鈴木亮平が三島由紀夫最後の戯曲『ライ王のテラス』で、カンボジア最強の美しき王様役に挑む![インタビュー]

 誰もが驚くほどの思い切った肉体改造に挑み、さまざまな特徴ある役柄を有無を言わさぬ説得力と共に見事に演じ切ってきた鈴木亮平。ここ最近の作品だけでも、NHK連続テレビ小説『花子とアン』でヒロインの夫を演じて注目を浴びた後、TBSドラマ『天皇の料理番』では主人公の病身の兄を、20キロ体重を減らして圧倒的な存在感で表現。続いて映画『俺物語!!』ではそこから逆に30キロ増やして主人公の剛田猛男を原作のマンガそのままにアツく演じている。そんな彼が、久しぶりの舞台で主演に挑戦することになった。それこそが三島由紀夫が最後に書いた戯曲を宮本亜門が演出するという話題作『ライ王のテラス』で、鈴木はカンボジア最強の王として栄華を極めたジャヤ・ヴァルマン七世に扮する。この偉大で美しき王の波乱万丈な生きざまに、果たして鈴木はどう取り組むのか。

肉体と精神の対立、これは僕自身も非常に興味のあるテーマです

――今作への出演が決まった時、まずどんな気持ちになられましたか。

 「これは大変なことになった!」とまず思いました。ここまで大きい劇場の舞台で主演を務めるのは初めてですし、あの大きな空間を自分の存在感で埋められるのかな、と。また三島由紀夫さんの戯曲だということもすごく大きかったです。僕はこれまで三島さんの作品にあまり触れてこなかったので一から勉強しないといけないし。生半可な気持ちで立ち向かえる人ではないですからね。しかも演出は宮本亜門さんで、こういう豪華絢爛な話が亜門さんの演出でどういう舞台になるのか、今からとても楽しみです。僕、ハードルが高ければ高いほど燃えるタイプなので今は正直、楽しみのほうが勝っています。楽しみ8、不安2くらいですね(笑)。ここでまた、新しい自分に生まれ変われるんじゃないかという気がしています。

――生まれ変わりたい気持ちがあるんですか。

 自分を変えていきたいという気持ちは、いつもありますよ。

――作品ごとに生まれ変わる?

 作品ごとにもそうですけど、プライベートでも新しい刺激をもらって自分をアップデートしていきたいんです。僕、常に新たなチャレンジがしたいというか、「自分にできるかな?」とむしろ不安になるような仕事のほうが好きなんですよ。

――今回の戯曲を読まれた感想はいかがでしたか。

 まずは、三島由紀夫さんに対する理解というものがないといけないと思いました。単にこの戯曲のストーリーだけを表面的にとらえてカンボジアの王様を演じればいいのかというと、そうではない気がして。三島さんが伝えたかったことや哲学を自分の身体で本当に共感できるレベルまで知っておくことが大事だと思ったんです。

――ということは、他の作品もいろいろと読み込まなきゃいけないと?

 まさに今、その作業の真っ最中なんですよ。今は『午後の曳航』という小説を読んだところで、とても面白かった。それと『アポロの杯』という旅行記も僕好みでした。これは三島さんが世界旅行した時のエッセイなんですが、僕は世界遺産が大好きなのでバシッと興味が合ったんですよ。僕も夢想家で遺跡とかを見ながらいろいろなことを想像するほうですけど、ひとつのものを見てここまで深く考える人がいるんだ、と改めて思いましたね。アイデアや考える内容自体にしても、僕のような普通の人間の想像をはるかに超える。だけどそこで負けるわけにはいかなくて、僕自身もそこでしっかり共犯者にならないといけない気がしています。

――ヴィジュアル撮影の日に亜門さんと少しお話をされたそうですね。

 はい。僕が一番覚えているのは「作品の内容について話し合うのが好きだから何でも聞いてきてください、いろいろ話し合いながらやりましょう」とおっしゃっていただけたこと。僕もわからないままやるのは気持ち悪くて、感情がどうしてもついていかないタイプなので。ですから今回、初めての三島作品への挑戦で亜門さんと一緒にやれるということはすごく幸運だなと思っています。あ、それともう一つ大きなプレッシャーがあるんですよ。初演(1969年)、再演(1974年)とも北大路(欣也)さんが主演をやられているので、もしも今回、北大路さんが見た時に「なんだこれは!」と思われるものにはしたくないんです。だから三島作品に体当たりしつつ、どこかで昔の北大路さんとも勝負しているような感覚になっていますね。

――この戯曲の、どういう点に魅かれましたか。

 なにしろ僕は世界遺産好きで、遺跡や歴史好き。でもカンボジアの歴史や宗教、文化、風俗というものはあまり知らなかったので、それを味わえる喜びがありました。自分が歴史の中に入れるロマンみたいなものにも魅かれますね。テーマ自体は肉体と精神の対立ですが、その中で今回僕が演じるのは歴史上に自分が生きた証を何か残したいという王様だと思うんですね。たぶんそれは誰しもが持つ思いで、特にこういう地位にある人、実際に名を残せる可能性がある人であればきっとみんなそう思うはず。僕も自分が映画をやる以上は後世に残るものを作りたいと思って毎回やっていますから、その気持ちはよくわかるんですよ。そこに残っていくのは精神なのかそれとも肉体なのか。これは僕自身も非常に興味のあるテーマです。

