主演の中村倫也&演出の河原雅彦が、残酷歌劇『ライチ☆光クラブ』への挑戦を語る![インタビュー]

 2012年と2013年に上演された『ライチ☆光クラブ』が、“残酷歌劇”となって新たに生まれ変わる。美しくも残酷な中学生たちが繰り広げる狂気のドラマ、その独特なエログロアングラの世界をどう料理していくのか──演出の河原雅彦と主演でゼラ役の中村倫也が語る、作品への思いとは。

インタビュー

──『ライチ☆光クラブ』は劇団東京グランギニョルが1985年に上演したお芝居が原点で、その20年後に古屋兎丸氏がコミックとして甦らせた。ということで、2012年・13年と今回はそのコミックを原作とした舞台になります。おふたりはそれぞれどのタイミングで『ライチ☆光クラブ』を知ったのでしょうか。

河原僕は刊行されたわりと早い段階で漫画を読んでて…サブカル系は以前から好きでしたしね、『ガロ』系の丸尾末広さんとかの流れで手に取ったのを覚えてます。その頃はとっくにグランギニョルも解散していましたし、主宰の飴屋法水さんもすでにカリスマでした。当時は、単純に人がド派手に死んだり臓物が出たりというエログロの世界を愉しみながら読んでましたね。前回の舞台も観ましたよ。原作に忠実でいながら演出のエモジュン(毛皮族・江本純子氏)らしい毒々しくもポップな外連味で漫画の世界が消化されていて、とても楽しく拝見しました。

中村僕は(前2作でゼラ役を演じた)木村了と仲が良くて、当時話を聞いて「あー、そういうのやったんだ」って。残念ながら本番は観れなかったんですけど、そのあと河原さんから今回のお話をうかがったとき「あれか」と思って、原作を手にしたのはそれからです。

──読後感はいかがでした?

中村もう舞台をやる前提だったので、便器が身体を貫通するシーンとか「どうやるんだっ!?」って思いながら読んでました(笑)。神話とか伝記とか過去の実在の人物とか、モチーフとなっているモノへのオマージュ的な要素も含めた世界観もとても愉しめましたね。こういうの、嫌いじゃないですよ。なんだろう? みんなバカだなぁって。少年ならではの儚さ、愚かさ、この年頃にしか持ち得ない不安定さみたいなところは愛おしくもあり、滑稽でもあり…。

──今回はその世界が“河原版”の残酷歌劇として生まれ変わるわけですね。

河原最初に「歌劇でやりたい」ということで声をかけてもらって…もちろん『ライチ☆光クラブ』という作品自体の魅力もあるんですけど、僕、若い人と仕事をするのが好きなんですよ。で、『ライチ』はたくさんの若者たちと組める作品だってところも僕の中で割と意義の大きいことだったりします。倫也くんなんかは常に機会があったら組みたい人なので、「『ライチ』、歌劇、ちょうどいいや」って今回お願いしました。自分はもともと無茶なことが好きなんだけど、この歳になるともう僕の同い年くらいとか盟友たち、尊敬するおじさんとかの役者はなかなか無理が利かなくなってるんですよ。

中村(笑)。

河原(笑)。その代わりそんなベテランたちは相当の存在感や手練手管を身につけてますし、稽古場でも芝居を預けられる部分も大きいんですけど、若い人たちはそうじゃないところでチャレンジできるのが魅力。無心で突き抜けてくれる推進力が彼らにはありますからね。

中村声をかけてもらって嬉しいです。なにしろ僕に演劇の面白さを教えてくれたのは河原さんなので僕も機会があればどんどんご一緒したいですし、こうして主演と演出家としてタッグを組めるのは個人的にテンションも上がるし…やっぱり「やってやらなきゃ!」って思いますよね。河原さんはとにかく面白い方。そして、こういう『ライチ』のような「ちょっとこれどうするの!?」的なモノをちゃんと面白くして、しかも「これが出来れば成功」っていうラインみたいなモノの“その先”までを稽古でも本番でもしっかりと目指している。そういう、常に追究心を持ってブレなく接してくれる演出家は、役者としても一番信頼できます。

河原なんかね、若い人に「ダサイ」って言われるのイヤじゃない(笑)。そういう緊張感が創作時のひとつの刺激みたいになってるっていうのはあるよね。

──“残酷歌劇”というスタイルについては?

