コミカルな人形振りに七役早替り!古典歌舞伎の名作に挑む「赤坂大歌舞伎」が開幕![公開稽古&囲み取材レポート]

 8月に新橋演舞場で上演された『阿弖流為』で圧倒的な存在感と迫力の演技を見せた中村勘九郎、中村七之助兄弟が次に挑むのは、亡き父、十八世中村勘三郎の「芸能の街・赤坂で歌舞伎を!」という一言が発端となり、2008年9月から始まった『赤坂大歌舞伎』の舞台。

舞台の見どころと、7人の意気込み


撮影:田中亜紀

 これまで、世話物の傑作『狐狸狐狸ばなし』、狂言をもとにした松羽目物『棒しばり』、山田洋次監督が補綴を勤めた『文七元結』、女形舞踊の代表作『鷺娘』、『怪談乳房榎』など、歌舞伎を観たことがない人にも楽しめる、話題性に富んだ作品を上演してきた。4回目となる今回は、勘九郎、七之助曰く、「あえて古典作品に挑戦したい」と、勘九郎は操り人形に扮して軽快に舞う『操り三番叟』、七之助は人間国宝・坂東玉三郎に手取り足取り指南を受けた『お染の七役』に挑む。


撮影:渡部孝弘


撮影:渡部孝弘

 初日前日には公開舞台稽古が行われ、『操り三番叟』と『お染の七役』の序幕が披露された。『操り三番叟』は五穀豊穣の祈りをあらわす能楽の舞踊「三番叟」を操り人形が舞うというユーモアあふれる舞踊で、人形になりきる三番叟と操る後見との息の合った演技が見どころ。踊りの名手と言われる勘九郎だけに、登場の場面からキレの良い動きを見せ、後見役をつとめる中村国生との息もぴったり。軽やかに舞っているように見えてかなり技量のいる演目で、糸のない状態で人形と後見のタイミングを合わせていくのは至難の業。この日も舞台転換の間に、勘九郎と国生が何度もバレエのリフトのように、後見が操り人形を持ち上げるタイミングを練習していた姿が印象に残った。


撮影:渡部孝弘


撮影:田中亜紀

 25分の幕間を挟んで女形・中村七之助の魅力を存分に堪能できる『お染の七役』の幕が開く。開演1分で油屋の娘・お染として登場したと思ったら、すれ違うように丁稚・久松として登場。下手からはけたと思ったら、すぐに奥女中竹川として上手から現れるといったように、序幕だけでも五役の変化を見せる。早替りを前提として書かれた演目ではあるが、それだけではなく、身分、性別、年齢の異なる人物のキャラクターを一人の役者が演じ分け、場ごとにどうみせていくかも見どころ。二幕で土手のお六と鬼門の喜兵衛といった悪のコンビが見せる「ゆすり」は、歌舞伎の醍醐味を味わえる見応えのある場面なので、こちらも注目だ。


撮影:田中亜紀

 偉大なる父を亡くし、中村屋を背負って立つ立場となった勘九郎、七之助。舞台での姿からは、歌舞伎の次代を担う覚悟がひしひしと感じられた。「とにかく歌舞伎を盛り立てたい。多くの方に見てもらいたい」と、先駆者として様々なことに取り組んだ父の遺志は、2人の若き歌舞伎俳優にしっかりと受け継がれている。


撮影:田中亜紀


撮影:田中亜紀

 初日の本番前には囲み取材も行われ、中村勘九郎、中村七之助、坂東彌十郎、片岡亀蔵、中村国生、坂東新悟、中村鶴松の7人が登壇し、『赤坂大歌舞伎』への意気込みや見どころなどについて、それぞれが語った。

中村勘九郎
アクティブでスケールの大きい舞台を楽しんでいただければと思います。『操り三番叟』は、お客様も肩の力を抜いて見られる演目。もちろん大変な踊りではありますが、「操り人形」になりきって軽やかに演じたいと思っております。
この公演の前にACTシアターでは、劇団☆新感線が35周年公演をやっていたんです。ロックが流れていた劇場に、今度は三味線の音色が流れる。「そういうところでやりたい」と常に話していたので、父もとても喜んでいると思います。

中村七之助
『赤坂大歌舞伎』は父が残してくれた財産のひとつ。父の魂を受け継いで一所懸命やるだけです。今回挑戦する『お染の七役』は、坂東玉三郎のおじさまに手とり足取り教えていただいた演目。稽古で教わったことを忠実にやり、自信を持って楽しみながら演じようと思います。早替りだけではなく、ドロッとしていたり、カラッとしていたりするキャラクターを場ごとに演じ分けていく部分にも注目していただければと思います。

坂東彌十郎
前回は勘三郎さんとご一緒に出させてもらいましたので、感慨深いです。各劇場で同じ芝居をやっても、その劇場の色、匂いが出てくるもの。赤坂ACTシアターにも独特の雰囲気がありますので、他の劇場とは違った歌舞伎を楽しんでいただけると思います。亡くなった勘三郎さんもそこを楽しんでらっしゃった。その気持ちをお二人が受け継いで頑張っているので、足を引っ張らないように、「彌十郎が出ていて良かったね」と少しは思ってもらえたら良いですね。

片岡亀蔵
ここのところ雨が続いていて天候が良くないですが、こういう芝居を見てスカッとしてもらえたらなと。前回の『怪談乳房榎』は、まさに早替りが見せどころでしたが、今回の『お染の七役』は、人柄をじっくり見せるという部分も大事なので、その場の雰囲気をきちんと作らないといけない。早替りだけではなく、内容もじっくり観ていただければと思っています。

中村国生
今回初めて出させていただきます。歌舞伎座とは違って若い方にたくさんいらしていただけるということで、1ヶ月楽しく一所懸命努めさせていただきます。

坂東新悟
観客としては何度も観に来ていたのですが、出演させていただくのは今回が初めてで大変緊張しています。僕は最初に舞台に出ていく重要な役なので、責任感を持って演じ、しっかりと良い空気を作って次の方たちに渡せればなと。精一杯頑張ろうと思っておりますのでよろしくお願いいたします。

中村鶴松
4度目の出演となるのですが、今回も二役、必死に努めさせていただこうと思っております。よろしくお願いいたします。

 終始なごやかなムードで行われた会見からは、チームワークの良さが伺えた。最後のあいさつでは、兄弟がジャンケンをして、勝った七之助に勘九郎が「男気を見せろ」と促すも、「早く言ってよ、時間がないから」と結局は兄が「仲の良いメンバーでございます。私たちも舞台上で楽しんでお客様も客席で楽しんでいただけるような舞台を繰り広げますので、ぜひ劇場のほうに足をお運びください」と場をきっちりと締めた。

[取材・文=石本真樹]

公演概要

赤坂大歌舞伎

<公演日程・会場>
2015/9/7(月)〜9/25(金)  赤坂ACTシアター (東京都)

<出演・キャスト>
出演:中村勘九郎  中村七之助  坂東新悟  中村国生  中村鶴松
片岡亀蔵 坂東彌十郎 ほか

曲目・演目:操り三番叟 (あやつりさんばそう)
於染久松色読販(おそめひさまつうきなのよみうり) 「お染の七役(おそめのななやく)」

2015-09-09 20:03 この記事だけ表示