劇作家・演出家・俳優の岩松了が1989年に書き下ろして初演し、岸田國士戯曲賞を受賞した「蒲団と達磨」。その後日談ともいえる「家庭内失踪」が、ヒロインに小泉今日子を迎えて上演される。年の離れた夫からの性的要求に嫌気がさしていた後妻は、彼の性的不能のきざしに内心快哉を覚える。そこへ、夫と前妻との間の娘が出戻って来て――。岩松と小泉のトークをお楽しみいただこう。

インタビュー

――「蒲団と達磨」の後日談と銘打たれた作品です。

岩松「蒲団と達磨」は先妻の娘が結婚した日の話なんですが、その続きを書いてみたいなという気持ちはあったんですね。その当日に、夫からの性的要求に嫌気がさしていた後妻が別居を申し出る。それから何年か経って、夫が不能になってきて、妻は「やった! 勝った!」と思うという(笑)。若いころから苦しんだことから解放されるわけだから。最近は薬とかもあるし、それで終わるかどうかはわからないですけど(笑)。僕ね、夫婦の話って延々と書いてる気がして。何か、汲めども尽きせぬものがあるんでしょうね、夫婦って(笑)。嘘とか矛盾とかがすごく固まったもののような気がして、だから惹きつけられる。出戻った娘が、夫婦についてずっと観察して日記を書いていて、読めとばかりにそこらへんにおいてある。実際そういうことが劇中起きるかどうかはわかりませんが、人間関係としてはそんな感じにしたいなと。

――「家庭内失踪」というタイトルの心は?

岩松キョンキョンが演じる後妻と、風間杜夫さんが演じる夫、そのメインの夫婦の話でもあるし、娘は離婚はしていないらしいけど出戻ってきているし、それを連れ戻そうとしている娘の夫の部下は後妻にたぶらかされているかもしれないし、そういう風に錯綜していく話にしたいなと。あと、僕が演じる役はね、妻に失踪したと思わせておいて、自分は近くにアパートを借りて、妻の様子をずっと見張っている男の役なんです。それで、変装して友人である風間さんのところに遊びに来る。ナサニエル・ホーソーンの「ウェイクフィールド」という小説があって、それが、失踪したことにして近くからずっと妻を見張っている男の話なんですよ。20年くらい経ってひょっこり帰ってくるという。それを妻側から書いた「ウェイクフィールドの妻」という本が出てるんですけど。
 キョンキョンはこれまでも僕の作品に出てくれていますが、生活感のある役ってやったことがないなと思って、今回はそっちに行こうかと。普通に家の中で生活している人。「あなた、お茶」みたいな。

小泉そうですね、なかったですね。謎な人とか、とっぽい役が多かった。名前からしてジーナとか(笑)。

――小泉さんからご覧になって、岩松作品、演出の魅力とは?

小泉最初に拝見したのが、本多劇場での「水の戯れ」の初演だったんですね。……わからない。今まで観たことがない。それで、その“わからない”をどうしたらいいんだろうと思って、あきらめよう、そう思ったら観ていてすごく楽しくなってきて。その後楽屋に行って、出演されていた竹中直人さんとかと一緒にご飯を食べようということになって、途中までついて行ったんですけど、一人になりたいと思って、やっぱり今日帰りますって言って、走って逃げた(笑)。一人で余韻というか、何を観たんだろうか、そういうのをまとめたくて。それで、下北沢の遊歩道のベンチで、暗い中、3、40分、一人で座って。
 そういう気持ちは自分が実際演じていてもありますね。こう相手とセリフを交わしている。そのセリフと、実際に相手と頭の中で投げ合っている感情が違う。それって、実生活でも普通にあることだけど、舞台にいてその感覚って普通はあまりないところ、岩松さんの作品にはあるんですよね。それがとても不思議で、おもしろくて。岩松さんとお仕事できるのはとにかくうれしいですね。頑張らなきゃとか、不安もありますけど、楽しみの方が強い。

――夫役は風間杜夫さんです。

小泉何か、ぴったりな感じがしますね。岩松さんの「ジュリエット通り」をシアターコクーンに観に行ったときに、エアカレーを食べるシーンがあって、それがすごくおもしろくて。こんなの風間さんにしかできないなと思いました。どんなときにもものすごく説得力がある。「恋する妊婦」で夫婦を演じたときは、まだ自分もいっぱいいっぱいだったので、今回どんな夫婦を演じられるか楽しみですね。

岩松すごくおもしろくなりそうな気がするんだよね。後妻だし。

小泉ちょっとやらしいよね(笑)。

岩松しかも、後妻は自分の父を軽蔑してるかもしれないと娘は思っている。これってドラマでしょ?(笑)

――岩松さんから見た、舞台女優・小泉今日子の魅力とは?

岩松もう30年以上のつきあいがあって、けっこう身近にいるから語るのはなかなか難しいですけど、できあがってないよさがあるような気がしますね。本人は、私は下手だからとか言うんですよ。何か、さあ女優ですみたいなものがない。それはずっと変わらない気がしますね。役者って見られる仕事だから、見られることに対する怯えと、見せる快感、その快感の方が勝っていったときに、見る方としてはだんだん嫌気がさしてくるというのがあるじゃないですか。そのバランスを欠いた状態がいわゆる“女優”だとしたら、そういう女優ではないなと。アイドルだったから、見せることのプロではあったと思うんだけど。

小泉性格もあると思うけど。アイドル時代は、ものすごく責任感と義務感をもってやっていたような気がします。ファンの人たちを目の前にしてやっていて、全部顔が見えちゃうし、こっちも全部見られちゃう。ガチの勝負みたいなとこがあって、そこでウソをつきたくなかったし、目の前で応援してくれてるこの人たちの気持ちに責任取らなきゃって、勝手に背負いこんでるようなところがあったと思います。でも女優の仕事のときは、これは私自身の感情じゃない。私の言葉でもない。それがすごく、荷物を下ろしたような気持ちになって。だから、見て! という感じにならないのかもですね。歌ってるときも恥ずかしいっていう気持ちがずっとあったから。それはなくなりはしないのかもしれないけど。

――女優として演じていても、ご自分が出るというのはありませんか。

小泉それはもちろんあると思いますし、だからこそいろいろな役者さん、女優さんが必要なんだと思うんですけど、出ちゃうのと出すのとではなんかこう色っぽさが違うというか、そんな気がして。

岩松役者って嘘でいいけど、アイドルって正面切ってるところがあるから、そこが違うんじゃないかな。役者って、客観的に見て判断して、みたいな嘘のつき方だと思うし。僕としても、あんまり立派過ぎる役者、女優と仕事するよりは。僕の芝居って、言い方難しいですけど、軸があんまりしっかりしていると困るというか、何か、浮遊していないとだめだという感じがあるんですよね。

小泉“浮遊”ってよくわかりますね。それがさっき言った不思議な感覚とつながってくるんだと思う。向かう場所がどこか違うというか。

岩松変な話、セリフにあんまり意味がないんで。だから、セリフに意味をこめる力のある人は、逆に不満、物足りなく思うかもしれないなと。

小泉釈然としない部分とかね。岩松さんの書く女の人自体が、ちょっと変わっていたり、謎だったりするし。でもきっと、人ってみんなそうなんじゃないかなって。私もね、昔夫婦喧嘩みたいなものをしたときに、すごく真剣に話してたんだけど、つけっぱなしだったテレビで、すごくおもしろいこと言っていて。すごく見たいんだけど、今目をそらしたらきっと怒られるだろうな、でも見たい。そういうことが演劇として書かれてるように思うんですよね。それを技術的にやれと言われるとちょっと気持ち悪くなるだろうけど。岩松さんの舞台を観に行くと、セリフをしゃべっている人じゃない、周辺の人が気になって、それが3、40分後に、あ、こういうことだったんだなと気づくというか、そういう見方をすることができる。

岩松今回ね、とにかく変な話だと思いますよ(笑)。でも、よくよく考えれば変じゃないみたいな。

――岩松さんご自身、言い方は何ですが嬉々として変な役を演じられている印象が……。

岩松いやいや。でも、変なはずだから、見えるものはすべて。舞台で“変なもの”という提示をするかもしれないけど、日常生活の方がもっと変であって。

小泉そうそう。みんな変だから。

岩松そういう風に変に見えないから人は正常でいられるわけで。日常生活のその変、本当のことをすべて見てしまっていたら、人は狂うしかないから。そうやって、狂気の一歩手前でとどめているのが生活だと、僕は思うんですよね。

[取材・文=藤本真由(舞台評論家)]
[撮影=平田貴章]
[スタイリング=伊賀大介]
[ヘアメイク=大和田一美]

公演概要

M&Oplaysプロデュース 家庭内失踪

<公演日程・会場>
2016/3/29(火)〜3/30(水) 日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール(愛知県)
2016/4/3(日) 静岡市清水文化会館(マリナート) 大ホール(静岡県)

<キャスト・スタッフ>
作・演出:岩松了
出演:小泉今日子/風間杜夫/小野ゆり子/落合モトキ/坂本慶介/岩松了

2015-12-02 12:30


Photo by Leslie Kee

 フランスで絶大な人気を博し、今春には小池修一郎の潤色・演出により宝塚歌劇団でも初演されたフレンチ・ロック・ミュージカル『1789─バスティーユの恋人たち─』が、同じ小池演出による東宝版として生まれ変わる。11月30日、円形ステージとランウェイのような花道を備えた会場で行われた製作発表は、まるでファッションショー! 絢爛豪華な衣裳に身を包んで登場したキャストが、意気込みとともにミュージカルナンバーを披露した。

パリのテロ事件があった今だからこそ

 ノリのいいロックナンバーにのせて、人権宣言に至るフランス革命のプロセスと、そこに生きた人々の人間模様を描く本作。まずは演出の小池が、新曲などの打ち合わせのために訪仏した約2週間後にパリ同時多発テロ事件が起きたことに触れ、「様々な階層の人が人権宣言へと向かうこの作品には、世界中の人々が宗教や人種の違いを越えてひとつの社会を作る、という認識が盛り込まれている」と熱弁。「フランス革命とこれからの世界との接点を、考えさせるのではなく、一緒に感じていくことのできる作品を目指したい」と、事件前に手掛けた宝塚版とはまた違った上演意義を持つ作品の誕生に期待を寄せた。

 その小池と同じ苗字であることを踏まえ、開口一番「徹平のほうの小池でございます」と挨拶して会場を沸かせたのは、革命に身を投じる農夫ロナンを演じる小池徹平。「帝国劇場のステージもWキャストも初めて。今までにない視野で取り組めるのが楽しみ」と、新たな挑戦に前向きな姿勢を見せる。Wキャストの加藤和樹は、「フランス版の映像を観たら引き込まれた。今回加わると聞いたオリジナルナンバーを含めて、ミュージカル界に革命を起こせるような作品にしたい」と熱くコメント。ロナンと運命的な出逢いを果たすオランプ役もまたWキャストで、神田沙也加は「本当に素敵な曲ばかり。楽曲の世界の中にどう存在するか企むのが楽しい」と目を輝かせ、夢咲ねねは「豪華な方たちとご一緒できて幸せな気持ちでいっぱい。足を引っ張らないようにしたい」と気を引き締めた。

 革命家の3人を演じるのは、ロベスピエールが古川雄大、ダントンが上原理生、デムーランが渡辺大輔という顔触れ。古川は「自分なりに役を掘り下げて役割を果たしたい」、渡辺は「念願の小池先生の舞台に立ててうれしい。人間ドラマを大事に演じたい」とそれぞれ意気込み、上原は「よく革命家の役をやっているが、ことごとく(革命に)失敗している。今回は成功し、しかも女っ気がある役なので革命家冥利に尽きる」と笑わせた上で、「というのは冗談で、革命をなした先に彼らがどんな世界を夢見ていたのかをお客様に感じていただきたい」と締め括った。ロナン役の2人と革命家3人衆はまた、製作発表の終盤にはミュージカルナンバー《サ・イラ・モナムール》も披露。五者五様の男らしさと美声で燃える思いを力強く歌い上げ、本番への期待を大いに盛り上げた。

息を呑むほどゴージャスな王妃ドレス

 王位を狙って暗躍するアルトワ役の吉野圭吾は、「フレンチミュージカルは初めてなので、どういう部分がフレンチなのかを見つけていきたい」と飄々とコメント。アルトワの手先ラマールを演じる坂元健児は、「秘密警察の役なのに、(衣裳を見やって)どう見てもすぐにバレてしまいそう」「最近めっきり恋愛する役が減ってきているなか、今回はオランプとの恋愛があるので特にそこを頑張りたい」と畳み掛けて爆笑をさらった。マリー・アントワネットの恋人フェルゼン役の広瀬友祐は、「出演できる喜びと幸せに感謝すると同時に、この作品が役者人生において素敵な意味のある時間になればと思う」と神妙な面持ち。そして、その広瀬の「こんなにも素敵な方の恋人役ができる、贅沢な時間を堪能したい」という言葉を受けて最後にコメントしたのが、アントワネット役の2人だ。

 『エリザベート』で女優としての天賦の才を改めて見せつけた花總まりと、男役トップスターとして活躍した宝塚歌劇団を今年2月に卒業したばかりの凰稀かなめのWキャストは、本作の大きな話題のひとつ。思わず息を呑むほどゴージャスなドレス姿でランウェイに登場した時から、気品を漂わせながら悠然と歩く花總に対し、モード系モデルのような美しさをまとって颯爽と歩を進める凰稀と、その佇まいは対照的だった。「マリー・アントワネット役は宝塚に在団中も一度させていただいたが、作品自体の雰囲気が違う。小池先生のご指導のもと、また新たに作っていきたい」と微笑む花總と、「17年間男として育ってきたので不慣れなことばかり。ご迷惑をおかけするかもしれないが精一杯務めたい」と表情を引き締める凰稀。どちらも演技力には定評がある2人のこと、個性の大きく異なる、しかしそれぞれに魅力的な王妃として、東宝版『1789』を艶やかに彩ってくれることだろう。

 (12月1日(火)20:00より、e+全館および半館貸切公演の座席選択プラス&先着順方式の先行受付を開始)

[取材・文=町田麻子]

公演概要

『1789─バスティーユの恋人たち─』

<公演日程・会場>
2016/4/11(月)〜5/15(日)  帝国劇場(東京都)
2016/5/21(土)〜6/5(日)  梅田芸術劇場 メインホール(大阪府)

<スタッフ・キャスト>
出演:小池徹平・加藤和樹[Wキャスト]/神田沙也加・夢咲ねね[Wキャスト]/花總まり・凰稀かなめ[Wキャスト] 古川雄大、上原理生、渡辺大輔、ソニン、吉野圭吾、坂元健児、広瀬友祐、岡幸二郎
潤色・演出:小池修一郎
公式サイト:http://www.tohostage.com/1789/

■e+貸切公演先行受付:2015年12月1日(火)20:00〜12月27日(日) 18:00
2016年4月24日(日)12:00公演(e+半館貸切)
2016年5月08日(日)12:00公演 e+独占販売
2016年5月10日(火)18:00公演 e+独占販売
2016年5月14日(土)12:00公演 e+半館貸切

2015-12-01 15:51

 テニミュ3rdシーズン第三作となる「3rdシーズン 青学(せいがく)vs山吹」より、青学・越前リョーマ役・古田一紀と、山吹・壇太一役・佐野真白による“会って二度目対談”を実施! 共に1年生同士、試合を通じて静かな友情を交わしていくふたりの視線から、次回作について語ってもらった。

インタビュー

──佐野さんは今日が初取材だそうですね。

佐野はい! 昨日からホントに楽しみで…古田さんとふたりの撮影も楽しかったです。

古田僕ら、会うのはまだ今日で2回目なんですよ。でもこうして佐野くんと並んでいると・・・今はなんか急に自分がお兄さんになった気分(笑)。

佐野古田さんはやっぱりすごいですよ。オーラとか。

古田いやいや、そんなのは…たぶん雰囲気だけだから。

佐野でも前からテニミュは観ていて古田さんの存在も知っていて憧れていたので、こうして近くで話せてうれしいです。

古田あー、でももしそう思ってもらえているのなら、このまま憧れてもらえていたらいいなとは思います。

──そこの関係は、試合で活躍する1年生ルーキーのリョーマと、その姿に憧れて触発されていく1年生マネージャーの壇くんとの関係にも重なりますよね。

古田そうなんです。僕らの今のこの距離感ってすごく役に近いと思うので、この感覚は大切にしたいですね。しかも稽古入って「あれ? こんなもんなの?」って思われないように(笑)、今あるらしいオーラとかも消さないようにして、ずっと憧れてもらえるような人にならなくちゃいけないですね。

──『テニスの王子様』のリョーマは基本的に“すべてを試合で語る”というキャラクターなんですけど、壇くんとの関係においては会話で直接的に気持ちをやりとりするシーンがあるのがちょっと珍しいな、という印象があります。

古田あれは…なんでなんだろう? リョーマが壇くんの存在に興味を持って…1年生同士だし…なにか自分と似た感じがあったのかもしれないですね。「テニス好きならやればいいじゃん」って、リョーマから壇くんに声をかけてアドバイスする。自分から人に干渉していくのは確かに珍しいことですよね。「3rdシーズン 青学(せいがく)vs聖ルドルフ」で対戦した不二裕太にもちょっとそういう瞬間があったんですけど…やっぱり、リョーマ自身が青学に入って人として成長していってるってことなんでしょうね。テニスが好きだからこそ、自分のことだけじゃなく周りの人にも必要な思いは“伝える”ってことを、ちょうどこの辺からできるようになってきた。少しずつコミュニケーション能力が出てきてるんです。たぶん。

佐野壇も、そういう気持ちが伝わる言葉をリョーマくんにもらったからこそ、素直に憧れの気持ちを抱いたんだと思います。

──では…佐野さんの中にある、実際の古田さんへの憧れポイントは?

佐野ダンス! 観たときにホントに「上手い!!」って思って、僕もああいう表現を身につけられたらな…と。舞台上に役者さんがたくさんいる中にリョーマが出てくると、やっぱりそっちを観ちゃうんですよね。そういう存在感とか見せ方とか、パフォーマンスに関するいろんなことを勉強させてもらいたいです。でもラケットを持ったダンスってやっぱり普通のダンスと全然違って、例えば指先を意識する感じとか、ひとつひとつの注意の払い方も全然違うと思うので、自分の中の考えを変えていかないとできないところもたくさんありますよね。

古田うん、ラケットを持ったダンスってホントに全然違うよね。自分もずっとダンスやってきたんだけど、最初にテニミュの振りをやったときは今までやってきたことが全然生かせなくてビックリ!

佐野そうなんですか?

古田積み上げて来たモノが通用しない部分がかなりあった。だからダンスに関して言うと、未経験でもラケットを持ったダンスは上手いって人もいるし、逆に普通のダンスは上手いのにラケット持つと苦心するって人もいて…テニミュのダンスだけは、キャリアの違いを超えてホントに稽古場で横一線でのスタートだったっていう印象が強いです。

──今後の予定としては、テニミュ名物、過酷なテニス合宿も控えているそうで。

佐野合宿はかなりハードだというのは聞いているので、とりあえず今は一生懸命体力を養っています。合宿をちゃんと乗り切って、青学のみなさんにもしっかり食らい付いていけるように。

古田それが…合宿は聖ルドルフ公演が終わってすぐの予定なので、もしかしたら俺たち自身がボロボロの状態で参加するかも(笑)。…なんてことも言ってられず。やっぱり一緒に合宿する以上は山吹のみんなに「食らい付くぞ!」って思ってもらえる青学でなくちゃダメなので、がんばりますよ〜。「テニミュとはこういうモノ」っていうことをすべて伝えていきたいから、キツくてもがんばるしかないっ。

──ちなみに合宿の先輩として事前のアドバイスがあればぜひ。

古田自分は部屋で夜食を食べようと思ったらお箸がなくて、でもクタクタで食堂へ取りに行くのも辛くて…結局、ボールペンで焼きそばを食べたことがあります(笑)。他にもそういう話は聞くので、マイ箸は持っていくと便利かも。

佐野いいこと聞きました! みんなにも教えてあげないと。

──合宿を控えた山吹メンバーの様子はいかがですか?

佐野始めはオーディションに受かった嬉しさで集まってもワイワイやってることが多かったんですけど、聖ルドルフ公演を観劇したところで完全にスイッチが入って、今はかなり気を引き締めてそれぞれに準備しています。僕はミュージカルの経験も浅いので、とにかく周りのみなさんを見習ってすべてを学んでいくつもりです。

古田山吹って、ひとくちにこうと言えない感じのチームカラーがあるんですよ。チームの曲も青学なら爽やか、ルドルフならちょっと高貴に…って、普通はそれぞれのイメージがパッと出てくるけど、山吹は個性的な選手が絶妙に散りばめられていて、なかなか言い表す言葉が決まらない感じ。そのバラエティ豊かなところにけっこう興味わきますね。今回はどんなカラーになるんだろう?

佐野仲はいいですよ。でも学校のカラーは…やっぱり自分たちの中でもこれから見えてくるところが大きいですね。自分たちらしい空気のままに、いいチームカラーを打ち出せるような稽古にしたいです。

──今回リョーマが戦う山吹の亜久津 仁は、超中学生級の不良でありテニスの猛者。過去2戦ともまたひと味違うゲーム展開が楽しみです。

古田見た感じがまず面白いですよね。でっかい相手にちっこいヤツが向かっていって、結果、その小さいほうが強い…みたいな。 今までは相手に押されるところもあったけど、リョーマ的には元々自分のほうが優勢というか、順調に勝ち進んでこれてる感触なんです。でも亜久津はそうはいかない。リョーマがもしかしたら自分より強いかも…という相手に出会い、本当のピンチに直面するという展開も、演じる上ですごく楽しみにしているポイントです。

佐野壇は先輩である亜久津にも勝ってもらいたいし、同学年のリョーマくんにも活躍してもらいたいっていう両方の気持ちを交錯させながらその試合を見ることになるので…そこの心情も上手く伝えたいですね。

古田亜久津との試合が壇くんを一歩後押しする大きな力にもなるからね。リョーマはもちろんそんなこと知らずに戦ってるんですけど…そうですね、全力で試合した結果として壇くんがリョーマを見てちゃんと一歩進める力を持てるよう、しっかり戦います。

──では最後に本番を楽しみにしているお客様へ、それぞれの意気込みをお伝えください。

佐野壇くんは青学の1年トリオとちょっと似てるところもありますが、今までの学校にはいなかったタイプのキャラクターだと思うので、ぜひ楽しみにしていて欲しいです。自分の目標としては、「僕は小さいし強くなれないしマネージャーでいいや」って諦めていた気持ちが、リョーマくんとの出会いによってプレイヤーを目指すようになる。そんな壇くんの心の変化もしっかり伝えたいです。そして山吹としては、今までテニミュを創り上げて来た先輩方の思いを大切にしながらさらに僕らのパワーを重ね、新たな力となって素敵なステージを創りたいと思います。

古田亜久津戦のリョーマが壇くんにパワーを与えることができたように、「小さな選手が大きな強敵を倒していく」姿を通じて、お客様にもいろんな勇気を与えられたら素敵だな、と思っています。リョーマの立ち向かっていく姿で、たくさんの背中を押すことができますように。あとは…「上手くなる」というのが常に自分の中にあるテーマなんですが、もう、次も一生懸命やるだけですね。無鉄砲ながむしゃらではなく、がむしゃらの先にある全力、パフォーマンスとしてキレイに見せる、強く見せる…フォームも歌もダンスも、ひとつひとつに丁寧に思いを込め、全体的にレベルアップした作品がお届けできるよう、これからもカンパニー全体で切磋琢磨していきたいです。山吹公演、ぜひ観に来てください!

[取材・文=横澤由香]
[撮影=平田貴章]

公演概要

ミュージカル『テニスの王子様』3rdシーズン 青学(せいがく)vs山吹

<公演日程・会場>
2015/12/24(木)〜12/27(日)  TOKYO DOME CITY HALL(東京都)
2015/12/30(水)〜2016/1/10(日)  大阪メルパルクホール(大阪府)
2016/1/15(金)〜1/17(日)  日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール(愛知県)
2016/1/29(金)〜1/31(日)  キャナルシティ劇場(福岡県)
2016/2/6(土)〜2/7(日)  多賀城市民会館 大ホール(宮城県)
2016/2/12(金)〜2/21(日)  TOKYO DOME CITY HALL(東京都)

<出演・キャスト>
公式HPでご確認ください。
http://www.tennimu.com/

原作:許斐 剛『テニスの王子様』(集英社 ジャンプ・コミックス刊)
オリジナル演出:上島雪夫 演出:本山新之助
音楽:佐橋俊彦/坂部 剛
脚本/作詞:三ツ矢雄二 振付:本山新之助/上島雪夫

2015-11-06 21:44

 「バーン・ザ・フロア」は1999年、イギリスでの初演以来、北米、ヨーロッパ、オーストラリア、アジア、アフリカなど、世界中の観客を感動と興奮の渦に巻き込んできました。2009年にはニューヨーク・ブロードウェイ公演、2010年、2013年にロンドン・ウエストエンド公演で成功を収めるなど、彼らはショービジネスの中心でも、その実力を証明しています。日本においても2002年以来、8度に渡る来日公演で、45万人以上もの観客を魅了してきました。

「バーン・ザ・フロア」の魅力は世界最高峰のダンサーたちが鍛え上げられた肉体から繰り出す圧巻のダンスパフォーマンス。ステージから次々と押し寄せる熱気と興奮が会場全体を包み込み、観客はいつの間にか手拍子をし、ステップを踏み、ステージと客席が一体となって盛り上がる「バーン・ザ・フロア」はそんなハッピーでエキサイティングなエンタテインメントです。

 9度目の来日公演となる今作は、舞台・楽曲・衣装、すべてを一新!!常に新しい楽曲や構成、演出を取り入れ、更なる高みへと挑戦を続ける「バーン・ザ・フロア」。 進化を遂げた、彼らの最新のステージが2016年4月、いよいよ日本に上陸します。

世界中の観客を虜にする「バーン・ザ・フロア」!!

はじまりは1997年―
エルトン・ジョンの誕生日パーティで披露されたボールルームダンサーによる20分間のパフォーマンス。パーティに出席していたプロデューサーのハーレー・メドカフはそのダイナミックなダンスから放たれるエネルギー、ケミストリーに強い衝撃を受けました。そこからヒントを得て生まれたのが「バーン・ザ・フロア」です。1999年のイギリスでの初演以来、彼らは北米、ヨーロッパ、オーストラリア、アジア、アフリカなど世界中の観客に熱狂的に迎えられました。2009年に満を持して進出したニューヨーク・ブロードウェイ開幕後間もなく上演期間の延長が決まるほどの人気を博し、2010年12年にはロンドン・ウエストエンド公演での成功を収めるなど、ショービジネスの中心でも彼らの実力が認められています。

 幕が上がると劇場はダンスフロアに早変わり!身体に響くパーカッションの音やリズム。時にパワフルに、時にドラマチックに、男女2人のシンガーが歌い上げる美しいメロディー。様々なジャンルの音楽にのせて繰り広げられる、ダンスの魅力がたっぷりと詰め込まれた「バーン・ザ・フロア」のステージは、まさに“ダンスのフルコース”。ステージから次々と押し寄せる熱気と興奮が会場全体を包み込み、観客はただ観ているだけでワクワクし、気がつけばリズムを取り、手を鳴らし、きっと一緒に踊り出してしまうでしょう。

 「バーン・ザ・フロア」のダンサーは、世界各国の競技ダンス大会のチャンピオンやファイナリストをはじめ、世界で活躍するトップレベルの実力者たち。アスリートのような身体能力をもち、極限のパフォーマンスで観客を魅了します。優雅ながら力強く、ステップを踏むたびに、鍛え上げられた肉体の美しさに心を奪われます。

 今作「NEW HORIZON」を、「新たな挑戦のスタート」と位置付けているカンパニー。新たな世界観をよりイメージできるよう、衣装や舞台セットを刷新!ミュージカル映画「バーレスク」やオペラ「カルメン」など情熱的なナンバーや、ハイスクールのカジュアルな要素も取り入れながら、「日本公演に向けて最高なステージを届けたい」と、さらに構成を練っているとのこと。 よりクラシカルに、より現代的に―9回目の来日にして、さらに新たな挑戦をし、進化を遂げる「バーン・ザ・フロア」ならではのパフォーマンスは必見です!

スペシャルサポーターに ホラン千秋・はるな愛・武井壮 が決定!

 本公演を盛り上げるべく、ホラン千秋、はるな愛、武井壮の3人がスペシャルサポーターに就任することが決定。日本のお客様より一足早く、同カンパニーの上海公演を観た3人の感想コメントが届きました。

ホラン千秋

 「バーン・ザ・フロア」は最初から最後までドキドキしっぱなしです!1曲1曲、雰囲気も大きく変わるので、舞台のどの部分を切り取っても楽しい!ダンサーたちは、女性らしく、男性らしく、パワフルなパフォーマンスを見せてくれるので、本当に飽きない!どんどん気持ちが盛り上がって、元気になれるステージです。

はるな愛

 アップテンポで思わず踊りだしたくなるシーンもあれば、グッと涙がでるような感動するシーンもあり、言葉がないからこそ自分で想像して楽しめます。美女&イケメンばかりなので、自分の“お気に入りダンサー”を探すのも楽しいです。このショーはずっと前から見たいと思っていたので、生で観られて本当に良かった!何度でも見たい!最高です!

武井壮

 恋や愛、争いや喜び、幸せや悲しみなど、ダンスで魅せる駆け引きにぐいぐい引き込まれていきました。「NEW HORIZON =新たな地平線」というタイトル通り、壮大なストーリーを感じました。見ているだけで一緒に踊りたくなってしまいます!引き締まった筋肉の美しさや汗のしぶきなど、ダンサーが放つ輝きを是非会場で体感してください!

公演概要

BURN THE FLOOR NEW HORIZON

<公演日程・会場>
2016/4/9(土)〜4/13(水)  東急シアターオーブ(東京都)
2016/4/15(金)〜4/18(月) フェスティバルホール(大阪府)

<スタッフ・キャスト>
出演:バーン・ザ・フロア・カンパニー

2015-11-06 12:01

 一人の男に宛てた三人の女性の手紙が浮き彫りにする、ある不倫の恋――。井上靖の小説を原作に、中谷美紀が三人の女性を演じ分けた「猟銃」は、2011年にカナダ・モントリオールと日本で上演され、初舞台を踏んだ中谷に二つの演劇賞をもたらした。その舞台が、2016年春、再び上演される。再演に挑む意気込みを尋ねた。

女性の美しさ、醜さ、恐ろしさ、すべてが詰まっている作品

   


前回公演より(撮影:阿部章仁)

――5年ぶりの再演に挑む心境は?

 初演の時点では、演出家フランソワ・ジラールさんのご指導のもと、そのとき自分が持てるすべてを出したつもりですが、その後、三谷幸喜さん演出の「ロスト・イン・ヨンカーズ」、マックス・ウェブスターさん演出の「メアリー・ステュアート」と二つの舞台を経験したことで、「猟銃」の完成度をさらに高めたいと思うようになりました。それまでずっと逃げ続けていたのが、初めて舞台に立つことを決めて、一生懸命創り上げた作品なので、やはり大切にしていきたいなと…。どれだけ成長しているかわかりませんが、この5年の歳月によって、作品をさらに深く理解できるようになっていればと思いますし、日本語の一つ一つの言葉をより大切に演じたい、という思いがあります。一つ一つの言葉にこめる思いを、自分の中にもっとリアルにイメージし、発していきたいと思っています。

――ジラールさんの演出から得て大きかったと感じるものは?

 自分にとって一番大きかったのは、演じる上だけのことではなくて、限界とは、自分自身の心が勝手に設け、定めているものなのだとわかったことでした。舞台に上がる上では身体能力に長けていなくてはならないとか、声楽やダンスを身につけていなくてはいけないとか考えていたのですが、フランソワさんの求めていたものは決してそういうものではなかったんです。日本語がわからなくても、私が発した言葉を本当に想い描いているかどうか、フランソワさんには見えるようなんですね。そういった意味では本当に信頼できる演出家だと思っています。

――中谷さんが一人でセリフを発し、後ろでもう一人の出演者ロドリーグ・プロトーさんがパフォーマンスを見せるという独特の構成の舞台です。

 ロドリーグさんは、日本人以上に日本人のような、寡黙で忍耐強い、まるで高僧のような方なんです。何かキューがあるわけではなく、日本語を理解されているわけではないのに、すべて私のセリフに応じて演技をなさっていて、本当にすばらしいですよね。ある日、いいところを見せようと頑張るあまり、ほとんどすべてのセリフを間違えてしまった舞台があったんですが、終演後に会ったロドリーグが「今日のことは忘れろ」と言ってくれて、わかったんですね〜と愕然としたことがありました(苦笑)。

   


前回公演より(撮影:阿部章仁)

――袖に入ることもなく三役を演じ分けるという難しさについてはいかがですか。

 そのあたりは演出家が舞台装置の転換でもとてもうまく表現してくださって、助けられたと思っています。水が張ってあったのがなくなって石張りになり、そして板張りになる。それによって自分の気持ちも自然に変わるように仕向けてくださいました。とはいえ、三人を演じるというのが、ペース配分の上でも、最初の女性が終わると三分の一終わったなとか、二人目が終わったところであと30分だなとか、今日は二回公演なのに一回目でこんなに一生懸命演じてしまって最後まで持つかしらとか、いろいろ考えていたりして(苦笑)。今また台本を読み返しているのですが、とにかく分量が多いので、読んでいるだけで時間がかかるんですね。一日48時間あったらいいのにと考えてしまうくらい。ただ、読み返すと初演のころより深く感動する部分もあって。男の愛人である彩子という女性が一番悲しいのかな、いや、三者三様にどうにも救いようがなくて、悲しいのかなと…。彩子の娘の薔子はまだ若いだけ未来がありますが。三人の女性から同時に別れを告げられる三杉穣介という男も悲しいですけれども。

――三人の中でとりわけ近い、または遠い存在は?

 どの人物も自分とは異なり、そしてどの人物も自分の中にもいるような気がしますね。薔子は若さゆえの潔癖さをもつ女性で。親というものは完璧でいないといけないと信じていて、その信じていたものが揺らいでしまったという、何とも言えない気持ちがある。実際にはそんな大したものでもないのに、自分自身ですら清いものと信じているような部分は、自分自身の若かりし頃のようだとも思いますし。薔子には、母である彩子のような側面もあって、いずれ同じ道をたどるのかなと。男の妻であるみどりは、一見ふしだらな有閑マダムにも思えますが、仮面夫婦を続けてきて、自分の中に何も残っていないという、やはりとても悲しい人ですよね。その悲しさは、演出を受けて初めて気づいたことだったんですが。男女の関係においてだけでなく、例えば友人や仕事仲間であっても、理解し合えないのに理解しているようにふるまったり、相手の気を引こうとしてあらぬ行動をしてみたり、そういったことってありますよね。彩子がもっとも共感しづらいようで、実は多くが共感できる女性なのかもしれません。三杉穣介に決して復讐しようとしたわけではなく、あくまで誠意をもって接した結果だったとは思うのですが。

   


前回公演より(撮影:阿部章仁)

  女性の美しさ、醜さ、恐ろしさ、すべてが詰まっている作品だと思うので、女性のお客様には、この舞台をご覧になって、普段できない男性への復讐を果たしていただければ。男性のお客様にとっては、そうですね、女性を大切にしないとこういうことになりますよという教訓のようにご覧いただければ(笑)。装置も本当に美しいですし、シルク・ドゥ・ソレイユの舞台でも活躍しているロドリーグさんの強靭な肉体が見せる神業にも注目していただけたらと思います。

[取材・文=藤本真由(舞台評論家)]

公演概要

猟銃

<公演日程・会場>
2016/4/2(土)〜4/24(日) PARCO劇場(東京都)
2016/5/4(水・祝) りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館・劇場(新潟県)
2016/5/7(土)〜9(月) ロームシアター京都 サウスホール(京都府)
2016/5/14(土)〜15(日) 穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール(愛知県)
2016/5/21(土)〜22(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール(兵庫県)
2016/5/27(金)〜29(日) 北九州芸術劇場 中劇場(福岡県)
※北九州公演のe+での取扱いはございません。

<キャスト・スタッフ>
原作:井上靖『猟銃』
翻案:セルジュ・ラモット
日本語監修:鴨下信一
演出:フランソワ・ジラール
出演:中谷美紀/ロドリーグ・プロトー

2015-11-04 18:37

  いよいよ10月23日に初日の迫った「プリンス・オブ・ブロードウェイ」。ブロードウェイの伝説的プロデューサー&演出家、ハロルド・プリンスがミュージカルと共に生きてきた人生をつづる、画期的な舞台の世界初演だ。彼が手がけた作品群の中から名場面、名ナンバーを抜粋、超一流のスタッフ&キャストが新たな演出&振付で臨む。「オペラ座の怪人」のファントム役や、「レ・ミゼラブル」のジャン・バルジャン役を務め、日本でも人気の高いミュージカル・スター、ラミン・カリムルーに、作品の仕上がりと意気込みを尋ねた。

ラミン・カリムルー インタビュー

――ハロルド・プリンスさんはあなたにとってどのような存在ですか。

 まさにレジェンドだよね。多くの役者、作曲家、演出家、プロデューサーたちに道を開いてきた。数々の成功を収め、それと同じくらい失敗もあったと思う。でも、成功も失敗もあったからこそ、彼は今の彼であって、敬意と信頼とを集める存在になったんだと思うんだ。実際に会うと、最初の日からもう友達だと思わせてくれる気さくな部分があって、そのことが役者としての僕に大きな自信をもたらしてくれた。そんな彼の人生を描く作品に出られることは光栄としか言いようがない。僕はスロースターターなところがあってね。今回は特に、「レ・ミゼラブル」に出演していてリハーサルに遅れて参加したから、キャストを見ていてちょっとおののいちゃって。みんな、作品に何か特別なものをもたらすことのできるすごい才能の持ち主ばかりだから、何回か、「ちゃんとやっていけるかな?」って、家にいる妻に電話しちゃったよ(笑)。なじんできてからはみんなともう家族のような絆で結ばれて、今ではこの作品に携わることは単なる仕事じゃなくて喜びに思えているんだ。

――他の方々はラミンさんを「すごい!」と思って見ていたかもしれませんよ。

 そうだといいんだけどね(笑)。でも、この作品に携わったことが、僕に新たなインスピレーションを与えてくれた。率直に言えば、もう「オペラ座の怪人」と「レ・ミゼラブル」からは卒業、そう思っていたんだ。もちろん、何事にも絶対はないけれども、いつまでも同じ場所にいるのではなく、限りなく成長していきたいからね。ただ、では自分は何を望んでいるのだろうと思ったら、それもすぐには答えが出なくて。もちろん、映画やテレビの仕事もしていきたいと思っているけれども。でも、今回稽古場で、シュラー・ヘンズリーの演じる「スウィーニー・トッド」のナンバーやトニー・ヤズベックの演じる「フォリーズ」のナンバーを見ていたら、これがもう本当にすばらしくてね。僕自身も「カンパニー」のボビーのナンバーを歌うんだけれども、ああ、「スウィーニー・トッド」もいいな、「カンパニー」もやってみたいなって、あれこれ夢が広がってきたんだ。

――この作品についてプリンスさんにインタビューしたとき、「昔はよかった」と過去を懐古するのではなく、すべてを新しくし、未来に向かっていく作品にしたいとおっしゃっていたのが一番印象的だったのですが、今のラミンさんのお気持ちともリンクするのかなと思いました。

 うん、僕が今後「オペラ座の怪人」や「レ・ミゼラブル」をやるとしても、今までとは違った風に取り組んでいきたいと思うし。そういう意味では今回、コメディあり、ダンスありとさまざまな事柄、役柄を学び、挑戦している中で「オペラ座の怪人」のナンバーも歌えるというのは、新たな風を吹き込めることになるなって、自分でも楽しみにしているんだ。

――出演シーンについて教えていただけますか。

 「オペラ座の怪人」や「ラブ・ネバー・ダイ」あたりは僕一人で担当するシーンだけど、グループで取り組めるシーンがとりわけ楽しい。「くたばれ! ヤンキース」の場面で始まるんだけど、みんな野球選手の扮装をしていてね。スーパーマン姿で登場するシーンもあって、ここではマリアンド・トーレスが見事な歌声を披露する。すばらしい歌手で女優である彼女のパフォーマンスにあれこれリアクションできるパートで、ここも気に入っている。「カンパニー」からはボビーのナンバー「ビーイング・アライブ」を歌うんだけど、今回の作品がきっかけとなって、いつか演じてみたい役の一つと思うようになった。生きてきていろいろあった中で、今こそあのナンバーがわかる、心に沁みるなと。「ウエスト・サイド・ストーリー」のトニーも担当するけれども、もう、最初の1音を聴いただけで、僕自身、作品世界に連れて行かれてしまうところがあるなと思うよ。

――出演していないけれども、観ていてすごい! と思うシーンはありますか。

 トニー・ヤズベックが「フォリーズ」のナンバー「ザ・ライト・ガール」を歌うんだけど、歌といい、演技といい、驚異的なんだ。これまでの人生で目にした中で一番すごいパフォーマンスだと思う。日本ではあまり知られていない作品かもしれないし、僕自身、いくつかナンバーを知っているくらいで、実際の舞台を観たことはないんだけれども、彼のパフォーマンスを観たら、この作品観たいなあと思うようになった。「オペラ座の怪人」や「エビータ」のような作品の大ナンバーって、ポップ・ヒットみたいなところがあるじゃない? でも、「フォリーズ」はもっと控えめな感じで、それでいて人生の真実があるんだよね。真実の人間関係が描かれていると思う。

――プリンスさんご自身も、とりわけ好きな作品として「フォリーズ」を挙げていました。その当時、仕事に時間を割きすぎていて、家族との関係にあまり時間を傾けることがなかった思い出を語り、その上で、ヒットしなかったからこそ好きな作品なのかもしれないと。

 ああ、そう聞いて何だか、よくわかるな。そのインタビュー、僕も読みたいな。

――プリンスさんの人生を描く一方で、ミュージカルという舞台形式についての作品でもありますよね。ミュージカルについてさまざまな発見があり、また、さらに愛を深めることのできる舞台なのではないかと期待しているのですが。

 きっとそうなると思うよ! 何しろ、ハロルド・プリンス=ブロードウェイ・ミュージカルだからね。そして、ただのコンサートではなくて、さまざまな要素が巧みにより合わされているから、それぞれのナンバー同士に関連性が見出せるところもあると思うし、過去なくして未来はないということが伝わるんじゃないかな。

――ラミンさんご自身もミュージカル・スターとしてご活躍されていますが、ミュージカルというジャンルに寄せる思いをぜひおうかがいしたいです。

 僕自身は、ミュージカル俳優になりたいと思ってきたわけじゃないんだよね。とにかく役者になり、役を演じたかった。だから特に歌のレッスンも受けたことがないし。「オペラ座の怪人」のファントム役を演じるなら、歌えなくちゃいけないな、そんな感じで。今回の仕事を受けたのも、新しいこと、より多彩なことに挑戦できると思ってのことなんだ。僕にとっては、映像もミュージカルも違いはないんだよね。演じることは演じること。役柄を通じて物語を語ることだ。だから、もし違いがあるとしても、その違いに敢えて無知でいたいと思っていて。ただ、ジャンルによって多少技術の違いがあるだけだと思う。

――それでも、ミュージカルに何か特別なもの、他のジャンルに対する優位性があるとすれば、それは何だと思われますか。

 それが、さっき話したトニー・ヤズベックの「ザ・ライト・ガール」に集約されていると思う。僕自身はダンサーというわけじゃないから、ダンスがどうのこうのという話をされてもわからない。でも、あのナンバーでのトニーのパフォーマンスを観ていると、まずはそれがライブ、生であることに打たれる。それから、感情が歌声だけではなく彼の身体からも伝わってくることに感動する。それは僕にとって本当に大きな発見だった。感情的な真実と同じくらい、身体的な真実というものも大きな意味をもつものなんだと。それらすべてが融合されているのがミュージカルの魅力なんじゃないかな。アスリートが何か神業を見せるとして、そのとき、彼の肉体にもやはり何らかの感情の動きというものがあるわけだよね。ミュージカルにおいてはそこにさらに歌声が加わるわけで、それを観る、聞くということには、何らかの科学的な反応が必ずや起きているんだと思う。そこには何らかの、ほとんど宇宙的なと言ってもいいかもしれない“力”の働きがある。ルチアーノ・パヴァロッティ(三大テノールの一人だったオペラ歌手)のあの高音を聞くとき感じるのと同じ類の“力”が。

――シアターオーブで公演されるのは初めてですね。

 新しい劇場で設備も整っていて、すばらしいよね。ニューヨークやロンドンって古い劇場が多くて、楽屋もどこも狭かったりするから。「4 Stars」(2013)に出演したとき二ヵ月渋谷に住んでいたから、あちこち懐かしくて。

――日本の観客についてはいかがですか。

舞台芸術に対する情熱もすばらしいし、心温まるサポートをしてくれて、本当にありがたい存在だなと思っている。「レ・ミゼラブル」出演中も、日本からはるばる、それも週末だけとか、わざわざ飛んできて僕の舞台を観に来てくれて…。だから、今度は自分がお返しする番だ、自分が日本に飛んでいかなくちゃ、そうじゃなきゃフェアじゃないって思って今回もやって来たんだよ。

――唯一の日本人キャスト、柚希礼音さんについてはいかがですか。

 鍛錬されていて、日々エネルギーに満ちあふれていて、いつもにこにこしていて、毎日違う服を着ていて(笑)。「スーツケースいくつ持ってきたの?」って思わず聞いちゃったよ。言葉だと多少意思疎通が難しくても、音楽って国境を超えるところがあるじゃない? 舞台上で何か新しいことを試みると、彼女もちゃんとそれに反応してくれて、すばらしいなと思うよ。

――お話を聞いていても、何だか新しい雰囲気の作品ができあがってきていると感じます。

 そうそう、僕自身も最初、レビューみたいな感じになるのかなと思っていたんだよ。でも、ハロルド・プリンスとスーザン・ストローマンによって、単なるプリンス作品のコンサートではなく、何だかちょっと説明し難い、とてもユニークな作品が生まれつつあるなと感じていて。みんなそれぞれ自分自身、例えば僕ならばラミン・カリムルーとしてやってきて、さまざまな役柄を演じ、そして最後には自分自身として終わる。オーディションを受けてきて、役柄を得て、演じるみたいに。そんな作品なんだ。そうなると何だか、自分の人生、キャリアをもオーバーラップしてくるように感じるんだよね。僕だってそうやってキャリアを積んできたわけだから。情景をつなぎ合わせたんじゃなくて、一本、確かな線が通っている。少なくとも、僕自身はそう思って作品に取り組んでいるんだけれども、みんな作品を観てどう感じることになるのか、僕としても楽しみなんだ。ぜひ劇場に足を運んで、楽しんでもらえたらと願っているよ!

[取材・文=藤本真由(舞台評論家)]
[撮影=横山将勝]

公演概要

ワールドプレミア ミュージカル『プリンス・オブ・ブロードウェイ』

<公演日程・会場>
【東京】2015/10/23(金)〜11/22(日)東急シアターオーブ
【大阪】2015/11/28(土)〜12/10(木)梅田芸術劇場メインホール

<料金(全席指定・税込)>
SS席17,000円 S席14,000円 A席10,000円 B席7,000円
チケット一般発売日:2015/7/25(土)

★下記の日程にて<e+貸切公演>が決定しました!
■東京公演
10/31(土)12:30 11/5(木)18:30 11/11(水)13:30

■大阪公演
11/29(日)12:30 12/8(火)18:30

チケット詳細はこちら

※ご登録いただくと「プリンス・オブ・ブロードウェイ」の最新情報をメールでお届けします。
2015-10-22 17:29

 2009年の初舞台化以来、再現性の高さと世界観で人気を博しているミュージカル「黒執事」。昨年、シリーズ4作目として、原作でも人気の「赤執事篇」を舞台化し、連日満員を記録した『ミュージカル「黒執事」−地に燃えるリコリス−』が、今年11月・12月、新キャストを迎え、新たな演出と新たな楽曲も交えて上演される。

 なんといっても今回の話題は、大作ミュージカルでの活躍も目覚ましい古川雄大が主役の“悪魔で執事”のセバスチャンとして新参加すること。新たな座長を迎え、さらなる躍進を続ける本作。これから始まる稽古に先駆けて出演者の古川雄大・福崎那由他・広瀬友祐・佐々木喜英の4名が、再演への思いを語り合ってくれた。

客席で感じたあの思いを純粋に伝えていきたい。

――福崎さんは前回、ファントムハイヴ家の若き当主・シエルとして初舞台を踏みました。

福崎はい。初舞台なのですごく緊張したんですけど…それ以上にキャストのみなさんやお客様の存在に支えていただいた安心感で、全公演やり切れたんだなって思ってます。カンパニーのみなさんがオフの時間もすごく見守って可愛がってくださったので本当に楽しい日々でしたし、シエルを演じ切れたことで…少しですけど、役者としての自信もつけることができました。

――チャールズ・フィップス役の広瀬さんと、ドルイット子爵役の佐々木さんも前回に続いての登板ですね。

広瀬僕は前回からの参加で、公演に関して個人的な思い出はもちろんたくさんあるんですけど…やっぱり一番残っているのは大千秋楽での那由他の涙ですね。この年齢でこれだけの大役を任されて、その中では那由他にしかわからないプレッシャーや大変なこともたくさんあったと思うんです。でもあの純粋な涙を見て「コイツ、しっかりやり切ったんだな」って感じました。おそらく那由他の人生でも特別な時間になったその中で、共演者として一緒に側にいられたことは自分自身にとっても財産になりました。ホント、忘れかけていた気持ちを思い出させてくれた涙です。

古川当時12歳だっけ。確かにそれはすごいよ。

佐々木僕は2013年・2014年と出演させてもらってるんですが、去年はまた新しいソロの曲をいただき…それがその場を一気に持っていくような重要なナンバーだったので、毎回とても気持ちよくやらせてもらいました。

――そして今回、新たにセバスチャン・ミカエリスとして出演されることになったのが古川さん。今の心境はいかがですか?

古川僕はリコリスの前の「−The Most Beautiful DEATH in The World−千の魂と堕ちた死神」を劇場で観たんですけど、本当にお客さんとして純粋に舞台を愉しんだのを覚えています。目の前にこの『黒執事』の世界観がしっかり広がっていて、客席のみんながそこにグイグイ巻き込まれながら没頭できて。2.5次元ミュージカルとしての力や魅力をしっかり味わえた舞台という印象でしたね。そこに今回こうして座長として参加できるのは非常にありがたいですし、嬉しいことです。みなさんにお世話になりつつ、自分もこれからこの世界観をしっかり勉強していかないと。

福崎古川さんとはビジュアル撮影で初めてお会いしたんですけど、メイクと衣装がない普通の状態でもセバスチャンのオーラが出ていました。そこにさらにお芝居が乗ったらどんなセバスチャンになるんだろうって、わくわくします。

古川ありがとう。

佐々木僕の中の雄大くんは、見た目も細いし凄く中性的なイメージなんですよ。だから今回、雄大くんがどんなセバスを演じるのか楽しみ。きっと、僕らのまだ知らない新しい面を見せてくれるんだろうな。

広瀬確かに素の雄大くんは、見た目と中身のギャップが強い人だと思う。だって、男から見てもこんなに美しいのに、中身が…えーと、うーんと…

古川気持ち悪いんだよね(笑)。

福崎・佐々木(笑)。

広瀬うー、うん? まぁそこまでは言わないけど(笑)、すっごく柔らかいところと非常に個性的で男らしい面の両方がある感じ。僕らはもう雄大くんは雄大くんとして自分にしかできないセバスを信念もって出して来てくれるってわかってるし、全面的に信頼してます。なので、あとから入ったとかは気にせずに、好きなようにどんどんやってくれれば。もちろん、僕らもそこで一緒に進んでいきますしね。一緒に新たなリコリスを創っていきましょう!

古川セバスは本当に完璧な存在で…完璧主義な人物って凄く魅力的ですけど、舞台で生モノとしてそれを魅せていくのは凄く難しいことでもあって。でもホントにね、“自分がやるセバス”を追求するのが一番の課題ですね。

――ほかのみなさんは同じ役を再び演じる上で、自分の中で今回のトライと決めていることなどはありますか?

福崎前回はやっぱりシエルのことを考えるのでいっぱいいっぱいになってしまったので、今回はさらにシエルがセバスチャンのことをどう思っているのかとか、叔母であるマダム・レッドへの思いとか、愛情や気持ちの部分をもっとしっかり深めていきたいです。そうすることで歌もさらにシエルらしく歌えると思うので。

広瀬フィップスは相棒のチャールズ・グレイと共にWチャールズと呼ばれる存在ですが、あの白いコスチュームがより際立つよう、今回は体幹をガッツリ鍛えようかと思ってます(笑)。舞台って常に全身を見られているし、すべてにおいてごまかしが利きませんからね。『ミュージカル黒執事』の世界に生きる人物として、前回よりも細かなところにも注意を払いながら、より自然に、より特殊な存在としてのフィップスを印象づけていきたいです。

佐々木僕はやっぱり場の空気をグッと引き寄せるソロナンバーですね。あの曲ってバックダンサーさんは振付があるんですけど、センターの僕は歌っていることもあってそんなに激しく動けないし、そこは振りとか付けないから好きにやっていいと言われたので…前回の腰をクネクネしたり地面に這いつくばったりっていう動きは、全部自分で考えたんですよ。

古川そうだったんだ! ドルイットのテンションってすごいよね。

佐々木だからダンサーさんたちにも「どうやったら美しく気持ち悪い振りになりますか?」って相談してヒントをいただいたりもしつつ、毎日鏡の前で研究してました。

――ドルイットはダークファンタジーの世界の中で妖しく輝く、美と変態が共存したかなり濃いめのキャラですからね。

佐々木稽古で演出の毛利さんが僕を見て爆笑してくれるのがすごく嬉しかったです(笑)。一カ所、「もうだめ もう我慢できない」っていう歌詞のあとに4カウントくらい間があって、そこだけはなかなか埋められなかったんですけど、あるときなんとなく喘いでみたんですね。そうしたらその瞬間、音響さんがエコーかけてくれて! すごいですよね。もちろん、即採用になりました。

福崎その瞬間見てました! すごかったです。

古川・佐々木・広瀬(笑)。

――ちなみに福崎さんは『ミュージカル黒執事』でほかにやってみたいキャラクターってありますか?

福崎うーん…ドルイット子爵!

古川おっ。パチパチパチ!(拍手)。

広瀬まじで!?

福崎はい。ヒデさんの演じるドルイットってすごい気持ち悪くてカッコいいんですけど、やっぱり自分も一度はそういう変人的な役もやってみたいな〜って。憧れます。

佐々木うわ〜、見てみたいなぁ。じゃあ…10年後くらいとか?

福崎そうですね(笑)。

広瀬それ、なんかすごいな。

古川すごい。那由他は可愛いけどしっかりした面を持ってるのは僕もわかるからね、どんどんチャレンジしてみればいいんじゃない?

――ではそんな未来への期待も抱きつつ(笑)、まずは今回の公演で新たな「地に燃えるリコリス」に出会えるのを楽しみに待っています。

佐々木今回公演数が多いんですよね。なので僕ら役者は本番中のケアも改めてしっかりとやって。最後までドルイットのテンションの高さを保ちたいです。

広瀬どんな舞台も毎回、やってもやっても絶対「これで満足」ってことはないしね。まずは前回超えを目標に、このカンパニーにしかできないリコリスを目指しましょう。

福崎僕もこんなに長い公演は初めてだし、ちゃんと黒執事という作品を皆さんに届けられるようにしっかり気をつけながら頑張りたいです。

古川長い分、海外を含めいろんな地方のお客様に会える、僕らが作品を届けに行けるというのはすごく嬉しいですし、ありがたいですよね。今どきなかなかここまでのツアーを組める作品って多くないので…恵まれた環境に感謝します。作品としては僕が客席で感じたあの思いを純粋に伝えていきたい。そしてそこで座長として“居る”ことがもう大きな挑戦でもあるし…僕はセバスのように完璧なお世話をするのは無理ですが(笑)、サプライズとかプレゼントとか僕は誰かの喜ぶ顔を見るのがとても好きなので――みなさんへもそんな気持ちでこのミュージカル「黒執事」を届けにいきたいです。

[取材・文=横澤由香]
[撮影=平田貴章]

公演概要

ミュージカル「黒執事」−地に燃えるリコリス2015−

<公演日程・会場>
2015/11/7(土)〜11/10(火)  梅田芸術劇場 メインホール (大阪府)
2015/11/14(土)〜11/15(日)  名取市文化会館 大ホール (宮城県)
2015/11/21(土)〜11/29(日)  赤坂ACTシアター (東京都)
2015/12/4(金)〜12/6(日)  キャナルシティ劇場 (福岡県)
2015/12/11(金)〜12/13(日)  上海藝海劇院 (海外)
2015/12/18(金)〜12/20(日)  北京展覧館劇場 (海外)
2015/12/25(金)〜12/27(日)  深圳保利劇院 (海外)

<キャスト・スタッフ>
原作:枢やな(掲載 月刊「Gファンタジー」スクウェア・エニックス刊)
演出:毛利亘宏 
脚本:井関佳子 
出演:古川雄大 福崎那由他 
植原卓也 矢田悠祐 広瀬友祐 輝馬/佐々木喜英
鷲尾昇 河原田巧也 坂田しおり 木俊 寺山武志 和泉宗兵
荒木宏文/AKANE LIV ほか

2015-10-16 10:22

 9/5(土)〜6(日)に上演される、『7seconds〜決断の瞬間まであと7秒〜』。多彩なジャンルから集まったキャストによる朗読と懐かしい昭和の名曲から最近のJ-POPまで世代を超えて愛されてきた歌とを織り交ぜて綴る、新感覚ステージの第二弾だ。今回Theatrix!では、前回公演『あの日、星は重かった』に続いての出演となる声優・小野大輔の、パンフレット撮影に潜入! 現場の様子に加え、公演に向けて意欲を燃やす小野のコメント、また本公演の作・演出を務める藤井清美のインタビューをお届けする。

声優・小野大輔のパンフレット撮影に潜入!

 8月上旬、晴天が続く都内某所で行われたパンフレット撮影。現場ではキャストの入りを前に、カメラマンとスタッフらが話し合い、光の加減や立ち位置など細かな調整が入念に行われていた。準備が整ったところで、ヘアメイクを済ませた小野が現場へ。「おはようございます。よろしくお願いします」と丁寧に頭を下げて、スタッフ陣にあいさつ。スタッズのついたシャツと少しゆるめたネクタイというクールなスタイリングに、大人の男の落ち着きが漂う。小野はことさらに気負う様子もなく、穏やかなムードを漂わせながらスッと立ち位置に入り、撮影が始まった。カットごとにポーズや表情を変えて異なる絵を作り、カメラマンのリクエストに「わかりました」と柔軟かつ的確に応えられるのも、豊富な経験によるものだろう。撮影のスムーズさを象徴するように、カメラマンのシャッターを切る音が小気味よく響く。小道具を使ったショットでは、「こんなモノがあるんですね!」と少年のように無邪気な表情をのぞかせ、スタッフと盛り上がるなど、彼の飾らないスタンスが現場を終始和やかにリードしていた。

 撮影を終えてひと息ついた小野に、一年前の公演を振り返ってもらった。

「朗読と歌の融合という斬新な試みで、どんな化学変化が起きるのか、まったく未知の領域でしたが、演じてみて『朗読も歌も、根底にあるのは言葉の力なんだ』と強く感じました。藤井さんの脚本は普遍的なものを描きつつ、セリフを発することと歌うことがなめらかに繋がっていて、演じていてとても心地よかったです。セリフのよさと歌のよさがリンクして、両者がさらに深い意味を持つという点に、大きな感銘を受けました」

 今回の『7seconds〜決断の瞬間まであと7秒〜』で小野が演じるのは、自分の想いをなかなか口にしない、寡黙なキャラクター。「セリフを読む」ことがベースの朗読劇において、今回はどんな表現で臨もうと考えているのか、今のイメージを聞いた。

「声優という仕事では、声だけで物語を紡いでいくので、間の取り方というのも非常に重要になってくるんです。表情や身体表現で見せていくことができない以上、この作品では僕らのひとつの武器でもある、その“間の取り方”が、いつもよりさらに大事になってくるのかなという気がしますね。また、キャストに歌やお芝居、お笑いなど、さまざまなジャンルのプロフェッショナルが集まっています。みなさん、ご自身の道で確立してきたこだわりがあると思うので、それぞれの間や声の圧、セリフの発し方の違いなどを楽しみたいと思います。自分のジャンルで育ててきたものを惜しみなく注ぎ込めば、『こんな表現があるんだ!』とお互いに影響し合えるはず。僕はどちらかというとそれをもらえるのを楽しみにしていて、逆に自分はどんなものを共演する皆さんにお渡しできるのかと、いい意味でドキドキしています(笑)」

 声優としてのキャリアを築いてきた小野にとって、この舞台は新たな世界へのチャレンジ。とてもいい刺激にもなっている、と充実した表情で語った。

「声優の仕事が長くなってきた分、『ルーティンワークになっていないだろうか』と不安にさいなまれることがあるんです。同じことを同じようにやっていないか、という自問。生のお芝居を作るときに一番あってはならない流れに、気づかず陥っているのではないか、と。でも前回公演で、まったくの初心にかえってイチから新しいモノを作る現場に携わり、ああでもないこうでもないと試行錯誤しながらみんなで作品を作るのは、しんどいけれどなんて楽しいんだろうと日々思いました。今回もきっと、全然ラクじゃないと思います(笑)でも声優の仕事ではできない経験ができると思うと、自分に得になることしかないので、とても前向きな気持ちで、今から稽古を楽しみにしています」

作・演出/藤井清美インタビュー

――新作『7seconds〜決断の瞬間まであと7秒〜』を書くにあたり、意識したことは?

この企画を始めたときのひとつの目標が「声の表現」。言葉だけでイメージを広げることに、どこまで挑戦できるかでした。なので、前回公演ではキャストさん全員に、ものすごい勢いでいろんな役を演じ分けてもらったんです。普通の舞台のように衣裳を着替えていたら、絶対あのテンポで二役以上なんて演じられない(笑)。朗読だからこそできる表現、面白さを追究したいと考えていました。そのスタンスは、前作から変わりません。また、前回足を運んでくださったお客様の層が『舞台を初めて見ました!』という10代の方から、多くの舞台をご覧になっている方まで私の想像以上に幅広く、『いろんな世代の方に響く企画なんだ』という手応えを得られました。ですから今回も、様々なお客様に受け入れていただける題材を、と思って書いています。

――声優の小野さんが、自分の想いをあまり語らないキャラクターというキャスティングが、興味深かったです。

小野さんはずっと声で勝負してきた方ですから、声の表現の幅が非常にあります。そういう小野さんだからこそ、短い言葉で、声のちょっとしたトーンや揺れで感情が見えてくるような役をやってほしいなと思っていました。“間を取る”ことが、またひとつのメッセージになっていくという面白さがあるので、あとは小野さんの腕にかかっていますね(笑)。あ、小野さんには5役やって頂くので、多弁なキャラクターもあります。ファンの皆様、今回は小野さんの声があんまり聴けないかもとご心配なく。

――藤井さんが演出をされる際、意識することは?

出演者の皆さんの意志やイメージを聞いて、まずはそれでやってみるようにしています。芝居の稽古というのは、一回決めたことが途中で変わったりするもの。みんなが持ち寄ったものをあれこれやってみて、どんどん変えられるのは、稽古を重ねられる芝居ならではの強みだと思います。「このチームじゃなかったら、こうはならなかったよね」というような、この5人とやって初めてできあがるものにしたいと思っています。

――新しい試みも、いろいろお考えのようですね。

生のパーカッションが入るので、朗読に、効果音のように生の音を加えたいなと思っています。耳から入った言葉や音からイメージがどんどん広がっていき、「自分の耳って、こんなに可能性を持っているんだ」と感じてもらえるような仕掛けができたら。大仰なテーマではなく、普通の日常に起こりそうなことを描いていますが、力を備えた俳優さんたちに演じていただくことで、観客の皆さんの身にもかつて起きた出来事がふわっと蘇ってきたりと、自分の人生を再発見するような体験につながればいいなぁと思っています。知っているつもりだったものをもう一回発見するって、なんだか嬉しいじゃないですか。みなさんにとってこの作品がそういうきっかけになれば、最高に嬉しいです。

[取材・文=木下千寿]
[撮影=平田貴章]

キャストコメント動画はこちら!


公演概要

『7seconds 〜決断の瞬間まであと7秒〜』

<公演日程・会場>
2015/9/5(土)〜9/6(日)  天王洲 銀河劇場 (東京都)

<キャスト・スタッフ>
【作・演出】藤井清美
【出演】小野大輔 藤岡正明 肘井美佳 金成公信 / 樹里咲穂

■抜粋予定曲
「空と君のあいだに」作詞:中島みゆき
「ちっぽけな勇気」作詞:FUNKY MONKEY BABYS
「守ってあげたい」作詞:松任谷由実
「贈る言葉」作詞:武田鉄矢
「男」作詞:久宝留理子
2015-08-20 15:58

戦争の暗い時代、中国人スターとして生きた美貌の少女は、日本人だった――。実話を基に、昭和史を語るミュージカルとして、1991年の初演以来何度も再演されてきた「ミュージカル李香蘭」が、終戦70周年の今年、新たな風を吹き込まれて上演される。企画・構成・演出を担当するのは浅利慶太、そして初演以来800回以上タイトルロールを演じてきた野村玲子が今またこの役に挑む。その心境を訊いた。

戦争の時代を生きた方々がいて、今、私たちがいる。作品を通じ、そうやって世代と世代をつなげていけたらいいなと思っています。

――2013年以来2年ぶりにこの役柄に挑まれます。

 初演以来ほぼ毎年、間が空いても3年くらいといった感じで、コンスタントに上演され続けてきた作品ですが、今年は終戦から70年経ち、李香蘭さんこと山口淑子さんが亡くなられて1年、公演中の9月7日には一周忌を迎えるので、ひときわ思いがこもった公演になると思います。
山口先生には歌の指導をしていただきましたが、自分の歌には中国の胡弓という楽器の音色のようにポルタメントがかかるところがあるから、そういう風にとらえて歌うといいかしらとおっしゃられたことがあって。「夜来香」にしても、日本の方が歌っていらっしゃるのとは違う、独特の雰囲気がありますよね。李香蘭さんのナンバーはレンジが広く、また三木たかし先生作曲のナンバーは劇的な表現があって、どちらの歌も難しいですね。
山口先生は本当にお美しくて、非常に知的で、それでいてお茶目でかわいらしい方でした。26歳までの李香蘭としての人生は、作品に描かれているように、ドラマティックで悲しくて、それが先生の人生において大きな部分を占めていらしたと思うんですけれども、お話しているととても明るくて、人を和ませて下さるんです。本当にすばらしい、すてきな方でした。“李香蘭”として生きた後も、ブロードウェイにデビューされたり、ジャーナリストとして活躍されたり。私の最初のイメージも、母が見ていた「3時のあなた」で中東のレポートをされていた姿でした。ですから、“李香蘭”さんと“山口淑子”さんと後に参議院議員になられた“大鷹淑子”さんとがバラバラで、なかなか一つに結びつかなかったというか。普通の方が一生で経験しないような人生を、三回も生きられたようなところがありますよね。
 李香蘭の半生を描くと同時に、戦争の時代、歴史を中立に描いている作品ですので、初演のときも、歴史をきちんと理解するという作業がまずはありました。今回共演する役者たちも若い世代ですので、なおさらその理解の作業が必要で、今みんな一生懸命勉強しているところです。初演のころは、実際に戦争を体験している方々も多く客席にいらっしゃいましたが、今は戦争のことは何も知らない世代も多いわけで、そうなってくると、どれだけ実感をもって作品を生きられるかが大切になってくると思います。
山口先生も、本当にピュアに平和を願っていたのが、恐ろしい悲劇に巻き込まれ、死刑判決間近まで行くなど悲しい思いをされたことと思うんです。戦争の時代を生きた方々がいて、今、私たちがいる。作品を通じ、そうやって世代と世代をつなげていけたらいいなと思っています。

――それにしても、本当に起きたことが信じられないような重い物語です。

 私たちが演じることで、実際に悲しみや苦しみを経験された方々の魂が癒されればと思いますね。描かれているのは事実なので、そこに私たちが無理に味つけしようとせず、描かれていることを淡々と生きる、それに尽きますよね。演出家がよく言うのは、この作品は昭和を描いたタペストリーなんだと。満州や軍部や、さまざまな糸で織り成されている中に、一本の美しい赤い糸が貫通している、それが李香蘭の人生なんだと。そのイメージを大切に演じています。
私、以前は役を引きずるタイプだったんです。でも最近になってようやく、それでは身が持たないなと。演出家は前々から、役の前で役者は透明体になるべきだと言っていて。自分の中にいろいろなものを引っ張り込んで演じるのも一つの役の表現ですが、それだけではないと。大先輩の日下武史さんにもそう教えていただきました。どう演じようかとか、自分を出そうとか、そういうことではない。まず作品があり、言葉があるわけで、その言葉を自分の中に通すこと、それだけで十分描かれるものがある。透明になって、結果、作品の中に消えていく。それが自分の理想なんだよなあって、日下さんはおっしゃっていました。
日下さんと共演させていただいたとき、あのニュートラルな境地はどうやってつかめるんだろうといつも稽古場で思っていて。描かれているものはきちんと表現されているのに、クールで、役との距離感があるんですよね。自分の役柄との密着感との違いは何なのだろうと。最近、ようやくわかってきた気もするんですが…。作家が描きたかった作品が自然と浮かび上がる、そんな状態が目標ですね。

[取材・文=藤本真由(舞台評論家)]



野村 玲子(のむら りょうこ)
Ryoko Nomura

8月21日生まれ
北海道旭川市出身





深川生まれ、旭川育ち。旭川商業高校卒。市内の金融機関に1年勤務した後の81年に劇団四季付属研究所入所。翌年、ミュージカル『エビータ』で初舞台。
ストレートプレイからミュージカルまで、数多くの作品で主役、ヒロインを務めた。
昨年末に同劇団を退団。退団後は浅利慶太プロデュース公演第1弾『オンディーヌ』でタイトルロールを、そして8月31日より自由劇場(東京・浜松町)にて『ミュージカル李香蘭』李香蘭役で出演予定。

<主な出演作品>
1982年
『エビータ』(ミストレス)
『雪ん子』(ゆき)
1983年
『ウェストサイド物語』(マリア)
『フェードル』(王女アリシー)
『キャッツ』(シラバブ)
1984年
『キャッツ』(シラバブ)
『赤毛のアン』(アン)
『ジーザス・クライスト=スーパースター』(マグダラのマリア)
『ユタ』(小夜子)
1985年
『コーラスライン』(ディアナ)
『ドリーミング』(ミチル)
1986年
『ウェストサイド物語』(マリア)
1987年
『アンチゴーヌ』(アンチゴーヌ)
『ウェストサイド物語』(マリア)
『ジーザス・クライスト=スーパースター』(マグダラのマリア)
『エビータ』(エビータ)
1988年
『35ステップス』
『エビータ』(エビータ)
『オペラ座の怪人』(クリスティーヌ)
1989年
『オペラ座の怪人』(クリスティーヌ)
『ユタと不思議な仲間たち』(小夜子)
1990年
『ユタと不思議な仲間たち』(小夜子)
『コーラスライン』(マギー)
1991年
『ミュージカル李香蘭』(李香蘭)
『ウェストサイド物語』(マリア)
1992年
『ミュージカル李香蘭』(李香蘭)
1993年
『ひばり』(ジャンヌ)
『歌は友だち』(コバト)
『ハムレット』(オフィーリア)
『ユタと不思議な仲間たち』(小夜子)
『ミュージカル李香蘭』(李香蘭)
1994年
『夢から醒めた夢』(マコ)
『ユタと不思議な仲間たち』(小夜子)
『ジーザス・クライスト=スーパースター』(マグダラのマリア)
『ミュージカル李香蘭』(李香蘭)
『ハムレット』(オフィーリア)
1995年
『赤毛のアン』(アン)
『ミュージカル李香蘭』(李香蘭)
『ハムレット』(オフィーリア)
『美女と野獣』(ベル)
1996年
『美女と野獣』(ベル)
『ユタと不思議な仲間たち』(小夜子)
『ミュージカル李香蘭』(李香蘭)
『エビータ』(エビータ)
1997年
『エビータ』(エビータ)
『ミュージカル李香蘭』(李香蘭)
『ユタと不思議な仲間たち』(小夜子)
1998年
『美女と野獣』(ベル)
『ソング&バレエ』
長野冬季オリンピック文化芸術祭参加作品
『エビータ』(エビータ)
『ミュージカル李香蘭』(李香蘭)
『ユリディス』(ユリディス)
1999年
創立45周年記念『劇団四季ソング&ダンス』(シンガー/語り)
2000年
『ラ・ソヴァージュ』(テレーズ)
『ミュージカル李香蘭』(李香蘭)
2001年
『ハムレット』(オフィーリア)
『ユリディス』(ユリディス)
2002年
『アンドロマック』(アンドロマック)
『赤毛のアン』(アン)
2003年
『赤毛のアン』(アン)
『ハムレット』(オフィーリア)
『ミュージカル李香蘭』(李香蘭)
『オンディーヌ』(オンディーヌ)
2004年
『アンドロマック』(アンドロマック)
『ハムレット』(オフィーリア)
『ひばり』(ジャンヌ)
『オンディーヌ』(オンディーヌ)
2005年
『アンチゴーヌ』(アンチゴーヌ)
『オンディーヌ』(オンディーヌ)
『ミュージカル李香蘭』(李香蘭)
2006年
『鹿鳴館』(影山朝子)
2007年
『オンディーヌ』(オンディーヌ)
『鹿鳴館』(影山朝子)
『ハムレット』(オフィーリア)
2008年
『ハムレット』(オフィーリア)
『ミュージカル李香蘭』(李香蘭)
『思い出を売る男』(街の女)
『トロイ戦争は起こらないだろう』(エレーヌ)
2009年
『アルデールまたは聖女』(伯爵夫人(将軍の妹))
『トロイ戦争は起こらないだろう』(エレーヌ)
『ミュージカル李香蘭』(李香蘭)
『鹿鳴館』(影山朝子)
2010年
『エビータ』(エビータ)
『ハムレット』(オフィーリア)
2011年
『エビータ』(エビータ)
『オンディーヌ』(オンディーヌ)
『ヴェニスの商人』(ポーシャ)
『思い出を売る男』(街の女)
2012年
『エビータ』(エビータ)
『ひばり』(ジャンヌ)
『ジーザス・クライスト=スーパースター』(マグダラのマリア)
2013年
『この生命誰のもの』(北原真弓)
『ハムレット』(オフィーリア)
『鹿鳴館』(影山朝子)
『ミュージカル李香蘭』(李香蘭)
『ジーザス・クライスト=スーパースター』(マグダラのマリア)
2014年
『思い出を売る男』(街の女)
『ジーザス・クライスト=スーパースター』(マグダラのマリア)

以上劇団四季

2015年
『オンディーヌ』(オンディーヌ)

公演概要

ミュージカル「李香蘭」

<公演日程・会場>
2015/8/31(月)〜15/9/12(土)  自由劇場(浜松町) (東京都)

2015-08-05 13:00

(C)尾田栄一郎/集英社

 大ヒット人気漫画『ワンピース』(尾田栄一郎作)が「スーパー歌舞伎U(セカンド)」として、10〜11月に新橋演舞場で上演される。記者会見には主人公のルフィを含め3役を演じ演出も手がける市川猿之助と脚本・演出の横内謙介が出席。歌舞伎版ではいったいどんな舞台になるのか? 会見で語られた内容をお届けする。

猿之助「(ワンピースは)非常に歌舞伎に適しています。」

 単行本の累計発行部数3億2000万部を突破し「最も多く発行された単一作者によるコミックシリーズ」のギネス記録を持ち、海外でも多くのファンを持つ人気漫画『ワンピース』は、海賊王を夢見るルフィとその仲間たちが「ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)」を目指して旅をする海洋冒険ロマン。現在までに単行本にして78巻もある長大な物語だ。

 その歌舞伎化について市川猿之助は次のように語った。
 「大長編の冒険活劇は伝統的な物語の形式であり、非常に歌舞伎に適しています。ですが、原作のある作品を舞台化するのは非常に難しい。そしてそのどこをやるか……。歌舞伎では長い物語の一部をクローズアップして上演するということを昔からやってきました。そういう意味においても『ワンピース』を上演するのに、歌舞伎はふさわしい演劇形態だと思います。『ワンピース』を知らない人にも楽しんでいただける舞台にしたい」。

 そしてクローズアップされた物語は、ルフィを含む“麦わらの一味”9人が揃った後の展開となる「頂上戦争」の部分。その理由については横内謙介が語った。
 「“麦わらの一味”勢揃というのは非常に歌舞伎っぽいですし、まずこれは絶対あった方がいい。そして初めて見る人にもわかりやすい話であること。と考えていき、仲間たちが揃い、海賊と海軍との大きな闘いに向かっていくこの部分になりました。また、“弁慶の立ち往生”にも通じる非常に歌舞伎っぽい場面もありますし」。

 猿之助は主人公のルフィだけなく、物語に大きく影響をする女帝のハンコック、ルフィの恩人であり赤髪海賊団船長のシャンクスの3役を演じる。ルフィとハンコックでは早替わりも見どころとなり、「早替わりができて、女方もやる(猿之助の)個性を生かす」形となった。

  猿之助に限らず主要キャストの多くの歌舞伎俳優がいくつかの役を演じており、まったく個性の異なる役柄を演じわけるのも歌舞伎らしいところだ。  ルフィはゴムゴムの実を食べたために手足が伸びるゴム人間だが、その表現について猿之助は「歌舞伎的になるのか、現代的手法になるのか、演劇的に見せられる方法をこれから考えたい」とコメント。
 三代目猿之助(現猿翁)が創出した「スーパー歌舞伎」の精神を受け継ぎ、新たな舞台空間の創造を目指す「スーパー歌舞伎U」。その第2作として上演される『ワンピース』は、客席上空を斜めに飛ぶ宙乗りや本水を使った演出などが見られる「ありとあらゆるスペクタクルを取り入れた美しい舞台」(猿之助)となる模様だ。

[取材・文=清水まり]
[撮影=平田貴章]

市川猿之助の扮装写真、尾田栄一郎のイラスト到着!

 市川猿之助が扮する主人公ルフィの写真と尾田栄一郎による描き下ろしイラストが到着!歌舞伎と少年漫画の衝撃のコラボレーションをお楽しみに!

(C)松竹株式会社

(C)尾田栄一郎/集英社

(C)尾田栄一郎/集英社

原作者 尾田栄一郎 コメント

 演劇と歌舞伎の境界線はどこにあるのかと尋ねると「全ての所作が美しいのが歌舞伎です」と猿之助さんは言われました。

 僕はONE PIECEを美しく描いた事はありません。

 つまりこれは、海賊と美しさのコラボレーション。

 歌舞伎というフィルターを通すと、海賊達がどんな美しさを放つのか制作の片鱗を見せていただくに、すごいものになるという予感しかいたしません。

 言わずもがな、市川猿之助さんという才能に超ご期待ください!!

公演概要

スーパー歌舞伎II(セカンド)ワンピース

<大阪松竹座3月公演 日程・会場>
2016/3/1(火)〜3/25(金)  大阪松竹座(大阪府)
※昼の部/夜の部 同一演目にて上演します。

<演目>
「ワンピース」
原作:尾田栄一郎
脚本・演出:横内謙介
演出:市川猿之助

<主な配役>
市川猿之助・・・ルフィ、ハンコック、シャンクス
市川右近 ・・・白ひげ
坂東巳之助・・・ゾロ、ボン・クレー、スクアード
中村隼人 ・・・サンジ、イナズマ
尾上右近 ・・・マルコ
市川春猿 ・・・ナミ、サンダーソニア
市川弘太郎・・・戦桃丸、はっちゃん
市川寿猿 ・・・アバロ・ピサロ
坂東竹三郎・・・ベラドンナ
市川笑三郎・・・ニョン婆
市川猿弥 ・・・ジンベエ、黒ひげ
市川笑也 ・・・ニコ・ロビン、マリーゴールド
市川男女蔵・・・マゼラン
市川門之助・・・つる

平岳大 ・・・エース
嘉島典俊・・・赤犬サカズキ、ブルック
浅野和之・・・センゴク、イワンコフ

<東京公演 日程・会場>
2015/10/7(水)〜11/25(水) 新橋演舞場 (東京都)

<スタッフ・キャスト>
原作:尾田栄一郎
脚本・演出:横内謙介
演出:市川猿之助

<主な配役>
市川猿之助・・・ルフィ、ハンコック、シャンクス
市川右近 ・・・白ひげ
坂東巳之助・・・ゾロ、ボン・クレー、スクアード
中村隼人 ・・・サンジ、イナズマ
市川春猿 ・・・ナミ、サンダー・ソニア
市川弘太郎・・・はっちゃん、戦桃丸
市川寿猿 ・・・アバロ・ピサロ
市川笑三郎・・・ニョン婆
市川猿弥 ・・・ジンベエ、黒ひげ(ティーチ)
市川笑也 ・・・ニコ・ロビン、マリーゴールド
市川男女蔵・・・マゼラン
市川門之助・・・つる

福士誠治・・・エース
嘉島典俊・・・ブルック、赤犬サカズキ
浅野和之・・・レイリー、イワンコフ、センゴク

2015-07-30 14:15

 近年は劇団公演のみならず、テレビやラジオなどのさまざまなンテンツ制作においても、ほかにはないモノを発信して注目を集めているヨーロッパ企画。最新作となる第34回公演では、作・演出の上田誠がいつかはと温めてきた「文房具コメディ」がついに実現する。9月中旬から、粟東でのプレビュー公演を経て、京都、名古屋、東京、大阪、高知、広島、福岡、横浜と全国9都市を回る『遊星ブンボーグの接近』。上田と、劇団員の石田剛太を迎え、少しずつ始まっている公演に向けての準備とその感触を聞いた。

上田「その失笑から感動に変わっていくっていうのが大事」

―――チラシのメッセージに、「時は満ちたという気分」と書かれていましたね。

上田これまで公演のアフタートークで、「今度は文房具コメディをやります」ということを言っていたんですが、言うわりにはやらない、みたいな状況がずっと続いていて、今回ようやくやるというので、それくらいの意味です(笑)。ヨーロッパ企画の公演では、ここのところ“企画性コメディ”、劇性ではなく企画性ありきで劇を作るという方法を採っていました。劇団に力がついてきたのもあり、『企画性から始めても、作っているうちにどこかで劇性に至れる』というのが経験上わかってきたし、だったらなるべく変わった企画性から作れば、珍しい劇ができるんじゃないかということで、「じゃあ、文房具だな」と。
文房具ってミクロの世界で、僕も子どものころから大好きで興味があるけれど、これまでは方法がなかったから舞台でやることができませんでした。でも見せ方のシステムを思いつけば、文房具で劇が作れると思えた。今回、文房具という題材で芝居がやれれば、劇団としてひとつ次のステップにいけるんじゃないかと考えています。

石田役者としては、セリフのやりとりじゃなく、見せ方とかシステムでひとつ笑いが起こるというのが、すごく助かるんですよ。
たとえば『ロベルトの操縦』(11年)だったら移動のシーンで背景が動いて、「なんだよコレ(笑)」みたいな笑いが起こる。
前回の『ビルのゲーツ』(14年)でも、フロアを上がっていくのを、奥に入っていって下手から出てくるという流れで見せて、フロアの数字を変えるだけ。それで、軽い笑いが起きる。

上田最初はね、失笑ですよ(笑)。

石田まぁ失笑が起こるんですけど(笑)、でもなんか面白いんですよね。

上田その失笑から感動に変わっていくっていうのが大事で。
最初は「ウソつけ(笑)」ってなるんですけど、さらに先へ進むと、何かしら人の感情を動かせるんですよね。

――石田さんは、「文房具コメディ」にどんな期待をしていますか?