河原脚本は劇団鹿殺しの丸ちゃん(丸尾丸一郎氏)と1年半くらい前からやってるんですけど。最初は歌詞も含めていわゆるミュージカルに近い形の台本からスタートしたんだけど、どうにもそれだけでは僕的にどんどん喰い足りなくてなってきて…原作に準じたストーリーラインの中に歌があるだけだと、なんか本当に“それだけのモノ”にしかならないんですよ。上手く言えないんだけど、前回エモジュンがやったものに歌を挟むだけみたいになっちゃうのは「なんか違うなー」という感覚。僕がやる『ライチ☆光クラブ』としては、もうひとつなにか決定的な要素が必要なんだと思った。それで、その違和感を解消するために「自分はなにを欲してるんだろう」と思っていろいろ調べていく中で出会ったのが、今回パフォーマンスをお願いする東京ゲゲゲイの動画。「ああ、こんなのだよ!」って。そこからぜひこのキテレツな才能をこの舞台に組み合わせられないだろうかと思い、リーダーのMIKEYさんともずーっと話し合い、融合のあり方を探る作業が続きました。ゲゲゲイさんのステージングは台詞やストーリーとはかけ離れた部分で、光クラブの連帯感、カタルシスを感じさせてくれるに相応しい圧倒的な個性を持っている。まがまがしさ、アンダーグラウンド感的要素も含めてね。そして脚本も楽曲も今、試行錯誤の末、いよいよいい感じのモノが揃ってきてます。ここにくるまでは、どのセクションとの打ち合わせでも、ホントにもう組んでくれる人いなくなっちゃうかもっていうくらい(笑)、「違う…」「違う…」ばっかり言い続けてきたけど、ゲゲゲイさんにも刺激をもらってるし、丸ちゃんと丁寧に作業していく中で確実に「こうだね」「こうだよね」がちゃんと形にもなってきたので。

中村まだ決まる前に河原さんに「ゲゲゲイさんを入れたい」ってお話を聞いたときから、僕もこの作品のカラーから言えば「必要なのはそういうことなんだろうな」って思ってました、必然的に。音楽も実際に上がってきたモノはミュージカルの音楽としてもとても複雑ですし、なかなか難解で手強いモノなんですけど…やっぱりそういう音楽じゃないと、この作品には合わないですよね。なので、「こういうものが上がってくるといいなぁ」というモノが届いたところでまず「あ〜、同じところ見れてるなぁ」って、一個確認できた感じですね。稽古に先がけて歌稽古が始まって…あとはそれを必死に覚えていくわけですけど(笑)、それがもうとにかく難しいんです。全然息継ぎできない曲とかもあって、相当死にかけました。

河原そっか。歌稽古で死にかけるなんて、よっぽどじゃないとあり得ないよね(笑)。

中村そうだと思います(笑)。今はまだまだ覚える段階なので、ここからもっともっと。音楽性とか作品性に沿った歌唱にしていかないとですね。

──本作は漫画原作でいわゆる2.5次元舞台という側面もあるのですが、そこへの意識と言うと…。

河原僕のタイプ的に、僕が『ライチ』をやるというよりは、僕の『ライチ』にするっていうことに…どうしてもなりますよね。原作へのリスペクトはもちろんありますし、稽古の中でいろんなモノの塩梅は原作と調整を取っていくけれど…寄るところもあれば大胆に変えちゃう部分も多々あるわけで。うーん…これは言葉での表現がホントに難しいんだけど、原作に対しては芝居にする上で得するところはしっかり寄りたい、という感じなのかな。漫画の通りに全部やろうとしたら死にそうになっちゃうし(笑)、でも漫画に描かれてることを…それこそ便器の貫通のシーンとかね、そういうビジュアルを演劇の力で見せられたら素敵だとは思う。まぁトライしたい部分はチョイスをしますけど、そもそも僕の『ライチ』を目指す時点でね、原作の表層的なアレコレをなぞるだけのアプローチにはならないわけで。だって、キャスティングの時点で、デンタク役をゲゲゲイのメンバー(女子)に振ったり、ライチ役もダンサーさんにしちゃってますから。そういう意味では原作漫画に対する構え、みたいなものは特別意識はしていないですね。

中村恐らく河原さんが演出だという時点でもう…ね、2.5次元というところはなにかひとつ超えているように僕は思ってますし、やはり生身の人間が演じることによってより面白くならないと舞台化する意味がないので。そういう点で、原作との距離感としてはお客さんもある種“開いて”もらっていることで、より愉しめる部分は大きいと思います。物語の核みたいなところはちゃんと脚本にも写し込まれてますから、ちゃんとそこへ向かえばおのずと原作ファンの方も納得していただける、そして原作を知らない方にも愉しんでもらえる、“演劇としての面白さが”生まれるはず。原作の大事なポイントに対しては僕らも寄せられるところは寄せていきますし、そこをちゃんとやっていればあとはこちらが好きに表現しても絶対面白いモノが出来るはずですからね。僕らは脚本と演出家を信じてそこに真摯に向き合うのみですし、その姿勢はどんな作品でも変わりません。

