舞台『私のホストちゃん THE FINAL〜激突!名古屋栄編〜』 約4年に渡り夕妃を演じてきた廣瀬智紀にインタビュー![インタビュー]

 実際のホストクラブ同様に、観客によるリアル指名ランキングシステムを取り入れた演出も話題になっている舞台『私のホストちゃん』が、三作目にしてついに完結する。今回の主役は、舞台以前に放映されていたドラマ時代から本作に関わって来た夕妃役の廣瀬智紀。ファイナルを前に、約4年に渡って演じて来た役への思い、そして作品への愛情を語ってもらった。

ファイナル感をしっかり出せる舞台にしたい。

――『ホストちゃん』、いよいよファイナルですね。

 最初のドラマのときからそうだったんですけど、僕はいつも「これが最後だ」っていう思いで作品に取り組んでいて…続編があったとしても次に自分が出られるかどうかは分からないので。なので、夕妃を応援してくださっているみなさんにも毎回ちゃんとお別れを伝えるような気持ちで完全燃焼してやってきたんですけど、意外となんだかんだと続いてましたね(笑)。なので、またこうやって『ホストちゃん』に出られるのはホントに嬉しいことですし、タイトルに“FINAL”とついているということは、いよいよホントにこれが最後なんだなぁと思うと、ちょっと特別な気持ちになります。

――専用のアプリを使ってお気に入りのホストちゃんに「ラブ」と呼ばれるポイントを貢げること、また、エンディングは毎回その「ラブ」の集計でナンバーワンを獲得したホストちゃんが飾るという“リアル・ホストランキング”の導入は本作ならではのシステム。初めて知ったときは少し驚きました。

 青山劇場で上演した初演舞台のとき、正直「ラブ」のシステムは自分の中で葛藤がありました。「ラブ」を“貢いでもらう”にはお客様がチケット代以外にもお金を使うわけですから、やっぱり若干の心苦しさを感じてしまって。でもまぁ…そういう形で応援してもらうのが僕らホストちゃんなんだとしたら、僕は「みなさんにもらった以上のモノを返していきたい」って思ったんです。それってもうお芝居だけじゃ返しきれないというか、ホントにホントの「愛」しかないなって。向こうが「ラブ」ならこちらは「愛」。たくさん応援していただいている分、精一杯愛をお客様に返していこうと思ったら葛藤もなくなりましたし、舞台上でいろんなことが頑張れたんです。そして2作目ではとうとうナンバーワンをとらせてもらえる日があり…それは、「自分の気持ちがみなさんに伝わったのかな」と思えた瞬間でもありました。ずっと応援してくださった方は「やったね!」って一緒に喜んでくれたし、当日僕に「ラブ」をくださったすべての方たちに僕がナンバーワンになった景色をお魅せできたことも誇らしくて。自分の成長という部分でも、とてもいい体験ができた公演になりました。

――夕妃というキャラクターについてはいかがですか? 長く演じているだけに思い入れも強いかと。

 そうですね。けっこう愛情深いです。ドラマ、ゲーム、ネット放送、イベントなどなど、夕妃としてお仕事することもすごく多かったですし、なにより夕妃役でテレビに出たことが、自分が役者として広く世の中に知られるきっかけにもなっているので。でも今回はいよいよ“FINAL”です。夕妃を演じてきた4年間に廣瀬智紀として経験してきたこともしっかり役にこめていきたいし、同じように夕妃も夜の世界でいろんなことを見聞きして来たっていうキャラクターの成長もあると思うので、互いを上手くリンクさせながら、より深みのある夕妃をお魅せできたらと思っています。

 でもね、夕妃って今までもけっこうブレがちなキャラクターなんですよ〜。元々僕の中では「ナンバーワンにこだわるがゆえに友達もいないクールなヤツ」というイメージだったんですけど、舞台では毎回そうじゃない新しい面が描かれていて、実はすごく友情に熱かったり、ナンバーワンになりたいがために道を踏み外しそうになったりと、意外に人間っぽい部分が発掘されたりもしているんです。最初の頃は特に「夕妃はこんなこと言わないんじゃない?」と思う台詞があるとそこで悩んでしまうことも多かったけど、違いを否定するんじゃなく、「じゃあどんな流れでどんな状況になったら自然に夕妃がそういう台詞を言うだろうか」と考えるようになったらすごく役にアプローチしやすくなって、そこからグッと世界が開けた瞬間があったんです! この作品を通して自分が芝居に対して頭でっかちに考えないようになれたのも、とても大きな収穫でした。それがあった上での今回のファイナルですから…やっぱり台本をいただくまではどんな夕妃になるかはまったくの未知数。たぶん台本を開いた途端にまたもの凄く悩むと思います。「今回の夕妃はどうしよう!?」って(笑)。