石田ウチのお客さんって女性が多いんですけど、女子って文房具好きですよね。で、皆さん、愛着のある文具に対して、アツく語られるんですよ。その話を聞くとやっぱり面白いし、そういうこだわりっていろんな人の共感を得られるんです。

上田文房具って、外宇宙と内宇宙の間ぐらい、“手元宇宙”あたりの話だと思うんですけど、そこらへんのことって、これまで演劇のフィールドでそんなにやられてはこなかった。僕らはそういう劇にならなさそうなモノを取り上げて、劇を作るということをずっとやってきていて。志を同じくする方ってあまりいなくて、(シベリア少女鉄道の)土屋さんと会うたび励ましあってるんですけど(笑)、でもそこにはかなりの宝が埋まっていると僕は思う。多くの人がこだわりや共感を持てるものなんだから、劇にする方法さえ見つければできるだろうと。今回もある仕掛けによってそれを実現できると思っていて、それはちょっとまだ内緒なので劇場でまた失笑してもらえたらと思うんですけど、なんにせよ今回は、いくつかの方法を組み合わせて、ミクロな世界とマクロな空間を繋げるというのが、今回、劇団が取り組みたい新しい領域です。

―――稽古では上田さんの出すテーマをもとに、劇団員の皆さんがアイデアを持ち寄るそうですが、どんな感じで進むのでしょう?

石田この間集まったときは、筆箱をみんなで持ち寄って、「その使ってるペンはなに?」とか、「好きな文房具は?」とか、そういうことから始めましたね。あと、「小学校のころ、ペン回しって流行ったよね」とか、「消しゴム落としもみんなやってたよね」とか、まったく違う方向性の話も出てきたので、ちょっと迷った感じで終わったんですけど(笑)

上田でも、そんなふうにみんなと話しているうちに出ることって、大事なんですよ。作家の作業って、一人で書いているのでどうしても重々しくなっちゃいがちだし、人と喋ってみて「あ、そうか」って気づきになることが結構あるので、一旦言葉にするというのは、すごく意味があると思っています。

石田だからアイデア出しっていうより、雑談している感じですね。そのなかで話が弾んだモノがネタになることが多いです

上田集まったものを元に机の上で作業していくのと、稽古場でやってみて調整して、っていうのと、両方の間ぐらいで作っていくのが面白くなる気がします。頭で考えて成り立っていても、稽古場でやってみたらあまり面白くなかった、ということはよくある。書き手の僕がいくら思っていても、役者に共感がなかったら演じられないですから。

石田そこらへん、気を遣ってくれています(笑)役者自身から滲み出てくるものそのままにやった方が、アイデアも出るし面白くもできるんでしょうね。だから稽古でやるエチュードも、「自分だったらこうする」という感覚でやることが多いです。たとえば、僕自身は迷路が得意じゃないのに、迷路が得意なキャラをやっても、セリフは言えるけれど、どこかでバレちゃうというか。自分の生理に合うようにしたほうが、芝居が面白くなるということなのかもしれません。

上田魂に関わることだからね。僕は“火の鳥システム”って言ってるんですけど、『火の鳥』の作中でいつの時代でも火の鳥を追っているように、いつの時代でも永野は土下座していたり、それぞれ業を背負っていて、輪廻しているっていう(笑)。それで言うと石田君の業は、一秒で違う感情になれること。本当に不思議で、「そんなのやってもしょうがないでしょ」って言ったその一秒後には、「で、どうしよっか?」って、もうやる感情になっているよね。

石田ありますねぇ〜。

上田今も僕が喋ってる、その雰囲気に合わせて喋ってるんですよ、たぶん。

石田いやいや、そんなことないよ(笑)

上田場の雰囲気にすっと染まるんだよね。どっちの側にも回れるし、にぎやかに埋めてくれるんです。同意するのが上手なのかな。もちろん頑固な部分も持ってるけど、でもそんなに多くないもんね。

石田こだわりは少ない方かも。だからやる役は、ノッてなかったのに急にノリ始めたり、急にガラッと変わるというキャラが多いかもしれないです。

上田あと、すごい喋ってくれるんで、セリフはだいたい一番喋ってます。でもアンケートとかで、「この人がよかった」という印象には残りづらい(笑)。高倉健さんみたいに、ポッと出てきて発するひとことが重い、の真逆、みたいな。

石田ストーリーを背負ってないっていうことなんでしょうね(笑)

――石田さんが、上田さんの演出で楽しさを感じる瞬間は?

石田稽古場で役者にダメ出しをするときの、言葉の感じが面白かったりしますね。ダメ出しで笑っちゃう、みたいなときがあります。

上田ダメ出しするなら、その役者さんにちゃんとハマる言葉、ウケる言葉を選ぶようにはしています。ウケるって、前提条件がすごく大事で、その空間で起こっていることがその場所にいる人たちに完全に理解できてないと起こらないことだと思うんです。だからダメ出しされて「うーん」と悩まれるよりは、どっとその場がウケるとかのほうがいい伝わり方なんじゃないかって。たとえば役者さん二人のやりとりのシーンで、お互いどうも探り探りになってしまってシーンがしっくりきてないというときに、「そこにはこういう原因があるんじゃないですか」って真面目に話を詰めることもできるんですけど、「あそこ、サグラダファミリアみたいになってますよ」って言う。そうするとなんとなく場が和むし、結果ホントにサグラダファミリアみたいになっちゃったとしても、それはそれでいい(笑)。

石田上田がそんなふうに役者をイジってくる瞬間が、僕は楽しいですね。

――上田さんが感じる、ヨーロッパ企画で作品を作る良さとは?

上田「ここあんまりうまく書けへんかったから、ちょっと頑張ってください」とか、そういうことって劇団でないとなかなか言えないじゃないですか。
でも、言えた方が絶対にいいんですよ。メンバーに委ねている部分は、わりと多いと思います。

石田うん。昔は演出も細かかったですけど、今はその細かさが、脚本を書く段階で発揮されていて、稽古場では「こんだけしっかりしたものを作ったから、好きにしちゃっていいよ」って任せてくれていますね。

上田作演出が全部をビシッとコントロールするって、作品の意図をちゃんとお客さんに伝えるために講じられた劇ならそれでいいと思うんですけど、ウチの芝居は、現場のグルーヴでお客さんと作るというのも大事なので、そうなると、僕があまり持ちすぎない方がいいんじゃないかと。

――お互いにとって、お互いがいないと成立しない作劇なんですね。

上田そう。だから映像の現場とかで僕一人で呼んでいただくと、メンバーがいなくて困りますし、役者たちも僕やほかのメンバーがいなかったりすると、劇団でのやり方が使えないので困る。なので、最近は劇団というかたまりで仕事をすることに力を入れています。

石田そうなんですよ。ヨーロッパ企画で培ってきたものって、他の現場ではあんまり役に立たないんです(笑)

上田ホントに、ちっとも役に立たないよね(笑)

――さて今回、舞台に文房具は何種類くらい出てきそうですか?

上田普通はシャーペンとか消しゴムとかの筆記具が出てくると思うんですけど、当然はさみ、のり、ホッチキスあたりは行きたいですし、その先のクリップとかふせんとか、鉛筆削りとかもありますよね。でもあまり広げすぎると一個を掘り下げられないので……。普通は役者が出てきたら「よっ、待ってました」ってなりますけど、今回は文房具が出てくる都度、わーって盛り上がるというふうになればいいなぁと思っています。

――最後に、お二人が文房具の中で一番こだわりがあるモノは?

石田僕、PILOTの「HI-TEC-C」のボールペン。高校生のときにめちゃくちゃ流行ったんですよ。細くて滑らかで、書きやすいんです!! これがとにかく大好きで、色もいっぱい持ってます。台本にダメ出し書くのもコレですね。

上田僕は、ホワイトボード。使うとき店は選ぶんですけど、京都でよく行く近所の喫茶店での打ち合わせには、必ず持って行きますね。ノートに書いていると“個人の情報”という感じだけど、ホワイトボードだと一緒に見ながら話ができるんですよ。で、いいアイデアだったら写メで撮っておく。コレがいいのはね、摩擦が少ないところ。万年筆とかシャーペンで紙に書くのって疲れるし、緊張もするんだけど、ホワイトボードはサラサラ書けるのが楽しいし、何回でも書けるし消せるから。ちょっと変態的なんですけどね(笑)

[取材・文=木下千寿]
[撮影=渡辺マコト]

公演概要

ヨーロッパ企画 第34回公演「遊星ブンボーグの接近」

<公演日程・会場>
2015/9/5(土) 栗東芸術文化会館さきら中ホール (滋賀県)
2015/9/10(木)〜9/13(日) 京都府立文化芸術会館 (京都府)
2015/9/16(水) 名古屋市芸術創造センター (愛知県)
2015/9/25(金)〜10/4(日) 本多劇場 (東京都)
2015/10/10(土)〜10/15(木) グランフロント大阪 北館4F ナレッジシアター (大阪府)
2015/10/29(木) JMSアステールプラザ 中ホール (広島県)
2015/10/31(土)〜11/1(日) 西鉄ホール (福岡県)
2015/11/5(木)〜11/8(日) KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ (神奈川県)

<キャスト・スタッフ>
作・演出:上田誠
音楽:HARCO
出演:石田剛太 酒井善史 角田貴志 諏訪雅 土佐和成 中川晴樹 永野宗典 西村直子 本多力 岡嶋秀昭 中西ちさと 吉川莉早 川岡大次郎

2015-07-27 18:36

 1970年。松本幸四郎(当時・市川染五郎)は、「ラ・マンチャの男」で日本人として初めてブロードウェイに招かれ、ミュージカルの舞台で単独主演を務めた。1965年の世界初演から5年後のことだった。世界初演50周年という記念すべき今年、幸四郎の「ラ・マンチャの男」が帝国劇場に帰ってくる。その製作発表記者会見が、3000名の応募者から抽選で選ばれた150名のオーディエンスを迎え、開催された。

イープラス貸切公演 10/18(日) 13:00開演

初演から46年、松本幸四郎のいまだ尽きせぬ思い

 「73歳、同級生がゴルフやゲートボールをしている年齢で、幸四郎は夏から秋にかけ『ラ・マンチャの男』を演じます」と挨拶した、セルバンテス/アロンソ・キハーナ/ドン・キホーテ役の幸四郎。1969年の日本初演時は26歳、初めてこの作品に挑戦してから46年の月日が流れたが、長年この舞台を務め続けてきた原動力について、「作中、『見果てぬ夢』という歌があるが、父が死んだときも、母が死んだときも、この歌を歌っていた。この歌に勇気づけられてきた」と語る。

 そこで、役者としての“見果てぬ夢”について尋ねると、「今思うのは、役者は何でもやる必要はないけれども、何でもできなくてはいけないということ。22歳で初めてミュージカルに出たとき、やる以上はブロードウェイの舞台に立ちたいと思った。歌舞伎もミュージカルも、決してそこそこにはやってこなかった。どちらも突きつめてやってきた。役者とは、手に芸をつけ、アルチザン、職人になるべきであって、傑出した人たちにはみんなそういうところがあると思う。それにしても、自分自身、このミュージカルに助けられ、勇気づけられてきた。劇中、あるべき姿のために戦うというセリフがあるが、ご覧になったお客様に明日もまた頑張ろうと思っていただける、そのためにやってきて、気づいたら40年以上経ってきた。初演のころ、日本でミュージカルというものは年に1、2本上演されるかどうかといったところで、東宝の菊田一夫先生が、『染五郎くん、日本にミュージカルを根付かせるためにも、続けようよ、続けなきゃいけないんだよ』とおっしゃった言葉が忘れられない。そして、作品に関わった方たちの中にはもうこの世にいない方もいらっしゃるけれども、皆さん、『ラ・マンチャの男』という作品の中に残っている」と、尽きせぬ思いを。その熱い語り口に、ドン・キホーテに付き従うサンチョ役の駒田一が思わず涙ぐむ一幕も。出席の出演者もそれぞれ役者としての“見果てぬ夢”を問われ、以下のように語った。

 霧矢大夢(アルドンザ役)「20年と少し、舞台に立ってきましたが、ときどきなぜやっているのかと思うことも。自分の名前は“大きい夢”と書くけれども、実際には特に大きい夢をもっているわけではなく…。これからの夢としては、元気に舞台を続けていくこと、そしていろいろな作品を通してすばらしい方々と一緒に演じるということが長く続いていくといいなと思っています」

 駒田一(サンチョ役)「だんなさま(幸四郎)もおっしゃったように、どの現場においても、あるべき姿のために戦いたいと思っている。ときに砕け散ることもあるけれども、そうしないと前に進むことはできない。下ではなく、前を見つつ向かっていきたい。それが、この仕事を続けていく上で大切なこと。舞台でたくさんの拍手をもらい、幸せを感じる瞬間のために、戦っていきたい」

 ラフルアー宮澤エマ(アントニア役)「私はこれが舞台出演5作品目で、舞台に立ってまだ日が浅く、経験も少ないけれども、次の舞台の出演、オーディション合格が決まるとまるで夢のように感じる。どんな作品、どんな役でも、何でもできるような役者になりたいという大きな夢、見果てぬ夢を一生かけて叶えていきたい」

 宮川浩(カラスコ役)「役者を続けていられることが見果てぬ夢だと思う。長くやってきて、やめようかなと何度も思ったことがあるが、やめなかったからこうして今ここにいられる。また試練は訪れるだろうけれども、あきらめずに続けていくことが僕の夢」

 上條恒彦(牢名主役)「75歳になるけれども、夢だらけですね。まだ何も叶えていなくて、夢が増えるばかり。皆さんもそうじゃないですか。太っているのに夜中にラーメン食ったり、そういう人生を送ってきた。けれども、『ラ・マンチャの男』の現場に入ると、あるべき姿のために戦う、そう思える。夢が叶うように頑張りたい。そう思えるからこの作品が好きなのだと思う。夢は生き終わる日まで叶わないけれども、その日に向かって生きていきたい」

 質疑応答終了後、出演者のうち33名が揃い、ピアノとギターの演奏のもと、「見果てぬ夢」を合唱。霧矢の美声が気持ちよく響く。

 そして、「ミュージカルにはカーテンコールが必要」ということで、なんと幸四郎が「見果てぬ夢」英語バージョンのソロを披露。サンチョ役の駒田が槍を持って現れ、さっとひざまずいて手渡すと、ジャケットを脱ぎ、一人歌い始める幸四郎。表情が瞬時に役柄のそれに代わる。歌ううち、風格を感じさせていた風貌に若々しさがみなぎり、力強さがどんどん増してゆく。その不思議に目を見張った。完璧な英語の発音で、それでいて、何かを伝えるとは決して言葉のみによるものではないことを示す、すばらしい歌唱。公演への期待を大いに抱かせる会見となった。

[取材・文=藤本真由(舞台評論家)]
[撮影=坂野則幸]

公演概要

ミュージカル「ラ・マンチャの男」

<公演日程・会場>
2015/9/2(水)〜9/21(月・祝)  シアターBRAVA! (大阪府)
2015/10/4(日)〜10/27(火) 帝国劇場(東京都)

<スタッフ・キャスト>
脚本:デール・ワッサーマン
作詞:ジョオ・ダリオン
音楽:ミッチ・リー 
訳:森 岩雄、高田蓉子
訳詞:福井 崚
振付・演出:エディ・ロール(日本初演)
演出:松本幸四郎
出演:松本幸四郎/霧矢大夢/駒田 一/ラフルアー宮澤エマ/石鍋多加史/荒井洸子/祖父江進/宮川 浩/上條恒彦/ほか

イープラス貸切公演 10/18(日) 13:00開演
2015-07-10 19:33

 「ウエスト・サイド・ストーリー」「キャバレー」「オペラ座の怪人」などをプロデューサー、そして演出家として生み出してきたブロードウェイの生ける伝説、ハロルド・プリンス。その劇場人生を、彼が手がけてきた名曲と名場面でつづるミュージカル「プリンス・オブ・ブロードウェイ」が、今年秋、世界に先駆けて日本で初演される。齢87歳にして実にかくしゃく、演出家・振付家のスーザン・ストローマンと共に演出を手がけるプリンスに、作品について訊いた。

「未来への希望、興奮を描いていけたら」

――ご自身の人生を舞台化するというアイディアはどのように持ち上がったものなのでしょうか。

 実は自分の思いつきじゃないんだよ。提案してくれる人がいてね。自分としては、自己宣伝みたいでちょっと照れるなあと。ただ、おもしろいとも思った。というのは、僕は劇場において実にいろいろな出来事の多い人生を長年とても活発に生きてきた。そしてその60年間というのは、ブロードウェイの劇場が大きな変革を遂げた期間でもあった。昔は国際化といってもイギリスくらいまでの広がりしかなかったんだよ。それが今では、ブロードウェイの客席を見ると、日本人、スカンジナヴィア人、南アメリカ人、ドイツ人などなど、さまざまな国籍の観客が好ましい割合で座っている。僕はそれをとてもエキサイティングなことだと思うんだ。ブロードウェイ・ミュージカルを発展させていくうえでは、伝統を受け継いでいくと同時に、広い視野をもってこの芸術形式を多くの人々と分かち合っていくことが必要だと思う。自分自身、日本やロシアやドイツ表現主義など、さまざまな国の演劇に影響を受けてきたということもある。例えば、以前演出した「太平洋序曲」では、能を取り入れてもいるからね。

――さまざまな作品を生み出されてきましたが、とりわけ印象に残っている作品は?

 選ぶのは非常に難しいけれど、大好きなのは、スティーブン・ソンドハイムが作詞・作曲した「フォリーズ」だ。スマッシュ・ヒットとはならなかったけれども、自分としてはとても満足しているよ。とある劇場を取り壊すことになり、最後の日に、演劇界で働く四人が集まり、思い出を分かち合う。ちょっと自伝的なところもあるなと思う作品なんだ。僕のところを映画監督のフェデリコ・フェリーニが訪ねてきて、「8 1/2」を舞台化してくれと言ってきたことがあってね。後の「ナイン」だけれども、僕はやらなかったというのは、それは明らかに彼の人生の物語だったからだ。その点、「フォリーズ」には僕自身の人生が投影されている。その当時、自分は働きすぎていて、仕事以外の人生を振り返る必要を感じていた。もっと家族との生活に多くを割くべきだと思った。もっとも個人的で、だからこそ大切な作品だ。ヒットすればよかったなあと思うけれども、ヒットしなかったから好きなのかもしれない。


写真=制作発表会見より

――今回、プリンスさんの“声”を市村正親さんが担当されます。

 「オペラ座の怪人」の日本初演からのつきあいだから、知り合ってもう25年以上になるね。僕の声をやってもらうのに、イチ以外の人は考えられないと思った。彼はとても純粋なユーモアセンスの持ち主なんだよね。この作品には、僕自身が経験してきたブロードウェイ・ミュージカルにおける変革に対し、僕がどう思うかが反映されている。ミュージカルという表現形式は、この60年の間に、よりシリアスな題材を扱えるようになり、音楽もロックやR&Bなどが導入されてきた。イチは知的でセンシティブな人間だから、彼が僕の“声”を担当することで、そんなに多くはない言葉の中に、運について、政治について、チャンスについて、勇気について、僕自身の思いをこめたところを観客が深く感じ取れるだろうと思う。僕は子供のときからミュージカル好きだったというわけではなくて、ミュージカルにおいてシリアスな題材を扱えるということを悟ってから、この表現形式の可能性について考えるようになってきた人間なんだ。そういう意味ではとてもいい時代に生まれたと思う。イチのセリフの中には、「運を軽んじてはいけない」という僕のメッセージもこめられている。どんな人生を生きるにしても、運は非常に大切だ。才能があったとしても、運を見極め、タイミングよくつかめるかどうかが物を言うと思うんだ。

――これまで手がけた中で、「これは運をうまくつかんだ!」と、とりわけ思う作品は?

ボストンで、グウェン・ヴァードン主演の「New Girl in Town」という作品を手がけていたとき、いろいろと問題が発生してうまくいかなくなっていたんだよね。親友のスティーブン・ソンドハイムに電話をして、これはもう失敗するかもしれない…と延々と話していて。「ところで最近君の方はどう?」と聞いたら、「僕の話はもう聞いてくれないかと思った」と彼が話し出したのが、「ウエスト・サイド・ストーリー」からプロデューサーが逃げてしまったという話で。当時は、ハッピーじゃないミュージカルなんてと、みんなやりたがらなかったんだよね。そこでリハーサルのない日にニューヨークに飛び、レナード・バーンスタインの自宅を訪ねて、彼やソンドハイム、ジェローム・ロビンズと会って話した。そして「ウエスト・サイド・ストーリー」のプロデューサーになることを決めた。あの作品との出会いは僕の人生を変えたと思う。ミュージカルにおいても常に新しい題材を探していくべきなんだと勇気づけてくれた。その後手がけた「キャバレー」にしても、ナショナリズムという、当時としてはあまりミュージカルらしくない題材を扱っているしね。そうそう、幸いにして、「New Girl in Town」もヒットしたよ(笑)。考えてみれば、21歳のとき、「南太平洋」の初日に出かけていって、二歳年下のソンドハイムを紹介され、すぐに親友になった。あのとき紹介されていなかったらと思うと、それはすばらしい運だったよね。


写真=制作発表会見より

――今回、宝塚を退団したばかりの元星組トップスター柚希礼音さんが唯一の日本人キャストとして出演されます。

 ニューヨークで彼女の歌を聞いたけれども、よかったし、英語にもまったく問題ないと思った。かつてブロードウェイにソノ・オーサトという日系アメリカ人のスターがいてね。「ワン・タッチ・オブ・ヴィーナス」や「オン・ザ・タウン」で主演した、僕のよき友人で、歌も踊りもうまかった。レオンには彼女に通じる魅力を感じるし、次のスターになり得る存在だと思う。長めのダンス・シーンでメインを務めてもらおうと思っているんだ。宝塚は以前、「風と共に去りぬ」と何かレビューの作品を観たことがあるけれども、あのような舞台はアメリカの劇場文化にはないよね。これはすごいなとびっくりしたし、魅惑的だと感じたよ。
 今回の作品を僕は決して懐古的なものにしたくはなくて。「昔はよかった」と観客に劇場を後にしてほしくないと思っている。だから、これまで上演してきた曲、場面はすべて、編曲もステージングもまったく新しいものにするつもりなんだ。そして、「次は何?」と観客にわくわくしてほしい。芸術形式は新たな実験を続けていくことが大切だと思う。それは決してたやすいことではないけれども。過去にやったものを過去にやった通りにやるなんて飽き飽きしてしまう。最近では、ブロードウェイでも、投資家の意図にばかり左右されるのではなく、アーティスト、クリエイターへの信頼というものが取り戻されてきて、またいい感じに変革が訪れていると思う。そんな中で、この「プリンス・オブ・ブロードウェイ」でも未来への希望、興奮を描いていけたら、そう思っているんだ。

[取材・文=藤本真由(舞台評論家)]
[撮影=渡辺マコト]

公演概要

三井住友VISAカード presents
ワールドプレミア ミュージカル『プリンス・オブ・ブロードウェイ』

<公演日程・会場>
【東京】2015/10/23(金)〜11/22(日)東急シアターオーブ
【大阪】2015/11/28(土)〜12/10(木)梅田芸術劇場メインホール

<料金(全席指定・税込)>
SS席17,000円 S席14,000円 A席10,000円 B席7,000円
チケット一般発売日:2015/7/25(土)

★下記の日程にて<e+貸切公演>が決定しました!
■東京公演
10/31(土)12:30 11/5(木)18:30 11/11(水)13:30

■大阪公演
11/29(日)12:30 12/8(火)18:30
※ご登録いただくと「プリンス・オブ・ブロードウェイ」の最新情報をメールでお届けします。
2015-06-30 13:09

 ブロードウェイの超一流スタッフ&キャストが、市村正親、柚希礼音と共にここ日本で新作の幕を開ける前代未聞のプロジェクト、『プリンス・オブ・ブロードウェイ』。ハロルド・プリンスが製作・演出したヒット作の名場面から成るこのミュージカルで、プリンス自身と共同で演出を手掛けるのが、『プロデューサーズ』『コンタクト』などでその名を轟かす名演出・振付家、スーザン・ストローマンだ。本作のコンセプトや、観る者を無条件で高揚させるあのダンスを生み出す秘訣について、製作発表記者会見を終えた彼女に聞いた。

「ハルほどのことを成し遂げた人はほかにいません」

――まずは、ハロルド・プリンスさんとの出会いについて聞かせてください。

 1987年に私がオフ・ブロードウェイで振付をした『フローラ、赤の脅威』というミュージカルを、ハルが観に来てくれた時が初めてです。彼はその前に同じ作品をブロードウェイで製作していたから、オフ版がどんなものなのか見たかったのね。その舞台を気に入った彼は、NYシティ・オペラの『ドン・ジョヴァンニ』の振付をやってみないかと、私に声をかけてくれました。そしてそのご縁が、彼の演出、私の振付で上演されてトニー賞リバイバル作品賞を受賞した、1994年の『ショウボート』へと繋がっていったんです。

――その後2010年にロンドンで上演された『パラダイス・ファウンド』では、共同演出という形でハロルドさんとお仕事をされています。

 共同で演出をするためには、お互いの考えていることを常に理解していることが大切です。私たちの場合は、演出家と振付家の関係だった『ドン・ジョヴァンニ』や『ショウボート』の頃から、それができていたように思います。互いに敬意を払い、協力し合っていましたし、元々の価値観も似ているのかもしれませんね。私たちは二人とも、役者が大好きで、役者からインスパイアされるものを大事にしている。ですから共同演出家の関係になってからも、彼と衝突したことは一度もありません……少なくとも今のところは、ね(笑)。

――ハロルドさんの演出家として、プロデューサーとしての偉大さを、それぞれどのように捉えていらっしゃいますか?

 演出家としては、キャラクターを深く掘り下げるところがやはり素晴らしいと思います。例えば、先ほどの会見でシュラー・ヘンズリーが扮した理髪師のスウィーニー・トッドは、カミソリが腕と一体化したようなキャラクター。そのことは、彼が商売道具であるはずのカミソリを凶器にしてしまった裏にある、残酷な背景を物語っているんです。そしてプロデューサーとしては、観客の気持ちを感じ取る力に優れた方ですね。どちらをとっても、舞台の世界で、彼ほどのことを成し遂げた人はほかに存在しません。そんな彼の人生を讃える今回の作品に参加できることを、本当にうれしく思っています。

「役になってみれば、振付は自然と浮かびます」

――本作のコンセプトについて、構想が持ち上がった4年前時点からの変化を含めてお聞かせいただけますか?

 これは、ハロルド・プリンスがこの世に送り出してきたキャラクターたちを讃える作品です。『屋根の上のヴァイオリン弾き』のテヴィエ、『カンパニー』のボビー、『リトル・ナイト・ミュージック』のデジレ、『オペラ座の怪人』のクリスティーヌ、『スウィーニー・トッド』のスウィーニー・トッド……。そしてそこに、ハルの人生や、作品が生まれた裏にあったエピソードを織り込んでいくんです。ハロルド・プリンスの偉大な功績という大きな物語と、キャラクターたちの小さな物語の数々を伝えたい。そのコンセプトは、最初から変わっていないですね。ただ、日本で初演を迎えることになり、キャストも固まってきましたから、そのことによる変化はもちろん生まれています。

――ワールドプレミアの地が、言語も文化も違う日本になると聞いた時は、正直なところ戸惑いもあったのではないでしょうか。

 そんなもの全くないわ(笑)! 私は『クレイジー・フォー・ユー』と『コンタクト』の初演の時にも来日していて、日本も日本人も大好きだから、ハルからの電話でそう聞いた時は本当にうれしかった。それに今回は、(柚希)礼音と一緒にお仕事ができることにも心からワクワクしているんです。彼女は優美で上品で、同時にパワフル。そんな彼女の出演は、日本だからこそ実現したことですから。

――どの場面、どの曲を取り上げるかは、もう全て決まっているのですか?

 ハルも私も役者を尊重するから、稽古が始まったら「この人にはこっちの歌のほうが合う」というのが出てくると思うけれど、今のところは、という意味では決まっています。幕開けを飾るのは、『フローラ、赤の脅威』の《All I Need Is One Good Break》という、ハルの人生を語る上で欠かせない“運”についての歌。そして1幕の最後には、日本の皆さんに大変な人気がある『オペラ座の怪人』を考えています。とても力強い幕切れになると思いますよ!

――スーザンさんが演出する時と振付する時、それぞれ大切にしていらっしゃることを教えてください。

 その二つは同じかもしれないですね。どちらにおいても、大切なのは観客に確実に物語を伝えること。舞台におけるダンスというのは、ただステップを踏むことではなくそのキャラクターとして踊ることですから、私は振付をする時も、演出をする時と同じだけキャラクターについて考えます。実際には、私自身がそのキャラクターになってみるんですよ。例えば『プロデューサーズ』なら、主役のマックスにもリオにも、それに歩行器を使って踊るおばあちゃまたちにもなってみました(笑)。自分がなってみることで、振付は自然と浮かんできます。どうしても思い浮かばない時は、横になって改めて音楽を聴くの。音楽は私にとって、とても重要なものなんです。

――全てのキャラクターになってみるということは、今回はものすごい数になるのでは…?

 そうなのよ(笑)。実はもう既に、何人かにはなってみました。9月にリハーサルが始まったらちゃんと全員になって作っていきますから、どうぞ楽しみにしていてください。

[取材・文=町田麻子]
[撮影=平田貴章]

公演概要

三井住友VISAカード presents
ワールドプレミア ミュージカル『プリンス・オブ・ブロードウェイ』

<公演日程・会場>
【東京】2015/10/23(金)〜11/22(日)東急シアターオーブ
【大阪】2015/11/28(土)〜12/10(木)梅田芸術劇場メインホール

<料金(全席指定・税込)>
SS席17,000円 S席14,000円 A席10,000円 B席7,000円
チケット一般発売日:2015/7/25(土)

★下記の日程にて<e+貸切公演>が決定しました!
■東京公演
10/31(土)12:30 11/5(木)18:30 11/11(水)13:30

■大阪公演
11/29(日)12:30 12/8(火)18:30
※ご登録いただくと「プリンス・オブ・ブロードウェイ」の最新情報をメールでお届けします。
2015-06-24 14:18

 東京サンシャインボーイズ所属後、演劇ユニット・泪目銀座を旗揚げし、現在は丸福ボンバーズ主宰を務める福島三郎。その福島渾身の自信作である「うたかふぇ」は2012年に丸福ボンバーズが上演し良質なストーリーが好評を博した。そして2015年、待望の再演はサンシャイン劇場での上演が決定。日常の中にあふれる音楽の力を感じさせてくれる音楽劇、公演概要と出演キャストのメッセージをお届けしよう。

キャストコメント到着

■作・演出/福島三郎さん
「うたかふぇ」は2012 年に数十人のお客様を前に上演した作品です。ミュージカル作品は、急に歌い出したり踊り出したりすることに違和感を感じる、という声をよく聞きますが、この作品ではそうした違和感を無くして限りなく日常会話に近いセリフや出来事を舞台にするというジャンルにチャレンジしたいと思い、タイトルに「ストレートプレイ・ミュージカル」と名付けました。この度、強力なキャスト・スタッフとともに再び上演するので、たくさんの方に観ていただけたら嬉しいです。

■河本準一さん
今回の「うたかふぇ」で、初舞台、初主演、初座長といろんなことに初めて挑戦します。他のキャストは舞台経験がありますが、僕は舞台においては後輩にあたるので、何か自分にできることを、と思い、明るく楽しくムードメーカーとして盛り上げています。今年40 歳になったので、芸人以外に違うことをやりたいと思うようになり、これから10 年間、いろんなことに挑戦したいと思っている中での最初の挑戦です。この作品は地元の商店街の近くに大型のショッピングセンターが出来て…という話で、観る方にとっても身近に感じられる内容で観終わった後にいろいろと感じていただける舞台です。そしてみんなで楽しく笑って帰れる作品だと思うのでぜひ観に来てください。

■牧野由依さん
私は声優や歌手の仕事が多いのですが、今回「うたかふぇ」という素敵な作品に出演することができ嬉しく思っています。稽古もとても楽しいです。私にとって音楽は小さなころから身近にあった、あって当たり前のものだったのですが、この作品を通して改めて、歌うことはこんなにも楽しいものだと感じています。お客さんにも歌の楽しさが伝わったらいいなと思います。

■陽月華さん
劇場で舞台を観るということは、このデジタルな時代においてとてもアナログなことなのかもしれませんが、そこでしか味わえない空間や時間をキャストとお客様みんなで味わうことができる素晴らしい文化だと思います。その素晴らしさを感じられるよう、皆で力を合わせて頑張るのでぜひ観に来てください。

■大山真志さん
「うたかふぇ」は、本当に観た後に心が温まる作品だと思います。河本さんが座長としてみんなを引っ張ってくれているので、本番に向けて頑張りたいと思います。

■菊地美香さん
この「うたかふぇ」のキャストは普段全然違う分野で活躍している人が集まって一つの作品を作っているので、何か新しいものが生まれる期待がとても大きいと思います。演出の福島さんがおっしゃる「とにかく楽しめ、楽しんだら伝わる」という事を頭で考えると少し難しいのですが、初日を迎えるころには、それが当たり前になって120%楽しんでいることを見てもらいたいと思います。

■なだぎ武さん
僕は普段お笑い芸人として活動しているので、この「うたかふぇ」でミュージカルへの出演が5作目になるのですが、この作品は「ストレートプレイ・ミュージカル」とあるように、自然に曲が入ってくるのでミュージカルとはまた違ったパターンの舞台だと思います。「こんなの初めて」と楽しんでいただけたらと思います。

[撮影=田中亜紀]

公演概要

ストレートプレイ・ミュージカル「うたかふぇ」

<公演日程・会場>
2015/7/3(金)〜7/12(日) サンシャイン劇場 (東京都)

<出演・キャスト>
【作・演出】福島三郎
【音楽監督】曾我泰久 【作曲】森若香織 藤岡孝章 梅里アーツ 橋爪 渓 【演奏】sources

【出演】河本準一 牧野由依 陽月華 大山真志 小林正寛 萩原利映 上野優華 岡本真友 藤沢実穂 菊地美香 なだぎ武

2015-06-18 19:57

 トロイア戦争勝利の後、ギリシャの英雄オデュッセウスが故郷へ帰還するまでの十年の冒険譚を描いたホメロスの長編叙事詩「オデュッセイア」。古代ギリシャ文学の最高峰の一つであるこの作品の、オデュッセウスが冥府(死後の世界)へと旅する第11章「ネキア」がこのほど能の舞台となり、日本及びギリシャで上演される。タッグを組む人間国宝、梅若玄祥とギリシャ人演出家ミハイル・マルマリノスが出席しての製作発表が行なわれた。

異文化の出会いがもたらす化学反応

 「『ネキア』は文学史上、最も早い時期に生者と死者との出会いを描いた作品。しかしながら、ギリシャにおいても、『オデュッセイア』を舞台化する際、この章は省かれることが多い。それは、生者と死者との対話の描き方が難しいから。長年この章について考えてきて、能こそが、『ネキア』を扱う上での文学的、パフォーマンス的手法をもつ形式であると思うに至った。ギリシャの古代演劇と能との間には驚くほどの類似性がある。音楽と密接な関係があるということ、ドラマよりは詩と関係をもつということ、仮面を使うということ、そしてコロスが登場するということ。『ネキア』と能との出会いは運命的なものだと思う」とマルマリノス。演劇を学んでいた学生時代、日本人作曲家湯浅譲二の関わる舞台がデルファイの古代劇場で上演された際にコロスとして出演、能楽師との出会いを果たした。

 「プラトン曰く、知識とはいきなり出会うものではなく、内なる記憶の甦りとしてやってくるもの。私にとって能との出会いがまさにそうで、出会う前からすでに知っていた気がした。哲学、詩、演劇など、ギリシャの古代文明の伝統は、キリスト教文化によって一度暴力的に流れを断たれているが、断たれたそのルーツをギリシャ人として探求する上で、伝統の流れを受け継ぎ続けている能という形式に大いに可能性を見出している」とのこと。

 マルマリノスからのオファーを受け、3年前からこの企画に取り組んできた梅若玄祥は、「生者と死者との対話というのは、能では確かに当たり前。『ネキア』についても能が解決できるところが割とあるのかなと思うが、それだけに、これが能の特徴というところを見せていかなくてはいけない課題があり、楽しみかつ怖い。緊張もしています」と語る。

 ホメロスの「オデュッセイア」からマルマリノスが抜粋した部分を、梅若玄祥と笠井賢一とが能本脚本の形に構成。梅若玄祥は節付も手がけ、20人近い登場人物の出入りなどの動きをマルマリノスがつけていくが、装束等も含めあくまで正調な能として上演するとのこと。東京では国立能楽堂で上演されるが、7月、日本人として初めて招待されての上演を果たすアテネ・エピダウロス・フェスティバルの会場は、8000人から1万人も収容する古代円形劇場とあって、演出の変更もある。なお、オデュッセウス役は観世喜正が務め、梅若玄祥は、オデュッセウスに冥界行きを助言する鷹の魔女キルケーと、冥界で出会う予言者ティレシアスの男女二役を担当。キルケーの鷹の舞や、冥界へと送り出す舞、また、オデュッセウスと死んだ母との対面では、母が死んだ子と出会う能「隅田川」の対ともいえるような場面が展開されるという。「3月にギリシャの上演劇場を訪ねた際、神が降りてくるかのような感覚があった」と梅若玄祥。異文化の出会いがもたらす化学反応やいかに。

[ 取材・文=藤本真由(舞台評論家)]

公演概要

新作能「冥府行〜ネキア」世界初演 ワールドプレミア東京公演

<公演日程・会場>
2015/7/15(水)  国立能楽堂 (東京都)

<出演・キャスト>
原作:ホメロス作「オデュッセイア」
能本脚本:笠井賢一
節付:梅若 六郎玄祥
演出:ミハイル・マルマリノス
プロデューサー:伊藤寿
エグゼクティブプロデューサー:西尾智子 ヨルゴス・ロウコス

2015-06-03 19:20

 第二次世界大戦前後の日本とドイツを舞台に、アドルフという同じファーストネームを持つ3人の男たちの宿命、それぞれの正義、愛情と友情をドラマティックに描いた『アドルフに告ぐ』。マンガの神様・手塚治虫の代表作でもあるこの作品が、栗山民也演出で舞台化されることになった。ドイツ人と日本人のハーフにしてヒットラーの秘書の地位にまで上り詰めるアドルフ・カウフマンには成河、ユダヤ人と日本人のハーフで神戸に住む心優しきパン屋の息子、アドルフ・カミルには松下洸平、そして独裁者、アドルフ・ヒットラーには橋洋という、演技派3人が顔を合わせるのも大きな話題だ。6/3(水)、KAAT神奈川芸術劇場での初日を目前に控えた稽古場を訪ね、3人のアドルフに作品への想いを語ってもらった。

演じる側と観客とが一緒に考え、成長していけることも演劇の醍醐味

――今回の3人のアドルフ、それぞれの役柄について現時点ではどう演じようと思われていますか。

成河 うーん。

松下 難しいね。

 難しいねえ。

松下 栗山さんは「カミルは優しい人間でいてほしい」っておっしゃるので、そこは作っていく上で意識しますけど。だけど、じゃあ、優しさとはなんぞやとか、そういう具体的なことは言わないから。

――そこは自分で考えなければいけない。

松下 あの時代、あの境遇に生まれた人間で、いろいろなことを背負っている人間の優しさとは、ということです。そこですよね、悩むのは。

成河 いやもう、カミルの優しさはすでに出てるよ。

 カミルの最初の登場シーン、階段をあがってきてパッと立った瞬間に、ほわぁ〜って感じがする。

成河 僕も、ホッとするような、ぬくもりを感じる。あの場面は、すっごく大事な、いいシーンですよ。

松下 あそこは、命賭けてやらないといけないね。

成河 カミルとカウフマンの少年時代の一番いい時間は、あそこでしか描けないので。それを終幕までずっと引きずって持って行けるようにと、栗山さんとも話しているんです。

松下 最後の最後の場面で、お客さんがその、前半の二人の出会いの場面をふわーっと思いだして重なるようにしないといけないから。だけどね、珍しいことなんだろうなとも思うんですよ。当時、神戸に亡命していたユダヤ人が、隣組の防災班長をやるか?って(笑)。ありえない設定ですよ。生まれも育ちも神戸でユダヤ人のくせに関西弁をしゃべる、あんな少年はたぶん現実にはいなかったはずだから。

――そこをどうやってリアリティをもって演じるか。

松下 そうそう(笑)。でも、きっとカミルはそれだけの何かを持っていたってことでしょうから。そうやって神戸の日本人にも愛され、周りの人からも愛されて、責任感も強くて、防災班長もまかせられるくらいの人間だと思わせなければいけないわけで。だけど決して暴力的ではなく、力でねじ伏せていった人間ではないんですよね。たとえば領事館員が来た時に椅子を振り回すシーンがあるんだけど「そんなに暴力的にはやらないでくれ」って言われているんです。彼が椅子を投げたり、胸倉をつかんだりする動機は、ただ必死で何か大切なものを守るための行動なんです。

――カウフマンは、いかがですか。

成河 最後のほうでカウフマンに与えられているセリフで、これは手塚治虫さんも言っていることだから僕も手掛かりにしているんですが「いくつもの国で正義というやつにつきあって、俺は何もかもを失った」という言葉があって。それが彼のすべてなんだろうと思うんですよね。つまりお客さんには、単に善良なおぼっちゃんがナチスに入ってユダヤ人を殺していっただとか、あるひとりの人間が悪に手を染めていき崩壊していく姿だという風には見てほしくないんです。その中でどんなことに葛藤していたのか、共感してもらえるかどうかはわからないですけど、決してそれを他人事には思ってもらいたくない。彼が自分なりの正義につきあって一生懸命葛藤した末にたどりついた、ある種の絶望。それを問いかけるところまで、きちんとお客さんを連れていってあげたいなと思っているんです。正義とはなんなのか。どうしてこんなに曖昧なものなのか。そこまでお客さんと一緒に、たどり着きたいですね。

松下 最後のほうのカミルとの場面、あそこも、たまんないよね。

成河 たまんないね。親友同士の最後の顛末の果てに、栗山さんは舞台独自の素晴らしい演出をつけてくださったので、そこもぜひご期待ください。お芝居でこの二人の関係を表現するわけだけど、その1秒が永遠にも思えるような。過去にタイムスリップできそうな一瞬だね。

松下 本当にそう! 泣いちゃうよ、あれ。

 やってるやつが? お客さんより先に?(笑)

松下 いやぁ〜、泣いちゃうよ……。

――? 松下さん、今、泣いてます?

松下 ホントにヤバイんだよ、俺。

成河 アハハハ! カミルは本当にあったかいなー。

 おまえが泣くな!って言われちゃうよ(笑)。

――橋さんはヒットラーの役ですが。

 僕の場合は、基本的にそばにカミルやカウフマンみたいな友達がいないので、羨ましいなーと思って二人を見ているんですけどね(笑)。ずっとひとりでしゃべって、人の話も聞きたいところしか聞いてないみたいな役だし。だけどもう、どういう風に見えるかっていうのはこの際、いいかなと最近思い始めました。ヒットラーに似てるとか似てないとかも、どうでもいいかなって。それよりももうちょっとナマの人間が、言葉でラリーをしているみたいな状態にいけたら、そういう風に伝わったらいいなと思うんです。錦織圭みたいにね。

松下 うんうん。

 錦織圭ってうまいから思わぬところにボールが飛んで、それを相手も拾うとそこから面白いラリーになるでしょ。俳優も、ある程度毎日同じことをやっているようだけど、そこをナマっぽく返していけたらなと。本番までにはきっと、もっと面白いラリーになりそうな気がしています。

――この作品を今、現代のこの時期にやることについての意味、そしてお客様にはどんなことを感じていただきたいと思われていますか。

成河 今がどんな時代かを語れるわけでもないですが、だけどこうして表現をしたり作品をつくる仕事に携わっているとどうしても思うのが、最近はなんでもかんでも他人事としてエンターテインメントを享受することにみんな慣れてしまっているみたいで。そうなると泣いて笑ってスッキリして終われる作品が社会の活力になるのかもしれないですが、でもやっぱりこういう作品をやることで、ひとりひとりに考えるきっかけが与えられるような気もするんですよね。僕たち演じる側も、それを観るお客様も一緒に考え、一緒に成長していくことも演劇の醍醐味だと思いますし。

松下 本当にその通りですよ。今って、過去を振り返ることがあまりにもないですからね。ニュースを見ていても「よりよい未来とは」ということばかりが先行してしまっていて。でもそれってどうなんだろう、臭いものにふたをしているだけというか、しっかり過去を受け止めないと次には進めない、進んじゃいけないような気もするんです。僕もこの作品に出会うまではいい未来ばかりを想像していましたけど、今は過去のいろいろな過ちを二度と繰り返さないようにしなきゃという気持ちになってきました。「過去VS現在」ですよね。それに勝てたものだけに与えられるのが未来なんです。そういう意味では僕たちが命を懸けて過去と向き合い、そのことを舞台で表現していくので、それを本当にひとりでも多くの人に見ていただきたいし、このことを踏まえた上で一緒に未来を考えていくことができたらいいなと思います。

 栗山さんも「ドイツは過去に向き合う国だけど、僕ら日本はほとんど都合の悪い過去には向き合わない国だ」とよくおっしゃっていますけど、こういう作品って実際にすごく食べ辛いというか。特にエンターテインメントの世界においては食べ辛い、噛み砕きにくいものですよね。でも、そういうのもたまには食いましょうよってことです。それでどう感じたかは、もちろんご自由だと思うんですけど。

成河 きっと、アゴが強くなる!(笑)

 ふわふわなのもいいけど、ガリガリでもうまいでしょ!って(笑)。だってそういうのを食べたいと思っている人、絶対にいるはずだから。

成河 改めて思ったのは、僕らって近代史をきちんと習えていないんだってこと。しかもそのことに対して無意識なわけですよ。そのせいで物事を自分で判断する能力も、あまり成熟していないように思うんです、自分を見ても周りを見ても。何か問題があったとしてもみんな賛成か反対しかしないしね。でも物事ってそういう見方だけじゃなく、もっと知るべきことがたくさんあり、ひとりひとりが何を信じるべきかというのもまた別だし、そういうことも分かった上で初めて判断できるもの。そう思うと、この作品って“脳トレ”みたいにも思えてきたな(笑)。まあ、脳トレをしに来てくださいとは言えないけど、ただ自分たちの判断能力の緩さ、弱さというのをきちっと自覚することも大事だと思うから、この物語はそういう意味でもものすごく役に立つと思う。お役に立ちます、アドルフが!(笑) ということで、劇場で一緒に判断能力というものを養い、みんなで豊かに生きていきましょう!

3人のアドルフと、彼らの家族や周囲の人間たち
それぞれの運命を描く、哀しくも壮大な群像劇

 インタビュー終了後、稽古場に潜入すると、この日の稽古は第一幕後半と第二幕の前半部分だとのこと。ステージは傾斜のついた八百屋舞台になっており、床の一部が前後、左右にスライドして移動することで場面転換ができる舞台装置になっているのが面白い。ステージ横にはピアノとヴィオラの演奏者(ピアノ:朴勝哲、ヴィオラ:有働皆美)がスタンバイ、場面に合わせてその場で生演奏を行う趣向になっている。

 第一幕後半部分、カウフマン(成河)の手引きで日本に亡命したエリザ(前田亜季)がカミル(松下)を訪ねてくる場面。ヒットラーの出生の秘密が記された文書を探すドイツ領事館員たちの横暴さに、必死で椅子を振りかざして抵抗しようとするカミル。単なるアクションシーンとも違い、母とエリザを守ろうとする必死さが伝わってくる。

 続いて第二幕の幕開き部分、ヒットラー(橋)のもとで狂信的にユダヤ人排斥に突っ走っていくカウフマン。威圧感たっぷりだったヒットラーが徐々に周囲に対し疑心暗鬼になっていくところでは、冷徹な表情から感情を爆発させるまでの振れ幅の大きい橋の演技に目が釘づけに。カウフマンやヒットラーたちは稽古の段階から軍服やブーツを身につけていることもあって、本番さながらの迫力ある雰囲気が漂っている。さらに、ひたすら自分の正義を信じて突き進むカウフマンが秘密文書を探す任務でUボートに乗り日本に向かう場面では、自分が手にかけた人々の死、そして自分の死にも直面して壊れつつある彼の心の叫びがあまりにも悲痛に響き、見ているだけで息が苦しくなるほどだった。

 数場面ずつ演じてみてはその都度、舞台上に栗山を囲んでキャストが集合。各自のセリフのニュアンスや立ち位置、言う側の感情、その背景にあるものなどについてひとつひとつ振り返っては細かく指示が与えられていく。とはいえ、いわゆる一方的な“ダメ出し”とも違い、そこには役者からの意見や提案も含めてたくさんの会話が存在し、時折笑い声も漏れていて、終始温かな雰囲気の稽古場だった。

 この物語は3人のアドルフだけではなく、彼らの家族や周囲の人々、さらには国を動かす人物、それに対抗する組織の人たちの運命をも描く、哀しくも壮大な群像劇となっている。そこには誰もが心を震わせられるリアリティがあり、今だからこそ考えるべき事柄のヒントをたくさん感じることができるはず。ぜひとも劇場で、この作品が発する大切なメッセージを受け取ってほしい。

[取材・文=田中里津子]

公演概要

舞台「アドルフに告ぐ」

<公演日程・会場>
2015/6/3(水)〜6/14(日) KAAT神奈川芸術劇場 ホール (神奈川県)
2015/7/3(金)〜7/4(土) 刈谷市総合文化センター 大ホール (愛知県)

<出演・キャスト>
原作:手塚治虫
演出:栗山民也、脚本:木内宏昌、音楽:久米大作
出演:
成河 松下洸平 橋洋
朝海ひかる
前田亜季 大貫勇輔 谷田歩 市川しんペー 斉藤直樹
田中茂弘 安藤一夫 小此木まり 吉川亜紀子
岡野真那美 林田航平 今井聡 北澤小枝子 梶原航 西井裕美 薄平広樹
彩吹真央 石井愃一
鶴見辰吾

★舞台「アドルフに告ぐ」アフタートーク開催決定!★
公演終了直後のキャストによる稽古場秘話や本公演にかける想いをお届けします!
4日は、手塚治虫氏の長女でいらっしゃる手塚るみ子氏をゲストにお迎えし、
原作の「アドルフに告ぐ」についてのお話もうかがいます!

■6月4日(木)14:00公演終了後
【ゲスト】手塚るみ子(手塚プロダクション取締役/プランニングプロデューサー)
【出演】成河、鶴見辰吾

■6月11日(木)14:00公演終了後
【出演】成河、松下洸平、橋洋、朝海ひかる、彩吹真央

2015-05-29 17:03

 俳優 東出昌大(27歳)が出演する舞台『夜想曲集』が、5月11日(月)、品川区の天王洲銀河劇場で初日の幕をあけます。東出昌大さんにとって、今回が初めての舞台出演となります。(初舞台・初主演)
 初日前日、5月10日(日)に最終舞台稽古がおこなわれました。

才能を持つが故に苦悩する若きチェリスト役

 東出昌大さんは、2004年にモデルとしてデビューし、その後2012年に公開された映画「桐島、部活やめるってよ」への出演を機に俳優に転向しました。日本アカデミー賞新人俳優賞など数々の新人賞を受賞し、現在は、NHK大河ドラマ「花燃ゆ」に出演中です。また、9月26日より主演映画「GONINサーガ」が公開予定です。

 東出さんの役どころは、才能を持つが故に苦悩する若きチェリスト(ヤン)の役です。旧共産圏の出身で、自分の才能を追求するために自由の国に出て活動を始めますが、厳しい現実と向き合うことになります。東出さんはこの役と向き合うために、昨年からプロのチェロの先生から指導を受けて、レッスンを重ねてきました。

 共演の安田成美さんは、本作の演出を手掛ける小川絵梨子さん演出作品2度目の出演となります。安田成美さんが演じられるのは、往年の名歌手の妻で、何の才能も無いが野心はあり、有名になるために努力を重ねる女性という役どころになります。安田さんご自身は、これまで演じてきた女性の中で一番好きな役、と言ってらっしゃいます。

 原作者のカズオ・イシグロさんは、イギリス文学界最高峰のブッカー賞を受賞されている、日本でも人気の高い作家です。本舞台はイシグロ氏の短篇集「夜想曲集」より、3篇の独立した短篇を抽出して、劇作家の長田育恵さんが一つの物語にまとめています。
 イシグロ氏の10年ぶりとなる長編小説「忘れられた巨人」が4月下旬に刊行され話題となっています。
演出は読売演劇大賞優秀演出家賞を3度受賞されている小川絵梨子さんです。

 本作は、才能を持つ人間、持たない人間、それぞれが自分の人生と向き合い、踏み出していくまでの葛藤を描いた作品です。劇中には生のミュージシャン演奏もあり、大人が楽しむことのできる作品となっています。

東出昌大さん コメント

 才能を持つがゆえに苦悩するチェリストの役を演じるため、昨年からチェロの練習をしてきました。今ではチェロを弾くのがすっかり習慣となりました。このような素敵な作品で初舞台を踏むことができこの上なく光栄です。嘘ごまかしのきかない舞台での経験が、これからの長い役者人生において新たな第一歩になる気がしています。一生に一度の初舞台を悔いの無いよう、精一杯演じ切りたいと思います。

公演概要

『夜想曲集』

<公演日程・会場>
2015/5/11(月)〜5/24(日) 天王洲 銀河劇場(東京都)
2015/5/30(土)〜5/31(日)  シアター・ドラマシティ (大阪府)
2015/6/4(木)  アステールプラザ大ホール (広島県)

<出演・キャスト>
主催:ホリプロ/銀河劇場
原作:「夜想曲集」(カズオ・イシグロ著、土屋政雄訳、早川書房刊
脚本:長田育恵
演出:小川絵梨子
出演:東出昌大、安田成美、近藤芳正、渚あき、入来茉里、長谷川寧、中嶋しゅう

2015-05-11 16:27

 明治座5月公演は市川猿之助、片岡愛之助、市川中車、市川右近という顔ぶれによる「明治座 五月花形歌舞伎」。バラエティー豊かなラインアップとなった演目への思いを、出演者それぞれが記者会見で語った。

歌舞伎独特の味わいのある演目と言葉も平易で親しみやすい演目

 新緑の季節の風物詩となりつつある「明治座 五月花形歌舞伎」。明治座という劇場のカラーを意識して演目を決めたと語ったのは市川猿之助だ。
 「劇場にはそれぞれ色というものがあって、明治座にはいろんな俳優さんが立たれています。歌舞伎もあれば女優さんや歌手の方のお芝居なども上演してきた劇場にふさわしい、明治座ならではのものをと思い、『男の花道』をさせていただくことにしました」。
 かつて長谷川一夫が一世を風靡した作品で、猿之助は5年前に名古屋で上演して大好評を博している。その折に坂東竹三郎から長谷川の芸談を直伝されたそうだ。「その芸をきちっと受け継ぎ、次世代へ受け渡したい」という言葉に、演目に対する思いの深さを覗かせた。
 失明の危機に立たされた江戸時代の人気役者・歌右衛門が猿之助の役どころで、歌右衛門を救う医師の土生玄碩を演じるのは市川中車。ふたりの男の友情が、劇中劇という手法を取り入れて劇的に描かれる。

 明治座で以前にも上演した『鯉つかみ』を“通し狂言”としてバージョン・アップして取り組むのは片岡愛之助だ。舞台に設えた水槽の中で水しぶきを飛ばしながら、愛之助が鯉と格闘する場面がエキサイティングで、今回はそこに至るまでの物語が描かれるという。
 「なぜ鯉が恨みを持ち怒っているのかをせりふで聞かせるのではなく、大百足退治の場面などを加え実際のお芝居として見ていただけます。ですので、よりわかりやすいと思います。四役早替りという話だったのですが、台本が出来てみたら六役に増えていました(笑)。皆さんと話し合いながら楽しんでつくっていきたいと思います」。

 「思いを新たに、少しでも精進できるよう、夢中でやっていくつもりです」と、語ったのは、東京での1ヶ月公演は自身の襲名以来3年ぶりという市川中車。猿之助との二人芝居『あんまと泥棒』であんま秀の市を演じる。
 「猿之助さんとは昨年の『一本刀土俵入』でも組まさせていただきましたが、非常に繊細な(芝居の)間や歌舞伎の王道の間など、すべてにおいて勉強になりました。ですから今回も自分にとって貴重な時間になると思います。自分自身、今からとても楽しみにしています。意気込みは100でございます」。
 秀の市の家に盗みに入った泥棒権太郎を演じる猿之助との、巧みなやりとりに注目だ。

 このところ古典を演じる機会の増えている市川右近は、歌舞伎十八番『矢の根』の曽我五郎に初役で挑む。
 「歌舞伎にはいろいろな彩りがございます。非情にわかりやすいお芝居が並んでいる中で、昼の部の序幕に歌舞伎十八番の『矢の根』を勤めさせていただきますことは役者冥利につきます。お客様に喜んでいただけますよう、私もその一端を担って懸命に勤めます」。
 鮮やかな隈取り、勇壮な扮装、荒事といわれる歌舞伎のダイナミックな芸が堪能できる一幕だ。

 歌舞伎独特の味わいのある演目と言葉も平易で親しみやすい演目と、昼夜ともにバランスの取れた組み合わせとなった。

[取材・文=清水まり]
[撮影=平田貴章]

公演概要

明治座 五月花形歌舞伎

<公演日程・会場>
2015/5/2(土)〜5/26(火)   明治座 (東京都)

<出演・キャスト>
出演:市川猿之助/片岡愛之助/市川中車/市川右近 他

<演目>
【昼の部】
一. 歌舞伎十八番の内 矢の根 大薩摩連中

二.男の花道

【夜の部】
一、 あんまと泥棒

   湧昇水鯉滝
二、 通し狂言 鯉つかみ
   片岡愛之助宙乗りならびに本水にて立廻り相勤め申し候

2015-04-02 19:19

 「ペルソナ3」はPlayStation 2用ゲームソフトとして絶大な支持を受け、その後もコミック、TVアニメなどのメディアミックスが展開されている作品。昨年1月には『PERSONA3 the Weird Masquerade 〜青の覚醒〜』というタイトルで初めて舞台化され、同年9月には続編『PERSONA3 the Weird Masquerade 〜群青の迷宮〜』が上演された。そして、待望の第3作目『PERSONA3 the Weird Masquerade 〜蒼鉛の結晶〜』が6月4日からシアターGロッソで上演されることが決定した。

岳羽ゆかり役・富田麻帆にインタビュー

 この舞台の見どころは、主に戦闘シーンで活躍するプロジェクションマッピング。複数の幕を巧みに使った演出で、ゲームファンも唸るほど見事に「ペルソナ3」の世界を舞台上に再現してみせた。SF要素の強い複雑な設定ながらも、丁寧な構成で初見の観客にも優しい作りになっているのが嬉しい。

稽古期間に突入する前に、物語の舞台となる私立月光館学園の高等部2年生・岳羽ゆかりを演じる富田麻帆に話を聞いた。この日の取材は、朝10時という若干早めな時間からのスタートとなったが、富田は驚くほどハイテンション。桐条美鶴役の田野アサミも別件でその場に居合わせたため、なんとも賑やかなインタビューとなり、図らずもカンパニーの仲の良さを垣間見ることとなった。

――(テンション高めの富田を見て)……普段もこの時間からそんな感じなんですか?

富田 今日は田野さんがいらっしゃるので(笑)。彼女はP3theWMのムードメーカーなんですよ。

田野 (衝立の向こうから大声で)なんだよー!

――(笑)2014年1月上演の「PERSONA3 the Weird Masquerade 〜青の覚醒〜」、同年9月上演の「PERSONA3 the Weird Masquerade 〜群青の迷宮〜」と続いてきましたが、これまでの公演を振り返ってみていかがですか?

富田 1作目から2作目にかけて課題が多かった作品なので、仲間の結束力がさらに高まったんじゃないかと思います。

――課題とは?

富田 2作目では戦闘シーンが増えたし、新しく入ってきたメンバーとの結束を強めなきゃいけなかったり。単純に人数が倍になったので、その分稽古場の空気が変わったんですよ。そういう意味で1作目からのメンバーとしては正直、不安もいっぱいありました。でも、みんな本当に良い人たちだったんで(笑)。P3theWMってめちゃめちゃキャストに恵まれてるんですよ。

田野 (衝立の向こうから大声で)恵まれてるー!

――(笑)では、富田さん演じる岳羽ゆかりというキャラクターについて、改めて説明してもらえますか?

富田 感情の起伏が激しい女のコ。私自身は穏やかな性格のはずなんですけど、周りの人からは「(ゆかりと)同じじゃん!」ってけっこう言われるんですよね。まあ、夜になって壊れてくると岳羽さんのようにキレることはありますけど(笑)。

――じゃあ、けっこう役に入り込みやすかった?

富田 そうですね(笑)。私、夜になると沸点が低くなるので(笑)。朝、台本を読んで分からない部分も、夜だと理解できるっていうことはよくありました。

――今まで振り返ってみて印象に残ってる場面は?

富田 1作目では、主人公と2人きりで自分がお父さんとお母さんのことを話すシーンが一番印象に残ってますね。あと、その時に歌った「Brand New Days」というステキな楽曲をどうやって歌うかで苦労したことも印象に残ってます。2作目は仲間との結束も強まって、戦いにいく度に絆が強くなるんですけど、作品の中だけじゃなくて稽古段階の私たち自身もそんな感じでした。

――富田さんはこれまでもいろんなタイプのミュージカルに出演されてますけど、そのなかでも映像との連動が非常に多い「P3theWM」って特殊ですよね。そういう部分での戸惑いはありませんでした?

富田 なかったですね!でも、自分にとってシリーズ物ってほとんど初めてなんですよ。こんなに同じ役を続けられることはこれまでなかったので、作品を重ねる毎に思い入れが強くなるし、自分も役も成長して楽しいですね。

――前回の「群青の迷宮」を拝見して、言葉に出さなくてもカンパニーの仲の良さ、団結力の強さが伝わってきました。あの感じは一体何なんですか?

富田 でも、もちろん喧嘩もしてますし……あ、喧嘩してるからいいのかな?「言いたいことはちゃんと言おう」っていう姿勢が最初からあって、そうやって作っていった作品だからですかねぇ?2作目でより絆が深まった感じはあります。

――富田さんから見て、主人公の2人、蒼井翔太さんと阿澄佳奈さんはいかがですか?

富田 男性版の天然と女性版の天然って感じです(笑)。でも、2人に共通してあるのは芯の強さ。1作目は慣れないことも多かったと思うんですよ。舞台の経験がそんなに多いわけじゃないし、佳奈に至っては初舞台に近い状態で。でも、2人とも本当に弱音を吐かないし、それまで出来なかったことがいつの間にか出来るようになってるんです。しかも、普通の子が出来ないようなことをいとも簡単にやってのけるので、周りのみんなが「なんで出来るの…?」って。それを特に口に出してたのが大河元気(伊織順平役)なんですけど(笑)。「おまえ、なんで出来んだよ!?」って。

――大河さんは普段も順平みたいな感じなんですか?

富田 あのまんまですね!

――みなさん、プライベートでも仲間同士でお互いの舞台を観に行ったりしてますよね。

富田 はい!ペルソナ愛ですね。

――今作「PERSONA3 the Weird Masquerade 〜蒼鉛の結晶〜」ではさらに団結力が増すと。一体どんな内容になるんでしょうか?

富田 こちらを参考に…(と資料を手渡す)。

(一同爆笑)

――いやいやいや(笑)。

富田 (笑)私が演じるゆかりと、アサミ演じる桐条先輩の物語がメインになってくると思います。2人とも覚醒しますから!あと、(望月)綾時がやっと登場するんです。植ちゃん(望月役の植田圭輔)お待たせしました!って感じです。これまでファルロス(植田が演じるもうひとつの役)は主人公としか関わらなかったから、いつも本当に羨ましそうな顔して稽古の様子を見てたんですよ(笑)。今回、やっと仲間になれるから嬉しいんじゃないかな(笑)。

――綾時はテンション高い役柄ですよね。

富田 今までファルロスでは亡霊のようだったけど(笑)、今回はナンパをするようなキャラなのでそこも見どころですね。きっと、良い綾時になると思います。あと、今回増えるキャストのうち、エリザベスとテオドアは男性バージョンと女性バージョンがあるのでダブルキャストみたいな感じになると思います。

――「P3theWM」の良いところって、途中から観ても楽しめるところだと思うんですよ。僕は2作目から観たんですけど、すんなり作品の世界観に染まれました。

富田 ありがとうございます。みんなそれを目標に作っていて、吉井さん(プロデューサー吉井敏久)もキムラさん(演出キムラ真)も分かりやすく作品を提示しようとしているので、3作目でもそれは引き継がれると思います。3作目で初めて「P3theWM」を観る人でも楽しめるように、みんな全力で取り組みます。

――3作目ともなると、「そこから観るのはさすがに入りづらそう」とお客さんが思ってしまいそうですけど、大丈夫ですよね?

富田 はい!私も続き物って最初から観ておかなきゃって思うんですけど、「P3theWM」はひとつの舞台で面白いと思って欲しいという気持ちで作っているので、最初から観て欲しいというよりは、この舞台単独でも楽しんでもらいたいですね。なので大丈夫だと思います。(周りのスタッフに向かって)ね!

――3作目を観てから過去の作品をDVDで観ても、過去の作品を事前に観てから3作目を観ても、どっちのパターンでも楽しめますよね。

富田 はい。ぜひDVDをご購入いただけたらと思います(笑)。

――それにしても、「P3theWM」は富田さんのキャリアにおいて、欠かせない存在になってますね。

富田 なくてはならない存在になりました。これからの私を形成していく作品だと思います。

――では、今作の意気込みを聴かせてください。

富田 1作目2作目と、ゆかりはいろんな場面でちょいちょい登場してはいたんですけど、今回で大きな山場を迎えます。キャストが増えることで力も倍増すると思うので、新しいメンバーとの結束力を高めて、1作目より2作目、2作目よりも3作目という風に向上して、みんなにより良いものをお届けします!初めて観る方も絶対に楽しませます!……アサミー!私、どんどんハードル上げてるけど、大丈夫かなー!?

田野 (衝立の向こうから大声で)大丈夫だよー!出来るよー!やるよー!

富田 しかも、私とアサミがけっこう引っ張るんだよー!

田野 (衝立の向こうから大声で)やるよー!

富田 「やるよー」の返事を頂きました(笑)。

――がんがん期待させていただきます!最後にお誘いのお言葉をいただけますか?

富田 シアターGロッソでお待ちしております!

田野 (衝立の向こうから大声で)Gロッソでやるよー!

富田 皆さん、ペルソナ愛を感じにぜひ遊びに来てください!

――ありがとうございます!では、これで終わらせていただきます。……ちなみに、今作のインタビューはこれが最初ですか?

富田 はい!今日からスタートです!「いよいよP3theWMが始まるんだな…!」ってスイッチが入りました!

[取材・文=阿刀 “DA” 大志]
[撮影=渡辺マコト]

公演概要

PERSONA3 the Weird Masquerade 第3弾〜蒼鉛の結晶〜上演決定!!
〜弱くて、脆くて、それでも結びつき、光り輝く奇蹟〜

<公演日程・会場>
2015/6/4(木)〜13(土) シアターGロッソ(東京都)

<キャスト・スタッフ>
<出演>蒼井翔太、阿澄佳奈/
富田麻帆、田野アサミ、大河元気、藤原祐規、田上真里奈、坂口湧久・鈴木知憲、ZAQ/西山丈也、松本祐一/植田圭輔、唐橋 充 他

<演出>キムラ真(ナイスコンプレックス)
<脚本>神楽澤小虎(MAG.net)

その他詳細は、公式サイト及びクリエTwitterで順次発表します!
公式サイト
ツイッターハッシュタグ #P3WM

2015-04-02 14:42

 3月21日(土・祝)、自由劇場(東京都港区・浜松町)においてファミリーミュージカル『魔法をすてたマジョリン』が初日を迎えました。

総公演回数1,000回を超える人気ミュージカル!

 劇団四季のファミリーミュージカルは、半世紀に亘り次々と作品を創作しながら続き、そのレパートリー数も30 を越えます。“生きていく上で大切なこと”がメッセージとして織り込まれるこれら作品は、子供たちの情操教育という見地からも有効との高い評価を得ています。

 今回上演の『魔法をすてたマジョリン』は、好奇心旺盛な魔女の小学生・マジョリンが掟に逆らい、村人たちと力を合わせ、悪い魔女たちと戦う物語です。
この作品には劇団四季のファミリーミュージカルに欠かせない、“生命の尊さ”“友情の素晴らしさ”“勇気をもつことの大切さ”といった、大切なメッセージが込められています。1982年の初演以来、総公演回数1,000回を超える、四季ファミリー作品の中でもとりわけ高い人気を誇る一作です。

 ファミリーミュージカル『魔法をすてたマジョリン』東京公演は、3月21日(土・祝)より4月5日(日)までの上演です。素敵な春休みの思い出に、心温まる感動をもたらす四季ファミリーミュージカルの感動をぜひお楽しみください!

公演概要

劇団四季『魔法をすてたマジョリン』

<公演日程・会場>
<3月分>
2015/3/21(土・祝)〜 自由劇場(浜松町) (東京)
<4月分>
2015/4/1(水)〜4/5(日) 自由劇場(浜松町) (東京)

■劇団四季の特集ページはこちら

2015-03-25 16:14

[写真=江森康之]

 劇団鹿殺し演出家/俳優・菜月チョビ、文化庁新進芸術家海外派遣制度による1年間の留学後、初出演作品。さらに、新進気鋭のシンガーソングライター・石崎ひゅーいの出演も決定。舞台初出演の石崎ひゅーいと菜月チョビ、劇団鹿殺しのメンバーに加え、現役ロックミュージシャンをプレイヤーに迎えて作り上げる、ロックオペラ「彼女の起源」。劇団鹿殺しならではの俳優による楽隊、それに加えた初の生バンド演奏、進化する音楽劇をお見逃しなく。

■劇団鹿殺し ロックオペラ「彼女の起源」
東京公演:6/3(水)〜6/8(月) シブゲキSBGK!! (東京都)
関西公演:6/11(木)〜6/14(日) AI・HALL (兵庫県)

■凱旋LIVE「彼女の起源FINAL」
東京LIVE公演:6/16(火) 渋谷TSUTAYA O-WEST (東京都)
仙台LIVE公演:6/18(木) 仙台darwin (宮城県)
・本編終了後、劇団鹿殺しRJRの特別ライブあり
・ゲストミュージシャン参戦!



【NEW】プロモーションビデオ到着!


今年6月に上演される舞台「彼女の起源」で初のコラボをおこなう劇団鹿殺しと石崎ひゅーい。今回、菜月チョビと石崎ひゅーいに、共演のきっかけや公演への意気込みなどを語ってもらった。

「変な人たちがいるなーって気になってました(笑)。結構見ていたんですよ、いろんなところで。」

――今回、鹿殺しの公演に石崎ひゅーいさんが出演されることになったきっかけを教えてください。

菜月 以前からひゅーい君が歌ってるところをテレビで見たりして、存在は知っていました。直接的なきっかけとしては、共通の知人から「こういうアーティストがいて、パフォーマンンス的にも凄く合いそうだし引き合わせてみたいんだ」とご紹介いただいて、ひゅーい君に鹿殺しの公演を見に来ていただいたり、ひゅーい君のライブ見に行かせていただいたりしたところが大きいですね。

――ひゅーいさんも鹿殺しさんの芝居をご覧になられていたのですね。

ひゅーい 僕は、鹿殺しが吉祥寺とか新宿とか下北とか駅前とか…でやっていたころから、なんか結構見ていたんですよ。変な人たちがいるなーって(笑)。

一同 爆笑

ひゅーい 路上で旗バーン上げて、真っ黒な衣装とかでね…すごい人たちがいるなーって…結構見てたりして。で、普通にお芝居も見にいかせていただいたりして、ファンというか…はい。

――鹿殺しさんのどのような部分に、共感といいますか、インパクトを受けたのでしょう?

ひゅーい 元々アングラ系のお芝居が好きで、小さい頃から母親に見させられてきたり、自分で東京に来てからも見に行ったりとかしていました。その中で鹿殺しを見たときに、ぐじゃぐじゃしてるんだけど、最終的にはバーンて終わる。そういうイメージが勝手にあって…見ててすごく気持ちいいなと思っていました。鹿殺しの舞台ってあんまり長くないんですよね?

菜月 はい。大体二時間以内。

ひゅーい そうそう。それがまじで好きで。オチもなんだか爽快で、ぱーって終わる感じが。

菜月 そうですね。それはそうしたいと思ってやっています。

普通にしてても哀愁がすごい。色んな物語を想像できます。

――今回、チョビさんがひゅーいさんを演出するという立場になりますが、ひゅーいさんならではの役どころをお考えですか?

菜月 そうですね、なんか普通にしてても哀愁がすごいじゃないですか(笑)。やっぱり光と影がある方ってそのものがドラマチックというか…もうそこがあるので楽だなって。陽の部分しか見せていない人は一番難しいんですけど、ひゅーい君をポンとどこかに置いて丸さん(丸尾丸一郎)が台本を書いたらすぐに仕上がると思う(笑)。いろんな物語を想像できる方なので、稽古しながら膨らんでいくのが楽しみですね!

――ひゅーいさんは、今回初の役者となりますが…いかがですか?

ひゅーい こわいです…(笑)。

――結構緊張されていますか?

ひゅーい 絶対みんな怖いですもん。いま優しいだけで…。

菜月 怖くはないよね?うん、怖くはないよ!(笑)

――ちなみに、楽曲の面でひゅーいさんが担当される予定はありますか?

菜月 一曲作ってほしいと考えています。台本がもう少ししっかりできたら読んでもらって、ここの曲はひゅーい君の曲でいきたいっていうのを相談していきたいと思っています。

「もう一回まっさらな気持ちで、次のステップへの糧に。」

――チョビさんにとっては一年半ぶりの役者出演ですよね?心境の変化などはありますか?

菜月 留学するとき、この一年が終わった後に演出をしたいか役者したいか…どうなってるか分からない、立ち止まってどっちも興味を持てなくなるかもしれないなっていう、半分賭けみたいな気持ちで一年休むことを決断しました。なので、今回まっさらな気持ちでやって、本当にこれで自分が役者をしたいかどうか感じられるんじゃないかと思っています。ある意味プレッシャーはないというか、絶対代表作にするぞ!というより、今回はひゅーい君も初めてだし、こんなにしっかり音楽劇でミュージシャンの人と劇団員を混ぜて行うことも初めてなので、のびのびしっかり楽しんでいって、これからも続けたいなと思う公演にできたらいいなと思っています。1年半動いていなかったので体力面だけがものすごく心配です…(笑)。

「ひゅーいさんの音楽が好きな人が、地続きに舞台の楽しさに出会ってもらえれば。」

――ひゅーいさんが鹿殺しの舞台に初めて出演されることで、ひゅーいさんの音楽のファンの方が公演を見にこられたりすると思いますが、ファンの方にはどのように見ていただきたいですか?

ひゅーい なんだろな。多分、今まで見たことのない、やったことのない新しいことですから、僕も想像はできていないんですよ。だから、僕自身も楽しみですし、ファンの方も楽しみにしてくれたらいいなと思います。

菜月 そうですね、ひゅーい君のライブでの語りや歌そのものがドラマチックだと感じているので、きっと音楽を聴いているお客様も物語やお芝居を感じているんじゃないかな?って思います。それがやっと物語になったてのを安心して楽しんでもらえるんじゃないかと。ひゅーい君の音楽が好きだったら、お芝居心を持った人だと思うので、安心して楽しんでもらえんじゃないかな。そこで舞台と出会い、劇場で体験する楽しさに出会ってもらえれば嬉しいなと思います。

――鹿殺しさんの演劇とひゅーいさんの音楽にはシンクロする部分も多いかと思いますが、お互いに作品作りにおいて共感できることはありますか?

ひゅーい 大きく共通するなと思った部分は人の暗い部分のところに焦点を当てるというか、どちらかというと明るい部分よりも焦点を当ててドカン!ってする感じだなって僕は勝手に思っていて。僕も歌の書き方ってどちらかっていうとそういう感じで書いていくので、表現としてちょっと似てるのかなって思っています。

菜月 たしかに!コンプレックスからのスタートだけど、それが暗い方に行っていないってとこも似てるなと思っています。暗い音楽になるのではなく、そこから飛び出したい、飛び出そうとしているエネルギーを有効活用していて、そこに浸って沈んでいくことを推奨していない感じは確かに似ているな、と。

――特設サイトのインタビューでは「今回の会場はお客さんのとの距離が近い」とおっしゃってましたよね。

菜月 そうですね。いつも実際の会場をみて作品を作っていくので、これから「この距離だからこんなお芝居をしよう」と決めていくことになるかと思います。今回は一番後ろの席でもかなり近い劇場を選んでいるので、それをすみずみ楽しめるような作品を作りたいですね。シブゲキは、芝居デビューの人に一番濃ゆいところを楽しんでもらえるから凄くいいんじゃないかなって思います。

「基本的に大船に乗ったつもりで。絶対に面白い確信はあります。」

――最後に意気込みをお願いします。

菜月 一年半ぶりの公演ということで、無事ちゃんと復帰できるかというチャレンジをまずひとつ楽しみにしています。一年半ぶりなので全てがすごく楽しいだろうなと…新しい環境でひゅーい君と共演できるのがすごく楽しみです。すごく小さな会場でやるので早めに席を確保してすごい近くでみていただきたいと思います。音楽とセリフすべてが地続きに繋がるお芝居になっていくと思うので逃さず隅々みてほしいと思います。

ひゅーい 基本的に大船に乗ったつもりで行こうと思っているんですけど、チョビさんにお願いします。チョビさんに乗っかっていきます。
まだ稽古をしていないからそのポイントは分かりませんが、絶対に面白い確信はあります!なんかすごい変なのできそう…(笑)。

[取材・文=イープラスSTAFF]

プロフィール

菜月チョビ

劇団鹿殺し主宰・座付き演出家。福岡県出身。感情の開放と音楽が合致したミュージカルとは異なる音楽劇を確立。2013年10月より、野田秀樹、長塚圭史らが派遣された文化庁新進芸術家海外派遣制度で、カナダにて1年間の留学を経験。次世代を担う演出家として注目を集め、2015年2月には舞台「曇天に笑う」(銀河劇場)を演出する。
また、俳優としても活躍し、劇団鹿殺し本公演においては数多くの作品で主演をつとめる。舞台 新感線プロデュース いのうえ歌舞伎☆號「IZO」(演出 いのうえひでのり/主演 森田剛)には 歌唱参加するなど、歌唱力にも定評がある。今作が帰国後第一作目の出演作品となる。


石崎ひゅーい

本名。シンガー・ソング・ライター。2012年7月にミニ・アルバム『第三惑星交響曲』でメジャー・デビュー。2013年発表の「夜間飛行」が園子温総指揮のドラマ「みんな!エスパーだよ!」エンディングテーマとして注目を集める。
2014年には、4月にミニ・アルバム『だからカーネーションは好きじゃない』、6月にシングル「ピーナッツバター/泣き虫ハッチ」を発表。2015年3月には、アニメ「ハイキュー!!」のジャンプフェスタ上映作品「ハイキュー!!リエーフ見参!」のエンディング・テーマ「星をつかまえて」をデジタル・リリース。4月に東京キネマ倶楽部にてワンマン・ライブを開催するほか、6月には劇団鹿殺し公演「彼女の起源」に客演を果たす。現在、「スペシャアプリ」にて、オリジナル小説「さよなら、東京メリーゴーランド」を配信中(全9話配信予定/毎週木曜更新/配信期間:4月30日まで)。


公演情報

姉と弟を繋いだのは、一本の「カセットテープ」だった。

彼女は、二階の窓から飛び降りた。
生まれてからずっと父親に監禁されてきたその部屋を出て、新しい世界が見たかった。
新たな世界と彼女を繋いでくれたのは、隣の部屋に住む弟の存在。
二人は一枚の壁に隔てられながら、様々なことを教え合い、支え合い、生きてきた。

お互いが言葉を直接交わすことはなかったが、代わりに一本のテープに全てが歌として吹き込まれていた。
まるで往復書簡のように。

そして、その弟がこの世を去ったことを知った朝、彼女は夢を見るように飛び降りた。

―――これは、彼女と弟、それを取り巻く家族、世界の住人たちの物語である。

公演概要

劇団鹿殺し ロックオペラ「彼女の起源」

<公演日程・会場>
東京公演:6/3(水)〜6/8(月) シブゲキSBGK!! (東京都)
関西公演:6/11(木)〜6/14(日) AI・HALL (兵庫県)

凱旋LIVE「彼女の起源FINAL」

<公演日程・会場>
東京LIVE公演:6/16(火) 渋谷TSUTAYA O-WEST (東京都)
仙台LIVE公演:6/18(木) 仙台darwin (宮城県)
・本編終了後、劇団鹿殺しRJRの特別ライブあり
・ゲストミュージシャン参戦!

<キャスト・スタッフ>
作:丸尾丸一郎(劇団鹿殺し)
演出:菜月チョビ
音楽:入交星士×オレノグラフィティ

出演:菜月チョビ、石崎ひゅーい、丸尾丸一郎、オレノグラフィティ、山岸門人、橘 輝、傳田うに 他

<イープラスプレオーダー受付特典!> ※受付は終了しました
イープラス「プレオーダー受付」でチケットをご購入の方にもれなく800円相当の公演ポスターをプレゼント!さらに各回1枚限定でサイン入りポスターを手配します。 公演当日、物販コーナーにチケットの半券をお持ちいただければ、ポスターとの引換を行います。

2015-03-19 18:44

 舞台初共演の宮藤官九郎と麻生久美子がエリート弁護士と財閥令嬢の夫婦役に挑む!
M&Oplaysプロデュース「結びの庭」が2015年3月5日、東京下北沢の本多劇場で開幕。 初日直前の3月4日に行われた公開舞台稽古のレポートと、主演の宮藤官九郎さん・麻生久美子さんと、作・演出の岩松了さんからコメント、そして舞台写真が届きました。

初日前日に行われたゲネプロの様子をレポート!

