カムカムミニキーナ劇団旗揚げ25周年記念公演 「>(ダイナリィ)」 大稲荷・きつね色になるまで入魂 山崎樹範インタビュー[インタビュー]

 今年劇団旗揚げ25周年を迎え、春の「スワン・ダイブ」に引き続き秋にも記念公演を打つカムカムミニキーナ。「>(ダイナリィ)〜大稲荷・きつね色になるまで入魂」と題されたこの舞台でも、現代&大正モダン期、東京&京都などなど、劇団主宰の松村武のこと、時空を超える壮大なスケールの作品世界を展開してくれそうだ。座長を務める山崎樹範に作品への意気込みを訊いた。

インタビュー

――資料には今回、山崎さんが“満を持して”座長を務める、とあります。

 名義貸しみたいな座長は前にも一度やったことあるんですけどね。ま、座長と言っても主役ってわけじゃないし、ちらしの一番上に名前があるってだけで、あとは公演パンフレットの編集とかデザインとかの責任者を務めるという。「スワン・ダイブ」のときは八嶋智人が座長だったんで、その流れで今回は僕という。と言っても一度もなるって了承してないんですけどね。松村八嶋あたりの上に言われるがままに、ですよね。雇われ店長みたいなもんですよ、風俗店の。何かあったとき、捕まるのはお前だぞっていう。

――え、えっと、意気込みをおうかがいしたかったのですが…。

 批判は受けたくはないんで、頑張ろうとは思ってますよ。作品をおもしろくしたいとは思ってますし。あとは、みんなで飲みに行ったとき少し多めに払おうかなとか。

――何かいろいろ大変なんですね…。

 大変ですよ。あとはパンフに両親出すとか。あのね、愚痴っぽくなるけどいいですか?

――私でよろしければ。

 「スワン・ダイブ」の公演パンフのね、責任編集を八嶋がやったんですよ。開いたら、いきなり、今をときめく売れっ子の松岡茉優さんと八嶋が対談してて。聞いたらね、そういうの全部自分のつてでやれっていう。僕、そんな友達いないから、両親切り売りするしかないですよ。だからね、明後日、実家に行って、それバックに両親と写真撮ってきます。

――ちなみにご実家は?

 足立区です。

――ご両親はそのあたりの事情を?

 あ、それは全然わかってないです。ちょっと写真撮ろうよくらいしか言ってない。詳しく説明するとアレなんで。

――ご両親は舞台は観にいらっしゃるんですか?

 母親はだいたい来ますね。父親は全然来ないです。

――観劇に来て、パンフを開いて、ご自分が載っているのを見たら…。

 そうですね、どの時点で謝るかですね(苦笑)。今のところ考えてるのは、築30年の実家を10月に取り壊すんですよ。だから、その思い出を両親と語ろうという。思い出、いろいろ詰まってますからね。そこに住んでいたときに芝居も始めたわけですし、その後そこから出て独り暮らしして…。パンフを買って、僕の実家の思い出話を読まされる人がどう思うかはわかりませんが。

――ちなみに、作品内容とご実家取り壊しとの関係性は?

 あ、それは全然ないです(苦笑)。うちの主宰の作る話ってけっこう難しいんですよね、いくつか時代があって。最近、家のルーツをたどるみたいな番組があるじゃないですか。そういうことを調べて、その結果を芝居として演じる演劇探偵の集団がいて、演じているうちに狐憑きというか、役から抜けられなくなってしまったり。役でも“憑依”とかって言いますよね。それで、ダジャレじゃないけど、「>(ダイナリィ)」、大稲荷っていう。

――松村さんの物語はときにあらすじを書こうとすると困難を感じたりもする壮大なスケールのものが多いですが、最初にその説明を聞くときの心境はどんな感じですか。

 特に説明なかったりしますね。昔は本当に意味がわからなくてやっていて、そのまま舞台に立ってたこともありますよ。やってる本人がわからないんだから、そりゃあお客さんもわからないだろうなっていう(苦笑)。ふわふわ立ってましたね。最近の方が自分自身もわかってきたし、割と一貫性がありますよね、神話とか。でも、あの人こないだ平気で言ってたけど、五年くらいで作風ががらっと変わると。だから今回のこの作品が今までの流れにあるかどうかもわからない。興味がいろいろ移り変わっていくんでしょうね。ト書きを言ってるみたいなセリフとかありましたし、演劇としては相当実験的なことをやってますよね。全部が伝わるとか松村さんも思ってないんだと思うんです。10あるうち2、3でも伝われば十分という。

――そんな松村ワールドに感じられる魅力とは?

 潔さですね。好きなことをやる潔さ。変に媚びない。物語にしても変に媚びたりしてるのってあるじゃないですか。演劇ってそもそも、意味わかんないけどおもしろいって、そういうものが当たり前にあっていい世界だと思うんですよね。

――そんな集団が25周年を迎えました。

 僕は完全に外様大名みたいな感じなんで。あんまり出てないですから。2年にいっぺんとか、平気で4、5年出ないとか。

――出なくて除名になったりとかはないんですか。

 昔ね、さすがに迷惑かかるかなと思って、やめますって松村さんに言いに行ったことがあるんですよ。そしたら、帰ってくるところがあった方がいいんじゃないかって言われて。そういうところ、寛大なんですよね。劇団のお父さんが松村さんで、お母さんが八嶋さんなんですよ。それで、何年かその言葉に甘えて出ないでいたら、お母さんの方に、お前いい加減にしろよと怒られました(苦笑)。僕ね、上二人が姉の末っ子長男なんですけど、その気質を劇団でも貫こうと思って。わがままなんですよ。せっかく芸能界にいるんだから、芸能界でもっとえらくなりたいという欲があって。それ言い出すと、年に一度は必ず劇団公演に出ている八嶋さんがあんなにえらくなって、俺がやってることは何なんだろうっていう矛盾が生じてきてるんですけど(苦笑)。どうなりたい、かわかんないんですよね、僕。