河原まぁ…なんかね、元々の儚さとか狂気じみたところとか、原作に描き込まれたいろんな本質が、より色濃く出せることが一番重要なんだとは思うんだ。

中村ですね。

河原まずはそこを大事に。あとは…ホントにもう稽古やってみないとわからない!(笑)。

中村わからない! 僕ももうこの1、2ヶ月ずっと「早く稽古始まれ!」って思ってて、でもいよいよ始まるとなったら「うわ、まじか!?」って気持ちですよ(笑)。

──それは怖さですか?

河原怖いですよ〜。ホントに今「これはやってみないと──」と思ってますけど、ここにきて演劇のお仕事で「やってみないと──」という次元で取り組まざるを得ない作品はなかなかなかったりもしますし、そうやってチャレンジできる現場は僕にとって非常に有意義だし。それを初めて組む人を含めた若い役者さんたちとやるなんて! 倫也もいるし、なんかもうホントに「がんばります」としか言いようがないんですが…がんばります(笑)。

中村僕は舞台が1年ぶりというのもあって、もう一度気を引き締めて挑みたいという感じもありつつ、今回に限っては「面白い・面白くない」「上手い・下手」じゃなく、「なんだかわからないけどスゴかったね」っていう、言葉を超えたところの衝撃をお客様に持ってもらわなきゃいけない演目だと思ってるんです。そこに行くためには本番に行く前の準備が大事だし、かなりの消費カロリーが必要だろうな、と。

河原ホントにそう。乱暴な言い方すると、僕は自分が面白ければいいって感覚で関わるすべての仕事をのし倒して来た人生ですからね(笑)。だから究極は自分が組みたい人と自分が面白いぞ、スゴいぞって思うモノを創ればいいだけなので…でもそれはホントに毎回ものすごくカロリー使うし、出てもらう人にもカロリーを使わせることで(笑)。やっぱりね、自分にとってなにかをやる意味っていうのは、当たり障りのないヒット打って褒められることよりも、どれだけ自分が納得いくスイングができたかなんですよ。ま、それで「あ〜届かなかった〜」ってことも多々あるんだけれども(笑)、それはそれ。そしてこの『ライチ☆光クラブ』も、これまで通りに…いや、むしろ今までにしたことがないフォームでフルスイングするだろうスペシャルな題材です。

中村怖いけど…出来る限りやってみます。でも、せっかくやるんだから、怖くないとつまらないですよね。「こんな演劇見たことない」ってお客さんが思う可能性を秘めた座組であり題材なので、僕らはちゃんとそこを目指して…とにかくやってみますよ!

河原正直、今回は僕らにとってかなりな山です。でも登るまでに時間をかけて準備や支度をしてきたし、クルーとしてなかなか勇気を与えてくれる人たちが集まってますので…ホントにこればっかりは登ってみないとわからないですけどね、でも千秋楽にはうまく下山ができるといいなぁ──ま、もし遭難してもちゃんと遭難したんだってわかる芝居にしますよ(笑)。

中村あ、お客さんにわかっちゃうんだ。「遭難してる」って(笑)。

河原そうそう(笑)。いずれにしてもなまじっかいいカンジにまとめようとせず、ちょっと一丸となってやってみますよ。

中村はい。

[取材・文=横澤由香]
[撮影=平田貴章]

公演概要

残酷歌劇『ライチ☆光クラブ』

<公演日程・会場>
2015/12/18(金)〜12/27(日)  AiiA 2.5Theater Tokyo(東京都)

<キャスト・スタッフ>
原作:古屋兎丸(太田出版『ライチ☆光クラブ』)
演出:河原雅彦
パフォーマンス演出:牧 宗孝(東京ゲゲゲイ)
脚本:丸尾丸一郎(劇団鹿殺し)
出演
中村倫也
玉置玲央 吉川純広 尾上寛之 池岡亮介 赤澤 燈  味方良介 加藤 諒
BOW(東京ゲゲゲイ) MARIE(東京ゲゲゲイ) MIKU(東京ゲゲゲイ) YUYU(東京ゲゲゲイ)/KUMI(KUCHIBILL)
皇希  七木奏音

2015-11-16 19:18 この記事だけ表示