ドラム、和太鼓、タイヤ……。さまざまな音が融合して先の読めないワクワク感ある展開 鼓童ワン・アース・ツアー2015〜混沌 インタビュー[インタビュー]

 太鼓芸能集団 鼓童の活動の中でも中心的公演である「ワン・アース・ツアー」の最新作は『混沌』。芸術監督である坂東玉三郎演出によるシリーズ4作目となるそれは、ドラムを始めとするさまざまな楽器やタイヤなどの“音の出る物”を取り入れた作品だという。メンバーの石塚充さん、坂本雅幸さん、神谷俊一郎さん、そしてドラム監修を手がけた元ブルーハーツの梶原徹也さんに、その内容について語ってもらった。

インタビュー

ーー坂東玉三郎さん演出による「アン・アース・ツアー」の作品は、『伝説』(2012年)、『神秘』(2013年)、『永遠』(2014年)に続き4作目ですが、今回の『混沌』というテーマはどのようにして決まっていったのでしょうか。

石塚2作目の『神秘』ができあがった時点で玉三郎さんは着想なさっていたのですが、もう少しご自分の中で温めたいとおっしゃいまして。そして『永遠』を経たことで今回やることになりました。「混沌とした場を音でつくっていくのだけれど、最終的にはきちんと筋の通った調和したものを見せていきたい」というお話でした。

ーー稽古場は実際にどのよう進んでいったのですか?

石塚「とにかくまず混沌とさせる」ために、みんなでいろいろな楽器を持ち寄ってさまざまなパフォーマンスをしました。

坂本メンバーのひとりがタイヤを提案したところ、そこからどんどん発展していった感じです

ーーどんな使い方をするのですか?

神谷クリアテープでタイヤをぐるぐる巻きにすると、空洞の部分がちょうど太鼓のようになるんです。それをたたく。どういう巻き方をしたら真ん中にパワーが集まるのかを考えながら、いろいろと試していきました。

石塚他にもお椀にバネをつけたようなものがあったり、バチではなく細い竹ひごみたいなもので太鼓をたたいてみたり。まるで遊んでいるかのように自由にやっていました。

坂本楽器もフルートがあったり中国の揚琴があったり、いろいろです。

ーーそして今回の大きな眼目となるのがドラム。梶原さんはメンバーの小田洋介さんと、えびす大黒というユニットで活動なさっているのですよね。

梶原彼のワークショップに行ったのがきっかけで、それから(鼓童の本拠地である)佐渡へも伺うようになったんです。ドラムって低音から高音まで非常に整理されている楽器なんですが、そのそれぞれを100倍とか場合によっては1万倍にもパワーアップしたような楽器が、鼓童の稽古場にところ狭しと並んでいる。それはとても衝撃的で、パワーヒッターとしてずっとやって来た自分の中にフツフツと燃えるものを感じました(笑)。

ーー闘争心に火がついた?

梶原負けるか!という感じでやっているうちに、自分の持っているビート感と和太鼓はすごくしっくり合うことがわかっていきました。それでちゃんとした作品をつくってみたいという気持ちになりました。こうして鼓童という最高の人たちとやれることになったのは本当に嬉しいですね。

ーー『混沌』では3人の方がドラム演奏をなさるそうですが、そのひとりが坂本さん。ドラムは初めてですか?

坂本和太鼓と平行して学生時代にやっていました。プロのドラマーになりたかったくらいですから、当時はむしろドラムの方がメイン。それが先輩に誘われて見た鼓童にノックアウトされて、現在に至っています。
 ドラムと太鼓は音のタッチというか表現の仕方が違って、太鼓には肉体的に見せる要素もあります。だから今まで自分が鼓童で培ってきたものだけでは通用しない。そこを梶原さんに鍛えていただき3年かけて稽古しました。

ーー監修はまずドラムを教えることから始まったのですね。

梶原未経験のふたり(小田洋介・住吉佑太)は最初かなり苦労していたようですが、1年ほどしたら一気に上手くなって表情もキラキラ輝き始めました。3人それぞれの個性を活かしつつ、とにかく大事にしたいと思ったのは、エネルギーの固まりが大爆発を起こすようなシーンを、大太鼓と同じようにドラムでしっかりと表現する、ということ。それが8月の練習で一気にクリアできました。