――今、一瞬、「どうなりたいんですかね、僕」と聞かれるのかと思いました(笑)。

 聞こうと思って、さすがにおかしいだろうと思ってやめました(苦笑)。たまに来る先輩のくせにえらそうということで、下の子たちからはめんどくさがられてるだろうし…。

――でも、帰るところがあるわけですよね。それはどんなお気持ちですか。

 恥ずかしいですね。それこそ、明後日帰る実家と同じですよ。実家って、そんなに帰りたくないじゃないですか。いつでも帰れると思っている、足立区と渋谷区みたいな関係なんですよ、劇団と僕も。

――パンフとつながったじゃないですか!

 今、強引につなげました(苦笑)。何か気恥ずかしいんですよね。帰ってみるといつも通り居心地がいい。自分の場所もあったりするし。でも、外にいると、お前の実家見たよ、つまり、カムカムみたよって言われると何か恥ずかしいんですよね。決して恥じているわけじゃないんですけど。

――今回はシリーズ「サラウンド・ミニキーナ」スペシャルと銘打ち、バックステージの役者もすべて見える“スケルトン舞台”ということですが。

 袖にいるところとか全部見えるみたいですね。着替えてるところとか、下を這って移動してるところとか。。そこも全部芝居にするみたいなんですけどね。わかんないですね松村さんの考えてることは。まったく想像がつかないですね。見せなくていいんじゃないかなと自分は思ってますけど(苦笑)。

――ご自身の役柄は?

 僕と客演の清水宏さんが劇団員なんですけど、演劇モンスターじゃないですか、あの人。お客さんの笑いが思ったより一拍早いってだけで怒り出す。めちゃめちゃクレイジーで熱い。僕としてはもう、ついていくだけですよね。

――ご実家が建って30年、劇団は旗揚げ25周年。この月日はいかがですか。

 僕が入ってからももう20年経ちますからね。早いもんですけど、時間って説得力にはなりますよね。それだけの長さ続いてきているという。そういう意味ではやはり、劇団の父母、松村八嶋はすごいなと思いますよ。何かね、戻ってくるんですよ、みんな。吉田晋一さんとか、やめて7年経ってから復帰してきたし。今いる劇団員のうち、僕が一番古いオーディション組なんですけど、今回客演する本間茂樹さんって同期だったんですよ。彼も一度やめてタップとか違う活動してたんだけど、また一緒にやりたいって今回出るという。恥ずかしいですよ、同期の人間って。

――そこも恥ずかしいんですか?

 だいたい恥ずかしいですね。人と何かやるって恥ずかしいです。お芝居も。

――見られるのも恥ずかしいんですか?!

 好きですけど、恥ずかしいですよ! そう聞かれることも恥ずかしい(笑)。

――すみません。舞台の方って見られるのが好きなのかなと思って、一生懸命見るようにしてたんですけど。

いや、それはうれしいですよ。見られたくて芝居始めたようなもんだし。でも、その質問に「好きですよ」とは、振りかぶらないと言えないじゃないですか(笑)。

――そう言われればそうですね(笑)。ちなみに、同期の方と交流は?

ないです。というか僕、普段劇団の人と連絡取ったりしないですし。たまに藤田記子さんと飲むくらいで。もはや確約が取れてるわけだから、そこは。家族じゃないですか。どれだけ離れてようが確約が取れてるから、わざわざ会わない。

――そんな皆さんと久しぶりに会ってお芝居をすると…。

いいんですよ。みんなどんどん達者になってるし。藤田さんなんか、舞台上でどんなハプニングやミスがあろうが大丈夫だと思えるし。カムカムって、先鋭的な軍隊みたいな集団なんですよね。みんなストイックで、シュッととんがっていて、劇団に対する愛がすごい。そこに僕は、もっとゆるくていいんじゃない? って、身体に悪い人工甘味料とか着色料とかを持ち込んでいる感じかなと(苦笑)。

――座長公演もパンフレットも俄然楽しみになってきました。

やるからには絶対おもしろい舞台にしますよ。それくらいしか、役者として守れる矜持がないですからね。清水さんもいるんで、絶対ハラハラできると思うんです。それが演劇の醍醐味だと思いますし。幅広い方に観ていただきたいですね。こういう舞台ってあるんだぞという。演劇って、誰か一人じゃない、トータルの力だという、そのすごさをぜひ観て感じていただきたいですよね。

[取材・文=藤本真由(舞台評論家)]
[撮影=坂野則幸]

公演概要

カムカムミニキーナ「>(ダイナリィ)」〜大稲荷・きつね色になるまで入魂〜

<公演日程・会場>
2015/11/12(木)〜11/22(日)  座・高円寺1(東京都)

<キャスト・スタッフ>
出演:山崎樹範 藤田記子 吉田晋一 松村武
   清水宏
   夕輝壽太 莉奈
   未来 田原靖子 田端玲実 佐藤恭子 長谷部洋子
   米田弥央 亀岡孝洋 藍山彩 元尾裕介 
   正木航平 菊川耕太郎 福久総吾
   本間茂樹 芹井祐文  他

   作・演出:松村武

2015-10-16 11:52 この記事だけ表示