あの有名Jポップも登場?! ミュージカル「ボーイバンド」稽古場レポート[稽古場レポート]

 とあるボーイバンド(アイドル・ボーイズ・グループ)をめぐる虚実を描いた「ボーイバンド」は、1999年にロンドン・ウエストエンドで初演され、その後世界各国で上演されるようになった作品。脚本を手がけたのは、ジュディ・ガーランドの晩年を扱った「End of the RAINBOW」が日本でも夏に上演されたばかりのピーター・キルターだ。志木市民会館パルシティでのプレビュー公演まで一週間となった日の稽古場を訪れ、一幕の通し稽古を観た。

稽古場レポート

 サクヤ(碓井将大)とゲン(味方良介)はプロデューサー、リチャード入賀(新納慎也)によるオーディションに合格、ソロ経験もありリードボーカルを主に務めるソースケ(平野良)、作詞作曲を担当するリュウ(大山真志)、そしてカツミ(藤田玲)と共に5人組ボーイバンド「フリーダム」としてデビューすることに。マネージャーに織辺征人(伊礼彼方)、振付に立花アンリ(蒼乃夕妃)を得て、次第にビッグになってゆく。だが、成功と共に、彼らがそれぞれ抱える悩みや秘密もあらわになり――。そんなボーイバンドの物語が、彼らの楽しいソング&ダンスと共につづられてゆく。作品は日本に置き換えられ、楽曲も各国プロダクションの選曲に任されているということで、今回はオリジナル曲及び誰もが一度は耳にしたことがあるだろう有名Jポップが次々と流れる。

 この作品が初演された1999年といえば、イギリスで絶大な人気を誇った“テイク・ザット”の解散から3年。テイク・ザットのアイルランド版として結成された“ボーイゾーン”も活動休止に向かっており、メンバーの一人、早世したスティーヴン・ゲイトリーがゲイであることをカミングアウト。彼らの弟分的存在の“ウエストライフ”がアイルランドからデビューし、アメリカでは“バックストリート・ボーイズ”が「ミレニアム」を初めて全米アルバムチャート1位に送り込んだ年である。今ここに挙げた4つのボーイバンドはすべて5人組であって、作中登場するボーイバンドが「フリーダム」という名の“5人組”であることにまずはニヤリとしてしまう。作品のテーマともかかわってくるこの「フリーダム」といえば、ジョージ・マイケルがポップス・デュオ“ワム!”時代及びソロとなってから飛ばした大ヒット二曲(同名だが別々の楽曲)のタイトルであり、テイク・ザットを脱退したロビー・ウィリアムズが後者をカヴァー、そしてジョージ・マイケル本人はソロとなって後にゲイであることをカミングアウトしている。キルターの脚本はこのあたりの状況をよく踏まえて書かれており、当時のボーイバンドをめぐる状況を知っていると思わずニヤリの連続。もちろん、アイドルに恋愛は許されるべきか、訴訟沙汰まで起きた最近の日本の状況にもリンクしてくるところが大いにある。

 二幕になってから5人のメンバーそれぞれのドラマがよりじっくりと描かれてゆくのだと思うが、ボーイバンドたるもの、メンバーそれぞれが歌に踊りに華と個性を競い合ってこそ。本番の舞台ではさらなる切磋琢磨が見られることを期待したい。恋愛もセックスも売れるまで禁止などという契約でメンバーを縛る非人間的なプロデューサーを、新納が憎々しげに熱演。プロデューサー自身、何か秘密を抱えているようでもあり、二幕の展開が気になる。振付担当アンリ役の蒼乃は作品の紅一点。プロデューサーがメンバーをまるで人間ではないかのように扱う都度、彼に食ってかかる勝気な様にすかっと胸がすく。仕事が欲しいと頼み込むくだりでは気のいいコメディエンヌぶりも見られる。バンドを支えるマネージャー役の伊礼彼方は、同じ劇作家の「End of the RAINBOW」で晩年のジュディ・ガーランドのフィアンセ役を演じて印象を残したばかり。今回は、黙々と仕事をこなしながらもふと見せる表情に秘めた感情に説得力があり、彼がボーイズにとって大きな助けとなる良心であることをうかがわせる。5人組ボーイバンド“フリーダム”の栄光の行方は――? 東京公演は10月15日、よみうり大手町ホールにて開幕する。

[取材・文=藤本真由(舞台評論家)]

公演概要

「ボーイバンド」

<公演日程・会場>
2015/10/15(木)〜10/25(日) よみうり大手町ホール(東京都)
2015/10/31(土) サンケイホールブリーゼ(大阪府)

<スタッフ・キャスト>
出演: 平野良、大山真志、味方良介、藤田玲、碓井将大、新納慎也、伊礼彼方、蒼乃夕妃 ほか
作:ピーター・キルター
翻訳:芦沢みどり
上演台本・訳詞:高橋亜子
演出:板垣恭一

2015-10-08 17:18 この記事だけ表示