坂本ドラムはアタック感の強い、和太鼓は響きが強い楽器なんですが、練習を重ねるうちにそれぞれの違いをいい意味で意識するようになりました。単にドラムに合わせて和太鼓を演奏するという感じではなくなっていったんです。

石塚最初、初めてのふたりは借りてきたリズムをなぞっているような感じでしたが、どんどん自由になっていきました。3人とも自分の中の出したいリズムを、目の前にある楽器で出すというふうに変わっていき、それは聞いてすごく気持ちがいいんです。

神谷和太鼓の倍音と西洋楽器の倍音は違うので、理屈では合わないはずなのにすごく気持ちよく聞こえてくるんです。新たな発見でした。

ーー他にもさまざまな発見があったのでしょうね。

石塚玉三郎さんの発想は本当に自由で、たとえば『神秘』と『永遠』には大太鼓を出さなかったのですが、それは僕たちが演出していたらできなかったと思います。大太鼓というのは鼓童の象徴であり、公演で大太鼓が出て来たらクライマックスにできるところがある。
 逆に言うと、そこに行くしかないみたいな感じにもなっていました。だけど、大太鼓なしでもお客さんが楽しめて盛り上がるコンサートができるということがわかった。なので、今回も他の楽器と対等なものとして、もっと気軽な大太鼓の登場のさせ方をしています。

坂本玉三郎さんから「太鼓のバチはなぜそんなに大きくなくてはならないの?」と問われてハッとしました。僕らのバチの選び方って、その太鼓に対してどれだけ大きな音が出るかという基準でしかなかったんです(笑)、言われてみればそれじゃなきゃいけない理由はない。で、実際に篠笛でなくフルートの音を太鼓に馴染ませるには、細めのバチで繊細な音を出す必要があるわけです。

ーーそうすると音楽的に広がりますね。最後にそれぞれが感じているこの公演の魅力を教えてください。

石塚鼓童のコンサートとしては今までにない楽器がたくさん登場して、音の重ね方や単純に音を出すという行為そのものも今までと違っています。音色としては新鮮なんだけれど、それがすごく落ち着く。とてもワクワク感のある舞台になっています。

坂本稽古場では文字通り混沌としながら色々やってみて気がついたら通し稽古ができちゃったという感じで、だから明確なストーリーというのは多分ないんです。だけど、その混沌の中にちゃんと1本筋が通ったものがあり、ストーリーがないゆえに展開するシーンがすごく多い。次から次へといろんなものが飛び出して先が読めない。その「どうなるんだろう?」という感じがすごくおもしろいと思います。

神谷自分は今年から正式メンバーになったばかりですので難しいことは言えないのですが、タイヤにクリアテープを巻いたのが僕とひとつ下のメンバーなんです。どこまできれいにテープが巻けてどういう音が出せるか、いろいろと挑戦しましたのでそんなところも見ていただけたらと思います。

梶原静かなシーンもあれば笑えるシーンもあり、『混沌』にはいろんな流れがありますが、最終的にはハッピーで楽しい舞台になっています。その「今日は楽しかった!」という思いの、ある起爆剤として存在しているのがドラムで、3人のドラマーはひとつの打楽器として違和感なくできるところまで頑張っています。ドラムに限ったことでなく、打楽器の持っている一番エネルギッシュなところを感じていただければと思います。

ーーありがとうございました。

[取材・文=清水まり]
[撮影=平田貴章]

公演概要

鼓童ワン・アース・ツアー2015〜混沌

<公演日程・会場>
2015/11/23(月・祝)  アミューズメント佐渡(新潟県)
2015/11/29(日)  越前市文化センター(新潟県)
2015/12/1(火)  オーバード・ホール((富山県)
2015/12/3(木)  新潟県民会館(新潟県)
2015/12/5(土)〜12/6(日)  NHK大阪ホール(大阪府)
2015/12/9(水)  博多座(福岡県)
2015/12/11(金)  JMSアステールプラザ(広島県)
2015/12/13(日)  岡山市民会館(岡山県)
2015/12/15(火)  愛知県芸術劇場 コンサートホール(愛知県)
2015/12/17(木)  神奈川県民ホール(神奈川県)
2015/12/19(土)〜12/23(水・祝)  東京都文京区 文京シビックホール(東京都)

<キャスト・スタッフ>
演出:坂東玉三郎
ドラム監修:梶原徹也
出演:鼓童

2015-10-29 11:13 この記事だけ表示