『バーム・イン・ギリヤド』で演劇集団<the company>を日本で立ち上げ!その真相に迫る!![特集:演劇・ミュージカル]
数年間、日本でワークショップを展開してきた演出家ロバート・アラン・アッカーマン。そんな彼が本邦初上演となるアメリカ現代戯曲の傑作、ランフォード・ウィルソン作『バーム・イン・ギリヤド』で演劇集団<the company>を立ち上げる。メンバーの中核を占めるのは彼のワークショップで知り合った若者たち。ニューヨーク、ロンドン、パリと世界の第一線で活躍する彼がいま、日本で新人役者たちとカンパニーを立ち上げる意味とは。



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――まずはアッカーマンさんがここ日本で<the company>という演劇集団を立ち上げようと思った経緯を教えてください。

BIG_010.jpg 私は01年から日本でワークショップを行っているんですけど、その最初の年のワークショップに、何人か非常に優れた才能を持つ役者たちがいたんですね。しかも彼らは演劇に対して非常に真摯な熱意を持っていた。そこで私は彼らに演出家として興味を抱くようになって、いつしかいろいろなことについて深く話すようになっていったんです。けど、そんなあるとき彼らのうちの一人が「でも僕らはここでどんなに頑張ってもチャンスがないから」と言ってきた。つまりこの国ではどこかの芸能事務所に入ったり大きな後ろ盾がないかぎり「チャンスが回ってこないんだ」と。そこで私はその彼にその場で言い返したんです。「じゃあ誰が与えなくても私が君にチャンスをあげる」と。そこで早速プロデューサーに「このワークショップから新たな芝居を立ち上げたい」と相談しにいったところ、プロデューサーもその案に非常に乗り気になってくれて。それで03年末から04年冒頭にかけて無料上演された『BENT』が上演されるに至ったんです。そのときはまだ<the company>とは名乗っていなかったですけど。すでにカンパニーを立ち上げるヴィジョンの種はありました。


――『BENT』はとても高い評価を得た芝居でしたね。

 ええ、嬉しいことに。でも今だからこそ言えることですけど私たちは 当初「こんな無名な人間だけで作った芝居なんて、誰も観に来ないんじゃないか」と本気で思っていた。けど蓋を開けてみたら、クチコミで連日観客が増えていって、最終的にはラジエーターのうえにまでお客さんに座ってもらわないといけなかった(笑)。で、そのとき私は心から思ったんです。「これこそ私が日本でやり続けたいことだ!」と。それで、私は引き続き『エンジェルズ・イン・アメリカ』『三人姉妹』と若い役者たちと共に芝居作りを続けた。そうするなかで徐々に私のなかで「彼らと一緒にカンパニーを作りたい」という思いが強くなっていったんです。それで…、話が長くなりましたけど(笑)、ワークショップのメンバーを中核に据えるかたちで<the company>という集団を、今年になって立ち上げる決意を固めたんです。ちなみに正式な旗揚げは秋で、次回作『バーム・イン・ギリヤド』はthe companyのプレ公演になります。

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――新作『バーム・イン・ギリヤド』(ランフォード・ウィルソン作)は65年にオフオフ・ブロードウェイのラ・ママ実験劇場で初演されて以後、幾度となく再演されている名作戯曲です。なぜ今この作品を上演したいと思われたのでしょうか。


BIG_077.jpg 実は私は81年に、シカゴのステッぺンウルフ・シアターがこれを再演した際に実際の舞台に臨んでいるんです。というのも、あのときは確かジョン・マルコヴィッチが演出を手がけていて、彼の当時の妻のグレン・ヘドリーが出演していて、私はそのときから二人と非常に仲良くさせてもらっていたんで、いろいろ作品について話し合う機会があったんです。だから<the company>名義で上演する初めての作品として何がいいかなと考えていたときに、私のなかに衝動的に『バーム〜』をやりたいという感情が出てきて。とにかくそのとき周りにいるス タッフを興奮させたい一心で「これこそ今、僕らがやるべき芝居だ」と勢いよく熱弁をふるったんです。けど正直に告白するとそのときは「確かいっぱい人が舞台上にいたなぁ」ぐらいのことしか覚えてなかった(笑)。だから「やりたい!」と言ったその日に家に帰って改めて脚本を読み直したんですけど、そうしたらこれがとんでもなく難しい戯曲で、一気に「どうしよう」と悩んでしまった(笑)。まあもちろんそれと同時に、この戯曲の持つ素晴らしさに改めて惚れ直したわけですけどね。


――同性愛者、娼婦、ギャング、トランスヴェスタイトなど。本作は30人の日陰者たちが集うNYのオールナイトダイナーの日常風景を描きます。この異色作に、いま改めて惚れ直している理由を教えてください。

まず何よりこの作品は、今の東京に通じる現代性があります。というのも、この作品に出てくる人々は、うまく他者と対話することができなかったり、自分の生き方を明らかに見失っていたり、絶望的に孤独でどうしていいか分からなくなっていたりして、そのことについて舞台上で悶々と悩み続けている。GIB_005.jpgで、それはうまく自己表現することができず、「社会的自閉症」という病名までつけられ、悩み苦しんでいる今の東京の若者たちととてもリンクするところがある。だからこの芝居を新宿の小劇場でいま上演したら「あれ、こういう人さっき路上で見かけたぞ」と、お客さんたちはきっとリアルに受け止めてくれるだろうし、それはとても面白い試みなんじゃなかと思う。だから間違いなく40年前に書かれた戯曲だとは思えないほど、同時代的で刺激的な芝居に仕上がると思いますよ。ただこの作品は登場人物がとてつもなく多くて、しかも同時多発的にしゃべるセリフも多いので。日本語が分からない私としては、演出をつけるのがとんでもなく困難なんです。「いま誰が何を言ったんだ!」って稽古場で困惑すること間違いなし(笑)。だからこれは<the company>のプレ作品という意味でとても大きな冒険ですけど、私個人にとっても、とてもチャレンジングな作品になると思いますよ。



公演日:2008/4/4(金)〜4/20(日)
会場:新宿シアターモリエール (東京都)


作:ランフォード・ウィルソン 
翻訳:薛珠麗 
演出:ロバート・アラン・アッカーマン 

出演:パク・ソヒ/宮光真理子/チョウソンハ/中川安奈/斉藤直樹/瀬川 亮/鈴木信二/玉置孝匡/町田マリー/中嶋しゅう/他


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