 前作「水の戯れ」で夫婦間の不安定な愛情を緻密に描写した岩松了が、新作でも再び夫婦を題材に筆を執った。夫に宮藤官九郎、妻に麻生久美子という初の本格共演の2人を配したM&Oplaysプロデュース「結びの庭」が、5日夜に東京・本多劇場で幕を開ける。ほかに安藤玉恵、太賀、そして岩松によるこのサスペンスチックな5人芝居の、初日前日に行われたゲネプロの様子をレポートする。

 財界の大物を父に持つ令嬢・瞳子(麻生)と敏腕弁護士・水島(宮藤)が結婚して1年。5年前、恋人だった男の殺害容疑をかけられた瞳子の裁判を水島が弁護し、無罪を勝ち取ったことが2人のなれそめだった。結婚一周年を迎えてもなお仲睦まじい2人を、屋敷に出入りする家政婦の丸尾(安藤)、水島の秘書・近藤(太賀)は温かく見守っている。そんな2人の前に、5年前の事件の真相を知ると語る謎の男・末次(岩松)が現れ……。

 セレブな若夫婦の住まいらしいセンスのいいリビングと、隣接する緑豊かな庭のみでほぼ展開。序盤は、いまだ新婚気分の抜けない水島夫妻の浮き足立った雰囲気が、作品全体にも漂ってほほえましい。インテリのエリートという普段あまり演じない役に、三つ揃いのスーツにメガネというカッチリした姿で扮する宮藤が新鮮だ。酒の入ったグラスをカチッと合わせた直後に、瞳子をグッと引き寄せてキス、といった場面も。細身のスーツが綺麗にキマるシルエットや全体的な空気感など、宮藤は不思議な色気を漂わせている。

 その宮藤扮する水島に「こわいよ、オレは。いつまでたっても、こうやってあいつのことが好きなままだってことがさ」と言わしめる妻・瞳子を演じる麻生。登場時のパールピンクのドレスがよく似合う可憐な令嬢そのものだが、接する人物によって異なる顔を見せたりする多面的な女性だ。多少意地悪でヒステリックな面もあるが、彼女の芯にあるのも夫への強い愛。自覚的か無自覚かはわからないが、その愛ゆえに男を惑わせていく“ファム・ファタル”な存在と言えるだろう。 約5年前に岩松作品「マレーヒルの幻影」で初舞台を踏んだ麻生が、持ち前のはかなさと包容力の両面を生かし、魅力的に演じている。 この夫婦に翻弄されながらも、“仕える者の矜持”を垣間見せる家政婦役の安藤と秘書役の太賀も、少人数の座組において、各々の役割を的確に務め上げる。特に安藤演じる丸尾は、彼女の目線から語られる物語という意味でも、陰の主役的存在。

 その、それまで現実感たっぷりだったキャラクターの丸尾と、岩松扮する闖入者の末次が、後半のシュールな展開を呼び込む。岩松ワールド独特の眩惑を与えられながらも、最後まで確かに残るのは夫婦の愛。玉虫色のハッピーエンドが、不思議と心地よいのだ。

[取材・文=武田吏都]
[撮影=柴田和彦]

コメントが届きました

宮藤官九郎

 引き受けたとき、ここまで夫婦の愛にあふれた芝居だとは思っていなかったので、台本を読んでドキドキしました。でも恐ろしいものでやっていくうちに慣れてきて、カッコいい役をやるのが当たり前、みたいな(笑)。ずいぶん傲慢だなってときどき思うんですけど。台詞も、最初は声に出して読むのにすごい勇気が必要だったのに、今全然やれてますから。ただ、妻の麻生さんを守らなきゃいけない役なのに、いろいろテキトーで申し訳ない。もうちょっと頼りがいのある人になりたいですね。「カッコつけていい」って言われている珍しい状況で、“カッコいい俺”が見られるのはここだけです(笑)。別に笑うためでもいいので、ぜひ観に来てください。

麻生久美子

 岩松さんの舞台は大好きだったんですけど、私の理解力の問題なのか、難しいことが結構多くて。でも「わからなくても、そのまま受け止めよう」という感じで楽しんでいたんですけど、今回はいつもよりわかりやすいというか、物語に入っていきやすい。もちろん今もわからないところはたくさんあるけど、前より視界がクリアになってすごくうれしいんです。他の役者さんたちも役にぴったり合っていてとても魅力的に見えると思いますし、お芝居していてとても楽しいです。宮藤さんも色っぽくて、つい目で追っちゃいます(笑)。ただ悲しいお話なので、これから何回も演じていく上で、自分がどういう変化していくのかが楽しみでもありますね。

岩松了

 登場人数が少ない分、話がコンパクトになっているし、殺人事件の話なんかも一応あったりするので(笑)、つかみやすい世界観なんじゃないでしょうか。全ての役を、役者さんの印象に基づいて書きました。宮藤くんは前回出てもらったときもわりと二枚目の役だったので、僕がそういう印象を抱いているのかもしれない。麻生さんとは2度目ですが、よりいい女優さんになっているなと。実はすごく達者な人です。好きな役者さんばかりなので、僕も楽しいですよ。以前、烏丸せつこさんに「あんた幸せよ! みんな自分の言うとおりに動くんだから」って言われたんだけど(笑)、この楽しさを思うと、彼女の言ってたこともあながち嘘じゃないなと思いました。

公演概要

M&Oplaysプロデュース 「結びの庭」

<公演日程・会場>
2015/3/5(木)〜3/25(水) 本多劇場 (東京都)
2015/3/27(金)〜3/29(日)  シアター・ドラマシティ (大阪府)
2015/4/2(木)  広島アステールプラザ大ホール (広島県)
2015/4/4(土)〜4/5(日)  ウインクあいち大ホール(愛知県産業労働センター) (愛知県)
2015/4/7(火)  静岡市民文化会館 大ホール (静岡県)
2015/4/12(日)  りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 劇場 (新潟県)

<キャスト・スタッフ>
作・演出:岩松了
出演:宮藤官九郎/麻生久美子/太賀/安藤玉恵/岩松了

2015-03-12 19:24

いよいよ3rdシーズンへと突入したミュージカル『テニスの王子様』が、2月13日TOKYO DOME CITY HALLにてテニミュ史上初となるプレビュー公演からスタートした。19名の新キャストが挑む新たなテニミュ。これが注目の第一戦だ。

シーズンスタートならではのこのフレッシュさ!

『3rdシーズン 青学(せいがく)vs不動峰』は原作の一番始めのエピソード─主人公・越前リョーマが青春学園中等部に入学、名門テニス部へ入部を決める─から物語が描かれていくこともあり、その世界観に慣れ親しんでいるファンはもちろん、新たにサポーターに加わりたいと思っていたテニミュデビューの観客にもぴったりの一作。テニス少年たちの充実した学園生活、最終目標・全国大会へ向けていよいよ始まる地区予選、まだ見ぬ未来へと思いを馳せながら、今この一試合に思いを込める選手たちの懸命な姿。テニミュの基本であり、この先も脈々と続いていく戦いの日々のすべてのベースがここにある。

ステージは冒頭から青学レギュラー陣が勢揃い。程よい緊張も漂いつつ、ラケットを振り歌うのびのびとした表情は、みな新たなスタートを迎えた喜びに満ちていた。彼ら青学のイメージカラーが“青春”を象徴する青と白なら、今回の対戦校・不動峰のイメージカラーは泥にまみれ、汗にまみれてきた“ド根性”を象徴する赤と黒。共に譲れない地区予選決勝で、真正面からぶつかりあっていく鮮やかな色彩。キャストたちはスマートで若々しい青学、地に足のついた重みのある不動峰と、両校各々に自身の個性的なキャラクターを丁寧に演じ、チームメート同士の関係性もしっかりと構築(テニミュのマスコット的存在、ストーリーテラーを担う青学1年トリオの溌剌としたパフォーマンスもキュート!)。コートを懸命に駆け回り、場内を熱くさせていく。

お楽しみのミュージカルナンバーは“これぞテニミュ!”の耳慣れた旧曲と、今回から追加された新曲が程よいバランスで登場。ときには旧曲を新たなアレンジで取り入れている部分もあり、全体を通して3rdシーズンならではの新鮮な感触があった。また、観やすさ重視か作品のボリューム感としては一幕・二幕を通し、若干スリムアップされている印象も。スポ根モノならではの泥臭さは気持ち薄れたが、その分、新たな魅力として学校単位での統制、“チーム男子”としての見せ方・楽しみ方は増しているようにも思えた。

この全5公演のプレビューは、いわば真新しいジャージに腕を通したばかり、まだノリのかかったおろしたての状態だ。カンパニーはこの先実戦を積みながら程よくこなれつつ、まずは一路、台湾・香港へ。そして3月からいよいよ日本での本公演が始まっていく。おそらく本公演に向けてはテニミュ初体験の観客が多くを占める海外公演での新鮮な反応なども柔軟に取り入れながら、さらに3rdらしい表現を目指してのブラッシュアップが続くはず。シーズンのスタートならではのこのフレッシュさを保ちつつ、さらにもう一段階練り込まれた本公演のステージにも大いに期待したい。

本番直前の囲み取材よりメッセージをお届け!

――越前リョーマ役 古田一紀

「稽古場で創り上げたものを毎公演しっかりとお届けしたいです。熱い試合を見せます。どのシーンも見どころですが、個人的にはリョーマと手塚の試合のあとに歌うナンバーがとても好きです」



――手塚国光役 財木琢磨

「これから始まる公演、120%力を出して全力で挑みます。キラキラと個性豊かな青学メンバーをぜひ応援してください。手塚としての見どころは、やっぱりその手塚とリョーマの二人だけの試合ですね」

   



――橘 桔平役 青木空夢

「歴史あるテニミュの舞台に参加できたことに感謝しています。僕ら不動峰は不動峰らしい泥臭さや連帯感をしっかりお伝えしたい。不屈の精神で這い上がってきたドラマを感じてください」

   



――松田 誠(プロデューサー・ネルケプランニング代表取締役)

「見ての通り彼らガッチガチなんですが(笑)、この真面目さ、この青臭さも含めて3rdの始まりだと思っています。今回の長いプロジェクトの中においては、海外公演も彼らにとってのひとつのトライ。このカンパニーがお客様の前に立ち、これから最終的にどうなるのか…。みなさんぜひ温かい目で見守ってください」

[取材・文=横澤由香]

[撮影=平田貴章]

関連リンク

ミュージカル『テニスの王子様』3rdシーズン 青学(せいがく)vs不動峰 お披露目イベント&製作発表レポート[製作発表レポート]

公演概要

ミュージカル『テニスの王子様』
3rdシーズン 青学(せいがく)vs不動峰

<公演日・会場>
2015/2/13(金)〜2/15(日) TOKYO DOME CITY HALL (東京プレビュー)
2015/2/28(土)〜3/1(日) 親子劇場(台湾)
2015/3/7(土)〜3/8(日) 賽馬会総芸館(香港)
2015/3/20(金)〜3/30(月) 日本青年館 大ホール (東京)
2015/4/3(金)〜4/5(日) キャナルシティ劇場 (福岡)
2015/4/11(土)〜4/12(日) 名取市文化会館 大ホール (仙台)
2015/4/16(木)〜4/19(日) 刈谷市総合文化センター 大ホール (愛知)
2015/4/23(木)〜5/3(日・祝) 大阪メルパルクホール (大阪)
2015/5/9(土)〜5/17(日) TOKYO DOME CITY HALL (東京凱旋)

<キャスト・スタッフ>
公式HPでご確認ください。

原作:許斐 剛『テニスの王子様』(集英社 ジャンプ・コミックス刊)
オリジナル演出:上島雪夫
音楽:佐橋俊彦
脚本/作詞:三ツ矢雄二
振付:本山新之助/上島雪夫
演出:富田昌則

2015-03-09 13:41

 鴻上尚史作・演出の書き下ろし新作舞台『ベター・ハーフ』。風間俊介、真野恵里菜、中村 中、片桐 仁という、それぞれにジャンルを軽々と越えて活躍中の魅力的な4人が集まった。1月下旬、鴻上とキャスト4人が顔を揃え、制作発表が行われた。さらに、制作会見終了後には真野と中村に作品への想い、本番への意気込みなどを語ってもらった。

「あなたのことをいとしく思う」と言う感情を、ある意味ドロッドロに、そしてアッケラカンと描きます

 “ベター・ハーフ”とは、まだ一般的な日本人には耳馴染みのない言葉だが「自分が必要とする、もう一人のこと。天国で一つだった魂は、この世に生まれる時に男性と女性に分けられて別々に生まれてくる。だから現世で天国時代のもう片方の自分に出会うと、身も心もぴたりと相性が合うと言われている。その相方を“ベター・ハーフ”と呼ぶ」とのこと。この“ベター・ハーフ”をキーワードに、4人の男女の恋愛模様が描かれていく。

 広告代理店勤務の諏訪(風間)は上司の沖村(片桐)から、ネットで知り合った女性と身代わりデートを依頼され、待ち合わせ場所にいた若い女性、平澤(真野)と出会う。しかし平澤も友人のトランスジェンダー・小早川(中村)の身代わりでそこに来ていたのだった……。

 まずはこの舞台『ベター・ハーフ』の制作発表会見においてのキャスト4名と鴻上のコメントをご紹介。

風間俊介

「今、このメンツが横に並んだだけで必ず面白いものになるという確信が生まれました。確信した理由は、今ここに登壇している人たちがみんな、僕が以前から好きな人たちばかりだからです。なので今回の出演のお話をいただいてキャストと鴻上さんのお名前を聞いた時には、単純にうれしかったですね。自分の好きな人たちと一緒に時間を過ごせるというのは、本当にありがたいので。だけど今日、ここで鴻上さんがしゃべるたびに「へえ、そうなんだ!」「あ、僕らも踊るんだ?」とか、いちいちビックリしているので(笑)。たぶん、稽古が始まったらチャレンジすることがきっとたくさん出てくるんだろうなあと思っているところです」

真野恵里菜

「こういった舞台は私、これまでに経験したことがないんですが、でもせっかくこの4人のメンバーの中に入れたので、なにかしらそこに自分の色を添えられるようにがんばりたいと思います。鴻上さんとは1年ちょっと前にとある作品で共演させていただいているんです。その前から舞台は観に行かせていただいていて、いつかお仕事できたらな、演出してもらえたらなと思っていたのでお声をかけていただいてとにかくうれしかったです。キャストのみなさんもカラフルな方ばかりなのでその中で自分が何色を発することができるのかちょっと不安もありますが、みなさんの力もお借りしながらも自分がすごく成長できるんだろうなとも思っています」

中村 中

「先ほどみなさんから「中村 中って本名なの?」って聞かれて「はい、本名なんです」と答えたところなんですが、でも実は風間さんも真野さんも片桐さんも、鴻上さんもみんな本名だそうで。本名だからということでもないですが、お互いになんの嘘もなくぶつかりあえそうな気がしてとても楽しみです。私は男として生まれて女として生きておりますが、今回はトランスジェンダー役なのでその実体験が近道になるかもしれないと思いつつも、遠回りにもなるのかなとも思っていて。自分が見てきた景色とはきっと差があると思うので。そこは体験したことや先入観にとらわれず、キャストのみなさんや鴻上さんと一緒に役づくりをしていきたいと思っています」

片桐 仁

「さっき中村さんが「嘘がなくぶつかりあえそう」とおっしゃいましたが、本当はこのお芝居のテーマが「嘘」だったりするので、そのあたりをお客さんにもぜひ体感してもらいたいです。みなさんもきっと登場人物の誰かに共感するんだろうと思いますので、その点も稽古でがんばって作っていきたいところです。鴻上尚史さんと言えば演劇界の重鎮で、本は僕も何冊も読ませていただいていて。僕の場合はお笑いとしてスタートしたので演劇の基本を理路整然とは習っていなくて、実はそこがすごくコンプレックスなんです。だから今回は呼んでいただいたことを光栄に思い、緊張感を持って、キャストのみなさんにも助けてもらいながらがんばりたいです!」

鴻上尚史

「昨今は世の中がとてもギスギスしていて不寛容な時代になっているので、人間と人間をつなぐ愛というものをもう一回ちゃんと描きたいなと思ったんです。もちろん描くのは恋愛ですが、恋愛そのものというよりは、恋愛と自分の人生とか、恋愛と仕事とか、結局人間と人間がつながる一番基本的な好きと嫌いという感情を僕たちはどうやってつないでいけばいいのか、ということなんですね。“ベター・ハーフ”という言葉ですが、最近は英語圏ではボーイフレンドとかガールフレンド、ハズバンドとかワイフという言葉の代わりに“ベター・ハーフ”を使うようになってきているんですね。男女問わず、自分のめぐり合うべき存在とどういう風に関係をつないでいったらいいのか。そういうお話を、このメンバーですから単に深刻になるだけではなくて刺激的に楽しく、あでやかに、笑えるような感じで作っていきたい。結局は、人間と人間をつなぐのは「あなたのことをいとしく思う」という感情なので。若い男女と、中年のおじさん、それからトランスジェンダーという、この立場の違う4人がどんなふうにお互いにつながって、別れていくのか。ある意味でドロッドロに、楽しい意味でアッケラカンと描けたらいいなと思っています。踊りも入れたいと思っておりますし、中村さんには歌を歌ってもらうつもりです。愛の深みまでたどりつけたらいいなと思っています、ご期待ください!」

「舞台のお仕事も大好きで、ザ・演劇!という作品にも出てみたかった」(真野)
「音楽活動よりお芝居に出ている時のほうが自分の素に近い気がします」(中村)

 そして、この会見終了直後には真野と中村に独占インタビューを敢行! 作品への想いや意気込みなどをたっぷり語ってもらった。

インタビュー

――まずは先ほどの会見の感想から。とてもいい雰囲気でしたね。

中村ホント、和気あいあいとしていましたねえ。

真野楽しかったですよね。こういう場だといつもすごく緊張するんですけど、みなさんのおかげでリラックスしていられました。

中村風間さんが最初に「みんな会う前から好きな人たちだった、うまくいくと思う」って言ってくれたから。あんなに頼もしいことはないですよ。

真野「座長!ついていきます!!」って感じでした(笑)。

――そもそも出演が決まった時のお気持ちは、どんな感じだったんですか。

中村私は鴻上さんとお会いしたのが3年ほど前の話で。『深呼吸する惑星』(2011)という、第三舞台が一度復活して解散するという公演を観に行った時に、折り込みにワークショップのチラシが入っていたんです。私はそのころ、ちょうどお芝居をちゃんとやりたいと思っていた時期だったんですね。歌手なんですけど、でもせっかくならストレート・プレイもやりたいと思って、それでそのワークショップに応募したんです。

真野 へえー。

中村そこから2年ほどたって今回のオファーが来て。うれしかったですね。そのワークショップが、真野さんも経験されていると思うけど、楽しくて。みんなで遊びながら、自分のこととかも話すんですけど。そういう時の鴻上さんって、先生気質なんですよね。

真野あ、私もそう思いました(笑)。

中村話をしていると、自然と先生に相談をしているような感じになるんです(笑)。それで今回、私が演じる小早川という役はトランスジェンダーになったのも、そういう相談を聞いてもらっていたこともヒントになったのかなって思いました。

真野私は鴻上さんの舞台は『キフシャム国の冒険』(2013)を観させていただいているんですが、ああいう舞台をすごくやりたいと思っていたんです。まったく違う世界の話で、みんなが王子様とかいろいろなキャラクターの衣裳を着て、歌ったり踊ったりするエンターテインメントな舞台。それと、1年ほど前に『THE NEXT GENERATIONパトレイバー』という作品に鴻上さんがゲスト出演された時、共演はしていたんです。その時は私は警察官で鴻上さんが爆弾魔の役だったんですけどね(笑)。

中村鴻上さんをつかまえたんだ(笑)。

真野ふふふ。その時はあまりお話する機会がなかったんですが『キフシャム国〜』を観たことだけは伝えさせていただいて。でももともと私、舞台のお仕事も大好きでいろいろな作品に参加させていただいているんですが、ザ・演劇!という作品にも出てみたいと思っていたんですよ。そんな時に今回のお話を聞いたので、これはやるしかないな!と。お芝居の部分で何かひとつ抜けたいという気持ちもすごく今あるので、このみなさんと一緒ならきっと殻を破ってもらって新しい私を引き出してくれそうだなっていう、ちょっと甘えもあるんですけど(笑)。今回は、本当に運命を感じています。

中村だけど今回は、この4人が好きになったり、憎み合ったり、戦ったりする話ってリリースにも書いてあったんですけど。どんなふうになるんでしょうね。

真野どんな愛が描かれるんでしょう。愛って言われても私自身、何も浮かばないんですけど。でも今まで私が見たことのない愛の形が見られるのかなとも思っています。それこそ私が演じる平澤は、芸能界にデビューするという夢を持ちつつもデリヘルで働いている役柄で。このデリヘル嬢役だという言葉だけが先行して世に出まわってしまっていますが(笑)。だけど本当に描きたいのは、それぞれみんなの愛なので。それは男女間の恋愛だったりもするけど、仕事への愛とか同僚に対する愛とか、いろんな愛があるんだろうなと思っています。でも私、本当は人見知りで大勢の人がいる場でコミュニケーションをとったりすることが苦手なんですよ。でもお芝居をしていくうえでは、いろんな人に出会って、いろんな人を観察して自分の引き出しを作っていかなきゃいけないので。実体験だけでは表現できないものがこれからどんどん増えていくと思うので、自分が壁を作ってしまっていたら変われないじゃないですか。

中村本当に、そうですよねえー。ところで、4人という人数は多いと思いますか。

真野ちょうどいいです(笑)。すぐに顔が見られる距離というか。

中村人間観察は好きですか。

真野 大好きですね!

中村私も!(笑)実は私もちょっと人見知りなところがあるし、でも今回のキャストは全員が人見知りなんじゃないかと思ったの、私。さっきの会見の途中で。そのせいで、お互いの距離感がちょうどいい感じになっている気がします。

真野そう、なんだか空気が合うというか。本当に不思議な感覚でした。

中村初めて4人が揃ったチラシ撮影の時にも、そう感じませんでした?

真野うん、思いました! どこかしらみんな似ている部分があるんですかね。

中村そうなのかなあ。よし、これから探していきましょう!(笑)だけど私、自分のコンサートとか音楽活動をしている時よりも、お芝居に出ている時のほうが自分の素に近い状態でいられるような気がするんですよ。それにこういう舞台のお仕事って、どんな人と出会えるかわからない、出会いが降ってくる感覚があって、それがすごく楽しい。だって真野さん、私のことなんて知らなかったでしょう?(笑)

真野いえいえ、もちろん知ってましたよ!(笑)

中村本当に? でもまさか一緒に仕事をするなんて。

真野それは思っていなかったですねえ。

中村ね。こういうことが起こるから。私だってこんなかわいこちゃんとご一緒できるなんて(笑)。可愛さの秘訣をいろいろ教えてもらわなくちゃ。絶対、ワザを持っていると思うから!

――本番に向けて今、一番楽しみにしていることは。

中村私はね、ダンス!

真野ああ! 私もダンスは楽しみです。

中村人にお見せするのは初めてのことなので、楽しみですね。

真野私も全然得意ではないんですけれども、職業柄ダンスは好きなほうなので。鴻上さんはさっき「風間さんには役者としてのダンスをしてほしい」っておっしゃっていたので、私もアイドルの時とは違う、役者としてのダンスを経験できるのかなと思っているんです。

――では最後に、お客様に向けておふたりからお誘いのメッセージをお願いします。

中村私は実は、天国で一つだった魂が二つに分かれたから地上でしっくりくる人がいて……っていうっていうこと自体は、それほど信じていないんです。

真野 ふうん、そうなんですか?

中村これは私の、中村 中論ですけどね。どの人とでもこちらの構えしだいで“ベター・ハーフ”にはなりうると思うんですよ。パズルのピースみたいに、私の凸にハマってくれる凹じゃないとダメって思いこんでいたら、そんなにバッチリ当てはまる人なんて見つからないでしょ。たとえどんな人でも受け入れられるように、自分自身が柔軟になればいいんです。今回は、きっとそういうことにも気がつける作品になると思うので、さみしいなって思っている人はぜひ遊びに来ていただきたいですよね。口説きたい人を誘ってきてもいいと思う。それこそ『ベター・ハーフ』を一緒に観に行きませんかってSNSで募集して、この舞台を観るために出会うっていうのもオシャレかもしれませんよね!

真野うわあー。この公演にこの日に一緒に行きましょうって? 

中村『ベター・ハーフ』デート、みなさん、いかがでしょうか(笑)。

真野ふふふ、いいですね。私自身はまず、この4人が集まったことでどんな化学変化が起こるのかがものすごく楽しみなんです。たぶん私自身がこの4人の中に入っていなくても、今回のチラシを見た時には絶対興味を持ったと思うし。そしてこれからワークショップや稽古を経て、そこから脚本ができあがるということはきっとこの4人にしかできない『ベター・ハーフ』になるんだと思う。誰一人欠けてもまったく違う作品になるでしょうし。

中村確かにそうですよね。そこのところも楽しみに、ぜひとも劇場にお越しください!

[取材・文=田中里津子]
[撮影=渡辺マコト]

公演概要

「ベター・ハーフ」

<公演日程・会場>
2015/4/3(金)〜4/20(月) 本多劇場 (東京都)
2015/4/25(土)〜4/26(日) サンケイホールブリーゼ (大阪府)
2015/5/3(日・祝)〜5/5(火・祝) よみうり大手町ホール (東京都)

<キャスト・スタッフ>
【作・演出】 鴻上尚史
【出演】 風間俊介 真野恵里菜 中村 中 片桐 仁

2015-02-05 19:54

 喜劇王チャールズ・チャップリンの不朽の名画「ライムライト」が、2015年7月、石丸幹二主演で舞台化されることとなった。世界中の舞台関係者が切望してきたチャップリン映画の舞台化だが、なんと今回、世界初の試みとなる。日本チャップリン協会会長で劇作家・演出家等として幅広く活動する大野裕之が、チャップリンの未発表小説「フットライト」からのエピソードも盛り込み、映画とはまた異なる物語を紡ぎ出す。演出を手がけるのは荻田浩一。チャップリンのファンであり、今回チャップリンの演じたカルヴェロ役に挑戦する石丸に、舞台への意気込みを聞いた。

インタビュー

――かねてからのチャップリン・ファンだとうかがいました。

 人に頂いたか、自分で買い求めたか、とにかくあるときから書庫の中に「チャップリン自伝」があったんですね。その本との出会いをきっかけにチャップリンと向き合うようになり、それから20年以上、事あるごとに彼の映画を観てきました。若いころの喜劇のスタイル、パントマイムのスタイルに憧れましたし、年齢を重ねてからの「ライムライト」のような作品にも心ひかれて。チャップリンと出会う前、出会った後では、自分の中に変革が起きましたね。自伝も、付箋を貼ったり、何度も読み返したりして。スクリーンの中の人だったのが、自伝と出会ったことで、彼の中の非常に人間的なものを感じて、そこに興味をもったのかもしれない。アメリカからイギリスに戻らざるを得なかった出来事など、彼にどういったものをもたらしたんだろうといろいろ考えたり。幸せなことに、2013年、大野裕之さんが作・演出を手がけた音楽劇「スマイル・オブ・チャップリン」に出演することができ、距離があったのが、非常に身近な存在として感じられるようになって。チャップリンのことがますます好きになりました。

――「スマイル・オブ・チャップリン」を拝見して、石丸さんの声でチャップリンの作曲した名曲を聴くことができるのはとても贅沢な経験だと感じました。チャップリンのお孫さんも出演され、日本語でメッセージを語るなど、心に残る舞台でした。

 いろいろな事柄について、チャップリンの一族からよく許可が出たなと思います。その上、お孫さんのチャーリーも出てくださって、貴重な舞台でしたね。彼ももともと俳優ということもあって、心温まるシーンでしたよね。

――それにしても、石丸さんというと貴公子のイメージが非常に強く、喜劇とはすぐには結び付かない印象があったりします。

 スタートが「オペラ座の怪人」、悲劇でしたし、映像に出てもスーツを着てという役柄が多いですからね。劇団時代、「日曜日はダメよ」などの作品でコメディにふれてはいましたが、自分の中でも、コメディはやるものではなく楽しむものという位置付けでした。退団後、「THE 39 STEPS」に出演して、笑われるのではなく、技で笑わせるという方向なら自分にもできるかもしれない、そう思えたことが大きかったですね。それはチャップリンの手法と同じでもある。喜劇においては技がとても重要なんですよね。お茶の間に流れている漫才とも通じる、日本においても存在する文化でもあって。自分なりに向き合っていこうとそのとき感じました。今回の「ライムライト」は、コメディのシーンはありますが、シリアスな作品なので、これまで自分がやってきたことをふくらませていける舞台になると思っています。

――「ライムライト」で演じられるのは、老いて落ちぶれた道化師カルヴェロ役です。

 時代というものから取り残されてしまったコメディアンですよね。今に乗れていないというところは、自分にも大いにあるかもしれないと思うので……。

――何をおっしゃいます!

 いや、感覚のズレという意味では。そのズレを受け止めなくてはならないという意味では、演じることにおいて大いにプラスになる、使える部分だと思うんですよね。カルヴェロは60歳を過ぎて、自分の限界を知り、酒に溺れ、それでも復活しようとするパワーをもっている。そのパワーを、若いバレリーナ、テリーによって磨いてもらい、持ち上げてもらおうとする。人の力を借りて浮上したり、変化していこうとしたりすることって、年齢に関係なくあることだと思うんですよね。そこは表現する上では十分できることだと思いますし。落ちぶれた人しか落ちぶれた役ができないということもないと思うので。自分もいつか引退しなくてはならない時期も来ると思うので、老いた先も想像しつつ、演じていくことができると思っているんです。

――「ライムライト」で一番お好きな場面は?

 一番胸を打つのは、カルヴェロがテリーに、行け、僕から離れていけ、新しい男と一緒に生きていけというところですね。人生においても存在し得る瞬間だと思うので。カルヴェロは彼女の幸せを思って、さまざまなチャンスを与えてきた人ですよね。彼女を磨き上げ、トップスターとしての道を作ってきた。舞台に立つ心構えなんかも教えてきたでしょう。その上で、そう言う。かっこいいなと思うんです。他にも名言がいっぱいあるので、選ぶのが難しいんですが。

――今回の舞台版には、小説「フットライト」からのエピソードも盛り込まれます。

 これは未発表の小説で、読んでいる人はほとんどいないと思います。カルヴェロの過去であるとか、テリーの姉の話であるとか、大野さんがその中からいろいろ入れこみ、長い時間をかけて脚本を練っているので、必ずや映画と違った作品になると思います。

――石丸さんが歌われるシーンもあるとか。

 映画の中ではカルヴェロが舞台で歌うシーンくらいしかないんですが、作中、すばらしいメロディがたくさんあるので、そこに歌詞が入って一つのナンバーとして独立する形になっていくと思います。チャップリンは映画の中のかなりの曲を自分で作曲していて、シンプルながらも心を打つメロディが非常に多いんです。それがお客さんに届けば、彼の作曲能力のすごさもまた伝わっていくでしょうし。ミュージカルでも、劇場を出るとき口ずさめる“お持ち帰りソング”があるかないかで成功かどうか決まるなんて言いますが、今回も、劇場を出るときぜひ口ずさんで、作品を思い出してもらえる、そんな風になったらいいなと思っています。

――それにしても、チャップリンというとチョビ髭で……なんてイメージが強いですが、実は非常に多面的な人物であるということが、お話をうかがっているだけでも伝わってきます。

 チョビ髭は若かりしころの姿ですよね。そこからいろいろな人生を経た彼の姿が、「ライムライト」という作品にはちりばめられていると思います。生きているチャップリンのメッセージがこめられた映画なんじゃないかと思うと、より深く感じられるんですよね。その作品が今回、大野さんの力もあって、世界で初めて舞台化されるわけで。演じるにあたっては、チャップリンのチャップリンらしさはもちろんのこと、人間チャップリンに光を当てることができればと思っています。

――チャップリンの演じたカルヴェロを演じつつ、チャップリンそのものも演じていくという感じでしょうか。

 チャップリンが何を考えてこの作品を作ったのか、あの時代の映画界、演劇界に対して何を思っていたか、そんなことも考えて演じていきたいなと。チャップリンって名前は有名ですが、みんな、よく知っているようで実はよく知らないんじゃないかなと。僕自身もそうでしたし、この作品を通じて興味をもってもらえたらとも思います。彼が物事をどうとらえていたのか、「ライムライト」を通じてきっと伝わってくるところがあると思うんです。

[ 取材・文=藤本真由(舞台評論家) ]
[ 撮影=平田貴章 ]
[ ヘアメイク=高橋貢 ]
[ スタイリング=Shinichi Mikawa ]
[ 衣装協力 ]
バーバリー(バーバリーC.R.室 SANYO SHOKAI)
TEL0120-340-654

公演概要

音楽劇 ライムライト

<公演日・会場>
2015/7/5(日)〜15(水) 日比谷シアタークリエ(東京都)

<キャスト・スタッフ>
原作:チャールズ・チャップリン『ライムライト』
上演台本:大野裕之 演出:荻田浩一

石丸幹二

野々すみ花
良知真次

吉野圭吾
植本 潤
佐藤洋介/舞城のどか
保坂知寿

2015-01-27 15:52

  2013年に初演され、好評を博した「趣味の部屋」。古沢良太が脚本を、行定勲が演出を担当、どんでん返しの連続が驚きを呼ぶこの作品が、中井貴一、戸次重幸、原幹恵、川平慈英、白井晃、オリジナル・キャスト5人が顔を揃えて再演されることとなった。企画段階からプロデューサーとして参加した中井に、再演への意気込みを聞いた。


――初演の企画段階から関わられていますが、そもそもどのような舞台を作りたいとの思いがあったのでしょうか。

 ミステリーをやりたいなと思ったんですよ。それと、オリジナルにこだわりたいなと。日本ではあまり、オリジナルのミステリーのおもしろい舞台ってないじゃないですか。もちろん海外にもいい戯曲はありますが、向こうの人がおもしろい、やりたいと思うような日本発の作品をやって、日本も初めてインターナショナルになったということだと思っているので。ホテルで行われるミステリーツアーじゃないですが、観ている人がどういうこと? と謎解きに参加しているような舞台が作れないかなと思っていたんです。

 そんなある日、再放送のドラマを見ていたら、伏線の打ち方がものすごく巧くて、最後になるほどと思える作品をやっていて。そのホンを書いていたのが、一度一緒に食事をしたことがある古沢さんだった。それで、電話番号を調べて、彼に電話をしたんです。「中井貴一です。ぶしつけですが、少人数のミステリーを舞台のために書いてみることに興味はありますか」と。ご興味があるということだったので、お会いして、おもしろくてわくわくするようなものを書いてください、それ以外に制約はつけません、稽古の初日までに、こんなのやってみますかという感じのものではなく、どうだ! というようなホンをお願いしますとオーダーしました。僕自身は、稽古初日に台本ができてなくて、手探りで作っていくような状態にも慣れてるんです。そして、舞台って絶対にできちゃうところがあるんです、役者が苦労すれば(笑)。ただ、まずは脚本家が産みの苦労を味わってくださいと。考えてみれば、他の4人の出演者はいい迷惑だったかもしれないですよね。稽古前に台本、読みたかったかもしれない(笑)。

――稽古初日には、期待通りの脚本が上がっていた?

 もちろんです。ハードルってね、高ければ高いほど高く飛べるものなんですよ。低めにしたらそれなりのものしかできない。人間は完璧じゃない、だから完璧じゃなくていいやと思った瞬間、クオリティって下がるものでしょう。完璧を目指して初めて、少しクオリティが上がるものだと思うから。

2013年公演より 撮影:引地信彦

 初演のときから、再演を観たいと言われるような作品にしたいという思いもありました。そして、再演にあたっては、古沢さんにホンを変えてもらおうと思っていたんです。それで、「古沢さん、ホン変えたいですか?」と聞いたら、「変えたいです」ということだったので、今変えてもらってます。どこが変わるかはわからないけれども、2月の稽古開始までに上げてもらうということで。役者が同じものをブラッシュアップするにしても限度があると思うんですよね。だったら再演しなくてもいいのかなと僕は思う。根底、基礎を変える、そのことに必死になっていることが、何よりのブラッシュアップになると思うので。前をなぞるような舞台、自分は嫌いだし、お客様も喜ばないと思うから。

――それぞれが趣味に没頭する“趣味の部屋”が作品の舞台ですが、実は作品全体が演劇論になっているという仕掛けもあるところがおもしろい戯曲ですね。

 それが古沢さんに一番望んだところですよね。裏の裏の裏がある作品、見方によって角度が変わって見える作品を書いてほしかったわけですから。ただ、そこはお客様にあまり伝わっていなかったりする箇所だったりもするんですが。
 役者って、理論派と理論派じゃないタイプに分かれると思うんです。そして自分は理論派じゃないと思っていて。何か感覚をぶつけあって、目に見えないものを感じる、存在するということを説明するために理論があると僕は思っているんです。だから、舞台上でやっていることは必ずしも理論にならなくてもいい。そのもとを書いてもらうことが必要だなと、オーダーしたときに考えていて。古沢さんが、自分の世界観の中で、俳優・中井貴一をどのように描いていきたいかが大切だと思ったので。

――それにしても裏の裏がスリリングな作品です。

 どうやって裏切るかが僕たちの商売だと思うんです。こういう役もやるんだというのをやっておいて、あ、それは“らしい”よねという役に戻る、それも裏切りですから。それが一人の俳優の人生だと思っていて。この舞台に関して言えば、ワンシーンの中での裏切りをしていくというのが僕のコンセプトですね。最後にお客様に「ええーっ? どういうこと?」と帰ってもらえたらという。僕は、舞台にしても映画にしても、観た後、食事をしたりお茶をしたりする、そのとき一時間半語ってもらって、そしてその後は忘れて日常に戻ってもらっていいと思っているんです。想像できて、話せて、そして忘れてもらえるものを提供したいなと。一時間だとちょっと短いし、二時間だと長い、だから一時間半(笑)。

――初演メンバーが全員揃いました。

2013年公演より 撮影:引地信彦

 再演のことは一切決めてなかったんですが、やるんだったらそのままの方がいいですしね。初演のとき、観られなかったお客様が多かったので、それだけ言っていただけるならまたやろうということなんです。皆さん舞台に慣れている方ばかりだから、自分の役目は、慣れさせないようにすること(笑)。慣れを見せるくらいならやらない方がいいと思うんで。一番慣れないのが白井さんなんですよね(笑)。僕はこの仕事で、白井晃という人が大好きになりましたね。それまで舞台で観て、どんな役にも入り込んで演じている、すげえなあと思っていた。それが、この作品では、最初の何気ないセリフで必ず噛む、その慣れなさぶりがもう(笑)。役者としても緻密に作られる人なんですけどね。そうは言っても僕も緊張しいなんですよね。僕と白井さん、楽屋が同室で何だかピリピリしてるんですが、他の二人の男性陣の楽屋と全然空気感が違ってね(笑)。

――ちなみに、中井さんご自身はご趣味は?

 それが、ないんだよね。仕事は仕事であって、仕事が趣味ということでもないし。いつも聞かれるから何か趣味をもってみようとも思うんだけど、そういう意識でもつもんじゃないよね、趣味って。無意識のうちに、やっていて楽しいと思うものが趣味であって。だから無理せず、やってくるのを待とうと思いますね。それと、集まって語らうこと、それが趣味だということもまたこの作品の裏導線かなと思いましたね。いろいろひけらかしたり、講釈を垂れたりする、それが楽しいわけで。

――日本だと、観劇が趣味という女性は多いと思いますが、観劇が趣味という男性はなかなか少ないように思います。この「趣味の部屋」は男性の観客にも大いにアピールする作品だと思うのですが、そのあたりはいかがですか。

 日本って、芝居を観る層が圧倒的に限られているところがありますよね。20代でシェイクスピアとかチェーホフとか観たとき、それを理解できる頭のいい人たちはたくさんいるんだろうけれども、自分は、終わった後、おもしろかったと言っていいのか、どう評していいのかなとか思ったわけ。そうすると、次に行くとき、どうしようかなと悩む。この仕事をやっているから観に行くけど、やっていなかったら観に行かなかったかもしれない。おもしろさをどこに見つけていいのかわからなかったというか。それで、25歳くらいで舞台を初めて経験して思ったのは、舞台って自分たちだけで作っているんじゃなくて、お客様と一体になって作っているんだなと。そのことを理解したとき、演劇を観る人口が増えてくれることが芝居をおもしろくする一つの要因なんじゃないかと思ったんですよね。だから、舞台っておもしろかったんですねと言ってもらえるきっかけを作りたい、僕はずっとそう思ってきてるんです。

   今回の作品も、まずはそこから始めたかったという思いがある。わかりやすさとおもしろさ、そして恐怖がミックスされた作品が提供できればいいなと。いずれはものすごく心を打つ文芸作品もやってみたいなと思っているんですが、それにしてもベースにはわかりやすさが欲しい。それが、舞台において自分に与えられた役割かなと思っていて。一回観て舞台を好きになった人たちがいろいろな舞台を観に行くようになれば、演劇界全体が潤うわけだから。その最初の一歩を試してみたい人に観に来ていただきたいですよね。テレビで観たあの人の舞台を観てみたい、それがきっかけであっていいと思うし。昔みたいに、映画屋でござる、演劇でござる、テレビでござるみたいな区分けは、僕はもう古いと思っていて。だからこそ、テレビで脚本を書いている古沢さん、映画監督をしている行定さん、演劇を手がけている白井さん、そして僕と、いろいろなフィールドの人間がミックスして舞台を作ることに意義がある。その舞台がおもしろかったらそれでいいんですから。

   世界に追いつくためには、日本の中で垣根を取り払って盛り上げて、もっとグローバルになっていかないと意味がない。もっと広い視野で見ていくことが大切だと思うんですよね。残念ながら、そういう古い感覚ってまだ歴然とあるけれども。ただ、今までは先輩に引っついてきたのが、やっと今の年齢になって、自分らの時代になって変えることがあるとするならば、いいものは残していくけれども、要らないプライドみたいなものは取り払って、新しく変えていきたい、そう思うんですよね。

[取材・文=藤本真由(舞台評論家)]

[撮影=平田貴章]

公演概要

PARCO PRESENTS『趣味の部屋』

<公演日程・会場>
2015/3/7(土)〜3/29(日) PARCO劇場 (東京都)
4/5(日) 松山市民会館大ホール (愛媛県)
4/6(月) サンポートホール高松 大ホール (香川県)
4/10(金) りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 劇場 (新潟県)
4/12(日) 金沢市文化ホール (石川県)
4/14(火) 福岡市民会館 大ホール (福岡県)
4/16(木)〜4/19(日)森ノ宮ピロティホール(大阪府)
4/23(木) 札幌市民ホール (北海道)
4/25(土) 函館市民会館 大ホール (北海道 4/27(月)電力ホール(宮城県)
4/30(木)アステールプラザ大ホール(広島県))

<キャスト・スタッフ>
脚本:古沢良太
演出:行定勲
出演:中井貴一/戸次重幸/原幹恵/川平慈英/白井晃

2015-01-19 11:35

 華やかなショーが繰り広げられるゲイクラブを舞台に、人間の尊厳や舞台に生きる人々の矜持、さまざまな愛の形が描かれる名作ブロードウェイ・ミュージカル「ラ・カージュ・オ・フォール」。日本初演から30周年となる2015年は、鹿賀丈史&市村正親のコンビでの三度目の上演が決まっている。このたび、30周年キャストお披露目会が開かれたが、会場となった「東京キネマ倶楽部」はかつてグランドキャバレーとして営業していたスポットで、劇中登場するゲイクラブともマッチした雰囲気だ。司会を務めるのは女装パフォーマーのブルボンヌ。「フラッシュを焚くと真島(茂樹)さんのメイクが溶けてしまうから〜」等々、スパイシーなコメントを交えつつ軽快な進行を務める。

 まずは、ゲイクラブの踊子カジェルたちによる「ありのままの私たち」のナンバーの披露。スパンコールの装飾もあでやかな色とりどりの衣装に身を包んで登場のカジェルたちは全員が男性で、濃い化粧もあいまって毒々しい魅力を放つ。1985年の初演から出演、振付も担当しているハンナ役の真島茂樹と、1999年より出演しているシャンタル役の新納慎也が妍を競って火花を散らす小芝居が楽しい。コスチュームを取ると今度は上半身が総スパンのセーラー服といういでたちとなり、華麗なタップダンス。女性顔負けの美脚を見せるカジェルの姿も。この他、プリンシパル・キャスト9名による挨拶、30年を舞台映像と写真で振り返るトークコーナーなどがあり、30周年を祝うべく、真島、新納がこの日参加していた一般客をも含む客席全体に振付を指導、作品のもう一つの名ナンバーである「今この時」を全員で合唱。お祝いのケーキも運び込まれるなど、祝賀ムードいっぱいの会だった。

プリンシパル・キャスト9名の意気込みは下記の通り

鹿賀丈史(クラブ「ラ・カージュ・オ・フォール」経営者ジョルジュ役)
 「2015年は30周年にあたるということで、先輩たちの作り上げてきたものを大切に、大きな笑いと熱い感動をお届けできるよう、いい作品にしたい。しばらく舞台を離れていて、『トーチソング・トリロジー』で復帰したが、その作品を書いたハーベイ・ファイアスティンがこの『ラ・カージュ・オ・フォール』も書いていて、とても才能のある作家だと思う。ゲイの芝居ながら、ゲイのみならず人間が描かれていて、おもしろさの中に家庭というテーマがある。いっちゃん(市村)とはいろいろな作品で共演してきて、まさかこのような作品で夫婦を演じるとは思ってもみなかったが、やっていてそう来るのかとか、とても楽しい。(演者の)年齢層が高いほど魅力が出る作品。お客様が最後には必ず喜んで下さるので、出演できてとてもうれしい」

市村正親(ジョルジュの妻でクラブの看板スター、ザザことアルバン役)
 「皆様ご承知と思いますが、(胃がんの手術より)無事生還しました。現在は(『モーツァルト!』で)お父さん役を演じているが、この作品ではお母さんの役。この作品に参加できて、俳優、いや女優としてこんなにうれしいことはない。最近は(『アナと雪の女王』の主題歌の『Let It Go〜ありのままで〜』により)“ありのまま”がブームだが、こちらが本家本元の“ありのまま”です(と、一幕を締めくくる名ナンバー「ありのままの私」に言及)。(鹿賀)丈史とは42年くらいのつきあいになるが、僕が丈史の回りをちょこちょこハエのようにうろつく役が多く、こんなに見つめ合う役は初めてで、見つめ合っていると、やっぱり老けたなとか、42年の歴史が浮かんでくる。いつもカーテンコールでお客様がぐっと来て下さる作品。この年齢になったからこそできる、大人のためのミュージカル。一生懸命生きてきたことで、2015年の『ラ・カージュ・オ・フォール』もいい感じに迎えられる気がする」

相葉裕樹(ジョルジュの息子ジャン・ミッシェル役)
 「今回、30周年公演に初参加できることが光栄。そのとき自分が生まれていないということが衝撃的で、その重みは計り知れない。周りが大御所の方たちばかりで、プレッシャーで正直めちゃくちゃびびっていますが…。作品の世界観を楽しんで稽古に臨みたい」

愛原実花(ジャン・ミッシェルの恋人アンヌ役)
 「長い間愛され続けてきたミュージカルに、2012年に引き続き参加させていただけてうれしい。精いっぱい頑張ります」

香寿たつき(レストラン経営者ジャクリーヌ役)
 「作品に出演するのは2008年から三度目。市村さんが初めて出演されたときの舞台を観て、すごく感動した作品なので、初めて出演できると聞いたときはとてもうれしかった。自分がちゃんとできているか不安もあるが、さらに素敵なジャクリーヌを演じられるよう、作品を盛り上げるべく頑張っていきたい」

真島茂樹(カジェルのハンナ役)
 「公美ちゃん(森公美子)と一緒に1985年の初演から出ていて、30周年を迎えられることがうれしい。自分の舞踊生活においても非常にすばらしいことだと思う。昨夜3年ぶりに化粧の稽古をしたが、出来栄えはいかがでしょうか(と、拍手を誘う)」

新納慎也(カジェルのシャンタル役)
 「最近では(『アリス・イン・ワンダーランド』で)芋虫の役を演じていますが、子供を殺すゲイとか、気が狂った歯医者とか、自分は変わった役を演じることが多い。そのすべての原点が、20代前半で経験したこの役にある。この作品にすべてを捧げたい。真島さんに、『アンタももうババアよ』と言われたが、ババアの魅力を存分にご堪能ください」

今井清隆(アンヌの父ダンドン議員役)
 「2008年から出演しているが、大好きな作品に参加できることが本当に幸せ。30年以上前、この世界に入ったとき、初めての仕事が真島先生振付のレビューショーで、その真島先生が未だ第一線でバンバン脚上げしていてすごいと思う。女装用のパンプスを新調していただけるということなので、頑張りたい」

森公美子(アンヌの母ダンドン夫人役)
 「1985年にこの作品に初めて出演したときはまだ24歳で、娘のアンヌ役の遥くららさんが自分より4つ年上ということで、どうやったら老けて見えるか、老けメイクに凝っていた。今はもうありのまま(笑)。ダイエットして30キロ落としたが、この作品のラストの見どころのためにはあの太ももが必要なので、戻しました。ハハハハハ(と高笑い)。私は2幕からの出番なのに、女性陣が少ないため影コーラスにも加わっていたりして、実は裏でとても忙しい作品。再演のたび少しずつ変えていくミュージカルが多いが、この作品のように、初演のままの歌と踊りが観られるミュージカルはなかなかない。皆さんに勇気を与えることのできるミュージカル。カジェルたちもいい加減歳をとっているが、年月を重ねたミュージカルがいかにおもしろいか、証明してみせようと思う」

[取材・文=藤本真由(舞台評論家)]

公演概要

「ラ・カージュ・オ・フォール」

<公演日程・会場>
2015/2/6(金)〜2/28(土)  日生劇場 (東京都)
2015/3/6(金)〜3/8(日)  梅田芸術劇場 メインホール (大阪府)

<キャスト・スタッフ>
出演: 鹿賀丈史 市村正親 ほか

演出:山田和也 
作詞・作曲:ジュリー・ハーマン

2015-01-08 14:57

 貧しい家と裕福な家、別々の環境で育てられた双子の兄弟の悲しい運命を描くミュージカル「ブラッドブラザース」。1983年のロンドン・ウエストエンドでの初演以来、世界各国で上演されてきたこの作品が、来年2、3月、ジャニーズWESTの桐山照史、神山智洋主演で新橋演舞場&大阪松竹座にお目見えすることとなり、このたび製作発表が行なわれた。今回、桐山が扮するミッキー役は、日本初演から三演目まで柴田恭兵が演じ、その後坂本昌行も演じている。

製作発表に登場したキャスト9名の意気込みは以下の通り。

製作発表に登場したキャスト9名の意気込みをきいた!

桐山照史(ミッキー役)
「『ブラッドブラザース』は僕が生まれる前から愛されてきた作品。V6の坂本くんもミッキー役を演じたということで、プレッシャーもある。また、今回、ジャニーズ以外の方とお芝居することに緊張もあるが、非常に楽しみ。神山くんは弟的存在で、僕の昔によく似ているし、仕事への姿勢ややり方もすごく似ていて、グループの中では一番かわいい存在。そんな関西人二人の双子としての化学反応が楽しみ。この2、3時間の芝居の中に、家族愛、兄弟愛、恋愛がつまっている。憎しみや嫉妬や喜びといったいろいろな感情をストレートにお客様に感じていただけるよう、そして全スタッフ、キャストからの出すエネルギーが届くよう、一回一回頑張りたい」

 

■神山智洋(エディ役)
「ジャニーズ以外の芝居は初めてなので、わからないことも多いが、勉強しながらやっていきたい。初挑戦となることが多いが、期待、わくわく感があり、皆さんにいろいろ指導していただいて作っていきたいと思う。僕は10歳で芸能の世界に入ったけれども、最初からかわいがって話しかけてくれたのが照史くんで、そのときからずっとお兄ちゃん。芝居も歌も上手くて、グループの中の切り込み隊長的存在。プレッシャーを感じつつも、責任感をもって引っ張っていってくれると思う」

 

■マルシア(ミッキーとエディの母親ジョンストン夫人役)
「今回はセリフと歌が大変多い役。日本語は普通にはしゃべれるが台本となるとぐちゃぐちゃなので、まずは日本語から頑張ります。母親役をしっかり演じていきたい」

 

■昆夏美(ミッキーのガールフレンドのリンダ役、ダブルキャスト)
「いつか出演してみたいと思っていたこの作品に今回関わることができてとてもうれしい。初めての役ということで、期待をもって、深く突きつめていきたい。ダブスキャストのまりゑさんとそれぞれの個性を生かしつつリンダを作り上げていきたい」

 

■まりゑ(ミッキーのガールフレンドのリンダ役、ダブルキャスト)
「幼いときにこの作品を観て、とても心に響き、パンフレットを何度も読んだ記憶がある。今回携わることができて本当に楽しみ。一生懸命頑張ります」

 

■渡辺大輔(ミッキーの兄、悪事をそそのかすサミー役)
「けっこう引っかきまわす役なので、この悪いお兄ちゃん役をどう演じるかで作品がまた変わってくると思う。いろいろなものを皆さんと分かち合っていきたい」

 

■渡辺正(エディを引き取って育てる裕福なライオンズ氏役)
「裕福だが妻とは不仲という設定なので、エディとの関係、妻との関係をちゃんと突きつめ、作品に貢献できるよう頑張りたい」

 

■鈴木ほのか(エディを引き取って育てる裕福なライオンズ夫人役)
「『ブラッドブラザース』はロンドン公演も松竹での公演もすべて拝見しているが、何度観ても終幕には胸つまされて涙があふれてくる。格差広がる今の日本において上演すべき作品だと思う。ジャニーズの皆さんとはたびたび共演してきたが、いよいよ母親役ということで頑張っていきたい」

 

■真琴つばさ(狂言回しのナレーター役)
「家族愛が描かれていて、日本人としても心に通じるものを感じる作品。2003年の公演で同じナレーター役を女性として初めて演じた。ちょうど宝塚を退団した直後で、今後舞台に立てるかどうか考えていたときにお話をいただき、これができなかったら二度と舞台に立てないと思って引き受けた、とても思い出深い作品。桐山くんはすごくしっかりしていて、神山くんはほんわか、そんな二人を、男でも女でもある人間的立場から客観視して演じていきたい。個性豊かなキャストといいチームワークで素敵な作品にできたらと思う」

 

 主演の二人は関西人ということで、質疑応答タイムでは「僕たちもっとしゃべりたいです」と質問を積極的に募るなど、サービス精神旺盛。「(貧乏な役柄を演じる上では)自分はちょっとぽっちゃりなので、ダイエットでどれだけ落とせるか」との桐山の発言を受け、「毎朝ランニングしてるんだよね」と神山が言えば、「(毎朝ランニング)して、これ?」と真琴が鋭いツッコミ。「68キロか69キロある」そうで、女性レポーターの「けっこうありますね」との言葉に、「やかましいわあ」と桐山。はてには最低3キロ減量を真琴と約束、笑いに包まれた会見となった。

[取材・文=藤本真由(舞台評論家)]

公演概要

ミュージカル「ブラッドブラザース」

<公演日程・会場>
2015/2/14(土)〜2/28(土)  新橋演舞場 (東京都)

<出演・キャスト>
出演:桐山照史(ジャニーズWEST)/ 神山智洋(ジャニーズWEST)
マルシア/昆夏美/まりゑ/渡辺大輔/渡辺正/鈴木ほのか/真琴つばさ

作・作曲・作詞:ウィリー・ラッセル
演出:グレン・ウォルフォード

2015-01-06 12:39

 2014年初春、韓国発日本初演ミュージカル「シャーロック ホームズ 〜アンダーソン家の秘密〜」は東京芸術劇場 プレイハウス、サンケイホールブリーゼのほか、福岡、松本、名古屋、仙台、岩手を巡り大盛況となりました。橋本さとし演じる、病的に事件を追究しながらもふと人間味をのぞかせるホームズと、一路真輝演じる凛とした中に茶目っ気のある助手ワトソン。ワトソンが女性設定であるという点でも話題を集めた本作品ですが、この斬新な設定すらナチュラルに感じさせる橋本・一路のテンポの良い掛け合いは、ドラマティックなメロディーとスリルに富んだストーリーと共に、観客の心を掴んだのです。

そして、2015年春、橋本・一路コンビ待望のシーズン2制作がついに決定!

 韓国でミュージカル賞を総なめにしたオリジナルミュージカル『シャーロック ホームズ』、3部作の第2弾『シャーロック ホームズ2 〜ブラッディ・ゲーム〜』が満を持して日本上陸いたします。シーズン1の香りを残しながらも全く違う色彩を放ち、かつスペクタクル感を増したシーズン2は、韓国・ソウルで本年3月に上演されました。現在韓国で上演中のシーズン1(5回目の再演。14年11月〜15年2月のロングラン公演を予定。)の初日に先駆け、10月中旬にソウルにおいて開催された、『シャーロック ホームズ ガラ・コンサート』(日本版シャーロック役の橋本さとしが特別ゲスト出演)は、シーズン1とシーズン2を見事に合体させたコンサートとなり、地元・ソウルにおいても更なる飛躍を印象付けた事は言うまでもなく、その場で発表されたシーズン2の日本バージョン公演決定に、大きな期待が寄せられたのです。
 シーズン2日本版の演出は、シーズン1でも好評を博した板垣恭一、訳詞は森雪之丞が続投し、今回の物語の中心人物となる役どころに、別所哲也、秋元才加、小西遼生・良知真次(Wキャスト)を迎え、最高のエンターテイメントショーをお届けいたします。

ストーリー

 1888年、ロンドン。5人の売春婦が変死体で発見されるというかつてない残虐な殺人事件が起こり、ロンドン警視庁には“切り裂きジャック”を名乗る人物から手紙が届く。
警視庁から依頼され事件捜査に着手したホームズは、目的を果たしきってしまった切り裂きジャックがもう姿を現さないことを予知し、彼をおびき寄せるためにある罠を仕掛けるが・・・。
まるで策に溺れるかのように最大のピンチに陥るホームズ。

恐怖は、この世を救う唯一の手段なんだ。

偉大なる名探偵シャーロックホームズと実在した世紀の殺人鬼“切り裂きジャック”の息詰まる対決が始まる!

主な登場人物

シャーロック・ホームズ  橋本さとし
名探偵。切り裂きジャックからの挑戦に挑む。
ジェーン・ワトソン  一路真輝
ホームズの助手兼女医。ホームズの活躍をまとめる作家業もしている。
レストレード  コング桑田
ロンドン警視庁警部。ホームズの良き理解者で、自分が唯一の相棒だと信じている。
マリア・クララ  秋元才加
切り裂きジャックが現れた後、神の声を伝え奇跡を起こす女性。盲人。

エドガー  小西遼生/良知真次 (Wキャスト)
いつもマリアのそばにいる男。殺人現場にはなぜかいつも彼が…

クライブ・オーウェン  別所哲也
バーミングハム最高の警察。ジャック検挙の為にロンドンに派遣される。

公演概要

『シャーロック ホームズ2 〜ブラッディ・ゲーム〜』

<公演日程・会場>
東京公演 2015年 4月26日(日)〜5月10日(日) 東京芸術劇場 プレイハウス
兵庫公演 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
他、各地公演予定

<キャスト&スタッフ>
演出:板垣恭一  訳詞:森 雪之丞
脚本:キム・ウンジョン 作詞:ノ・ウソン  音楽:チェ・ジョンユン
上演台本:斎藤 栄作  音楽監督:佐藤 史朗

出演
橋本 さとし
一路 真輝
小西 遼生(Wキャスト)
良知 真次(Wキャスト)
秋元 才加
竹下 宏太郎
まりゑ
春風 ひとみ
コング 桑田

別所 哲也

2014-12-17 16:43

 小説「グッド・バイ」は、太宰治(1909年-1948年)の未完の遺作。新聞連載を予定し十三回分まで書いた時点で、自身が玉川上水での入水自殺を遂げ、絶筆となった作品。

 その遺作を来年9月、劇作家・演出家のケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下KERA)が脚本・演出を担当し、7年ぶりに再始動する彼のプロデュース企画「KERA・MAP」の第六回公演『グッドバイ』として舞台化、世田谷パブリックシアター他で上演する。

公演紹介


 小説「グッド・バイ」は、まだ冒頭とも言える部分で絶筆している。妻子を田舎に残し、単身東京に暮らす男、田島周二が主人公。雑誌編集者という体裁の裏で、闇商売でしこたま儲け、はたまた10人もの愛人を抱えているという不埒な男。しかし一転、田舎の妻子を呼び寄せて…という里心に近い気持ちが起こり、女たちと別れようと試みるが…。



 「人間失格」や「斜陽」等の退廃的な作風とはまた一風異なり、文体は軽やかでシニカル、ユーモラスな会話や描写が、その後の物語の展開を大きく期待させる。残念ながら永遠に未完となったこの作品を、絶妙な会話劇の名手と言われるKERAがどのように舞台化するのだろうか。


 主演・田島役の仲村トオルをはじめ、小池栄子、水野美紀、夏帆、門脇麦、町田マリー、緒川たまき、 萩原聖人、池谷のぶえ、野間口徹、山崎一といった実力派強力キャストが勢揃いした。

 知性と不純性を併せ持つ田島という男を、仲村トオルがどのように演ずるか注目だ。

 仲村のKERA作品へ参加は、「黴菌」(2010年)、「夕空はれて 〜よくかきくうきゃく〜」(2014年12月)に続き、舞台では今作品が3作目となる。また来年1月からスタートする、KERA脚本・監督のTVドラマ「怪奇恋愛作戦」の出演も控えるなど、近年、特にこの1年は、KERA主宰の劇団「ナイロン100℃」の劇団員並のハイペースでKERA作品に出演を重ねており、KERAの信頼度が伺える。

 仲村は今回の舞台出演に際し、その信頼関係が伺えるユーモアたっぷりの意気込みコメントを寄せた。(下記参照)。

 また、田島が数々の浮気相手と別れるべく、妻と偽り女性達に会わせていく、絶世の美女だが男のようで口の悪いキヌ子を、数々の舞台で高い評価を受ける小池栄子が演ずる事も楽しみだ。

 さらに女優陣の多彩さにも期待が高まる。美貌、実力、魅力に溢れた女優陣が力強く作品を支える。キャストにはKERA作品の常連俳優が多く、唯一無比となるであろう“太宰治×KERA"の作品世界を、存分に体現してくれるに違いない。

是非、注目してほしい。

〈ケラリーノ・サンドロヴィッチ コメント〉

7年ぶりに自身のプロデュース・ユニットの活動を再開する。「第二期KERA・MAP」の始動である。似た名前のユニットがあるらしいが、きっと偶然に違いない。
2008年までの第一期においても、様々な規模、様々なフィールドで、様々な種類の演劇を不定期に上演してきたこのMAPだが、今後もこの姿勢は変わらない。やりたい時にやりたい種類の舞台をやりたい規模で上演したい。応援よろしくお願いします。
さて、第二期第一弾として、太宰治未完の絶筆「グッド・バイ」を、ナカグロ抜きの「グッドバイ」として舞台化する。「未完」といっても、ほとんど物語の導入しか書かれていない小説だ。太宰にさほど興味のない私だが、どうしてあんなペシミストが、最期にこんな軽くユーモラスな作品に取り組んだのかが、ずっと興味深かった。

導入部のあとは私が書く。「ヘナチョコな色男田島と怪力傲慢な美女キヌ子。そして沢山の田島の愛人」。軽妙酒脱な喜劇には格好の御膳立てと思われ、今回私はこれを、スクリューボールコメディとして成立させようと試みる。どうか御期待頂きたい。

主宰 ケラリーノ・サンドロヴィッチ

〈仲村トオルコメント〉

 「夏はドラマ(『怪奇恋愛作戦』)の撮影、そして今は舞台(『夕空はれて〜よくかきくうきゃく』)の本番中。今年の大半は KERAさんの演出を受けていました。つまり夏以降は、俺、ほぼナイロン?のような…。来年の『グッドバイ』はまだかなり遠い話のような気がしますが、KERAさんに『これでさよなら』と言われないように、千秋楽の幕が降りる前にお客さんからは 『グッドバイと言わないで!』と言われるように頑張ります」


公演概要

KERA・MAP #006
『グッドバイ』

<日程 ・ 会場>
2015年9月 世田谷パブリックシアター
10月 各地公演予定

<キャスト ・ スタッフ>
原作 太宰治
脚本 ・ 演出 ケラリーノ ・ サンドロヴィッチ
仲村トオル 小池栄子 ・ 水野美紀 夏帆 門脇 麦 町田マリー 緒川たまき ・ 萩原聖人 池谷のぶえ 野間口 徹 山崎 一

キューブオフィシャルサイト http://www.cubeinc.co.jp

2014-12-04 12:41


写真:江森康之

いよいよ再始動――。
文化庁新進芸術家海外派遣制度による1年間のカナダ留学を終えた、菜月チョビの帰国後第1作!
劇団鹿殺しが、充電期間を経て1年3ヶ月ぶりの本公演を上演!

東京公演 1/25(日)まで、下北沢・本多劇場で上演中!

チケットリンク

大阪公演

チケットリンク

舞台予告編動画&舞台写真が到着!

下北沢・本多劇場にて絶賛上演中の「ランドスライドワールド」。本番映像を使用した「舞台予告編」が完成しました!臨場感あふれる迫力の映像は必見です!


また、舞台写真も到着!絶賛上演中の舞台をお見逃しなく!









写真:和田咲子

第1弾PV

ストーリー&キャスト新ビジュアルが盛り込まれた「ランドスライドワールド」第一弾PVが到着しました!

菜月チョビ×木村了 特別対談

劇団鹿殺し復活公演「ランドスライドワールド」でチャレンジしたいこと、オファーした理由など、作品と人物に切り込んだ内容になっています。

劇団鹿殺し 一年ぶりの新作公演

劇団鹿殺しは2013年11月、文化庁 新進芸術家海外派遣制度により演出家、菜月チョビのカナダへの派遣が決定したため、一年間の充電期間として本公演を休止しておりました。
本公演休止中は、作家丸尾丸一郎によるプロデュース公演に力を入れ、チケット即日完売となったCocco主演舞台「ジルゼの事情」に始まり、楽団鹿殺し、鳥肌実×森下くるみ×ISOPPによる異色のホラー劇「山犬」、更に、初の池袋サンシャイン劇場進出となるCocco主演舞台「ジルゼの事情」の再演と、新たな試みを続けてきた一年間でした。
そして2015年1月、一年間のカナダ留学から帰国した菜月チョビ演出のもと、ついに劇団鹿殺し 復活公演を下北沢本多劇場にて上演いたします。
丸尾丸一郎 作、菜月チョビ 演出、入交星士×オレノグラフィティ 音楽、そして劇団員総出演による復活公演は本多劇場、ABCホールにて。
どうぞご期待ください。

菜月チョビよりメッセージ

自分の本当の姿とは何だろう。
夢を追う者か、愛を乞う者か、他者を退ける者か。
その矛盾が傷となり、人間を苦しめるのだろう。

閉塞された田舎の一軒の民家で起きた陰惨な事件とは対照的に、
圧縮されたイマジネーションが生み出すどこまでも自由で滑稽なファンタジーが縦横無尽に飛び回る。
人生を積み上げては壊し、岸を登っては滑り落ちる。
劇団鹿殺しの異色作「ベルゼブブ兄弟」を原案に、新たに生み出される新作「ランドスライドワールド」。

世界は小さくて大きくて、近くて遠くて、無意味で、尊い。

過去公演の様子はこちら!



劇団鹿殺し充電前公演「無休電車」舞台予告編


劇団鹿殺し音楽劇「BONE SONGS」


作家・演出家 紹介

丸尾 丸一郎 (作・演出・出演)
1977年5月1日生まれ 大阪府出身。
劇団鹿殺し座付き作家。2010年に書き下ろした戯曲「スーパースター」が第55回岸田國士戯曲賞最終候補にノミネートされ、劇作家としての地位をゆるぎないものに。また、PARCO presents「カフカの『変身』」(主演 森山未來)、映画「モテキ」(大根仁監督/主演 森山未来)、舞台「リンダリンダ」(作・演出 鴻上尚史/主演 松岡充)等に出演、俳優としても注目される一方で、NHKラジオドラマ「無くならへん」の作・演出をつとめるなど、作家としの活動の幅をさらに広げている。2014年1月、作・演出をつとめたOFFICE SHIKA×Cocco「ジルゼの事情」(主演:Cocco)は大きな話題を呼び、僅か8か月という異例のスピードで再演が決定。同年9月にサンシャイン劇場&新神戸オリエンタル劇場で上演され、8,000人を動員する。11月にはNHKラジオドラマ「親愛ならざる者へ」(出演:水野美紀、杉浦太陽、室井滋、平野正人ほか)の作・演出が控えるなど、最も注目を集める劇作家のひとりである。

【主な経歴】
2010年1月 戯曲「スーパースター」が第55回岸田國士戯曲賞最終候補にノミネート
2010年3月 PARCO presents「カフカの『変身』」(主演 森山未來)出演
2011年9月 映画「モテキ」(監督 大根仁/主演 森山未來)出演
2014年1月 OFFICE SHIKA×Cocco「ジルゼの事情」(主演 Cocco)作・演出・出演
2014年8月 OFFICE SHIKA PRODUCE「山犬」(出演 鳥肌実、森下くるみほか)作・演出・出演
2014年9月 OFFICE SHIKA×Cocco「ジルゼの事情」(主演 Cocco) 作・演出・出演

菜月チョビ(演出)
1978年5月3日生まれ 福岡県出身。
劇団鹿殺し座長・座付き演出家。感情の開放と音楽が合致したミュージカルとは異なる音楽劇を確立。2013年10月より、野田秀樹、長塚圭史らが派遣された文化庁新進芸術家海外派遣制度で、カナダにて1年間の留学を経験。次世代を担う演出家として注目を集めている。
また、俳優としても活躍し、劇団鹿殺し本公演においては数多くの作品で主演をつとめる。
主な外部出演作に舞台「A MIDSUMMER NIGHT'S DREAM」(G2プロデュース)、「燻し銀河」(作・演出 松村武)などが挙げられる。
舞台 新感線プロデュース いのうえ歌舞伎☆號「IZO」(演出 いのうえひでのり/主演 森田剛)には歌唱参加するなど、歌唱力にも定評がある。
「悲劇喜劇」、「シアターガイド」、「カンフェティ」などコラム連載多数。
2012年度ENBUゼミ演劇コース卒業公演の講師を担当するなど、後進の教育にもつとめる。
今作が帰国後第一作目の演出作品となる。

【主な活動】
2008年 新感線プロデュースいのうえ歌舞伎☆號「IZO」歌唱参加
2008年 「燻し銀河」(作・演出 松村武)出演
2008年 G2プロデュース「A Midsummer Night's Dream〜THEじゃなくてAなのが素敵〜」出演
2010年 劇団鹿殺し「スーパースター」演出(第55回岸田國士戯曲賞最終候補ノミネート)
2012年 ENBUゼミ演劇コース担当


公演概要

劇団鹿殺し復活公演「ランドスライドワールド」

<日程・会場>
■東京公演
2015/1/11(日)〜25(日) 本多劇場 (東京都)

■大阪公演
2015/1/29(木)〜2/1(日) ABCホール (大阪府)

<キャスト・スタッフ>
【作】丸尾丸一郎
【演出】菜月チョビ
【音楽】入交星士×オレノグラフィティ
【出演者】
丸尾丸一郎/オレノグラフィティ/山岸門人/橘輝/傳田うに/円山チカ/坂本けこ美/鷺沼恵美子/浅野康之/近藤茶/峰ゆとり/有田杏子
浦上祐輔/木村綺那/清川果林/寺戸真里奈/中島雄太/松尾珠花/妻鹿益己/安井直美
木村了/今奈良孝行/美津乃あわ

<アフタートークイベント>
「ランドスライドワールド」東京公演で以下のステージにて終演後に、アフタートークイベントを開催!

・1/12(月祝)19:00 出演:古屋兎丸(漫画家)、平沼紀久(俳優)、木村了、オレノグラフィティ
・1/14(水)19:00 出演:美津乃あわ、菜月チョビ
・1/15(木)19:00 出演:鳥肌実(芸人)、丸尾丸一郎、オレノグラフィティ
・1/20(火)19:00 出演:粟根まこと(俳優)、山岸門人、傳田うに
・1/21(水)19:00 出演:石崎ひゅーい(ミュージシャン)、丸尾丸一郎
・1/22(木)19:00 出演:峯田和伸(ミュージシャン)、丸尾丸一郎

特別ゲストを迎え、丸尾丸一郎、菜月チョビら劇団員との対談形式にてトークイベントを行います。
ここでしか聞けない貴重な制作裏話や出演者の素顔についてなど、どのようなトークが飛び出すか是非ご期待ください。


東京公演

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大阪公演

チケットリンク

<イープラス先着先行受付特典!>
イープラス「先着先行受付」でチケットをお申し込みの方に、オリジナルステッカーを1枚プレゼント!
公演当日、物販コーナーにチケットの半券をお持ちいただければ、ステッカーとの引換を行います。


2014-10-31 15:53

 ゲイ・クラブの経営者ジョルジュと、看板スターのザザことアルバンはおしどりゲイ・カップル。そんな二人の最愛の息子ジャンが保守的な家庭の娘アンヌと結婚しようとしたことから始まる大騒動を、豪華な音楽にのせて贈る、笑いあり涙ありのミュージカル「ラ・カージュ・オ・フォール」。日本初演30周年を迎える2015年、鹿賀丈史のジョルジュ、市村正親のアルバンのゴールデン・カップルが再び戻ってくる。鹿賀に作品への意気込みを聞いた。

男夫婦二人の愛…作品への意気込み

――作品は2015年で日本初演30周年を迎えます。

  いろいろな方がやり継いでこられた30年ですよね。それだけ名作、よくできている作品ということだと思います。色あせない魅力があるんですよね。ゲイの世界を描いていますが、人間としての思いやりや愛がいっぱい詰まっていて、何よりおもしろい。おもしろいのに飽きないということは、しっかりしたものが基本にあるということだから。前回演じたときも、若い女性が観に来られて、ジョルジュとザザの愛の姿に涙してくださって。ゲイの世界をおもしろおかしく観るだけではなく、人間愛の部分をしっかり観てくださっているところに、非常にやりがいのある仕事だと感じました。親子の愛、息子の恋愛など、いろいろな愛の形が詰まっていて、非常にバランスよくできている作品だと思います。ザザは花形スターで、僕が演じるジョルジュは裏方、支える人間で。ケンカもするけれども、ジョルジュはザザのわがままも聞いてあげられるし、二人の相性がとてもいいんでしょうね。

――そんなカップルを市村さんと演じられます。
 いっちゃんとはお芝居上、こうしよう、ああしようというのがなくてもすっとできるところがあるんですが、今回は恋愛、夫婦関係ですからね。舞台でちょっと見つめ合ったりなんかすると、普通とは違って、なんかお互い、ちょっと老けたねえ、みたいなところがあったりして(笑)。そういうところは、つきあいが長いだけに、他の役者さん相手とは違うところかもしれませんね。こういう作品なんで、自分たちもまず楽しむということが大事ですし、気心の知れたいっちゃんと一緒ですから、その楽しさはすごくあって、それがお客様に伝わればいいなと思いますね。
 僕はこの作品に出るのは三度目になりますが、不思議なもので、年齢を重ねて、落ち着いた芝居、貫録のある芝居になるということもあれば、逆のパターン、芝居が若返るということもあって、今回はそんな感じになるんじゃないかなとも思っていて。実年齢を重ねることで、逆に若い芝居に挑戦してみるというか。役者と役とが同時に年齢を重ねていくのもおもしろいですが、そのへんのバランスが崩れるというのもまたおもしろいんじゃないかと。お芝居でも歌でも、若いころは簡単にできちゃうことでも、年齢を重ねてくると何度も稽古をしないとできなくなるということがあるんですよ。それは別に悪いことじゃないんですよね。稽古量はどうしたって増やさなくてはいけないけれども、それだけ味があるものが生まれ出てきたりするから。

――明るく楽しい作品において、ゲイの男性を尊厳をもって演じる難しさはいかがですか。
  深刻なゲイの話は多いですが、明るくゲイを演じられる場はなかなかないので、役者としては非常に興味深いんです。人間としての繊細さと言いますか、心遣いといったものは、ゲイの世界の方が色濃く表現できると思うんですね。そのあたりが愛の深さに結びついていくわけで、普通の男性とは違うニュアンスで人間愛を表現できるところがおもしろいですね。僕は前に、作品の脚本を手がけたハーベイ・ファイアスティンの自伝的ストレートプレイ「トーチソング・トリロジー」に出演していて、そのことも、この作品に取り組む上で大きな助けになっていますね。「トーチソング・トリロジー」はゲイの差別問題を深刻にストレートに扱っている作品ですが、「ラ・カージュ・オ・フォール」の方はその問題をわかりやすく、それでいて楽しく提示しているところがあって。ファイアスティンは劇作家でありながら自分自身も演じる人で、俳優としても非常に優れた才能をもった人なんです。そんな人の書いた二作品に出られるということは、役者として大きな財産になっているという気がしますね。僕は「ジーザス・クライスト=スーパースター」でデビューして、劇団を辞めて7年くらい舞台に立たなかったのが、その後「トーチソング・トリロジー」や「レ・ミゼラブル」に出ることになって、役者としていい年代でいい作品に出会ってきたなと。いい作品はやはり、役者を成長させますからね。舞台俳優として非常にラッキーだったなと思っています。

[取材・文=藤本 真由(舞台評論家)]
[撮影=平田 貴章]

公演概要

ミュージカル「ラ・カージュ・オ・フォール」


<公演日程・会場>
2015/2/6(金)〜2/28(土)  日生劇場 (東京都)
2015/3/6(金)〜3/8(日) 梅田芸術劇場 メインホール (大阪府)

<キャスト&スタッフ>
出演:鹿賀丈史 市村正親 ほか
演出:山田和也 
作詞・作曲:ジュリー・ハーマン

2014-10-24 13:00

 フランク・ワイルドホーン音楽、鈴木裕美演出、安蘭けい・濱田めぐみ・渡辺美里ら出演で2012年に初演された『アリス・イン・ワンダーランド』が、この11月に再演される。ルイス・キャロルの童話「不思議の国のアリス」を下敷きに、舞台を現代のニューヨークに置き換え、仕事にも家庭にも行き詰まった作家アリスの苦悩と成長を描く“最高のハッピーファンタジーミュージカル”だ。9月9日、都内で行われた製作発表に鈴木と扮装姿のキャスト9名が登場し、意気込みを語るとともにミュージカルナンバーを披露した。

パワーアップする“ミニ紅白歌合戦”

 まずは鈴木が、「一人ずつ…というか一匹ずつが出てくる度に歌い踊る、“ミニ紅白歌合戦”みたいにしたいと初演の時から言っていた。そこが好評をいただいたので、今回はパワーアップしてお目にかけたい」と作品のコンセプトを説明。続いて、2年前に誰もが共感せずにいられない等身大のアリス像を描き出した安蘭が、「シリアスな内容だが、ワイルドホーンのパンチのある音楽、9人の個性的な振付家、何より鈴木裕美さんの緻密で隙のない演出の力でまた素晴らしいミュージカルになると思う」と、盤石の布陣への信頼感を覗かせる。

 前回、帽子屋という悪役を生き生きと演じて新境地を見せた濱田は「この作品で唯一のワル役。今回はもっと意地悪く、艶めかしく演じたい」、初ミュージカルながらさすがの歌声と存在感で圧倒したハートの女王役の渡辺は「めくるめくストーリー展開で、息継ぎする間もないシーンもあればぐっと引き込まれるところも。そんな『アリス』の世界をさらに深く楽しんでいただけるよう努めたい」と、さらなる進化を約束。同じく続投となるジャック/白のナイト役の石川禅は「宝塚ばりの大階段があるので、体力温存に励み、芝居は二の次で…」と話して笑わせ、モリス役の松原剛志は「初演では後半から劇場がひとつになっているのを感じた。今回は初日からお客様を巻き込んでいきたい」と意気込んだ。

 一方、芋虫役の新納慎也、ウサギ役の平方元基、クロエ役の唯月ふうか、エル・ガト(猫)役の小野田龍之介は今回が初参加。新納は「ポスター撮りの時に『もっと芋虫っぽく』と言われたが、『芋虫っぽく!?』と(笑)。なんとか皆さんの思う芋虫っぽさに近づいていけたら」、平方は「今日扮装することを昨日聞いて、どういうテンションでいたらいいのか分からず、冷蔵庫を開けたらジンジンのジュースがあったので飲みました(笑)」と、ともに人間でない役への挑戦を楽しんでいる様子。唯月は「自分らしく演じられたらと思います!」と初々しく語り、小野田は「エル・ガトはチャラい猫らしく、周りの人に僕がやると言うとピッタリだと言われる。チャラチャラでいきます!」と宣言して喝采を浴びていた。

 歌唱披露では、石川による《君のヒーロー》と、安蘭による《今日やりたいこと》の2曲が披露された。いかにもワイルドホーンらしい耳心地の良さもさることながら、何より印象的なのは、石川と安蘭のなかに曲が、役が“入っている”ことだ。観客の前で何度も歌った経験に裏打ちされたこの自在さは、やはり再演ならではだろう。初演の成功がなければ実現し得ない再演においては、作品の価値というのはそもそも保証されているようなもの。その上メインキャストが続投となれば、より練られたパフォーマンスが期待できる。そのことがはっきり実感できる歌唱披露となった。

[取材・文=町田 麻子]

公演概要

ミュージカル『アリス・イン・ワンダーランド』

<日程・会場>
2014/11/9(日)〜11/30(日) 青山劇場 (東京都)
2014/12/5(金)〜12/7(日) 梅田芸術劇場 メインホール (大阪府)
2014/12/19(金)〜12/20(土) 中日劇場 (愛知県)

<出演・キャスト>

出演: 安蘭けい/濱田めぐみ/平方元基/唯月ふうか/松原剛志/小野田龍之介/新納慎也/石川禅/渡辺美里 ほか
演出:鈴木裕美

2014-09-25 11:36

 今年5月、宝塚歌劇団を卒業した前花組トップスター蘭寿とむ。退団後女優として初めて挑む舞台「ifi(イフアイ)」の製作発表が、このたび都内で行われた。出席は、蘭寿、韓国のアイドル・グループSS501のメンバーであるパク・ジョンミン、ミュージカルを中心に活動するジュリアン、ヴォーカル・グループLE VELVETSの黒川拓哉、世界的スターのツアーに参加して踊ってきたケント・モリ、そして演出を担当する小林香。会場前方には一般客も着席し、出席者が登場するとそれぞれにかけ声がかかるなど、ファンイベントのような雰囲気だ。


 まずは、出演者の一人で今回振付を担当するダンサー、ケント・モリが、メカニカルな動きの中にエネルギーを感じさせるダンス・パフォーマンスを披露。続いては、蘭寿、パク・ジョンミン、ジュリアン、黒川による「メビウスの輪」の歌唱パフォーマンス。白いパンツルックで登場した蘭寿は、男役から女性の歌唱へと移行中であることを感じさせる。黒川の豊かな声が印象的だ。



 演出の小林によれば、この作品は、もしあのとき人生で違う選択をしていたら、違う扉を開けていたら、現れたであろう異なる人生を、AパターンとBパターン、二つのバージョンでダンスと歌によって表現する舞台で、ダンス・ミュージカルともダンス・エンタテインメントとも「何と表現していいかわからない世界」。見どころとしては、「蘭寿さんの退団一発目の作品であり、素敵な男性陣に囲まれて見せるあんな顔やこんな顔を観てほしい」とのこと。蘭寿が演じるのは占いに依存した女性だが、その占い師を演じるのが、「オーラから当て書きした」というケント・モリとなる。出席者の他、バレエ畑出身のラスタ・トーマス、コンテンポラリー・ダンス・カンパニー「H・アール・カオス」の白河直子、日本人男性ダンサーとしてシルク・ドゥ・ソレイユに初参加を果たした辻本知彦、NYのストリート・ダンサー、ストーリーボードPらがダンサーとして参加。振付も、ケント・モリの他、安寿ミラ、SHUN、ティム・ジャクソン、エイドリアン・カンターナの5名が担当するなど、稽古場でも多種多様なダンス言語が飛び交っているであろうことが感じられる。「今までいろいろな作品をやってきたが、多国籍軍で、表現のしようがない作品。今まさに濁流に飲み込まれている最中だが、世界で闘ってきた一流のダンサーたちが個性を発揮しつつ、一つになって物語を語る、いかにしてバラバラのものが一つになっていくかを実現したい」と語った。



 蘭寿は、「退団後初のステージで、豪華なキャストの皆さんに囲まれ、表現できる場を与えていただけたことに感謝しています。音楽も美しい楽曲がちりばめられているし、映像やプロジェクション・マッピングなど新しい試みもあり、私自身楽しみ。世界的ダンサーの皆さんとの稽古場は毎日刺激的で、経験したことのない感覚。女優としてのスタートですが、まずは鏡を見て自分に慣れ、ファンの皆さんにも見慣れていただき、作品にどっぷり入っていただけたら。退団してすぐはどんなことをやっていきたいかわからなかったけれども、今回の作品に出会い、ヴィジョンが見えてきたという手応えがある。歌も男役発声でないところでトレーニングして、今の方が自然に声を出せる。お芝居も、男役としては、相手から流れてきたものを包んであげたいと思ってやっていたのが、今回ジュリアンとお芝居をして、こんなにリアルで上手なんだと衝撃を受け、お芝居ってこんなに楽しいんだと思えた。欲張りに全部やっていきたい」と抱負を述べた。



 パク・ジョンミンは、「久しぶりのミュージカルなのでドキドキ緊張しています。立派な方々と共演できてありがとうという思い。一つのストーリーを語るという演出家の思いを信じてやっています。セリフのイントネーションが難しいので、他の方と顔を合わせるたび、挨拶がわりにセリフ合わせをしてもらっている」と、日本語で思いを語った。

 日本で三度目のミュージカル出演となるジュリアンは、「スーパースターたちの中で光栄。今回は歌と芝居に集中し、物語を伝えていきたい」とのこと。



 黒川は今回がミュージカル初挑戦で、「セリフもお芝居も初めて。新鮮で充実していて、稽古がいつまでも続けばいいなと思っています。(小林)香さんの創造する『ifi』の世界を歌で表現したい」と、魅力的な声で語った。



 「蘭寿さんの退団公演『TAKARAZUKA ∞ 夢眩』の振付を担当し、百周年を迎えた宝塚に初めて関わって、こんなに素敵な人たちが日本にいたのかと、宝塚と蘭寿さんの大ファンになった。そのときはまさか同じ舞台に立つとは思っていなかったが、今回の話が来たので二つ返事でやることにした。今回の出演者たちは、ダンスのスタイルもそれぞれ違い、異種格闘技のよう。地球規模でいろいろなものがまじりあっている」と話すのはケント・モリ。蘭寿のダンサーとしての魅力については、「とにかく『素敵』という言葉にすべて集約される。舞台上の蘭寿さんもかっこよくて素敵だと思うし、その裏側、作り上げる過程においても、それをしのぐほど素敵。とにかく素敵を持っている人。振付的には、さまざまな振付家の方たちの中でいいバランスを見つけ、僕の担当のところでは僕のスタイルをフィーチャーして、新しいチャレンジをしてもらおうと思っている」とのこと。それを受けて蘭寿は、「ケントさんの振り付けは、足のスムーズな動きなど独特なものがあり、やっていてすごく難しかった。今回もさらにハードルが上がると思うので、いろいろ教えていただいて取り組んでいきたい」と語っていた。

[取材・文=藤本真由(舞台評論家)]
[撮影=平田 貴章]

公演概要

蘭寿とむ『ifi (イフアイ)』

<公演日程・会場>
2014/9/5(金)〜9/21(日) 青山劇場 (東京都)
2014/9/26(金)〜9/28(日) 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ (大阪府)

<キャスト&スタッフ>
作・演出:小林香
音楽:スコット・アラン、扇谷研人
出演:蘭寿とむ/パク・ジョンミン/ジュリアン(Aバージョンのみ出演)/黒川拓哉[LE VELVETS](Bバージョンのみ出演)/ラスタ・トーマス/白河直子[H・アール・カオス]/辻本知彦/ストーリーボードP/ケント・モリ/他


>退団後初の公演に挑む蘭寿とむへインタビュー記事はこちら
2014-08-27 19:30

 マシュー・ボーンの「白鳥の湖」の名演で知られる英国のバレエ・ダンサー、アダム・クーパー。その後ミュージカルへと活動の場を広げ、「オン・ユア・トウズ」や「ガイズ・アンド・ドールズ」などの作品で魅力を発揮してきた彼の主演作「雨に唄えば」の来日公演が決定した。サイレント映画からトーキーへの過渡期にあるハリウッドを舞台にした往年の傑作ミュージカル映画が原作で、日本でも宝塚歌劇などでたびたび上演されてきた人気作だ。あまりに有名な表題曲を雨に濡れながら歌い踊るあの名シーンを、劇場で、生で、アダム・クーパーで目撃する貴重なチャンスだ。

インタビュー

――ジーン・ケリー主演の有名なミュージカル映画が原作です。
 僕自身、あの映画は大好きなんだ。主人公ドン・ロックウッドを演じたジーン・ケリーは、数々のミュージカル映画作りにおいて革新的な働きをした人物だと思う。映画では、華麗なダンス・シークエンスに非常に感銘を受けたな。とりわけ、「Moses Supposes」のナンバーで、実に複雑なタップを踏みながら、彼とコズモ役のドナルド・オコナーとがかけあいで見せる化学反応のすばらしさが心に残っていて。舞台版に出演をと言われたとき、そういった化学反応をぜひ劇場で再現したいなと思った。今回の来日公演でコズモを演じるステファン・アネッリは、そういうすばらしい化学反応が生み出せる相手なんだ。
 とはいえ、僕たちが目指したのは、映画をそのまま舞台で再現することではなく、ゼロからまた新しい作品を作り上げていくこと。だから、出演が決まってからは、映画を観返してジーン・ケリーの役作りを踏襲するということはせず、台本を読んで、どう演じるか、どう役作りをしていくか、自分自身で決めていった。もちろん、映画版にオマージュを捧げる場面だってあるよ。あの有名な「雨に唄えば」の場面は、街灯の配置からして同じようになっているし、「ブロードウェイ・メロディ」のナンバーでは、僕もジーン・ケリーと似た感じのダサい眼鏡と帽子姿で登場するんだ(笑)。
 振付も映画版とは違っていて。今回の舞台を担当しているアンドリュー・ライトの振付の特徴は、他の振付家よりステップが多くて複雑なこと。ちょっとでも休んでいるみたいに見えたら、彼が即座に何かしら足してくるんだよ(笑)。サイレント映画からトーキーへと移り変わる時期の話だから、1920年代という時代設定は変えられないけれども、作品全体としては、よりモダンな雰囲気で演出されていて。振付的にも、1920年代の雰囲気をちりばめつつも、さらにスピーディーに、今の感覚に合うようになっている。映画版にはない新しいナンバーもいくつか加わっていて、劇場版ならではの見どころもたっぷりだと思うよ。

――私の母がこの舞台のロンドン・ウエストエンド公演を前方席で観て、「とっても楽しい舞台だった! 『雨に唄えば』の場面で水をかけられたの!」と非常に喜んでおり、今回の日本公演も大変楽しみにしているのですが、観客を濡らそうと狙ってやっていたりということはあるのでしょうか(笑)。
 イエス! フフ、もちろんわざとだよ(笑)。それにはちゃんとした理由があってね。普通舞台に立つ場合、客席との間に第四の壁を設定して演じているみたいな感じなんだ。でも、「雨に唄えば」のナンバーは、その壁を取っ払って、そうやってわざと水をかけたりして(笑)、客席と交流することができるすばらしい場面だと思うんだ。前の方のお客さんは水がかかってうれしそうだし、二階席のお客さんは、前の方のお客さんがそうやって水をかけられて喜んでいるのを観るのがまた楽しそうなんだよね。客席が一体となって心から楽しめるシーンだと思うんだ。

 ただ、雨の中で歌い踊る上ではもちろん大変なこともあるよ。滑らないように特別な床を使用していたり、あと、冬なんか濡れると寒くてね(笑)。バクテリアがわかないように塩素で消毒されているから、あの水を浴びると肌荒れもひどくて。手が乾燥しすぎて血だらけになるわ、手の見た目年齢が20歳は老けたようにしわしわになるわ…。ハンドクリームは欠かせないね(笑)。

――アダムさんはたびたび来日し、マシュー・ボーンの「白鳥の湖」などの舞台でバレエ・ダンサーとして活躍されてきました。現在ではミュージカルの舞台でめざましい活躍をされていますが、華麗なる転身についておうかがいできますか。
 現在のキャリアについては、ステップを踏んでこうなってきたという感じなんだ。僕が英国のロイヤル・バレエ団を退団したのは1997年のこと。あの「白鳥の湖」に出演した後のことだったんだけれども、あの舞台によって、バレエ団に所属していることでいろいろと制限があること、自分の中にはもっと広いフィールドに対する興味があると気づかされたということがあって。そもそもダンスと出会ったのはタップを始めたからだったし、子供のころから合唱団で歌ってきていたんだよね。だから、辞めたときにエージェントに言ったのは、自分はこれからは歌う仕事がしたいということだった。そしたら、半年で「オン・ユア・トウズ」の主演の話が来て、日本でも上演することができたんだ。あの来日公演から十年近く経つけれども、その後、歌のレッスンはじっくり続けているから、声が強くなってきて、歌唱力にもずいぶん自信をもてるようになってきたよ。
 バレエと異なるミュージカルの魅力は、そうだな、声を出してしゃべったり歌ったりできること(笑)。これは極めて個人的な話なんだけれども、僕自身はバレエを踊っていた時代、何だかプレッシャーを感じすぎていて。「ロミオとジュリエット」のロミオや「うたかたの恋」のルドルフのように、大好きな作品の大好きなドラマティックな役柄を踊っていたときでも、プレッシャーが常につきまとっていた。何だか、システム全体に非常に制約が多く、視野が狭められているように感じられて。作品、役柄、そして昇進の機会をめぐって、常に周りと競争しているように思えた。たとえ友達でもやっぱり競争相手なんだよね。だから、舞台に集中して自分の能力を限界まで発揮したいと思っても、ちょっとそれが難しいところがあって。ミュージカルに進出してからは、より自由に、リラックスして舞台を務められるようになったと思う。






――2006年には「ガイズ・アンド・ドールズ」のウエストエンド公演で主人公スカイ・マスターソンを務め、ネイサン・デトロイト役のパトリック・スウェイジさんと共演されました。甘い歌声や粋な帽子のかぶりこなしなど、とても印象に残っています。それにしても、「オン・ユア・トウズ」といい、「ガイズ・アンド・ドールズ」といい、「雨に唄えば」といい、古きよきミュージカル作品で魅力を発揮されていますが、出演される上で何かこのあたりの作品を特に選んでいたりということはあるのでしょうか。
 子供のころからこのあたりのミュージカル映画を観て育ったから、出演していてとても居心地のよさを感じるというのはある。別に最近の作品をやらないと決めているわけじゃないんだよ。ただ、僕の声質はクルーナー(注:1930年代から登場した、抑えた声でささやくように感情をこめて歌う歌手のことで、ビング・クロスビーがその代表とされる)・タイプだから、アンドリュー・ロイド=ウェバー作品や「レ・ミゼラブル」のような、オペラ的歌唱を求める最近のミュージカルより、1940年代、1950年代の伝統的な作品の方が合うということもあって。「ガイズ・アンド・ドールズ」についていえば、スカイ役ってほとんど踊らないでしょ。ダンサーとしてではなく、役者として認められたんだなと思って、出演できたことがとてもうれしかったな。

 「雨に唄えば」の映画が作られたのは第二次世界大戦後のことで、楽しい作品で、当時の人々を励まし、元気づけようという意図があったと思う。それは、現在の観客にもあてはまることじゃないかな。我々の舞台版も、とてもエネルギーにあふれていて、ごらんになった方を喜びで満たすものに仕上がっていると思う。映画で観たあのナンバーが、目の前、生で展開されるというのはとてもエキサイティングな体験だと思うし、実際に雨も降るしね(笑)。映画を観ているだけでは味わえない特別な思いを味わいに、劇場にぜひ足を運んでもらえたらと願っているよ。

[取材・文=藤本真由(舞台評論家)]
[撮影=平田 貴章]
[公式写真=Images by Manuel Harlan]

公演概要


SINGIN'IN THE RAIN 〜雨に唄えば〜アダム・クーパー特別来日 日本公演

<公演日程・会場>
2014/11/1(土)〜11/24(月・祝) 東急シアターオーブ (東京都)

<キャスト&スタッフ>
出演: アダム・クーパー
演出:ジョナサン・チャーチ 振付:アンドリュー・ライト
曲目・演目: ※英語上演/日本語字幕あり

2014-08-15 19:36

 総発行5000万部を超える超人気少女マンガ「ガラスの仮面」が新たに舞台化される。演劇の天才少女北島マヤに貫地谷しほり、ライバルの姫川亜弓にマイコ、そして二人を導く伝説の大女優月影千草に一路真輝というキャスティングで、脚本・演出をG2が手がける。初日まで半月ほどとなった日の稽古場を訪ねた。

稽古場取材レポート!

