佐藤隆太が難役“カビ人間”に挑戦! 笑って泣ける名作『ダブリンの鐘つきカビ人間』が10/3にいよいよ開幕!! [稽古場レポート]

 後藤ひろひと脚本、G2演出で過去に二度(2002年、2005年)上演されている『ダブリンの鐘つきカビ人間』がキャストを一新して帰ってくる。心は美しく外見は醜いカビ人間に佐藤隆太が、ヒロイン・おさえには東京パフォーマンスドールの上西星来が扮するほか、白洲迅、大塚千弘、小西遼生、中村昌也、木戸邑弥、明樂哲典、マギー、後藤ひろひと、吉野圭吾、篠井英介、村井國夫という豪華かつフレッシュな顔合わせが実現。中世ヨーロッパにも似た架空の町を舞台に美しく残酷な童話的世界が描かれていくのだが、後藤ならではのヒネりの効いた小ネタの数々、ビジュアルにこだわりのあるG2演出に目を奪われ、夢中になって笑っているとやがて切ない気持ちになり、思わず涙する……。おそらく観客は物語に浸れば浸るほど、さまざまに揺れ動く自分の感情に驚くことになるはずだ。果たして今回はどんな『〜カビ人間』が誕生するのか、10/3の東京公演初日に向けて準備が進む稽古場を訪ねてみた。

意外な物語展開には、おそらく誰もが心揺さぶられるはず

 稽古場の扉を開けると、まさにこの日は物語のクライマックスシーンを稽古中だった。全体的にはとても静かで穏やかな空気が流れている稽古場。ステージは少々傾斜のついた“八百屋舞台”だ。場面転換があるたびに移動する階段は役者たちが自ら動かしたりもしていて、場の雰囲気を一瞬で変えることを容易にしている。

 さまざまな奇病に悩まされている、架空の町の市民たち。たとえばヒロイン・おさえの場合は、口を開くと自分の感情とはまるで正反対の言葉が出てしまう病にかかっている。そして、かつて美少年だったが心が醜かった男は病気にかかったことで心は美しく容姿は醜く変わってしまった。彼こそが市民に疎まれながらもけなげに生きる、心優しき鐘つき番のカビ人間なのだ。出会った当初は行き違いがあったりしていたものの、徐々にお互いを理解するようになるカビ人間とおさえ。そんな中、とある企みから事件の犯人として人々に追われることになったカビ人間をおさえは救おうとするのだが……。

 Scene11は、まずはカビ人間とおさえ、ふたりのシーンから。佐藤隆太と上西星来が演技に入る前に軽くセリフ合わせをしているとどうやら上西が途中で妙なリアクションをしてしまったようで、緊迫感溢れるシーンでもこういう一瞬には屈託なく笑顔がこぼれ出ているのが微笑ましい。カビ人間のピンチを“反対の意味の言葉”でおさえは必死に伝えようとするのだが、それに気づきつつも町に戻っていくという複雑な感情を佐藤は繊細に表現し、ひたすら一生懸命にカビ人間を助けようとする一途なおさえを上西も全力で演じている。佐藤・上西コンビはこれまでのカビ人間・おさえの関係性よりも比較的、純粋度、初々しさが増しているように感じた。

 さらにこの場面ではシスター役の篠井英介が悪女らしい悪女を怪演したり、戦士役の小西遼生がここでは僧兵役に扮した明樂哲典と中村昌也を相手にさすがの身のこなしでキレのある殺陣を披露したりと、見応えあるシーンが続く。ひととおり通すとG2は演出席から立ち上がり、まずはカビ人間とおさえ、次は戦士と僧兵たち、さらにシスターという順でパートごとに役の感情、または効果的な動きなどを細かく確認していく。特に旧知の仲である篠井とは、去り際に台本には書かれていない一言をアドリブで入れてみようか?などと共演者たちには聞こえないように打ち合わせをしている様子。なんだかとても楽しそうだ。そして案の定、その一言が篠井から発せられた瞬間には一瞬で稽古場は笑いに包まれていた。

 各自、G2からの注文、提案を踏まえて、再度この場面の頭から演技をスタート。すると、今度はおさえの真意に気づいた時のカビ人間の表情が先ほどよりもよりわかりやすい“気づき”の瞬間になっていた。こうやって2回、3回と演技を繰り返すことで、徐々に各キャラの心情がこちら側にもきっちり伝わってくるようになり、各自の芝居も精度が上がりどんどん完成形に近づいていっている。

 そして衝撃のラストシーンへとつながるScene12。市民たちが大勢登場するこの場面では、G2はそれぞれの立ち位置や移動の仕方など、全体のバランスを見ながらフォーメーションを微調整していく。やがて物語の展開は意外な方向へと転がり、誰もが心揺さぶられるはずのクライマックスへと進んでいくのだが……。

 この後も引き続き稽古を重ねていくことでより完成度を増した、笑って泣ける上質のファンタジーが誕生するはず、初日開幕が今から楽しみだ。

 渋谷・PARCO劇場で行われる東京公演はこのあと10/25までの上演。さらに11月には大阪、福岡、広島、仙台、札幌でも公演が予定されている。

[取材・文=田中里津子]
[撮影=加藤 幸広]

公演概要

PARCO&CUBE Present 『ダブリンの鐘つきカビ人間』

<公演日程・会場>
2015/10/3(土)〜10/25(日) PARCO劇場 (東京都)

※訂正とお詫び※
9/30記事公開時に、東京公演の会場が誤って記載されておりました。
正しくは、PARCO劇場での開催です。


※公演終了後アフタートークショーあり
10/5(月) 19:00 公演終了後 上西星来・村井國夫・後藤ひろひと
10/7(水) 19:00 公演終了後 白州迅・大塚千弘・小西遼生・明樂哲典
10/8(木) 14:00 公演終了後 篠井英介・吉野圭吾・中村昌也・木戸邑弥
10/9(金) 19:00 公演終了後 後藤ひろひと・マギー・佐藤隆太・上西星来

2015/11/4(水) 福岡市民会館 (福岡県)
2015/11/6(金) JMSアステールプラザ 大ホール (広島県)
2015/11/13(金)〜11/15(日) 森ノ宮ピロティホール (大阪府)
2015/11/17(火) 仙台電力ホール (宮城県)
2015/11/20(金) 札幌市教育文化会館 大ホール(北海道)

※札幌公演は、イープラスでのお取扱いはございません。

<スタッフ・キャスト>
脚本:後藤ひろひと 演出:G2
出演:佐藤隆太 上西星来(東京パフォーマンスドール)
   白洲迅 大塚千弘
   小西遼生 中村昌也 木戸邑弥 明樂哲典
   マギー 後藤ひろひと 吉野圭吾
   篠井英介
   村井國夫

2015-09-30 19:21 この記事だけ表示