方も、フラメンコギターとパーカッション以外に、篠笛と琵琶と和太鼓が入るという、普通だと混じりあわない編成だしね。だから観ているお客さんは、いわゆるフラメンコを観ている時とはちょっと違う…和風というか、『曽根崎心中』寄りの気持ちになっていくと思います。

――逆にフラメンコにしたからこそ『曽根崎心中』が違って見えるというのを、特にどこで感じられるでしょう?


撮影=川島浩之

阿木私、フラメンコは、直線的な感情を表現するのにとても適した踊りだと思っているんです。人生の苦悩を全身で表せるので、それぞれの人物の感情を伝えるには、分かりやすいんじゃないかなって。とくに主役の2人の心中に至るまでの踊りを観ていると、どんどん引き込まれて、最後は一緒に死んで果てたような気分になるんです。もうそれは毎回…涙なしには観られません(笑)。

――そうやってお話をうかがうと、それこそ本場のスペイン人にもできない、日本人でしか表現できないフラメンコという気がします。

阿木そう言っていただくと「あ、まさに!」と思います。スペインのダンスという認識が強いフラメンコを、日本人が踊りつつも、世界中の人にわかっていただける舞台にした作品だと私たちは思っているんです。異文化をこれほど取り込めるキャパシティがある日本人でないとできない世界だと思うし、日本人の誇りになり得る作品だと自負しています。

大阪の人を、ちゃんと笑わせて泣かせる覚悟を(宇崎)

――今回の再演で音楽や歌詞を変える所はあるんですか?


撮影=清水俊洋

宇崎初演から毎回、マイナーチェンジはしてるんですよ。でも今回は特に、大阪の人に喜んでもらえるようにしなきゃいけないという気持ちが強いですね。『曽根崎心中』の本場だし、気質として大阪の人ってハッキリしてるじゃないですか? 半端なことはできないし、ちゃんと笑わせて泣かせる覚悟でパフォーマンスしないとダメだなあと。だから今まで以上に本気度を上げて、大阪の人に拍手喝采していただけるものにしたいですね。

――拍手といえば、フラメンコって客席から手拍子を送るのがマナー違反らしいですね。

阿木そうですね。フラメンコではパルマ(手拍子)は専門家がいて、それが一つの打楽器になってる感じです。そこに普通の手拍子が入ると、調子が狂うみたいですね。

宇崎アクセントが複雑だから、勝手にやられると踊りづらいんだろうね。僕も弾き語りのライブの時に、とんでもない手拍子が入ると、今まで何百回と歌ってきた曲ですら間違えてしまう(笑)。踊りではもっと、そういうことが起こるだろうなあ。

阿木なので、上演中は手拍子だけはご遠慮ください(笑)。その代わりと言っては何ですが、アンコールでお客様にも手拍子していただいて、ステージと一体になって盛り上がっていただけるよう、趣向を凝らしております。

――フラメンコを観たことがない人は、ぜひこの作品で出会っていただきたいですよね。


撮影=竹下浩之

阿木もう、ぜひぜひ! ご覧になったことがない方にこそ観ていただいて「あー、こういう表現もあるんだな」と思っていただけたら嬉しいです。フラメンコだから、古典だからと構えずに、ちょっと形を変えたミュージカルを観るくらいに思っていただけたらいいかなあと。

宇崎それとスパニッシュと邦楽のコラボレーションが、聴いていて耳に心地良いし、楽しんでいただけると思うし。

阿木音楽といえば、昨年から徳兵衛役の歌で、(山口)百恵さんの息子さんの(三浦)祐太朗さんが加わって下さっているんです。

――まさかの2代続けてのコラボが!

阿木そうなんです(笑)。百恵さんに続いて祐太朗さんともお仕事させていただくとは思ってもいなかったので、感慨深いです。

宇崎祐太朗君は感情表現が豊かで、今の若い日本の歌手にはなかなかいないタイプですね。この作品はステージに上っていても歌い手さんは声しか聞こえないので、声自体に情感がないとお客さんに伝わっていかないんですが、その点祐太朗君は申し分ないですね。

阿木そうね。徳兵衛役の佐藤さんの踊りと一体化して、本当に最後は毎回泣きながら歌っていらっしゃって。その祐太朗さんの感動が、こちらにも直接伝わってきて、胸が熱くなります。

――そうやって親子2代で仕事をするほど、阿木さんと宇崎さんはこの浮き沈みの激しいエンターテインメント界で、長いキャリアを保たれてますよね。最後におうかがいしたいのですが、その創作活動の中で自分が一貫してやりたかったことが、この作品にどう反映されていると思われますか?


撮影=清水俊洋

宇崎日本人って割と「一筋」っていうのが好きじゃないですか? ロック一筋とか、クラシック一筋とか。でも僕自身は、それができないんです。音楽に国境がないというのと同じように、ジャンルにこだわらずすべての音楽がやりたい。広い高速道路を、みんなで肩を組んで走っていきたいという感じなんです。この『フラメンコ曽根崎心中』の中には、いろんな音楽的要素が入っていて、「これが自分のやりたいことだ」という代表作になっていると思います。

阿木私はこの作品を観ると、いつも原点に戻れる感じがするんです。私はアマチュアの方をステージに上げるというような、プロデュース活動もしているんですが、アマチュアにしか表現できないピュアさってあると思うんです。その一方で、プロにしか表現できない技術や感動もある。『フラメンコ曽根崎心中』は「ピュアなものを最高の技術で表現する」という、その両方を兼ね備えた作品。だからこの作品を観ると、プロになるかならないかの頃に、おののきながら歌詞を書いていた時代に戻れるんです。心をクリーニングしてもらいつつ、次の仕事に取り掛かって、またこの作品に戻るという。絶えず絶えず、この作品にふさわしい自分でいなければという気にさせてくれる…自分の本当にやりたいことを思い出させてくれて、次のステップを踏む勇気を与えてくれる。そういう作品だと思っています。


撮影=川島浩之


撮影=竹下浩之


撮影=清水俊洋

[取材・文=吉永美和子]

公演概要

フラメンコ曽根崎心中

<公演日程・会場>
2015/10/17(土)〜10/18(日)  シアターBRAVA! (大阪府)

<キャスト・スタッフ>
原作:近松門左衛門
プロデュース・作詞:阿木燿子 音楽監督・作曲:宇崎竜童
主演:鍵田真由美  主演・演出・振付:佐藤浩希
踊り:矢野吉峰  板倉 匠 (客演)  鍵田真由美・佐藤浩希フラメンコ舞踊団
ギター:横田明紀男 (Fried Pride)
フラメンコギター:鈴木 尚  パーカッション:大儀見 元
ピアノ:北島直樹  土佐琵琶:黒田月水  歌:三浦祐太朗

2015-09-09 16:08 この記事だけ表示