熟練の芸とチームワークが炸裂!若きホープ藤山扇治郎が清新な風[ゲネプロ]

 新橋演舞場で公演中の「松竹新喜劇 新秋公演」、2年連続となった東京公演の舞台稽古が公開された。その様子をレポートする。

「松竹新喜劇 新秋公演」ゲネプロレポート

常にその時代なりの感性を取り入れ観客を喜ばせて来た松竹新喜劇だが、今回は正式入団からまもなく2年となる若きホープ藤山扇治郎が、祖父藤山寛美の当たり役に挑戦して作品に清新な風を吹き込んでいるのが印象的だ。 『一姫二太郎三かぼちゃ』で扇治郎が演じているのは、都会に出て行ったエリート揃いの兄や姉、弟にまでバカにされ、田舎で両親と暮らす落ちこぼれ三男坊の三郎。東京での上演は藤山直美主演による1993年以来で、男性の主人公では1978年の寛美以来となる。 母親の還暦の祝いに子供たちが久しぶりに集まることになり、笑いを誘うやりとりが展開されていくのだが、扇治郎の三郎には今を生きる若者の等身大のリアリティーがある。喜劇的場面で笑えば笑うほど、心優しき青年の悔しさが浮かび上がり切なさが胸に響く。圧倒的な存在感と芸で観客をぐいぐい引っぱっていた寛美とは違ったアプローチで、ごく自然に爽やかな感動へと導いてくれる。

 

劇団代表の渋谷天外、母親役の水谷八重子、父親役の文童らベテランの胸を借りてまっすぐに役に取り組む扇治郎の姿が、三郎の純粋さに重なり清々しい。まさに今この時ならではの魅力がある。

 

松竹新喜劇は2度目の出演となる久本雅美が長女(紅壱子とのダブルキャスト)を演じており、すっかり劇団に溶け込んでいる。

その久本が本領を発揮しているのは、金貸しの強欲婆おぎんを演じる『お祭提灯』。これは昨年の東京公演に続きリクエストによって2年連続上演となった人気作だ。提灯に隠したはずの大金を追って、提灯屋役の渋谷天外らがひたすら走る。その抱腹絶倒の走りっぷりは劇団名物でもはや伝統芸。ここでも扇治郎が祖父の当たり役だった丁稚をキュートに演じている。

金貸しは曽我廼家寛太郎とのダブルキャストで昨年の公演では歌舞伎俳優の坂東彌十郎が演じていた。配役によって味が変わるそれぞれの面白さは、作品の持つ底力の証明だ。

寛太郎の何ともいえない愛すべきキャラクターが放つボケの連続に、笑いが止まらないのは『色気噺お伊勢帰り』。お伊勢参りから帰った長屋の住人、左官の喜六と大工の青八が巻き起こす騒動を描いた物語で、歌舞伎『伊勢音頭恋寝刃』がモチーフに使われている。見た目も行動も万事につけて冴えない喜六の誠実さ、人のよさに心が和んで大団円。スカッと最後を締めてくれるのは水谷八重子だ。

『先づ健康』、『愚兄愚弟』はいつの世も変わらない兄弟の物語。兄弟が意地の張り合いの末に見つける真の幸福は、人と人のつながりが希薄な現代だからこそよけに響くものがある。

昼夜5作品、何とも幸せな気分になれる粒ぞろいのラインアップだ。超ベテラン小島慶四郎が独特の存在感で健在なのは嬉しい限りで、熟練の出演者たちが抜群のチームワークで喜劇の楽しさ、面白さを満喫させてくれる。

[取材・文=清水まり]

公演概要

松竹新喜劇 新秋公演

<公演日程・会場>
2015/9/13(日)〜9/27(日)  新橋演舞場 (東京都)

<スタッフ・キャスト>
出演:渋谷天外、水谷八重子、藤山扇治郎、高田次郎、小島慶四郎、曽我廼家寛太郎、久本雅美、曽我廼家文童、大津嶺子、長江健次、中川雅夫、井上惠美子、曽我廼家玉太呂、曽我廼家八十吉、江口直彌、川奈美弥生、高倉百合子、紅壱子

演目:
昼の部
一、先づ健康
 茂林寺文福 作
二、一姫二太郎三かぼちゃ
 茂林寺文福 作
三、お祭り提灯
 舘直志 作
夜の部
一、色気噺お伊勢帰り
 香川登枝緒 作
二、愚兄愚弟
 舘直志 作

2015-09-15 17:34 この記事だけ表示