 原作者の美内すずえが脚本を前に熱いまなざしを送る中、この日公開されたのは二幕冒頭の10分弱のシークエンス。“紫のバラのひと”としてマヤに思いを寄せる大都芸能社長速水真澄(小西遼生)に対し、その秘書水城(東風万智子)が、二人のライバルが現在置かれた状況を説明していく形で進められ、その間、稽古場いっぱいに設置された盆がぐるぐる回る演出となっている。何といっても、伝説の大女優、月影千草に扮する一路真輝がいい。当初このキャスティングが発表されたとき、一路ではこの役にまだ若すぎるようにも感じられたが、原作の月影の装いを意識してか、黒づくめの稽古着に身を包んだその凛としたたたずまいが神秘性とカリスマ性をたたえ、大女優のオーラいっぱい。威厳に満ちたセリフ回しにも貫録があり、演じることに魅せられた者たちを描くこの作品において、月影先生もまた影の主役であることを思い起こさせられる。貫地谷はマヤのひたむきな情熱を表現し、演じた一人芝居「女海賊ビアンカ」のワンシーンでは、スピード感ある舞台が展開された。亜弓が演じる一人芝居「ジュリエット」のワンシーンはダンスのみで表現され、長身のマイコが舞う姿が見られた。

 終了後、貫地谷、マイコ、一路、美内の四者で囲み会見。原作者の美内は、「貫地谷さんがただ立っているだけで、少女だ、マヤだと思った。月影先生の立ち姿は、横から見ると、スカートのラインが漫画で描いた通りだなと。マイコさんのジュリエットは踊りが取り入れられていて、自分もあのポーズを描けばよかったなと思った。舞台となると、自分の手を離れた別のものになっていて、お客さんとして楽しんでいる部分があるが、セリフも全部入っているし、他の誰よりも作品をよく知っているということがある。演じている姿を見ているのはすごく新鮮で楽しいし、演劇をテーマにした作品だけに、自分もまた取材をしているようなところがある」と、この日の稽古の感想を非常にうれしそうな表情で語っていたのが印象的だった。

  「取材カメラと美内先生がいたのですごく緊張して」(貫地谷)、「緊張しました」(マイコ)と、二人のライバルは共にこの日の稽古で間違えてしまったことを告白。「今やっておけば本番は大丈夫。二人が若い勢いで頑張っているので、月影先生の気持ちに自然となりやすい」と、一路がいかにも大先輩らしいところを見せる。二人のライバルの互いの印象は、「美しくて、ダンスのシーンもうっとりします」(貫地谷)、「その世界にすぐ飛びこんでいくところが、読み合わせのときからマヤだ! と思った」(マイコ)とのこと。「『ガラスの仮面』は高校生のとき初めて読みましたが、スポ根のような熱い演劇の世界で、すごく圧倒されて。演劇を目指していたけれどもオーディションがうまくいかなかったりした時期で、やけどしそうな感じがありました。あのとき感じたものをお客様に届けたい」(貫地谷)、「とてつもなく大きな存在である原作が、とてもエネルギーにあふれた舞台になると確信しています。皆様に熱い思いを届けたい」(マイコ)、「素敵な作品に出られてうれしい。出演者一体となってパワーをお届けしたいので、一人でも多くの方に見て頂ければ」(一路)と、口々に熱い抱負を語っていた。

[取材・文=藤本真由 (舞台評論家)]

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公演概要


「ガラスの仮面」

<公演日程・会場>
2014/8/15(金)〜8/31(日) 青山劇場 (東京都)

<キャスト&スタッフ>
出演:貫地谷しほり、マイコ、浜中文一(関西ジャニーズ Jr.)、小西遼生、東風万智子、一路真輝
原作:美内すずえ
脚本・演出:G2

2014-08-06 13:15

 2012年に上演され、延べ5万人もの観客を動員した「MOON SAGA-義経秘伝-第一章」の続編、「MOON SAGA-義経秘伝-第二章」の公開舞台稽古、ヒロイン(陽和役)お披露目、小説発売発表会が7月29日、都内のスタジオにて行われた。ストーリーのみならず、キャスト全体から漂うチームワークの良さや、スロープを活かした迫力満点の公開舞台稽古から、作品への期待がぐいぐい高まるのを感じた。


記者発表会をレポート!

 まず驚いたのは、メインキャストだけでなく、出演者全員がこの記者会見の場に集ったこと。今作の原作・脚本・音楽・演出・主演を手掛けるGACKTのリーダーシップの元に皆が揃う画は壮観だ。さらに、こういった場特有のピリッとした空気の中においても、キャスト同士のさり気ないアイコンタクトや穏やかな表情からこのカンパニーの団結力の強さがうかがえる。恐らく、8月8日の初日に向けて順調に稽古が進んでいるのだろう。言葉にしなくてもそんな雰囲気が伝わってくる。

 さて、本作は前作「MOON SAGA-義経秘伝-第一章」の2ヶ月後が舞台となっている、極上のエンターテイメント作品。GACKTによると、今作は「未来は自分の意志と行動力で変えられる」ということが大きな軸になっているという。

 会見は、『国籍、年齢、性別問わず』という驚きの応募条件の中、100名以上の応募があった激戦の一般オーディションを勝ち抜き、見事に陽和(ひより)役を射止めたヒロイン2名の発表から始まった。一人目に紹介されたのは黒田有彩。「(オーディションで)自分を選んでいただいてすごく嬉しかったです。7月の頭から合流して稽古が始まったんですけど、まだ自分が(舞台に)出られるか分からない状況で…。でも、今日こうしてお披露目という形で出させて頂いて、“やっと決まったんだな…”って…」と話したところで、感極まって涙。「“黒田有彩は陽和役ではなくなりました”っていう悪夢も5日に1回ぐらい見たんですよ…」と続けると、場は笑いに包まれた。

 おっとりとした雰囲気が印象的な黒田とは対照的に、舞台初挑戦の初音はキリッと引き締まった表情で意気込みを語った。「陽和は言葉を話せない役なんですけど、人の内側にあるものをどういう風に思っているのかということをみなさんにも感じて頂けたらなと思います。」

 司会者から舞台の出来上がりについて問われたプロデューサーのGACKTは、落ち着いた口調で進行状況を報告した。「ドラマの部分に関してはかなりいい感じで上がってきていると思います。アクションの部分に関しては、どうでしょうねえ。ここから深夜練が続くんだろうなあっていう(笑)。これからきつくなっていきますね」と語るやいなや、共演者から「マジっすか!?」という声が上がり、笑いを誘った。「せっかく記者会見やったのに、本番までに何人がケガして消えるのかな?とか、ちょっと心配してますね。僕が消えないようにしなきゃなと思ってますけども(笑)」と冗談めかしながらも、強い決意が垣間見えた。「たくさんのキャストが出る舞台はよくあると思うんですけど、それぞれが個性立ちすることって難しくて。でも、この舞台はすごい個性立ちしているので、楽しみにしていただければなと思います」と各キャラクターの個性や設定についても自信をのぞかせた。

 一方、平知盛を演じる川ア麻世は、GACKTについて「知れば知るほど恐ろしくなる“物ノ怪”みたいな人ですね。演出にしても音楽にしても全てそうなんですけど、スキを探すのが大変です。アレもできるしコレもできるし、出来ないことって一体なんなの!? ってぐらい」と舞台の世界観を混じえて表現。さらに、「GACKTがリーダーとなって毎朝2時間近くトレーニングしてるんですけど、毎日何かしらの達成感を味わうことができるんですよ。それが一日のスタートして非常に心地よくて、そこから生まれてくるチームのコミュニケーションの良さ、その上での厳しい稽古――役者としてこちらが月謝を払わなきゃいけないんじゃないかってぐらい良い刺激を受けています」と絶賛した。なるほど、記者会見前から漂っていた雰囲気の良さは、こういったことの積み重ねから生まれていたのだ。

 稽古中の印象的なエピソードについて、平教経役の悠未ひろから話があった。「宝塚とは全く違う経験を味わって、刺激的な日々を送らせて頂いてるんですけど、特に殺陣のシーンでは、怖くなるぐらいのアクションシーンの稽古をしていて、息つくヒマもありません。出番以外でもみなさんすごく楽しくていつも笑ってますし、本当に温かいカンパニーだなと毎日感じながらお稽古しています」と充実した表情で語った。

 今作は、日本舞台史上最大規模のプロジェクションマッピングも見どころのひとつだが、舞台との融合にはかなり苦戦したようだ。しかし、その甲斐あってか、「僕のプロジェクションマッピングは、舞台そのものが飛び出す絵本のような作りで仕上がっているので、その中で演者たちが動き出して物語を進めていくという流れになっています」と満足のいく仕上がりになっているようだ。どんなファンタジックな世界が展開するのか想像は尽きない。

 最後に、舞台稽古の一部が公開された。場面は平家の菊王丸と源氏の4人による格闘シーン。傾斜の強いスロープが舞台のあちこちに設置され、これを存分に活かすことでアクションがより立体的で派手になり、想像以上に迫力のある場面になっている。稽古のため、プロジェクションマッピングは未使用な上に、10分にも満たない短い時間だったが、こちらの期待以上の舞台になりそうだという確信を得るには充分の迫力ある公開舞台稽古だった。舞台の全貌が明らかにされる日、8月8日が楽しみでならない!

[取材・文=阿刀 “DA” 大志]

公開舞台稽古の模様を動画レポート!

GACKTオールプロデュース!

【原作】GACKTのライフワーク「MOON SAGA」

 《MOON SAGA》とは、GACKTが2002年以降から描き始めた物語。単純な読み物ではなく、楽曲や書籍、ライブや映画などで、随所に《MOON SAGA》の物語に登場する人物やストーリーの1シーンがちりばめられてあり、散らばっているピースをファンにパズルのように組み合わさせ、物語を完成させる(仮定させる)というプロジェクト。 楽曲『MOON』、書籍『MOON CHILD 鎮魂歌【レクイエム】篇』、映画『MOON CHILD』など、MOONが付く、または関連するワードがあった場合、《MOON SAGA》の一部になることを示している。

【脚本】脚本作りは全てGACKTの書き下ろし

【演出】主役:源 義経 役

故・源義朝の九男で、頼朝の弟。者ノ不、物ノ怪、人間との間に存在する差別的感覚や、者ノ不の存在意義に対し疑問を抱いている。

【音楽】GACKTが公演に使用する楽曲を監修。サントラ版も発売予定

公演で使用される楽曲全てをGACKT本人が監修します。
オープニングや、各シーンで使われるBGM、そしてエンディング曲などGACKT本人がこだわり抜いた楽曲。
ライブメンバーでもあるTAKUMIやYOUも楽曲制作に参加し、MOON SAGA-義経秘伝-を盛り上げる楽曲を作り上げる。

日本舞台史上最大規模のプロジェクションマッピング!!

 GACKTが紡ぎだす歴史ファンタジーの世界感を、新進気鋭の映像クリエーター集団が見事に表現し、ポップアップアートのようなファンタジー感あふれる幻想的な世界観で全編が彩られ観る者を魅了すること間違いなし!

ヒロイン決定!!なんとダブルキャストに!

 3月31日から始まった『国籍、年齢、性別問わず』という衝撃の応募条件の中、一般公募による参加者を含め、総勢100名以上の“物ノ怪美女達”から応募がありました。5月には最終オーディションが東京・渋谷AXにて開催され、一般オーディションを勝ち抜いた24名がの中から選ばれた最終オーディション通過者!!
みんな新たな『陽和』として、最後の試練として本公演の稽古場にて厳しいトレーニングに臨みました。

その結果GACKT義経の心を奪ったヒロインは…

それぞれのヒロインの魅力がつまった舞台をお楽しみください!
※出演公演はMOON SGAオフィシャルHP(http://moonsaga.jp)にて発表となります。

原作・脚本・演出・主演・音楽:GACKTプロフィール

Profile
7月4日生まれ。A型。 バンドMALICE MIZERのボーカルとして活動したのち、1999年にソロプロジェクトを始動。
これまでに、CDシングル43枚とアルバム15枚をリリースし、男性ソロアーティストの『オリコンシングルランキングTOP10獲得作品数』において、日本で首位の記録を持つ。(2013年1月時点)CDアルバムやDVDは、韓国・台湾・香港他アジア各国、北米でも発売され、世界各国にも熱狂的なファンを持つ。
音楽活動の他にも、映画、ドラマ、舞台、声優などでも幅広く活躍。
自らを“表現者”と称し、ミュージシャンという枠にとらわれない多才ぶりを発揮する個性派アーティスト。

GACKTが行うライブは“VISUALIVE”と呼ばれる。
“VISUAL”“ALIVE”“LIVE”を合わせた造語で、テーマ性のあるストーリーを、映像、パフォーマンス、音楽というすべての要素を連動させ、ライブを通じて表現している。その優れたクリエイトセンスを発揮した独自の世界観は、他に類を見ないライブステージとなっている。
過去最大規模になる全国60カ所で行ったホール&アリーナツアー『GACKT VISUALIVE TOUR 2008-2009 REQUIEM ET REMINISCENCE II』では、延べ21万人を動員。

音楽活動の他、映画、ドラマ、舞台、声優等でも幅広く活躍。
2012年には、全国主要4都市にて公演された舞台『義経秘伝』にて、原案、脚本、演出、主演の4役を兼任。
GACKT自身の多才ぶりを各方面より高く評価された。
日本刀、たい拳道、空手、ボクシング、アクロバット、ワイヤーアクション等を得意とし、4カ国語(日本語、英語、韓国語、中国語)を流暢に話す語学力も買われ、ハリウッド映画『BUNRAKU』では、準主役として抜擢されている。

こうした世界的な活躍により、iTunes Storeでカタログ全曲世界一斉配信を日本人で初めてスタートさせたほか、Twitterのフォロワーは開始1年半で60万人を越え、LINEの公式アカウントの登録者数は開始1か月で約40万人を越え、現在では約150万人と多くのファンから支持されている。

《代表作》
■Music
『Another World』、『Vanilla』、『12月のLove Song』、『サクラ、散ル…』、『P.S. I LOVE U』
■映画
『BUNRAKU』(松竹)、『悪夢ちゃん The 夢ovie』(東宝)
■ドラマ
大河ドラマ『風林火山』(NHK)、土曜ドラマ『悪夢ちゃん』(日本テレビ)

<MOON SAGA 〜義経 秘伝〜 公式FaceBookページ>
毎日更新中!出演者動画や稽古風景が紹介されています。
https://www.facebook.com/MOONSAGA.official

<GACKT 公式FaceBookページ>
ご本人の言葉で舞台にかける思いを語っています!
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メインキャストプロフィール

川ア麻世 (平知盛 役)
生年月日 1963年3月1日
◆出身地 京都府
◇血液型 B型
◆出身校 東京工芸大学
◇身長182cm/体重67kg
◆デビュー 昭和52年

1984年に劇団四季の「CATS」出演を 皮切りに数多くのミュージカルに出演。
特に舞台俳優としての実力を着実に重ねている。


《舞台歴》
「レ・ミゼラブル」「CATS」「ガラスの仮面」「エニシングゴーズ」「スターライトエクスプレス」(日本及びオーストラリア公演) 「滝の白糸」「小吾さま」「ラ・カージュ・オ・フォール」「ふるあめりかに袖はぬらさじ」「マイフェアレディー」「ブラッドブラザーズ」「ピーターパン」「一人二役」「デュエット」「キャバレー」「月の夜の物語」「ミュージカル十二夜」「ラブ・レターズ」「恋風の街」「東京駅」「泣いたらあかん」「付き馬屋おえん」「私生活」「俺はお殿様」「モダンミリー」 「ジャック・ブレルは今日もパリに生きて歌っている」「ダムヤンキース」「おんなの家」「女ねずみ小僧」「アニー」「大統領誕生」「罠」「回転木馬」「うたかたのオペラ」「フットルース」「親鸞わが心のアジャセ」「イカれた主婦」「阿国歌舞妓」「招かれざる客」「樅の木は残った」「細雪」他

悠未ひろ (平教経 役)
◆出身地 東京都
◇血液型 O型
◆出身校 十文字学園
◇身長 180cm
◆デビュー 平成9年

宝塚史上No.1の長身を生かしたダイナミックかつキレのよいダンスと抜群の包容力と迫力のある歌声で魅了する。
宝塚時代は入団1年目から宙組で活躍。


《舞台歴》
2003年「傭兵ピエール」新人公演主演
2003年「里見八犬伝」 蟇田素藤役
2004年「白昼の稲妻」新人公演主演
2005年「Le Petit Jardin」主演
2008年「宝塚巴里祭2008」ディナーショー主演
2009年「外伝・ベルサイユのばら」フェルゼン役
2009年「カサブランカ」シュトラッサー少佐役
2013年「逆転裁判3」エッジワース役 主演
2013年「Heroe」ディナーショー主演
2013年「風と共に去りぬ」アシュレ役

公演概要

MOON SAGA -義経秘伝- 第二章

<公演日程・会場>
2014/8/8(金)〜8/18(月) 明治座 (東京都)
2014/9/11(木) 福岡サンパレス ホテル&ホール (福岡県)
2014/9/20(土)〜9/29(月) 新歌舞伎座 (大阪府)
2014/10/4(土) 広島上野学園ホール (広島県)
2014/10/10(金)〜10/13(月・祝) 日本特殊陶業市民会館 フォレストホール (愛知県)
2014/10/24(金) 東京エレクトロンホール宮城 (宮城県)
2014/10/30(木)〜10/31(金) 大宮ソニックシティ 大ホール (埼玉県)

<キャスト&スタッフ>
原作・脚本・演出・主演・音楽:GACKT
出演:GACKT  川崎麻世 悠未ひろ 古本新乃輔

e+Theatrix特集
原作、脚本、音楽、演出、主演をGACKTがプロデュースする舞台『MOON SAGA−義経秘伝−第二章』、絶賛上演中!(8/18up)

★GACKTが紡ぎだす歴史ファンタジーの世界感を 日本の舞台史上最大規模のプロジェクションマッピングで演出する MOON SAGA−義経秘伝−第二章(7/24up)

2014-08-01 18:55

常に変化する映像と生身で演ずる役者との連動感で、 これまでの舞台表現の枠を超越し、 桁違いの臨場感でお届けするビジュアライブシアター!
公式サイト

桁違いの臨場感でお届けするビジュアライブシアター!

今回の最大の見どころとしている日本の舞台史上最大規模のプロジェクションマッピングについて皆様にご紹介いたします!

・プロジェクションマッピングとは?
パソコンで作成したCGとプロジェクターの様な映写機器を用い、建物や物体、あるいは空間などに対して映像を映し出す技術の総称をいう。(引用:Wikipedia)

今回の舞台では全編でシーンごとに常にステージが変化し、躍動する誰も見たことの無い舞台製作における映像表現をお楽しみいただけます!
製作中のお写真を少しですが、みなさんに公開いたします!どんな舞台に進化していくのか!?乞うご期待ください!!!!

今回のプロジェクションマッピングでの演出には新進気鋭の映像クリエーター集団によって創り出されたGACKTが紡ぎだす歴史ファンタジーの世界です。

まるでポップアップアートのようなファンタジー感あふれる幻想的な世界観で全編が彩られ見るものを魅了します!

義経秘伝(平教経編)登場人物主要キャスト紹介

源義経《みなもとのよしつね》 : GACKT
二十七歳。故・源義朝の九番目の子供。親友である義仲を自らの手で殺してしまったことから、半覚醒を起こし、姿が変容している。自身は、弁慶によって躯の奥に閉じ込められたチカラ『百鬼』に恐怖し、そのチカラが解放されることで自我を失い他人を傷つけることを恐れている。『者ノ不』、『物ノ怪』、人間との間に存在する差別的感覚に疑問を持ち、者ノ不の存在意義に疑問を持つ。

平教経《たいらののりつね》 : 悠未ひろ
二六歳。故・平清盛の甥、通称ノリと呼ばれ親しまれる。顔も美しく長身で細身にもかかわらず、平家史上最強と唱われ、平家の鬼と呼ばれる。平家の中で唯一チカラ『知夢』を持ち、これまで平家を勝利に導いてきた。従兄弟である知盛を兄と慕い、平家の柱としてその武功とチカラを振るっている。伝内には性別を超えた強い信頼と想いを寄せる。

平知盛《たいらのとももり》 : 川ア麻世
三四歳。故・平清盛の四男で頭脳明晰。他の兄を立てるものの実質上、平家の頭領である。性格は非常に穏やかで攻撃的な教経とは性格が全く異なるが、平家一族の中で最も信頼を受ける者ノ不である。顔に手を触れることで相手の心の中を読み取ってしまうチカラ『心読』を操る。


▼源氏方
武蔵坊弁慶《むさしぼうべんけい》 : 古本新乃輔
義経四天王の一人。法術にも長け、類い稀なる戦闘能力の高さと人の何倍もの力を瞬間的に発揮するチカラ『剛力』を持つ。好戦的な性格とは裏腹に涙もろく、情に厚い。義経のチカラ『百鬼』を躯に封じ込めた張本人。常に皮肉を言い続けているが、実は温かい心の持ち主。噂が先行し、大男というイメージがあるがさほど大きくもなく、年齢よりも老けていることを一番気にしている。

伊勢三郎《いせさぶろう》 : ウダタカキ
義経四天王の一人。手を傷口に当てることで他人の傷を治すことの出来るチカラ『手充』や花やつぼみを一瞬で開花させる『桜花』といったチカラを持つ。涙もろく、心温かい。意外と冷静に物事を判断する慎重派。統率力があり義経四天王のリーダー的存在。義経同様、人間を差別することを嫌う。

佐藤嗣信《さとうつぐのぶ》 : 西海健二郎
義経四天王一人。忠信の兄である。東北の鎮守府将軍、藤原秀衡に使えていた『者ノ不』。『火手』、といったチカラを操り、自由に手の中で火を出現させることも出来る。義経を監視するための藤原方の間者として義経に同行したが、いつしか義経に心奪われ運命を共にすることを誓う。普段はいつもおどけているが、兄弟で息を合わせた戦い方はまさに繚乱兼美。

佐藤忠信《ただのぶ》 : 古堂たや
常に兄の嗣信を慕いながらも神経質な性格から、時折不安を見せることも多い。『雹手』の使い手で、雹を出現させることも出来る。誰とでもすぐに心打ち解けることが出来る優しさを持つ。

陰《かげ》 :義経を守るため、閻との戦いでその命を使い果たしたが、その魂は義経を心配してか未だ憑き纏う。


源頼朝《みなもとのよりとも》 : 大橋吾郎
源氏一族の正統な後継者であり、父義朝の死後、源氏の頂点に立つ。源氏以外の『者ノ不』を一掃し、平家の世を終わらせること、源氏の時代を再興させることが自身の存在理由だと強く信じている。猜疑心が強く一族間でも側近以外の者との直接的な交流を嫌う。他人の心に入り、その心に思念を残し、意志を意のままに操るチカラ『浸食』を持つ。誰にも媚びない気ままな性格の義経に父・義朝の面影を感じ、無邪気だった義経を寵愛するが、最後にはその義経に恐怖し義経討伐を全国に命じる。

北条政子《ほうじょうまさこ》 : 鈴花奈々
北条家の正統な血とチカラを受け継ぐ非常に能力の高い異能力者。頼朝の妻であり北条氏との深い繋がりを源氏にもたらした程の高い知力も持つ。者ノ不のチカラを測る『心眼』、人の未来を予知するチカラ『夢見』などを操る。自身のチカラを持ってしても義経の『者ノ不』としてのチカラを見極めることが出来ないことからか、義経を毛嫌う。召喚などの呪術にも長けている。

梶原景時《かじわらかげとき》 : 木下政治
元々、平家の武将であったが、石橋山の闘いで頼朝を逃がして以降、頼朝の側近となり源氏の政においてその能力を奮う。他人の精神状態を混乱させるチカラ『心瞑』を持つ。

閻《えん》 : 義仲が自分の命と引き換えに召喚した『物ノ怪』。実体が存在しない特殊な『物ノ怪』であったが、陰との相打ちにより姿を消した。


▼平家方
伝内教能《でんないのりよし》 : 鈴之助
平家の一門でないながらも、知盛や教経から絶対的な信頼を受けている者ノ不。相手に触れている間は、そのチカラを完全に押さえ込むチカラ『封力』を持つ。チカラを押さえ込むことから、教経のチカラから来る痛みを普段は抑え、常に教経に安らぎと眠りを与えている。伊勢三郎の幼なじみでもある。

菊王丸《きっこうまる》 : 堀江慎也
平家の子飼いの物ノ怪、知能は低いが非常に高い戦闘力を持つ。教経を心から慕っている。無邪気だが非常に好戦的な性格。自身の躯を一瞬で鋼化させるチカラ『金剛』を持つ。

銀狼丸《ぎんろうまる》 : 君沢ユウキ
平家の子飼いの物ノ怪、菊王丸と仲が良くいつもじゃれているが、性格は対照的で穏やか。知盛にも非常に良くなついている。相手の動きを止め操るチカラ『傀儡』を持つ。

平宗盛《たいらのむねもり》 : 平家の長兄であり実権を持ちながらも、知盛に絶大な信頼を持ち、政治の殆どを知盛に任せる。自身は気が弱く飽き性。

公演概要


MOON SAGA -義経秘伝- 第二章

<公演日程・会場>
2014/8/8(金)〜8/18(月) 明治座 (東京都)
2014/9/11(木) 福岡サンパレス ホテル&ホール (福岡県)
2014/9/20(土)〜9/29(月) 新歌舞伎座 (大阪府)
2014/10/4(土) 広島上野学園ホール (広島県)
2014/10/10(金)〜10/13(月・祝) 日本特殊陶業市民会館 フォレストホール (愛知県)
2014/10/24(金) 東京エレクトロンホール宮城 (宮城県)
2014/10/30(木)〜10/31(金) 大宮ソニックシティ 大ホール (埼玉県)

<キャスト&スタッフ>
原作・脚本・演出・主演・音楽:GACKT
出演:GACKT  川崎麻世 悠未ひろ 古本新乃輔

e+Theatrix特集
原作、脚本、音楽、演出、主演をGACKTがプロデュースする舞台『MOON SAGA−義経秘伝−第二章』、絶賛上演中!(8/18up)

★【速報】「MOON SAGA-義経秘伝-第二章」公開舞台稽古、ヒロインお披露目、小説発売発表会をレポート!(8/1up)

2014-07-24 20:51

2012年トニー賞®8部門を総なめ
音楽もアカデミー賞®、グラミー賞®を獲得
各界が大絶賛の作品が遂に日本上陸!
最初の音が奏でられた瞬間からパワフルで心温まる音楽があなたの心を捉えて離さない

<NEW>
テレビ朝日系列「徹子の部屋」10月23日(木)演出家・宮本亜門さんがゲスト出演。

作品概要

「Once」は同名のアカデミー賞受賞映画(邦題:Once ダブリンの街角で)をベースにしたミュージカルです。
2012年トニー賞で最優秀新作ミュージカル作品賞を含む8部門を受賞、そして2013年グラミー賞ベスト・ミュージカル・シアター・アルバムを受賞しました。
また、ニューヨーク・ドラマ・クリティクス・サークル賞、ドラマ・デスク賞、ドラマ・リーグ賞、アウター・クリティクス・サークル賞、ルシール・ローテル賞の最優秀ミュージカル作品賞、2014年ローレンス・オリヴィエ賞では2部門において受賞しました。

■口コミで広がり大ヒットを記録した映画の舞台化
ベースとなった映画「Once」はアイルランドの人気バンド「ザ・フレイムス」のフロントマン、グレン・ハンサードが主人公を演じ、同バンドの元ベーシスト、ジョン・カーニーが監督。
主役のグレン・ハンサードとチェコ人のシンガーソングライター、マルケタ・イルグロヴァ(主役の女性役)二人が作曲作詞を務め、"Falling Slowly" において、2007年度アカデミー賞歌曲賞、ロサンゼルス映画批評家協会賞を受賞、サウンドトラックは、グラミー賞の2部門でノミネートされました。
製作費約150,000ドル(USD/日本円で約1500万円) という低予算、17日という撮影期間で作られたのにも関わらず、口コミで人気が広がり、世界で約20億円の興行収入を達成した作品です。

物語の舞台はアイルランドの首都ダブリン。音楽への夢、そして愛することを諦めたアイルランド人のストリート・ミュージシャンと楽器店でピアノを弾くのを楽しみにするチェコ移民の女性が、偶然ダブリンの街角で出会う。男と女は、恋か友情か音楽を通して心を通わせていき、男は再び夢を抱くように。美しい楽曲の数々が綴る愛しく切ない恋愛ストーリーです。


見どころ

■アカデミー賞、トニー賞受賞のクリエイティブチーム
この映画を、アカデミー賞を受賞した、グレン・ハンサードとマルケタ・イルグロヴァの作詞・作曲で、アイルランド出身の劇作家・映画脚本家のエンダ・ウォルシュ(代表作:ペネロペ/Penelope、ハンガー/Hunger、The New Electric Ballroom)脚本、スコットランド人の演出家ジョン・ティファニー(「ブラック・ウォッチ」)演出、スティーヴン・ホゲット(「ブラック・ウォッチ」「アメリカン・イディオット」)振付、音楽監督・編曲はマーティン・ロウ(「マンマ・ミーア!」)、装置・衣裳デザインはトニー賞を5度受賞したボブ・クロウリー(「アイーダ」「コースト・オブ・ユートピア」)、音響デザインにクリーヴ・グッドウィンというチームによって舞台化されました。

「Once」はアメリカン・レパートリー・シアター(Cambridge, Massachusetts)で2011年4月にアーティスティック・ディレクターのダイアン・パウラスとプロデューサーのダイアン・ボーガーにより立ち上げられ、2011年11月15日、オフブロードウェイのニューヨーク・シアター・ワークショップでスタート、同年12月6日に初演され、同劇場のボックス・オフィスの記録を破り連日完売。2012年1月15日まで2週間延長するなど大成功をおさめ、ブロードウェイに進出。バーナード・B・ジェイコブス劇場にて、2012年2月28日プレビュー公演開始後2012年3月18日初日を迎え現在も同劇場で上演中です。2013年4月にはロンドン、ウエストエンドのフェニックス劇場でスタートし、2014年ローレンス・オリヴィエ賞にて2部門受賞しました。

■出演者が楽器を演奏し、舞台上で音楽を作る
舞台にはアイリッシュバーカウンターが一つ。シンプルなデザインのセット上で、上記のトニー賞受賞チームの演出と才能あふれるミュージシャン/キャストたちにより「音楽」が作られていく過程が丁寧に誠実に描かれ、作曲やレコーディングを通して聴こえる音楽が、主人公たちの感情を表現します。
オーケストラやバンドはなく、出演者がギター、ピアノ、バイオリン、アコーディオン、ドラムなどを演奏しながら歌やダンスを披露するのです。


■舞台上のバーで生演奏を楽しむ
開演前には、舞台のアイリッシュバーにあがることができ、セットのバーで実際に飲み物を買うことができます。舞台上で観客が飲み物を楽しんでいるうちに、キャストによる生演奏が始まり、自然に開演時間を迎え、舞台が始まります。

ブロードウェイより舞台が近い空間、900席の劇場で観るプレミアム公演

ブロードウェイ、ウエストエンド、そして全米ツアー、他世界都市で今現在上演されている「Once」が2014年11月日本初上陸。最高の音響設備を誇り、ちょうど同年11月に1周年を迎えるEXシアター六本木(東京都港区西麻布1-2-9)に登場します。ステージに近いと言われるブロードウェイのバーナード・B・ジェイコブス劇場(242 West 45th Street New York)の1078席より贅沢な空間900席でお届けするプレミアム公演。ぜひお見逃しなく。

レビュー

黒柳徹子さんがミュージカル「Once」をご覧になりました!

この秋EXシアター六本木で上演される「Once ダブリンの街角で」というミュージカルをつい最近ブロードウェイで見てきました。
本当にすばらしい作品で、なんといっても音楽が凄く良いのです。
なにしろ、舞台のアカデミー賞と言われるトニー賞を8つもとった作品です。原作となっている映画も大ヒットしましたが、それが今度舞台でやってくるのです。

売れない音楽家の男性と、ピアニストの女性の本当にささやかな恋愛の話です。
舞台がバーになっていて、お酒を売っています。
開演前、お客様は舞台に上がってお酒を買っていいのです!
舞台のバーで飲みながら、客席を見ているお客様がいっぱいいたりしてはじめから面白いのですけど、いつの間にかお芝居が始まるのです。8つもの賞をとるだけのことはあるなと思いました。

この秋、ぜひ EXシアター六本木にいらっしゃって、そんな楽しい舞台、恋の物語をご覧頂きたいと思います。

黒柳徹子

「Once」は過去10年間にブロードウェイで起こった最高の出来事の1つだ
-ハリウッド・レポーター/ The Hollywood Reporter

5つ星!歓喜!「Once」はブロードウェイで最もロマンティックな舞台
-デイリー・ニュース/ Daily News

独創的で心に刺激を与えてくれる作品
-ワシントン・ポスト/ The Washington Post

珠玉の名作は、ラブストーリー、素晴らしい楽曲、魅力的な登場人物、独創的な演出技法など昔ながらの方法でスタンディング・オベーションを勝ち取った
-ニューヨーク・ポスト/ New York Post

<NEW>テレビ朝日系列「徹子の部屋」

10月23日(木) お昼12時〜12時30分 (放送予定)に演出家・宮本亜門さんがゲスト出演。ブロードウェイで実際に「Onceダブリンの街角で」をご覧になったお二人が「Once」の魅力をお伝え致します!

宮本亜門さんコメント

ミュージカル「Onceダブリンの街角で」をNYで見て驚きました!実に完成度が高く、まさに人間そのものが描かれていて、地味ながらも、芯に琴線に触れる素晴らしく温かい作品だったからです。シンプルですが、深く感動しました。派手な作品が受けるブロードウェイ。そこでこういう作品が、トニー賞を8部門獲得できたって事に改めて、ブロードウェイの良心を感じ、NYの演劇界がますます好きになりました。また、その上に映画版「ONCEダブリンの街角で」では、アカデミー賞の歌曲賞もとっていた。それに加え、舞台版のCDがグラミー賞をとっている。ということは、グラミー、アカデミー、トニーの三大賞を、すべてとった作品で、これは、前代未聞です!賞をとったことが偉いと言いたいのではなく、やはり「今の時代、人々はこのような、本質を求めていたんだ」と感じました。

公演概要

EXシアター六本木開業1周年記念企画
ブロードウェイミュージカル「Once(ワンス)ダブリンの街角で」

<公演日程・会場>
2014/11/27(木)〜12/14(日) EXシアター六本木 (東京都)
※英語上演、字幕スーパー付

<キャスト&スタッフ>
出演:ONCE TOURING COMPANY
作詞・作曲 : グレン・ハンサード&マルケタ・イルグロヴァ
脚本:エンダ・ウォルシュ
演出:ジョン・ティファニー
振付:スティーヴン・ホゲット
音楽監督・編曲:マーティン・ロウ
装置・衣裳デザイン:ボブ・クロウリー
照明デザイン:ナターシャ・カッツ

2014-07-08 13:51

 11年前に5万人を熱狂させた「ビーシャ・ビーシャ〜デ・ラ・グアルダ〜」を手掛けたクリエイターが新作を携えて再び日本へやって来た!その名も、「フエルサブルータ」。スペイン語で「獣のような力」を意味するエンターテインメントは、05年アルゼンチン・ブエノスアイレスでの初演以降、25カ国300万人以上の動員を記録している。

体験レポート!

 「フエルサブルータ」がどんな舞台なのかを知るには、言葉で説明するよりもトレーラーをチェックしてもらう方が早い。なので、まずはそちらをご覧頂きたい。≫PC公式サイトへ
……どうだろう、何が行われているのか伝わっただろうか?きっと、なんのこっちゃよく分からなかったと思う。だが、心配しないで欲しい。その状態で臨んでも全く問題はない。「フエルサブルータ」は、観た人の感性に委ねられる部分が非常に大きいのだ。アバンギャルド、街頭舞台、奇想天外なパーティー……もはやどう捉えようが構わない。ただひとつ言えるのは、これまでの人生において、きっとあなたが体感したことのないパフォーマンスが今、赤坂サカス・サカス広場に建てられたテントの下で繰り広げられているということ。もし、トレーラーを観た後、えも言われぬ興奮があなたを包み込んだのならば、絶対にあのテントへと向かわねばならない。

 本来ならば、ここで公演の内容を説明すべきなのかもしれないが、余計な予備知識を得ることによって現場での興奮が少しでも削がれてしまうのはよろしくない。その代わりと言ってはなんだが、「フエルサブルータ」を100%楽しむための注意事項をいくつかお伝えしたい。

履き慣れた靴を履いていく
濡れても構わない服を着ていく
荷物は出来るだけ少なめに
上演中は動き回ることを意識する
場内スタッフの指示に従う
舞台装置には優しく触る

 「別にアミューズメントパークに遊びに行くわけじゃないんだから…」と呆れるかもしれないが、これさえ守っておけばバッチリ。とにかく楽しいことを保証する。最初は、未体験ゾーンに放り込まれた不安で声も上げられないかもしれない。しかし、次第にショーの世界観を脳が理解し始めると、体の底から興奮が湧き上がってくる。そして、気付けばテント内はまるでライブのような盛り上がりに包まれるのだ。先日上演された初回公演を鑑賞した芸能人も、レッドカーペットでこんなコメントを残している。

<谷原章介>
「イギリスで観た時とは違う、新たな日本バージョンでした。みなさんで体感しに来てください!」
<黒沢かずこ(森三中)>
「お客さんが社交的で、すごいノリが良かった!ぜひ観ていただきたいです!」
<デーブ・スペクター>
「退廃的なアートで、斬新な演出。オリジナルエンターテイメント!」
<宮尾俊太郎>
「人の度肝を抜く新しい発想。今度はTシャツにジーパンで、シャンプーを持って観にきたいですね(笑)」
<白鳥久美子(たんぽぽ)>
「夢を見てるみたいにあっという間に終わってしまいました。元気もらいました!」
<IVAN>
「超楽しかったです!ヤバい!海外のクラブにいるみたいな感じだった!」

 楽しくて刺激的なものが大好きなエンターテイメントファンは必ず足を運んで欲しい、今年の日本の夏を真っ先に盛り上げる一大スペクタクル「フエルサブルータ」。一人でも充分に楽しめるが、友人や恋人同士で観れば一層盛り上がることだろう。

[取材・文=阿刀 “DA” 大志]

「キスの日ナイト」決定!のお知らせ

5月23日(金)が「キスの日」ということにちなみ、「キスの日ナイト」を実施することが決定いたしました! 「キスの日ナイト」とは、公演期間中の5月23日(金)が※「キスの日」ということで、5月の陽気に誘われてご来場いただいたHAPPYなお客様に、対象公演(5/23(金)の19:30公演)で一緒に来た方にキスをするとその場でなんと1,000円キャッシュバック!!というお財布にもHAPPYな企画です!友達、親子、恋人は勿論、会社の同僚、そして同性同士でもOK! この際だから距離を縮めたい相手を誘ってみてください。係員が精一杯盛り上げさせて頂きます。 是非奮ってご参加ください♪

「キスの日ナイト」
★対象公演日時:2014年5月23日(金)19:30開演の回のみ対象
★ウェイティングエリア入場後に「“キスの日ナイト”受付」で一緒に入場予定の同伴者にキス!
おでこでも!ほっぺでも!勿論マウス・トゥ・マウスでも!体の一部であれば、どこでもOK!
→判定後、その場で1人1,000円キャッシュバック!!

■参加方法■
★予めチケットをご購入の上、公演当日18:45より設けられる「“キスの日ナイト”受付」で係員に「キスの日ナイト」への参加をお申し出ください。
お申し出から5秒以内に一緒に入場予定の同伴者キスをしていただいた方に1,000円キャッシュバックいたします!
※他の割引との併用はできません。
※係員がお客様のチケット券面を確認させて頂きますので、予めご了承ください。
※当日は係員の指示に従っていただきますようお願い致します。

※「キスの日」…1946年5月23日に、日本映画で初めてキスシーンが登場する「はたちの青春」(監督:佐々木康)が封切られたこと由来する日とされています。

公演概要

TBSテレビ60周年特別企画 POWERED COFFEE presentsFUERZA BRUTA フエルサ ブルータ

<公演日程・会場>
2014/5/10(土)〜6/8 赤坂サカス広場 特設テント (東京都)
2014/6/10(火)〜6/29(日) 赤坂サカス広場 特設テント (東京都)<追加公演>

公式サイト

<キャスト&スタッフ>
出演:アルゼンチン・カンパニー



2014-06-12 16:31

公演情報

東海道五十三次の起点であった日本橋。
今日でも橋の中央には「日本国道路元標」の文字が埋め込まれている、旧く趣のある街、日本橋。

そして、いにしえの都、京都。
日本の文化を連綿と守って来た街。
江戸、慶長の時代に出雲の阿国という女性が京都で始めた歌舞伎。

この日本橋、京都において市川海老蔵が紡ぐ『和の世界』が始まります。

日本の四季が織りなす美しい風土。
そこに暮らす日本人である私たちがいます。
繊細な食文化や職人たちの匠の技とその誇り。

そして、重要無形文化財であり無形文化遺産である歌舞伎を重く受けとめ継承する市川海老蔵は、次世代に向けて繊細な「和」のこころを紡ぎ出します。

「Japan Theater」はその序章、是非ご期待ください!

公式サイトはこちら

公演概要

市川海老蔵が紡ぐ『和の世界』JAPAN THEATER

<公演日程・会場>
2014/10/11(土)〜10/26(日) 日本橋三井ホール (東京都)
2014/10/29(水)〜11/2(日) 京都四條 南座 (京都府)

<キャスト&スタッフ>
出演:市川海老蔵、市川男寅、古今亭文菊、上妻宏光

2014-05-27 12:17

 東京セレソンデラックス解散後、昨年から新たに“タクフェス”を立ち上げた宅間孝行。今回、その第2弾として上演するのは過去に3回上演している東京セレソンデラックスの代表作でもある『夕−ゆう―』だ。80年代の懐かしいアイコンがたくさん登場する中、青春、初恋が笑い、涙とともに感動的に描かれていく。この作品でタクフェスに初参加することになったのが、上原多香子。舞台出演は2008年、2011年に上演されたミュージカル『ウェディング・シンガー』以来、しかもストレートプレイは初挑戦となる上原に、今作への抱負を語ってもらった。


みんなから愛されるマドンナ”的存在の“薫”を演じます

――今回、“タクフェス”に初参加することにあたって、率直な感想はいかがですか。
 去年、タクフェス第1弾の『晩餐』を観に行って、そこで初めて宅間さんにお会いしたんです。私、宅間さんのお芝居を拝見したのがその時が初めてで。過去にミュージカル経験はあるもののストレートプレイは経験がなかったので、宅間さんに「いつか機会があればぜひご一緒したいです」みたいなお話をさせていただいていたら、そのあとすぐに今回のお話をいただけたので本当にびっくりしました。

――話がトントン拍子で進んだんですね。
 はい、すごくうれしかったです。もう、何も迷いもなく「やります! 私でよければやらせてください!!」って気持ちでした(笑)。だけど、うれしいのと同時にだんだん、本当に大丈夫かな?って緊張もこみあげてきて。うれしさ半分、緊張半分で、もうなんだか自分の中でパニックになっちゃって、その日は眠れなかったです(笑)。

――『夕−ゆう―』という、この作品の感想としては。
 本当に素直に、笑えて泣ける作品ですよね。時代背景が80年代からいまの現代にわたるお話なんですが、私もギリギリ、80年代のことがわかる世代だったりするので懐かしかったです。「私が子供のころ、そういえばこういう感じだったな」みたいなものがちりばめられていて、ちょっとクスッと笑えるところもありますしね。初恋を描いている作品で、本当の想いを言えずに大人になっていくというお話なので、誰もが経験する甘酸っぱい思い出のようなものがそこにはあって。一緒になってドキドキしちゃって、自分が主人公になっている気持ちで、なんだかグッときました。

――その中で今回、上原さんが演じるのは薫という役ですが。どういう女の子ですか?
 宅間さんには「薫はみんなから愛されるマドンナだから」と言われたのですが、私自身は学生時代にそういうポジションにいる人ではなかったので、実は少しとまどいがあるんですよ(笑)。私はどちらかというと奥手で、ストレートに告白するとか気持ちを伝えるとかはできずにごまかしちゃうタイプだったんですよね。だから、薫みたいな人にはすごくあこがれます。

――宅間さんから、こういう風にやってほしいというような注文はありましたか。
 みんながみんな「好き」って思えるようなキャラクターの女の子だということなんですが、でもまだ今日の時点では深いところまで話せていないので。どう注文されても、柔軟に反応できるよう、自分の中ではガチガチに決めずにやれればと思っているところです。

――宅間さんとお仕事するのも、今回が初めてなんですよね。
 そうなんです。ミュージカルの場合ならどういう進行で稽古に入っていくかだいたい想像できるんですが、お芝居の場合はどういう風にお稽古に入っていくのかが今はまだ全然わからなくて。舞台経験のある方に聞いてみると、それぞれのカンパニーや劇団でやり方が違うということなので、実際に稽古が始まってみないと具体的にはわからないんですよね。そこはすごく不安ですが、考えると怖くなってしまうので考えないようにしています。

――また眠れなくなっちゃいますね(笑)。
 ええ(笑)。きっと本当に大変なんだろうなと思います。今回の舞台への出演が発表された時、私の周りにも宅間さんの作品のファンの方が大勢いらっしゃって「宅間さんの稽古は厳しいよ」とおっしゃるので。でも、簡単で楽しくてラクにできる現場なんてないと思うので。自分にも厳しくして、今年はこのタクフェスで燃え尽きるくらいの気持ちで、精一杯やれればなと思っています。やはりこういうお芝居ではカンパニーの方々とのコミュニケーションがとても大事だと思うので、早めに仲を深めていけたらなとも思っていて。私、人見知りはしないんですが、ものすごく緊張するタイプなんですよ。だけどお稽古ではどれだけ恥をかけるかが課題。お芝居をしている中での緊張感は必要な時もありますけど、共演者をあまり知らないから感じる緊張感なんて一番いらないものだから、とにかく早くそれぞれの人となりを知って稽古に集中できるようにしたいんです。なので稽古初日の前にみなさんと、お会いすることにはなっていて。

――顔合わせですか?
 顔合わせの前の、顔合わせみたいな感じ(笑)。顔合わせの時点で「はじめまして」と挨拶するのではなくて、そこからはもう役のアプローチについて話ができるように、早く打ち解けることが大事だと宅間さんもおっしゃっていたので、それには私もすごく共感しましたね。

自分と宅間さんのイメージをすり合わせて、よりベストな『夕』に近づけたい

――今回の舞台に向けて、ご自分の目標、テーマはなんですか。
 舞台に立つためにはたくさん恥をかいて、「できないかも、やれないかも」って言いながら泣いて、自分のふがいなさにも改めて泣いて、みたいなことが必要になると言われたんですけれども(笑)。私自身は、これまでそういう場所に身を置いたことがないので、すごく怖いです。

――稽古で泣くのは、必須なんですか?(笑)
 宅間さんに「私、噂でそう聞いたんですけど」って話したら「ま、そういう風にみんな言うよね」とおっしゃっていましたし。まあ、実際にどうなるのかはわからないですけどね。だけど『夕』は過去に何度も上演されていて、宅間さんの頭の中にもう仕上がっている作品じゃないですか。だから宅間さんの頭の中にいる薫に、できるだけ近づけたらいいなあとは思いますね。

――どれだけ近づけられるか、楽しみですね。
 はい。でも最初、『夕』の映像があると言われた時、それを見てしまうと先入観が生まれて、この場面ではこうしていたとか、変に決まり事が増えてしまうのではないかという思いもあって「見たほうがいいですか、それとも見ないほうがいいですか」って、宅間さんに質問したんです。そうしたら「もちろん見ていいよ。逆に、むしろ見てほしい。前回やった舞台も別に僕はすべてにおいてOKを出したものではないんだから」って言われて、ものすごくドキッとしたんです。つまりその映像の『夕』も正解だというわけじゃないんだと。

――なるほど、そういう意味ですか。
 でもそれを聞いたら、ますますドキドキして「怖い!」って思って(笑)。だって、じゃあどこに正解があるのかというと、それは宅間さんの頭の中にしかないんですからね。だから今回は、自分で持っているイメージと宅間さんのイメージとをすり合わせることで、よりベストの『夕』に近づけたいと思っています。

――本番に向けて、いま一番の楽しみはなんですか。
 今まで、こういう役は経験したことがないんですけれども、とにかくすごくいろいろな時代を演じることになるので。女子高生もやりますし、その後、大人になった姿も演じます。その成長過程を自分で作っていくというのも楽しみ。ひとつの役を舞台というナマの場所で、どれだけ変化をつけて演じられるか。どうやれば高校生に見えるかな、とかね(笑)。

――たとえ同じ人物でも、長い月日が流れたあととなると演じ分けが難しそうですね。
 そうなんです。今まではミュージカルだったのでスポン!って金髪のカツラをかぶればOK!という感じだったんですけれど。今回は日本人の役で、流行とか時代背景がきちんとあって。しかも自分でもちょっとずつ工夫する作業というのは初めての経験なので、すごく楽しみなんです。

――女子高生の格好をなさるというのは、ファンの方々が喜びそうですね。
 喜んでいただけたら、うれしいです(笑)。

――では最後にお客様へメッセージをいただけますか。
 ふだんから舞台をたくさんご覧になる方も演劇初体験の方も、どちらも観て損のない作品だと思います。初めての方でも作品の世界観に入りやすいと思いますし。初演、再演、再々演の舞台を観ていらっしゃる方でも、2回、3回見ることで感じ方が変わってきますし、毎回違った見方ができる作品でもあるので。そういう意味では、たくさんリピートもしていただきたいですね(笑)。この夏はぜひ、みなさんのスケジュールの中にタクフェスを入れていただけたらなと思います!


[取材・文=田中里津子]
[撮影=平田 貴章]
[ヘアメイク=岡野瑞恵(STORM)]
[スタイリスト=鈴木由里香(elma)]


【関連記事】作・演出・出演の宅間孝行が意気込みを語る!

公演概要


TAKUMA FESTIVAL JAPAN 「夕 −ゆう−」

<公演日程・会場>
2014/7/3(木)〜7/21(月・祝) サンシャイン劇場 (東京都)
2014/7/26(土) りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 劇場 (新潟県)
2014/8/9(土)〜8/17(日) 森ノ宮ピロティホール (大阪府)
2014/8/23(土) イズミティ21 大ホール (宮城県)
2014/8/27(水)〜8/31(日) 名鉄ホール (愛知県)

<キャスト&スタッフ>
出演:
内山理名 上原多香子 高橋光臣 藤吉久美子 山崎静代 阿部力 宅間孝行 ほか
作・演出:宅間孝行


2014-05-27 11:10

 彩の国シェイクスピア・シリーズでウィリアム・シェイクスピア全作品を上演中の演出家・蜷川幸雄。1974年、「ロミオとジュリエット」を演出したのが、シェイクスピアとの出会いであり、以降、この不朽の恋の物語を手がけて数々の話題の舞台を創り上げてきた。初めて手がけたそのシェイクスピア作品に、2014年の夏、今度は男性俳優のみのキャストで挑む。ロミオを演じる菅田将暉とジュリエットを演じる月川悠貴にそれぞれ話を聞いた。

インタビュー!

<菅田将暉>
――蜷川さんの演出でロミオを演じることになりました。
  いつか蜷川さんのもとで舞台をやりたいと思っていたので、すごく幸せでうれしいです。正直、もうちょっと先、5、6年先くらいになるかなと思っていました。映像作品で積み上げてきたものを、蜷川さんの舞台を通して発信したいですね。蜷川さん演出の舞台はいくつか観ていて、藤原竜也さんが主演された「ロミオとジュリエット」も大好きでした。蜷川さんの稽古場も何度か見学させていただいて、この人のもとでぜひ一つ作品を創りたいと思っていて。蜷川さんとお話しすると、守りに入っていない感じがすごくかっこいいなと感じていて。

 2年前、「ロミオ&ジュリエット」(ジョナサン・マンビィ演出)の舞台でロミオの親友マキューシオを演じたので、その経験も生かしたロミオができたらいいですね。実はそのとき、自分にマキューシオを演じる技量があまりになさすぎて、稽古も本番もまったく楽しめずに終わってしまったんです。だから今回はリベンジの気持ちもありますね。ただ、そのとき、シェイクスピアってすごくおもしろいなと思ったんですよ。僕やもっと若い世代にとって、シェイクスピアというといにしえの戯曲というイメージがあって、遠ざけているところもあると思うんです。「ロミオとジュリエット」といっても観たことのない人も多いでしょうし。僕自身そういう一人だったんですが、実際に舞台を経験してみたら、台本が緻密に計算されていてその通りにやるとこんなにおもしろいんだということがわかりましたね。回りくどいっちゃ回りくどい感じもありますが(笑)、自分の持っている言葉すべてであなたを愛しているということを伝えていくんですよね。美しい物語で、人間の感情の美しさが描かれていると思う。

 オールメールということに最初はびっくりしました。蜷川さんの演出で、初主演で、作品はシェイクスピアの「ロミオとジュリエット」で…と、ここまでは王道な感じなのが、オールメールというところが、世間的裏切りがあっていいなと(笑)。でも、もともとシェイクスピアの時代は、女性の役もすべて男性が演じていたわけで、今はもうすごく楽しみですね。


――現段階ではロミオをどうとらえていらっしゃいますか。
 二つの家の抗争があって、そこで敵方の娘のジュリエットと出会うわけですが、もしかしたら、恋多きロミオにとって、ジュリエットは数多き女性の一人だったのかもしれないなと思うんです。そうなると、ただの不純な五日間を描いた物語にも思えますよね。だって、恋多き人にとって、恋って理屈じゃないじゃないですか。あんなにロザラインロザラインって言っていたのに、急にジュリエットと言い出すのって、軽薄に見えるところもありますよね。ただ、ロミオはヴェローナの街で両家から一目置かれていて、そういう意味では、それまでは冷静に生きてきた人なのかなと。そんな人が、あそこまで恋に突っ走ってしまう。そこまであせらなくても、他にもっとやり方があっただろうとも思うんです。人間関係においても割と受け身なのに、恋だけには突っ走ってしまう、ロミオにそこまで必死にさせたものは何なのか、そこは突きつめたいですよね。疾走感や若さゆえのエネルギーはもちろん出したいんですが、二人に照明が当たって、はい、恋に落ちた瞬間ですってやられても、人間味がないというか、観ているお客さんとしてもすっと入ってこれないと思うんです。演じている役者は別にその場で恋に落ちているわけでもないし。そういう意味では、フィクションとそうでない部分のバランスが大事だなと。技量も感情も大いに必要になると思います。大先輩の月川さんに役者として力をお借りして挑みたいですね。


――先に月川さんに取材したのですが、月川さんからも“不純”という言葉が出ました。
 特に打ち合わせをしたりとかっていうことでは全然ないんですが、そうお話しされているんですね。僕としては、人に迷惑をかけている時点で不純だなと思います。親は喜ばせないといけない存在だと思いますし、我が身を優先している段階で、僕の中では、人としてどうなんだろうと。だからこそ、そうしてしまうロミオをちゃんとやりたいですね。ただロマンティックというだけでは成立しないと思うので。

 月川さんは、声も含め、舞台上で本当に存在感のある方。顔立ちも本当に端正で、全身のただずまいが、すごい役者だな、かっこいいなと。盗めるものは盗んでいきたいですね。僕は普段からすごく熱量の多いタイプの人間ではないんですが、夏の暑い時期の公演、ここ10年分くらいの熱量を注ぎ込んで、熱量のある舞台にしたいと思っています。

<月川悠貴>
――蜷川さんの演出でジュリエットを演じることになりました。
 まず初めに思ったのは、今のこの年齢でジュリエットかあ、ということだったかな。(笑)
10年くらい前、蜷川さんが演出した、藤原竜也くんと鈴木杏さんの「ロミオとジュリエット」で、ジュリエットの婚約者であるパリス伯爵を演じているんです。そのとき、納得のいかない箇所がいくつかあって、そういう部分を蜷川さんと相談しながら、納得のいくものとして作っていこうと思っています。モンタギュー家とキャピュレット家の両家の確執があり、パリス伯爵という婚約者がいる中、ジュリエットは本当にロミオだけを愛せるのかどうかという疑問があって。過去の「ロミオとジュリエット」の舞台を観ていると、ジュリエットの愛は、ロミオに99パーセント、パリスに1パーセントという感じに僕には見えて。パリスに対しての愛はほとんどないんですが、はたして本当にそうなのかどうか。その愛のバランスを、演出家と相談しながら調整していきたいですね。ラストも、ジュリエットの不純な行為によって、パリスもロミオも死んでしまい、ジュリエットも自ら命を絶つ。その点についても、本当にロミオの後を追って命を絶ったのかなとものすごく疑問で。ロミオとパリスへの愛の分量によって、自ら命を絶つ理由も変わってくると思うんです。自分のやってきたことに気づいて、罪を償うために死んでいくのではないかというとらえ方もできるわけで。

――“不純”という言葉についてさらにおうかがいできますか。
 パリスという婚約者がいるのにロミオに走るということは、今でいう二股であって、純粋ではないですよね。両家の確執という要素も気になりますし。僕は、ロミオを100パー セント愛するということはできないと思うんです。いきなり恋に落ちるとか、そんな単純なものじゃないと思う。考え方が大人すぎるのかな(笑)。演じる人のとらえ方によっていろいろなジュリエットができると思うので、演出家と相談しながら、僕のとらえ方でジュリエットを作っていきたいですね。


――蜷川さんの舞台も数多く経験されています。
 演出家として素晴らしい方で、すべてにおいて尊敬しています。14歳から一緒に仕事しているから、もうかなり長い年数になりますけれども、一回もダメ出しされたことがないんですよね。優しいですよ。もしかしたら、あきらめてるのかな(笑)。

 僕、一回俳優をお休みして演歌歌手をやっていたときがあって、その演歌歌手をやめようと思ったとき、芸能界もやめようと思ったんですね。それで、書面にしてFAXを送ったら、それを見た蜷川さんが電話をかけてきて、「もったいないからやめないでほしい」と言ってくださって。そのとき、じゃさよならって言われていたら、僕は今いないですよね。そうおっしゃってくださるからには、自分にはまだ可能性があるのかなと思ったし、どんな形でもいいから何か結果を残さなくてはと思ったんです。何か一つ、誰にも負けないものを作りたいと思った。それで、前々から興味のあった娘役を極めようと思って、そこからはもう必死でしたね。

――月川さんの演じられる娘役は、観ていて、女として見習いたいなと勉強になります。
 普段、人間観察をしているんですよ。特に女性を。それで、美しくないなと思われる仕草や行動を自分の中から省いていくんです。人間、生まれたときは美しいのに、成長していく段階でいろいろと美しくないものが付随していくわけで。美しくないものを省いていって、その上で、例えば今回のジュリエットなら“不純”のように、役柄に必要と思われるものをつけていくんです。観察していると、女性一人、あるいは女性二人で歩いている人は、100パーセント美しくないですね。男性の目がないと、無防備で。恋人と歩いている女性は男性の目をものすごく意識しているから、それなりに美しいけれども。

――う、耳が痛いですが、男性についてはいかがですか。
 今って男性の方が意識が高くなっていると思いますね。美意識が高くなるということは、ナルシストであるということにもなりますが。だから、男性を観察していると、「誰も見てないよ」って思うような人もいますね。(笑)でもたまに、ああ素敵な男性だなと思う人は見かけますよ。

――女はどうしたらいいでしょうか……。
 女性であるということをもっと意識した方がいいですね。

――わかりました。ロミオを演じる菅田さんについてはいかがですか。
 撮影の時にちょっとお会いしただけですが、すごく落ち着いていて、僕より考え方が大人なのかなと思いましたね。たぶん、あうと思います。

――最後に抱負をお願いいたします。
 レジェンドの目撃者になってください。これが「ロミオとジュリエット」なんだと、納得してもらえる舞台を作っていきたいですね。

 ジュリエットについても、パリス伯爵という婚約者がありながら、ロミオに行っている時点で意識としては美しくないですよね。「ロミオとジュリエット」は、二人の青春ラブストーリーみたいなイメージがあるけれども、人間である以上、そんなきれいなものじゃないよ、と僕は思う。たぶん蜷川さんも同じことを考えているんじゃないかなと思います。



[取材・文=藤本真由(舞台評論家)]

公演概要

NINAGAWA×SHAKESPEARE LEGEND I「ロミオとジュリエット」
彩の国さいたま芸術劇場開館20周年記念

<公演日程・会場>
2014/8/7(木)〜8/24(日) 彩の国さいたま芸術劇場 小ホール (埼玉県)

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<キャスト&スタッフ>
演出=蜷川幸雄
作=W.シェイクスピア/翻訳=松岡和子
出演=菅田将暉、月川悠貴、矢野聖人、若葉竜也、平埜生成、菊田大輔、原 康義、青山達三、塾 一久、廣田高志、 間宮啓行、大鶴佐助、岡田 正、清家栄一、山下禎啓、谷中栄介、鈴木彰紀、下原健嗣、ハイクラソーナ、後田真欧、小松準弥、佐藤 匠、原 零史、福山翔大 他



2014-05-15 15:14

 緻密で繊細な演出で幅広い層から支持される演出家であり、個性的なバイプレイヤーとして活躍する俳優でもある、白井晃。その白井が2014年4月より、KAAT神奈川芸術劇場のアーティスティック・スーパーバイザー(芸術参与)に就任することとなり、都内某所でその就任会見および、白井自らが構成・演出するプロデュース公演第一作『Lost Memory Theatre』の制作発表が行われた。白井を始め、『Lost〜』に出演する山本耕史、美波、森山開次が登壇したその会見の模様を、ここでご紹介!

東京の演劇のムーブメントとも一味違う、KAATの今後の方向性が生まれると思う

  今回の会見は二部制となっていて、まずは白井晃の就任会見からスタート。

 白井は挨拶の中で「今回、(前任の芸術監督である)宮本(亜門)さんの4年間の充実した活動のあとを受けての後任としてお話をいただき、光栄とともに重責を申し付かったと思っております」と話し、芸術監督ではなく芸術参与であることについては「演出家としての仕事が先々まで入っていることもあり、そのことも踏まえて準備期間というものが必要だと考えました。ただし“芸術参与”というと役人的な名称のように感じるので、対外的には“アーティスティック・スーパーバイザー”という名称で関わらせていただくことになりました」と話し、仕事内容としてはほぼ“芸術監督”と同じであることが説明された。

 さらに、これまで世田谷パブリックシアターなど、複数の地方の公共劇場に深く関わってきた経験を活かしつつ、今後のKAATの方向性を考え、どんな公演と提携しどんな企画を考えていくか、これからの課題も踏まえて活動していくことを宣言。またKAATのある横浜という土地が「東京からちょっと遠くて、さほど遠くないという微妙な距離にある」とし、しかし「私も学生時代に神奈川県民ホールにジャズコンサートやバレエ公演など、東京ではなかなか見られないステージのために足を運んでいましたが、そうやって横浜まで来ることに逆に喜びを感じていたものです。ここではきっと東京の演劇のムーブメントともまた違う演劇の方向性が生まれるとも思うので、まずはこの劇場で一体どんなことがやれるかどうか。私が小劇場で芝居を始めた約30年前に比べて、公共の劇場が猛烈な勢いで増え、実は今、その存在が大変な課題になっていると思います。ハードが増えた分、その中で各劇場が何を行っていくのか、演劇の形をもう一度改めて考えつつ、スタッフと共にKAATで活動していきたいと思っています」と力強く語った。

三宅純の音楽をもとに“劇場”をモチーフにしたシーンを紡いでいく実験的な作品

 引き続き、白井に加えて山本耕史、美波、森山開次が登壇し『Lost Memory Theatre』の制作発表が行われた。

 今作は白井が芸術参与として参加する新シーズンの記念すべき第一作。白井自らが「実験的な作品を作りたい」という希望を出したとのことで、ここ数年、白井演出の舞台作品に楽曲を提供している音楽家・三宅純の新譜アルバム『Lost Memory Theatre act1』をもとに、キャスト、スタッフと共に稽古場で1から作り上げていく作品になるという。

 まずは白井が「自分がどういうものをこの劇場で作っていきたいかを考えた時に、今まで自分たちが当たり前に思っていた芝居の作り方とは若干異なるやり方で作品が作れないかと思ったんです。それで今回は私自身も初めてのことですが、一枚のアルバムから想起されたいろいろなシーンをコラージュのように積み重ねながら、“劇場”というものをモチーフにした作品を作ることができないだろうかと考えました。ですから、もしかしたら演劇といっていいのかどうかもわからない、コンサートのようでダンスパフォーマンスのようでもある、そういった領域のボーダーレスな作品群になっていけばいいなと思っております。今まで私自身、作品づくりの中で音楽を非常に重要な要素として考えてきましたが今回はそれを一層広げた形で、劇場全体に音楽と演者とパフォーマーが混在しているような祝祭空間を作りたいですね。就任第一作ということで、そういう意味では今までやってきたことではなく、やれなかったこと、やりたいと頭の中で思っても実現できなかったことを、この劇場で実現したい。テキストとしては谷賢一さんに加わっていただきます。場合によっては役者ともディスカッションし、ダンサーや音楽家のみなさんともいろいろな話をしながら、劇場やそこにまつわる自分たちの記憶を紡いで、ひとつの作品にしていきたいと思います」と、作品への思いをコメント。

 そして「山本くんとは20年ほど前、耕史くんが17歳くらいの時に役者同士としてご一緒して以来、何本も舞台をやっていて。昨年秋、やはり三宅さんの音楽でやらせていただいた『ヴォイツェク』にも出ていただいた際に、舞台を非常に大切にしている耕史くんの姿に共感を覚え、またぜひ一緒にやりたいと思っていました。そこにこの企画が立ち上がったので、この空間にはどうしても耕史くんにいてほしいと思い、打診したところ台本も何もないのに快く引き受けてくださいました(笑)。美波さんとは以前からよくお会いして、お話をするたび「今度ぜひ出てね」と切望してきたんですが、なかなか実現する機会がなくて。それで今回のお話をさせていただいたところ、戯曲もないのにやはり引き受けてくださって。彼女をいつも見るたびに美しさだけではなくて、感情面のバネの良さというものを感じていました。一度ぜひしっかり舞台でご一緒したかったので、こういう機会に恵まれて本当にうれしいです。森山さんとは9年前に『星の王子さま』というテアトルミュージカルを作った時にヘビの役で出演していただきました。踊りながらセリフを吐くという難易度の高い演技を求めて、それをこなしていただいて。またいつかご一緒したいと思っていたので、今回お声をかけさせていただいたところ内容がまだはっきりしていないにも関わらず参画していただけることになりました。さらに今日の会見にはいらしていただけなかったのですが江波杏子さんとは以前『天守物語』などでご一緒していまして、今回「こういう企画があるんですが」とお話したところ「あなたがそう言うんだったらやってあげるわよ」と言ってくださいました(笑)」と、今回のキャスト4人を紹介。さらには「三宅さん率いる生バンドが演奏し、歌手やダンサーなどのパフォーマーも加わり、カオスのようなめくるめく祝祭空間にしたいですね」と、構成案のヒントも少し明かしてくれた。


 キャスト陣からは、

山本「僕にとって白井さんはお兄さんであり、先生であり、俳優としての先輩で、戦友でもあり、どんな場所でどんなタイミングでも信頼できる存在です。その白井さんに声をかけていただき、さらに三宅さんと一緒に舞台を作られると聞いたら、僕のほうからぜひやりたいと思いました。この、何が起こるかわからない空間、そういうものを作ろうとする未知の世界感に僕はとても心躍らせていて。すべてにおいて自分を白井さんと三宅さん、共演者のみなさんに預けて、新しい自分、新しい場所での空間、新しい息吹みたいなものを見つけたい。ホント、何が起こるか今はわかりませんが(笑)、不安はまったくなくて期待しかありません。見たことのない、すごいものができるんじゃないかと僕自身も楽しみです」

美波「白井さんからこの舞台のお話を聞いた時は「絶対に出たい!」と二つ返事でした。白井さんの作品は、退廃的でドイツっぽいところがすごく好きで。冷たさや照明の感じ、きっと意味はあるんだろうけど直接的に物語には関わらないものが置いてあったりするところにも、観客としていつも刺激を受けていました。ぜひ一度ご一緒したかったので、今回は本当に楽しみ。キャストのみなさんのお名前を聞いた時も飛び上がって喜びました。ぜひ共演したかった山本さんや江波さんはもちろん、一度お会いできたらと思っていた森山さんとまさか自分が共演できるとは思わなかったですし、三宅さんはピナ・バウシュの舞台を観た時からのファンですし。今はもう、楽しみで仕方がないです。準備万端で稽古に臨みたいと思っています」

森山「僕も作品の創作をしているのでいろいろな公演の企画に参加する時に、演出家の方とのせめぎあいをいつも楽しみながらやっているんです。『星の王子さま』の時にも僕からの提案を白井さんがきっちり受け止めてくれて、一緒に創作に向かっていけたことはその後、自分にとって自信になりましたし、そのあとの活動にもいい影響を与えてくれました。この『Lost~』というタイトルから、自分たちが想像することはたくさんあって。まだ何も決まっていませんが自分の中ではもう動いているんですよ。毎朝、三宅さんの音楽を聞きながらああでもない、こうでもないと家で踊っているので、私としてはもうこの公演はスタートしていて(笑)。この創作に関われて本当にうれしく思います」

と、それぞれがとても幸せそうな表情で意気込みを語っていた。


 さらにはパリに住む三宅と会場のモニターがSkypeでつながっていて、リアルタイムで三宅からもコメントが寄せられた。
「今回は音楽家冥利に尽きるお話で、まず企画の詳細を聞いて驚くと同時に大変光栄にも思いました。みなさんがおっしゃるように、どんなものができあがるか今はまったくわからない状態で僕も臨んでおります。こうなったら最後の最後、千秋楽の日までこのクリエーションのカオスを維持できるように楽しみたい。ハッピーエンドもあれば、不時着、座礁もあれば、急激な場面転換もある、日々予想できないような舞台にしたいですね」との言葉に、白井もキャスト3人も微笑みながら力強く頷く様子がうかがえた。

 KAATの新たな船出が目撃できる、興味深い試みとなりそうな『Lost Memory Theatre』。演劇史に残る刺激的な体験を期待しつつ、今夏の上演を待ちたい。

[取材・文=田中里津子]

公演概要

白井晃演出 KAAT神奈川芸術劇場プロデュース 『Lost Memory Theatre』

<公演日程・会場>
2014/8/21(木)〜8/31(日) KAAT神奈川芸術劇場 ホール (神奈川県)
2014/9/6(土)〜9/7(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール (兵庫県)

<キャスト&スタッフ>
出演/山本耕史、美波、森山開次、白井晃、江波杏子
演奏/三宅純、宮本大路、伊丹雅博/今堀恒雄、渡辺等、ヤヒロトモヒロ、赤星友子ストリングス・カルテット
歌手/Lisa Papineau、勝沼恭子

2014-04-24 12:07

 美輪明宏が脚本・演出・美術・衣裳を手がけ、自身主演を務める「愛の讃歌〜エディット・ピアフ物語〜」が三年ぶりに再演される。20世紀を代表するフランスのシャンソン歌手エディット・ピアフの生涯の物語は、たびたび映画化され、日本でも数多くの舞台が作られ続けているが、美輪版の舞台は、実際に彼女を知る人たちから聞いた話も多く取り入れ、ステロタイプではない、芸術家としての真のピアフ像を描き出そうとするもの。ピアフの晩年を真摯な愛で支えたテオ・サラポ役の木村彰吾、ピアフの妹シモーヌ・ベルトー役のYOUを交え、美輪が作品への意気込みを語ってくれた。


インタビュー!

