大竹しのぶが全身全霊で演じる当たり役『ピアフ』が3年ぶり、みたび降臨![インタビュー]

 愛と歌で彩られた波瀾万丈な人生を送った伝説の歌手、エディット・ピアフ。彼女の生誕100周年イヤーでもある2016年、その生涯を描く音楽劇『ピアフ』が大竹しのぶ主演で再々演される。NY・ブロードウェイやロンドン・ウエストエンドでも大好評だったパム・ジェムスの傑作戯曲を、2011年の日本初演、2013年の再演に引き続き今回も、その丁寧で繊細な舞台づくりに定評がある栗山民也が演出する。

 これまでもさまざまな舞台で圧倒的な演技力を発揮してきた大竹だが、このピアフ役は“まるで本人が憑依したかのよう”“ピアフに会えた!と思った”などの感想が多数寄せられるほどの、まさに“当たり役”。ピアフとして劇中で歌うのも『愛の讃歌』『バラ色の人生』『水に流して』など、心に沁みる名曲揃いで音楽劇としても聴き応え満点だ。

 三演目となる今回も「全力でピアフの人生を生き抜く」と意気込む大竹しのぶに、作品への想いを語ってもらった。

お好きな席が選べる<e+貸切公演>2/27(土)13:00、3/8(火)14:00

ピアフの歌は気力、エネルギーが自分から溢れていないと絶対に歌えない

――再演をする時はすべてをまっさらにして、もう一度役を作り直すそうですね。

 そうなんです。初演の記憶を全部忘れて改めて新しい役と出会い、そしてまた1から作り直します。それにみなさんから期待していただいているということでもあるので、それに応えなければというプレッシャーもどこかにあります。でもどう思われるかということだけにとらわれず、今回も新たに参加する方がいますからその仲間たちと、今の自分とで一緒に新しい舞台を作り上げたいと思っています。この3年の間に私自身、歌を歌う機会が数多くあったのですが、でもピアフの歌というのは他とはちょっと違う特別なものというか。気力、エネルギーが自分から溢れていないと、絶対に歌えない歌だと思うんです。

――たとえばどういったところに、ピアフの歌のすごさを感じられていますか。

 愛とか恋とか、男とか女とか、それだけのことでもないし、別にメッセージソングでもないんですけれどね。恋愛の歌なら、ちょっと素敵だなと思うくらいでもいいのかもしれないんですが、ピアフの歌はそこで自分から何か大きな力をお客様に与えるくらいでないと、歌う意味が出てこない気がするんです。たとえ自分がボロボロになっていても「ステージに立ったらすべてを与える」というようなセリフもありますしね。

――その歌からお客様に伝わるものがたくさんあったからこそ、こうして三演目に至ったんだと思いますが。振り返って、特に印象に残っているお客様の反応は。

 初演の時の名古屋公演で、千秋楽のカーテンコールの時に後ろの席のほうからきちっとした格好の中年の女性の方がバーッと前まで走ってきて、「『愛の讃歌』をもう一度歌って!」とおっしゃったんです。そんな、大人の方にそこまでして「もう一度歌って」って言わせるものはなんだろうと思いながら、私自身もとても感動しました。それでみんなで『愛の讃歌』を一緒に歌ったんですよ。

――それは、あまり見たことのない光景ですね(笑)。

 本当に。そういえば昔『にんじん』というミュージカルをやった時、小さい子供に「にんじん!」って役名で呼ばれたことはありましたけど。それ以来です(笑)。

私たちの身体を通して、ピアフの愛やその歌の力を受け止めてほしい

――キャストは初演、再演にも出られていた方に加え、今回新たに参加される方々もいらっしゃいます。

 新しいキャストの方には、今日の時点ではまだお会いできていないんですよ。でも梅ちゃん(梅沢昌代)とか彩輝(なお)さん、(辻)萬長さん、横田(栄司)さん、碓井(将大)くんたちが今回もご一緒してくださるので。だけど途中から入ってくる新しいキャストの方たちは、もしかしたら私のことを怖がるんじゃないかな……。「全然、怖くないよ!」と言っておきたいですね(笑)。私たち自身も新しい気持ちでやらなくちゃいけないねと、梅ちゃんともよく話しているんですよ。本当に、梅ちゃんがいつも一緒にいてくれるというのはとても心強いです。

――大竹さん演じるピアフと梅沢さん演じる親友のトワーヌは劇中でも、とってもいいコンビですよね。そして、この物語にはさまざまなタイプの男性が出てきますが、ちなみに大竹さんご自身は登場人物の男性の中で好きなタイプは?

 この中で?(笑) そうですね、実際の顔で考えたらイブ・モンタンかな。写真を見たら、すごくかっこよかったので。

――さまざまな男性に愛されたピアフの、女性としての魅力というのは演じていてどういうところに感じられますか。

 やっぱり、全身全霊で愛するところ。ボクサーのマルセルに対してもそうですけど、とにかく全身でぶつかっていきますからね。そして可愛くて、わがままで。そういうところが魅力だと思います。

――本番中は毎日、舞台の上でピアフとしてその生涯を生ききるわけですが。ご自宅に帰られた後も、あの役を引きずられたりすることはありましたか?

 いいえ、全然引きずらないですね。

――それは他の役でもそうですか?

 そうですね。舞台上ですべてを出し切ってしまうので、役を引きずることってあまりないんです。ただし『欲望という名の電車』のブランチを演じていた時だけは、ちょっと引きずってしまいましたね。ピアフは死ぬところまで演じますが、ブランチは精神病院に行くところで物語が終わってしまうので、どうしても変な感じが残ってしまって。だからそういう意味ではピアフは一回一回、舞台上で死ねるのがうれしかったりします(笑)。

――では最後に、大竹さんからお客様へお誘いのメッセージをいただけますか。

 劇場に来てお芝居を観ることで人生が変わるくらいのものを味わっていただけたなら、私たち役者にとってそれほどうれしいことはありません。そこまでの作品はなかなかないですけれど、でもこの『ピアフ』は観たあともしばらくの間はがんばろうって思えるくらいの力がある作品だと思います。私たちの身体を通して、ぜひピアフの愛やその歌の力を受け止めてほしいですね。これは演出の栗山(民也)さんが言っていたんですけれど、ピアフの歌には神々しさというか、天と地を結ぶような力があるんです。この舞台を観たお客様に「よし、これからもがんばって生きていこう!」と思っていただけたら、心からうれしく思います。

[取材・文=田中里津子]
[撮影=坂野則幸]

公演概要

ピアフ

<公演日程・会場>
2016/2/7(日)〜3/13(日)  シアタークリエ (東京都)
2016/3/23(水)  広島JMSアステールプラザ 大ホール (広島県)
2016/3/26(土)〜3/27(日)  中日劇場 (愛知県)

<キャスト・スタッフ>
作:パム・ジェムス 演出:栗山民也
出演:大竹しのぶ、梅沢昌代、彩輝なお、伊礼彼方、碓井将大、川久保拓司、
大田翔、津田英佑、横田栄司、辻萬長、池谷祐子

お好きな席が選べる<e+貸切公演>2/27(土)13:00、3/8(火)14:00
2015-12-01 12:47 この記事だけ表示