『ヴェローナの二紳士』でヒロインに扮する溝端淳平から、10代の若者への挑戦状![インタビュー]

蜷川幸雄の演出/監修のもと、シェイクスピアが書いた37戯曲の上演を目指す「彩の国シェイクスピア・シリーズ」、その第31弾となる最新作が『ヴェローナの二紳士』に決定した。シェイクスピアの時代に倣い、全ての役を男性が演じる「オールメール」での上演となり、溝端淳平(ジュリア)、三浦涼介(プローティアス)、高橋光臣(ヴァレンタイン)、月川悠貴(シルヴィア)ら豪華キャストが集結。初めて女性役に挑戦する溝端に、意気込みや見どころを聞いた。

俳優人生に残る蜷川作品デビュー

――2年前、初めて蜷川さんの演出作品に参加された『ムサシ』を振り返って、どんなことが印象に残っていますか?

僕以外のほとんどが続投キャストで、ほぼ出来上がっているなかに自分が飛びこんでいくという状況だったので、稽古初日から通し稽古だったんですよ。関係者の方もたくさん見ていらっしゃるなかで、本読みもなくいきなりだったので…正直、どの本番よりも緊張しました。でも稽古でも本番でも、プレッシャーを感じている僕に、皆さん本当に温かく色々と教えてくださって。特に吉田鋼太郎さんは、“吉田塾”じゃないですけど(笑)、劇場に入ってからも毎日1時間くらい演技指導をしてくださいました。蜷川さんとスタッフの皆さん、そして尊敬すべき先輩方に囲まれて、海外公演にまで挑戦させていただいて、この上なく贅沢で有難い経験でした。

――海外公演は、シンガポールと韓国に行かれたんでしたね。

僕のことなんて何も知らないお客さんの前で、日本語で演技をするという怖さで胃が痛くなりそう…というか、本当に胃が痛くて吐きそうになりながら舞台に立ったんですけど(笑)。シンガポールでは、皆さん食い入るように観てくださって、カーテンコールでは立ち上がって拍手をしてくれて、僕は感動のあまりもう号泣してしまいました。怨みの連鎖を断ち切るという内容なので、韓国では「日本と韓国もこうあるべきですね」と泣きながら言ってくれる方もいて。演劇の力を肌で感じて、自分も微力ながらそれに参加できたと思うと、本当に感動的でしたね。僕の俳優人生のなかでも、ものすごく大きな1ページになりました。

――足かけ半年以上に及んだ公演のなかで、大きな壁にぶつかったようなことは?

そんな時も、先輩方が助けてくれました。海外公演中に声が出なくなりそうになったことがあって、つぶれることを恐れて僕がセーブしていたら、滅多に怒らない藤原竜也さんが本気で怒ってくれたんです。東京公演中、場当たりでうまくいかないところがあって、僕が一人残って稽古をしてから楽屋に戻ったら、鋼太郎さんと竜也君が待っていてくれたこともありました。何も言わずにセリフ合わせに付き合ってくださって、本当に有難かったですね。お二人には、地方公演中いつもご飯に連れて行っていただきましたし、今でも公私とも共可愛がってもらっています。

■ただの“女装”で終わらせたくはない

――そして今度は、『ヴェローナの二紳士』で再び蜷川さんの舞台に立たれます。

蜷川さんのシェイクスピア作品に出ることが、俳優としての僕の目標だったんです。舞台はもちろん、稽古もよく見に行かせていただいていて、蜷川さんの演出を受けて若い俳優さんが殻を破る瞬間を目の当たりにしては、羨ましいなあと思っていました。だから今回のお話をいただいた時はすごくうれしかったんですが、まさか女性役だとは思っていなくて(笑)。僕はヴァレンタインかな?それともプローティアスかな?相手の女性役は誰だろう?と勝手に想像していたので、ジュリアと聞いて「ええ〜!?」という感じでした(笑)。

――ジュリアはしかも、いかにも乙女な女性です。演じるにあたっては、共感を目指すのでしょうか、それとも距離をもって表現される感じになるのでしょうか。

ジュリアってすごくピュアで、屈折していないというか、影のない女性ですよね。実は僕もそういうタイプで、そこはよく蜷川さんに怒られるところでもあるんですけど(笑)。だから、自分が女性だったらジュリアは遠くないし、自分が女優さんだったらそんなに難しい役ではないような気がするんです。ただやっぱり、男性が演じるという意味では難しい。歌舞伎の女形の方や、同じオールメール・シリーズの『ヴェニスの商人』でヒロイン役だった中村倫也さん、先日一人で『マクベス』全役を演じられた佐々木蔵之介さんなどを参考に、女性らしさを研究していきたいと思っています。ただの“女装”と思われては悔しいので、心から女性になって、ジュリアという役を魅力的に演じていきたいですね。

――『ヴェローナの二紳士』という作品そのものの面白さについては、どう捉えていらっしゃいますか?

あくまで“僕なりの”面白さになりますが…僕は何度か戯曲を読んで、「10代の恋愛なんてどうせ喜劇みたいなもんなんだよ!」って、シェイクスピアに言われているような気がしたんです。だってみんな、ものすごいきれいな台詞で愛を語っておいて、急にわけもなく心変わりするんですよ(笑)。恋愛を美化しがちな若者に対する、シェイクスピアの醒めた目線が感じられるのが、僕にはすごく面白いですね。だからぜひ、当事者である若い人たちに観に来てもらいたい。ちょっと挑戦的な言い方になりますけど(笑)、「恋愛ってもっと切なくて温かいものじゃない?」とか思っちゃうのかなと思うと、反応が楽しみです。

――ではぜひ、「そうは言っても演劇は敷居が高くて…」と思っているかもしれない若い方の背中を押すようなメッセージをお願いします。

今、映画の世界でも“体感”を謳うものが出てきてますけど、「本当に体感するなら舞台だから!」って思います。生身の俳優が生の声で演じているのを、生の目でその場で受け取る贅沢を、ぜひ味わってみてほしいですね。あとは…僕が女性役をやるのは、理想としては続けたいですけど、もしかしたら最後になるかもしれません。続いた場合は“最初のチャレンジ”として、続かなかった場合は“最初で最後”として、どちらにしろ貴重な機会かなと。というのは冗談にしても、僕自身、まだジュリア役をやっている自分が想像できていないのは確かなんです。でもチャレンジして、苦悩して、壁を乗り越えて、必ず何かを掴んで皆さんにお届けしたいと思っていますので、ぜひ観にいらしてください。

[取材・文=町田麻子]
[撮影=坂野則幸]

公演概要

『ヴェローナの二紳士』
彩の国シェイクスピア・シリーズ第31弾

<公演日程・会場>
2015/10/12(月・祝)〜10/31(土) 彩の国さいたま芸術劇場 大ホール(埼玉県)
2015/11/6(金)〜11/9(月)  シアター・ドラマシティ (大阪府)
2015/11/14(土)〜11/15(日)  穂の国とよはし芸術劇場PLAT (愛知県)
2015/11/21(土)〜11/23(月・祝)  キャナルシティ劇場 (福岡県)

<キャスト・スタッフ>
出演:

溝端淳平
三浦涼介
高橋光臣
月川悠貴

正名僕蔵
横田栄司
河内大和

2015-09-11 20:25 この記事だけ表示