――美輪明宏版「愛の讃歌」においては、エディット・ピアフの描かれ方が他の作品とは異なっています。
美輪 昔、ミュージカル形式で上演された作品や映画もいろいろと観ましたけれども、テオ・サラポのテの字も出てこない。恋人だったボクサーのマルセル・セルダンが飛行機事故で死んで、ピアフが狂乱状態になったところでチャンチャンという感じで、変だぞと思いましてね。他にいろいろな方がおやりになった舞台も勉強のために観ましたけれども、だいたいそれと同じで。

 私が一番許せないのは、ピアフを、無知蒙昧で、淫乱で、我がまま勝手で、常識知らずで、礼儀作法も知らない野人、それで周囲から手を焼かれて、半分嫌われていて、ただスキャンダリスティックでという女として描いていることなんです。日本の女優さんもそういう演技をなさるし、演出家の方もそれを要求するし。それでもう私、頭に来てしまって。私が調べたのと全然違う。だから、よし、自分で脚本を書いて、まったく理解されていない、彼女の芸術家としての部分を描こうと思って。芸術家じゃない人が携わっていると、彼女の芸術家としての資質がまったく理解されないままなんです。

 伝記もいろいろありますけれども、ちょっと読めば、彼女が、作詞家レイモン・アッソーによって、徹底的に礼儀作法や常識、言葉遣い、知識、教養、そういったものを仕込まれていたことがわかるんです。「バラ色の人生」だけではなくて、さまざまな曲の詞や作曲も手がけていますし。昔、シャンソン歌手のイヴェット・ジローが来日したときに聞いた話なんだけれども、作曲家マルグリット・モノーが作ったことになっている曲にしても、実際には、ピアフが作曲して、編曲をモノーに頼んだのが、モノー作曲ということになっているものもあるんです。
 それと、日本でよく歌われる「愛の讃歌」、あれがまったくの誤訳なんです。


――原詞を読むと、結婚式でお祝いに歌う感じの曲ではないなと思います。
美輪 スケールが全然違うでしょう。「この大地が割れて ひっくり返ったって」「どうってことは、ありゃしない」、あなたのためならどんなことでもするわという。まったくの無私の精神で。あまりに違い過ぎているから私、自分で訳して日本語で歌っていたんだけれども、それでもフランス語の深み、大きさには足りないなと思って、それで、日本語で直訳したものを語って、それからフランス語でそのまま歌うという方法にしているんです。その方が彼女の世界を具現化できるし、お客様にもていねいだと思って。

 シャンソン歌手ジャクリーヌ・ダノが日本へ来て、ジョイント・コンサートをやったとき、彼女はピアフの近所に住んでいたから、聞いたんです。テオはピアフのお金目当てで、利用しようとしていたという話があるけど、どうなの?と。そしたら彼女、笑い出しちゃったんです。晩年のピアフは借金だらけで、利用しようにもフランスからもアメリカからも見捨てられている状態だったし、ボロボロで、誰も訪ねる人もいないくらいだったと。それで、テオは、ルックスとかそういったものを越えてピアフを愛していたと。ピアフはいつもユーモアで人を笑わせて、冗談ばかり言っていて、物欲がまったくなくて、そこらへんにあるものを何でも人にあげちゃうような人だったと言っていました。着るものに無頓着だったのが、マレーネ・ディートリッヒが勧めてクリスチャン・ディオールを着るようになったとか、いろいろなことを教えてもらったんです。それでテオは、彼女の天真爛漫なところ、その精神をものすごく愛していたと、ジャクリーヌ・ダノは言っていました。そんな天使みたいな男、いるんですかと聞いたら、彼がまさしくそうだったと。「私が愛したのはマルセル・セルダンだった、私が生まれてからずっと待ち続けていたのはテオ・サラポだった」というピアフの言葉も、彼女に教えてもらったものなんです。
 これまで何度か上演してきて、そのたびに何度も練りあげてきましたが、今回は理想的なキャストが揃いました。


――木村さんは、その天使のような男テオ・サラポを演じられます。
美輪 あなた、天使なんですか。
木村 美輪さんは、僕の性格をよくご存じで。優しくて、思いやりにあふれて、無償の愛を捧げるような男だということをよくわかっていて、それで白羽の矢が立ったんだなと。
美輪 正反対ですよ!(笑)
木村 だから、やっていてもう本当に楽ですね…って、ちょっと、誰か突っ込んで(笑)。
美輪 いたたまれなくなってる(笑)。テオを演じる人には、子供の部分、童心の部分が絶対必要なんですよ。大人になると、世故に長けてきちゃって、手垢がついて汚れてきてしまうところがあるじゃないですか。それが匂う人はやっぱり、ちょっと。これまで何十回も上演してきて、なかには、それに近い人もいたわけです。そうなると、全体が薄汚れていたのかなと思うんです、今思えば。
木村 でも僕、今日、お前は現場のごみやって言われましたよね(笑)。
美輪 誰に?(笑) 自分でそう思ってるのね。謙虚ですね、あなた(笑)。

――そして、YOUさんが三年前に引き続き、妹シモーヌ・ベルトー役を演じられます。
美輪 何も計算しなくて済むんです。江原啓之さんに言わせるとこちらの前世は、フランス社交界の高級娼婦だったそうです。彼女の会話は、バラエティ番組でも何でも、おしゃれでしょう。皮肉を言ってもおしゃれ。この作品に必要な、フランス風の会話が無理なくできる人なんです。フランス人の会話って、常にダジャレの応酬で、大阪人の会話に似てるんです。ボケたり、しゃれたセリフで返したり。そういう会話のできる日本人ってなかなか少ないんですよ。ユーモアって、人間として余裕がないと出てこないものですから。ギリギリいっぱいで生きている人には冗談が通じない。その点、こちらは余裕がおありだから。
YOU 姉を慕う気持ちということでいえば、私はエディット・ピアフも大好きだし、美輪さんも大好きなので、演じているときも気持ちはすごく自然です。私は美輪さんのこの舞台を通じて、真実のピアフ像に早めを知ることもできたというのがあって。もともとピアフの曲、大好きだったんです。
美輪 ずっと以前から私の舞台やコンサートに来てくださっていたのです。それで、プロデューサーに楽屋にお連れしますと言われても、絶対行きませんとおっしゃって。実物に会って、イメージが崩れちゃうのが嫌だったんじゃない?(笑)
YOU いえ、緊張しちゃうから無理と思ったんです。観たときの気持ちそのままで帰りたいというのもあったし。
美輪 いつだったか無理やり楽屋に連れてこられて、紹介されて。それ以来のおつきあいなんです。
YOU 木村さんもそうだと思うんですけれども、私、「愛の讃歌」は大好きな演目なので、本当は客席で観たいんです。
木村 そう、僕としても、美輪さんの舞台の中で一番好きな作品なんですよ。だってこれ、憎めない舞台じゃないですか。出てくる人がみんないい人で、優しくて。
美輪 一緒に出たくないって(笑)。

――でも、出演されたからこそ、毎日美輪さんの歌を聞けるということがありますよね。
YOU そうなんです。本番中、舞台袖から見て、聞いてます。歌われる歌は全部好きですし、舞台が進むにつれてしっちゃかめっちゃかになっていくけれども、そこに歌が入っているというのがいいなと思っていて。お客さんみんなそうだと思うんですけれども、最後の方なんて、美輪さんを観ているという感じじゃないと思うんですよね。それくらい、美輪さんがピアフに入っているから。ピアフが死んでしまった! 、…あ、美輪さんだった、みたいな感じで。

――ご自身、降りてきたなという感じはあったりするのでしょうか。
美輪 あります。今いるなあと思うとき。前に池袋の東京劇術劇場で上演したとき、ある日、ものすごい胃痙攣になって。昔お酒の飲みすぎで胃痙攣になって病院に運ばれたことがあるんだけれども、それは、もうずっとお酒を断っていたときだったんです。それなのにものすごく気持ち悪くなって、舞台に立てないんじゃないかという感じで。そのとき、スタッフの一人が私に言ったんです。「昨日はピアフの命日でしたね」って。しまった!と思って。命日には黙祷してお花を捧げましょうねって言っていたのに、すっかり忘れてしまっていた。それで楽屋でお花とお酒を捧げたんです。そうしたらすうっと痛みがとれていって、何ともなくなった。
木村 僕、バッグにいつも胃薬入れてるんで、今度何かあったら言ってください。
美輪 ふふふふ。江原さんが舞台を観に来て、ピアフが今日袖のところにいましたねと言うこともあったし、ファンレターで、女の人が見えたんですがあれは何だったんでしょうかというのもよくあるし、よくよく来ているんだと思います。私、マイクを使って自由に強弱をつけられるように、左右の足を上下違う位置にして立ってるんです。それが、ふっと気がつくと、仁王立ちになっていることがあって。それはピアフの立ち方なんです。だから、ああ、今日来ているなって。ピアフを演じるのは呼吸するように楽です。私、憑依型の演技者だから。ここにいる二人も憑依型だし。
木村 僕、よくゴーストに憑依されるんですよ。幽霊も見るし。
美輪 また変なのばっかり来るんです、この人のところには(笑)。ピアフってね、仕事となると鬼になってガラッと変わって、まったくストイックで厳格で、大変だったみたいです。妥協がなくて、お辞儀の仕方一つからものすごく厳しくて、イヴ・モンタンも徹底的にしごかれたみたいです。私もどちらかというとそういう感じですし。

――稽古場で拝見していて、美輪さんが非常に細かな動きをつけていらっしゃるのが印象的でした。
美輪 私、シャンソンのファンタジストという、歌とお芝居とが一緒になっているジャンルを60数年やってきているでしょう。ここは4分の1、音を高くした方がより情感が伝わるとか、このとき目線は上か下か横か、そういうちょっとしたことですべて表すことができる。芝居のセリフについても、この言葉をこう粒立てるとか、そういう作り方をしていく。演出する際には役者さんたちに、そうやって自分が60数年研究してきた表現の仕方をお伝えしていくという感じです。それと、脚本も美術も音楽も衣裳も演技も、同じ水準でぶつかり合って炸裂するといいものができるんです。どれか一つでも力不足だとだめ。幸い私は技術も人柄もすばらしい、いいスタッフに恵まれて長年やって来れました。

――それにしても、エディット・ピアフとテオ・サラポとの結びつきには心打たれるものがあります。
美輪 ピアフのために生まれて死んだ、こんな男の人いるのかなと思います。親でも子でも、我が身がかわいいですものね。それを、命もいらない、全部相手に捧げるわけだから。そんな人いますか。
木村 でも、ピアフがそういう人だったから、テオみたいな人にめぐり会えたんだなと思いますよ。
美輪 そうやってお互いに愛し合う人間もいるんだということを、今の不毛の愛の世の中に提示したいんです。時代がどんどんひどくなっていっているでしょう。恋愛をしたことがないとか、恋愛相手がヴァーチャルだったりとか。手作りの、人肌のぬくもりが感じられるものが本当の愛情であって、ヴァーチャルでは得られないものなんですよということを言いたいです。
木村 本当にいい舞台ですから、多くの人に観てほしいですよね。
YOU 若い人にもいっぱい観てきてほしいです。

[取材・文=藤本真由(舞台評論家)]



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公演概要


美輪明宏版『愛の讃歌』
〜エディット・ピアフ物語〜

<公演日程・会場>
2014/4/12(土)〜5/5(月・祝) 新国立劇場 中劇場 (東京都)
2014/5/9(金) 倉敷市民会館 大ホール (岡山県)
2014/5/10(土)〜5/11(日) 北九州芸術劇場 大ホール (福岡県)
2014/5/17(土)〜5/18(日) フェスティバルホール(大阪府)
2014/5/20(火) アクトシティ浜松 大ホール (静岡県)
2014/5/24(土) 長崎ブリックホール (長崎県)
2014/5/27(火) 愛知県芸術劇場 大ホール (愛知県)
2014/5/31(土) リンクステーションホール青森 大ホール (青森県)
2014/6/3(火) 東京エレクトロンホール宮城 (宮城県)
2014/6/7(土) 新潟県民会館 大ホール (新潟県)
2014/6/13(金)〜6/15(日) KAAT神奈川芸術劇場<ホール>(神奈川県)

<キャスト&スタッフ>
脚本・演出・美術・衣裳・主演:美輪明宏
出演:美輪明宏/木村彰吾/YOU
/勝部演之・若松武史・城月美穂・柄沢次郎・大野俊亮・浜谷康幸
/江上真悟・小林永幸・根間永勝・真京孝行・大曽根徹・今井忍・金井修・迫田圭司
/高森ゆり子・小林香織・迫水由季・越田樹麗・杉山美穂子・建守良子・日沖和嘉子
演奏:セルジュ染井アンサンブル


2014-04-11 11:55

 作家の文体を体現すべく、舞台表現のさまざまな可能性を試みて、笑いと涙を誘った「詭弁・走れメロス」(2013)。そのときと同じく、原作・森見登美彦×脚本&演出・松村武×主演・武田航平がタッグを組んだ「有頂天家族」の初日の幕が開いた(1月16日19時の部、本多劇場)。京都の街を舞台に、狸と天狗と人間とが織り成すファンタジックな作品で、昨年テレビアニメ化もされている。

初日レポート

 京都は糺ノ森に住む狸の下鴨一家。宝塚歌劇をこよなく愛し、宝塚風美青年に化けてビリヤード場に通う母(樹里咲穂)、土壇場に弱い長男・矢一郎(渡辺大輔)、蛙の姿となって井戸で隠居暮らしの次男・矢二郎(奥田努)、物語の語り手を務める三男・矢三郎(武田航平)、化けるのが下手な四男・矢四郎(藤原薫)という家族構成だ。亡き父総一郎は狸界を束ねる総領“偽右衛門”だったが、人間たちに狸鍋にされ、不慮の死を遂げる。矢三郎は、男子大学生に化けたり、女の子の姿(新垣里沙)に化けたりして、恩師である天狗の赤玉先生こと如意ヶ獄薬師坊(久保酎吉)の面倒を見ているが、赤玉先生は、人間の女性である弁天(佐藤美貴)に恋するあまり、天狗としての神通力を失っている。亡き父の弟、早雲(小林至)とその二人の息子、金閣(成清正紀)、銀閣(小手伸也)は、下鴨一家を何かとライバル視。そして、次期“偽右衛門”をめぐり、矢一郎と早雲のバトルが始まる――。 「詭弁・走れメロス」における、登場人物が通り過ぎる京都の街並みの細かなディテールまでをも、身体表現を駆使して見せ、人物の実際の、そして青春の、ひいては文体の疾走感をも表現した手法は引き続き生かされている。今作では、松村の演出はさらに一歩踏み込み、狸が“化ける”状態の表現を探ることで、舞台上において人間が“化ける=演じる”ことの本質にも迫ろうとするかのようである。例えば、主人公・矢三郎は主に男子大学生に化けており、その姿を演じるのは武田航平だが、女の子に化けた姿は新垣里沙が、それ以外の姿に化ける際はまた異なる役者が演じ、化けずに狸の姿である場合は役者が狸のぬいぐるみを操るという手法で表現される。つまり、人間等の例外的キャラクターをのぞいて、舞台上に立つ役者は、何かに“化けている”、すなわち自分そのものではない存在を“演じている”状態にある。このめくるめくような“演技”状態が、“化ける”ことを扱うこの物語の舞台化における大きな醍醐味である。

 「詭弁・走れメロス」での大車輪の活躍で話題を呼んだ小手伸也と小林至は、新たに加わった成清正紀と共に、今回もまた、人間から車輪まで、いったい一人何役をやっているのかわからないほどの役を演じてみせる。車輪になって三人輪になってくるくる回り、「シャリーン」と効果音を発するシーンのおかしみ。小手はキューピー人形を思わせる福々しさもキュートなドヤ顔で小技の数々を披露、小林は自動人力車を引く自動人形に扮する際の異形の表情が忘れがたく、シリーズ第二弾実現の影の立役者ともいえよう。こうして、物語の筋、“化ける”ことの表現に加え、凄まじい情報量が客席に向かって発せられるが、松村の演出はその圧倒的なマッスを巧みに交通整理して見せる。「詭弁・走れメロス」に続き、京都の街に対する森見の愛が伝わる物語だが、舞台を観るうち、松村の想像力の翼によって、京都の街の上空を天狗の如く翔るかのような思いにとらわれる。  「詭弁・走れメロス」の力演力走も記憶に新しい武田は、舞台人として一回りも二回りも骨太に成長した姿で主人公にして語り手を務める。語尾の音程が安定すれば、言葉をさらにきっちりと客席に届けられることと思う。「詭弁・走れメロス」でクールなファム・ファタルに扮していた新垣は今回、男の狸が化けた少女という難しい役どころを、外股姿も雄々しく好演。決して女の子が粋がっているようにならず、あくまで中身は男と見せる、その様が、それでいてとてもキュートである。矢一郎役の渡辺は、怒りのあまり“虎”となるシーンで、獅子舞の如く大暴れ。父の死因は実は自分にあるのではないかと心密かに思い煩い、文字通り“井の中の蛙”となる次男・矢二郎役の奥田が、憂いの表情に蛙のぬいぐるみをかぶり、蛙飛びもぴょんぴょん、大奮闘。蛙自体は頭の部分のみで示され、人の肩に止まっていてずり落ちる場面では、奥田が自分の顎を滑り落とすという、身体を張ってのコントのような動きを連発。矢二郎は蛙となって後、元の狸の姿にも戻れず、化けることもできなくなっているのだが、父の死の真相を知り、在りし日の父と興じた化け姿、叡電(叡山電車)となって、京都の街を疾走する。一人いったい何役? トリオが車窓を通り過ぎる情景となって後ろ向きに走りゆく中、パンダグラフを頭に、車両を身体に着け、彼は前に進む。“井の中の蛙”が父の死を乗り越え、成長を遂げる様に、思わず涙を誘われる。物語の盛り上げどころを知る演出が心地いい。  宝塚をこよなく愛し、“黒服の王子”の通り名をもつ宝塚風美青年に化ける母狸を演じるのは、宝塚出身の樹里咲穂。宝塚出身者を用いての宝塚のパロディは、クリエイターと演じる者双方に、宝塚歌劇への愛と敬意、そして高いレベルの芸がなければ、宝塚の独特さをよくない方向に強調するだけで終わってしまう。その意味で、今回の松村と樹里の仕事は特筆に値する。黒燕尾服のラインはあくまでシャープにさっそうと、それでいて、長い髪を束ねているからだけではなく、女性としてのかっこよさがにじみ出る。男役の際には男性に扮することで体現していたかっこよさを、男役風の姿を演じて女性としてのベクトルで表現する。男役スター時代から実力派としてならし、退団後も女優として着実にキャリアを積み重ねてきた樹里の魅力を、松村の演出がすっきり引き出す。ビリヤードのキューを片手に華麗に歌い踊るシーンは見どころ聴きどころ。捕らわれそうになった際の、狸のぬいぐるみを細かに震えさせて動揺を表現する箇所も大笑い。

 そんな盛りだくさんの舞台の要石ともいえるのが、赤玉ポートワインを飲み散らかす失意の老天狗を演じる久保酎吉。久保の魅惑の仏頂面が非常にかわいらしく生かされている。  矢三郎の口癖は、「面白きことは良きことなり!」。その精神を松村が担って、抱腹絶倒、それでいてしみじみと、そしてどこか異界を覗き見ているような不可思議さ漂う舞台が誕生した。初詣で終わるラストシーンも、新年の観劇にほのぼの似つかわしい。


[文=藤本真由(舞台評論家)]

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公演概要

アトリエ・ダンカン プロデュース 七変化音楽劇「有頂天家族」

<公演日程・会場>
開催中〜1/26(日) 本多劇場 (東京都)
2014/2/8(土) 京都劇場 (京都府)

<キャスト&スタッフ>
原作:森見登美彦(幻冬舎文庫刊)
演出:松村武
出演:武田航平/渡辺大輔/新垣里沙/佐藤美貴/小手伸也/小林至/成清正紀/奥田努/藤原薫/樹里咲穂/久保酎吉

2014-01-20 15:41


[左より]浜崎香帆,神宮沙紀,脇あかり,櫻井紗季,高嶋菜七,上西星来,橘二葉,小林晏夕,飯田桜子 [衣装協力:晴れ着の丸昌]

昨年6月に新メンバーで復活した伝説のガールズグループ・東京パフォーマンスドール(通称TPD)が、TOKYO MX元旦スペシャル特番に生出演し、自身初となる中継レポーターや公開収録ライブに挑戦し、早くも2014年の活動をスタートさせた!

2014年1月5日(日)、タワーレコード渋谷店B1F「CUTUP STUDIO」にて行われたDVD「PLAY×LIVE『1×0』」(プレイライブ『ワンバイゼロ』)EPISODE 1・2の発売記念イベントに、晴れ着姿で登場した。

【アンコール公演 エピソード1&2】2014/1/31(金)〜2/11(火・祝)

TOKYO MX元旦スペシャル特番に生出演!

 この日のTPDは、まず朝の番組「Happy 初春 半蔵門ライブ!2014」(朝7時〜8時放送)に生出演し、3箇所の中継場所(浅草・浅草寺、国立競技場、南大沢アウトレットパーク)に分かれて各地の模様をレポート。新春にふさわしい爽やかな笑顔で初のレポーターを務めたメンバーの櫻井紗季(16)は「緊張しましたが、一度やってみたかったレポーターのお仕事を、新年早々やらせていただき、めちゃくちゃ嬉しかった」とコメント。


ライブ撮影:桜井隆幸

 その後、渋谷の劇場「CBGKシブゲキ!!」に移動し、歌とダンスのパフォーマンス「DANCE SUMMIT HAPPY NEW YEAR 2014」の公開収録を行った。朝の番組内で観覧募集をした100名限定のプレミアライブであったが、先代TPDのヒットナンバー「ダイヤモンドは傷つかない」「WEEKEND PARADISE」などのリアレンジバージョンや新生TPDのオリジナル曲「DREAMIN’」(発売未定)の計5曲を披露し、新旧のファンが楽しめる内容だった。リーダーの高嶋菜七(17)は「まずは、1月31日からの私たちの公演『PLAY×LIVE「1×0」』の再演を成功させ、今年はCDデビューできるようにもっともっと努力します」と新年の抱負を語った。

 そして、すぐさまTOKYO MXの半蔵門スタジオに移動し、夕方の番組「Happy 初春 半蔵門ライブ!2014」(16時45分〜18時放送)に駆け付けた。そこでは、朝の中継エリアで準備したオリジナルお土産(浅草寺からは特大羽子板、国立競技場からは天皇杯パンフレット、南大沢アウトレットパークからはお節料理)を持参し、番組ゲストのRHYMESTER宇多丸さんからの鋭いツッコミに、TPDメンバーは初々しいリアクションでスタジオを楽しませた。

 尚、この日公開収録したライブ模様が、1月18日(土)夜7時30分からTOKYO MX(http://s.mxtv.jp/)でスペシャル番組として放送されるので、是非チェックしてほしい。

晴れ着姿で初のDVD発売記念イベント実施!

衣装協力:晴れ着の丸昌

 新春にふさわしい色鮮やかな晴れ着姿は、瞬く間に会場を華やかな雰囲気にかえ、イベントが始まった。ファンへの新年の挨拶を終えたTPDメンバーは「新年の抱負」「お正月の想い出」を書き初めで披露。そしてその後は、自身のニコ生チャンネルでも行っている人気バラエティコーナーを実施。リーダーらしからぬ噛みっぷりがお茶目な高嶋菜七のコーナー「滑舌女王への道」や、シチュエーションお題に即興芝居をする企画「小林晏夕のアドリブ選手権」、ファンのお悩みをTPDみんなで考える「脇あかりの大丈夫っちゃ!」のコーナーなど、日頃の「演劇とライブ」のPLAY×LIVE公演では見れない等身大の素顔が垣間見れるイベントとなった。例えば、TPDの心を1つにし解答をそろえる「上西星来のマジックワード」のコーナーでは、お題「2013年の重大ニュースと言えば?」に対して、メンバーの大半が「東京オリンピック」や「TPD復活」を挙げる中、高嶋は「TPP」、上西は「ふなっしー」と、会場から笑いをさそう場面も。最後に、1月31日から始まる「PLAY×LIVE『1×0』」EPISODE 1・2の再演に向けて、「芝居やライブにおいて、1つ1つの表情や動きなど、細かいところまでこだわってやりたい。昨年の8月の時にはできなかった部分を、みなさんに届けたいです。」と上西は力強くコメントし、イベントは終了した。

尚、1月18日(土)20時30分から、TPDニコ生チャンネルが公式放送としてオンエアされることが発表された。現在放送中(全国15局)のレギュラー番組「東京号泣教室 〜ROAD TO 2020〜」のダイジェストが、初めてニコ生でプレイバック放送される。新生TPDのことを知らない方は必見だ。

また、DVD「PLAY×LIVE『1×0』」EPISODE 3・4・5の発売記念イベントも決定。彼女たちの魅力を、生で体感できるこのイベントも是非チェックしてほしい。

■ニコ生公式放送決定!
日程:2014年1月18日(土)20:30〜22:00放送
タイムシフト視聴期間:7日間
番組URL:http://live.nicovideo.jp/watch/lv163816919
内容:TVレギュラー番組「東京号泣教室 〜ROAD TO 2020〜」ダイジェスト放送、バラエティコーナーなど

■DVD 2タイトル同時リリース情報
2014年1月31日(金)発売

「PLAY×LIVE『1×0』」 EPISODE 1 / Qbix-SD37 / 5,000円(税抜)
特典映像:公演メイキング、高嶋菜七・小林晏夕Specialインタビュー
初回封入特典:抽選イベント応募ハガキ

■レギュラー番組『東京号泣教室〜ROAD TO 2020〜』
出演:東京パフォーマンスドール、古田新太
番組公式HP:http://tokyo59.com/
※全国15局で放送中!

東京パフォーマンスドール オフィシャルサイト http://tpd-web.com/
東京パフォーマンスドール オフィシャルTwitter  https://twitter.com/TPD_official
東京パフォーマンスドール 公式ニコ生チャンネル http://ch.nicovideo.jp/tpd2525
PLAY×LIVE『1×0』エピソード5公式ダイジェスト http://youtu.be/tT7-Yew3l9A

■PROFILE
 1996年のライブを最後に活動を休止した伝説のグループ、東京パフォーマンスドール(通称:TPD)。
当時のガールズグループの中で、いや音楽業界全体の中でも強烈な個性を放ち、独自の音楽性と圧倒的なパフォーマンスで常に新たな試みへの挑戦を続け、後に女優の篠原涼子や、EAST END×YURIのメンバー市井由理や、穴井夕子などを輩出した。
 あれから約17年の時を経て、2013年、6月。そのDNAを継承し、他の追随を許さない、唯一無二のパフォーマンス集団となることを目標に掲げ、全国8,800人の中から選びぬかれた、平均年齢15歳、10名による新生・東京パフォーマンスドールが、誕生した。2013年8月15日より演劇と映像、歌とダンスが融合したデビュー公演「PLAY×LIVE『1×0』」(プレイライブ『ワンバイゼロ』)を約1年にわたり、渋谷の「CBGKシブゲキ!!」にて連鎖公演に挑戦中!  

高嶋菜七(たかしまなな)/1996年12月31日生まれ(16歳)/O型/兵庫県出身
上西星来(じょうにしせいら)/1996年8月14日生まれ(17歳)/A型/愛知県出身
櫻井紗季(さくらいさき)/1997年3月8日生まれ(16歳)/A型/山口県出身
浜崎香帆(はまさきかほ)/1997年5月2日生まれ(16歳)/A型/福岡県出身
脇あかり(わきあかり)/1998年1月24日生まれ(15歳)/A型/大分県出身
飯田桜子(いいださくらこ)/1998年4月28日生まれ(15歳)/B型/東京都出身
神宮沙紀(しんぐうさき)/1998年9月12日生まれ(15歳)/O型/群馬県出身
小林晏夕(こばやしあんゆ)/1998年11月9日生まれ(15歳)/A型/静岡県出身
橘二葉(たちばなふたば)/1999年3月5日生まれ(14歳)/A型/和歌山県出身
美波沙南(みなみさな)/1999年4月28日生まれ(14歳)/A型/大阪府出身

公演概要

東京パフォーマンスドール PLAY×LIVE『1×0』 (プレイライブ『ワンバイゼロ』)
アンコール公演 エピソード1&2

<公演日程・会場>
2014/1/31(金)〜2/11(火・祝) CBGKシブゲキ!! (東京都)

<キャスト&スタッフ>
脚本:ウォーリー木下 登米裕一 横山拓也
演出:ウォーリー木下
出演:東京パフォーマンスドール/板倉チヒロ/小松利昌(声の出演) TPD DASH!!


2014-01-10 18:49

 今年4月2日から始まりました歌舞伎座新開場柿葺落興行が、12月8日(日)昼の部、十二月大歌舞伎『仮名手本忠臣蔵』の公演において、新開場以来の来場者数(一幕見席を含む来場者数の合計)100万人を達成しました。


壽初春大歌舞伎のチケットはこちら

来場者数100万人を達成!

 12月8日(日)、劇場前には「御来場壱百萬名様達成」と記された看板が掲示され、1階の大間(ロビー)には、歌舞伎座の「座旗」と懸垂幕が飾られました。また、昼の部来場のお客様全員(1階から3階の指定席、4階の幕見席のすべて)に記念品が配られました。

■歌舞伎座支配人、船越直人より
「当初の1年で110万名様としていた予想より早く100万名様をお迎えできました。まずは、お客様皆様に御礼申し上げたいと思います。皆様の、休場中の歌舞伎座に対する思いの強さや、新開場へのご期待の大きさが、今日の100万人につながっていると思っています。大変有難く存じております。これからも多くの人々に愛される劇場、日本を代表する劇場としてのご期待に応えて参りたいと思います」

公演概要

歌舞伎座新開場柿葺落 壽初春大歌舞伎

<公演日程・会場>
2014/1/2(木)〜1/26(日) 歌舞伎座 (東京都)

<出演者>
坂田藤十郎/松本幸四郎/中村吉右衛門/中村梅玉/片岡我當/中村橋之助/
片岡孝太郎/市川染五郎/ほか

<演目>
<昼の部>一、天満宮菜種御供/二、梶原平三誉石切/三、松浦の太鼓/
四、鴛鴦襖恋睦
<夜の部>一、仮名手本忠臣蔵 九段目 山科閑居 /二、乗合船惠方萬歳/三、東慶寺花だより


2013-12-12 11:17

魅せる音楽集団!圧巻の47都道府県ツアー再び!
ブロードウェイ作品においてアメリカカンパニー史上初03年から12年まで、計621公演、95万人動員!

2003年夏の日本初上陸以来その人気を不動のものとしたブラストシリーズ。
マーチングバンドやドラム・コーのエンターテインメント性を高めた、視覚と聴覚を刺激する迫力のステージ!12種類以上の金管楽器と51種類ものパーカッションを駆使するパフォーマーと、ビジュアルアンサンブルと呼ばれるフラッグやバトンなど様々な道具を操るダンサーたちの究極のアンサンブル!!
静から動へ、美しく完璧なフォーメーションを魅せるラヴェル作曲ボレロ。スネアドラムがぶつかり合う、息をのむ対決バッテリー・バトル。情熱的なリズム、燃える光彩が心を震わせるマラゲーニャ。
多彩な曲あふれる本編に加え、名物となった休憩時間のパフォーマンス、終演後のキャストとのミート&グリートまで、常に新しい感動がここにある光と音が魅せるEMOTIONAL JOURNEY。日本全国47都道府県を再び駆け巡る!!

【関連記事】 2度目の47都道府県ツアーを行うブラスト!3人の日本人キャストが語るブラスト!とは!?

スペシャルサポーターにSHELLYが決定!

<本人コメント>
私が金管バンドをやっていた小さい頃に「ブラスト!」を知っていたら、絶対観ていました!
音楽を聴かせるだけでなく、”魅せる“というのがすごい!!
生の音楽のドキドキ感!見終わった後の清々しい気持ち!
胸にぐっと響く感動を会場で体感しよう!

<SHELLYプロフィール>
1984年5月11日生まれ。神奈川県出身。
14歳でファッション誌のモデルとしてデビュー。日本語×英語のバイリンガルとしてテレビ・ラジオで活躍する。またTVでは多数のレギュラーを持ち、様々なジャンルの番組に出演している。


公演概要

<公演日程・会場>
2014/6/28(土) シアター1010 (東京都)
2014/6/29(日) グリーンドーム前橋 (群馬)
2014/7/15(火) 千葉県文化会館 (千葉)
2014/7/16(水) コラニ―文化ホール 大ホール (山梨)
2014/7/17(木) 石川県こまつ芸術劇場 うらら 大ホール (石川)
2014/7/18(金) 越前市文化センター大ホール (福井)
2014/7/21(月・祝)宇都宮市文化会館 大ホール (栃木)
2014/7/22(火) 相模女子大学グリーンホール(神奈川)
2014/7/24(木) 長岡市立劇場 大ホール (新潟県)
2014/7/29(火) 大宮ソニックシティ 大ホール(埼玉)
2014/8/6(水)−24(日) 東京国際フォーラム ホールC (東京)
2014/8/26(火) 高周波文化ホール(新湊中央文化会館)大ホール (富山)
2014/9/7(日) 茨城県立県民文化センター 大ホール(茨城)


2013-12-03 13:39

 パリ・オペラ座の闇に生きる怪人と、クリスティーヌとの愛は、生きていた――。イギリスが世界に誇るミュージカル作曲家、アンドリュー・ロイド=ウェバーの最高傑作「オペラ座の怪人」の後日談、「ラブ・ネバー・ダイ」が、2014年3月、日生劇場にお目見えする。物語の舞台は、遊園地を擁する観光地として名高い、アメリカ・ニューヨーク郊外コニーアイランド。メリーゴーラウンドをはじめとする華麗な舞台装置は、好評を博したオーストラリア・メルボルン版がそのまま再現される。ダブルキャストでファントム役を務める市村正親と鹿賀丈史に、それぞれ意気込みを聞いた。

≫市村正親≫鹿賀丈史

市村正親インタビュー!

――すでに上演された作品の舞台をご覧になっての感想はいかがですか。
  DVDを観ましたが、すばらしい舞台ですね。「オペラ座の怪人」から10年後に、今回のこの新たな物語が展開するわけですが、その10年が経ったというシチュエーションが濃厚に出ていて。今回の物語が生まれる上で、あの「オペラ座の怪人」の中にこういう伏線があったのかと、ご覧になるお客様にとってはおおっと驚くような瞬間があると思いますよ。

――これまで歌ってきて感じるアンドリュー・ロイド=ウェバー楽曲の魅力とは?
 「ジーザス・クライスト・スーパースター」「キャッツ」「エビータ」など歌ってきて、今度で5作目になりますが、どの作品においても耳に残る曲が多いですよね。お客様としても、どこかのフレーズが必ず耳に残った状態で劇場を後にする感じで。「キャッツ」でいえば「♪メモリー」が耳に残るように、今回の作品では「♪Love never dies」というフレーズが耳に残るんじゃないかな。アンドリュー・ロイド=ウェバーも今回、特に気合が入っていて、とことん美しいメロディ、きれいなサウンドを、これでもか、これでもかという感じでオーケストラで奏でていっている、そんな印象を受けますね。ただ、歌といっても、ミュージカル、芝居を伴うものなので、歌い上げるというよりは、思いを伝える、そのためにある楽曲だと思って歌っていますね。

――ファントムという役どころについてはいかがですか。
 ファントムは、クリスティーヌに対する愛のみに貫かれている、とにかくそれに尽きますよね。今回も、その愛のために、彼女をアメリカに呼び寄せるわけですから。作ってみなければわからないけれども、僕が演じる上では、ある種の狂気、孤独感をもった男になると思う。「オペラ座の怪人」の世界初演を演出したハロルド・プリンスが、こう言っていたんです。「彼は、手足をもぎとられた男だ。けれども、男としての機能はある」。当然、普通の人間ではないわけですよね。相当心がゆがんでいるわけだし。DVDを観た感じでは、そのゆがみが少ない感じがしたんだよね。僕のファントムだと、しょっぱなから相当ゆがむ気がするな(笑)。孤独な男ですからね。孤独なかっこいい男、じゃないんだよね。

――鹿賀丈史さんとは、これまでに共演はありましたが、同じ役での競演は初めてです。
 丈史は丈史のすばらしい歌唱力がありますからね。丈史の歌い方で来ると思う。僕は同じ声は持っていないから、僕なりのファントムを演じていく。「ハムレット」にしても、違う役者がやると、同じ物語でもまったく違うものに変わっていくじゃないですか。そこがダブルキャストのおもしろさですよね。お客様にしてみれば、どっちも観てみたいと思うという。

――市村さんからみて、鹿賀さんのファントムはどのような感じになると思われますか。
 丈史のファントムは、ダンディで紳士的な感じになるんじゃないかな。

――小説家ガストン・ルルーが生み出した「オペラ座の怪人」の物語が、長年、世界中で愛され続けてきていますが、その魅力とはどこにあるとお考えですか。
  小説そのものの映画版のファン自体はそんなに多くないわけで、やはり、アンドリュー・ロイド=ウェバーが、この物語にこのメロディをつけた、そこに尽きると思いますね。それによって、オペラ座の地下に棲む、マスクで顔を覆い隠した謎の音楽の天使という不思議な部分というものが描き出されたということが大きいと思いますよね。今回の作品はその完結篇になりますが、タイトルを訳して「愛は死なず」、その言葉に尽きるところがあると思いますね。

――抱負をお願いいたします。
 降って湧いたような話で、「オペラ座の怪人」のファントムの10年後を演じることになりました。メルボルン版をそのまま再現し、ベストキャストが集まっての上演になります。海外のように何年もロングランするわけではなく、1か月半という期間の、非常に密度の濃い上演になりますので、その歴史的瞬間を、日生劇場に観に来ていただければありがたいなと思います。

鹿賀丈史インタビュー!

――すでに上演された作品の舞台をご覧になっての感想はいかがですか。
 DVDを観ましたが、舞台装置であるとか、照明、衣裳であるとか、いまだかつて観たことのないような美しさを感じました。ミュージカルではありますが、それらの要素一つ一つの美しさだけをとってみても、一つの作品として成立するような感じで。そこにアンドリュー・ロイド=ウェバーの音楽が乗るわけですから、日本版も非常にすばらしい舞台になるのではという気がします。

――これまで歌ってきて感じるアンドリュー・ロイド=ウェバー楽曲の魅力とは?
 僕は彼が作曲した「ジーザス・クライスト・スーパースター」でデビューしたんですが、そのときから、彼の多才さ、人間の心模様や状況を描き出すメロディに大変魅力を感じてきました。どこか官能的でもあってね。そのあたりをまた体験できると思うと、自分としても非常にうれしいですね。

――ファントムという役どころについてはいかがですか。
 子供のときから背負っているものがある人間ですよね。嫉妬であったりといった人間らしさも抱えていて、そして、一つの愛を貫くという気持ちがある。いろいろな思いを抱えた人間をおもしろく表現できたらと思いますね。オペラ座の地下にずっとひそんでいて、行き場がなくて、人前になかなか出てこない一方で、非常に多才な人物でもある。そのあたりの人間像が興味深いですよね。

――人前に出る俳優業というお仕事とは正反対のところがありますね。
 (役者を)長い間やっているとね、たまに人前に出たくなくなったりするときもあったりなんかして、ハハハ。そういうとき、自分に他の才能があれば、裏方でやってみたいなと思うことが、なきにしもあらずだったりするんですけれども。

――ファントムはしかも、マスクで顔を隠しています。
 僕は今年「シラノ」の舞台で鼻を隠してましたからね。最近隠し事が多いんですよ(笑)。ファントムもそうですけれども、隠すというか、マスクをかぶることによって、よりお客様に想像させるところがあるとも思うんですよね。表面だけではなくて、内面もちょっと見せなくするところがあるというか、そのあたりのおもしろさがあるなと。

――音楽への愛が大変深い人物でもあります。
 多才であり、音楽、芸術を内に宿している人間ですよね。創造に関わる人間の深さもすごく魅力的だと思いますね。

――鹿賀さんご自身、長年創造に関わってきていらっしゃいますが、その喜びと苦しみはどこにあるのでしょうか。
 つい先日も一本舞台を終えたばかりですけれども(「エニシング・ゴーズ」)、60歳過ぎてね、人間、思ったように成長していくものではなくて、その都度、努力であるとか、いろいろと積み重ねていかないと成長していかないものなんですよね。歳をとったからうまくなっていくというものでもない。人間の持っている本質的なものと、努力とをうまく取り込んでいく、そういった成長過程というものも含めてのおもしろさというところではないかと思うんですけれども。

――小説家ガストン・ルルーが生み出した「オペラ座の怪人」の物語が、長年、世界中で愛され続けてきていますが、その魅力とはどこにあるとお考えですか、
 人が生きるということ、人を愛するということ、そして創造するということ、それらの要素がうまくミックスされ、物語として非常にスリリングに展開していくところなのかなと思います。

――市村正親さんとは、これまでに共演はありましたが、同じ役での競演は初めてです。
 僕自身は共演するのと変わらない気でいるんですよね。出来上がりは当然違うものになってくるわけだし、それぞれが40年間培ってきたいいものがお互いに出せればいいなと思っていて。

――鹿賀さんからみて、市村さんのファントムはどのような感じになると思われますか。
 いっちゃんは、内面をぐっとえぐり出してくるような表現がうまいんですよね。今回もそんな魅力が出てくるんじゃないかと思います。

――抱負をお願いいたします。
 イギリス、オーストラリアに続いて三か国目となる上演で、大きな期待も寄せられていると思いますが、日本のお客様を満足させられるようなすばらしい作品をしっかりと作り上げていきたいと思っています。

 [取材・文=藤本真由(舞台評論家)]
[撮影=平田 貴章]

公演概要

ミュージカル「ラブ・ネバー・ダイ」

<公演日程・会場>
2014/3/12(水)〜4/27(日) 日生劇場 (東京都)
★ファントム役を演じる市村正親、鹿賀丈史による対談型アフタートークショーを開催いたします。
【アフタートークショー開催日】
4/2(水)13:30 公演終了後
4/15(火)13:30 公演終了後
※該当回のチケットをお持ちの全てのお客様がご参加いただけます。

<キャスト&スタッフ>
出演:市村正親/鹿賀丈史(Wキャスト)、濱田めぐみ/平原綾香(Wキャスト)、田代万里生/橘慶太(Wキャスト)、彩吹真央/笹本玲奈(Wキャスト)、鳳蘭/香寿たつき(Wキャスト)上野聖太、さけもとあきら、染谷洸太、田村雄一、丹宗立峰、遠山裕介、港幸樹、安福毅、秋園美緒、秋山エリサ、彩橋みゆ、飯野めぐみ、家塚敦子、池田知穂、
池谷祐子、佐々木由布、吉田萌美
音楽:アンドリュー・ロイド=ウェバー
歌詞:グレン・スレイター
脚本:アンドリュー・ロイド=ウェバー、ベン・エルトン/グレン・スレイター、フレデリック・フォーサイス



2013-11-25 13:10


劇団スタジオライフが、次回本公演『LILIES』の製作発表会見を行った。


製作発表

 カナダの戯曲家ミシェル・マルク・ブシャールによる本作は、1952年のカナダの刑務所を舞台として紡がれる愛の物語。1996年には『百合の伝説』のタイトルで映画化され、世界各国で数々の映画賞を受賞している。戒律に厳しいカトリックが権勢をふるっていた前時代のカナダで、かけがえのない愛を見つけたふたりの少年――シモンとヴァリエの悲劇が、緻密なセリフの数々によって描出される。禁じられた愛のひとつの形として少年愛を扱ってはいるものの、会話劇の精密さや美しさ、キャラクター一人ひとりの造形、カナダの片田舎の社会風潮を観客に感じさせずにおかない筆力など、戯曲としての完成度は溜め息もの。人を愛し、何かを失ったことのある者ならば必ず心に突き刺さる普遍的傑作である。

 スタジオライフがこの作品を舞台にかけるのは4年ぶり4度目。舞台設定が男子刑務所内であるため、役者全員が男性で構成されるスタジオライフとの相性は抜群で、200 2年の初演以来上演するたび大きな評判を呼んでいる。まさに劇団の代表作にして、ファンにとっても“特別”な演目のひとつ。


 会見では演出の倉田淳が、戯曲『LILIES』との出会いや初演時の心持ち、2度の再演を経てますます深まる作品への思いなどを熱弁。
「生身の人間同士がぐっちゃぐちゃになってぶつかり合う、愛の闘いを描きたい」と意欲を明かす。さらには「優れた戯曲の条件のひとつは、観た人が“あっ、これは私の話だ”“私の知っている○○さんの話だ”と感じられることだ」との原作者ブシャール氏の言葉を紹介しながら、それこそが『LILIES』が世界中で上演されている理由ではないかと語った。

 引き続き倉田から、今回の『LILIES』では新たな試みに挑戦する、との発表も。まずひとつには、若手俳優の大胆な起用。
メインキャスト以外にもルーキーを大量投入し、パワー溢れる舞台になりそうな予感である。ふたつ目には、各界から高い評価を得ている美術デザイナーの乗峯雅寛氏を迎え美術デザインを一新、「生まれ変わった舞台装置になる」とのこと。他にも、トリプルキャストという布陣で各チームそれぞれの味わいを出していく点や、旧キャストが前回とは対照的な役どころで参加している点など、見逃せない2013年版『LILIES』の魅力を挙げ、期待を煽った。

 トリプルキャスト3チームのうち2チームにおいて主人公・シモンを演じる仲原裕之は、2009年の『LILIES』でも同じ役柄を経験している。
「4年前にやり残したことがいっぱいあります。以降様々な舞台を経験してきて、今だからできるシモンが絶対あると思っています」と折り目正しくコメントした。

 一方、仲原以外でシモンとヴァリエを演じる3人(鈴木翔音、松村泰一郎、藤森陽太)はいずれも入団4年以内のホープであり、『LILIES』初挑戦。
「先輩方と話している中で特によく出てくる作品の名前がこれです」(松村)、「お客さまにとっても思い入れのある作品だと認識しています」(鈴木)と、大役への抜擢に緊張気味の様子だ。
そんな彼らに向けて仲原は、「前の『LILIES』の時、僕は稽古で倉田さんから“野武士みたい”ってダメ出しされてました(笑)。責任の重い役柄かもしれませんが、飾らず、自分のありのままでぶつかっていけばいいんじゃないかと思います!」とエールを送った。

 また、今回の制作発表は若手キャストの紹介の意味も込め、銀座のトラットリアを借り切っての“製作発表+懇親パーティー”といった形式で行われた。ひと通りの会見が終わると、取材陣一人ひとりの間近へと役者があいさつに回り、より率直な質疑応答や意見交換がなされていた。

[文=上甲薫]


プロモーションムービー

劇団HP:http://www.studio-life.com/
LILIES 公式HP:http://www.studio-life.com/stage/lilies2013/

公演概要


Studio Life

<公演日程・会場> シアターサンモール (東京都)

<Sebastianiチーム>「LILIES」
2013/11/20(水)〜12/8(日)

<Marcellienチーム>「LILIES」
2013/11/21(木)〜12/7(土)

<Erigoneチーム>「LILIES」
2013/11/25(月)〜12/6(金)

<キャスト&スタッフ>
作:ミシェル・マルク・ブシャール
上演台本・演出:倉田淳
出演:
<Sebastianiチーム>
仲原裕之/松村泰一郎/鈴木智久/青木隆敏/曽世海司/笠原浩夫/船戸慎士/大村浩司/神野明人/原田洋二郎/澤井俊輝/ほか
<Marcellienチーム>
鈴木翔音/藤森陽太/千葉健玖/楢原秀佳/牧島進一/山本芳樹/曽世海司/大村浩司/神野明人/原田洋二郎/澤井俊輝/ほか
<Erigoneチーム>
仲原裕之/宇佐見輝/青木隆敏/堀川剛史/倉本徹/藤原啓児/大村浩司/神野明人/原田洋二郎/澤井俊輝/ほか


2013-10-29 17:53


 タンゴの名曲の数々がたっぷり聴ける、芝居+ショーの新感覚作品「ロコへのバラード」。2011年に上演されたこの舞台が改訂され、再演される。ソング&ダンス・シーンの抜粋稽古が、初日に先駆けて公開された。



稽古レポート!


 ブエノスアイレスの書店を舞台に、朗読会に集う人々と書店主、店員らが、小説の世界と現実とを行きつ戻りつ織り成す人間模様が、タンゴのメロディーにのって描かれてゆく。舞台中央、大量の本を積み重ねた巨大な樹木のセットが印象的だ。タンゴというと、セクシーなコスチュームをまとった男女が繰り広げる官能的なダンスというイメージが強いが、今回の舞台では、普段着姿の登場人物たちがアストル・ピアソラの「リベルタンゴ」にのって朗読会の準備をする様をダンスで描いていくなど、新鮮な部分も。石井一孝がいかにもミュージカル俳優らしく朗々と歌い上げたり、特別出演の西島千博がバレエチックな動きを見せたり、異種格闘技的な味わいも感じられる。

 朗読会を取り仕切る書店員役の彩吹真央は、鍛え抜かれた背中と肩で見せるタンゴの表現が、いかにも宝塚の男役出身者らしい。彼女のやわらかい女らしさが伝わってくる歌唱は懐かしくもあたたかく、そのやわらかさがダンス・シーンにおいても発揮されると表現もまた違ってくるように思う。今回初参加の大月さゆは、難しいリフトもいとも軽やかに、宝塚の娘役として培ってきた寄り添いスキルとコケティッシュな表情がかわいらしく生かされている。タンゴダンサーCHIZUKOとCLAUDIOの参加もあり、無論、情熱的なタンゴの魅力も存分に。新しくなったフィナーレで、女性ダンサーたちがまとう黒の衣裳がなまめかしい。


 作品の音楽監督を務めるのは、日本のタンゴ界を牽引し続けるバンドネオン奏者の小松亮太。東京公演中、半分の回で彼がゲスト出演し、ダンサーの動きと俊敏に呼応しての生演奏を披露するが、この演奏が圧巻である。 ――魅かれあう二つの心が、互いに溶けあうぎりぎりのところで切り結ぶ、そのひりひりとした官能がもたらすエクスタシー。タンゴとは、生と死と、その両者をつなぐエロスとに濃密に彩られた音楽であることを伝えてやまない。


[取材・文=藤本真由(舞台評論家)]


公演概要

Tango Musical 『ロコへのバラード』

<公演日程・会場>
2013/9/19(木)〜9/29(日)東京グローブ座 (東京都)
2013/10/4(金)〜10/5(土) サンケイホールブリーゼ (大阪府)

<キャスト&スタッフ>
構成・演出・訳詞:小林香
音楽監督:小松亮太
振付:マリオ・モラーレス/西島千博/港ゆりか
出演:彩吹真央/CHIZUKO/CLAUDIO/石井一彰/大月さゆ/進藤学/西島千博(特別出演)/石井一孝
ゲスト出演:小松亮太【9/19(木)20(金)19:00、21(土)18:00、22(日)14:00、25(水)19:00、27(金)14:00、29(日)13:00】
演奏:キンテート・オセイロ



2013-09-25 16:35


8/28(水)に都内で行われたイベント『メリリー・ウィー・ロール・アロング 〜それでも僕らは前へ進む〜』の様子をレポートします!


イベントレポート!

司会者の紹介で、柿澤勇人さん、高橋愛さん、ラフルアー宮澤エマさん、海宝直人さんの4人が『メリリー・ウィー・ロール・アロング』の曲にのって登場。
まずはそれぞれ真面目なご挨拶から!
柿澤さん「フランク役の柿澤勇人です。今日は楽しいイベントにしたいと思います!よろしくお願いします!!」
高橋さん「ベス役の高橋愛です。よろしくお願いします。」
宮澤さん「メアリー役のラフルアー宮澤エマです。よろしくお願いします。」
海宝さん「これから配役が決まります(笑)海宝直人です。よろしくお願いいたします。」


MC「舞台と客席が非常に近い!この近さで会えるってことは、なかなかないですよね。そして今日は何とあの方からメッセージを頂いております!」
大きなスクリーンいっぱいにさわやかな笑顔の小池徹平さんが登場!!!
小池さん『みなさん こんにちは。チャーリー役の小池徹平です。実は今日は初めての歌稽古をしてました!初めて歌うミュージカルの曲、本当に素晴らしくて早く舞台でキャスト、スタッフ一丸となって皆さんのもとに届けたいと思います!楽しみにしておいてください。僕たちのこと応援よろしくお願いします!!!』

MC「小池さんってどんな方?」
柿澤さん「僕とエマさんはスチール撮りと取材で初めてお会いしたんですよ!爽やかで優しい方でした。」
宮澤さんが「緊張してたんですけど、プロフェッショナルという感じですごく話しかけて、とても優しく接してくれました。」

高橋さんと小池さんは以前世界バレーのオフィシャルサポーターで共演したことがあったようで−
高橋さん「WaTさんが創った曲をモーニング娘。も一緒に歌ったんです。ダンスレッスンも一緒に受けさせて頂きました!」

ここからは「ストーリー」をご紹介!

作曲家チャーリー(柿澤さん)と作詞家フランク(小池さん)、メアリー(宮澤さん)は学生時代からの20年来の親友同士。お互いに夢を語って過ごしてきました。

フランクとチャーリーの最初の頃の作品にオーディションを受けにきたのがベス(高橋さん)。
MC 「早くもフランクはベスと付き合うんですね」
柿澤さん「すみません(笑)」
MC「二人は結婚し、子供も生まれて順調な夫婦生活を送ります。フランクとチャーリーはミュージカルをつくり、大成功!!メアリーはどんな感じでからむのですか?」
宮澤さん「メアリーの仕事は小説家なんですが、売れていない頃は、衣裳をつくったりオーディションを手伝ったりとかでサポートするサポーティングメンバーなんです。」

MC「デビュー作が大ヒットしてからフランクがおかしくなっていくんですよね。 」
チャーリーは良い作品を作りたい、フランクはお金がほしいと名声とお金を得た彼らは目指す方向が違ってきます。
MC「なんとフランクは、チャーリーとフランクの作品の主演女優ガッシー(ICONIQさん)と浮気してしまうんですね。ベスはそれを知っているんですか?」
高橋さん「気づいてると思いますよ」
結果、フランクはベスと離婚し、ガッシーと結婚します。
一同「ひどい!!」
そして方向性の違いからチャーリーとフランクは決別します。
MC「20年間、色々なことを経て、フランクの大成功をお祝いするパーティーがあります。そこからこのミュージカルはスタートするんですよ。要するに逆回転ですね。なので、最初は最低な関係の中から始まります。パーティーの最中にメアリーが怒鳴りこんでくるのですが、それはなぜだと思いますか?」
宮澤さん「20年越しの叶わぬ恋をフランクにしてて、まぁフランクは気がついてないんですが・・・酷いですよね!そんな思いもありつつ『もう、フランクどうしちゃったの』って怒ったんです。」
MC「そこから逆回転していくってことは、この3人が出会う純真無垢なところでストーリーが終わるってことですね。これはシンデレラで言うとガラスの靴に足が入ったところからスタートして、最終シーンが継母にいじめられて掃除しているところで終わるって事だね。」
(笑)
高橋さん「シンデレラは逆にしない方がいいと思います!!」
ごもっともです!!!!
MC 「実際に柿澤さんと宮澤さんは実際にロンドンで「メリリー」をご覧になったんですよね。どうでした?」
宮澤さん「今回の私たちと違うところは、ロンドンではキャストが40代の方々なんです。とても成熟したお芝居だったかなと思います。私たちは20代のキャストなので、もっとエネルギッシュな感じになるかなと思います。」
MC「海宝さんはまだ役が決まっていないとの事ですが」
海宝さん「そうなんです。これからワークショップを通して(演出の宮本)亜門さんが決めるそうです。」
MC「チャーリーとフランクどっちか出来るとしたら、どっちがやりたいですか」
海宝さん「そうですねぇ。フランクですかね。物語の中でくらいプレイボーイをやってみたいので」 
MC 「皆さん、短時間でメリリーのことがだいぶお分かりになられましたでしょうか。他の方に話す時にこの話を頭にいれて逆回転していくと観やすくなりますよ。」

<STORY>
 1976年、ロサンゼルスのとある豪邸で、ハリウッドのプロデューサー・フランク(柿澤勇人)の映画の大ヒット記念パーティーが開かれている。そこに紛れ込んだアル中の中年女性・メアリー(宮澤エマ)。NYで人気を呼んでいる実力派劇作家「チャーリー・クリンガス(小池徹平)」のことが話題にのぼると、途端に騒ぎ始め「私たち3人は昔、切っても切れない親友同士だったのよ!」と言い残して去ってしまう。招待客たちは半信半疑だが、パーティーの喧騒の中でフランクはひとり、かつて同じおんぼろアパートに住み、同じ夢を志した親友、チャーリーとメアリーと過ごした20年間を思い出していた。  

 さかのぼること10余年、1960年のNY。小さなナイトクラブでミュージカルが上演されている。チャーリー・フランクの作詞作曲コンビで、女優・ベス(高橋愛)が主演を務める人気公演である。偶然クラブを訪れた大物プロデューサー・ジョーと彼の妻ガッシー(ICONIQ)は、ショーを観て非常に気に入った様子で、もっと大きな劇場での新作公演を持ちかける。  

 脚本家、作曲家、ライター、役者、TVディレクター、映画プロデューサー、マネージャー…。華やかなブロードウェイ・ショービジネス界の裏側の、若者たちの成功と挫折を現在から過去へ、時代が移りゆく20年間をさかのぼりながらたどっていく。
 『なぜこうなってしまったのか?』
 『どこで間違えたのか?』
 『これは抗うことのできない運命だったのか?』
 それでも僕らは、前へ進む−。

作品を一旦離れて事前に書いて頂いたアンケートから色々聞いていきました!

MC「皆さんミュージカル好きということで、一番好きなミュージカルソングは?まずは宮澤さん、ディズニーの曲が好きです。特に『美女と野獣』のオープニングの曲がすごく好きです。で、ここから気になる点が、カラオケで友達と二人で何役もこなしながら歌うのが最高に楽しいとの事ですがどういうことですか?」
宮澤さん「これはですね、ベルが朝起きて町に行く、せわしないシーンなんです。村の住人がたくさん登場し『ボンジュール』って色んな人が言って始まるので、すごい息切れしながら歌うんです。セリフも全部、字幕が出てこないのに言うんです!」

MC「だいぶミュージカル好きの領域ですね。」
宮澤さん「そうですね。他人に見られたくないシーンです(笑)」

MC「次は演じてみたい役は?の質問に柿澤さん、一言フライングする役って書いてありますけど」
柿澤さん「フライングしたいじゃないですか!したことあります?スパイダーマンとかピーターパンとか今回のロミジュリ(現在出演中のミュージカル『ロミオ&ジュリエット』)でも死のダンサーが空から降りてくるんですね、それでかっこいいなぁって思って」
MC「高橋さんは宝塚の『エリザベート』が一番好きということで、劇場に行って観られてたんですか」
高橋さん「一番最初に宝塚で『エリザベート』をやったのが雪組で、一路真輝さんがトート役、高嶺ふぶきさんがフランツ・ヨーゼフ役だったんです。私は高嶺さんが大好きで、観に行けなかったんですけど、ビデオで何度も見ました。」
MC「高嶺さんにお会いしたことは?」
高橋さん「ご挨拶をする機会があって、もう感動しすぎて大号泣しました」
MC「海宝さんは『ウィキッド』のエルファバ役をやりたいとの事。全身「緑」になりたいって願望じゃなくて?」
海宝さん「緑願望(笑)ではなく、フライングで上がっていくトニー賞のパフォーマンスの映像をみて」
一同柿澤さんをみて「フライング、フライング!!」
柿澤さん「大空高く〜舞い上がるの〜♪」
歌ってくれました!

会場は笑いに包まれたまま次のトークテーマへ
MC「今日は皆さんに内緒でお客様からも質問を頂いてたので、いくつか答えて頂きたいと思います。柿澤さんへ『ピアノの練習はしてますか』」
柿澤さん「作曲家の役なのでピアノを弾くシーンがあるんです。亜門さんには頑張ってくれてと言われてるんですけど、楽譜をみてやっぱり難しいですね。今日から練習します!」
MC「では、次『皆さんはどんな40歳になりたいですか』」
宮澤さん「メアリーは最初のシーンではお酒に入り浸っている日々を送ってかなり太ってるんですが、そうではなく、擦れてなくて、お仕事が出来ていたらいいなと。40代でまたメリリーが出来たら嬉しいです。」
高橋さん「パワフルな人になりたいです。今階段上るだけでも疲れちゃうんですけど・・・ジムとかで鍛えて健康的な人でありたいです。」
海宝さん 「役者として色んな役を演じられるようになっていたいです。」
柿澤さん「40代は何をしているかわからないですけど、芝居を続けていきたいと思ってます。年を重ねるからこそ魅力的に出来る役をやっていきたいです」
MC「皆さまぜひ、40代になっても応援し続けてください。」

いよいよ歌披露の時間です。


トップバッターは柿澤勇人さん!『ロミオ&ジュリエット』より「僕は怖い」ロミジュリの公演に先駆けての披露です♪
そして高橋愛さん『ウエディングシンガー』より「いつか」
会場も手拍子で大盛り上がり!!
続いて海宝直人さんRENTより「ONE SONG GLORY」
『RENT』の作詞・作曲を手掛けたジョナサン・ラーソン氏は「メリリー」の作詞・作曲をしたソンドハイムを師として仰いでいました。
『RENT』の制作において、ソンドハイムの影響を多大にうけたようです。
そしてラフルアー宮澤エマさん『レ・ミゼラブル』より「On My Own」
宮澤さんはこの日がプロとしてお客様の前で歌う初めての日!英語でのOMOをご披露頂きました!会場で聞かれた方は宮澤さんの凄さを肌で感じて頂けたのではないでしょうか。
MC「感動して次の曲紹介ができないです」
ラストは柿澤さんでした!『スウィーニー・トッド』より「ジョアンナ」5月のスウィーニー公演が思い出されます。

皆さまに5曲お届けし、出演者の皆さんはやりきった表情で再登場♪

MC「ほんとに良かった!ところで最後に宮澤さんに一つお願いが「メリリー」を正式な発音で言ってもらっていいですか。」
宮澤さん「MERRILY WE ROLL ALONG」
MC 「『MERRILY』っていうのは『陽気に』って意味なんですよね。なのでこの作品は陽気なミュージカルなんです。『それでも前へ進む』は『何があってもメリリーに生きていこう』って事ですね。」

最後に一言ずつ
海宝さん「全員が20代というカンパニーも初めてで、宮本亜門さんとご一緒するのも初めてなので、きっと新しいものが生まれるのではないかなと、ワクワクしております。皆さん応援よろしくお願いいたします。」
宮澤さん「今日の歌『初披露』から始まり、初舞台、初ミュージカル全てが初めて尽くしなので、何が起こるか未知の世界ですが、素晴らしい共演者、演出家に囲まれて精一杯やっていきます!応援よろしくお願いいたします。」
高橋さん「亜門さんの作品に初めて出させて頂き、今日ここに立てただけでも幸せです。素敵な共演者の方々から学ぶことがたくさんあると思うので、これからベスを作り上げていきたいと思います。子どもがいる役なので、その空気感など上手く出せればいいなと思います。皆さん楽しみにしててください。」
柿澤さん「今日は暑い中ありがとうございました。魅力的な才能ある素晴らしいキャストが集まって作り上げるエネルギッシュな舞台になりますので、ぜひ応援よろしくお願いいたします。」

盛大な拍手の中、4名退場
この後会場に来てくださったお客様と記念撮影会!あっと言う間の1時間20分でした!!
お越し頂いた皆さま本当にありがとうございました。どうしても来られなかった皆さま当日の模様が少しでも伝わりましたでしょうか。
キャスト、スタッフとも「メリリーな」カンパニーになりそうです!!今後とも応援よろしくお願いいたします!!!

−公式ブログより抜粋−

公演概要

メリリー・ウィー・ロール・アロング 〜それでも僕らは前へ進む〜

<公演日程・会場>
2013/11/1(金)〜11/17(日) 天王洲 銀河劇場 (東京都)
2013/12/6(金)〜12/8(日) シアター・ドラマシティ (大阪府)

<キャスト&スタッフ>
演出・振付:宮本亜門
作曲・作詞:スティーヴン・ソンドハイム
出演:小池徹平 柿澤勇人 ラフルアー宮澤エマ
上山竜司 広瀬友祐 海宝直人
菊地創 山田宗一郎 上條駿 小此木麻里 関谷春子 皆本麻帆 万里紗
ICONIQ 高橋愛

<公式HP>http://hpot.jp/merrily/



【関連動画】 小池徹平さん、柿澤勇人さん、ラフルアー宮澤エマさんからのメッセージ!
【関連記事】 ミュージカル初出演の小池徹平に意気込みをきいた!メリリー・ウィー・ロール・アロング 〜それでも僕らは前へ進む〜
2013-09-13 15:13


  フランス人クリエイター、ジェラール・プレスギュルヴィックの世界的ヒット・ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」。宝塚版に引き続き上演される男女混合バージョンでは、2011年の初演時、ロミオ役を演じて絶賛された城田優が二役でティボルト役にも挑むことが大きな話題となっている。初日に先駆けての公開リハーサルを観た(9月2日、シアターオーブ。この日のキャストは、ロミオ=城田優、ジュリエット=フランク莉奈、ベンヴォーリオ=尾上松也、ティボルト=加藤和樹、マーキューシオ=東山光明、パリス=岡田亮輔、死=中島周)。


公開リハーサルレポート

 純粋さの結晶体の如き城田優のロミオが素晴らしい。もともと美しい姿かたちの人だが、役を通じて発露する内面の美しさとも相俟って、光り輝くようなロミオを体現している。プレスギュルヴィック版においては、もともとのシェイクスピアの戯曲からいくつか大きな変更がなされているが、城田の役作りは、原作で描かれた恋するヒーロー像をあくまで忠実に踏まえた上で、このバージョンにおける整合性をも貫くものである。仲間たちと戯れる楽しいナンバー「世界の王」において、城田ロミオがこの世界に対し、美しい理想を抱いていることが示される。物語の結末を知っている、つまり、その理想の実現が彼の早すぎる死によってついえることをあらかじめ知っている観客は、次いで彼が死の恐怖を歌い上げる「僕は怖い」に、確かな悲劇の予兆を感じるのである。

 二幕冒頭、ロミオとジュリエットとの結婚は街中に知れ渡ることとなる。対立する両家、モンタギューとキャピュレットの人々が互いへの憎悪をたぎらせる中、ロミオが愛に生きることの尊さを歌う「街に噂が」が強烈な印象を残す。自分たちと相手とは違うのだと人々が互いを区別し合い、その意識がさらには差別へ、そしていわれなき憎悪へとつながっていく、その絶望的な愚かさを、城田ロミオは知っている。その愚かしさの中で、人はみな同じ存在であり、愛し合うことでそう確認できるのだと一人信じる彼は、異邦人の如き絶望的な孤独をまとってそこにいる。そして、憎しみの果て、親友マーキューシオを殺され、逆上したロミオはティボルトを殺す。殺めた後、心の内のすべてが流れ出してしまったかのように崩れ落ちる、そのからっぽな表情が痛切きわまりない。自分がなぜ人を殺めるなどという行為に出てしまったのか、彼には自分が信じられない。そして、そんな自分は果たして心から愛するジュリエットに愛される資格はあるのだろうかと、激しく煩悶するのである。ジュリエット役のフランク莉奈には、そんな城田ロミオを大きく包み返す愛と、乙女の可憐な立ち居振る舞いが欲しい。

  ロミオの親友、ベンヴォーリオ役に扮した尾上松也も好演、歌舞伎界からミュージカル界へ、新星の颯爽たる登場である。ビッグ・ナンバー「どうやって伝えよう」を、きらきらと輝くもつかの間、幻の如く消え去ってしまった青春に捧げる挽歌として堂々と歌いきった。ロミオとジュリエットに限らず、多くの若者たちが命を落としていくこの物語は、そもそもが青春の挽歌たる精神を備えているが、このバージョンにおいて新たに与えられた大きな責務を見事に果たした。立ち姿にうわついたところのないお坊ちゃんぶりで、ロミオやマーキューシオと戯れるときに見せるひょうきんな顔もキュートである。

 ティボルト役の加藤和樹は、大人っぽくワイルドなルックスながら、繊細で傷つきやすい少年を心に秘めたような造形で、そのギャップが魅力的。未来の家長としてあくまで粋がらねばならない空しさが感じられ、ピュアな城田ロミオと、ジュリエットを挟んで好対照を成す。もっと自分の役作りと個性とに自信をもつことで、存在感がさらに増すことだろう。

 2011年公演に引き続き乳母に扮したのは未来優希。「綺麗は汚い」でのパンチの効いた歌唱はゴスペル風で、痛快に心地よい。ジュリエットへの思いを歌う「あの子はあなたを愛している」では一転、大きく包み込む愛を感じさせる。神に誓った結婚をも平気で破棄してしまえとジュリエットに諭すその愛は、盲目的で愚かしい。けれども、その愚かしいひたむきさが心を打つ。

 ジュリエットの母、キャピュレット夫人を演じる涼風真世は、少女のような美貌もあって、若くして愛のない結婚をし、夫以外の男との間に愛を知って母となった女の悲しみがある。少女のような純粋な愛への希求はなるほどジュリエットの母らしいと感じさせるものがある。対して、モンタギュー夫人を演じる鈴木結加里はいかにも母親然とした落ち着きが印象的。キャピュレット卿に扮した石川禅は、血のつながった娘ではないジュリエットへの思いと苦悩を託した「娘よ」を、豊かな歌声で聞かせる。

城田優(ティボルト)

柿澤勇人(ロミオ)&
フランク莉奈(ジュリエット)

清水くるみ(ジュリエット)
&古川雄大(ロミオ)



[取材・文=藤本真由(舞台評論家)]
[撮影=渡部孝弘]


公演概要

ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」

<公演日程・会場>
2013/9/3(火)〜10/5(土) 東急シアターオーブ (東京都)
2013/10/12(土)〜10/27(日) 梅田芸術劇場 メインホール (大阪府)

<キャスト&スタッフ>
城田優/古川雄大/柿澤勇人/フランク莉奈/清水くるみ/尾上松也(松竹)/平方元基/加藤和樹/東山光明(Honey L Days)/水田航生/岡田亮輔/加藤潤一/石川禅/安崎求/鈴木結加里/ひのあらた/中山昇/未来優希/涼風真世/中島周/大貫勇輔/宮尾俊太郎/他
※柿澤勇人・宮尾俊太郎は東京公演のみの出演となります
※出演者のスケジュールに変更がありました場合は何とぞご了承くださいませ。出演者変更の場合でも、他日への変更・払い戻しは致しかねます。
★ご注意★キャストは公演日時により異なります。公式サイトにて出演日時をご確認の上、お申込ください。公式サイトはこちら



【関連記事】 ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」歌唱とトークが披露された制作発表をレポート!
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【関連記事】 城田優がロミオとティボルトの二役に挑戦「ロミオ&ジュリエット」稽古場レポート!
2013-09-11 18:47

 世界各国で500万人以上の観客を動員してきたフランス・ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」。2010年には宝塚歌劇星組により日本初演され、翌2011年には男女混合バージョンも上演されて人気を博した。9月からはその男女混合バージョンの再演が東京・東急シアターオーブと大阪・梅田芸術劇場メインホールにお目見えする。その稽古場を訪れた。


稽古場レポート!

 暑さの中、稽古が繰り返されていたのは第二幕冒頭。モンタギュー家のロミオとキャピュレット家のジュリエットは、両家が敵対しあう中、極秘に結婚式を挙げる。その結婚がヴェローナ中の人々の知るところとなり、皆はロミオを糾弾。両家の対立はますます激化し、ティボルトによるマーキューシオの殺害、ロミオによるティボルトの殺害へと進んでいくくだりだ。メインキャストはダブル、トリプルキャストが組まれているため、同じシーンであってもキャストを替えて繰り返し稽古が行なわれる。  2011年にロミオを演じ、圧倒的な存在感とピュアな人物造形で好評を博した城田優は、 このたびの上演ではロミオとティボルトの二役に挑戦。稽古場では、ロミオとして登場したかと思えば、瞬時にティボルトとして登場したりと、目まぐるしい大活躍。大柄な体躯にド金髪という風貌が目を引く。ロミオに扮しての登場では、ジュリエットを心から愛していると人々に切々と訴えかける「街に噂が」のナンバーがせつない。心に愛をたたえた信念の男といった風情で、街の人々が愛ではなく憎しみによって生きていることに対し、ロミオが抱く哀しみを感じさせる。対するティボルトは加藤和樹。ルックスと雰囲気が、“15の夏からあらゆる類いの女を抱いてきた”と歌うプレイボーイぶりに似合う。キャピュレット家の次期首領という空気を濃厚にただよわせた大人の男である。

 城田がティボルトに扮して登場すると、さきほどまでのロミオとしてのまっすぐな雰囲気はどこへやら、目に凄みが宿り、長身とあいまって恐ろしいほど。乱闘シーンも、本気で蹴ったり殴ったりしているとしか思えない迫力だ。モンタギュー家とキャピュレット家、互いへの憎しみに支配された街ヴェローナで、ひときわその憎しみを一身に背負わされて生きる男。それが、キャピュレット家を継ぐ身であり、いとこ同士であるためただ一人心から愛するジュリエットと結ばれることを生まれながらにして禁じられているティボルトの運命に思えてくる。スマホで撮影されたロミオとジュリエットの結婚式の写真を見て、いつか手に入るのではないかと心のどこかで期待していたジュリエット、すなわち“愛”という名の救いを決して手に入れられないと知った城田ティボルトが見せる絶望の表情に、心を打つものがある。本来、愛に振り向けるべきエネルギーが正しく愛に向かわず、憎しみひいては暴力に振り向けられている、そんな人間の背負った哀しみを感じずにはいられない。ロミオ、ティボルト、どちらのナンバーを歌っても、歌詞がきちんと意味を伴い粒だって聞こえる。城田のティボルトの演技によって、「ロミオ&ジュリエット」の物語に新たな光が当たることを期待したい。

 今回、ロミオ役はトリプルキャスト。古川雄大は、細身の長身にどことなくただよわせるキュートな気の弱さが女心をくすぐる甘いロミオ、柿澤勇人は折り目正しく賢い好青年のお坊ちゃんロミオという印象を受けた。二人ともそれぞれのロミオ像を稽古場において真摯に模索中だったが、城田ティボルトの強烈な存在感が作品を支配しかねないため、二人のロミオがどれだけ確固たる存在感と個性とを培っていけるかがキーポイントとなると思われる。

 ジェラール・プレスギュルヴィックによるこのミュージカル版では、オリジナルの設定として“死”のダンサーが登場する。2011年上演時にこの役を踊った中島周、大貫勇輔に加え、今回、Kバレエカンパニーのプリンシパル・ソリスト、宮尾俊太郎が登場することも注目を集めている。 端正ながら、ただよう空気のような踊りで、ときに不気味な雰囲気をも感じさせる中島。修行僧のような風貌で力強く舞う大貫には、確かな芯が一本通った、そびえ立つ大木のような存在感がある。 初参加の宮尾は、長い手足を大きくやわらかく生かした動きがエレガントで、場を支配する雰囲気あり。Kバレエでは、熊川哲也演出・振付の「ロミオとジュリエット」でロミオ役とパリス役を好演した経験もあり、きわめて贅沢なキャスティング。作品をよく知る彼が、ロミオやティボルトをはじめとする人々の内にひそむ暴力衝動が行きつく一つの象徴ともいえる“死”をいかに体現するのか、期待は高まる。

 決闘シーンを終え、「迫力があってすごくいいです。うまく芝居を入れてくれていて、タイミングもいい。思わず見入ってしまった」と、演出の小池修一郎。城田がすかさずマイクを持ち、「今ほめてもらったのに何ですが、俺はまだまだだと思う。 今日シアターオーブに行ってきたんですが、客席の一番後ろまで非常に遠い。今のままでは全然届かないと思う。みんなもっともっとやってください」と熱弁をふるい、稽古場から拍手が上がっていた。

[取材・文=藤本真由(舞台評論家)]


公演概要

ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」

<公演日程・会場>
2013/9/3(火)〜10/5(土) 東急シアターオーブ (東京都)
2013/10/12(土)〜10/27(日) 梅田芸術劇場 メインホール (大阪府)

<キャスト&スタッフ>
城田優/古川雄大/柿澤勇人/フランク莉奈/清水くるみ/尾上松也(松竹)/平方元基/加藤和樹/東山光明(Honey L Days)/水田航生/岡田亮輔/加藤潤一/石川禅/安崎求/鈴木結加里/ひのあらた/中山昇/未来優希/涼風真世/中島周/大貫勇輔/宮尾俊太郎/他
※柿澤勇人・宮尾俊太郎は東京公演のみの出演となります
※出演者のスケジュールに変更がありました場合は何とぞご了承くださいませ。出演者変更の場合でも、他日への変更・払い戻しは致しかねます。
★ご注意★キャストは公演日時により異なります。公式サイトにて出演日時をご確認の上、お申込ください。公式サイトはこちら


2013-08-29 18:20

 1981年に初演され、2006年の映画版も大ヒットを記録したブロードウェイ・ミュージカル「ドリームガールズ」。1960年代アメリカ、華やかなショービジネスの世界でスターを目指す仲良し三人ガールズの、恋と挫折、友情と再生を、ポップでキャッチーなメロディーにのせてつづるバックステージ・ストーリーだ。3年ぶりとなる来日公演の演出を手がけたロバート・ロングボトムに、作品について訊いた。



インタビュー!

