イキウメ別館カタルシツによる、新作SFミステリー。舞台『語る室』[公開稽古レポート]

 劇団イキウメを主宰する傍ら、蜷川幸雄に戯曲「太陽2068」を提供、四代目市川猿之助主演のスーパー歌舞伎U「空ヲ刻ム者」の作・演出を手がけるなど、幅広く活躍中の劇作家・演出家、前川知大。イキウメの“別館”として劇団とはまた異なる表現を志すカタルシツでの公演「語る室」が現在、東京芸術劇場シアターイーストにて上演中だ。初日に先駆けて公開された舞台稽古を観た(9月18日19時)。

公開稽古レポート

 ――とある田舎町の山道で、5年前の夕方、一人の園児とバスの運転手が揃って姿を消した。現場に駆け付けた警官は、その園児が自分の姉の息子であることを知る。息子を失い半狂乱となり、常軌を逸した行動に出る警官の姉。警官とバス運転手の兄との間に、次第に心の交流が生まれる。やはり姿を消した重要参考人、姉がすがった霊媒師、ヒッチハイカーとその妹などが、確かに縁につながれた、しかし奇妙な人の輪を形成していく。神隠しとタイムトラベル、“幽霊”などが扱われ、現在と回想シーンとがフラッシュバックの手法でつづられていくが、前川の作劇及び演出には、複雑な時制をもきちんと語る確かなものがある。

蜷川演出の「太陽2068」でも印象的な演技を披露した中嶋朋子が、息子を失った母親役で出演。彼女をはじめ、出演陣が、生活感に根差したきっちりとした演技を見せているからこそ、異界を語った物語であってもなお、それはどこか現実と地続きの世界なのだと思わせてくれるところがある。板垣雄亮演じるオカマ口調の霊媒師にも、不思議な説得力がある。例えば、東日本大震災の後、被災地で幽霊の目撃談が多発、「NHKスペシャル」で特集番組が放映されるなど、心霊現象は決して“オカルト”としてだけ片づけるべきものではなく、この「語る室」という作品で語られるように、現世と来世、過去と現在と未来などとを考え、つなぎ得るものとなり得るかもしれない。異界を描く物語を得意としてきた前川の今後の作品を楽しみ、読み解く上でも、見逃せない舞台といえよう。

[取材・文=藤本真由(舞台評論家)]
[舞台写真=撮影:田中亜紀]

公演概要

『語る室』

<公演日程・会場>
2015/9/19(土)〜10/4(日)  東京芸術劇場 シアターイースト (東京都)
2015/10/9(金)〜10/11(日)  ABCホール (大阪府)

<出演・キャスト>
出演:
浜田信也 安井順平 盛隆二 大窪人衛 木下あかり 板垣雄亮/中嶋朋子

作・演出:前川知大

2015-09-25 17:30 この記事だけ表示