――確かに作・演出の村上大樹さんは、毎回予想もしなかった展開のストーリーを繰り出してきますからね。ホスト同士の関係もですし、前回は割烹着を着たリケジョが物語の鍵を握っていたりとか。

 (笑)。ホストってスゴく華やかでキラキラしているイメージですけど、その中にあっても村上さんの着眼点はブッ飛んでますよね。時事ネタも豊富ですし、ひとりの人間の汚いところだったり、ひたすらバカバカしい世界観も自在に織り込んで来る。『ホストちゃん』は基本コメディーですけど、でもみんなで笑いを取りに行くというよりは、村上さんの書いた世界を僕らが至って真面目に演じることで涌き上がってくる面白さが魅力なんです。なので僕らは村上さんのホンをひたすら真剣に演じ、ひたすら真剣にバカやってます。

――前作では複数回ナンバーワンを獲得した夕妃ですが、今作への手応えは…?

 どうでしょう? 今回はまた初参加の素敵なホストちゃんもいますし…ランキングの結果って、ホントに僕らも本番の舞台上で発表されるまでわからないんです。キャストみんなで毎回ドキドキわくわくしながらステージに立ってるライブ感は、ちょっと他の舞台にはないテイストですよね。でもまぁ、夕妃はナンバーワンキラーですから、もうみんなのファンの方も持ってっちゃいたいなぁと企んでます(笑)。ただ…でもこれは前作くらいからの動きなんですけど、僕のファンの方でも作品に慣れてくると「夕妃のナンバーワンはもう観たから他の人のナンバーワンが観てみたい」って方も出て来ていて…。

――それは推しの名誉よりも、エンディング違い。演劇的な楽しみ方を優先する『ホストちゃん』上級者の方々ですね。

 そうそう! 確かにそういう楽しみも見つけられるのがこの『ホストちゃん』の個性でもあるし、好きな役者さんから入った人たちが最終的には役者全員、カンパニー全員を応援してくれるようになったなら、作品自体が絶対もう一個上に行くことができるはず。いいですよね〜。前回の主演の松岡充さんが公演中ずっとおっしゃっていたのが「ランキングの向こう側に行こう」で、みんなの中にそういう考えが根付くようになったらカンパニーの空気感が濃くなってさらに結束も深まったし、同時に「やっぱり一番を取りたい」という気持ちも強くなった。今回もそういう広い視野の“ホストちゃん精神”は受け継いでいきたいと思います。

――では最後に改めて本作の集大成となる『名古屋栄編』への意気込みをお願いします。

 カンパニーには『ホストちゃん』のスタートであったドラマから一緒のキャストもいて、お互いに『ホストちゃん』の歴史を築いて来た自負と作品への強い想いを抱きながらこの『名古屋栄編』に挑んでいます。そんな“初代バニラ”のみんなでいわば全体の土台を支え、率先して責任を持ち、いい作品を創っていきたいです。あとはやっぱり…ファイナル感をしっかり出せる舞台にしたい。「終わっちゃうのはさみしいけれど、これがファイナルなら仕方ないな」っていうくらい、大いに盛り上げて大いに締めくくって。お客様には今回も実際にホストクラブに来ているような楽しい時間を過ごしてもらい、僕らの一体感が創り上げる『ホストちゃん』の世界を思う存分味わってもらいたいです。

[取材・文=横澤由香]
[撮影=渡辺マコト]

公演概要

舞台『私のホストちゃん THE FINAL 〜激突!名古屋栄編〜』

<公演日程・会場>
2016/1/29(金)〜2/14(日)  天王洲 銀河劇場 (東京都)
2016/2/20(土)  ももちパレス 大ホール (福岡県)
2016/2/27(土)〜2/28(日)  森ノ宮ピロティホール (大阪府)
2016/3/1(火)〜3/2(水)  名古屋市芸術創造センター (愛知県)

<キャスト・スタッフ>
【キャスト】
廣瀬智紀、平田裕一郎、久保田秀敏、五十嵐麻朝、染谷俊之/黒羽麻璃央、
小澤廉、杉江大志、井澤勇貴、瀬戸利樹/ 
KODAI(X4)、T-MAX(X4)/向山毅、塩川渉、鶏冠井孝介、町田宏器/
青柳塁斗、中村龍介、山口大地、渡辺和貴/
福井晶一/仁藤萌乃、和田瑠子、阿久澤菜々、藤澤希未/新谷真弓、西丸優子/オキャディー(甘王)、加藤啓/小川菜摘
【スタッフ】
総合プロデュース:鈴木おさむ
脚本・演出:村上大樹

2015-10-16 12:25 この記事だけ表示