――3年ぶり、新しいキャストによる来日公演ですが、改訂点などはありますか。  舞台装置に使われているLEDスクリーンが前回の来日公演時より若干簡易版になっているけれども、その分、よりシンプルに、大きく舞台を使えるようになっているという利点があって。セットデザインを担当したロビン・ワグナーは、マイケル・ベネット演出による1981年の初演版も手がけているから、作品を熟知している人と一緒に仕事ができたことを非常に光栄に思うよ。
 キャストについては前回から一新して選び直した。「ドリームガールズ」という作品はほとんどオペラみたいなところがあってね。楽曲は非常に難しいし、演技も加わっての感情面における総合表現も、週に8回公演を行なうのは相当にきつい作品だと思う。それにプラスして、踊れなくてはいけないし、数々のコスチュームを着こなして美しく見えなくてはいけない。演じる方も大変なら、キャスティングする方も大変なんだよ。とにかく、資質を根気よく見極めていくしかない。その甲斐あって、今回、エフィー、ディーナ、ローレル役には、歌手としても女性としてもすばらしい、真情にあふれた三人が揃ったと自負しているよ。

――三人のガールズ役の演者にあなたが求める資質とは?
 まずは何より誠実さ。そして、それぞれが互いとはっきり異なっていることが非常に重要だと思う。三人は作品の中でそれぞれに果たす役割が違うわけで、それはただ体格だけでの問題ではないんだよね。例えば、最年少であるローレルは、この作品における感情面での芯だと僕は考えていて。三人の中でもっともエモーショナルな少女は、年上の有名な男性との不倫の恋を通じて、もしかしたらもう癒えることはないかもしれないような、心が悲しみに打ちひしがれるような体験をする。ディーナはおそらく、人の後ろで歌うことで満足していた人間なのに、カーティスが、彼女こそは時代のスターになれると見抜いたことで、予期してもいなかったような名声が彼女に訪れてしまう。そしてエフィーは、すばらしい歌声をもったソウルフルな歌手だけれども、黒人だけではなく白人層にも受けるようなフォトジェニックなモデルタイプのルックスの持ち主ではない。1960年代を舞台にしたこの物語においては、人種差別の要素はやはり大きいわけだよね。

――この作品が世界中の人々に愛される理由をどのように分析していらっしゃいますか。
 まずは音楽の力だと思う。R&Bの時代の音楽として、本格派のサウンドに仕上がっているからじゃないかな。そして、ショービジネスもの、バックステージものとしても、すばらしい物語だと思う。「ジプシー」や、やはりマイケル・ベネットが手がけた「コーラスライン」のように、観客はバックステージものが大好きだよね。時代のスターになり、けれど華やかな名声はいつしか奪われ……。ショービジネスの世界につきものの挫折や浮き沈みといったすべてが、「ドリームガールズ」の物語には含まれている。そして、この物語においては、プロフェッショナルな歌手として、そして一人の女性としてもカムバックを遂げるエフィーを通じて、救いの要素も描かれている。一幕ラストの有名なナンバー「And I Am Telling You I'm Not Going」は、エフィーの人生における“エピファニー”だよね。そこに人々は、自分自身の人生をも重ね合わせて観ることができるんだと思う。自分がどんな職業についていようと、一日だけでもスターになれたらどんな気分だろう、そんなことをみんな夢見てわくわくするんじゃないかな。みんな“ミス・アメリカ”になりたいものなんだよ(笑)。今回の舞台でも、三人が映像の世界に進出していくあたりの場面では、人々の心をとらえてときに罠にかけるような“名声”について、クローズアップも多用して象徴的に表現したいと考えたんだ。

――“名声”とは、実に難しい問題ですよね。
 一つ成功しても、その次にまた同じような成功が得られるとは限らないからね。例えば、マイケル・ベネット自身、「コーラスライン」で大成功をおさめてから、「ドリームガールズ」がヒットするまで、長いトンネルの時期があったわけだから。「ライオンキング」や「ウィキッド」のような大ヒットがあったとしても、次の作品が必ずしも当たるとは限らないわけだけれども、人々は常に継続的な成功を求めてくるものじゃない?そういう意味では、“名声”って、とらえがたく手に入りにくい、ほとんど見せかけ、作り事のようなものだなって個人的には思えてくるよね(笑)。今日では、何かしらの才能があって有名人、セレブになるんじゃなくて、有名だから有名人、セレブみたいな風潮になってきている。僕はそのあたり古風なのかもしれないけど、有名人はやはり、才能を発揮しているからこそ有名であってほしいと考えるタイプなんだけどね。単に美しいとか、スキャンダラスとかいうことだけではなくて、歌えて踊れて演技ができるセレブがいいな(笑)。

――ちなみにロングボトムさんは1981年の初演の舞台とはどのようにして出会ったのでしょうか。
 僕自身、ショービジネスの世界に憧れて、ポートランドの田舎町から、ブロードウェイで踊りたい!という夢を抱えてニューヨークにやって来てね。その夢が実際叶った後は、ダンサーじゃあ40歳過ぎても食べていくのは難しいな……と思って、今の仕事に転身したわけだけれども。初演の「ドリームガールズ」は、1981年9月の初日の前の夜に観たんだ。僕のルームメイトが数少ない白人キャストとして作品に参加していて、毎日帰ってきては、舞台がどのようにできあがっていっているか話してくれて。実際劇場で観たときには、途方もなくすばらしい舞台だと思った。エフィーを演じたジェニファー・ホリデイの才能がすごすぎて、ほとんど宇宙人みたいな感じで。人生で決して忘れることのない出来事の一つだよ。そのときはもちろん、リバイバル版の演出と振付を手がける日が来るとは夢見てもいなかったわけだけど。初演のときとはテクニカルな部分など変更ももちろんあるけれども、それでも、この作品のDNAというのは決して変わることはないと思っていて。マイケル・ベネットがこの作品で試みたこととは、瞬きの一瞬で観客を次から次へと新たな場面にいざなうこと。舞台転換に二分間もダラダラかけているわけにはいかないんだよね(笑)。

――映画版を通じて「ドリームガールズ」と出会った日本の観客も多いのですが、舞台版と映画版との違いとは?
 もともとの舞台版に比べ、ビル・コンドンが監督した映画版は、物語を“外”へと拡張していったという違いがある。映画版では、作品の舞台であるデトロイトにおける人種差別といった政治的な問題も扱われている。それはもちろん、舞台版の背景にもなっている事柄ではあるんだけれども、マイケル・ベネットが演出したオリジナルの舞台では、女の子たちがスターになっていく物語にあくまで焦点を絞って描いている。だからこのミュージカルは、劇場内、室内のシーンでのみ展開されていくんだよ。その意味では、今回もあくまで物事を抽象的に見せるにとどめ、観客それぞれが想像力をもって受け止めたときに完成するような演出、舞台装置を目指したんだ。

――「ドリームガールズ」を楽しみにしている日本の観客に、作品を通じて伝えたいメッセージとは?
 夢見ることを恐れないでほしい。大きな夢をたくさん心に抱いてほしい。その意味で、エフィーはすばらしいお手本だと思う。夢は最初からすぐにかなうわけじゃない。夢をかなえるには、自分を信じ、絶対にかなえるんだと強く願って、努力し続けるしかないと思う。3年前の来日公演は残念ながら観られなかったので、久しぶりの日本で観客の反応を知ることができるのが楽しみだよ。

――ロングボトムさんと日本といえば、1996年、宝塚第82期生の初舞台公演でロケットの振付を担当されましたが、現在、その期から5組中2人のトップスター(花組・蘭寿とむ、雪組・壮一帆)が出て、活躍しているんですよ。
 トップスターが2人もかい!それはすごいね。あの公演、「CAN-CAN」と「マンハッタン不夜城」のことはすばらしい思い出として心に残っているよ。僕は長年、ラジオシティ・ミュージックホールの「クリスマス・スペクタキュラー」に携わっていたんだけれども、あのロケッティーズよりも宝塚の一組の人数が多いことにびっくりして。それでいて、組織全体の調和が見事に取れていることに感銘を受けたんだ。当時のトップスター(月組・久世星佳)もとてもすてきな人だったし、宝塚のガールズはみんな大好きだな。宝塚ではその後、「スカーレット ピンパーネル」を上演したでしょう?あの作品のブロードウェイ再演時、僕は演出を手がけていたという経緯があって。僕が深く関わった「サイド・ショウ」も、日本でたびたび上演されているのがうれしくて。自分の演出版でないにせよ、自分が携わった作品がそうして日本でも上演されていることを誇りに思うよ。


[取材・文=藤本真由(舞台評論家)]
[撮影=平田 貴章]

公演概要

ブロードウェイ・ミュージカル ドリームガールズ
※字幕スーパーあり

<公演日程・会場>
2013/7/31(水)〜8/25(日) 東急シアターオーブ (東京都)
2013/8/28(水)〜9/1(日) フェスティバルホール (大阪府)


【関連動画】 ブロードウェイ・ミュージカル ドリームガールズ 予告ムービー!
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2013-08-13 12:11

韓国で何度も再演を重ねたオリジナル・ミュージカル『兄弟は勇敢だった?!』が遂に本邦初上陸。その人気の理由とは?一度見たらクセになってリピートしたくなってしまうって本当?…気になるあなたに、東京公演観劇レポートをお届けします。

東京公演&記者会見レポート

2013年夏。ミュージカル『兄弟は勇敢だった?!』が六本木で上演されている。韓流オリジナル・ミュージカルの頂点を極めるこの傑作が東京で観られる日が来ようとは、日本の興行史に刻まれるべき快挙である。もっと騒がれてもいいのではないかと思う。

いまや韓流といえば、映画・ドラマ・音楽などカルチャー全般が世界的に見て高水準に達していることは皆さんご承知の通り。そんな中で演劇、なかんずくミュージカルが今世紀に入り韓国内で大いに活況を呈している。韓国俳優は美男美女率が高く、歌唱力も舞踊力も演技力も、個人/アンサンブルを問わず驚くほどハイレヴェルである。もちろん作品自体もかなり魅せる。今日のブームが起きることは必然的なことだった。

その隆盛の原動力になっているのがソウルにあるテハンノ(大学路)という演劇街である。中小の劇場がなんと150近くもひしめいている。演劇ファン(とりわけ小劇場ファン)にとってはパラダイスといえる。そこから新しい作品が次々に生まれ、ひとたび支持を得られれば更なる飛躍・発展を遂げてゆく。『兄弟は勇敢だった?!』の初演も2008年3月、テハンノからだった。

このテハンノ発のオリジナル・ミュージカルの数々を日本に紹介する。そんなコンセプトを掲げて今年の4月から六本木にオープンしたのが、アミューズ・ミュージカルシアターだった。おかげで我々は、お金と時間をかけてソウルに行かなくても、テハンノ発の旬の人気作品を身近に鑑賞できるようになった。さらに、多くの日本人にとって悩みの種である言葉の問題も、日本語字幕によって解決され、ストーリーがよく分かるようになった。本当に有難いことである。

筆者もその恩恵を受けてオープニング公演『カフェイン』以来、『シングルズ』『風月主』といずれも楽しく観劇することができた。そして7月30日、ついに真打格の日本での開幕に立ち会うことができた。これが『兄弟は勇敢だった?!』なのである。

それは宝石箱のような舞台だった。今回の舞台に主演したキム・ドヒョンは記者会見で「ギフト・ボックス(詰め合わせ御贈答品セット)のような作品」と形容し、またもう一人の主演チ・チャンウクは「笑いと涙と感動が一つに凝縮した作品」と紹介した。つまるところ、作品の中に多彩な意匠や仕掛が詰め込まれ、どんな人が見ても色々な愉しみ方が出来る、全方位的に回路の開かれた真のエンタテインメント作品ということだ。

本作品の作・演出を担当したチャン・ユジョンは1976年麗水(ヨス)生まれ、韓国芸術総合学校演劇院演出科卒業の才女である。2006年『オー!あなたが眠っている間に』、2007年『キム・ジョンウク探し』を立て続けにヒットさせた。後者は彼女自身の監督により映画化もなされた(邦題:あなたの初恋探します)。続く2008年には今回の『兄弟は勇敢だった?!』を発表し、これも大人気を博し、幾度も再演を重ねた。その他にも多数のヒット舞台を手掛け、彼女こそはいま韓国で最も勢いのある演劇クリエイターとされる。それを知れば本作への期待感もいよいよ高まるというものだろう。

しかしその期待は『兄弟は勇敢だった?!』の初っ鼻、ほんの一瞬、たじろぐかもしれない。歴史臭をプンプン漂わす古建造物の前に、伝統服を身に纏った男が現れ、ひとりの死者に対する弔辞の言葉を発するなり、思いっきり荘重な音楽が流れ出すのだから。おや、自分は韓流時代劇を見に来てしまったのだろうか?と自問する。話が進むにつれ、伝統芸能パンソリの打楽器伴奏まで登場する。むむ? しかし、これでもれっきとした現代=21世紀の話なのである。

本作の舞台は慶尚北道の中部にある安東という地域。地図で見れば韓国のど真ん中あたり。古来、儒教的伝統の中心地であり、いまなお往時の農村の生活様式を残す歴史的村落があり、世界遺産にも指定されている。だから、時間が過去のまま止まっている。そこでの伝統に束縛された暮らしに耐え切れず、家を別々に飛び出しソウルに行ってしまった兄弟が、絶縁した父親イ・チュンベの訃報を受けて、三年ぶりに実家(旧貴族)に帰還するところから物語は始まる。

長男イ・ソッボンはソウルに出て事業で一旗揚げようとするも投資に失敗して無職。次男イ・ジュボンは頭が良く名門ソウル大学に進学するも、学生デモに参加して逮捕され、将来を棒に振った身の上。この二人はすこぶる仲が悪く、久しぶりに会ってもすぐにケンカを始める始末。ただ、二人ともそれぞれに、死んだ母親を慕っている。そして母親を病院に連れてゆくこともなく原因不明のまま死なせた父親を、暴君的存在として彼らは憎んでいた。そんな兄弟のもとに夜ごと謎の美女が現れ、亡父の残した遺産に関する或る情報をもたらす。兄弟が躍起になってそれを探索するうちに、或る真相が浮かび上がってくる…。

『兄弟は勇敢だった?!』が、今から60年程前に作られた有名なアメリカ映画からタイトルを借りていることは明らかである。が、ストーリーは全くの別物だ。というか、こちらには語尾に「?!」が付いていることを見落としてはならないだろう。そんな反語的皮肉の込められた題名から「もしや中身はコメディでは?」と察することができるならば、あなたの嗅覚は鋭い。

本作品は、伝統と現代、地方と都市、家と個人といった今の韓国に根深く絡む問題を扱ってはいるものの、けっしてシリアス一色のドラマではない。そのタッチは意外にも軽快無比、ポップ感覚やスラプスティック感覚に満ち溢れている。ある意味、異化効果の演出が満載。テンポよくスピーディーに進むストーリーの随所にはギャグやパロディがふんだんに散りばめられ、アクションめいた場面もいちいち可笑しい。とくに第一幕は笑いが絶えない。

そして何といっても音楽が秀逸だ。伝統音楽ありバラードありロックありヒップホップありボサノヴァあり。古今東西の色々な音楽形式が効果的に使われ、少しも飽きが来ない。それどころか、全てのミュージカルナンバーにおいて中毒性のある印象的なメロディが歌われるので、観劇後もついつい無意識で口づさんでしまうほどだ。このあたり、K-POPのフックソングに繋がるものを感じる。ちなみに作曲は、音楽監督チャン・ソヨン女史率いるチーム“TMM”。チャン・ソヨンは本作以外にも『シングルズ』『イケメンですね』などヒット・ミュージカルを数多く手がけてきた実力者。韓国ミュージカル界では、彼女やパク・カーリンなど女性の音楽監督が多いのが特徴だ(「いまやこの国の大統領だって女性なのだから…」というGirl's Dayのヒット曲が脳裏を過るのは筆者だけであろうか)。

また、その音楽に付けられた振付がことごとく痛快だ。たとえば「俺はお前が嫌い」というナンバーを兄弟それぞれが歌う時に見せる、ムーディーでキザな仕草は爆笑を誘う。また、ダメ兄弟をなじる親族たちの、アンサンブルとしての切れ味の冴えたダンスにはゾクゾクっとさせられる。老人役の人がアクロバティックに宙を跳んだり、群舞が妙にカッコよくキマったり…。振付はオ・ジェイクという、これも韓国ミュージカル界の達人だ。だが、ダンスを楽しく見せるという趣向には、作・演出チャン・ユジョンの意図も強く感じられる。というのも、彼女はかつて(『キム・ジョンウク探し』の主人公のように)インドを旅して、ボリウッド映画に強い影響を受けたことがある。ボリウッド映画ではダンスが多くを見せて、ダンスが多くを物語る。ミュージカルの原点は音楽とダンスだということを演出家は理解し、実行している。これぞエンタテインメントの神髄といえる。

出演者の魅力についても語らないわけにはゆかないだろう。『兄弟は勇敢だった?!』はこれまでいろいろな俳優によって演じられてきた。弟ジュボンをSHINeeのオニュやB1A4のサンドゥルといった人気アイドルが演じたこともあり、これによって客層が大幅に拡がった面もある。今回の日本公演では、前半(7/30〜8/15)において、兄ソッボンをキム・ドヒョン、弟ジュボンをチ・チャンウクが演じる。後半(8/16〜9/1)では、兄ソッボンをキム・ジェボム、弟ジュボンをチョ・カンヒョンが演じる。

筆者が観た7/30東京初日は、ドヒョン&チャンウクのコンビだった。筆者は2012年ソウル、COEXアティウム現代アートホールでの公演(5度目の上演)において既にドヒョンを見ているが、すっとぼけた味わいを醸しながら客席をおおいに湧かせつつも、美声で歌唱力抜群というギャップを有する彼の特性に、当時から大変な魅力を覚えていた。筆者超オススメの俳優である。今年4月の『カフェイン』の主役も好演だった。韓国芸術総合学校演劇院出身で、チャン・ユジョン女史は彼の後輩にあたるだそうだ。

対するチャンウクは『笑ってトンヘ』『蒼のピアニスト』等テレビドラマでおなじみの二枚目人気俳優。ミュージカルでは『スリル・ミー』や、チャン・ユジョンの最新作『あの日々』に出演しているが、顔良し、歌良し、そして共演のドヒョン曰く「演技もうまい」という、完全無欠の優等生である。弟ジュボン役は初挑戦ながら、見事にハマっている。とにかくドヒョンと共に、絶妙のコンビとして成立しており、何をおいても一度前半戦で彼らによる兄弟を堪能しておいていただきたい。

一方、後半戦で兄役を務めるジェボムは、つい先日まで六本木の同じ劇場でBL系ミュージカルの『風月主』でサダムを演じていた、爽やかな二枚目。彼もまた韓国芸術総合学校演劇院出身で、先輩のチャン・ユジョン女史にはこれまで色々可愛がってもらってきたようだ。対する弟役を務めるカンヒョンは、『ジキルとハイド』『太陽を抱く月』など数多くの人気ミュージカルに出演経験を持ち、チャン・ユジョン作品にも頻繁に出演してきた。

なお、後半組のジェボムとカンヒョンはかつて、やはりBL系ミュージカルの『スリル・ミー』で共演し、劇中で何度も唇を重ねてきた間柄でもある。筆者は二人の兄弟役をやはり昨年のCOEXで見ているが、これはこれで前半組とは異なる面白さがあった。十分に期待していいだろう。ということで今回、筆者も後半組を見てコンプリートするつもりである。そしてカーテンコールにおいては、韓国伝統の正式のお辞儀スタイル=土下座をする兄弟の姿を網膜に焼き付けて、儒教的謙虚さに目がしらを熱くしたいと思っている。

兄弟以外の役の俳優陣(チェ・ヨンジュン、イ・ジュウォン、アン・セホ、パク・ジョンビョ他)は全期間を通じての出演になるが、彼らこそは韓流ミュージカル界における名うての実力者ばかりで、それぞれに見せ場があって、こちらも愉しみにしていただきたい。

ところで公演初日に行われた記者会見の場で、ドヒョンは自身の夢を語った。それは、いずれ日中韓によるアジア合同ミュージカルを実現させたい、というもの。ミュージカルの力で国境を越えた人心の交流を図りたいという考えに筆者は大いに賛同する。

『兄弟は勇敢だった?!』について、筆者はコメディ面をあえて強調し評価したけれど、チャンウクも述べているように、実は涙や感動の要素もある。といっても、臭みあるお涙頂戴などでは全くなく、そこはきわめてセンスのよい処理が施されながら、ホロリとさせられるのだ。やがて最後には、登場人物達が価値観の違う他者を理解することで憎悪が消え、家が再生する。そのとき観客は深い感動に浸ることだろう。そして、その感動の中から我々は作者の信念のようなものを垣間見ることができるかもしれない(そういえば記者会見において、ドヒョンが作・演出のチャン・ユジョンを“信念の人”と評したことも印象深かった)。

作者が兄弟の物語に託した思いとは一体何だったのか?…筆者の勝手な妄想はこうだ。分断により憎しみあいながら生きることを強いられる半島の人々の行く末。或いは、海峡を隔てた日韓の確執。人々の抱えるそんな諸々の相克を、エンタテインメントの豊穣な底力を総動員して何とか平和裡に解消できないものだろうか、と。…考え過ぎと言われそうだが、筆者はそんなメッセージを作品から読み取り、ドヒョンの夢の話とも併せて、ひとりでジ〜ンと再感動してしまった次第。

ただ、『兄弟は勇敢だった?!』が、様々な角度から鑑賞し甲斐のある作品であることは間違いない。人生において、これほどの作品に巡り合えることは滅多にない。韓流ファンならば、あるいはミュージカルファンならば、多少の世間の嫌なムード(などというものがもしもあったとして、の話だが)に惑わされることもなく、良質のエンタテインメントに触れ、異なる文化や価値観を理解する勇敢さを発揮していただきたい。そのうえで、劇中の兄弟が勇敢だったかどうか、あなた自身の眼で是非、見極めて来ていただきたい。

[文=うにたもみいち/演劇エッセイスト]

公演概要

「兄弟は勇敢だった?!」
Amuse Musical Theatre vol.4

<公演日程・会場>
2013/7/30(火)〜9/1(日) アミューズ・ミュージカルシアター (東京都)

<キャスト&スタッフ>
作・演出:チャン・ユジョン
作曲:チャン・ソヨン
出演:
<7/30(火)〜8/15(木)>キム・ドヒョン/チ・チャンウク
<8/16(金)〜9/1(日)>キム・ジェボム/チョ・カンヒョン



2013-08-08 12:37



劇団鹿殺し充電前公演「無休電車」
青山円形劇場 (東京都) 2013/9/27(金)〜2013/10/14(月・祝)

【公演直前、新着情報到着!】
劇団鹿殺しの代表作、「電車は血で走る」(初演2008年)−その後の物語。
五年後の「鹿野工務店」、全員が揃うことはもうない。それでも電車は走る。音を鳴らして泣きながら−

◆PV第2弾到着!


◆劇団鹿殺しのピョンピョンTV〜鹿殺し×キャラメルボックス対談〜無休電車スペシャル
菜月チョビ×岡田達也×坂口理恵によるUst特別番組(アーカイブ保存版)
 ※開始から5分間、音声が聞き取りづらいですが、ご了承ください。

◆制作 高橋さんから、新たにオススメポイント情報いただきました!
<鹿殺し史上最高レベルの「楽隊」!>
「電車は血で走る」で初披露、好評を博した劇団鹿殺しの「楽隊」。
ブラスバンドの生演奏、そして身体で作品世界を体現するこの演出は、今回で4回目となりますが、その演奏は過去最高レベルに達しております。
電車の楽隊が、よりパワーアップして円形劇場にやってきますよー!!これはライブでしか楽しめないもの、ぜひ劇場でご堪能ください!

<歌、ダンス、殺陣、生演奏…エンタメ要素盛りだくさん!>
鹿殺しの作品において必須ともいえるエンタメ要素の数々。
「無休電車」にはこれら全て詰め込まれております!歌、ダンスはもちろんのこと、殺陣、そして生演奏!
しかも、円形劇場をフル活用し、角度によっていろんな見え方ができるように作られております。
一度見たら、「あっち側ではどうなっているんだろう?」と気になってしまうこと間違いなしです!
既に売り止め回もでておりますので、お求めはお早めに!!

<劇団鹿殺しのこれまで、がここに>
「無休電車」には、劇団鹿殺しのこれまでの歴史から作られた部分があります。旗揚げから上京、そして今日に至るまでの13年間。充電前に、ぜひその目に焼き付けてください。

「僕らは走っていた。陽の沈む前に辿り着きたかった。
霞む先、消えたアイツが笑ってる。電車は音を鳴らして泣いていた。
―楽隊が奏でる電車の音楽が、円形劇場に帰ってくる!


≫劇団鹿殺し公演一覧はこちら
≫「無休電車」特設サイトはこちら

見どころなどを聞きました!

――今回の舞台の見どころを教えてください
劇団鹿殺しは、今回東京公演の会場となっている青山円形劇場でこれまでに「電車は血で走る」、「スーパースター」(第55回岸田國士戯曲賞最終候補)、「岸家の夏」と3作品を発表してきました。
様々な仕掛けが飛び出す演出と、どの角度でも隙のないステージングで、これらの作品はどれも好評を得てきました。
今回「充電前」と銘打ち、ここ青山円形劇場でまた作品を上演できることは私たち自身とても楽しみで、かつ並々ならぬ気合いが入っています。
ゲストにお迎えした福田転球さん、岡田達也さん(キャラメルボックス)、美津乃あわさんというお三方の組み合わせも、この作品でしか見られない取り合わせで、今回ならではのお三方の普段見られないような姿を沢山楽しんでもらえると思います。
これまでに培ってきたもの、総動員して最高傑作をお見せします!

――会場が円形劇場ですが、円形ならではの演出、はあるでしょうか
はい、「電車は血で走る」という作品で、円形舞台を電車の楽隊(俳優が自ら演奏するブラスバンド)が練り歩くという演出を取り入れたのですが、これが大変好評で、その後の劇団鹿殺しの作品にも大きな影響を与えました。
この楽隊の電車が、再び円形劇場に帰ってきます。環状線のような舞台を歩く電車を見つめていると不思議と人生や時間などくるくると巡る思いを感じていただけると思います。

――円形ということは…違う角度から見ると、別の面白さがあったりするでしょうか?
はい、俳優の表情ひとつとっても、話しかけられている人と話している人、角度によって違う感情移入で作品を楽しんでもらえるように作られています。劇団鹿殺しの得意とする劇中のパフォーマンスでも、パフォーマーとの位置関係で様々な見え方、生演奏の音に包まれる感覚があります。
ぜひいろいろな角度から楽しんでください!

――充電前最後の本公演、特別な意気込みなどおありでしょうか?
ターニングポイントの作品となると思いますし、そうしたいと思っています。
この公演を見たあとに、1年間が待ちきれないような、そして大きな期待と希望を抱かせるような、そんな公演にしたいと思っています。

――まだ鹿殺しを見たことがない方へ、メッセージをお願いします
「劇団鹿殺し」という名前で敬遠され、そこで足が止まっている方が未だに多くいらっしゃると思います。この劇団名は村野四郎さんの「鹿」という詩に感銘を受けて付けられたものです。命の限りを知った瞬間に、より輝きだす命を描きたいとつけられた名前で、劇団が描きたい姿はまさに「より生きようとする人間のいとおしさ、かわいらしさ」です。
長くなってしまいましたが、「ぜんぜん怖くないですよっ!」ということです!ちょっとだけ勇気をもって、飛び込んでみてください。
演劇ならでは楽しみが溢れた舞台に浸って、少しだけ日常を変えてみたくなるようなパワーを得られると思います。ぜひ劇場でお会いましょう!

「BONESONGS」:姜暢雄、松村武らゲスト陣の熱演も記憶に新しい、ライブパフォーマンスの到達点とも言うべき劇団の最新作。

「田舎の侍」:劇団初の時代劇。東西駅前劇場で、貴方の心を滅多斬り!

公演概要

劇団鹿殺し充電前公演「無休電車」
<公演日程・会場>
2013/9/27(金)〜10/14(月・祝) 青山円形劇場 (東京都)
<キャスト&スタッフ>
作:丸尾丸一郎
演出:菜月チョビ
出演:丸尾丸一郎/菜月チョビ/オレノグラフィティ
山岸門人/橘 輝/傳田うに/円山チカ/坂本けこ美/山口加菜
鷺沼恵美子/浅野康之/近藤 茶/峰 ゆとり/有田杏子/越田 岬

福田転球/岡田達也(キャラメルボックス)/美津乃あわ
音楽:入交星士×オレノグラフィティ


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2013-08-01 16:48

死者の魂を見ることが出来る青年・斉藤八雲を主人公にした人気ミステリー小説『心霊探偵八雲』。その舞台版オリジナルストーリーとして著者の神永学が脚本を書き下ろしたのが、本作『心霊探偵八雲 いつわりの樹』だ。初演は2008年。そしてこの夏、待望の再演が決定。新たに八雲を演じる久保田秀敏と小沢晴香役の清水富美加、シリーズを通して石井刑事役を務める佐野大樹の3人に、本番へ向けた思いを語ってもらった。

※写真はパンフレット撮影時のものとなります。

インタビュー!

──いよいよ稽古に突入、今日も先ほど本読みを終えたばかりのみなさんですが、手応えはいかがですか?
久保田 やっぱり自分ひとりで読んでいるよりも、こうしてみなさんがそれぞれの役として読んでいくのを聞いていることでまた自分の中でのイメージも膨らんでいきますね。直接ヒントをたくさんもらうことで、自分ももっとこう出来るんじゃないか、ああもやれるんじゃないかって、楽しみながら稽古できています。『心霊探偵八雲 いつわりの樹』はミステリアスな世界ではあるけれど、実は人間ドラマが熱く描かれている物語なので、今はそこをいかに面白く伝えられるか、というようなことを考えています。
清水 私は今回初舞台になるんですけど、ずっとずっと「同じ台本で同じメンバーで時間をかけてお芝居を作っていく」という舞台のお仕事を経験したかったので、すごく嬉しい毎日です。私が演じる小沢晴香は元気で明るい女の子なんですけど、自分が元々明るいほうなので、どうしてもただの“明るい子”っていう代名詞で収まってしまうのが心配で…。キャラクターにニュアンスをしっかりつけて、稽古を終える1ヶ月後にはちゃんと小沢晴香として立っていられたらなぁって思います。

──佐野さんはこれまで上演された『心霊探偵八雲』の全シリーズに石井刑事役で出演されていますね。
佐野 今回が4回目。こうやって同じ役を何度も演じられる機会はなかなかないので、それは嬉しいことですね。でも改めてまた『いつわりの樹』の台本に向き合ってみると、「石井ってこんなに暗い奴だったっけ?」って思って…。石井が前の2作では主にムードメーカー担当だったっていうのも大きいんですが、いずれにしても僕の中では石井は天然キャラだと思っているし、ファンタジー色の強い作風の中、キャラ的にコメディ色が強くても許されるのが石井かなって思うし。まぁあんまり考え過ぎず、今回はもう一度自然にね、フラットな感覚で明るさを忘れない石井にしていきたいですね。
清水 私、佐野さんと(後藤刑事役の)東地(宏樹)さんに言われてとても心強く思っている言葉があるんですけど、最初にみんなで行ったお食事会のとき、「芸歴とか舞台歴とか年齢とか関係なく、こうしたほうがいいんじゃないかっていうのがあったら俺たちも言うからそっちからも言って欲しい」って。それがすごく心の安心って感じで、「あ、じゃあもういっぱい聞いちゃおう」って思える空気を作ってくださって…覚えてます?
佐野 うーん…覚えてない。
清水 そっか〜ぁ(笑)。
佐野 (笑)。でもね、昨日も東地さんと話したんだけど、ほんと、若い役者すごいなって。末恐ろしいですよ。富美加ちゃんも久保田くんも、ほかのみんなもまず初見の掴み方が早くて、ふたりで「この現場すごいよね、面白いよね」って言ってたの。なんか…うかうかしてられないっていうのと、ホッっとしたのと。本読みしながら「ああ、大丈夫だね。このカンパニーだったら」って確信したもん。俺が失敗してもきっとみんな助けてくれるだろうなって、思えるくらいに(笑)。

──『八雲』シリーズは八雲と晴香のコンビ感も大きな魅力のひとつになっていますね。
清水 そうなんです。演出の伊藤(マサミ)さんには「八雲が月で晴香が太陽。ふたりは月と太陽のような関係であって欲しい」と言われて、それは雰囲気としてはわかるんです。とっても。ただ実際にどう表現していくかは…わからない。想像していたよりもこの役はちょっと難しいかも、とも感じています。まだまだ探していかないとダメですね。これからもっともっと晴香として八雲のことを好きになって、どんどんどんどん八雲に踏み込んでいけるようにしたい。晴香はお姉ちゃんを交通事故で亡くしていてそれに関係する台詞もあったりして、そうしたバックストーリーを自分の中に落とし込んでいけるかも大事だし、そこがあってこそ“明るい女の子”だけじゃない晴香が見えてきますから。私自身としても、久保田さんに対してまだゆで卵の殻の下に一枚ある薄ーい膜くらいに心と心の壁が残っているので…。
佐野 なにそれ、すっごい薄いじゃん! すぐとれるんじゃない?
久保田 いや、薄いけど思ったより頑丈な膜ですよ(笑)。
佐野 あー、確かにね(笑)。
清水 フフフッ(笑)。でも一緒にいる時間が長くなれば自然に心の距離も近づくと思うので、そうなれば八雲と晴香も自然な距離にいられるようになると思います。
久保田 月と太陽…ホントに八雲と晴香は対称的なキャラクターなんです。お客様から観たときに、そこの差にちゃんと面白味が感じられるようなふたりでいたいな。八雲はミステリアスでひねくれているんだけど、後藤刑事には気を許して、晴香にはツンツンして…という、相手に対しての振る舞い方の違いもあったりして、そこの複雑さにも魅力を感じます。小さい頃から人との関わり方をちゃんと経験していないからこういう性格になったんだろうなぁ八雲は。

──シャイなところも垣間見えますよね。
久保田 原作を読んだりアニメ版を見たり、試行錯誤しつつ“自分の八雲”を開拓中です。ミステリアスなんだけど、ただのポーカーフェイスでもない。いろんな人と関わることによって心を開いていく…というよりは、八雲が基準になって周囲の人間関係が展開していく。晴香との距離感、他者との呼吸の具合、緩急、緊張感。そういった部分をしっかり掘り起こし落とし込むことによって、八雲を通して物語の面白さを伝えたいです。
佐野 月と太陽っていう例えはすごいいいと思いますね。僕、偉そうなことは全然言えないんですが、やっぱり富美加ちゃんすごいなって思うし、久保田くんもこの流れで稽古していけばステキな八雲になるだろうなって思います。八雲は闇を抱えていて、でも闇のもつカッコ良さって絶対あるからね。で、ふたりの関係と対になるのが、石井刑事と後藤刑事の関係なんだと思います。そこが立ってくると自然と物語の全体が出来上がるんじゃないかと。なので僕の最初の目標はできる限り東地さんとの会話だけを大事にしていきたいってことです。

──初演の『心霊探偵八雲 いつわりの樹』をみなさんで再構築しながら練り上げていくこの再演版、楽しみです。
佐野 全体的な構成も前回と変わってますし、キャストの個性から言ってもたぶん、ものすごくいい化学反応が起きると思いますよ。演出的にも会話を耳だけじゃなく目で楽しませて説明してくれるところもあったり、シンプルなセットでの効果、円形劇場ならではの見せ方なんかもぜひ期待していてください。
清水 初挑戦の舞台というジャンル、わくわくします。舞台ってやっぱり目、肌…五感で伝えられ感じてもらえる世界なので──私も八雲を始めとするいろんな人たちとのかけあいから見えてくる人間ドラマを伝えられるようすっごく頑張っていきたいし、そんな私をみなさんに見てもらいたいです。
久保田 自分にとって初の舞台主演作、とにかくすべてを頑張らないと! 座長ではありますが、そこは気負うことなく…ただもう自分は八雲としてみなさんが楽しく演じられるように作品の芯として居ることを念頭において、軸としてブレない存在でありたいですね。そして、先輩方からはあらゆることを吸収し、盗み、自分の糧にしていって。最後はみんな笑顔、大成功で終わりたい!と、思います。


[取材・文=横澤 由香]


公演概要

舞台版『心霊探偵八雲 いつわりの樹』

<公演日程・会場>
2013/8/21(水)〜8/28(水) 青山円形劇場 (東京都)

<キャスト スタッフ>
原作:神永学「心霊探偵八雲」シリーズ(角川書店刊)
脚本:神永学/丸茂周
演出:伊藤マサミ(bpm/進戯団 夢命クラシックス)
出演:久保田秀敏 清水富美加/佐野大樹 平田裕香 寿里
野村真由美 菅野勇城/三浦力 東地宏樹



2013-07-29 19:59

(左から)古川雄大、城田優、柿澤勇人

 2001年のパリ初演以来、世界各国で500万人以上の観客を動員してきたフランス・ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」。2010年の宝塚歌劇星組による日本初演を経て、2011年、男女混合バージョンが上演され、人気を博した。二年ぶりの再演では、その際ダブルキャストでロミオを演じた城田優がロミオとティボルトの二役に挑戦、また、ロミオ役は古川雄大と柿澤勇人の二人を迎えてのトリプルキャストとなる。三人のロミオに意気込みを聞いた。

意気込みを聞いた!

――それぞれ、ロミオというキャラクターをどうとらえているかおうかがいできますか。
柿澤 偉大な劇作家ウィリアム・シェイクスピアによるすごく有名な物語ですし、どうしても構えちゃうところがありますね。僕は19歳で初舞台を踏んだんですが、勉強でも読みますし、それより前、18歳くらいからいつかシェイクスピアの作品に出たいなと目指し始めていて、僕にとってはとても大きな存在の劇作家なんです。映画でも、レオナルド・ディカプリオがロミオを演じていたり、オリヴィア・ハッセーがジュリエットを演じたバージョンもありますし、いろいろな方が手がけられてきた作品ですよね。ロミオについては皆さん、かっこいいイメージがあると思うんです。でも、僕の場合、かっこよさは結果論だと思って、そこは追求せず、ジュリエットや、ベンヴォーリオやマーキューシオといった一緒にいる仲間を大切にしていって、背伸びせず、等身大でやっていければと思っています。大きな出来事にきっちり反応できるロミオでいたいですし、一人の女性を愛し抜く様を演じられたらいいなと。僕自身、そんなところに憧れますし、プライベートでも恋人を大切にしたいなと思っているので。


古川 ロミオは、彼の理想というものがすごくあって、それが強い分、現状に失望している部分もありながら、周りのみんなよりはちょっと大人な考え方をしていて、争いを止めたりもしていて。そんな中でジュリエットに出会って恋をし、より素敵な人間になっていくという役柄で、本質的にはすごく純粋な人なのかなという風に考えています。かっこよくてのれる曲もたくさんあって、歌詞もすばらしいし、僕自身、とても好きなミュージカルですね。シェイクスピアの作品は初めてやらせていただくのですが、誰もが知っている有名な劇作家ですし、今回携わることによって、その人気の秘密を知ることができたらなと思っています。


城田 ロミオは夢見がちな普通の男の子なんですけれども、ジュリエットという女性に出会って、探していたものを見つけたんだと思うんですね。それまで、とてもピュアな気持ちでダイヤモンドを探していたけれども、石ころばかり拾ってしまっていて、違うなと思っていたのが、ジュリエットに出会って、ダイヤモンドを見つけた!という感じで。本人は本当に争いも嫌いな平和主義者で、優しい心の持ち主。ジュリエットに出会ったことで、それまで心に秘められていた何となくもやもやしていたものが爆発して、情熱的になって、それまで以上に自分の気持ちに素直になっていく。まだ10代の若者ですし、未完成な部分もあって、最後死んでしまうというのも、大人ではできないことなのかなと思いますね。若さという時期と、周りとの関係性、障害が、この「ロミオとジュリエット」という美しい物語を作っているのかなと考えているんですけれども、その真ん中にいるロミオという人物像を、今お話ししたように演じていけたらと思っています。


――城田さんは今回二役でティボルトも演じられますが、制作発表で歌ったティボルトのナンバー「今日こそその日」で、ジュリエットを挟んでロミオと対にある存在としてティボルトを表現されていたのが非常に印象的でした。
城田  ロミオを演じた二年前の公演のときから、ティボルトについては、魅力的な役だな、もっと魅力的にできるなと思っていましたね。この物語においてロミオとジュリエットは、お互いに出会ってからは、愛し合っていればいい、迷うことなくお互いと一緒にいたいという気持ちがあればよくて、周りのさまざまなキャラクターとの関係性において話が動いていくんですよね。今回演じるロミオとティボルトについて言えば、そもそも生まれた時点で二人の運命は、まったく違う方向に向かっているんだと思うんです。ジュリエットとティボルトは同じ世界に生きていて、ロミオはまた別の世界に生きている。ジュリエットとティボルトの関係性、ジュリエットのお母さんとティボルトの関係性はこのミュージカル版のオリジナルの設定ですが、ティボルトは物心ついたときからいろいろな女を抱いてきていて、けれどもたった一つだけ手に入らないもの、それがジュリエットなんですよね。そこがロミオとまったく同じ感情だと思うんです。探しているものがダイヤモンドということはわかっているけれども、それが誰なのかはわからないのがロミオで、そのダイヤモンドがジュリエットということがわかっているけれども手に入らないのがティボルトで。いとこであるジュリエットとの結婚は禁じられていて、生まれながらにしてそこにずっと縛られているティボルトは、ロミオほど明るくも人なつっこくもなくて、どちらかという冷たいタイプだと思います。本当は不器用で、愛してほしいという願望をもった人なのかもしれない。そのあたり、稽古場で深めていって、ジュリエットを軸に、光と影としてこの二役を演じていきたいなと思っています。とても明るくてピュアで情熱的な役と、とても攻撃的で暗くて強い役、ふり幅が両極端にふれきった二役ですが、僕自身、どちらかというと近いのはロミオかな。平和主義者で、いろいろ憧れや夢もあるし、人にも仕事に対しても常に愛を抱いていたいと思うタイプなので。

――好きな場面やナンバーを教えてください。
柿澤 ロミオについて言えば、いい感じのキャッチーなメロディが多くてどのナンバーも好きですね。ロミオが割とやわらかい感じの曲が多いのに対し、ティボルトの「今日こそその日」はガンガン行く感じのかっこいいロックナンバーで、聞いていてもいいなと思います。二幕に入ってからはさまざまな死があり、どんどん物語が展開していくので、その盛り上がり方が好きですね。

古川 僕はバルコニーのシーンが好きですね。あそこの曲の前奏がとても好きなんですよ。

城田 (♪歌う)

古川 (笑)あの前奏を聞くだけで、ああ……という感じになるので、演じるのがとても楽しみです。決闘のシーンもいいですよね。キーが高いので大変ですが、すごくかっこいいので。

城田 僕は好きというか、いろいろな意味でロミオの最高潮だなと思うのが、「憎しみ〜エメ〜」の流れなんですよ。これから二人にも経験してもらうことになると思うと楽しみなんですが、最強に苦しくて、最強に爆発するナンバーなんです。自分が制御不能になって、音符とか関係なく叫んじゃった日があるくらいで。僕、けっこう制御不能になるときがあって、感情過多になりすぎるって、演出の小池(修一郎)先生からもダメ出しされましたが(笑)。決闘があって、人が死んで、ロミオとしてはまさか自分が人を殺すなんて思ってもみなかった。親友も死に、自分は追放になって、ジュリエットにも会えず、すべてを失った。真っ白になってぽかーんとしている感じのところにイントロが始まって、エネルギッシュな部分が爆発して、その後、「エメ」、僕の一番好きなメロディへとつながっていく。ジュリエットとつぶやくとき、僕にはもうジュリエットが見えるんですけれども、愛する人と二度と一緒にいられないと思ったときの「エメ」の悲しさたるや。一幕ではあんなにハッピーに歌っていた歌なのに、完全に壊れてしまったと気づいてしまう。これは二人も歌ったら絶対わかると思う。

柿澤 自分一人だけでは何もできないので、早く稽古に入って、周りの皆さんと影響し合って、自分のロミオを作っていきたいなと。みんなで切磋琢磨して作り上げていくのが本当に楽しみですよね。  

古川 同じものを目指しても同じ風にはならないよと小池先生もおっしゃっていたので、「エリザベート」のルドルフ役に続き、今回もまたたくさん怒られるだろうなと思うんですけれども、その中でいかに伸びて行けるかを自分の課題として、自分なりのロミオを作れたらと思いますね。ルドルフのときは、稽古場で必死に生きて、追いつめられていったら、それが自然にいい感じに役と重なったかなと思うので。ロミオも、前半の感じ、現実逃避しているというか、今の自分に満足しない部分というか、憧れはありながらも、なかなか具体的にはつかめないというか、夢見がちなところは自分の性格とも重なる部分があるかなと思うんです。大きな課題があると、大きければ大きいほど頑張れるんだけれども、ときどき、もうこれ以上何もできないって現実逃避しちゃうときがけっこうある。

城田 僕もそう。僕、いろいろな人から「城田さんってポジティブですよね」って言われるけど、僕ほどネガティブな人っていないと思う。マイナスな空気、隠すのうまいから(笑)。

柿澤 あ、僕も胃薬いつも持ち歩いてますよ(笑)。

城田 ロミオ役は三人ともネガティブ人間って?(笑)僕ももう一役あるし、三人とも本当にしんどいよね。稽古が煮詰まったら、ときには三人で酒飲んで暴れたいと思います(笑)。


[取材・文=藤本真由(舞台評論家)]
[撮影=渡辺マコト]


>>歌唱とトークが披露された制作発表レポートはこちら

公演概要

ミュージカル「ロミオ&ジュリエット」

<公演日程・会場>
2013/9/3(火)〜10/5(土) 東急シアターオーブ (東京都)
2013/10/12(土)〜10/27(日) 梅田芸術劇場 メインホール (大阪府)

<キャスト&スタッフ>
城田優/古川雄大/柿澤勇人/フランク莉奈/清水くるみ/尾上松也(松竹)/平方元基/加藤和樹/東山光明(Honey L Days)/水田航生/岡田亮輔/加藤潤一/石川禅/安崎求/鈴木結加里/ひのあらた/中山昇/未来優希/涼風真世/中島周/大貫勇輔/宮尾俊太郎/他
※柿澤勇人・宮尾俊太郎は東京公演のみの出演となります
※出演者のスケジュールに変更がありました場合は何とぞご了承くださいませ。出演者変更の場合でも、他日への変更・払い戻しは致しかねます。
★ご注意★キャストは公演日時により異なります。公式サイトにて出演日時をご確認の上、お申込ください。公式サイトはこちら


2013-07-25 19:35

 映画界のみならず、舞台演出家としてもここのところ手腕を高く評価されている行定勲が、2008年に続き、シュテファン・ツヴァイク作「見知らぬ女の手紙」をパルコ劇場で演出します(6月8日土曜、9日日曜/両日とも15時開演)。出演は、中嶋朋子・西島千博。今回この場では特別に、ツヴァイクと「見知らぬ女の手紙」について、少し掘り下げてみましょう。


作品像に迫る!

ツヴァイクは歴史小説、特に伝記小説に高い評価を得ており、「マリー・アントワネット」(あの「ベルばら」こと、池田理代子「ベルサイユのばら」の原作)や「メアリー・スチュアート」などが有名です。ユダヤ人作家(オーストリア人です)としてドイツ文学を担っていただけにナチの迫害も被り、イギリスやアメリカ、ブラジルへと亡命しましたが、1942年、終戦前に生涯を終えました(自殺説、ナチによる迫害殺説などあり)。ナチ統治下、ユダヤ人作品=(ツヴァイク台本/リヒャルト・シュトラウス作曲によるオペラ「無口な女」)を上演させてしまったことは、ナチにとって最大の遺恨だった、と語り継がせたこともありました。

「見知らぬ女の手紙」は、ツヴァイクの第二小説集『アモク』の中の一篇です。アモクとは、同名タイトルの「アモクにつかれた男」に由来しますが、ツヴァイクが敢えて「アモクにつかれた男」ではなく、アモクを小説集全体の標題としたのには、それなりの意味があるそうです。

 「アモク」とは、元来マライ地方の風土病の一つでこの病にかかった者は、一種の精神錯乱に陥り、時には狂暴な行為に走る、とされているそうです。ツヴァイクはこの病名を借り、情熱の小説集とし、いずれも激しい情念の虜となり、一途な行動を重ねて、悲劇的な運命をたどる主人公たちの姿を、いくつかの短編に描いたのでした。

「見知らぬ女の手紙」においても、到底常識では理解し得ぬ恋慕を1人の男に寄せ、破滅してゆく女性を描いているのですが、もしこの物語を、一篇の「恋愛小説」として読もうとするならば、誰もが呆然とするに違いありません。男女の精神の交流を基盤として初めて恋愛が成立するとするならば、ここにはそもそも「恋愛」など成立する余地はないからです。

「ある女」の少女が思慕の念を寄せる「有名なピアニスト」が、少女の思慕にふさわしい男であるかどうか、などということは、ここでは全く問題にならないのです。より平穏な、より幸せな人生を送り得たかもしれない「選択肢」が、作中いくつも彼女に示されてはいますが、彼女はこれらの「選択肢」をことごとく無視しています。

そもそも「情念」にとりつかれた者にとって「選択肢」など目に入らないどころか、存在さえしません。ツヴァイクが描こうとしたのは、こうした情念につかれた女性、ひたすら破滅へと向かう彼女の運命、ないしはその情念の激しさであって、決して「お涙頂戴的」な恋愛小説ではなかったことを念頭において、この物語に触れてゆかなくてはならないでしょう。

1948年、この「見知らぬ女の手紙」はジョーン・フォンテーンを主演として映画化(米国)され、『忘れじの面影』というタイトルで公開されました。しかし、享楽的な世紀末ウィーンを背景とした恋愛映画、あるいは純愛物語を作ろうとしていて、当時二流の恋愛映画にしかなり得なかった、というのは大いにうなずけるところです。

その後、1960年代にドイツの大人気女優ルート・ロイヴェリック(フィッシャー=ディースカウの元妻/ドイツのデボラ・カーと言われた)が演じ、ヘルムート・コイトナーが演出した(ドイツ・グラモフォン文学シリーズとして録音された)ものは、見事な出来だったそうです。冒頭の地の部分として扱っているところは、俳優出身でもあったコイトナーが読みました。全く一方通行の「愛」あるいは「情念」を見事に演じ、とりわけ、一見単なる脇役に過ぎぬ召使いのヨハネスが一瞬のうちに「ある女/私」の正体とその運命を見抜くくだりを、この物語の「山」として演じてみせたロイヴェリックの朗読は、聞くものを感動させずにはおかなかった、と言います。

こうした伝説に想を得て、今回の上演企画へと運ばれたそうです。ロイヴェリックと中嶋朋子の「ある女」。時空を超え、天才的実力派女優にしか演じられない演目というものは、実際に存在するものなのだ、ということを、私たちは2013年に再び体験することでしょう。

[文:トータル ステージ プロデュース]

公演概要

『見知らぬ女の手紙』

<公演日程・会場>
2013/6/8(土)〜6/9(日) PARCO劇場 (東京都)

<キャスト&スタッフ>
作:シュテファン・ツヴァイク
演出:行定勲
出演:中嶋朋子/西島千博


2013-05-30 12:37

 世界が認める人気パフォーマー、が〜まるちょばのふたりが自分たちの原点とも言える場所、“東京”にこだわったライブツアー『東京JACK』を敢行!東京にある62市区町村のうち、今回は伊豆諸島及び小笠原諸島以外の(時期をずらし公演の予定)49の市区町村を“JACK”。3ヶ月をかけて東京をが〜まる色に染めていくという。

 

意気込みをきいた!


──『東京JACK』、なかなか魅力的なアイデアです。
ケッチ もともと僕らは東京で活動してたんですけど、段々と海外での活動が多くなって、それからまた「日本でも頑張らなきゃ」って、JAPANツアーをはじめたりしてたんですよね。だから灯台下暗しというか、“東京でやる”というのはもう一度自分たちの足元を照らすという意味でもすごくいい考えなんじゃないかなって。プラス、僕らはこれまで世界を回って来たからこそ東京の良さがわかるんですよ。ホントにね、東京って世界の中でもなかなかないカンジにすごい都市だと思うので、その東京をJACKするっていうのは相当面白い。まあ…全体的なスケジュールはなるべく見ないようにしてますけど(笑)。
HIRO-PON びっしり!いや、でも改めてこれは夢のような話だよなぁと思います。だって僕ら、基本的には東京でやりたくてもできなかったから、必然的に海外へ行ったという経緯がありますからね。とにかくやれるところを求めていた。だからもう「やれるんならやるぞ!」ですよ。大変だったのはむしろこれだけの期間にこれだけの数を収めるっていうブッキングをしてくれたスタッフのほうでしょう。すごいよなぁ。嬉しい悲鳴。…うん、若かりし頃の自分を思い返してみれば、こんなに幸せなことはない。

──あの頃の自分に教えてあげたい!
HIRO-PON そうですねぇ〜。
ケッチ ね。鼻血でちゃうよね(笑)。

──この公演数だと、ほぼ毎日東京のどこかに行っているというカンジですね。
ケッチ まさに“出勤”。旅公演とは違って、毎日自宅から出発します。
HIRO-PON ある意味が〜まるちょばの強みを生かせるスタイルですよね。僕らはコトバも使わないし、建て込みが複雑なステージセットもないし。ほかの公演に比べると移動はしやすい。少なくとも僕らふたりはほぼ身ひとつで行けばいいので。

──劇場はあらかじめ下見に行くんですか?
ケッチ 行かないです。その日に入って、リハをして、本番。

──それもすごい!実は今日ここに東京都の地図を用意して頂いているんですが…あらためてみると広いですよね。行ったことある場所というと。
ケッチ 僕は…5カ所くらいかなぁ。
HIRO-PON そう?俺は意外と行ってるとこいっぱいあるんだよね(笑)。
ケッチ まあ行って帰ってくる、となると、それぞれの街を堪能する時間はほとんどないのがちょっと残念だな。
HIRO-PON 旅、好きだもんね。
ケッチ 好き好き。

──だからこそ東京の良さ、すごさも身に染みている。
HIRO-PON そうですね。例えば…東京はロンドンやニューヨークなんかに比べても情報量がすごくあると思います。インターネットが普及している時代とはいえ、やっぱりちゃんと手にすることのできる情報の量が全然違う。それはモノ創りにおいても同じ。必要なときに必要な情報が手に入るし、新しい発見も新しい刺激もたくさん!そこは東京がホントに秀でてるなぁと思いますね。
ケッチ 海外のパフォーマーが日本に来ても同じことを感じてるみたいですよ。それこそ東急ハンズとかモノすごい喜ぶ。向こうにもホームセンターはあるけど、あれだけ違うものが一度に取り揃えられてる場所はなかなかないので、面白がりますよね。自分のネタに使えそうなものとか買っていったりして。
HIRO-PON モノも情報も量だけじゃなく、意外に深いでしょ?しかも一カ所に固まってない。東京中、コアなものが広範囲に渡って用意されている。
ケッチ スウェーデンで散々探して見つからなかったものが、帰って東急ハンズに行ったらそこにいっぱいあった。とかね(笑)。

──“観客”という部分では?
ケッチ あー…僕ら東京だと銀河劇場でやることが多いんだけど、なんていうか…海外のお客さんに比べるとちょっと醒めてる感じはしますね。
HIRO-PON 多くのモノの中のひとつとしてのが〜まるちょば、というニュアンスが強いのかな。確かに外野的なイメージはあります。でも去年町田に行ったとき、すっごく盛り上がったんですよ!もちろん町田も東京なので、ああ東京とひとくくりにはできないんだな、と思いました。

──ちょっとした場の違いでの変化。それは…観るほうにホーム感があったのかもしれないですね。
HIRO-PON そうですね。だからこの『JACK』でそれが出てくれたらうれしいなと思ってて。
ケッチ うん、うん。
HIRO-PON その地、その地で、地元の人が集まる空気が知りたい。
ケッチ 県民性ならぬ町民性。興味ありますね。
HIRO-PON 結局僕らは劇場にいる時間、お客さんと過ごす時間の中でしかその地域を知ることができないわけで。盛り上がれば元気な住民の人が多いんだなって思うし、そうじゃなかったらシャイな人がいいのかな、とか(笑)。

──これだけ各地に行きますから、おそらくいろいろあるでしょうね。それにしてもこうしてスケジュールを拝見すると、あたりまえですがどこの街にも演劇を楽しめる場所があるんだな、と改めて感じます。
ケッチ そうなんですよ。僕の住んでるところは、普段はわざわざよそに出なくても用が済んじゃう。で、「あの映画今日までか」なんて思いつつ、ちょっと面倒だといかずじまいになったり。演劇もそうかもしれない。わざわざ遠くの大劇場にいかなくても作品のほうから自分たちの住む場所の近くにくるんだったら、「ちょっと行ってみようかな」って思える。
HIRO-PON だから今、こうしてみなさんにスケジュールをお知らせしているのです!!日にち間違えたらダメですよ〜。

──では、内容的にはどのようなラインナップで?
ケッチ 去年の『That’s が〜まるSHOW!!』に近いスタイルかな。カバンとかロボットとかエスカレーターとか、アレコレ入れて、1時間半くらいで考えてます。
HIRO-PON 基本的なところはありつつ、あとは会場の雰囲気で。もうその時間全部をみんなで楽しみましょう!!っていう構成ですね。
ケッチ そのうちの1時間くらいはずっとイギリスでやってくるネタなので…あ、僕ら『JACK』の前、8月に一ヶ月間エジンバラに行くんですよ。なので、そこでまたネタにも磨きもかかるだろうし、当然新しいモノも生まれるだろうし。ね。
HIRO-PON うん。僕ら14年間やっていて…そこでやって来たことって、変わらずやってるんですね。やり続けることでまた発見もあるし、ムダがあれば省いていくし。そうやってSHOWを進化させて磨きをかけて今に至ってる。やっぱりこなしていっちゃったら絶対そこで終わりだと思うんです。だから毎回毎回、より良くする努力というか、磨いていこう、その場その場を常にベストな状態で観せていこうという気持ちでやっていて、それはこれからも変わらないし、続いていくことだし、『JACK』もまたその過程でもあるし。
ケッチ それが僕らのスタイル。イギリスでどんなお土産が手にできるかは僕らもまだわからないけど、でも絶対またなにかを持って帰って来れると思うので、そこも楽しみにしてて欲しいですね。

──あとはもうぜひそれぞれに行きやすい場所に気軽に来て頂くのみ、と。
HIRO-PON ですね。とりあえず数は揃えましたので、楽しかったら2度3度と何度でも観て頂けたら。それこそ「場所が変わると同じ公演でもこんなに違うんだ」っていうライブ感も体感してもらえると思うので、見比べる楽しさも味わってもらいたいし。年配の方にはまったりと、子どもたちは大はしゃぎでって、自由に楽しんでもらいたいです。そうやって楽しめるSHOWを提供できるのも、が〜まるちょばならでは。
ケッチ そうそう。あと、今回は特にまだ僕らを観たことない方に来てもらいたいなって思ってます。なにしろ12時間飛行機に乗ってイギリスまで行かないと観られないSHOWと同じSHOWが、あなたの街でも観られるんですよ!
HIRO-PON しかも、僕らを調子に乗せればSHOWはもっともっと長くなる!

──…と、チラシにもありますね(笑)。つまり、お客さんは楽しめば楽しむほど得をする舞台である、と。
ケッチ そういうことです!ぜひみなさんお誘い合わせの上、最寄りの会場までお越し下さいませ。
HIRO-PON 僕ら、劇場に怒られるギリギリの時間までやりますので(笑)。

[取材・文=横澤 由香]
[インタビュー写真=渡辺 マコト]

公演概要

が〜まるちょば東京JACK

<公演日程・会場>
2013/9/4(水)〜11/30(土) ヤクルトホール (東京都)他、都内全49会場

<キャスト&スタッフ>
作・演出・出演:ケッチ!/HIRO-PON(が〜まるちょば)


2013-05-14 18:10


(左より)八木将康(劇団EXILE)、野替愁平(劇団EXILE)、小澤雄太(劇団EXILE)、町田啓太(劇団EXILE)、天野浩成、長谷部優、瀬下尚人

5月3日(金)、東京・新国立劇場 小劇場にて、大人気ホラー「リング」シリーズ初の舞台化作品、劇団EXILE 『SADAKO-誕生悲話-』 が開幕いたしました。
本作は、1960年代の学生運動が活発化し混迷する時代を背景に、山村貞子が所属していた「劇団飛翔」の実態、人間関係、貞子の能力、貞子失踪の真実が、かつて劇団に所属していた一人の男・遠山が警察の取調室で語る言葉によってひとつひとつ解き明かされ、悲しくも切ない山村貞子の実像が浮かび上がっていく、これまで小説では描かれなかった “貞子”の姿が綴られる舞台です。

原案の鈴木光司が書き下したオリジナルストーリーを、「劇団方南ぐみ」の樫田正剛が脚本化し、星田良子が演出を手掛けて新たな貞子像を描き出します。そしてキャストには、人気、実力ともに注目を集める劇団EXILEから町田啓太、小澤雄太、野替愁平、八木将康の4名、さらに、長谷部優、天野浩成、そしてベテラン俳優の瀬下尚人といった顔ぶれが揃い、新たな「リング」シリーズ作品に渾身で挑みます。世代を超えた恐怖と怨念の裏側にあった究極のラブストーリーと”山村貞子”の真実の物語にどうぞご期待ください。

 

出演者コメント

町田啓太(劇団EXILE) /遠山慎太郎 役
劇団の音響オペレーターの遠山役を演じています。天野(浩成)さん演じる水澤刑事と取調室で繰り広げる心理戦が、だんだん白熱していくので、息が抜けず、すべてにおいてやりがいのある役です。水澤との会話の中で、遠山の考えていることや、貞子の秘密が明らかになっていきます。 最初から最後まですべてが見どころですので、ぜひ観に来てください!

天野浩成 /水澤彰文 役
町田さん演じる遠山を追い詰める、刑事・水澤を演じています。遠山との心理戦が白熱しつつも、(遠山の勢いにつられて)同じテンションで返さず、水澤として返すのが難しいです。周りのみんなのパワーにも負けないように頑張ります!ぜひ、何度でも足を運んでください。お待ちしています。

長谷部 優 /栗原真理子 役
劇団の看板女優の真理子を演じています。劇団の影のリーダーというか、女番長のような役なので、強気に頑張っています。怖い役のはずなのですが、稽古中はいじられてばかりで、あまり怖がってくれなくて(笑)、女性の強さを出していきたいです。この舞台で、貞子の怖さだけでなく、生きるエネルギーや、愛を感じていただけたら嬉しいです。

瀬下尚人 /重森亮介 役
僕が演じる重森は、劇団飛翔を主宰していて、周りを洗脳していく役ですが、一人では何もできない、ずる賢い男です。この作品に描かれている、1960年代に起きた学生運動は、僕自身は体験していませんが、飲み屋などでよく周りの人たちから話を聞いていました。今回は、若い叫び、魂の叫びを放ちながらも、ストレートに生き抜いた若者を、個性あふれるメンバーが演じています。一度では分からなくても、二度観ればわかるかもしれない、三度観ればもっとよく分かるかもしれない(笑) 観れば観るほど、噛めば噛むほど味が出てくる舞台「SADAKO」をよろしくお願いいたします!

[撮影=阿久津知宏]

公演概要

劇団EXILE公演「SADAKO −誕生悲話−」

<公演日程・会場>
2013/5/3(金・祝)〜5/12(日) 新国立劇場 小劇場 (東京都)
2013/5/15(水) 森ノ宮ピロティホール (大阪府)

<キャスト&スタッフ>
町田啓太(劇団EXILE)、小澤雄太(劇団EXILE)、野替愁平(劇団EXILE)、八木将康(劇団EXILE)
長谷部優/天野浩成/瀬下尚人
声の出演:TETSUYA(EXILE)
原案・オリジナルストーリー:鈴木光司
脚本:樫田正剛
演出:星田良子

 
2013-05-07 19:36

 一九八三年五月四日、寺山修司が阿佐ヶ谷の河北総合病院でこの世を去ってから三十年が経った。そして、寺山との縁も深かった西武劇場こと現・パルコ劇場が開場して四十年。これらを記念したプロデュース公演『レミング〜世界の涯まで連れてって〜』が先ごろ開幕した(企画・制作:パルコ/ポスターハリス・カンパニー)。同作品は一九七九年五月、寺山の主宰する演劇実験室◎天井桟敷によって初演がなされたものだ(作・演出:寺山修司)。こちらは晴海の東京国際貿易センターという大展示場でたった四日間だけの上演だった。

 

観劇記

 私の寺山初体験は高校三年、「われに五月を」と唱えたわけでもないけれど、たまたまそれは五月のことだった。受験勉強をサボって名画座で観た『田園に死す』。寺山が監督した、その偽自伝映画は、比類なき表現の強度によって、童貞少年の澱んだ魂を忽ちにして“世界の涯”へと放り投げた。一年後、大学生となって、今度は寺山宇宙を生で体験したいと希求し、晴海埠頭という“世界の涯”を目指した。そこで初めて観ることのできた寺山演劇こそ『レミング』初演である。開場を待つ行列に並んでいると、すぐ近くにロングコートを纏った生身の寺山を発見。その颯爽たる立ち姿が神々しく感じられたものだ。

 広大な展示場に一歩足を踏み入れれば、スモークの立ち込めるその空間は完全なる別世界。そこではイケメンの長髪ヒッピー、J・A・シーザーが、すでにして幻想的な音楽を奏でている。劇が開始されるや、小竹信節の奇っ怪な美術装置群と共に、白塗りの坊主頭やら裸女やら侏儒やら…そんな見世物小屋的妖しさを漂わす人々が次々に現れては、シュールなやりとりを繰り広げた。そしてラスト、出演者達が踊り狂いながら、遥か遠方の“世界の涯”に向かって行進してゆく光景は、鮮烈の極みだった。演劇によって既知の外側に触れることのできた衝撃に、私は身震いした。…この僅か四年後に寺山が他界してしまうとは、その時誰が予想しえただろう?

 一九八二年には『レミング〜壁抜け男』という改訂版が上演され、これが寺山生前最後の演出作品となる。紀伊国屋ホールの観客席には、笹のような目で興奮気味に舞台を見つめる一人の若者がいた。その若者が、三十余年の後に同作品を渋谷の劇場で蘇らせることになろうとは、これも一体誰が予想しえただろう? 彼は天井桟敷に入団しようとした矢先に寺山の死によって夢を逸失してしまうが、やがてポスター貼りの仕事を振り出しに、いつしか演劇興行師へと転身する。ポスターハリス・カンパニー笹目浩之その人である。

 そんな笹目プロデューサーの、喪失した夢の穴埋め願望が原動力となったのであろうか、このほど彼の企画により新たな形で蘇ることになったのが、『レミング〜世界の涯まで連れてって〜』なのである。その演出および上演台本は維新派の松本雄吉が担当。さらに松本の盟友である少年王者舘の天野天街も上演台本作成に参加した。

 維新派は一九七〇年に結成された大阪の劇団であり、少年王者舘は一九八二年に結成された名古屋の劇団である。そんな反中央集権の地方劇団主宰二名の手によって、終生東北のローカル性にこだわった寺山の演劇作品が、こともあろうに“世界の涯”ならぬ“世界の中心”渋谷の商業施設において、再生されるというのである。それが、寺山の良き理解者だった故・山口昌男の言う「周縁が中心を異化する」戦略の一環なのだとすれば、誠に面白い企みではないか。さらに、である。松本も天野も、寺山人脈の外部に棲息し、必ずしも寺山の影響を直接的に受けてきた演劇人ではない。が、劇的スピリッツにおいては寺山と通底する何かを大いに有しているようにも思われる。その何かをこの企画によって引っ張りだそうという狙いがあるのであれば、それもまた実に意義深いことに思える。

 松本雄吉率いる維新派は、バリ島のケチャとラップ音楽が融合したような“ヂャンヂャン☆オペラ”というユニークなスタイルが名物の、野外パフォーマンス集団だ。そこでは演劇・音楽・ダンス・美術・建築などがヒエラルキーなく統合されている。今回の『レミング』宣伝ポスターやチラシには“バベルの塔”が描かれているが、維新派は一九九五年に、その名も『BABEL』というCDアルバムをリリースしている。実はその時のライナーノーツを私が書いていて、アントナン・アルトーの演劇論を援用しながら、維新派の上演スタイルの意義を解説した経緯がある。ただし、そもそも、パロール=ロゴス至上主義的な西欧型台詞中心劇を批判し、残酷演劇なる全体性の概念を唱えたアルトーの考えを、日本で誰よりもよく理解し、意識的に実践した演劇人は寺山修司その人であったことを忘れてはならないだろう。それゆえか寺山も、生前一度だけ観た維新派(当時は、日本維新派)の作品には好感を抱いたという。

 もう一人、少年王者舘を主宰する天野天街。彼もまた、正統的台詞劇から程遠い、魔術的な舞台創作を展開してきた男だ。また映像作家としては、寺山も一九七五年に銀賞を受賞したことのあるオーバーハウゼン国際短編映画祭において、一九九五年に『トワイライツ』という監督作品で(あのソクーロフを抑えて)グランプリを受賞した経験を持つ奇才である。彼の強みとは、その表現世界が完全に“夢”の文法で成立していることにある。フロイトが、ユングが、そして数多のシュルレアリストたちが追求してきた“夢”のシステムを、天野は生の演劇舞台に適用するという荒技をやってのけ、錯乱の内に夢と現実の壁を溶解させてきた。それはまさに、後述する『レミング』の作品主題とも直結している。また最近、流山児★事務所プロデュースの下で天野の演出した寺山作品『田園に死す』『地球空洞説』が、寺山論としても寺山オマージュとしても極めて秀逸な出来映えを示したことで、今回の台本参加については、大いなる期待が寄せられた。

 そして…、そうなのだ、寺山亡き後に上演される全ての寺山演劇作品は、他者による寺山論ないしは寺山オマージュとならざるをえないのである。マルセル・デュシャンの「死ぬのはみな他人ばかり」という言葉をこよなく愛した寺山だが、寺山自身もまたその死によって、この世の他者となってしまった。他者は、別なる他者の“解釈”を通してしか語られることはない。「事実はなく、あるのは解釈だけ」と述べたのは何処のドイツの哲学者だったか鴻上尚史だったか忘れたけれど、今回の『レミング』も寺山の直接的な作品ではありえず、あくまで他者を介した寺山“解釈”作品なのである。とくに寺山を知らない若い世代には、その点を理解することが肝要である。

 昨今幾つかのマスメディアで「甦る寺山修司」というコピーも目にしたが、もちろん不可逆的一回性の演劇においては寺山修司作品が昔のまま再生されることなどありえない。“黄泉還る”ものは、古事記のイザナミのごとく、もはや他者なのだから。“黄泉還る”他者は、映画『田園に死す』の、イタコの口寄せに降霊する父親のごとく、この世の他者の“解釈”を通してしか“読み換える”ことはできないのだ。ならば没後三十年、ヨミカエル寺山修司に我々は今、何を見出しうるのだろうか。…そんなことをつらつら思いながら、パルコ劇場で『レミング』の舞台に向き合う私であった。

 ものみな歌で始まる…。あるいは、はじめに歌ありき。今回の『レミング』は、「take me to the end of the world」という歌と共に、観客が世界の涯にいざなわれるところから始まる。

 思えば、これまで松本雄吉率いる維新派の公演を観るために、私たちはどれだけ具体的な“世界の涯”へと連れて行かれたことか。人っ気の幽き大阪の港。大自然に囲まれた山里。寒風吹きすさぶ琵琶湖の畔。瀬戸内海の孤島…。しかし、同じ演出家の芝居が、今は何故か都会のキレイで便利な劇場の中で、繰り広げられようとしているのだ。奇妙と言おうか、新鮮と言おうか。ただし、寺山はかつて、このパルコ劇場(当時は西武劇場)で上演した『青ひげ公の城』において「月よりも、もっと遠い場所…それは、劇場!」とも言っているわけだが…。

 気が付けば、眼前では黒帽子&黒コートの集団によって機械的なタップのリズムが刻まれている。これは間違いなく松本雄吉のスタイルに則ったパフォーマンスであるが、見ようによっては天井桟敷をも髣髴とさせる。やがて都市の模型、街の標本みたようなものを大事そうに両手で抱えた、学生服姿の少年が現れるが、白味を帯びた彼もまた、維新派の典型的イメージに沿うキャラクターながら、その向こう側に『田園に死す』の少年の残像が透かし見える気もする(ちなみにこの少年は、カーテンコールの時に、ちょっとした驚きを提供するだろう)。こうした心象風景の有機交流電燈の如き“揺らぎ”に襲われながら、観客は寺山劇の中に松本の影を、あるいは松本劇の中に寺山の影を同時に感じとってゆくのだろう。

 二人の中華コック見習い(八嶋智人・片桐仁)がラップに乗せて料理名を連呼したり、アパートの大家たちがラップに乗せて囲碁を打ち進めるあたりにも、寺山戯曲と松本スタイルの親和性が最大限に発揮されている。単語が意味や物語に向かって文法的・制度的に繋がってゆくのではなく、不条理な断片のまま即物的に点描されてゆく。しかしそこから特殊なリズムが発生し、生命の息吹がもたらされる。この即物感と生命感の交錯は、次第に「都市」を浮かび上がらせる。そう、私たち観客はこの『レミング』を通じて、「都市」という得体のしれない生命体を体験することとなる。

 松本は、戯曲のト書きにある「都市とは、そこにすむ人々の内面を外在化したものである」という一文に注目し、『レミング』を「東北から来た一青年による、一種の都市論」と捉えて再構築すると述べた。そもそも松本自身、『王國』『水街』『流星』という壮大な三部作において、大阪という都市の深層を探究する都市論的アプローチを維新派で試みた過去がある(中沢新一の『大阪アースダイバー』が出るずっと前のこと)。そのセンスが今回『レミング』の中に、いい具合に滲み出た。…というか、東京もんたる私たちにとっては、東京外の人間によって自分たちの深層が見透かされているというか、或いは舞台という鏡に映る自分たちの“内面”を見させられているような…そんな居心地の悪さも多少は感じている。

 ときに、『レミング』という戯曲に込められた作者・寺山の意図は「ひとことで言えば、壁の消失によってあばかれる内面の神話の虚構性の検証である」と、かつて寺山自身が説明している。壁はそもそも防寒や保護のために作られたが、いつしか排他や隠匿の目的に転じることによって、個人の“内面”という虚構が強化されてしまった。その“内面”という幻想を支える“表面”という壁が消えてしまった時、人々は方向感覚を見失い、旅ネズミ<レミング>のように死に向かって走り出すことになるのか。それとも、窮屈な幻想から解放されてなにがしかの自由を得られるのだろうか。

 そんな問いを追求してゆくように、劇中では様々な壁という壁が消えてゆく。それにより、主人公たるコック見習いの部屋では、思いがけないもの(隣りの部屋の夫婦の事情、松重豊によって演じられる畳下の母親etc.)が見えてきたり、思いがけないもの(映画の撮影現場、精神病院etc.)が次々と侵入してくる。そして映画の撮影現場における、尻取りのような台詞の掛け合いは、聞き覚えがある。そう、天野天街節である。女優・影山影子を演じる、あの常盤貴子の舌先から天野語が放たれるのを聴くのはまた、一驚にして一興と言うよりほかない。

 雑誌のインタビューで「僕は全体の三分の一にあたる“映画のシーン”を主に任されてますけど、松本さんが作った世界の中に、変な夢がずうずうしく介入していくっていう感じにしたいんです。映画と夢は似たようなモノだから。まぶたの裏側のスクリーンに投影された“ユメ”を頭蓋で覆われた映画館で見ている…」とは天野の弁だが、その発想こそ、天野以外の何ものでもないのである。これに呼応して私などは、ブーブリル&シェーンベルクのミュージカル『ミス・サイゴン』におけるあの超名曲を口ずさまずにはいられない。「Dream , The dream I have to find , The movie in my mind 」

 覚醒と睡眠の間にある壁、あるいは現実と夢を分かつ壁。寺山はその壁すらも無くすことを企んだ。エルヴェ・ド・サン=ドニ侯爵のように自由に夢を操縦できたら、壁を抜けることができるのではないかと。しかし夢の世界では、とどのつまり主体がはっきりしない。自分は夢を見ているのか誰かに夢見られているのか。この世界は夢なのか現なのか妄想なのか。そして、その曖昧の空気が壁を通り越して劇全体に広がり混濁する状況において、今度は寺山劇の中に天野劇(たとえば『くだんの件』…)の影がプロジェクションマッピングさながらに重なり映って見えて来る。

 前述のとおり『レミング』の初演は、「世界の涯まで連れてって」という副題が添えられ、今回の『レミング』もそれを踏襲している。これは、ブレーズ・サンドラールの長編小説のタイトルであり、老女優テレーズが無名兵士との情事の果ての絶頂で発する「アァン、イッちゃう〜」的なフレーズである。その言葉からは生の涯としての死の際に立ち上るエロスの匂いも感じ取れる(個人的には、その「世界の涯まで連れてって」という台詞が、劇中で常盤の演じる女優・影山影子から発せられないことがちと惜しいのだが…)。一方、寺山最後の上演となった『レミング』の改訂再演では「壁抜け男」という別の副題が添えられているが、こちらはマルセル・エイメの短編小説のタイトルであり、一九九六年にはミシェル・ルグラン作曲でミュージカル化されている(日本では劇団四季が上演した。私自身は昨年、韓国での上演を見ている)。今回『レミング』を観ながら改めて思ったのは、寺山自身が壁抜け男になりたかったのではないか、ということだ。

 なにしろ映画『ローラ』という監督作品では、現実の客席の男をスクリーンの中に引きずり込み、裸にしてから再び客席に放り返すという芸当をやってのけたほどの寺山である。或いは折に触れて「私の解体」を考え、或いは日常と非日常、現実と夢の壁をすり抜けようと思案し続けていた寺山である。もしかしたら「母親」という壁、さらには「完全なる死体」という壁さえも、すり抜けたかったのかもしれない。そんな彼こそが、命の涯に向かって、壁をすり抜け疾走してゆくレミングそのもののようであり、彼の内面が外在化された作品こそ、この『レミング』なのではなかったか、と強く感じられたのだ。

 それは今回の『レミング』において、松本の翁という他者が“寺山神話”という壁を取り払ったことでハッキリと見えてきた、新たなる“寺山修司論”と言えそうだ。と同時にまた、『レミング』という作品自体に、寺山修司だとか松本雄吉だとか或いは天野天街だとか、さらには八嶋智人だとか片桐仁だとか常盤貴子だとか松重豊だとか、そうした異なる出自間の壁がことごとく消えてゆくような、壁抜け男の魔法作用を感じ取ることができたようにも思える。もしも、その壁抜け男が職務質問を受けた際には、ラストシーンのタロ=八嶋智人のように“立ったまま眠り”ながら、もちろん、「職業:寺山修司」と答えることだろう。

[文=うにたもみいち/演劇エッセイスト]
[撮影=谷古宇正彦]

公演概要

「レミング〜世界の涯まで連れてって」

<公演日程・会場>
2013/4/21(日)〜5/16(木) PARCO劇場 (東京都)
2013/5/25(土) 中日劇場 (愛知県)
2013/6/1(土)〜6/2(日) シアターBRAVA! (大阪府)

<キャスト&スタッフ>
作:寺山修司
上演台本:松本雄吉(「維新派」主宰)/天野天街(「少年王者舘」主宰)
演出:松本雄吉
出演:八嶋智人/片桐仁/常盤貴子/松重豊/他



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2013-05-07 19:23

 野田秀樹が主人公ナポレオンを務め、三谷幸喜が書き下ろし、演出を手がける「おのれナポレオン」。演劇界の人気者二人が夢のタッグを組んだというにはとどまらない。人生を芝居に賭してきた二人の人間が、己の演劇的良心をもってぶつかりあった、挑戦と共闘が結実した舞台である(4月5日18時15分、東京芸術劇場プレイハウスにて公開稽古を見学)。

★舞台『おのれナポレオン』をライブビューイング★
2013/5/9(木)19:00開演 全国の映画館他劇場

公開稽古レポート!

 最晩年、イギリス領セント・ヘレナ島に幽閉されていたナポレオン・ボナパルト。胃がんによるものとされたその死は、実は、暗殺ではなかったのか。その死からしばらく経って後、真相を探るべく、彼の周辺にいた人々を訪ね歩く人物に、彼らが一人ひとり、ナポレオンとの思い出を語り出す――。主治医のアントンマルキ(今井朋彦)。腹心の将軍モントロン伯爵(山本耕史)。その妻でナポレオンの愛人だったアルヴィーヌ(天海祐希)。そして、ナポレオンの仇敵、セント・ヘレナ島総督ハドソン・ロウ(内野聖陽)。忠実な侍従マルシャン(浅利陽介)が仕えての、島でのナポレオンの暮らしぶりが明らかになってゆく。

一軍人からフランスの皇帝へと上り詰め、一度はヨーロッパの大半をその支配下においた英雄、野田ナポレオンは、よくいえば天真爛漫、融通無礙、つまりは気まぐれで自分勝手。一人の人間に自らへのマッサージとピアノ演奏とを同時に所望し、ベートーヴェンの「月光」は繰り返しが多いから省略して弾けとのたまい。だが、どこか無邪気に周囲を魅了してやまない男に、人々は翻弄される。その一方で、ときに鋭く非凡なところを発揮する男の、真実の顔はいったいどこにあるのだろう。そんなナポレオンを、野田はその全身を駆使して体現してゆく。飛び跳ね、腹筋をし、面妖なステップを踏み、自身より大きな愛人を抱いて愛を交わし、それでいて、たまさか見せる不敵な顔。

 野田秀樹は、自身以外の作・演出の舞台作品にほとんど出たことがない。つまり、これまで役者・野田秀樹を演出してきたのはほぼ、演出家・野田秀樹一人だった。今回、役者に徹したその野田を、三谷幸喜が演出する。作品の制作発表記者会見で、二大○○と並べられることなどとんでもないと、6歳年上の演劇人への憧れを臆することなく明かし、その役者としての魅力についてはハンサムでかっこいいところと語った三谷にとって、これは、憧れの先輩への愛と尊敬をこめた挑戦である。そして三谷は、作中、役者・野田秀樹から、実にさまざまな顔を引き出し続ける。野田というと多くがイメージする、永遠の少年性をどこか残したキュートさは、野田が自身の演出においてはどこか照れてしまうのであろう範囲を超えて、さらにやんちゃにキュートにたっぷりと、ときにふてぶてしくすら。年齢に似つかわしい、渋くりりしく、人生の機微を知り、英知をたたえた顔。そして、その三谷の作劇と演出に、野田がきわめて素直に応え、プリズムのように光を放ち続ける。舞台上のときに矛盾めいた不可思議さに満ちた存在を見つめ続けて、その存在がどうしようもなく愛おしくてたまらなくなる瞬間が訪れる。そして、その瞬間を可能とした演出家の愛と敬意の深さにまた、どうしようもなく愛おしさを感じずにはいられない。
 作品はそして、劇作家・演出家による“天才論”でもある。天才とは、周囲の人間の感情と行動すら完膚なきまでに読み切って、自らの意志を実現させる力をもった存在ではないか。天才と、彼を取り巻く人々を緻密に描いたミステリー・タッチのこの作品で、三谷は“天賦の才”なるこの世のミステリーに迫ろうとする。キュビスムを思わせる人形遣いにも新味を感じさせる(美術・堀尾幸男)。

 名医か、それともヤブ医者か。やはり異なる二つの顔を見せて、今井朋彦が知的なかわゆさ全開で迫る。専門用語の駆使が似合う一方で腰砕けにとぼける妙が魅力である。ナポレオンのふてぶてしさともどこか通底する、それでいて骨太なふてぶてしさを演じて、山本耕史の男振りが光る。女の純真と打算を嫌みのないからっとした色気で見せて、天海祐希は綺麗な人である。やはりふてぶてしく傲岸不遜、ナポレオンと剛と柔のコントラストを成し、それでも肝心なところで開陳する腑抜けた人の好さで、内野聖陽がチャーミング。そして、忠実な僕ぶりから一転、眼鏡姿も怜悧な美青年姿で、浅利陽介が終盤、あっと言わせる。

[取材・文=藤本真由(舞台評論家)]
[撮影=平田貴章]

公演概要

おのれナポレオン L'honneur de Napoleon

<公演日程・会場>
2013/4/9(火)〜5/12(日) 4/6(土)・7(日)はプレビュー公演
東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)

<キャスト&スタッフ>
作・演出:三谷幸喜
出演:野田秀樹、天海祐希
山本耕史、浅利陽介、今井朋彦
内野聖陽

<主催>
東京芸術劇場(公益財団法人東京都歴史文化財団)/ TBS

<企画制作>
東京芸術劇場
http://www.geigeki.jp/


★舞台『おのれナポレオン』をライブビューイング★
2013/5/9(木)19:00開演 全国の映画館他劇場

【関連動画】出演者のみなさんからのメッセージが到着!

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2013-04-12 10:50

2012年秋、スポーツと音楽に向けられる大衆の熱狂を軸に、忘れ得ぬ彼の時代へのレクイエムを描いた『エッグ』。その千穐楽から約半年…… 劇作家として、常に挑み続けてきた野田秀樹が、今秋、新たに自らに課した大いなる挑戦とは、“ 今、まさにこの世を生きる実在の人物をモチーフに新作を描くこと。”NODA・MAP 第18回公演は『MIWA』。 そのまさかの“ 美輪明宏 ”である。

公演情報

長崎に生まれ育ち、上京の後、三島由起夫をはじめとする文化人を魅了したシャンソン歌手の才。“ 天上界の美 ”とまで謳われた、ジェンダーを超越した美貌。
『毛皮のマリー』や、今春待望の再演が実現した『黒蜥蜴』に代表される、舞台俳優としての類まれなる表現力。
そしてテレビ番組から一大ブームを巻き起こした“ 愛の伝道師 ”としての強烈なパーソナリティーとオピニオンリーダーとしての存在感…
昨年大晦日の NHK 紅白歌合戦における『ヨイトマケの唄』のパフォーマンスが大きな反響を呼んだことは、未だ記憶に新しい。

戦時の昭和から平成の今日までに多くの苦楽を経験し、決してひと言では括れない、多面的な才能でいつの時代にも、人々を魅了し続けてきた美輪さん。野田の作家としての好奇心を刺激して止まない、まさに“ 生ける伝説 ”として国民的知名度を誇るこの強大なアイコンを、野田秀樹はあくまで“ モチーフ ”として扱い、豪華役者陣と共にオリジナルストーリーとして描き出す。
野田の直筆コメントに踊る、“ 出鱈目 ”という文字……。
果たして“MIWA”はどこまで“ 美輪 ”なのか? そもそも“MIWA”は本当に“ 美輪 ”足り得るのか ?? 斬新なアイデアと未曾有の結末で、期待以上の興奮と感動を観客に披露してきた野田による、真贋さえも予測のつかない[美輪明宏物語]の幕が開く。

――2013 年秋、野田秀樹が仕掛けるあまりに不敵で大胆な演劇の遊戯。 それが、“NODA・MAP の『MIWA』”! !是非、ご期待ください!

『MIWA』が彼らを引き寄せた!?最高のキャスティングがここに集結

本作の主演を務めるのは、宮沢りえ。これまでに『パイパー』『ザ・キャラクター』
『THE BEE Japanese Version』など、NODA・MAP作品で鮮烈な存在感を見せてきた時代のミューズは、時代のアイコンで在り続ける“MIWA”を演じるのか?
それとも……!?

そして、瑛太がNODA・MAPに初登場。なにものにも染まらない独特の存在感を放つ旬の俳優が、野田の挑戦作となる『MIWA』の劇世界の中で、一体どんな色に自身を染め上げていくのか!!

若くして実力派女優としての地位を確立した井上真央が、NODA・MAPに初参加。
20代、初の舞台として、期待が高まる。

さらに、小出恵介が、満を持してNODA・MAPに初参戦を果たす。爽やかな存在感と男の色気を兼ね備えた彼が、野田の戯曲世界の中でみせる演技とは?

ミュージカルからストレートプレイまで何でもござれ。
若くして、歴戦の猛者である浦井健治が初のNODA・MAP参加となる。

本キャストにおいて異彩を放つも、舞台出演は三谷作品に続き2度目。今回 NODA・MAP初参加の青木さやかにも注目が集まる。

変幻自在の表現力で『THE BEE Japanese Version』では一人何役もこなし、その存在感をみせつけた、池田成志。

さらに極めつけは『ザ・キャラクター』以来の登場となる古田新太。彼の唯一無二にしてパワフルかつ奔放な演技は、『MIWA』の台風の目となるのか?

このひとクセもふたクセもある最高のキャスティングが、『MIWA』という運命の磁場で何を演じ、我々の眼前で如何なるセッションを繰り広げるのか?
是非ともご注目下さい!!

公演概要

NODA・MAP 第18回公演 MIWA

<公演日程・会場>
2013/10/4(金)〜11/24(日) 東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)
2013/11/28(木)〜12/1(日) 大阪公演:シアターBRAVA!(大阪府)
2013/12/6(金)〜12/8(日)北九州芸術劇場 大ホール(福岡県)

<キャスト&スタッフ>

作・演出:野田秀樹
出演:宮沢りえ 瑛太 井上真央 小出恵介 浦井健治 青木さやか 池田成志 野田秀樹 古田新太



2013-04-04 16:21

去る3/14(木)、四季芸術センター(横浜・あざみ野)において、劇団四季最新作『リトルマーメイド』東京公演の稽古風景が報道陣に公開されました。


稽古風景レポート!