経験上、外見を変えると精神が変わり、精神が変わると肉体も変わると思う

――王様を演じることに関しては、何か感慨がありますか。

 そのことに特別な感情はないです。ただ思い出したのは吉田鋼太郎さんに以前「今までやってきた役でどういう役が多いですか」って聞いたら、即答で「王様!」って言われたこと(笑)。その時も今どき王様をやれる人ってすごいなって、なんとなく思っていたんですよ。権力を持っている人というのはどういう感じなのか、にも興味があります。だけどそれよりも僕にとっては、自分がカンボジア人を演じるということのほうが大きいかな。

――日本人の役ではないんですものね。

 そうなんですよ。だって僕らからすると徳川家康をカンボジアの人が演じているような話になるわけなので。そこの違和感みたいなものを、どう払拭していこうかということも考えてしまいます。でも別に忠実にやることが目的ではないでしょうし、日本人が書いた物語でフィクション性が強いものでもありますしね。ともかくそのへんをどういう世界観で作っていくかに関しては、亜門さんに身を任せたいと思います。

――見た目がとても美しい王様の役だということなので、鈴木さんとしてはやはりここでまた肉体を鍛えられるのでしょうか。

 ええ。最近、北大路さんの出られていた映画で若いころのお姿を拝見したんですが、もうすごいんですよ(笑)。たくましいというか、バッキバキ。ということは、僕は僕なりにそれに負けないような身体にしなければいけないですよね。そういう美しい肉体を持った王様が病にかかってしまう話なので、そこの説得力は必要だなと思っています。

――今回の出演が決まったことで「肉体と精神の関係」について、より深く考えるようになったりすることも?

 あります、あります。その点については誰よりもこれまでに受け取ってきたものが多いだろうなという自信がありますからね。でも僕の場合は他からの要請で肉体を変えていっている部分があるので、ちょっと違うのかもしれないですけど。肉体と精神はよく対極として描かれますけど、僕の場合は溶け合っているもののような気がしているんです。ですからこの作品ではそれを二つに分けて考えようとしているところが、今のところまだ共感できない部分なんですよね。個人的には精神と肉体って分けることができない気がするので。つまり経験上、外見を変えると精神も変わるし、精神が変わると肉体も変わっていくと思うんです。

――肉体が変わると考え方や性格が変わるものなんですか。

 変わります。簡単に言うと、カルシウムが不足するとイライラするじゃないですか、そんなものの延長ですね。僕が減量したときは、ある種の栄養失調状態になると、煩悩、欲望が全部なくなり、人間に対する愛情も消えました。ちょっとしたことでパーンとはじけちゃって怒ることもありますし。まあ、これは極端な例ですけどね。

――舞台のお仕事をやることは「念願だった」と言われていますが。

 僕は映像作品を一本やるより舞台を一本やるほうが、引き出しが増える感覚があるんですよ。なのでできれば本当は年1回は舞台をやって演技の幅を広げていきたいんですが、ここ2、3年ほど舞台の仕事ができていなかったので。そういう意味で「念願」だったわけです。

――共演者は初めての方ばかりですか。

 映像でちょっとご一緒した大野いとちゃん以外は、みなさん初めてです。この中でも倉科(カナ)さんと中村(中)さんの役は、すごく面白くなりそうですよね。

――第一王妃と第二王妃、ですね。

 すごいコントラストになるなと思って、そこは僕も楽しみ(笑)。だけどみなさん僕にとっては大先輩ばかりなので、あまり考え過ぎるとプレッシャーになってしまうし。まあ、そこは板(舞台)の上に立てば誰もが同じ役者なんだから、と思うしかない。経験で負けている分、とにかく自分の熱量を上げて全力でぶつかっていくしかないですね。

――この、久しぶりの舞台でまた得るものが多そうですね。

 そうですね。僕、稽古が好きなんですよ。必ず発見があるし。とにかく僕としては今からやれるだけのことを準備して、がむしゃらに熱く熱く向かっていくつもりです。おそらくこれまで映像で見ていただいている僕ともまた違う、さらに熱量のこもったものを披露するつもりですのでぜひそれを体感しに劇場に来ていただけたらと思います!

[取材・文=田中里津子]
[撮影=平田貴章]

公演概要

ライ王のテラス

<公演日程・会場>
2016/3/4(金)〜3/17(木)  赤坂ACTシアター(東京都)

<キャスト・スタッフ>
出演:ジャヤ・ヴァルマン七世:鈴木亮平
第二王妃:倉科カナ
第一王妃:中村 中
石工のちに若棟梁:吉沢 亮
村娘:大野いと

芋洗坂係長
澤田育子
市川勇
市川しんぺー

宰相:神保悟志
王太后:鳳 蘭


演出:宮本亜門   作:三島由紀夫

2015-11-12 18:41 この記事だけ表示