『リトルマーメイド』は、エンターテイメントの雄 ディズニーとの提携作品です。『美女と野獣』(1995年〜)、『ライオンキング』(1998年〜)、『アイーダ』(2003年〜)に続く第4弾であり、また本年創立60周年を迎える四季の演劇活動においては、とりわけ大きな位置を占めるプロジェクトとなっています(公演は、4月7日(日)より、品川/大井町・積水ハウスミュージカルシアター四季劇場[夏]にて開幕)。

今回は、劇中の代表的なナンバー2曲、「パート・オブ・ユア・ワールド」と「アンダー・ザ・シー」の稽古の様子を公開。来日した海外スタッフたちの熱気溢れる指導の様子や、アニメでもお馴染の名曲に、報道陣からも大きな拍手をいただきました。いよいよ、舞台稽古がスタートします。劇団四季の最新ミュージカル『リトルマーメイド』にぜひご期待ください。

ミュージカル『リトルマーメイド』
地上の世界に憧れる人魚姫アリエルと、地上に住む人間の王子エリックとの恋物語で、1989年製作の劇場版アニメーションをディズニー自ら舞台化したもの。初演は、2008年ブロードウェイで、現在は、オランダとロシアで「ヨーロッパ版」が上演中。

皆さまへメッセージ!(2013/03/14)

■『リトルマーメイド』ヨーロッパ版演出補
クリスチャン・ダーハム氏
 7週間前に日本へ来ましたが、その稽古の初期段階で四季の俳優の方々が優れた才能の持ち主であるということがわかり、うれしく思いました。そして、そのみなさんがさらに努力を重ね、「リトルマーメイド」という冒険をしてくれています。この2、3週間の稽古では、その全ての要素がまとまってきて、力強いパフォーマンスになってきました。
 日本で上演できること、そして劇団四季に関わっていただけたことは、僕らにとってもとても有難いことです。オランダやロシアでもエキサイティングなショーとして、観客のみなさんに楽しんでいただいていますが、今回、日本でそれをさらに深めることができました。パペットの数が増えたこともその一つです。フライングシーンも、ポール・ルービン(フライング・デザイナー)が場面を増やしています。また、悪役・アースラーの住処のシーンも、ボブ・クローリーが作り替えました。ほかにもびっくりする仕掛けがたくさんありますが、ぜひ劇場に足を運んで見ていただきたいです。

■アリエル役候補
谷原 志音(たにはら しおん)
 「パート・オブ・ユア・ワールド」は、大好きなナンバーです。大学の時の試験でもこの曲を歌いましたし、家でもよく歌っていました。このナンバーを舞台で歌えるなんてしあわせです。2幕冒頭の「マエムキニ」のナンバーも、わたし自身がポジティブになれるお気に入りの曲です。アリエルは、夢に対して強い意志を持ち、好奇心が強く、面白い子。自分自身とも共通点が多いと感じています。

■アリエル役候補 
秋 夢子(あき ゆめこ)
 オーヴァーチュアから身体が動き出す明るいナンバーばかり。特に「アンダー・ザ・シー」は、見に来てくださるお客様みんながハッピーになれる曲だと思います。稽古場では、素敵な曲に囲まれ、しあわせな毎日を過ごしています。

公演概要

劇団四季「リトルマーメイド」

<公演日程・会場>
2013/4/7(日)〜2014/8/31(日)
積水ハウスミュージカルシアター四季劇場[夏] (東京都)

<第4期>
2014/4/1(火)〜8/31(日)公演分

プレオーダー:
10/8(火)12:00〜10/10(木)18:00
一般発売:
10/14(月)10:00〜

▼イープラス貸切公演!
<第4期>
★2014/6/28(土)17:30
★2014/8/2(土)17:30



【関連動画】劇団四季「リトルマーメイド」予告ムービーが到着!
【関連サイト】劇団四季 特設サイトはこちら

2013-03-19 17:21

 “大義”のもと、同じ玉・同じあざを持つ八犬士が、里見家再建のため戦いを挑む。滝沢馬琴原作の長編伝記小説『里見八犬伝』が、阿部サダヲ主演で舞台化。M&Oplaysプロデュース『八犬伝』として、3月8日、東京・シアターコクーンにて開幕する。それに先駆け、初日前日に行われた公開舞台稽古を観た。


公開舞台稽古レポート!

 強欲な伯母夫婦の策略により父を失った犬塚信乃は、代々受け継がれてきた名刀・村雨を足利家に献上するため、許嫁の浜路を置いて旅に出る。そんな信乃の体には生まれつきのあざがあり、浜路の家の下男・額蔵(後の犬川荘助)にも同じあざが。さらに信乃は“孝”、額蔵は“義”の文字が刻まれた玉を持っていることがわかる。不思議な運命に導かれるように仲間となった2人は、足利家へと急ぐのだが…。

映画やドラマ、歌舞伎など、さまざまなジャンルの作品が作られてきた『八犬伝』。しかし今回の青木豪台本、河原雅彦演出版の舞台は、そのいずれとも異なる。観客は随所に散りばめられた笑いに頬をゆるめ、迫力満点の殺陣に息を飲み、原作とは異なる意外なラストに人間の愚かさと愛おしさを知る。そして作品から一貫して感じられる疾走感。江戸時代に誕生した戯曲ながら、青木と河原が作り出したのは、間違いなく“現代のエンタテインメント”である。

そしてその大きな要因を担ったのが、やはり信乃役の阿部の存在だ。実はその予感は、阿部の叫び声で始まる幕開けからあった。八犬士のヒーローとも言える信乃だが、阿部演じる信乃はとにかくめちゃくちゃな男。さらにテンションの高さと絶妙な間で爆笑を誘い、ひとたび剣を握ると踊るように舞台上を駆け回る。特に殺陣シーンは、阿部自身「苦労、大変、楽しい、すべてにおいて殺陣です!!」と言い切るほどの力の入れようだった。

信乃以下の八犬士を演じるのは、荘助役の瀬戸康史ほか、津田寛治や中村倫也、近藤公園といった多彩な面々。それぞれにドラマがあり、物語に厚みを加える役どころだけに、しっかり芝居で見せられる巧者がそろった。また作品の鍵を握るゝ大(ちゅだい)法師役の田辺誠一、初舞台ながら女優としての多面性を見せた浜路役の二階堂ふみにも注目したい。

本作のもう一人の主役と言えば、幕開けとともに登場する和太鼓。音は役者たちと競演し、さらに座席を伝う振動は観客をこの物語世界にグッと引き込む。中でも緊張感あふれる殺陣シーンは、和太鼓なくして表現することは出来なかっただろう。

公演は3月31日(日)まで。その後、4月4日(木)〜10日(水)まで大阪・梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ、4月13日(土)・14日(日)に刈谷市総合文化センター 大ホールでも上演。

[取材・文=野上瑠美子]

公演概要



M&O plays プロデュース「八犬伝」

<公演日程・会場>
2013/3/8(金)〜3/31(日) Bunkamura シアターコクーン (東京都)
2013/4/13(土)〜4/14(日) 刈谷市総合文化センター 大ホール (愛知県)

<キャスト&スタッフ>
原作:滝沢馬琴
台本:青木豪
演出:河原雅彦
出演:阿部サダヲ、瀬戸康史、津田寛治、中村倫也、近藤公園、尾上寛之、太賀、辰巳智秋、二階堂ふみ、田辺誠一 他



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2013-03-18 14:21

 フレンチ・ミュージカルの金字塔『ノートルダム・ド・パリ』の日本初上陸(2/27〜)に合わせて、本作品の作曲を担当したリシャール・コッシアンテ(Richard Cocciante)が緊急来日した。父親がイタリア人、母親がフランス人で、両方の国に国籍を持つリシャール。その一方の母国であるイタリアにおいては、リッカルド・コッチャンテ名義で数多くのヒット曲を放ち、イタリア最大の音楽イベントであるサンレモ音楽祭での優勝経験もあるスーパースターだ。そんな彼が初めてかかわったミュージカルがこの『ノートルダム・ド・パリ』であり、その未曾有の大ヒットはおそらく彼自身の予想を遙かに超えていたに違いない。アーティストとしてすでに大成功を収めていた彼が、ミュージカル作品を作曲するにあたり新たに挑戦したこと、そしてこの作品に込めた想いなどについて聞いてみた。


インタビュー!

――来日は初めてだと思いますが、今回日本に来られた目的は何ですか?
 私にはふたつのキャリアがあります。ひとつは歌手としての活動であり、もうひとつはミュージカルの作曲家としてです。今回は『ノートルダム・ド・パリ』の日本初演に立ち会うために来ました。この作品は最初から歌手のみなさんと一緒に作り上げて来たものであり、リハーサルからゲネプロまで立ち会い、無事に初日を迎えられるためのさまざまな調整をさせてもらっています。

――『ノートルダム・ド・パリ』を作詞したリュック・プラモンドンとはどのようにして知り合い、作品の構築に至ったのでしょうか?
 彼と知りあったのは、自分が歌う曲に歌詞を付けてもらったのが最初です(註:'85年の曲「Question de Feeling」の仏語詞をプラモンドンが担当。その後'95年のアルバム『L'Instant Present』を共同制作している)。彼とはとてもフィーリングが合ったので、お互いにもっと何か大きなプロジェクトに挑戦しようと話しあいました。当時私はマイアミに住んでいたのですが、自分が歌うために作った曲以外に、何かほかのことに使いたくて保留にしていた曲のストックがありました。そのストック分をリュックに聴かせたところ、彼がオペラ作品を作るというアイデアを思いついたのです。その題材として彼がヴィクトル・ユーゴーの『ノートルダム・ド・パリ』を提案したのです。ふたりで意気投合して共同作業をはじめ、最初に仕上がったのが「ベル」というタイトルどおりの美しい曲でした。

――それからどのようになりましたか?

 そこから先はもうインスピレーションの爆発で、次から次へと曲が沸いて来たんです。時には行き過ぎで軌道修正しなければならない曲もあったくらいです。ふたりは心からこの作品の創作を楽しみました。なぜならば、これは請け負い仕事で締め切りのためにやっていたわけではなく、純粋に創作作業に没頭出来たからです。ですから作り終えた時はとても満足感がありました。その後、この作品を取りあげてくれるプロデューサーを探したのですが、最初は誰にも取りあってもらえず、最後の最後に会った或るプロデューサーにピアノの弾き語りでこの作品の全曲を歌って聴かせたところ、彼は立ちあがり拍手して喜んでくれました。

――それがこのミュージカル作品として生まれ変わり、大成功を収めたわけですね?

 この作品が成功した理由のひとつとして、商業的な制約に囲まれた環境で絞り出した音楽ではなく、本当に心から楽しく作り上げた音楽だからこそ、その良さが伝わったのではないかと思っています。もし商業的なことだけを念頭に置いて作っていたら、おそらく全く違った作品となり、全く違った結果となっていたことでしょう。

――あなたはこの作品にどのような立場としてかかわっているのですか?プロデューサー的なかかわりもありますか?
 あくまでも作曲家としてです。この作品の曲は全て私が作曲しましたから。でも実のところ私自身はこの作品を単なるミュージカルだとは思っていません。作曲するにあたり、ふたつの方法を用いました。ひとつはミュージカル的な作曲で、もうひとつは普通のポピュラー・ソングと同じ作曲方法です。ミュージカルの起源はオペラですが、私はオペラ発祥の国の人間として、新しいオペラの手法を取り入れようと思いました。具体的にはイタリア・オペラの伝統的な手法にロックやポップスの要素を足しているんです。先ほど私はこの作品を単なるミュージカルだと思っていないと申しあげましたが、それは歌い方やアレンジ、作曲の仕方などが従来の古典的な方法とは違っているからです。

――歌い方がどのように違うのか、具体的に教えて下さい。

 オペラでは腹式呼吸で声量を最大限に引き出します。それは広い会場の隅々まで電気的な増幅をさせないで歌声を届かせなければならなかったからですが、結果的に素晴らしい発声方法として定着しました。一方、ミュージカルではオペラ的な発声が半分で、あとはマイクを使った電気的な増幅をしています。『ノートルダム・ド・パリ』ではマイクを使うことを決めたのですが、それはマイクをひとつの有効な道具(手段)として使おうと思ったからです。近年の技術的な発展は著しく、マイクを上手に使用すれば、ロック・コンサートのように声を張り上げなくても十分に会場全体に声を届けることができますし、吐息混じりに囁くような声もちゃんと聞き取ることが出来るようになりました。そのおかげで、役者さんたちの表現の幅が大きく広がったのではないかと思います。ですから、単に声の増幅としてマイクを使っているわけではないんです。

――なるほど。例えばシンガーとしてのあなたの声や歌には低音がたっぷり含まれていますよね?その低音たっぷりの音楽を最大限に表現するためにマイクの使用を試みているのではないのですか?

 低音だけでなく全ての音域、そして無音でさえも大切だと思っています。全ての音の調和が重要だと思っているのです。私の作曲法としては徐々にクレッシェンドしていくことが特徴で、それをうまく再現するためにはマイクという技術的なことだけではなく、歌い手さんたちの技量も必要となります。音量が小さい時と大きい時とで声の質感が失われないような才能をもった歌手でなければなりません。過去にもこうしたクレッシェンドを効果的に使った作曲家は多かったと思いますが、中でも代表的なのが19世紀の作曲家であるロッシーニでしょう。クレッシェンド・ロッシニアーノという言葉があるくらいですから。この手法を用いると、感情が徐々に高まっていくということが表現しやすくなるんです。 (註:クレッシェンド・ロッシニアーノ:クレッシェンドを単なる音楽表現として使用しただけではなく、緊張感の高まりを表現するなど、効果的に使う手法)

――この作品は移民とかジプシーに対する差別問題が大きくクローズアップされていると思います。あなた自身はこうした社会的な問題を音楽に反映させたりしましたか?

 音楽にメッセージを入れるのは大切なことだと思っています。オリジナルのフランス語歌詞の中では「サン・パピエ」(Sans-papiers:不法入国者)という表現をしていますが、これは原作小説にはなくリュック(プラモンドン)が提案した新しい言葉です。ミュージカル『ノートルダム・ド・パリ』は過去と現在をミックスした作品であり、不法滞在者のような社会問題は今も昔も変わってはいないんだ、というメッセージを伝えたかったのです。もちろん従来どおりのラヴ・ストーリーであることも重要なファクターのひとつなのですが、こうした社会問題に触れることも大切だと思っています。

――原作ではカジモドがエスメラルダに対して一方的な恋心を抱くわけですが、このミュージカルでは原作とは異なり、最後になってふたりのあいだに心が通じあっていたのではないかと思わせる場面があるように思いました。あなた自身はこの作品の音楽をどのようなテーマをもって作りあげたのでしょうか?

 エスメラルダはとても美しい女性ですので、男性は誰もが恋に落ちます。ユーゴーは最後にカジモドが死んでからも、異なる別の次元で彼女と愛しあえるということが愛を成就するための至福の方法だと説きました。ミュージカルの最後の曲「ダンス・マイ・エスメラルダ」に込められているのは“死ぬことで幸福になれる”ということですが、この作品全体に通じることとしてそれは“普通とは異なる”という概念に満ちているということです。例えば、エスメラルダは一般女性ではなくジプシーという存在ですし、カジモドも希有な体形をしていますし、聖職者フロロがエスメラルダを愛してしまうということも常識では考えられません。物語全体が普通とは異なる概念に満ちているのです。もっと言えば、音楽家という存在は普通の人とは違いますし、“音楽”も通常の生活とは異なる“別世界”だと思っています。こうしたさまざまな異なる概念が多く含まれているのが、この作品の特徴であり面白さだと言ってもいいでしょうね。


[取材・文=片山 伸 (http://www.italianmusic.jp/)]
[インタビュー写真=渡辺 マコト]
[取材:2013年2月26日 東急シアターオーブにて]

公演概要

ノートルダム・ド・パリ

<公演日程・会場>
2013/2/27(水)〜3/17(日) 東急シアターオーブ (東京都)
2013/3/21(木)〜3/24(日) 梅田芸術劇場 メインホール (大阪府)
2013/4/5(金)〜4/7(日) 愛知県芸術劇場大ホール (愛知県)

<キャスト&スタッフ>
作詞:リュック・プラモンドン
作曲:リシャール・コッシアンテ
英語詞:ウィル・ジェニングス
演出:ジル・マウ
原作:ヴィクトル・ユーゴー
企画:Enzo Products Ltd.
出演:アレサンドラ・フェラーリ(エスメラルダ役)/マット・ローラン(カジモド役)
ロバート・マリアン(フロロ役)/リシャール・シャーレ(グランゴワール役)
イヴァン・ペドノー(フェビュス役)/イアン・カーライル(クロパン役)
エリシア・マッケンジー(フルール・ド・リス役)、他
※出演者、配役は変更になる場合がございます。予めご了承ください。



【関連ページ】
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まもなく開幕!ミュージカル「ノートルダム・ド・パリ」。来日キャストによるミニライブをレポート!
2013-03-06 17:27

 自身のユニット、カンパニーデラシネラでの創作活動のみならず、白井晃や松村武の演出作品でステージング・振付を手がけるなど、幅広く活躍中の演出家・振付家、小野寺修二。カンパニーデラシネラで2010年に初演された「異邦人」の再演の舞台稽古を観た。

舞台稽古レポート!

 原作は、“不条理”の概念で名高いフランスの作家、アルベール・カミュの同名小説。殺人の動機について「太陽が眩しかったから」と答える主人公ムルソーと、「きょう、ママンが死んだ。」の導入部が有名な作品だ。出演者は七名。片桐はいりが、私・養老院院長・弁護士・ママン・司祭を演じ分け、森川弘和がムルソーに扮する。つまり、物語の語り手である「私」と、主人公である「ムルソー」とは、別々の人間によって演じられるわけである。灰色っぽい服をまとった出演者たちは、いくつかの役を演じ分けるものもおり、セリフを交わしているかと思うと、日常的なしぐさをムーヴメントへと発展させていったり、純粋な踊りのシーンへと突入していったり、ダンスミュージックに乗って、場面は次々と変化していく。主人公が乗ったバスが人形影絵で表現されるなどの趣向もある。黒いネクタイが登場すれば、そのネクタイをモチーフにダンスが展開されたりもする。

 しかしながら、正直なところ、マイムやダンスで表現されている場面が、物語あるいは内面の流れにおいては何を語りたいのか、それとも何かを語ることを一切の目的とせず、ただそこに純粋におかれているのかも含め、少々わかりづらいところがある。そのため、物語に初めてふれる観客、おぼろにしか知らない観客にとっては、多少舞台上の進行を追いづらいように思われる。セリフで表現する場面と、マイムで表現する場面と、ダンスで表現する場面と、それぞれの表現手段が得意とするところを突きつめ、それぞれを流れるようにしかしながら何が表現されているのかその切り替わりがわかりやすいように配置していくことで、もっと伝わりやすくなるのではないだろうか。美しい情景やこうした表現でなければ得難いおもしろみもあるだけに、もったいないように思う。

 作品世界を強固に支えるのは、片桐はいりの圧倒的な存在感とその肉体、そして表現である。例えば、弁護士を演じる場面で、人間らしい感情の感じられないムルソーの返答に、片桐はぐにゃり、椅子から脱力して見せる。その動きが、弁護士の内面の脱力感を雄弁に語ると同時に、肉体のありようとしてもおもしろく、切り替えの妙にも心をざわつかせるものがある。それぞれの役の演じ分けも、役柄的に人々がよくイメージしがちなあたりを、戯画的ぎりぎりの線で笑いの要素もふんだんに盛り込みながら見せていて、いわゆる人間的感情を感じさせず、他者に対して一切“演じ”ようとしない人間であるムルソーと好対照を成している。語り手として紡ぐ言葉も秀逸で、片桐の肉体を通じて舞台が整理されて伝わるところが非常に大きい。

[取材・文=藤本真由(舞台評論家)]

公演概要

カンパニーデラシネラ「異邦人」

<公演日程・会場>
2013/2/14(木)〜2/17(日) 世田谷パブリックシアター (東京都)

<キャスト&スタッフ>
原作:アルベール・カミュ
翻訳:窪田啓作(新潮文庫刊)
構成・演出・出演:小野寺修二
出演:片桐はいり 菅彩夏 田村一行(大駱駝艦) 手代木花野 藤田桃子 森川弘和
小野寺修二



【関連動画】演出・出演の小野寺修二さんメッセージ
2013-02-15 11:28

 2008年、赤坂ACTシアターを舞台に、十八代目中村勘三郎が上演した「赤坂大歌舞伎」は、歌舞伎に初めて接する観客からも熱い支持を受け、2010年にも再登場した。そして2013年3月、勘三郎の二人の息子、中村勘九郎と中村七之助が、中村獅童を援軍に得て、亡き父が心血を注いだ「赤坂大歌舞伎」に挑む。演目は、故勘三郎の当たり狂言「怪談乳房榎」。三役に挑む中村勘九郎に話を聞いた。


中村勘九郎に意気込みを聞いた!

――今回、「怪談乳房榎」を演目として選ばれた理由からお聞かせください。

 「赤坂大歌舞伎」は一回目、二回目と父がやっていて、その父が何を一番に考えていたかというと、赤坂の地、赤坂ACTシアターで上演するにあたって、歌舞伎をこれまでに観たことのない方に観てほしい、そうやって少しでも裾野を広げていきたいということだったんです。僕も心は同じで、それで、非常にわかりやすくておもしろい「怪談乳房榎」を上演するのがいいだろうと思いました。一回目と二回目は人情味あふれる喜劇を上演しましたが、歌舞伎の演目にもいろいろあるというところを知っていただきたいですし、エンターテインメント性が強い作品ですので、これが成功すれば、「赤坂大歌舞伎」も四回目、五回目とまたいろいろな作品を上演していけるのではないかと。一回目と二回目にはなかった廻り舞台も作り、本水を使った滝の演出もありますし、場面転換がここまであるのも初めてなので、これまでにない挑戦になると思っています。

――赤坂ACTシアターという劇場空間についてはいかがですか。

 歌舞伎に向いていて使いやすい劇場だなと、一回目で踊った「棒しばり」のときに感じましたね。例えば、父が同じように始めた「コクーン歌舞伎」がありますが、シアターコクーンには天井が高くて緊密な感じの空間というよさがあるのに対し、赤坂ACTシアターは舞台が意外とワイドなのと、客席が近くてお客様の反応もダイレクトに返ってくるので、踊りもいける劇場なんだなと思いました。歌舞伎以外では「おくりびと」にも主演させていただいていますが、そのときも、お客様に非常に伝わりやすい劇場だなと感じましたね。

――「棒しばり」で客席が沸きに沸き、拍手が鳴り止むことがなくて、急遽カーテンコールに出ていらっしゃった姿が印象に残っています。

 やはり、初めて観てくださる方が多いということで、父や製作サイドの思いが通じたんじゃないかなと思いますね。

――「怪談乳房榎」は、一昨年新橋演舞場で演じられたのが初役です。

 父がこの演目を久々に復活させたのが平成2年の8月の「納涼歌舞伎」の第一回目で、そのとき僕は7、8歳だったんですね。亡くなられた延若のおじさま(三代目實川延若)のところを父が訪ねて、演目についていろいろお話をうかがって。その帰りの車に僕も一緒に乗っていて、「いやあ、おもしろかった〜」と父が話していたことが印象に残っています。やっぱり、実際に演じられて、裏を知っている人から聞かないとわからないところがあるわけで、聞かないまま亡くなられたら、知識と技術がお持ち帰りの作品になってしまう。そうするともう誰もできない演目になってしまうわけです。ですから、父が実際にやっていらしたおじさまに話を聞くことができたのは大きかったと思いますね。その月、僕も出演していて、毎日袖から観ていたのも思い出に残っています。そして僕も一昨年演じる際に父に聞いておくことができてよかったなと思っています。

――お父様の教えで印象に残っていることは?

 早替わりの仕方などは実際に習わないとわからないですし、それと、エンターテインメント性が強い作品で、話の筋があまり書かれていなかったりするのですが、単なる早替わりショーになってはいけないということですね。ですから、個々のキャラクター、人物をきちんと演じないといけないなと思っています。

――今回は、絵師菱川重信に下男正助、うわばみ三次の三役を演じられます。

 父がよくやっていた演出ですともう一役、円朝も演じますが、今回はタイトルにある“乳房榎の場”を出すことにして、円朝の役は登場させません。最近の上演では出てこなかった松井三郎というキャラクターが登場しますが、この存在によって人物像や物語の背景がよりよくわかるようになると思っています。
 重信は元武士ですが、江戸随一の絵師に上りつめた人間の重さと大きさ、貫録が重要となってくると思います。他の二役がどちらかというと軽さを要求される役なので、ここできりっとしめておきたいなと。正助では本当に純粋で素朴で一途。かわいらしい男が出せたらなと思いますね。小悪党の三次は小気味よく、“うわばみ”というくらいですから目が肝心ですね。この人としゃべっていると、例えば女性だったら裸にされているような、男だったら絶対に友達になりたくないなと思うような、こいつとかかわりたくないなと思うような。そういう人っているじゃないですか。その代表格ですね。欲しいものは欲しい、そのためには何をしても手に入れる、そんな風に、周りのことは一切考えず、自分のことだけ考えている人間の欲というものを演じているのは、楽しいですね(笑)。ただ、演じる上では、どの役も魅力的に演じなくてはいけないなと。それでこそ、三役の意味もあると思うので。話の筋がわかりやすくなった分、人物もよりきちんと演じていかないと、芝居が深まっていきませんし。どの役でも、単なるお遊びということではなくて、余裕の部分が必要になってくると思いますね。

――演目のお勧めポイントをお願いします。

 演目的にね、しゃべっちゃうと全部しゃべっちゃうことになっちゃう作品なんですよ(笑)。だからとにかく、観に来てください! 予備知識ゼロで大丈夫ですから。時代背景を知らなくても大丈夫だし、赤坂の街に、買い物ついでに来て気軽に観られる作品だと思います。今回、通常花道でやる早替わりを、客席の通路でやります。もしかしたら歌舞伎史上初めてかも。だから、その付近のチケットをお買い求めの方はとてもお得だと思いますよ(笑)。

製作発表レポート!

 同日行なわれた製作発表では、主催松竹の安孫子正専務より、「怪談乳房榎」にまつわるエピソードが語られた。20年ほど前、歌舞伎座においても毎月歌舞伎を上演できなかった時期があったが、平成2年8月、当時中村勘九郎を名乗っていた故中村勘三郎中心に、若手による「納涼歌舞伎」を上演。そのとき演じられたのが「怪談乳房榎」で、その月以来歌舞伎座では今日に至るまで毎月の上演が絶えることなく続いているということで、歌舞伎界にとっても非常に思い入れのある演目である由。

 製作発表には、勘九郎の他、中村七之助と中村獅童が出席。七之助は、「父が大変好きな演目で、そういうときは、観た後、楽屋に行くと、『やりたい? やりたいだろう? 大きくなったらやってよ』と絶対言うんですね。父が命がけで復活上演させて、本当に愛していた演目だと思います。小さいころ、滝の場面を真似して、兄と二人でシャワーに入って写真を撮ったりしていました」と、亡き父との思い出を。

 昨年暮れの勘三郎の葬儀のときに、NHK大河ドラマ撮影のハードスケジュールを押してこの公演への出演の決意を告げたという獅童は、「昨年のコクーン歌舞伎『天日坊』以来となる二人との共演ですが、そのときも初めて若手だけで任されて、ひと月乗り切れたのが自分にとっては非常に大きな出来事でした。勘三郎のお兄さんの愛した演目に一昨年に次いで再び出演できるということで、色悪、磯貝浪江役を、世界一クールでいい男と思って演じたい。お兄さんが作ってくださった、お客様が楽しみ、喜んでいただける『赤坂大歌舞伎』の精神を受け継いで、いい芝居にしたいですね」と抱負を語った。

 赤坂ACTシアターの劇場空間についてはそれぞれ、「僕はこれまで歌舞伎作品でしか出演していませんが、ミュージカル『RENT』を観に来て、二階の後ろまで響くんだな、いい小屋だなと思いました。これからいろいろな役やいろいろな踊りをやってみたいなと、夢が広がる劇場ですね」(七之助)、「僕は劇場のオープニング作品『トゥーランドット』に出演しましたが、初日に勘三郎のお兄さんが観に来てくださったんです。歌舞伎の舞台でも思い出を作っていきたい」(獅童)とのこと。最後に、赤坂芸妓たちが三人に花束を贈呈し、華やかな雰囲気に。「赤坂という土地で、街をあげて皆さんが応援してくださっていて、都会の中の下町のような雰囲気を感じています。文化、芝居と、周囲の環境とは切っても切り離せないものがある」と、勘九郎も、赤坂の地で上演する「赤坂大歌舞伎」への意気込みを新たにしていた。


〔取材・文=藤本真由(舞台評論家)〕

公演概要

赤坂ACTシアター5周年シリーズ 中村勘九郎襲名記念 「赤坂大歌舞伎」

<公演日程・会場>
2013/ 3/8(金)〜3/24(日) 赤坂ACTシアター (東京都)

<キャスト&スタッフ>
出演:中村勘九郎/中村七之助/片岡亀蔵/中村獅童/ほか



2013-02-06 16:32

 「十戒」「ロミオとジュリエット」など、来日公演や日本人キャストによる公演を通じて、日本の観客にもすっかりおなじみになったフランス・ミュージカル。そのブームの先駆けともなった作品が、1998年にパリで初演された「ノートルダム・ド・パリ」だ。「レ・ミゼラブル」の原作者としても名高いヴィクトル・ユーゴーの同名小説は、バレエや映画、アニメーション作品などの題材になっており、最近では宝塚歌劇月組公演のショー「Dance Romanesque」(2011)の一場面においても取り上げられた。そのミュージカル版は、心に響く美しい楽曲と、アクロバティックなパフォーマンスに彩られたスペクタクル作で、これまで世界15か国で上演され、800万人もの観客を集めてきている。2月の初来日公演を前に、メイン・キャストによる来日ミニライブがこのほど開催された。


来日ミニライブ レポート!

 この日出演したのは、ヒロイン・エスメラルダ役のアレサンドラ・フェラーリ、鐘つき男カジモド役のマット・ローラン、冷酷な司教フロロ役のロバート・マリアン、エスメラルダが思いを寄せる近衛隊長フェビュス役のイヴァン・ペドノーの4名。まずは、男性陣がそれぞれエスメラルダを思って歌うナンバー「Belle」が披露された。

 カジモド役のローランはもともとロック畑出身の歌手。地を這うようにしゃがれてシャウトする歌声に、醜さゆえに孤独に生きざるを得ないカジモドの苦悩を感じさせる。続いて登場のフロロ役のマリアンは、ブロードウェイ及びロンドン・ウエストエンド公演で「レ・ミゼラブル」の主役ジャン・バルジャン役を務めた実力派。思わずうっとり聞きほれてしまう深い歌声は深い人間性を秘め、さすが本格派ミュージカル俳優ならではの響きだ。最後に歌い継ぐフェビュス役のペドノーは、出身国カナダで「RENT」や「ウィー・ウィル・ロック・ユー」などの人気ミュージカルにおいて主要キャストを演じてきた若手スター。若いときのジョン・キューザックを思わせる美形で、明るく伸びるテノールの歌声が心地よい。そんな三人がそろっての男声三重唱は、それぞれの歌声の魅力と個性が絶妙に重なり、圧巻だ。

 次いで披露されたのは、マリアンによる「Your Love Will Kill Me」。聖職者でありながらエスメラルダへの禁じられた愛に苦悩するフロロのナンバーで、瞬時に内面の深いドラマへと聴衆を引き込んでいく歌唱がすばらしい。

 続いては、物語のラスト、死んでしまったエスメラルダを思い、カジモドが歌う美しいナンバー「Dance My Esmeralda」。カジモドの記憶の中で、エスメラルダは生き生きと甦り、生のきらめきをほとばしらせて踊る。そんな情景を思い起こさせるローランの歌唱に、来日公演が待ち遠しくなってくる。

 キャストによる質疑応答のコーナーでは、作品の見どころについて、「音楽と役者との力が融合された、驚異的なスペクタクル・ミュージカル。最初の一音から最後の一音までつながって物語を伝えていく。僕自身、初めて観たとき、心の感動を抑えきれなかったよ」(ローラン)、「一つ一つの楽曲によって、物語が編まれるようにつづられてゆく。ナンバーそれぞれが、歌う人物の内面の高まりや人生のクライマックスを伝えていて、エネルギーと集中、感情が凝縮されているんだ」(マリアン)、「歌手とダンサー、アクロバットのパフォーマー、技術スタッフがそれぞれ高いレベルで分業を行なっていて、毎日新しいことを試みることができるそのチームワークのすばらしさも見どころだと思うわ」(フェラーリ)、「ヴィジュアル的にも大いに楽しめるし、歌手たちが、それぞれのナンバーを、単に“歌う”ことを越えて“生きている”様をぜひ体感してほしいと思う」(ペドノー)と、それぞれ興味の尽きない答えを返していた。

 ライブのラストは、4人での「The Age Of The Cathedrals」の合唱。フィギュアスケーターの羽生結弦選手が今シーズンのフリーのプログラムで使用していることでも知られるこのナンバーは、劇中、吟遊詩人グランゴワールによって歌われており、この日は特別バージョンとしてのお披露目。天翔けるような歌声でペドノーが歌い始め、三人も加わって、それぞれの声の厚みが美しいハーモニーとなって響き、集まった聴衆からは盛大な拍手が巻き起こっていた。

[取材・文=藤本真由(舞台評論家)]
[インタビュー写真=渡辺 マコト]

公演概要

ノートルダム・ド・パリ

<公演日程・会場>
2013/2/27(水)〜3/17(日) 東急シアターオーブ (東京都)
2013/3/21(木)〜3/24(日) 梅田芸術劇場 メインホール (大阪府)
2013/4/5(金)〜4/7(日) 愛知県芸術劇場大ホール (愛知県)

<キャスト&スタッフ>
作詞:リュック・プラモンドン
作曲:リシャール・コッシアンテ
英語詞:ウィル・ジェニングス
演出:ジル・マウ
原作:ヴィクトル・ユーゴー
企画:Enzo Products Ltd.
出演:アレサンドラ・フェラーリ(エスメラルダ役)/マット・ローラン(カジモド役)
ロバート・マリアン(フロロ役)/リシャール・シャーレ(グランゴワール役)
イヴァン・ペドノー(フェビュス役)/イアン・カーライル(クロパン役)
エリシア・マッケンジー(フルール・ド・リス役)、他
※出演者、配役は変更になる場合がございます。予めご了承ください。



【関連ページ】
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まもなく開幕!ミュージカル「ノートルダム・ド・パリ」。来日キャストによるインタビューをお届けします!
2013-02-06 14:56

 “教授”を演じる椎名桔平と演出の鈴木勝秀という、『ベント』『レインマン』『異人たちとの夏』で抜群のコンビネーションを発揮してきた超強力タッグ・チームが、これまでの既製脚本、映画の舞台化、小説の舞台化であった作品から一転、今回は、五木寛之のエッセイ『わが人生の歌がたり』に端を発した作品であるものの、初のオリジナル作品へ満を持して挑戦します。


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公開舞台稽古の模様と主演お二人からのコメント!

椎名桔平さんコメント

3年振りの舞台で演出家の鈴木さんと温めてきた企画です。他では今までやっていない昭和の歌が散りばめられた舞台でもあります。
(ノーベル賞の山中教授に負けない教授像がつくれましたか?と言う問いに)つくれたと思います(笑)寄生虫と言う変わった分野の研究に一生を捧げたおもしろいキャラクターになれたかと思います。山中教授に負けません!(劇中に歌われるのか?の問いに)「傘がない」(井上陽水)を口ずさむのですが、かなり練習しました。
明日から初日ですが、かなり自信がありますので、是非観にきて下さい。

田中麗奈さんコメント

一日一日を噛みしめながら、みんなに支えられアドバイスを頂きながら、開放して楽しんでできました。
(劇中に使われている曲の中で好きなのは?という問いに)クライマックスに歌う「グッバイ・Lovesong」です。
五木さんが作詞をして、中村さんが作曲をした曲なんですが、すごく良くて、家に帰っても聴いています。

みどころ

■独自の価値観で生きた歌好きの生物学教授、
そして観念的な恋愛に己を捧げた助手

この時代は、性別も世代も超越して、国民が同じ「流行歌」を誰もが口ずさんでいた時代―。そんな「流行歌」を人々はこよなく愛しました。時代の趨勢とは関係なく、自分の研究に日々没頭している生物学教授。彼の研究対象は“寄生虫”。家族もなく孤独の教授が唯一社会との繋がっていられるのが、「流行歌」でした。そんな生物学教授の生涯と、偶然助手を務める事となった女性の生涯を描いた物語です。
教授役の相手役には、近年、積極的な舞台作品への挑戦が続く田中麗奈や、高橋一生らを迎え、硬質ながらも、切なく愛おしい劇世界が生み出されます。

■五木寛之:作詞、中村中:作曲の劇中歌
また、『ヘドウィグ・アンド・アングリー・インチ』(山本耕史主演)で鈴木勝秀と出会い、今回は“歌う狂言回し”として活躍する中村 中が歌う、昭和の流行歌の数々も見どころのひとつです。
あわせて、今回のために特別に書き下ろされる五木寛之の歌詞に、中村が曲をつけた『教授』イメージソングの発表も予定されており、もちろん劇中歌としても使用されます。

■超豪華ゲストを迎えてのアフターライブ開催!
公演終了後には、アフタートークならぬ、アフターライブを開催します。毎回、昭和歌謡の名曲1曲を取り上げ、日替わりで登場する超豪華ゲストとナビゲーター中村 中が、曲にまつわるエピソードを紹介し、最後に歌を披露致します。演劇ファンだけでなく、音楽ファンにも見ごたえのある作品になっています。

登場人物

助教授 岡田浩暉
哲学科教授 坂田 聡
助手の兄 伊達 暁
若い男 佐々木喜英
美学科教授 上條恒彦

ストーリー

ときは1960年代。日本は高度経済成長の波にのって、この世の春を迎えていた。東京オリンピックに向けて、建設ラッシュが起こり、新幹線、首都高などの交通網やインフラも整備され、経済大国への道を右肩上がりで突っ走った時代。同時に安保闘争、労働争議などの社会問題が、湧き起こり政治の時代でもあった。

そんな時代の趨勢とは関係なく、自分の研究に没頭している生物学教授。彼の研究対象は“寄生虫”であった。家族もなく、社会的な成功とは無関係に、研究だけに生きる男――そんな男が、唯一、社会との接点を持てるのは、経済でもなく政治でもなく「流行歌」においてだけであった。

現代と違って、’60年代は「流行歌」の時代でもある。性別、世代を超越して、国民が同じ「流行歌」を、生きるうえでの伴侶としていた時代。誰もが口ずさめるシンプルなメロディ。そして、言葉数か少ないからこそ、個人個人が深い意味を与えることができた歌詞。当時の日本人は、そんな「流行歌」を愛したのである。そして、“教授”もまた「流行歌」を愛した。

60年安保闘争の最中、“教授”の研究室に機動隊に追われて逃げ場を失った女学生が飛び込んでくる。

『教授』は、そんな教授と女学生の、出会いから別れまでの物語である。

公演概要

アトリエ・ダンカン プロデュース 「教授」

<公演日程・会場>
2013/2/7(木)〜2/24(日) Bunkamura シアターコクーン (東京都)
2013/2/27(水) サンケイホールブリーゼ (大阪府)
2013/3/3(日) 名鉄ホール (愛知県)
2013/3/5(火) 金沢歌劇座 (石川県)

<キャスト&スタッフ>
Based on:五木寛之作 「わが人生の歌がたり」角川書店刊より
構成・演出:鈴木勝秀 
音楽監督・弾き語り:中村中 
出演:椎名桔平/田中麗奈/高橋一生/岡田浩暉/坂田聡/伊達暁/佐々木喜英/上條恒彦/中村中  

<アフターライブ スペシャルゲスト決定!>
※東京公演のみ
<2/7(木)19時>中尾ミエ
<2/8(金)19時>山崎育三郎
<2/9(土)14時>佐々木喜英
<2/9(土)19時>鈴木雅之
<2/10(日)13時/18時>山崎ハコ
<2/11(月)14時>元ちとせ
<2/13(水)14時>園まり
<2/13(水)19時>坂井邦先
<2/14(木)19時>由紀さおり
<2/15(金)19時>松原健之
<2/16(土)14時/19時>クミコ
<2/17(日)14時>加藤登紀子
<2/18(月)19時>五木寛之(トーク)
<2/20(水)14時>石井一孝
<2/20(水)19時>木の実ナナ
<2/21(木)19時>一青窈
<2/22(金)19時>ジェロ
<2/23(土)14時>尾藤イサオ
<2/23(土)19時>岡田浩暉
<2/24(日)14時>上條恒彦


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【関連記事】椎名桔平、鈴木勝秀にインタビュー!
2013-01-10 17:46

 太宰治の「走れメロス」を大胆にパロディ化した森見登美彦の小説「新釈 走れメロス」が、このたび「詭弁・走れメロス」として舞台化される。脚本・演出を手がける松村武と、作者の森見とは、奇しくも、奈良女子大学付属中等教育学校の先輩、後輩という間柄。稽古場での通し稽古を見学した作者と演出家との楽しいトークと初日観劇レポートをお届けしよう。


インタビュー!

――今しがた稽古を見学されてきての感想をおうかがいできますか。
森見 いや、すごいアホやなと思いました(笑)。
松村 ハハハ。
森見 自分が書いたときもアホやなと思ってたんですけど、実際にそれが目の前でエネルギッシュに演じられているところを見ると、輪をかけてアホだなと。この「アホ」というのはほめ言葉なんですよ、けなしてるわけじゃなくて(笑)。「走れメロス」というタイトルにふさわしく、皆さんが走り続けているのも印象的でした。自分が書いているときも、走り続けているような文章をと心がけていたんですが、そこを汲み取ってやっていただいているんだなと思いましたね。

――原作者に稽古を見学されているという状況は?
松村 いや、緊張しましたね。

――そもそも今回、舞台化の話を聞いたときにはどう思われたのでしょうか。
森見 「夜は短し歩けよ乙女」(2009年舞台化)のときもそうでしたけれども、どうやって舞台でやるんだろうということがまずありますね。自分の小説はどうしても少し現代離れしているところがありますし、地の文、セリフではない部分でおもしろみや変なリアリティを出すということをしていて、それを舞台でどう置き換えるかということが自分にはまったく想像がつかないところがあって。でも、「夜は短し歩けよ乙女」のときもいろいろなアイディアで舞台化していただきましたし、そこから先はもうお任せという感じですね。

――松村さんの脚色についてはいかがでしたか。
森見 だいぶ自分の書いた文章が使われているので、心配というか(笑)。小説を書いているときは、目で読むものとして文章を書いているので、それを役者さんがどう言われるのかということと、それと、脚本だけだと舞台の動きがわからないというところがありますよね。例えば、走っているというのをどう表現するんだろうとか、脚本で書かれているところからかなりアクロバティックなことをされないと実際の舞台にはならないだろうなというのは漠然とわかるんですけれども。

――そのあたりのアクロバティックさは?
松村 そうですね、アホな感じに、堂々めぐりのような積み木のようなことをやって、何とかなってきました(笑)。今日初めて通したんですけれども、相当肉体を酷使していて、役者たちはみんな電池が切れていましたね、体力が持たなくなって。若い人の方がバテてましたね。若くないやつの方が意地で頑張っていた(笑)。
森見 終わった後、役者の方がはあはあ言ってらしたので、相当つらいのかなと。
松村 相当つらいでしょうね(笑)。三、四人でずっと全部表すみたいなことになっているので、その人たちは非常に忙しいですし、主人公・芽野史郎を追い続ける話なので、芽野を演じる武田(航平)くんはほぼ出ずっぱりで走り続けますし、限界に挑戦してもらっています。一時間半くらいの芝居なんですけれども、何が起こっているかを全員が把握していないと事故が起きるというきっかけ数が、四時間分の芝居くらいありますね。

――一番多い方は一人何役ぐらい演じていらっしゃるんですか。
松村 もうちょっとわからないですね。そういう次元じゃなくて、もはや誰なのかわからない瞬間がいっぱいあります。今(自分がやっているのは)誰なんですか? と役者に聞かれて、何か妖精みたいなものだと思ってくれと(笑)。単なる説明係に見えてもつまらないから、その人たちの肉体が流れていく感じを見せられたらいいなと思って作っていっているんですけれども。
森見 僕も脚本を読んだとき、役者の方たちのリストを見て、「あれ、これだけの人数で足りるのかな?」と思いました(笑)。稽古を見て初めてわかりました。入れ替わり立ち替わりいろいろやっていて、よくわからないものになっている人たちがいて。
松村 地の文体がおもしろいわけで、基本は追っかけ合いだし、ゆっくり会話しているところもあまりないので、どう脚色すればいいか非常に悩みました。文庫版のあとがきで、森見先生が、転がっていく感じ、筆が進んでどうしようもない感じが太宰の「走れメロス」だということを書いていたのを読んで、その怒涛のように走り続ける感じ、進んで転がってどうしようもない感じをイメージしたら、このままこの地の文をみんなで怒涛のように言い続けるのがいいなと、それも、本来は何十人も出てくるところを二、三人で言い続けるのがいいなと思ったんです。

――原作者としては、自作の舞台化をご覧になるのはどんな気持ちでいらっしゃるのでしょうか。
森見 慣れるまでは恥ずかしいですね。自分の書いた文章を目の前で読まれるわけですから。あそこ、もうちょっとこういう風に書いておけばよかったって思ったり。いまさら校正しているみたいな。書いてから時間が経っているからということもありますけど、なんで(ヒロインの好物を)生湯葉にしたんだろうと思ったり(笑)。


――とりわけおもしろいと思われた箇所は?
森見 常に皆さんが小技をやり続けている感じで、いろいろおもしろいところがあるので、ここと言うのが難しいですね。もちろん最後のクライマックスの場面は、一番アホになるのに一番感動するところで、自分でもなんで感動しているのかわからないというか(笑)。一番バカバカしい場面なのに妙に感動するというのは、たぶんそれまでにいろいろ小技を見ていくうちに高揚してきているからだと思うんですけれども。
松村 やっぱりあそこのイケメン二人のブリーフ姿は外せませんから。そこに感動するわけです(笑)。
森見 なんかそこで自分の気持ちが盛り上がっているのが間違っている感じがするんです(笑)。おかしい。でも、そこまで持っていかれてしまうという。

――ちなみにお二人は奈良女子大学付属中等教育学校の先輩、後輩という間柄でいらっしゃるそうですね。
松村 そうなんです。学園祭で演劇が盛んな学校で。
森見 僕もやりました。高校一年生のとき、僕が書いた脚本をクラスで上演して。
松村 中学二年と高校一年で、クラス単位で必ず劇をやるんですよね。さきほどちらっとお話したんですが、知っている先生が共通していたりして。僕が今42歳ですから、8、9学年、先輩なんですよね。
森見 そうです、僕が今33歳ですから。二人とも奈良出身で。
松村 そう、だから、しゃべり言葉が奈良の言葉だなと思いましたね。ちょっと大阪とはまた違う感じなんです。

――本番の舞台への期待と抱負をおうかがいできればと思います。
森見 今日見ただけでも、自分が小説を書くときに考えていたことを舞台の上で別の形でやってもらえているということは何となくわかったので、このまま突き進んで、本番を観たら最後アホなのに泣くみたいな、そういうところまで持っていっていただけるとすばらしいなと思います。
松村 最初にこの小説を読んで、ファンになって先生の作品を今たくさん読んでいるんですけれども、なんとなく、キャラクターに同級生の顔が当てはまる感じがするんですよ。あ、こういうヤツいたなとか、あいつが言いそうなことやなとか思い浮かべたりして。そういったおもしろさを舞台版でも出したいなと思うんです。その上で、アホだけど感動する、そしてそのさらに奥にある深いものを表現したいですね。僕は先生の作品はさわやかだと思っていて。汗をかききってドロドロになったところにあるさわやかさというか、それを見せたい。だから、今みたいな言葉をいただけて、とても励みになりました。

初日観劇レポート!

 太宰治の名作「走れメロス」を換骨奪胎した森見登美彦の小説「新釈・走れメロス」。その舞台化となる「詭弁・走れメロス」が、昨年末のKAAT神奈川芸術劇場大スタジオでのプレビュー公演に引き続き、1月4日、銀座博品館劇場で開幕した。脚本・演出を手がけるのは松村武。横浜でのゲネプロと、東京の初日公演を観た。大胆なおもしろさに満ちた舞台の誕生である。2013年の初笑いに、ぜひお見逃しなきよう。

 「走れメロス」の場合、友情を証明するため、メロスは、暴君ディオニス王の人質となっている友人セリヌンティウスの元へ、数多の妨害に負けず、走りに走る。「詭弁・走れメロス」の場合は、逆である。主人公・芽野史郎(武田航平)と、その友人、芹名雄一(山下翔央)は共に詭弁論部員。詭弁で結ばれた友情であるから、人質となった芹名は芽野が帰って来ないことを知っているし、芽野も、芹名がそうわかっていると知っている。かくして、芽野は京都の街を走りに走って逃げ続ける。一筋縄ではいかない友情のため。そして芹名は待ち続ける。帰っては来ない友人の代わりに、学園祭のステージで、「美しき青きドナウ」にあわせて桃色ブリーフ一丁で踊る時がやって来るのを。

 脚色に当たっては、小説の文章がほとんどそのまま生かされているという。文学作品の舞台化となると、まず気になるのは物語だったりするが、文体もまた作家の魂である。先へ先へと動き、ときに前のめりになってまで走ってゆくかのような森見の文体は、詭弁論部員ほか数えきれないほどの役を演じる西村直人、小手伸也、小林至らによってそのまま語られ、舞台上に体現されてゆく。例えば、芽野が学園祭に赴けば屋台が、自主制作映画を見ればそのワンシーンが、神社に行けば狛犬が、人力車に乗ればその車輪の回転までが、三人の肉体をもって瞬時に表現される。小道具の扱いにしても、例えば、「俺の辞書に不可能はない」なるセリフがあれば、瞬時に辞書が用意され、“不可能”のページを破り取るという具合。通常ならば客席の想像力に訴えかけるであろうところまで、「詭弁・走れメロス」では全部、具体的に演じて見せる。ある意味、演劇の約束事への挑戦である。体現されるのは登場人物の見る風景、事物だけではない。その心の中の声も、西村、小手、小林の三人によって語られる。「走れメロス」の暴君ディオニス王に相当するのは、「詭弁・走れメロス」においては、全学生の個人情報を握って恐怖政治を行っている図書館警察長官(市川しんぺー)だが、心の声たちのあまりの声高さに彼のセリフがかき消されてしまうところなど、逆に見事な心理描写となっている。人は、自分の五感で感じる世界と、自分の心の中の世界とを同時に知覚しながら生きているが、その双方の世界を舞台上にそのまま体現してしまおうというのが、ここでの狙いのようにも思われる。

 かくして、詭弁論部員三人は、もはや一人何役なのか、そもそも人を演じているのか何を演じているのか、その上でセットまで動かしているから大道具も兼ねているのか、そんなことを考える余裕すら観客に与えないほどの活動量で舞台を駆け回る。しかしながら、決して過剰な説明調にならず、適度な緩急のもと、観客が次の展開を今か今かと待ちわびるほどの集中と興奮を保ち続けて、舞台が90分間展開されてゆくところに、松村の演出の手腕が光る。図書館警察長官の追っ手を振り切って11月の鴨川に飛び込んだ芽野が、詭弁論部員の三人に、「バイシコー(bicycle)」が決め台詞の長官の私設軍隊、自転車にこやか整理軍の二人(高木俊、上田悠介)も加わって、華麗なでんぐり返しやスローモーションの動きで表現する濁流の中、必死の表情で泳ぎ渡っていく様には、どこか抒情的な美しさがある。

 詭弁を弄して逃げ続ける主人公、芽野史郎役の武田航平は、堂々たる初主演ぶりである。これだけ周りであれやこれやと大技小技が炸裂する中、主役としての存在感が際立っている。桃色のバスタオルを首に巻き、ブリーフ一丁で、彼は走って逃げ続ける。もはやだんだん何のために逃げているのかわからなくなって、そして友情を思い出す。俺と芹名は同じものを信じるがゆえに親友なのだ。だから、俺は決して帰って来ないと信じる芹名のためにも、決してつかまってはいけない。必死の表情で見せるその走りに、思う。それこそ人生そのものではないかと。他人から見ればよくわからないかもしれない目的のために、人は生きる。そして、他人から見ればよくわからないかもしれないその目的を理解する者こそ、真の友である。滑稽を遥かに超えていく感動が、その走りにある。

 そんな芽野の親友、芹名を演じる山下翔央は、“シャレた眼鏡のよく似合う”の描写がそれこそよく似合うクールなイケメンぶり。白い王子様風ルックもサマになる。その彼が、ガウンを脱ぎ捨て、クールな表情のまま、桃色ブリーフ一丁で、鶴の舞のような酔拳のような世にも面妖な踊りを「美しき青きドナウ」にあわせて踊り狂うシーンもまた、笑いを越えて、ほとんど神々しくすらある。  学園の男どもを次々と悩殺する紅一点のマドンナ、生湯葉とコーラを愛するヘビースモーカー、須磨さんを演じるのは、新垣里沙。「♪ゆ〜ば、ゆば」の男声コーラスが耳に残って離れない“須磨さんのテーマ”ではセンターで歌い踊り、ファムファタルぶりを印象付ける。  詭弁論部員の三人については、あまりに多くの役を演じ、多くの役割を担当しているため、その見どころは到底書ききれるものではない。彼らの大活躍についてはぜひ、実際の観劇で、大いに口をあんぐりして確かめていただきたいところだが、西村直人は客席をシニカルに巻き込んでの楽しい客いじりが印象的。小手伸也はおさげ姿の可憐な乙女から一転して見せる表情が怖おもしろく。小林至は車夫として必死に人力車をこぎ続ける姿に青春活劇を感じさせる。

 そして、“小太りでつやつや”と描写される図書館警察長官を演じる市川しんぺー。自分のテーマソングを自らダバダバ歌いながら登場する長官。擬音のようなものを発する長官。転びかけて粋がる長官。裏切られて愛と友情を信じられない長官。でもどこか信じたい長官。そして大胆な舞を見せる長官。ときにニヒルでハンサムな顔から、キュートで愛すべき顔まで、多彩な市川しんぺーを堪能できること請け合いだ。そして、ライトに照らされるその肌は、原作の描写通り、つやつやしている!  舞台上、烏帽子&和装束で、二胡やヴァイオリンほかさまざまな楽器をこれまた忙しく生演奏する土屋玲子が音楽も手がけており、「♪詭弁、詭弁〜」や「♪ゆーば、ゆば」など、すぐさま口ずさんで帰れること間違いなしのメロディが秀逸だ。小野寺修二がステージングを、西村直人が振付を担当。歌と踊りも大いに楽しめる、見どころの尽きない舞台だ。

[取材・文=藤本真由(舞台評論家)]

公演概要

アトリエダンカンプロデュース 青春音楽活劇「詭弁・走れメロス」

<公演日程・会場>
2012/12/27(木)〜12/28(金) KAAT神奈川芸術劇場 大スタジオ (神奈川県)
2013/1/4(金)〜1/17(木) 博品館劇場 (東京都)
2013/2/2(土) サンケイホールブリーゼ (大阪府)

<キャスト&スタッフ>
原作:森見登美彦(祥伝社文庫「新釈 走れメロス」より)
脚本・演出:松村武
音楽:土屋玲子
ステージング:小野寺修二
出演:武田航平/山下翔央/新垣里沙/西村直人/小手伸也/小林至/高木俊/上田悠介/市川しんぺー



【関連記事】アトリエダンカンプロデュース 青春音楽活劇「詭弁・走れメロス」脚本・演出 松村武、出演 武田航平、市川しんぺーのインタビューと稽古場レポート!
2013-01-07 19:32

 世界中で愛され続けてきたエドモン・ロスタンの傑作戯曲「シラノ・ド・ベルジュラック」をミュージカル化した「シラノ」。「ジキル&ハイド」「スカーレット・ピンパーネル」のヒットで日本でもおなじみのアメリカ人作曲家フランク・ワイルドホーンが楽曲を手がけ、2009年に日本で世界初演された。初演時に引き続きタイトルロールを務める鹿賀丈史に、作品と役柄への思いを訊いた。



作品と役柄への思いをきいた!

――3年半ぶりに作品に取り組まれる心境はいかがですか。

 初演のときは、日本での公演が世界初演で、しかもスタッフはアメリカ人ということで、作業的に時間を取られることも多く、思うところまでいかなかった、もっとできたという思いがあったんです。今回は時間的にも余裕がありますし、カットや手直しもして、さらにいいものを作り上げたいと思って取り組んでいます。

――初演の際は一から新しいものを作り上げられたわけですが、そのとき鹿賀さんがこだわられていたことはどんなことでしょうか。

 「シラノ」の題材、もともとの戯曲は非常に有名で、演劇好きの人なら一度は観たことのあるような作品ですから、それをミュージカル化することの意味を考えましたね。なるほど、ミュージカルにするとこういうおもしろさがあるなというところまでもっていかないと、わざわざやる意味がないわけですから、そういった点でもしっかりとした作品にしたいなと思っていましたね。シラノは詩人ですから、しゃべる言葉もしゃれているし、非常に弁舌が立つ。それが歌になると、日本の場合、一つの音符に一つの音しか乗せないという伝統があったりして、なかなかシラノらしいしゃれた言葉になりにくいんです。そのあたりを、訳詞家の竜(真知子)さんともご相談して、変えていただいたりしましたね。再演にあたっては、僕がソロで歌っていたナンバーが男性コーラスになったりといった変更がされています。

――作品とキャラクターにつき感じられる魅力についておうかがいできますか。

 シラノはもともとフランスの実在の人物で、フランスでももちろん愛されているキャラクターですが、非常に日本人好みがするところがあると思うんですね。武士道的な要素であったり、一人の男の生きる美学がはっきり打ち出されていますよね。剣の達人で詩人で、立派で魅力的な男で。それで、僕自身は、彼の鼻が大きいということは一つの象徴だと思っているんですね。彼の中の精神的な何かなのか、それとも幼いときに何か起こったのか、とにかく彼の中でコンプレックスとしてある。一人の立派な大人の男が少年のようにそんなコンプレックスを抱えていて、愛する女性に毎日手紙を書くのに直接渡すことができず、彼の友達の名を借りて出している。男らしいところは男らしいのに、少年のような弱さももっている、そんな、多面性をもったところがシラノの魅力だと思いますね。運命的なものかもしれないけれども、そのコンプレックスというものを自分で引き受け、最後まで抱えながら、武人として詩人としても立派に生きた。それも、ただ美しい詩を書くのではなく、社会や上流階級に反発し、批判するものを書いているわけで、男としての強い生き方ももっているところが非常に魅力的ですよね。けっこう笑えるところも多くて、シラノというキャラクターとしてはいいのかななんて思ったりするんですが(笑)、そのあたりも彼の多面性であって、最終的に彼のプライド、生き様、嘘のない生き方を貫き通したところが見えてくればいいなと思いますね。

――シラノは、友人クリスチャンの名を借りて愛する女性ロクサーヌに手紙を出し、バルコニーでの愛の告白の場面では、クリスチャンにプロンプトのようにせりふをつけて演出しているかのようで、そのあたりの演劇的要素も非常に興味深いところです。

 おもしろさの裏に悲しみがあるところですよね。自分の思いを、クリスチャンの口を借りないと伝えられない。非常におもしろくもあり、悲しくもありますよね。このバルコニーのシーンで、シラノはクリスチャンになりすまし、ロクサーヌに自分の思いを歌う。そしてシラノは死ぬ直前、クリスチャンの手紙を読み上げる。その歌声を聴き、ロクサーヌはかつてのバルコニーでの愛の告白を思い出すわけですが、この点において、ストレートプレイにおけるセリフの言い回しより、歌の説得力の方が勝ると思うんです。ミュージカルのおもしろさというのはセリフに勝る歌の説得力にあるわけで、ここがミュージカル版ならではの醍醐味だと思いますね。

――「ジキル&ハイド」でもフランク・ワイルドホーン作品を経験されていますが、ワイルドホーン楽曲の魅力についておうかがいできますか。

 僕は今回22曲くらい歌っていて、普通のミュージカル作品よりも多いな、ちょっと多すぎるなという感じなんです(笑)。ほとんど出ずっぱりというか、出てしゃべって歌っての繰り返しという感じで、体力が要りますね。しゃべりの喉の使い方と歌の喉の使い方とは違うので、そのあたりもうまくコントロールしないといけないなと思いますし。「シラノ」については、激しさや難しさというよりは、非常にシンプルでやさしいメロディが多いなという印象がありますね。逆に、そういうメロディだけをつないでいってシラノという人格を作っていくという作業は、難しいといえば難しいですね。クリスチャンの声真似をするところでは高音でしゃべったり歌ったりしますし、そこも工夫が問われる。それと、付け鼻自体は非常によくできていて、軽いんですが、つけているとどうしてもそこに音が吸い込まれるような感じもしたりするので、そのあたりの歌い方も工夫が必要ですね。

――今回、ロクサーヌとクリスチャンについては新しくWキャストが組まれました。

 相手が変わればまた自分のシラノの表現も変わってくると思いますので、そのおもしろさがありますよね。Wキャストで4通りのパターンがあるわけで、計算通りにはいかないでしょうし(笑)、その日、その瞬間のセリフのキャッチボールを楽しみにしたいですね。芝居をするとき、自分で形を決めない、そんな遊び心、余裕が大切になってくるというか、投げられた球に自然に、素直に反応するということですよね。

――2013年は、鹿賀さんにとって舞台デビュー40周年となります。

 40年というと長い感じがしますけれども、振り返ってみるとあっという間でしたね。40年間走って来れた上ではやはり、「ジーザス・クライスト・スーパースター」に「ウエスト・サイド・ストーリー」、「レ・ミゼラブル」など、さまざまないい作品に出会えたということが大きかったなと思います。基本的には舞台もテレビも映画も変わらないと思っているのですが、その中で舞台のおもしろさはといえば、その日劇場にいらっしゃったお客さんと空気を共有し、お互いに息遣いをやりとりし、一緒に舞台を作っているところだと思います。40周年の節目の年、まずは、日本人に愛される「シラノ」という作品の再演で、初演ではやりきれなかったところを、細かく丁寧に、そしてダイナミックに作り上げていきたいなと思っています。

[取材・文=藤本真由(舞台評論家)

公演概要

ミュージカル「シラノ」

<公演日程・会場>
2013/1/6(日)〜1/29(火) 日生劇場 (東京都)
※1/5(土)プレビュー公演あり
2013/2/8(金)〜2/10(日) 大阪新歌舞伎座 (大阪府)

<キャスト&スタッフ>
出演:鹿賀丈史/シラノ・ド・ベルジュラック、
濱田めぐみ・彩吹真央(Wキャスト)/ロクサーヌ、
田代万里生・平方元基(Wキャスト)/クリスチャン、戸井勝海/ル・ブレ、
光枝明彦/ラグノー、鈴木綜馬/ド・ギッシュ伯爵 ほか
※彩吹真央、平方元基は東京公演のみの出演となります。

脚本・作詞:レスリー・ブリカッス
作曲:フランク・ワイルドホーン
演出:山田和也
翻訳:松岡和子
訳詞:竜真知子


2012-12-19 17:48

 在日コリアンの家族の姿を通して日本と韓国の近現代史を鋭くあぶり出した「焼肉ドラゴン」(2008)で高い評価を得た鄭義信が作・演出を担当、草g剛、広末涼子、香川照之、そして韓国ドラマ「最高の愛」などで知られるチャ・スンウォンが出演する「ぼくに炎の戦車を」が、11月3日、赤坂ACTシアターにて開幕。初日の舞台に先駆けて行なわれた公開稽古を観た。

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公開稽古レポート!

 物語の舞台は、1920年代、日本の統治下にある朝鮮・京城近郊。学校教師・柳原直輝(草g剛)は、ひょんなことから、放浪芸の集団である“男寺党”(ナムサダン)の演者、李淳雨(チャ・スンウォン)と出会う。日本人ながら偉ぶることなく、朝鮮の白磁を芸術品として愛し、また、男寺党の芸をも高く評価する直輝。直輝と淳雨は次第に固い友情で結ばれてゆく。一方、直輝の妹、松代(広末)は、ナイトクラブを経営する夫、大村清彦(香川)と心通わぬことに胸を痛めている。一見ニヒルな守銭奴に見える大村だったが、実は男寺党の棟梁、高大石の無二の親友で、大石の民族独立運動を陰で支援していた。不幸な出来事により、直輝との間に溝ができてしまった淳雨は、友情のため、そして己の芸人としての生き様を賭けて、綱渡りに挑むこととなる――。直輝と淳雨の友情を物語の軸に、二人を取り巻く人々のさまざまな人間模様が、綱渡りに皿回し、踊りに鳴り物といった男寺党の諸芸や、ナイトクラブの場面で繰り広げられる生演奏のピアノにのっての歌と踊りなどをまじえ、にぎにぎしくもしっとりと描かれてゆく。


 朝鮮の文化に深い理解を寄せ、男寺党の演者と国境や境遇、立場の違いを超えた篤い友情を結んでゆく主人公直輝役の草g剛が実にいい。「K2」(2010)でも、堤真一を相手に、山岳での遭難という極限状態においての男同士の友情を鋭く描き出していたが、舞台役者としてさらに磨きのかかった状態。直情型で熱血で、とかくすぐむきになる直輝を、等身大の演技でヴィヴィッドに描き出す。かなり多めの韓国語でのセリフも見事にこなし、とりわけ、淳雨相手に語りつ心情をしのばせるシーンでは、言葉の意味はわからないながらも、その演技だけで純粋な気持ちのほどが客席に伝わってくる好演。物語のラスト、この舞台のタイトルの由来ともなっているウィリアム・ブレイクの詩を暗誦するシーンでは、まっすぐな心をほとばしらせて、すがすがしい。対するチャ・スンウォンも、長身でぱっと目を引く華の持ち主。友情を賭けてのクライマックス・シーンでは綱渡りのアクロバットも披露する。仲秋の名月に、直輝と淳雨が義兄弟の杯を交わす場面の美しさ。そして、淳雨の綱渡りが成功し、直輝がたまらず滂沱の涙を見せ、二人抱き合う場面の清らかさ。二人が交わす友情の篤さが胸を打つ。

 物語のもう一つの軸となっているのが、大村と松代、そして大村の前の妻との子である息子との家族の物語。大村はかつて朝鮮人の恋人を日本軍に殺された過去があり、以来人に心を閉ざしてしまっている。直輝に松代と別れるよう懇願され、彼にふと向ける目線の、背筋凍るほどの空恐ろしいまでの虚無。父と子の関係を描いて、ほとんどあざといほどに巧妙な宛て書きがなされているのだが、それも思わず納得してしまうほどの香川の名優ぶりが光る。広末演じる妻の一途な明るさは、救いだ。

 周りも芸達者揃いで、それぞれの個性を生かした演出となっており、見応え充分。直輝と松代の幼なじみで、松代に思いを寄せる脱走兵、永井靖男役を演じるのは成河。図抜けた身体能力を生かした軽妙な役作りで、物語のコメディリリーフとして安らぎを与える。ナイトクラブの女給役で、馬渕英俚可、安寿ミラ、星野園美をはじめとする個性派がずらり。病気の母を支えて働く中、ダーティな商売の男に想いを寄せられ、心揺れる紅子役で、馬渕が小気味よさを発揮。朝鮮の学校教師役に求愛されるも、日本に残してきた別れた夫と子供が忘れられないみすず役の安寿は、気弱な求愛相手にあざやかなキックを入れるさっそうとした男前ぶり。恋に恋する福役の星野は、体型の恰幅のよさも心洗う明るい声も光って、儲け役だ。

 国と国との関係はときに緊張をはらむ。だが、どんな時代においても、心と心交わすに人間同士のつながりは可能であり、また、結局のところ、人も国もそのようにしてしかつながってはいけないことを、作品は雄弁に伝えずにはおかない。三時間半弱の意欲作におけるキャストの熱演に拍手を送ると共に、来年一月、韓国・国立劇場での公演において、一人でも多くの韓国の観客に、作品の伝えんとするものが届くことを祈りたい。

囲み会見をレポート!

 舞台稽古の前に行なわれた囲み会見には、草g剛、チャ・スンウォン、広末涼子、香川照之の四人が登場。韓国語のセリフも多く、韓国の俳優陣と共に芝居するのも初めてということで、「新たなチャレンジでいっぱいいっぱい」と笑いを誘った草gだが、草gの印象について訊かれたチャの韓国語での答えを即座に通訳。「『五年前に初めて会ったとき、誠実でとてもいい印象を受けましたが、一ヵ月間の稽古を経てもその印象は変わらない』、そう言ってますよね?」と通訳に確認、「その通りです」との回答に一同驚嘆。チャも「すごい」と手を叩いていた。

 「心と心が本当に熱くぶつかりあう場面があり、これから舞台上で友情が芽生えていくのだなと思います。いつの時代も同じ気持ちで通じ合えるし、共に生きていくことがすごく大事で大切なことだと感じます」と草g。
 香川は、「韓国語はわからないけれども、チャさんのセリフを聞いていると、いろいろな苦労や思いもされたんだなと思うし、心がきれいだなということが伝わってきて、涙が出る」と真摯な言葉を。
 広末も、「愛情や友情、命の尊さといったものは世界共通なので、そこをお客様に感じとっていただければ」とコメント。
 チャは、通常習得に一年ほどかかる綱渡りを一ヵ月でマスターしたということで、「毎晩綱渡りを夢に見ていて、昨晩も見ました。作品の中で必要なシーンなので、たとえ落ちることがあっても、とにかくベストを尽くしたい」と抱負を語っていた。

〔取材・文=藤本真由(舞台評論家)〕
〔インタビュー写真/坂野則幸〕

公演概要

「ぼくに炎の戦車を」

<公演日程・会場>
2012/11/3(土・祝)〜12/1(土) 赤坂ACTシアター (東京都)
2012/12/8(土)〜12/11(火) 梅田芸術劇場 メインホール (大阪府)

<キャスト&スタッフ>
作・演出:鄭義信
出演:草なぎ剛/チャ・スンウォン 広末涼子/香川照之
高田翔(ジャニーズJr.)/成河 馬渕英俚可/青木崇高/安寿ミラ キム・ウンス 他


指定席が完売につき、急遽立見を販売します!

■受付方法
特別電話 0570-06-9992でのみ受付
※eコード:083688の入力が必要です。
※立見ご希望の方はeコード入力後、<立見引換券>受付をご選択ください

■受付期間
11/9(金)12:00〜11/12(月)23:59
※予定販売枚数に達し次第、受付終了となります

■対象公演日
11/10(土)〜12/1(土)
公演スケジュールの詳細はオフィシャルサイトでご確認ください。

■料金
立見引換券 6.000円(税込)


<立見引換券>の注意事項
※1階後方のスペースに立つ位置を指定された立見となります。
※公演当日、開演の1時間前より当日券売場にて、立ち位置指定券と本券をお引換下さい。
※立ち位置は、本券の整理番号順でのご用意となります。引換の先着順ではございません。
※開演の10分前より場内へご案内いたします。
※立ち位置指定のエリアは通路のため、休憩中はロビーなどにご移動をお願いします。
2012-11-08 17:50

激しい戦争が終わり、廃墟となったトロイアの地に響く女たちの悲痛な嘆き――。
演出家・蜷川幸雄がこのたび世界に問う「トロイアの女たち」は、この傑作ギリシャ悲劇を、日本人俳優、イスラエル国籍のユダヤ系、アラブ系俳優たちと共に創り上げ、日本、次いでイスラエル・テルアビブで上演しようという意欲的な試みだ。俳優たちはそれぞれ、日本語、ヘブライ語、アラビア語でセリフを交わすこととなる。主役のヘカベを演じる白石加代子が、作品について大いに語ってくれた。



白石加代子さんにインタビュー!

――今回の公演に参加を決めた理由からおうかがいできますか。

 前に一度、劇団(「早稲田小劇場」)時代に一度「トロイアの女」でヘカベを演じた経験があるんです。だから今回はどんな風に新しく創っていかれるかという興味がまずありましたね。この作品では、半分くらい、ヘカベが一人で長ゼリフをしゃべっているんです。息子を奪ったヘレネに対する憎しみであるとか、孫が殺されたことに対する悲しみや恨みなんかをつらつらと、彼女が全部説明するんですね。そんな役どころですから、女優にとっては何度でも挑戦したいという感じなんです。汲んでも汲んでも尽きせぬ魅力がヘカベにはあるなと思います。ギリシャ悲劇には、例えば子殺しのメディアであるとか、夫殺しのクリュタイムネーストラーであるとか、主役、あるいは主役を張れるような強い女がたくさん出てくるんです。他のジャンルの戯曲を見てみても、なかなか女が主役の作品ってないですよね。ここまで強い女って、今見つけるとすれば、例えば犯罪者くらいなものかしらね。

 以前ヘカベを演じたときは、松平千秋さんの訳だったんです。日常的な言葉を排除して、韻を踏んで連なっていく名訳で。今回は山形治江さんの翻訳なんですが、日常語を駆使してどれだけギリシャ悲劇を語れるかというところに挑戦なさっていて、まったく新しい戯曲に取り組むような感じで、今苦心してセリフを覚えているところです。華やかに歌い上げるところは歌い上げつつ、日常語でわかりやすく、お客さまにとっては、そんなところも魅力なのではないかなと思っています。
 セリフを読んでいて感じるのは、ヘカベは一瞬、物語の中から出たり入ったりしているところもあるんですよね。狂言回し的なところもあるし、作者のエウリピデス自身の思い入れが出ているところが感じられたりもしますね。

――来日されたイスラエル系、アラブ系の俳優の方たちとのワークショップを行なわれたそうですが、どのような経験でしたか。

 お互いの身体の感じ方や動かし方、また、それぞれの国の言葉でセリフをしゃべったときの聞こえ方などの印象を通じてお互い知り合っていくためのワークショップで、蜷川さんも見守ってくれてました。あらゆる経験がまったく異なる三つの文化圏から集まった者同士というおもしろさもありましたし、そこに私一人、「トロイアの女」に出演経験のある人間が加わるということで、とても特殊な公演になるなという気がしましたね。役者さんたちはお互い、ある種のいがみ合いがある文化圏からの参加で、ワークショップ中に言い合いになったりということもあったらしいです。けれども、人間同士ですから、例えばワークショップでお互いの肉体をさわり合ったり動かしたりしていくうちに、人間としてのあたたかいものが不思議と流れていくんですよね。無視し合って遠くにいるより、近くにいていがみ合う方がいい、身体同士ぶつかり合う方がいい、そう思いましたね。

 私が所属していた劇団は、外国に行って公演をしたり、外国の方と一緒に公演をしたりということに対して非常に開かれていた集団でしたし、私も以前、アメリカの役者たちとギリシャ悲劇を立ち上げるという経験をしているんですね。お互いの言葉でセリフを丁々発止でやりとりするという感じで。日本人同士でも役者はやはりお互い手探りというところがありますが、外国の方相手だとそこにもう一つ壁が加わる感じかな。でも、呼吸さえわかれば大丈夫という自信があるんですね。もう45年も役者をやってきていますので、長い間の積み重ねの中で、相手の呼吸を感じやすいように訓練されてきたところもあると思いますし。ギリシャ悲劇だとお話をご存じの方も多いし、半分くらい私が説明でしゃべっているので、そこから相手の方の言葉を読み取っていただくのも、お客様にとっては簡単だと思います。

――「白石さんはどのようにこの言葉を発されるのだろう」と、戯曲を読みながら非常に楽しみにしているのですが、とりわけギリシャ悲劇のセリフのような言葉を発される際、白石さんは一種トランス状態に入られているように思えて、それを観て聞いている方も大いに気持ちよさを感じるということがあると思うんです。こういったセリフを語られる醍醐味はどんなところにあるのでしょうか。何かが降りてきたりといったことを感じられたりするのでしょうか。

 ないのよ、そんな人じゃないもの(笑)。普段はただの、のんきおばさんなんだから(笑)。“狂気女優”とか、“情念の女優”とか、“憑依女優”とか、そんな風に言われることが多くて、でも決していやじゃないんですよ。そんな風に見て下さっているんだなと思いますし。でも、普段の私は憑依から非常に遠いところにある人だし、そういった状態を演じているときはとても醒めてるんですね。
 こういったセリフをしゃべる上では、身体の重心、中心がどこにあるのか常に意識して、手先だけの演技をしないとか、大地と自分との関係をいつも測りながらやっているという感じですね。腰を上下させないような訓練もしてきましたし。あとは声の出し方の訓練ですね。セリフを、日常的な上下をしないようにしゃべる。華やかなテンションの高い言葉と、日常的な言葉とが両方入っているところに、今回の山形さんの訳に取り組む難しさもあるなと思いますが。

 狂気や憑依の状態を演じる上では、その瞬間、自分が押さえていなくてはいけないポイントを全部押さえているんです。非常にたくさん稽古を積み上げたあと、やっとそこにたどり着くわけなんですが。日々演じていく上では役者は再構築ということをしなくてはいけない。声はこのあたりから出して、ここでこのレベルに持っていってなどということが、全部頭の中にあって、何回も何回も稽古するうちに、声も身体も意識も、全部の押さえどころを考えることなく押さえることができて、そうして、イメージしていた地点に行けるという感じで。その上で、毎日同じことをやっているとまず自分が飽きてしまうので、鮮度を保つためにどうすればいいかということがあって、そのために準備しなければならないこともたくさんあるし。だから、ただ狂った状態になればいいというのとは全然違うんですよね。

――非常に知的な作業の積み重ねでいらっしゃるんですね。

 役者さんは皆さんそういった作業をされてると思うんです。ただ、私は特殊な役がとりわけ多かったですよね。狂気、憑依、夫を殺す女、男、神の役もやりましたし。普通の役だともう誰もおもしろがってくれないものね(笑)。そういう意味ではおもしろい役を本当にたくさんやらせていただいていて、その中から、狂気や憑依のイメージもたくさんためこんできたものがあるなと思いますね。
 若いときは、自分に近い役って難しいなと思っていたのね。日常の自分が舞台に出てもどうにもならない、表現でないとだめなわけだから、そういう役はやりたくないなと思っていたんです。でも、歳をとってからは、日常の自分のどういうところを利用すればいいのかもわかってきましたし、「百物語」シリーズではのんきなおばさんの役もずいぶんやらせていただいていますね。

――蜷川さんとのお仕事についておうかがいできますか。

 稽古の初日に本番通りの装置が稽古場にあるということは、役者にしたら大変なことなんです。自分の方でも、それくらいのものを稽古初日からお見せしないといけないということですし、セリフを入れていかないと稽古にならない。その一方で、こういう世界なんだ、こういう中で動けるんだということが稽古初日からわかっているというのは、本当にありがたいことでもあるんですよね。だから蜷川さんにあふあふ言って追いついていかないとという感じで。
 ちょっと世代が近いからか、蜷川さん、私には、他の人より優しくしてくれてる気もするんですね。こんなこと言って、急に厳しくなっちゃったらいやだけど、まだ私には灰皿は飛んできてない(笑)。でも、私がいた劇団ではよく椅子が飛んできてたから(笑)。うまいですよ、私、椅子よけるの。手を出したりしてよけるとケガするのね、あれ。ここ(と、胸を指す)で受けるとケガしないのよね(笑)。そっちがそれくらいするならこっちもこう対処します! っていうところを見せなきゃだめなのよ、演出家との闘いなんだから。ただ椅子がとんでくる一方じゃ、悔しいものね。でも、役者も商売道具ですから、演出家もケガさせないようにうまく投げてるものなのよね。それに、そうやって役者を追い込んでもくれてるわけだから。椅子を投げられて、あ、そうか、ってわかることもあったし。

――イスラエル系、アラブ系の方が参加される今回の公演は、テルアビブでの公演も予定されています。

 ワークショップをやっていても、皆さん、人見知りされないんですね。日本人とはちょっと違う感覚があって。私たちとも打ち解けようとするのに、どうして、いや、だからこそ、互いにいがみ合うのかな、宗教のことが大きいのかな…なんて考えたりして。蜷川さんの中には、この問題を素通りしたくないというお考えがあるんだと思うんです。だから、今回、手伝ってくれとお話があって、お受けした以上、私も蜷川さんの後ろから見つめてみたいなという気持ちがあって。21世紀になってもまだ、こんな風に各地で戦争、紛争がある、それもまた現実なんですよね。取材されている方みたいな勇気はなくて、役者は板の上で踏ん張るだけですけれども。

 演劇においては、スト―リーが語られていくわけだけれども、ちゃんとできた作品の背後には、それ以上の何かが見えるはずだと思うんです。役者も内面をさらけ出して、お客様にお見せするんだし。ストーリーとは別に、役者の身体性や、その作品にどのくらいの姿勢で関わっているかが見える。お客様ってすごくいい目をしていらっしゃるわけだから。そういう意味では、役者として頑張らなきゃいけないなと思いますね。
 今回、宝塚の元トップスターの和央ようかさんがヘレネを演じられますが、「ドラキュラ」のDVDを拝見したんだけれども、立ち姿が魅力的な方だなと思って。ヘレネって、トロイア戦争を引き起こすほどの絶世の美女でしょう。前に劇団でやったときは、配役が難しいからって言って、カットしちゃったのね(笑)。国を滅ぼすほどの美しさというと、単なる美形とかそういうことではなくて、立ち姿の美しさ、オーラのようなものではないかなと思っているので、ヘレネをどんな立ち姿で見せてくださるのか、非常に楽しみにしているんです。

[取材・文=藤本真由(舞台評論家)]
〔インタビュー写真/平田貴章〕

公演概要

『トロイアの女たち』

<公演日程・会場>
2012/12/11(火)〜12/20(木) 東京芸術劇場 プレイハウス (東京都)

<キャスト&スタッフ>
作・演出作:エウリピデス
演出:蜷川幸雄
出演:白石加代子、和央ようか、ほか日本人俳優+イスラエルのユダヤ系、アラブ系俳優


2012-11-07 12:41

 マイムのフィールドから活躍の場を広げ、白井晃やケラリーノ・サンドロヴィッチをはじめとする演出家たちの作品の振付やステージングを斬新にこなして注目される小野寺修二。18日にあうるすぽっとで開幕する「日々の暮し方」では、不条理な世界で知られる劇作家・別役実のエッセイをベースに、身体表現にセリフも組み合わさった舞台の構成・演出に挑む。初日直前、小野寺と主演の南果歩とが出席して行なわれた会見と、公開稽古の模様をお伝えしよう。



会見レポート!

――今回、作品の原作として、別役実さんの戯曲ではなくエッセイ集である「日々の暮し方」を選ばれた理由からお聞かせ願えますか。
小野寺  別役さんの作品は好きで、これまでも非常に興味をもってはいましたし、自分としても、カフカやカミュなどの不条理な世界を取り上げてきてはいたのですが、別役さんと自分の不条理とがどう絡むかがわからず、踏み込めないところがあったんですね。ただ、パントマイムではシーンをつなぐということをしてきているわけなので、それならエッセイと非常に合うのではないかと思い、改めて挑戦してみたいとの思いで、今回、戯曲ではなくエッセイ集を選んだんです。ただ、もともとがエッセイですから、このシーンがあって、次はこのシーンになってというように、バラバラ感がある単なるオムニバスにはならないようにどう作るかというところで苦労しました。うまく機能すると、大きな流れになるべく間がいろいろつながってくるかなと思って舞台稽古をしています。歯応えはめちゃめちゃあるんですが、自分の中でこれでOKなのかというところを考えてしまって、手応えの方が(笑)。基本的には、南さんをメインに展開していく話となっています。


――南さんはそんな世界にどう取り組んでいらっしゃいますか。
 かなり不思議な感じですね。台本を読んだだけではわからなかったというか。小野寺さんのお稽古の仕方も、みんなで作っていこうという演出で、今までにちょっと関わったことがないような感じのすごくおもしろい稽古場でした。キャストが、こうかな、ああかなとそのとき思いついて発見していったいろいろなことを素直に口に出せるいい環境なんです。ひらめいたことをどんどん形にして、どんどん脱線していくというか(笑)。そのひらめきをある程度積み重ねたところで、ここはこうじゃないねと捨てていく潔さもあって。そうやって捨てる、取り除くことによって、そちらの方向には向かわなくていいんだとわかる、そんな進め方なんですね。普通の芝居の稽古でよくあるのは、演出家の中にある程度設計図があって、くねくね紆余曲折はありながらも、そこに一本道で向かっていってという感じなんですが、小野寺さんの場合、…設計図はあるんでしょうか?(笑)
小野寺  (笑)今回のように、初めてセリフをしゃべるような方から、南さんのようにダンスはやったことがない方まで、出演者の中にもいろいろな方がいる場合、いわゆる共通言語を見出していくのが難しいなと。だから、一つの設計図でもって決めてしまうということはしたくなかったんですよね。身体的、演技的なものを考えていくという意味で、それぞれの中でそれぞれ腑に落ちてもらえて、それぞれが生き生きできたらいいなと思って。僕としては、そうやって生き生きしているそれぞれの身体を見ている感じですね。そうやってそれぞれの身体が集まっていく中で、舞台が調和が取れたものになっていけばいいなと。その上で、ただしゃべって物語を伝えるということだけでなく、お客様に余白を感じていただけたらいいなと思っていて。無駄なこと、いっぱいありましたけど(笑)。
 決して無駄にはなっていないと思います(笑)。


――身体を通じての表現を追求してきた小野寺さんにとって、今回、言葉をも扱うということで、表現、伝わり方の違いや難しさなど改めて感じられたことはあったのでしょうか?
小野寺  言葉って難しいなと改めて思いましたね。言い方一つで変わってしまうし、それだけで雰囲気を出せてしまうから、言葉にそのまま乗ってしまうと、その言葉に押されていってしまうところがあるんですよね。例えば、「失踪します」という言葉が出てくるんですけれども、もうその「失踪」だけで直接的な話になってしまったりする。別役さんのエッセイの中では、言葉が意外なものとして登場してきていたりもすると思うんですが、そのズレがただ笑いとして受け止められないようにしたいとも思いますし。マイムの場合、表現するのはある種のイメージですから、100通りの受け止められ方があると思うんです。だから、言葉の場合でも、一つの正解というものはないということを見せていきたいんですが、その際、どうしても言葉に合わせて演じてしまうというか、説明してしまうことがあるというか。そのあたりを感情的にもフラットにやっていきたいんですね。そういう意味では今回、僕としても非常に勉強になっているなと感じています。


公開稽古レポート!

 会見に続いての公開稽古では、まずは作品冒頭のシーンが披露された。暗闇の中、浅く水の溜まった水槽をのぞき込み、やがて片手でかき回す一人の女(南果歩)。そして、オープニング。ビート系の音楽に乗っての、椅子をはじめとする家具の移動を伴う各人の動き。リビングを情景にしてのそのムーヴメントは、ポットからカップへお茶を注いだりといった日常的な仕草から、身体を床にはいつくばらせるといったいわゆる“ダンス”的な大きな動きにまで発展してゆき、これから展開される作品が生活、暮しに基づくものであることを物語る。グレー基調の衣装を身にまとったダンス体験者の中で、鮮やかな赤いワンピースを着こなした南の動きは、存在感を放って異質なアクセントとなっており、踊る肉体と芝居する肉体との差異とはいったい何なのか、観る者に考えさせずにはおかない。

 女は、自分のもとから消えた男を探しに、探偵を訪ねる。見ている書類を奪っていってしまう部下と、それを取り返そうとする探偵(中山祐一朗)との身体的やりとり。最終的には女も加わってのこのシークエンスで、中山の肉体のありようが目を引く。演じようというのでもない、踊ろうというのでもない、あくまでそのあわいにある動きを追求して、小野寺の作品世界との好相性を感じさせる。言葉のやりとりによるシーンと身体的表現によるシーンとを瞬時にゆきかうこの作品にあって、巧みな媒介者となっているようだ。

 「それでは失礼します」なる言葉を発するとき、人はどのようにふるまうことが最適なのかをめぐって展開するシークエンスを観ていて、「日々の暮し方」なるこの舞台作品において、別役のエッセイが、日本人の身体論としての一面をひときわ深く探求され、他ならぬ日本人のその身体を通じて舞台上に体現されていっていることに気づく。言葉と肉体との関係、仕草と踊りとの相違等、さまざまに興味深い論点を含む作品の本番の舞台が楽しみになってきた。

〔取材・文=藤本真由(舞台評論家)〕


公演概要

『日々の暮し方』

<公演日程・会場>
2012/10/18(木)〜10/28(日) 豊島区立舞台芸術交流センターあうるすぽっと (東京都)

<キャスト&スタッフ>
原作:別役実(白水Uブックス刊)
脚本:きたむらけんじ 
構成・演出:小野寺修二
出演:南果歩、中山祐一朗、山田悠介、川合ロン、藤田桃子、矢沢誠、吉村和顕、小野寺修二



【関連記事】世界を股にかけて活躍する、振付家・小野寺修二とアーティスト・中山ダイスケがコラボレーションする舞台『日々の暮し方』
2012-10-19 11:32

ボールルーム・ダンスの華麗な世界をステージ・エンタテインメントに進化させ、世界中で観客を虜にしてきた「バーン・ザ・フロア」。これで七度目となるこのたびの来日公演では、公演内容をさらにブラッシュアップ、スペシャルゲストダンサーとして今井翼が登場することでも話題を呼んでいる。今年「バーン・ザ・フロア」カンパニーに参加し、来日公演でも活躍が期待されるイタリア出身の美男美女カップル、マティス・ガランテ&ジュリア・ドッタに、公演の見どころを語ってもらった。


マティス・ガランテ&ジュリア・ドッタ公演の見どころを語る!

――お二人のダンスのキャリアと、「バーン・ザ・フロア」に参加を決めたきっかけをおうかがいできますか。

ジュリア  私は12歳でダンスを始めたの。ちょうどそのころ、ダンススタジオでサルサを習い始めた両親に、あなたもやってみない? と誘われたのがきっかけ。初めてすぐ、ダンスが大好きになって、ずっとずっと踊り続けていたいと思うようになったの。
マティス  僕は5歳のとき、家で開いたパーティでそれはクレイジーに踊っていたら、お客として来ていたダンスの先生に、君はダンサーになるよって言われて習うようになって。
ジュリア  そのときのマティスの映像、私も観たことがあるんだけど、ホントにクレイジーだったわ(笑)。
マティス  (笑)リズム感がいいって言われたんだよね。何だか踊っているといい気持ちで。僕が人生においてもっとも大切にしていることは、自分が自分としていい気持ちを味わえているかということなんだけれども。
ジュリア  確かに、私は本当に恥ずかしがり屋の人間なんだけれども、踊っているときは自分を解放して表現することができるし、自分自身を観客に与えられるような気がするわ。マティスはね、私とは対照的で、全然シャイじゃないんだけど(笑)。ダンスを始めたとき、マティスはすでに私より全然上のレベルのダンサーで、経験を重ねてキャッチアップしていったという感じね。
マティス  前に一緒に踊っていたパートナーが、学業を続けるためにダンスをやめてしまって。それでパートナーを新しく探したんだけれども、僕が187cmと背が高いので、背が高くて、ビューティフルなパートナーがいいと思って、170cmのジュリアに決めたんだ。
ジュリア  9cmのヒールを履くから、それでちょうどいい高さなのよね。
マティス  ジュリアと踊っているととてもいい気持ちだし、僕たち二人、美しい絵に見えると思うんだ。それがボールルーム・ダンスでは大切なことだからね。三年前にパートナーを組んで、さまざまな競技会で踊ってきたんだけれども、僕としてはショービジネスという新しい世界に入って行きたいという気持ちが強くて、それで「バーン・ザ・フロア」に参加することを決めたんだ。
ジュリア  私はマティスが「バーン・ザ・フロア」に二人の履歴書を送っているなんて全然知らなかったから、「今度オーディションを受けられることになった」と聞かされてもうびっくりだったわ。マティスと踊るのは自分にとってはいつも大きなチャレンジね。自分の能力以上のことをこなして、どんどん向上していかなくてはいけないと思うの。
マティス  アクロバティックなリフトをやるのも、競技会ではないことだから、「バーン・ザ・フロア」で初めて挑戦することだしね。
ジュリア  競技会ではパートナー同士競い合うわけだけれども、「バーン・ザ・フロア」では、他のカップルと助け合って一つの舞台を作っていく。大きなファミリーみたいな関係よね。
マティス  競技会だと、高いテクニックをしっかり見せるとか、パートナーでいい雰囲気を醸し出すとか、そういうことに重きが置かれているからね。僕は長年競技生活を続けてきて、だんだん自分自身を表現したいという気持ちでうずうずしてきていて。でも、それを競技会でやると、トゥーマッチということになってしまったりするんだよね(笑)。「バーン・ザ・フロア」では、例えば男女の恋の駆け引きを描くような官能的なストーリーダンスもあったり、これまで踊ってきたのとは違うジャンルの楽曲にも次々挑戦していくことができるのが楽しいよね。
ジュリア  観客もまったく違うものね。競技会だと、自分の関係者だけが観て応援して拍手してくれる感じだけれども、「バーン・ザ・フロア」の場合、満場の観客に自分のエネルギーを与えて、観客からエネルギーを受け取って、また返してという感覚を味わえるもの。
マティス  それって本当にビューティフルなことだよね。世界中を旅して回ってさまざまな国の観客の前で踊ることができるのも楽しみだし。これまでにアメリカ、中国、オーストラリア、南アフリカで公演してきたけれども、それぞれの国によって観客の反応もまた違ってくるしね。
ジュリア  踊っていて楽しいナンバーばかりなんだけれども、日本公演に向けてまだまだ改訂中だから、詳しい内容については本番の舞台をお楽しみにということで。でも、本当にさまざまな要素が盛りだくさんのショーよね。いわゆるラテンダンスの曲はもちろんのこと、コンテンポラリー・ダンスの要素も取り入れられているし、ハードなロック・ナンバーにあわせてノリノリに踊ったりもするし。
マティス  さまざまなジャンルの楽曲を踊りつつも、ラテンダンサーとしての芯はしっかり守っていきたいと僕は思っていて。何といっても、イタリア人だしね(笑)。でも例えば、サルサ一つとっても、さまざまな国で多様な展開を遂げて発展してきた歴史があるわけで、そういった多彩なスタイルに一夜にしてふれられることも「バーン・ザ・フロア」の醍醐味なんじゃないかな。


――日本の観客へのメッセージをお願いできますか。

ジュリア  日本の皆様の前で踊るのは初めての経験だから、本当に楽しみにしているの。カンパニーにはすでに来日公演に参加したメンバーも多いので、彼らから楽しかった思い出を聞いて、期待をふくらませているわ。老若男女問わず盛り上がることのできる作品だから、劇場でお会いできる日が待ち遠しいわ。
マティス  チャチャチャにサルサ、ワルツにタンゴ、スウィング……、ボールルーム・ダンスの多様な魅力を楽しめる作品。ダンスが与えることのできるエネルギーを、日本の皆様にもぜひ味わいに来てほしいな。

 

制作発表レポート!


 ジュリアとマティスをはじめ、来日公演に参加するダンサー五組が登場した作品の制作発表では、本番さながらのステージが展開された。セクシーでゴージャスなコスチュームに身を包んだダンサーたちが次々と登場し、ワイルドにステップを踏めば、フロアが揺れる揺れる! ロマンティックなカップルのデュエットダンスに客席降り、ファンキーなナンバーなど、会見ながらさまざまな趣向が凝らされている。短い時間の中に早替わりもあり、バーレスク風やボンデージ風など目にもあでやかな衣装が次々と登場。本番ではダンサーがこの倍の十組二十名となり、男女ボーカリストとパーカッショニストも加わって、さらに迫力のステージが展開される予定だ。
 制作発表にはスペシャルゲストダンサーの今井翼も登場。ニューヨークやスペインでダンスやフラメンコの修行を積んできた今井は、「日本代表として出演できるのは恐れ多いこと。カンパニーの中で輝けるよう頑張りたい。これまでの舞台では男性ダンサーとの共演の機会が圧倒的に多いので、美しい女性ダンサーと踊れるというのは大きな刺激。ペアダンスでもしっかり男としての見せ方を追求していきたいし、作品を通じて自分の新しい部分が引き出されていったらと思っています」と公演参加の意気込みを熱く語っていた。

〔取材・文=藤本真由(舞台評論家)〕
〔インタビュー写真/坂野則幸〕

 

公演概要

タマホームpresents バーン・ザ・フロア Around the World Tour 2012

<公演日程・会場>
2012/12/5(水)〜12/9(日) 東急シアターオーブ(渋谷ヒカリエ11階) (東京都)
2012/12/12(水)〜12/16(日) オリックス劇場(旧 大阪厚生年金会館) (大阪府)

<キャスト&スタッフ>
出演:スペシャル・ゲストダンサー:今井翼

 
2012-10-16 13:54

2012年秋、開場15周年を迎える新国立劇場で英国が生んだ、音楽、舞踊、演劇の3分野における舞台芸術の最高峰の作品を上演します。


オペラ「ピーター・グライムズ」

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バレエ 「シルヴィア」

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「リチャード三世」

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各公演をご紹介!

■ オペラ

20世紀英国最高の作曲家ブリテンの代表作『ピーター・グライムズ』を初上演!
指揮は英国音楽界の重鎮アームストロング、キャストにはグライムズ役を当たり役とするスケルトンをはじめ英国圏出身の一流歌手陣が集結します。デッカー演出は、ロイヤルオペラでも繰り返し上演されている決定版!

■ バレエ

英国が誇る現代物語バレエ屈指の振付家、新国立劇場舞踊芸術監督・ビントレーの『シルヴィア』が新国立に初登場!
神話を題材に、時空を超えて愛を見つける傑作ロマンティック・コメディー!指揮には英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ(BRB)首席指揮者のポール・マーフィー、ゲストにはBRBプリンシパル佐久間奈緒とツァオ・チーを迎えます。

■ 演劇
シェイクスピアの珠玉の名作『リチャード三世』が待望の上演!
2009年秋、全三部9時間上演で話題となった「ヘンリー六世」の続編を同じスタッフ・キャストでお送りします!壮大な歴史絵巻、いよいよ最終章へ!!
出演:岡本健一/中嶋朋子/浦井建治 ほか

 

懇談会レポート


9月14日(金)、英国大使館において<新国立劇場・英国舞台芸術フェスティバル2012>懇談会が行われました。
ディビッド・ウォレン駐日英国大使、ジェフ・ストリーター・ブリティッシュ・カウンシル駐日代表、新国立劇場からは、福地茂雄理事長、尾高忠明オペラ芸術監督、デヴィッド・ビントレー舞踊芸術監督、宮田慶子演劇芸術監督、バレエ「シルヴィア」に出演する新国立劇場バレエ団ダンサーが登壇し、本フェスティバルの意義、それぞれの作品の見どころなどを語りました。
ご挨拶に引き続き行われた、芸術監督を囲んでの個別の懇談会では、ストリーター・ブリティッシュ・カウンシル駐日代表も順に話しに加わり、英国の舞台芸術について、話しが弾みました。

フェスティバル期間中、作品作りを通した日英の舞台芸術交流の歩みや、様々な企画展示、上映会、講演会など各種イベントが行われます。奇しくも懇親会の2日前にイギリス中部のレスター市中心部にある駐車場からリチャード三世の可能性がある遺骨が発掘というニュースも!

 

公演概要

新国立劇場・英国舞台芸術フェスティバル2012

■ 新国立劇場オペラ 「ピーター・グライムズ」
<公演日程・会場>
2012/10/2(火)〜10/14(日) 新国立劇場 オペラパレス (東京都)

<キャスト&スタッフ>
出演:スチュアート・スケルトン/スーザン・グリットン/ジョナサン・サマーズ/キャサリン・ウィン=ロジャース/鵜木絵里/平井香織/高橋淳/久保和範/加納悦子/望月哲也/吉川健一/大澤建
合唱:新国立劇場合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
※ バルストロード船長役がピーター・シドム→ジョナサン・サマーズに変更となりました。ご了承ください


■ 新国立劇場バレエ 「シルヴィア」
<公演日程・会場>
2012/10/27(土)〜11/3(土・祝) 新国立劇場 中劇場 (東京都)

<キャスト&スタッフ>
振付:デヴィッド・ビントレー
音楽:レオ・ドリーブ
美術:スー・ブレイン
照明:マーク・ジョナサン
指揮:ポール・マーフィー
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

【10/27(土)・11/1(木)】
小野絢子/福岡雄大/吉本泰久/湯川麻美子/山本隆之
【10/28(日)・11/3(土・祝)】
米沢唯/菅野英男/八幡顕光/堀口純/マイレン・トレウバエフ
【10/31(水)・11/2(金)】
佐久間奈緒/ツァオ・チー/福田圭吾/本島美和/厚地康雄


■ 「リチャード三世」
<公演日程・会場>
2012/10/3(水)〜10/21(日) 新国立劇場 中劇場 (東京都)

<キャスト&スタッフ>
演出:鵜山仁 翻訳:小田島雄志
出演:岡本健一/中嶋朋子/浦井健治 他


※ やむを得ぬ事情により内容に変更が生じる場合がございますが、出演者・曲目変更などのために払い戻しはいたしませんのであらかじめご了承願います

【関連サイト】フェスティバル【9月4日(火)〜11月4日(日)】の詳細はこちら!
2012-09-28 18:06

 世界中で愛され続けるロック・ミュージカル「RENT」の作者、ジョナサン・ラーソンが、若き日の苦悩を綴ったミュージカル「チック、チック…ブーン!」。日本初演と再演とで主人公ジョナサン役を演じ、「RENT」や「The Last 5 Years」などラーソン作品への出演も多い山本耕史が、主演に加え翻訳・訳詞・演出も務める三度目の上演の初日公演を観た。


 

Team YAMAMOTO Presents 三度目の上演の見所!

 ロックとミュージカルを融合させた作品を作りたい。そんな夢を抱えつつ、ニューヨークはソーホーの片隅で貧乏なアーティスト暮らしをしているジョナサン。まもなく30歳の誕生日を迎える彼は、この年齢になるまで何ら成功を手にしていないことに苛立っている。子供のときからの彼の親友マイケルは、役者になる夢をあきらめ、マーケティング会社に勤めてリッチマンに。ジョナサンの彼女でダンサーのスーザンは、ジョナサンと結婚してニューヨークを離れ、落ち着いた生活を送ることを夢見ている。30歳の誕生日を前にした一週間の心模様が、心の叫びを形にしたようなロック・サウンドによって綴られてゆくという趣向だ。

 まずはオープニング・ナンバー「30/90」での、ジョナサン・ラーソンの紡いだ音と心情がまさにシンクロしたような山本の歌唱がまっすぐに届き、ラーソン作品との相性のよさを印象付ける。ロック・ミュージカルというと、やたらとしゃくり上げるようなクセのある歌唱でロック風に聴かせようとする歌い手も散見されるが、山本の歌は、心の叫びがその音、そのシャウトとして紡がれているという楽曲の成り立ちの基本をきちんと踏まえており、好感がもてる。もっと観客を、世界を信じて、心の内をすべてさらけ出す歌唱となってゆくと、聴く者の心にさらなる強烈さと深みをもって響かせられるように思う。日本のミュージカル界において貴重な才能である。

 ジョナサンの親友マイケル役に扮したのは、異色の黒人演歌歌手として活躍するジェロ。ミュージカル出演はこれが二度目、制作発表では「5歳のときから演歌にふれてきているので、ロック・ミュージカルはようわからへん」と笑いを誘う場面もあったが、日本人の心を痛切に、雄弁に伝える演歌を歌う人だけあって、ロックを歌ってもさすが、心情表現に優れる。マイケル自身、役者としてのキャリアをあきらめたことに葛藤を抱いており、一幕ラストで芯を務める「Real Life」で「Is this real life?」と繰り返す、その歌唱が心に痛切に響き、圧巻である。大げさに、大声で熱唱ぶりを印象付けようとするのではなく、作曲家ジョナサン・ラーソンがその一音、その一語にこめた思いを歌としてていねいに積み上げてゆく、そのシンプルで淡々とした歌い手としての姿勢が好感度大。山本と声を重ねたときの相性も抜群で、ハーモニーに妙なる味わいがある。ジェロはマイケル以外にもいくつか小さな役を演じているのだが、笑わせようといちいち派手なことを仕掛けるでもなく、それでいて、ひょうひょうとしたしぐさや表情で観客の笑いを誘わずにはおかないコメディ・センスも見事な限り。ミュージカル、演劇問わず、もっと多くの舞台で観てみたい人である。
 ジョナサンの恋人スーザン役を演じたすみれは、アメリカのカーネギーメロン大学の演劇科に在籍中。学生時代、ジョナサン・ラーソン作品「RENT」にも出演した経験があり、今回、日本でのミュージカルの舞台に初挑戦を果たした。

 30歳を前に、ままならぬ人生にあせる主人公ジョナサンは、親友や恋人との心のやりとりやさまざまな出来事を通じ、劇的な成功こそ味わえないながらも、確かなものを少しずつ積み重ねてゆく。「RENT」の爆発的成功を見る直前、35歳で急逝したジョナサン・ラーソンが若き日に残した音と言葉は、その積み重ねこそが人生の営みに他ならないのだと教えてくれる。観劇後、「RENT」の名ナンバーの数々も脳裏に響いてくるような、しみじみとした思いが味わえる作品である。

取材・文=藤本真由(舞台評論家)

 

公演概要

Team YAMAMOTO Presents 「チック、チック...ブーン!」

<公演日程・会場>
2012/9/13(木)〜9/30(日) 豊島区立舞台芸術交流センターあうるすぽっと (東京都)
2012/10/11(木) サンケイホールブリーゼ (大阪府)

<キャスト&スタッフ>
作詞・作曲・脚本:ジョナサン・ラーソン
翻訳・訳詞・演出:山本耕史
音楽監督:前嶋康明
出演:山本耕史 すみれ ジェロ

 
【関連記事】Team YAMAMOTO Presents 「チック、チック...ブーン!」制作発表の模様をレポート!
【関連動画】山本耕史さん すみれさん ジェロさんからメッセージ
2012-09-20 11:22

 市川海老蔵が再び「伊達の十役」に挑む「八月花形歌舞伎」。善悪男女十役を演じて五十回近い早替り、そして宙乗りも披露するという迫力と躍動感あふれたこの作品は、文化十二(一八一五)年に七世市川團十郎が初演、昭和五十四年、三代目猿之助(現猿翁)が百六十四年ぶりに復活させて大当たりをとったもの。海老蔵は一昨年の一月、この作品に挑戦、大きな話題を呼んだ。昼の部「桜姫東文章」では、悪の魅力にあふれる釣鐘権助に初役で挑む。八月公演にかける意気込みを訊いた。


 

市川海老蔵、八月公演にかける意気込みを訊いた!

――「伊達の十役」は猿翁さんが百六十四年ぶりに復活させた作品で、「三代猿之助四十八撰」の一つですが、今月(七月)公演「楼門五三桐」でその猿翁さんと共演されています。

 猿翁のおじさまは、八年前に倒れられて以来、私の中では、歴史上の方というか、共演できない憧れの存在だったんです。「四の切」も「伊達の十役」もおじさまに教わり、いつか一緒に舞台に立ちたいと思い続けてきました。それが、私を相手役にとおじさまが指名してくださって、本当に言葉では言い表せないような喜びを感じました。まさか同じ舞台に立てるとは思いませんでしたから。そして日々、すごいものを勉強させていただいています。おじさまの情熱をひしひしと感じ、さまざまな夢を追いかけ、さまざまなものを創ってきた、その塊のような存在の内を、毎日私なりにのぞかせていただいているという感じです。そして先日、「『伊達の十役』(をやるの)は君ね」とおっしゃって下さいました。死ぬ気でかかれるものがまた一つ増えたなという喜びを得て、感動で。共演させていただけた次の月に「伊達の十役」に取り組むというのも、非常に感慨深いですよね。

 

――初挑戦時に苦労されたことは?

 もう全部大変でしたね(笑)。セリフも三百以上あって、専門的だったり古い言葉だったりして、覚えるだけで大変で。相手役がいない場面もありますし、自分でしゃべって自分で返すの繰り返しだったり。早替りも一つうまくいかないと全部だめになってしまいますから、手順を覚えるのが大変で。じっと古典らしくいられる場面もありますが。

――そんな中で、演じていて醍醐味や楽しさ、喜びを感じるところは?

 歌舞伎役者としての楽しさということならば、やはり、お客様が喜んでくださるかどうかですよね。そこに意識をもっていって日々の舞台を勤めることが、役者として唯一の喜びであり、そのためにやっているわけですから。最初の方で、どんどん早替りしていかなくてはいけない、その楽しさもありますし、その一方で、古典として見ることのできる作品でもあります。十役の中では、乳人政岡や細川勝元、最後の方の仁木弾正は比較的太く描かれ、じっくりと古典らしい芝居が出来ます。
 古典を求めるお客様、新しいものを求めるお客様、その中間を求めるお客様、さまざまなお客様がいると思うんです。演じる側でも、伝統を守り、続けていかなくてはいけない使命をもった家もありますし、いろいろですよね。古典を理解していただくという意味では、新しいことをやって楽しんでいただき、その中で、古典にも興味をもっていただけたら初めて成立するというところもありますし、古典を楽しんでいただくためにも、新しいことにも全力を尽くすということですよね。
 言ってみれば、一番新しいことは、古典なんですよね、究極的には。新作ってちょっと古くさいものだったりする。古典の中で、今まで気づかなかったことを初めてかいま見た、その瞬間が本当に新しいことであるわけですから。そのことをわかっていただくために苦心するということですよね。

――昼の部の「桜姫東文章」の釣鐘権助は初役です。

 権助は父(市川團十郎)に習いましたが、父の権助は非常に色気が、自分としてもできるだけ吸収できたらなと思います。役作りに関しては、特に作らないでできるところがあるのかなと。近いと言っても、私のもっている一部分、ということにしていただければと思いますが(笑)。

――海老蔵さんが考える悪の魅力とは?

 素直に生きるということだと思うんですよね。悪をもっている人がその悪を生きることが悪の魅力であって、悪でありすぎると勧善懲悪的になってしまいますから。人間、悪人って一人もいないと思うんです。善の心、優しさや思いやり、そういうものをもっていながらも、生活環境や境遇、状況や周囲との摩擦、そういったものによってうまくいかないところに、悪の魅力、美しさが表れてくるものだと思うんです。

――復帰されて一年経ちましたが、歌舞伎に対する思いに変化はあったりされたのでしょうか。

 以前は新しいことに走っていた時期があったんです。いろいろなことをやらせていただいていて、今後どう生きていくか、そのことに対して非常に抵抗があった時期があって。そのままやっていたら歌舞伎がいやになっていたという意識が薄々あったなということを、その後、確信したんです。自分の中でもうやりたいものがあまりなかったというか…。今は、例えば猿翁のおじさまをはじめ、いろいろな方と舞台に立ち、もっともっとやりたいことが増えてきていて。とにかく今は、歌舞伎においてやりたいことが大きく増えてきたなということを、ものすごく感じますね。

〔取材・文/藤本真由(舞台評論家)〕

公演情報

八月花形歌舞伎

<公演日・会場>
2012/8/4(土)〜8/23(木) 新橋演舞場 (東京都)

<キャスト&スタッフ >
【出演】
中村福助/市川海老蔵/片岡愛之助/市川右近/市川笑也/中村児太郎/市川寿猿/中村歌江/片岡亀蔵/片岡市蔵/市村家橘/市村萬次郎 ほか

【曲目・演目】
<昼の部>桜姫東文章(さくらひめあずまぶんしょう)
<夜の部>慙紅葉汗顔見勢(はじもみじあせのかおみせ)
       三代猿之助四十八撰の内 伊達の十役(だてのじゅうやく)
       市川海老蔵十役早替り宙乗り相勤め申し候


2012-07-27 18:32

 オフ・ブロードウェイ・ミュージカル「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」が、森山未來主演で帰ってくる!グラムロックの珠玉のナンバーによって切々とつづられる、“カタワレ”を求める魂の彷徨の物語は、映画化もされ、日本でもカルト的人気を誇る。これまでに三上博史、山本耕史が演じてきた難役ヘドウィグに、森山はどう挑もうというのか。その意気込みを訊ねた。


 

難役ドウィグに、森山はどう挑むのか!

――出演を決められたきっかけは?

 昔から映画版は大好きだったし、もちろん音楽もすばらしいですし、自分としてもやれることがありそうに思えて、出演のお話を頂いたときは、迷いなく「はい」と答えました。山本さんが演じられた際に観劇させてもらっていて、舞台版と映画版はこう違うのか、なるほどなと思っていたり、それと、これはどんな舞台を観てもそうなんですが、自分だったらどうやるかというのをどうしても考えてしまうところがあるんですね。職業病みたいにいつもつきまとっている問いというか。そのときは、漠然とですが、自分が演じる機会があれば、もっとライブにしたいなと思って観ていたんです。いわゆるミュージカルと聞いたときに人がイメージするものとは違うところがある作品じゃないですか。もともと、作者のジョン・キャメロン・ミッチェルが、作詞作曲のスティーヴン・トラスクと一緒に曲を作ってバーかなんかで歌っていて、次第にヘドウィグというキャラクターにストーリーを与えていったという経緯がある作品だから、基本は“ショー”だと思うんです。バーで飲みながら聞いているということだと、あのヘドウィグの長い一人語りに耳を傾けているというのも納得がいくところがあるというか。もちろんキャラクターもストーリーもおもしろいんだけれども、極端な話、音楽だけでやったらどうなるんだろう、と思ったところがあったんです。

 それで、できるだけ演劇の演出の手法を用いないためにも、演出は大根仁さんにお願いしたいと考えたんです。大根さんは生の音楽の力をとても理解して信じている方だし、パンクが好きというところが非常に重要だなと。この作品の音楽はグラムロックが基本ではあるんですが、パンクって、破壊する衝動を持っているという意味で、精神性に非常に深く関わってくる音楽じゃないですか。今回、「ヘドウィグ〜」という作品の既存のイメージを壊したいという気持ちが非常に強いんです。「レント」をやったときもそうでしたが、作品を過去のものにせず、知らない人にも伝えていく上では、ある種の破壊はとても必要だと思うので。


――今回、どう“破壊”されたいと考えていらっしゃいますか。

 ジョン・キャメロン・ミッチェルは、「世界中、どの時代にもヘドウィグはいる」と言っているんですね。そう考えると、2012年の日本で僕が演じる上では、アメリカ人を演じようとしなくてもいいと思うんです。そういう変更が絶対に必要になってくると思う。大根さんとも、やるならドメスティックにしていかないと、今の若い人たちに受け入れられるものにはならないと話していますし。舞台を日本にするとか、時間も過去、現在、未来、どこに設定するのか、それすらも変えるくらいのイメージを持っています。

 舞台は、みんなで嘘、虚構を共有するものですよね。生を見せるという感覚もありだと思うんです。“森山未來”が透けて見える瞬間があってもおもしろいかもしれない。「ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ」というコンセプトのもと、僕がライブをやっている、そんな概念にどう近づけるか、考えたいなと思いますね。

 それと、音楽は本当にすばらしいんですが、グラムロックという音楽スタイル自体、今の若い世代にとっては古いといえば、古いんですよね。だから、メロディやリズムはキープしつつ、アレンジしていくということを考えていて。四つ打ちで、エレクトロ・パンクみたいに響いてもおもしろいかもしれない。映像も奥秀太郎さんにお願いしているので、生々しい映像で存分にやっていただいて、演劇というよりインスタレーションみたいな感じになってもいいのかもしれない。そんなことを考えています。


――森山さんご自身はヘドウィグというキャラクターのどんなところに共感されますか。

 僕はドラァグクイーンでもないしゲイでもないですが、この作品の中で何か拾えるものがあるとすれば、それは、二つのものに引き裂かれて、その真ん中でどちらにも行かれない、そんな部分ですね。ヘドウィグは、東ドイツから亡命してきて、けれども東ドイツ側にもアメリカ側にもなじむことができない。そして、性転換手術が失敗してしまって、男にも女にもなれない。性においても、国においても、引き裂かれた真ん中に立っているわけですよね。そして、私を見ることによって自分自身がどういう人間なのか感じなさいと、人に問いかけてくる。その印象が非常に強いものとしてあって。僕の中に、それほど具体的にわかりやすくはっきりと引き裂かれている何かがあるわけではないんです。ただ、舞台をやっていると、いつも思うことなんですが、そして、人とコミュニケーションを通じて関わる上でも同じだと思うんですが、自分で自分に聞いても、自分自身では答えって出ないもの。それが、舞台上で感じる客席の反応、呼吸であったり、例えばこうして対話しているときの相手の表情がどう変わっていくのか、そうやってコミュニケーションを交わすことによって、自分自身が見えてきたり、自分に対して客観的になれたりということがある。相手の反応、相手の存在で、自分がもっと見えてくる、つまり、他者が鏡ということだと思うんです。そんな普遍的なところにまずは深い共感を覚えますね。


――作中、ヘドウィグが“カタワレ”を追い求め続けるのは、プラトンの「饗宴」がモチーフになっているところがありますが、森山さんご自身も、何か失われているもの、カタワレを探すという感覚を覚えられたりすることはあるのでしょうか。

 それはもちろん、感じない人はいないんじゃないかと思うんです。ヘドウィグは、スター然としてステージに出てきて、自分と向き合ってさらけ出していくことによって内面が壊れていって……。僕は、シェル・シルヴァスタインの「ぼくを探しに」という絵本のことを思うんですね。パックマンみたいな感じの“円”が、その欠けた箇所にぴったりはまる部分を探しに行って、見つけることができてはめこんで、喜んで転がるんだけれども、でも、やっぱりそのパーツとはお別れして、自分自身に戻る。ある種の確認作業ですよね。自分のかけら、自分に欠けている部分をつかみたい、知りたいと思うことは。そのことによって、最終的に自分一人で歩いてゆけるようになるということだと思うんです。


――さきほど、「“森山未來”が透けて見える瞬間があってもおもしろいかもしれない」とおっしゃっていましたが、ある意味、舞台で役を演じるということの根幹にも関わってくるように思えます。

 上手い下手で言えば、芝居はやってれば上手くなると思うんです。でも、テクニカルなものを超えて、人となりが出てしまう。結局のところ、観客は人間性を観ているものなんですよね。だから、どんな役柄にせよ、その役者の人間性でやるしかない。その人となりがおもしろければおもしろいほど、エネルギーが強ければ強いほど、前に届いていくということだと思うので。演じるとはどういうことなのかと考えたときに、自分を消すということではなしに、自分というものをしっかり見せていくというイメージ、それは、ここ数年でより強く思うようになりましたね。だから、今回でいえば、逆説的に“森山未來”が出てしまうということもありうるのかなと思うんです。“森山未來”が現れるということにおびえてはいけない。だから、日頃からどのように自分が出てもいいような生活をしておかなくちゃいけない、そんなことを思うようにもなってきましたね。

〔取材・文/藤本真由(舞台評論家)〕

公演概要

ロック・ミュージカル ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ

<公演日・会場>
・東京公演 8/29(水)〜9/10(月) Shibuya O−east
・大阪公演 9/14(金)〜9/17(月・祝) Zepp Namba
・愛知公演 9/22(土・祝)〜9/23(日) Zepp Nagoya
・福岡公演 9/25(火)〜9/26(水) Zepp Fukuoka

<演目>
作:ジョン・キャメロン・ミッチェル
作詞・作曲:スティーヴン・トラスク
上演台本・演出:大根仁
出演:森山未來、後藤まりこ
バンドメンバー:岩崎太整(key)、JUON[FUZZY CONTROL](gt)※東京公演のみ
MAKO−T(pf)/木島“MAX”靖夫(gt)/フルタナオキ(b)/阿部徹a.k.a.SANTA(ds)

【関連記事】ロック・ミュージカル ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ初日直前のゲネプロをレポート!

【関連動画】主演・森山未來 ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ プロモーションムービー

2012-06-01 17:05

(左から)倉持裕、三宅弘城

 昨年5月に上演され人気を博した倉持裕のコメディ作品、『鎌塚氏、放り投げる』から1年とちょっと。早くもシリーズ第2弾『鎌塚氏、すくい上げる』の上演が決定した。前回に引き続きタイトル・ロールの“鎌塚氏”=鎌塚アカシを演じるのは三宅弘城。さてさて、鎌塚氏の次なる活躍とは──?気になるその内容を、作・演出の倉持と、主演の三宅に語ってもらった。

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倉持裕×三宅弘城のタッグに気になる内容を語ってもらった!

――前作『鎌塚氏、放り投げる』は倉持さん初の本格コメディ作品だったと思いますが、やってみていかがでしたか?

倉持 すごく手応えを感じた舞台でした。おかげさまでお客さんの反応もよかったですし、作っていて鎌塚アカシというキャラクターを僕自身がすごく好きになったんです。これはちょっと1回で終わらせるのはもったいないな、と。この人で、この執事で別の話を観てみたいって思ったので…新作をやることに。

 

――三宅さんは「鎌塚氏で新作を」と聞いたときは?

三宅 わ〜!!(パチパチパチッと拍手)って(笑)。舞台で同じ役を、それも再演ではなく新作をやれるというのはあまりない経験ですし、役者として素直にうれしかったですね。

――確か、もともと倉持さんの中に「三宅さんの執事姿っていいなぁ」というのがあって生まれたのが『鎌塚氏〜』だったかと。

倉持 そうです。なぜか僕の中に「執事といえば三宅さん」というイメージがありまして…堅物、融通の利かない人っていうのがすごく似合う気がしてたんですね。しかもそれが喜劇として成立する人。前回、稽古しながら脚本を書いていたんですけど、やっぱりそれは正解だった。三宅さんにやってもらうことによって、あの役はどんどんチャーミングになっていきましたから。

三宅 アカシはとにかく「できません」って言えない人で、なんでもかんでも「できます」と引き受けてパンクする(笑)。見栄っ張りの堅物、といえばカッコイイですけど、すべてにおいて行き過ぎるというか…あんまり頭良くないというか…(笑)。ま、それなりにできる人だし自信はあるんだと思うんですけど。

倉持 自己評価が高過ぎるんでしょうね(笑)。もう少し謙虚でいればおのずと周りが褒めてくれるだろうに。

 

三宅 そうなんですよ。表立って自慢はしてないんですけど、なんか、態度で自慢している。できるのが嬉しくて隠し切れない感じがありますね(笑)。

――そこがまた彼の魅力でもあって。観客も「この人真面目なんだろうけど、ちょっと…一旦落ちついて!」と、ついつい目が離せなくなり、なんだか心を掴まれてしまうんです。愛されキャラですね。

倉持 そこはやっぱり三宅さんだからでしょうね。最初、僕の中ではアカシはもっとイヤな男のつもりでいたんです。それが、三宅さんが演じることでどんどん愛すべきキャラクターになっていった。

――彼が生きている姿を見ていることが笑いに繋がってしまう存在。

倉持 そうですね。鎌塚が一生懸命になればなるほど、悩めば悩むほど…追い込まれるほどに面白い。物語も、目的は彼をどこまで追いつめていけばいいかっていうところに集中すればいい(笑)。

三宅 フフフッ(笑)。そこはもう僕は素材として作・演出の倉持さんに委ねて、振り回されようと思います。

――今回の物語の舞台は船。海洋パニックものという噂ですが…。

倉持 壮大ですよ(笑)。まあ上流階級のお話なので設定はゴージャスなほうがいいな、ハッタリは必要だなと。あとはひらめきです。前回がお城なら次はやっぱり豪華客船あたりだろうなって。シチュエーション的にも盛り上がるだろうし。…単純ですが(笑)。

――鎌塚はお使えしている由利松家の長男・モトキ(田中圭)とその客船に乗り込む。目的は同乗している花房家の長女・センリ(満島ひかり)とモトキのお見合い。そしてセンリにはミカゲ(市川実和子)というメイドがついていて…。

倉持 センリは見合いが嫌で、船上でミカゲと入れ替わるんです。

――それがあれこれややこしい物語の発端となっていくわけですね。

倉持 今回は前作以上に恋の鞘当てが真ん中に来ると思います。すごく複雑でいくつもの恋の線がいっぱいあるので、どことどこがくっつくんだろうっていう楽しみがあります。あとは主従関係もひとつのテーマ。船内ではいくつもの主従関係が構成されていて、特に女性陣は入れ替わることで見えてくる主人の言い分や使用人の苦労とかもあって…。上の者・下の者、使うほう・使われるほう。お互いにお互いを知ることで人間として学んで成長していって終わる、というところには持って行きたい。

――センリを一人前のメイドにしようと指導する鎌塚。このふたりの関係も見どころですね。

三宅 そこもまた…彼は必要以上に思い込むばかりにうまく振る舞えないんでしょうね(笑)。惚れっぽいのに意固地。やっぱり頭、悪いんですよ(笑)。ただ今回は仕える主人が若いというところも含め、このキャスト、この人間関係、いろんな混乱の中で必然的に生まれてくる鎌塚像があると思うので、また前回とは少し違う彼の部分が出てくるのかな、と思っています。あまり「鎌塚は意固地だからこう」などと決めつけずにいたい。稽古の段階で新しいモノもいろいろできていくと思うので、そこが楽しみです。結果、さらに意固地な男になるのか(笑)、意外にふにゃっとしちゃうのか。今はまだちょっとわかりませんけど、とにかく自分は真面目にやるだけ、というか。

 

倉持 本番中に笑い声が聞こえなければそれは失敗なわけで…結果がしっかり出てしまうのがコメディ。創っていくのは楽しくもあり苦しくもあり過酷な挑戦ではあるんですけど、それだけにやりがいもある。僕が創るコメディはホントに真面目にやってもらえればいいんです。登場人物たちが真剣になればなるほど面白いっていう創りですし。今回もたくさんの恋物語を通じて笑いが生まれればいいですね。

――ラブコメの王道を行く。

倉持 好きなんですよ、ラブコメ。たぶんみんな好きですよね。なんだろう…あだち充とか。

三宅 ああーっ!そうか、そうですね。好きです。

倉持 『めぞん一刻』やウッディ・アレンの映画なんかも好きですし。ほら、恋愛モノって「この人がこの人を好きらしい」という情報を先に与えておくことで、もうなにを話してても面白いっていうのがあるでしょ?

――コトバひとつ、観るほうが勝手にわかったり、誤解したり、深読みしたり。

倉持 そういう効果もうまく使いながら、ラブコメのエッセンスを大事に入れていきたい。

――前回に引き続き堂田タヅル役の広岡由里子さん、宇佐スミキチ役の玉置孝匡さんが出演されるところにもシリーズ感があっていいですね。

倉持 ふたりはより悪役になると思います。あのー、シェイクスピアによく出てくるちょっとした道化というか、悪巧みばっかりしているような人。「へへへ、こいつらまんまと…」みたいなモノローグばっかり喋ってるヤツら、いますよね。

三宅 アハハハ

倉持 ふたりはそういう感じでいいかな、と(笑)。

 

――なるほど(笑)。恐らく現代の日本でありながらも華族制度があり執事がいるという世界観。大人の童話、という匂いも感じます。

倉持 ファンタジーの感触。もちろんそこも前回からちゃんと受け継いでいきたい要素です。鎌塚氏に関しては、毎年っていう必要はないだろうけど、僕はこの先…少なくとも3作目はやりたいと思っているし、盛り上がっていってくれたらいいな。

三宅 いいですよね。僕はもうとにかくすべてが楽しみです。あの執事の格好をするとやっぱり背筋がスッと伸びますし、共演者のみなさんとの出会いも待ち遠しいし、もちろん脚本も演出も楽しみ。いやぁ、早く稽古したいです。

――あとはなにを“すくい上げる”か、ですね。

三宅 はい、そうですね。それにしても前回もだけど今回もタイトルがステキですよね。

倉持 僕自身、続編って初めて。前回観ていないお客さんも楽しめる話には絶対するんですけど、一方で前回観てくれたから面白がれるってところも是非入れていきたいし、そのへんの塩梅もこれから書きながら固めていきたいですね。同じ主人公で違う物語ってどうなるんだろう、どういうつくり方をしていこうかと自分でも楽しみです。そして何をすくい上げるかは…書きながら一番ふさわしいものを見つけ、すくいあげられたらいいな。おしゃれに、ね(笑)。

〔取材・文/横澤由香〕
〔インタビュー写真/坂野則幸〕


公演概要

M&Oplaysプロデュース『鎌塚氏、すくい上げる』

<公演日・会場>
東京公演 8/9(木)〜8/26(日) 本多劇場
愛知公演 8/29(水)〜8/30(木) 名鉄ホール
大阪公演 9/1(土)〜9/2(日) サンケイホールブリーゼ
島根公演 9/4(火) 島根県民会館 大ホール

<キャスト&スタッフ>
作・演出:倉持裕
出演:三宅弘城/満島ひかり/田中圭/市川実和子/広岡由里子/玉置孝匡/今野浩喜(キングオブコメディ)/六角精児


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2012-05-31 15:00


浅野内匠頭墓前にて
(左より)市川亀治郎、中村獅童、市川染五郎、中村福助、尾上菊之助、尾上松緑

 新橋演舞場4月公演「四月花形歌舞伎」(4月1日初日から4月25日千穐楽)は、昼夜で、通し狂言『仮名手本忠臣蔵』を上演致します。次代を担う、今、注目の人気の花形俳優である中村福助、市川染五郎、尾上松緑、市川亀治郎、尾上菊之助、中村獅童が、それぞれ体当たりで大役、初役に挑戦する花形歌舞伎ならではの熱気溢れる話題の舞台です。当公演の出演者が、忠臣蔵にゆかりの深い泉岳寺(港区高輪)を訪れ、舞台成功祈願を開催いたしました。舞台成功祈願を行ったのは、泉岳寺境内にある浅野内匠頭の墓前。また、成功祈願に引き続いて四十七士墓所にもお参りし、公演への思い新たにしました。


花形俳優による忠臣蔵上演を記念して、
新橋演舞場ではスペシャル企画をご用意!

第一弾 「仮名手本忠臣蔵」を昼夜ご観劇のお客様四十七名様に忠臣蔵ゆかりの賞品をプレゼント!!
 昼の部、夜の部両方をご観劇頂き、劇場で筋書をお買い求め頂いたお客様から抽選で47名様に、素敵なプレゼントが当たるスペシャル企画。討入りを果たす塩冶の浪士、四十七士にちなんで47名のお客様に、忠臣蔵ゆかりの下記プレゼントが当たります。

◆プレゼント
≪い賞≫2組4名様 忠臣蔵ゆかりの地「京都・赤穂ペア旅行2泊3日」(東京発着)
≪ろ賞≫5組10名様 赤穂温泉1泊2食付きペアご宿泊券
≪は賞≫5名様 出演者直筆サイン入りブロマイドセット
≪に賞≫10名様 「四月花形歌舞伎」特大ポスター(非売品)
≪ほ賞≫25名様 忠臣蔵ゆかりの赤穂 特産品(協力:(社)赤穂観光協会)
◆応募資格
新橋演舞場「四月花形歌舞伎」昼の部・夜の部両方(別日可能)をご観劇頂き、筋書をお買い求め頂いた方。
◆応募期間
公演中(4月1日〜25日)のみ、劇場内にて受付致します。
◆応募方法
「四月花形歌舞伎」の筋書に詳しい応募方法を記載した応募用紙を添付します。応募の詳細につきましては、応募用紙をご覧下さい。
※当選の発表は賞品の発送(5月初旬予定)をもって代えさせて頂きます。


第二弾 4月17日は勝手に「四十七士の日」!新橋演舞場で“忠臣蔵祭“だワッショイ!!
 勝手ではありますが、4月17日(火)を「四十七士の日」と勝手に定めさせていただき、1日限りのお祭り騒ぎを新橋演舞場で開催します。赤穂浪士のふるさと赤穂市ともタッグを組み、当日限りの楽しいスペシャルイベントを多数ご用意して皆様のお越しをお待ちしております。

出演者からのコメント!


四十七士お墓参

中村福助
若手の皆さんと忠臣蔵ができて幸せ。良いメンバーで良いチームができそうです。忠臣蔵という大きな芝居にみんなでぶつかっていきたい。

市川染五郎
由良之助は忠臣蔵の物語の要となる人物なので、大人の芝居をしたいです。

尾上松緑
目の前に与えられた課題を、自分の中で消化していきたいと思っています。



成功祈願法要

市川亀治郎
忠臣蔵は役者にとって基本となる芝居。先輩方の教えを忠実に守って、大切に演じていきたいです。

尾上菊之助
日本人の心をとらえて離さない大切な演目なので、大事に勤めたいです。

中村獅童
大先輩が演じてきた大きな役で、それだけの歳になったのかと思う。先輩にご指導いただきたいです。

解説

 元禄14(1701)年、江戸城松の廊下で、播州赤穂藩主の浅野内匠頭が吉良上野介に刃傷に及び、浅野家は領地没収の上、お家断絶となりました。しかし、国家老の大石内蔵助を含む四十七人の浪士たちが吉良邸に討ち入りし、主君の仇を討った赤穂事件は、三百年の時を経た今もなお、語り継がれ、“忠臣蔵”として人々の心に生き続けています。歌舞伎においては、赤穂事件の四十七年後に『仮名手本忠臣蔵』が上演され、以来 人気狂言となり、数ある戯曲の中でも最多の上演回数を誇っています。
 歴代の名優たちが、父から子、子から孫へと伝承し、築き上げてきた“忠臣蔵”の舞台を、今回は、歌舞伎界の次代を担う若手花形俳優たちが、先人達によって培われた技と芸を学び、挑戦する大舞台です。これからの新しい歌舞伎を創造していく若手花形俳優たちが、歌舞伎の歴史に大きな足跡を残す公演となります!!


公演概要

四月花形歌舞伎 『仮名手本忠臣蔵』

<公演日・会場>
4/1(日)〜4/25(水) 新橋演舞場 (東京都)

<出演者>
中村福助/市川染五郎/尾上松緑/市川亀治郎/尾上菊之助/中村獅童/他

<曲目・演目>
通し狂言「仮名手本忠臣蔵」
<昼の部>
大序 鶴ヶ岡社頭兜改めの場、三段目 足利館門前進物の場、同 松の間刃傷の場、四段目 扇ヶ谷塩冶判官切腹の場、同 表門城明渡しの場、浄瑠璃 道行旅路の花聟
<夜の部>
五段目 山崎街道鉄砲渡しの場、同 二つ玉の場、六段目 与市兵衛内勘平腹切の場、七段目 祇園一力茶屋の場、十一段目 高家表門討入りの場、同 奥庭泉水の場、同 炭部屋本懐の場


2012-04-16 16:14


(左から)中島かずき、高橋克実、永作博美、藤原竜也、古田新太、いのうえひでのり

 永作博美と藤原竜也の二人をゲスト主演に迎えて送る、劇団☆新感線の新作「シレンとラギ」。このほど製作発表が行なわれ、永作、藤原、同じくゲストの高橋克実、そして劇団から脚本の中島かずき、演出のいのうえひでのり、古田新太が出席し、意気込みを語った。


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製作発表で意気込みを語った!

 劇団主宰のいのうえは、「基本的にはうちの劇団でよくやっている時代劇、国盗り物語ですが、ちょっと珍しく恋愛ものの要素も入っている。蜷川幸雄さんの秘蔵っ子である藤原竜也くんと、かわいい演技派、永作博美さんを迎えて、ドロドロとした生々しい葛藤のあるドラマをお送りします。劇団☆新感線というとチャンバラや派手な要素が期待されているけれども、そのあたりは適度に押さえつつ、新しいことに挑戦していきたい」と挨拶。

 座付き作家、中島からは、「いのうえ歌舞伎の新作でいえば『蛮幽鬼』の次にあたる作品ですが、個人的には、その中に出てくる狼蘭一族の第二弾として構想したもの。藤原さんと永作さんの出演が決まり、これまでなかったようなドラマティックなものをやってみたいといのうえから話もあって、ドロドロと異色な作品になりましたが、今書かなくてはいけないことを書いた」との言葉が。“新しいことへの挑戦”については、「うちの劇団は、もともとチャンバラやスペクタクルでお客さんを引き付けてきていたし、自分自身、そういうことが楽しくてやってきていた部分もあるけれども、2005年の『吉原御免状』あたりから、もうちょっとじっくり人間ドラマを描いていきたいという気持ちが生まれてきた。

 今回の作品でも、人間関係やドラマのシチュエーションをしっかりと、男女や親子のしがらみの中での人間ドラマを描くことに挑戦していきたい」と、いのうえ。中島は、「もともと強い人間、ぶれない人間を描くことに興味があったが、『吉原御免状』あたりから、いのうえとも話し合い、ぶれる人間を真ん中において大きなドラマを描いていくということに挑戦するようになった。今回、活劇テイストの物語の中で、今までで描いてきた中で一番弱い人間がぶれる様をお見せしたい。(タイトルロールの)シレンには、試練を含め、さまざまな意味がこめられている。東日本大震災を経ての今のこの時代に、絶望の中でどう光を見出していくか、自分としても思いを託した芝居にしたいし、そうなるんじゃないかと思う」と、決意のほどをうかがわせた。

 新感線初登場初主演となる藤原は、「不安はあるけれども皆さんに信頼を寄せています。大好きな先輩たちに囲まれ、稽古場でどんどん積み上げていっていいものをお客様に届けられたら。わからないことだらけで、新太さんにいろいろ聞いているところ。自分がどう変化していくのか、自分自身としても楽しみにやりたい」とのこと。

 1993年、ribbon時代に新感線公演「TIMESTRIP黄金丸」で初舞台を踏んだ永作は、「19年前はとにかく必死でした。当時、芝居をやりたくなかったので、なんで芝居をやらなきゃいけないんだーと、稽古場で軽く反抗的な目をしていたかも(苦笑)。ものすごくハードで、町内を十周した後、腹筋背筋百回とか、ビルの屋上の極寒の中で、最後まで風邪を引かないように頑張って。これが演劇なのか、と教えられたし、やり遂げたからこそ、最終的に、もう少しお芝居をしたいなと考えるようになったと思う。女優として開眼した舞台で、あのときいのうえさんに出会っていなかったら、違うことをやっている、違う役者になっていたかも」と思い出話を。

 いのうえがそれを受け、「確かに女優開眼の瞬間がありましたが、なぜ開眼したかは僕にもわからない(苦笑)。あのころ僕も芝居の作り方にそれほど熟練していなかったし。機会があればぜひまた出てほしいと思っていたが、最近ではびっくりするほどお芝居がうまくなって、かわいらしい中に母性と艶っぽさをもつ女優だと思います」とエールを。「竜也くんは、非常に悩んだり葛藤したり、しつこくまっすぐな青年を演じることが多い。そういう青年を新感線で描くと嘘っぽいといわれるので、竜也くんならリアリティをもって演じてくれると思う。克実さんはうちの劇団にこれまで出ていなかったのが不思議な人。非常にユーモラスなキャラクターのイメージを持たれているけれども、大人の色っぽさ、こわさや狂気も内包している方なので、そのあたりが出ればいいなと思っています」と、二人の男性ゲストについても期待のほどを語った。

 高橋は、「独裁者を演じます。(大人の色気と言われたことについて)、毛のない分、色気くらいは出さないと(笑)。顔合わせで、かっこいい、いい役ですよ〜と言われ、よけいプレッシャーが……。いのうえさん、僕も開眼させてください」と笑いを誘った。一年半ぶりに劇団公演に参加する古田からは、「お三方ともしょっちゅう一緒に飲んでいるので、劇団公演で初顔合わせという気がしない。竜也はかわいい後輩ですね。ナイーブな青年役に長けているけれども、本人もそういうところがあるのかも。今回も充分悩み苦しんでもらえればと思います。博ちゃん(永作)との共演は7、8年ぶりですが、その間に母にもなり、色っぽさが増した。克実さんは役も本人もとてもハンサムなので、とくとご覧あれ。稽古場に来ればわかりますが、いのうえさんの指示にまずは従い、アイディアを後から出していけばよく、とても敷居の低い、楽にいられる劇団だと思います。最近は劇団員も肉体訓練とかさぼってますし、博ちゃん、19年前ほどつらくないから」と、冗談とも本気ともつかぬアドバイスも飛び出していた。

〔取材・文/藤本真由(舞台評論家)〕
〔写真/平田貴章〕

公演概要

劇団☆新感線 いのうえ歌舞伎「シレンとラギ」

<キャスト&スタッフ>
作:中島かずき 演出:いのうえひでのり
出演:藤原竜也、永作博美、高橋克実、三宅弘城、北村有起哉、石橋杏奈、粟根まこと、高田聖子、橋本じゅん、古田新太 他

<公演日・会場>
東京公演:5/24(木)〜7/2(月) 青山劇場
大阪公演:4/24(火)〜5/14(月) 梅田芸術劇場 メインホール


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【関連記事】
劇団☆新感線『シレンとラギ』の東京公演開幕にあたり、主演の藤原竜也、永作博美らが囲み会見に登場!

2012-03-14 19:15

 自信家の男とひきこもりがちの青年。対照的な二人の蝶マニアは、幻の蝶“シロギフチョウ”の存在を信じていた。幻の蝶を追い求める二人の思いは、いつしか周囲をも巻き込んでゆき……。「ALWAYS 三丁目の夕日」で知られる若手脚本家、古沢良太の書き下ろし作を、多彩な活動を続ける白井晃が演出する「幻蝶」。この作品で、初共演の内野聖陽を相手に、主人公の蝶マニアの一人に扮する田中圭に、見どころを訊いた。

田中圭さんにインタビュー!

――物語と演じられるキャラクターについてお聞かせ願えますか。

 僕が演じる真一は、ひきこもりで、人との距離が近いのがこわかったり、自分を表現しようとしたりしない男の子なんです。対照的に、内野(聖陽)さんが演じられる戸塚さんが、自分を非常に前面に出してくるキャラクターで。無茶もするし、どうとでもなるみたいな感じの人で、よくしゃべるし、周りもどんどん巻き込んでいくタイプ。そういう対極的な男たちが、“シロギフチョウ”という幻の蝶の存在を信じているという一点でつながっていて、二人で蝶をつかまえに行く、そんな物語です。


――対照的な二人のうち、ご自身にどちらかというと近いと思われるのは?

 二人の中間くらい、ちょっと戸塚さんよりという感じかな。ただ、今、稽古場で、真一くんのキャラクターに入っていく作業をしているので、どんどん距離は縮まってきている感じですね。例えば映像作品なら、声が小さいとか、顔の細かい表情とか、目線の動きとかで、いかにもひきこもりっぽいお芝居をするんですが、舞台でそれをやっても後ろの方のお客さんに伝わらないと思うので、誰でもみんなもっているような感覚に置き直して表現するということをするんです。ひきこもりでなくても、人と話すのが苦手とか、人の目を見られないとか、そういうことって誰でもありますよね。そうやってどんどん感覚を例えて、自分の中のリアルに近づけていくという作業を、稽古場で今、ずっとしている最中なんです。そうすることで、自分の中で違和感が消えて、演じることに無理がなくなっていくので。


――映像作品と舞台作品での演技の捉え方の違いのお話が非常に興味深いです。

 映像作品はどうしても瞬発力が問われるところがありますよね。舞台でいえば、稽古初日みたいなところでいきなり演技しなくちゃいけないわけですから、作り上げるわけではないというか、それまでに自分自身が作ってきたものの勝負というところがあると思うんです。それまでの経験だったり、プライベートで感じたことだったり、他で作ってきたものを、そのシーンでぱっと出せるかという一瞬の勝負なわけで。
 舞台だと、もちろんそういう部分も含まれているけれども、それに加えて、一ヵ月なり、みんなで稽古場でさんざん作って深めてきたものを、本番でさらに深めていくわけですよね。長い稽古期間を取って、本もさんざん読み込み、同じところを何度も繰り返して。本番を迎えたらさらにそれを一ヵ月なりやり続けて。疲れもするけれども、すごくぜいたくですよね。充実感ということでいえば、深く潜れば潜るほど、舞台は楽しくなるんだろうなと思います。自分ではまだまだそういうところまで行っていないなと思ったりもするんですが。だから、これまでにも出演してきたけれども、舞台って難しいなと。これだけ読みこんでも、その役を100%、120%表現できるかというと、一万回やったとしても絶対そんなときは来ないと思うので。お芝居ということでは、映像も舞台も、どちらもやっていることは一緒なんですけどね。何だか不思議だなって思います。


――田中さんご自身は、この作品の主人公二人のように、何かをマニアックに追い求めたりということは?

 ないです。すごくあっさりしているというか、ま、いいか、どうにかなるでしょうというタイプなんで、何か一つのことだけしか見えなくなるということはなくて。ただ、この作品においては、追い求めているのが、実際にいる蝶ではなく、幻の蝶であるというところがポイントなんですよね。ここで出てくる蝶は何かの象徴であって、周囲が否定しているものであっても、自分を信じるしかないということ、信じてもらえるということ、信じざるを得ないということを描いた作品だと僕は思うので。常識やルールももちろん大切だし、必要だけれども、そこにとらわれないで生きることが描かれているというか。半端者だったり、社会から負け組と思われているような存在であっても、実際に本人の立場になってみると、本当にそうなんだろうかという。そういう意味で、ものすごく深いテーマを抱えた作品なんです。今の社会に対して一本、異議申し立てをしているようなところが、古沢さんの脚本には隠されていて。コメディの要素が非常に多い作品ではあるんですが、一枚めくると、非常に深いテーマが幾層にも入っている感じ。一回観ただけだと楽しく笑ってしまって終わりかねないので、ぜひ二度三度と観に来ていただきたいなと思います。


――田中さんご自身が固く信じているものは?

 一番信じているのはお風呂ですね。お風呂に入っているときのあの気持ちよさ、癒される感覚は、裏切らない(笑)。あと、寝てるときは最高だな。たまにこわい夢を見ると裏切られた感じがしますけれども(笑)。まあ、もっとも、一番信じなきゃいけないものは、自分だと思いますが。それが一番難しかったりするんですけどね。自分自身をちゃんと認識して、好きになるということをしないと結局、他のいろいろな人のことも見えないし、好きになれないと思うので、自分を信じてあげなくてはいけないけれども、それがなかなか難しいという。その上では、自分の友情にせよ、恋愛にせよ、自分の周りにいる人はどこかで自分自身の鏡なのかなという気はしますね。周りが教えてくれることってたくさんあると思うので。


――三度目となる白井演出はいかがですか。

 相変わらずだなあと思ってます(笑)。白井さんの読みって独特なんですよ。長いししつこいし、細かいし、その細かいところに意味をもたせたりするし。首の角度を五度変えてくださいとか言うから、人によってはどうして? って思ったりもするみたいなんですが、でも、僕はびっくりするくらい、白井さんの言っていることがすっと自分の中に入ってくるんですよね。事前に打ち合わせをしたとかそういうことはなく、あ、そっちの方向ねとすぐわかるので、非常にストレスなくやっています。すごく愛情のある演出家だなと思うというのは、白井さんの中で役の大小ってないんですよ。今回でいえば、戸塚と真一だけが立てばいいとか、そういう考え方は絶対しない。すごく細かい一方で、そうやって全体を見る方なので、自分としてはそこがすごく好きなんだろうなと思いますね。


――初共演の内野さんはいかがですか。

 すごく情熱的でがむしゃらで、オーラはあるけど威圧感はなくて、ずっとやさしく引っ張っていって下さる方ですね。人間としても、そして芝居も熱いのは、ハートがすごく熱いからだと思うんですけれども、だからといって体育会系の先輩みたいな感じでは決してなくて。一緒に芝居をしていて、圧倒されたり、心が通ったりする瞬間をずっと下さる先輩なので、その、心が通って気持ちのいい感覚が、一場から十五場まで、全編通して感じ続けられるようになるよう、どんどん稽古していかなくちゃいけないと思いますし、それが可能な人、可能にさせてくれる方だなと思っています。


――抱負をお聞かせください。

 まずはケラケラ笑っていただけたらなと思うんです。日常会話の中のテンポであったり、ちょっとした動きであったり、おもしろい要素がいっぱいあって、ほとんどコメディじゃんと、自分としても思うくらいなので。ぱっと見だけだと、シリアス要素はゼロという感じかな。でも、その実、深いテーマが隠されている作品なので、自分たちが今、稽古しながら、一生懸命出そうとしているものが伝わったらいいなと思いますね。笑って見ていただいて、どこか、何か、心にフックがひっかかったなと思っていただけたら、それで十分なのかなと思っています。

〔取材・文/藤本真由(舞台評論家)〕

公演概要

<キャスト&スタッフ>
脚本:古沢良太 演出:白井晃 出演:内野聖陽/田中圭/七瀬なつみ/中別府葵/細見大輔/大谷亮介


<公演日程>
3/12(月)〜4/4(水) シアタークリエ (東京都)
4/10(火) 広島アステールプラザ大ホール (広島県)
4/12(木)〜4/15(日) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール (兵庫県)
4/19(木) りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 劇場 (新潟県)
4/22(日) キャナルシティ劇場 (福岡県)
4/25(水) 仙台市民会館 大ホール (宮城県)
4/28(土) まつもと市民芸術館 主ホール (長野県)


【関連動画】『幻蝶』出演・脚本・演出のみなさんからコメントが到着!
内野聖陽さん田中圭さん脚本・古沢良太さん演出・白井晃さん

2012-03-02 15:38

 二月初めの女優・広岡由里子とのユニット「オリガト・プラスティコ」公演で、福田恆存の昭和27年の戯曲「龍を撫でた男」を演出、現代にあざやかに甦らせる手腕を示すなど、2012年も精力的な活躍を続けるケラリーノ・サンドロヴィッチ。自身が主宰する「ナイロン100℃」に二年ぶりに書き下ろす「百年の秘密」では、二人の女性の少女時代から死んだ後の時代までを“点”でたどり、彼女たちのひとえに友情ともつかぬ複雑な関係性を描く意欲作に挑む。その心境を直撃した。


インタビュー

――劇団には久方ぶりの書き下ろしとなりますね。

 昨年の「黒い十人の女」も、映画作品をベースにしながらも、結局半分くらいは脚本を書きましたが、純粋な書き下ろしとなると二年ぶりですね。昔は劇団のために年に五本新作を書き下ろしていたこともありましたけれども、最近は二年に一本、あるいは三年で二本というペースかな。
 ナイロンは、僕にとっては特別なんです。メインというか、もし何か一つ取って後はやめなきゃならなくなったとしたら、やっぱり今回もナイロンを取ると思う。そういう意味ではすごく気合が入ってますね。何よりもまず、自分にとって納得のいくものを創っていきたいと思いますし。

――「特別」な理由とは?

 劇団というものは、なにものにも束縛されずにもの創りできるという意味で、すごく特殊な場だと思うんです。スタッフの方はもちろん仕事という意味合いもあるけれども、少なくとも、僕と役者に関していえば、結果的に何がしかのお金をもらうにしても、それが最終的な目的ではない。最初の頃なんて、お金を払ってまでやっていたわけで。ものを一緒に創ることだけ考えてやっていけるのは劇団だけだと思うんです。みんなで同じ方向を向いて、いい作品を創りたいという共通の思いで取り組んでいくことが何よりもまず大切。それができないやつはやめろということですから。

――そうやって一緒にやっていく上で大切にされている個々の資質とは?

 僕の創るものってかなり偏っていると思うんです。役者個々の資質はバラバラですけど、僕の創るものを面白がれる人だけが残ってるんだと思う。もちろん、何本も一緒に創ってきた中では、いろいろなことがあった。愛憎相俟って、互いに決しておもしろがるだけじゃないというか。そういう意味では、僕も役者も常に気を張って、たるまずにやらないとすぐにバレるなと。それくらい、劇団というのは緊張する場でもありますね。

――KERAさんのおっしゃる「いい役者」とは?

 お芝居は一人でやるものではないと僕は思っているので、作品のこと、共演者のこと、スタッフのこと、すべてを総合的に考えて舞台に立つことができる役者がまず、僕にとっての「いい役者」ですね。自分だけ目立とうという感じの人が、名優と呼ばれる方の中にもいっぱいいると思うんです。でも、自分だけ目立てば全体はどうなってもいいものなのか。作品のことを考えて、相対的に、ここではこの人を目立たせて自分は引っ込んだ方がいいとか、そのあたりをきちんと理解してくれる役者。あとは、デリケートなニュアンスを感じて、それを表現してくれる人ですね。様式美をこなすすばらしさもあると思うし、できるにこしたことはないんですが、それは僕の芝居においては副次的で構わない。

――そんな仲間と創り上げる新作の構想をお聞かせ願えますか。

 二人の女性の、十代から、二人が死んだ後、残された人々の時代までを描きたいと思っています。もともと、今世紀に入ったころからずっとやりたいなと考えていた題材なんですが、長い年月を、線ではなく、点で描けないかと。男性同士の友情物語となると、例えばアメリカン・ニュー・シネマの名作といわれる中に、「スケアクロウ」であるとか、「真夜中のカーボーイ」であるとか、僕も大好きな作品がいっぱいありますけれども、自分が書くとなると、男のロマンというか、そういったものを描くのが、気恥ずかしいんですかね、あんまり好きじゃないんですよ。自分としては、女同士にした方が、不可解でおもしろくなるんじゃないかなと思って。ただ、友情といっても、情に大きく傾けるのではなく、エゴや自然の摂理にも左右されてゆくデリケートな関係を描きたいと思っています。
 その長い年月を描く上で、時系列に沿うのか、時間を逆行させるのか、それともバラバラに見せるのか、その辺を今練っていて。ユージン・オニールやアーサー・ミラーに見られる手法ですけれども、例えばミラーの「転落の後で」なんて完全にコラージュなんですよ。抽象的な舞台の中で、死んだ母親が普通に通り過ぎていったり。「セールスマンの死」にしても、過去の幸せだった家庭が幻出したりするわけで、ある意味、現代の演劇にとっては当たり前となった手法ではあるんですが、改めて深く考えた上で、演劇的フラッシュバックの決定版をやってみたい。後は、劇団では「わが闇」以降取り組んでいる映像のさまざまな効果をどう生かすか。映像の上田(大樹)くんのテリトリーではあるんですが、本多劇場で六日間という、劇団としては最長の仕込み期間を取って、テクニカルなリハーサルを綿密にやって、芝居とからめた、より効果的な映像演出ができたらいいなと考えています。

――劇団のメンバーに加え、客演者も加わってのキャスティングとなりました。

 中心となる二人の女性を演じる犬山(イヌコ)と峯村(リエ)は、もう30年近く一緒にやってきて、演劇界で一番信頼している二人なので、危惧はまったくないんですが、今回はグンとハードルを上げてみたいですね。真ん中って、出番が多いとかということではなくて、大変だと思うんですよ。役柄上、今回もあまり突飛なことが出来ない。周りにいる人の方がいろいろ遊べるので、松永(玲子)とか村岡(希美)あたり、様々な策を練って打ち出してくる。ヘビーな話なので、役や作品に入り過ぎて普段の生活までしんどくならないよう、気持ちを切り替えて過ごしてほしいなと願っています。
 客演の(萩原)聖人と一緒にやるのは三本目なんですが、もっと一緒にやっているような感覚ですね。山西(惇)さんはオールラウンドな俳優さんで、昨年の「奥様お尻をどうぞ」でさんざんくだらないことをやっていただいたので、今回は真逆なことをやっていただこうと。近藤(フク)は昔KERA・MAPの「ヤング・マーブル・ジャイアンツ」で全裸にしましたが、その後「ペンギンプルペイルパイルズ」でもまれて随分成長したなと。田島(ゆみか)さんはオーディションで選んだんですが、岩松了さんの「羊と兵隊」に出ていたのが印象深かった人です。

――公演ちらしに踊る「覚悟して頂きたい。」の意は?

 今回、笑いがないですからね。今年、少し笑いから離れようと思っているんです。「龍を撫でた男」もド喜劇ではなかったけれど、ギャグがないのがいいと評してくださった方もいらしたし。何かちょっと、笑いに飽きちゃったんですよね。昨年、「奥様お尻をどうぞ」と「ノーアート・ノーライフ」の再演をやって、もうしばらくいいんじゃないかと。笑いがあった方がお客さんは安心するかもしれない。大倉(孝二)が出てきたら何かおもしろいことやるんじゃないかとか。申し訳ないようだけど今回、大倉には多分一つも笑いをとらせない。
 今年は笑いを武器にしない方法で、自分の気持ちに沿った題材をやりたいと思うんです。もちろん、笑いも一生ずっとやっていくとは思うんですけど、笑いを主題にするとこぼれおちてしまうものもある。そういうものをやっていく時期があってもいいんじゃないかなと思うんです。
 30代前半くらいまでは、年に五本とか六本とか、勢いでできていた部分もあった。でも、40をすぎて一作一作、常に新鮮に、クオリティを上げていこうと考えるようになってからは、自ずと寡作になっていきました。と言っても他の人よりは多作ですけどね。それでも丁寧に、ともかく自分が納得いくものだけを妥協せずに発表していきたい。ナイロンでも、あと何本できるかわからないですから。昔はお風呂に入っていても寝ていても、どこででも構想が浮かんだ。でも、キャッチーなアイディアみたいなことでいえば、もはややりつくした感があって。今は、四苦八苦ですね。もっとコアな部分で、「普通の人間をどう描くか」ということに深く興味をもってしまったんですね。そうすると、芝居としてもオーソドックスなものになっていかざるを得ない。
 ここ三、四年、ホントに厳しいし、しんどいんです。公演の一週間前くらいになると、自分がなんでこんなに苦しい思いまでしてやっているのか、わからなくなってくる。幕が開いて、初日は役者以上にドキドキしながら観てる。もっとも二日目には、昨日あんな気持ちで観ていたことが嘘のように安心してるんですけどね(笑)。それでだんだん、舞台が役者のものになっていくと、つまはじきになったみたいで、今度はなんかつまんなくなっていっちゃうんですけどね(苦笑)。


〔取材・文=藤本真由(舞台評論家)〕
〔インタビュー写真=渡辺マコト〕

公演概要

NYLON100℃ 38th SESSION 『百年の秘密』

<キャスト&スタッフ>
作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ
出演:犬山イヌコ、峯村リエ、みのすけ、大倉孝二、松永玲子、村岡希美、長田奈麻、廣川三憲、安澤千草、藤田秀世、水野小論、猪俣三四郎、小園茉奈、木乃江祐希、伊与勢我無、萩原聖人、近藤フク、田島ゆみか、山西惇

<公演日程>
2012/4/22(日)〜5/20(日) 本多劇場 (東京都)


2012-02-24 22:05


(左から)吉川晃司、上川隆也

 1月19日、舞台『陽だまりの樹』制作記者会見が開かれた。ダブル主演となる上川隆也、吉川晃司、脚本・演出を 担当する樫田正剛らが舞台に向けての意気込みなどを語った。


制作記者会見の様子をご紹介!

 今回制作発表がされたのは漫画家、手恷。虫の長編歴史漫画の代表作として知られる『陽だまりの樹』の舞台版。 幕末の日本において、太平の世の中でいつのまにか内部が腐ってしまった徳川幕府を象徴する物として「陽だまりの樹 」と呼んだ言葉を作品のタイトルとしている。この混沌として変わり目となる時代背景のなか、友情で結ばれている対 照的な二人の主人公、医者の手恬ヌ庵(上川隆也)と武士の伊武谷万二郎(吉川晃司)が、それぞれの果たすべき役割を全 うし精一杯生き抜く姿を描いていく。

この時代の徳川幕府の政治に対する怒りや、開国、自然災害などの際立った状況の変化は、現代にも通じるところがあ り、この舞台『陽だまりの樹』を通して問題提起され、二人の生き様を通して伝えられる「現代に生きる私達へのメッ セージ」に期待が膨らむ。

また、普段は質実剛健な役が多い上川だが、今回は軟派な遊び人の役どころ。無骨で真面目な男を演じる吉川は初めて のストレートプレイとなる。この会見で初めて出会った二人が、どのような化学反応を起こすのか楽しみでならない。

脚本・演出を担当する樫田は、「男くさい舞台になるのではないでしょうか。大作を脚本に落とし込むことに苦労を感 じながらも、とても楽しんでいます。幕府のまつりごとへの怒りが現代の政治への怒りと相通ずるとろこがあり、原作 がすっと入ってきました。出演者の二人にはぜひ吠えて欲しいです。」とコメント。

今回いつもと違った役どころを演じる上川は、「このような軟派な役がらはあまりやったことがないので、新鮮な気持 ちでお受けしましたし、とても楽しみにしています。殺陣もありませんし、体力的にも大丈夫。より良庵の人となりを 考えて向き合いたいと思います。手塚さんは作品に対してとても情熱的な人です。そのような作品に役者がいかに真剣 に向き合うかが重要だと思っています。」とひたむきに取組む意気込みが伝わる内容のコメント。共演する吉川に対し ては、「この舞台を通して同い年の吉川さんと時間を共有できることがとても嬉しいです。同じ時代を生きてきた吉川 さんがどのように役に向き合うかを間近で拝見することを楽しみたいです。音楽をやってこられた吉川さんと、役者し かやってこなかった自分の異文化交流によって、共通した部分と異なる部分からのハイブリット感が出るといいと思っ ています。」と語った。

幕府に尽くす義に熱い武士を演じる吉川は、「ストレートプレイは初めてなので、小細工するのではなく、ひたすら無 心で真っ白なキャンバスになったつもりで臨みたいです。ミュージカルは一度やらせていただいたことはあるのですが 、そこで覚えた感覚は少し使えるのかなと思っています。コンサートはお客さんとのやりとりで構築していくものなの で、そこは演劇にも通じるものがあると思います。」とコメント。また、「キャリアを積むと緊張と戯れることが出来 るようになるんですが、今回は初めてなので戯れ方がわからないんです。年を重ねると”自分が驚く自分に会える”と いうことが無いので、楽しむまでの余裕は無いですが、それを経験できることは刺激的でいいことだと思います。」と 正直で前向きな気持ちを語った。

これまでキャリアを積んできた舞台は異なるが、とことん”ライブ”にこだわってきた両者がリスペクトしあい、そし てお互いに刺激を受けながら作りあげるステージが楽しみでならない。

公演概要

『陽だまりの樹』

<公演日・会場>
4/13(金)〜12/4/23(月) サンシャイン劇場 (東京都)
5/4(金・祝)〜5/20(日) 新歌舞伎座 (大阪府)

<発売日程>
先着先行受付:1/27(金)18:00〜1/28(土)9:00(東京)
一般発売:1/28(土)10:00〜

<キャスト&スタッフ>
原作:手塚治虫 脚本/演出:樫田正剛
出演:上川隆也、吉川晃司
岡本健一、高野志穂、花影アリス/石倉三郎
瀬下尚人、岡森諦、小林十市、斉藤レイ、伊藤高史、長谷川純、
加藤照男、本郷弦、大村美樹、小野健太郎、勝信、田実陽子、
湯田昌次、鈴木健介、木村優希、岸本康太 ほか


2012-01-27 11:43


(左から)生瀬勝久、明石家さんま

 主演・明石家さんま×脚本&出演・生瀬勝久×演出・水田伸生のトリオで贈る「PRESS〜プレス〜」。2000年の「七人ぐらいの兵士」を皮切りに、「JOKER」(2004)、「小鹿物語」(2006年)、「ワルシャワの鼻」(2009年)とトリオで手がけてきた舞台も、今回で第5弾となる。明石家さんまの魅力と個性は、今回、劇場の場においていかなる新展開を見せるのか。三人を直撃した。



――今回がシリーズ第5弾となりますが、当初からここまで続く予定だったのでしょうか。

さんま まったくなかったですね、ホントに。僕の場合、1回どころか0回で終わるはずだったのが、はめられた、だまされたいうのが、5回を迎えてしまった感じで(笑)。舞台の皆様方、スタッフや演者との出会いがあって、じゃあもう一回やろうか、と続いてきた感じですね。生瀬くんがホン書くゆうとるし、シアターコクーンも押さえてるというのがわかったし、2月の舞台が12月までにホンが上がらなかったら困るんやけど、でもここで俺が断ったらどうなる? という、そういう追い込まれ方を毎回しています(笑)。

生瀬 いや、もうその通りです(苦笑)。僕がさんまさんだったら降りてます(苦笑)。わかってはいるんです(苦笑)。が、脚本書く手が進まんのです(苦笑)。自分にとって、さんまさんとの舞台とはものすごい財産ですし、ギリギリまで悩んで何とかやらせていただければと。今も顔を見られないんですけど(苦笑)。

さんま (笑)いや、それがね、三日前にさすがに聞いたんですよ。もうすぐオーストラリアに行ってまうから、向こうでホンを夜な夜な読んで、自分のできる範囲でやっておきたいんだけれども、どうなってるんやと。そしたら、いや、今もう生瀬が徹夜で書いてます聞いたんやけど、先日、5、6時間かかるスペシャル番組の収録があって、スタジオに行ったら、生瀬が審査委員長で座ってて(笑)。

生瀬 (苦笑)とにかく、台本をよりよいものにするためにも、さんまさんのことを何かもっと知りたくて、最近のさんまさんはどうかな、と思いまして。いや、あれから筆がすごく進んで、参加してよかった(苦笑)。

さんま 出てきましてすんません、みたいな顔して座っとって、審査委員長の顔やなくて(笑)。

生瀬 収録終わって、さんまさんがエレベーター乗るのに、同乗できなくて(苦笑)。

さんま ぬっくん(温水洋一)とこないだ飲みに行ったら、「何やるんですか?」って(笑)。「何かおもしろいことやるんとちゃう?」って答えといたけど。いつも、ぬっくんとか山西(惇)とか八十田(勇一)とかとワンコーナーやるんですけど、そこに賭けるしかないかと。ま、万が一もしホンが上がらなくても、二時間半、わしらのトークで持つんじゃないかと、そういう自信もあるんで(笑)。とにかく遅い作家です。これまでやった中では鎌田敏夫(「男女七人夏物語」)より遅いですわ。

生瀬 わ、すごい人の名が(苦笑)。

水田 目標はすでに、さんま師匠の還暦興行にあるので。その壮大な目標のためにも、何とか生瀬さん、ホンよろしくお願いします(笑)。

さんま 60っていうのはホントに節目やからね。テレビ的にも去ろうかとか、舞台どうしようかとか、体力的なこともあろうしとか、いろいろ考えるんですけど。60になってみないとわからないところもありますけどね。まあ、変わらずやっているように思うんですけれども、日本人は何か好きやからね、還暦。そのときまで続いてれば第6弾になってるんだけれども、そうしたら今度は数が中途半端やからって、10回まで続けようとかね。そのときにはもう70やから、無理かもしれないけど(笑)。

――生瀬さんにとってさんまさんとの舞台が“財産”だという意味は?

生瀬 役者さんなんですけど、ライブをやって来られた方なので、僕らがやっている演劇とはまた違ったタイプのアクターだと思うんですよね。脚本上、僕が書いた部分ではない箇所のお客さんとの生のやりとりを日々瞬時に作られる方で、僕はもちろん台本を書くんですけれども、それは下書きであって、僕の作品がどう生きるかも、さんまさんの立ち振る舞いにかかっているわけで。さんまさんのそんなプレイングマネージャー的なところが、一緒に舞台に立っている自分としても、度胸がつくし、勉強にもなる。それは絶対他では味わえないことだし、こういうことをやっている演劇人は他にはいないと思うので。

さんま とにかく僕に合わせて書いてくれてますから、次はさんまのここを出したいとか、ここを見せたいとか、そういうので書いてくれてるんで。わざと僕を窮屈にするために、時代設定を古くしてみたりとか、その窮屈の中ではじけようとするこちら側がいるわけで、そこはもう、闘いですよね。まあ、テレビスタジオを戦場だと言っているのは僕だけらしくて、所(ジョージ)さんなんて、平和なところだよ、って言ってるらしいんですけど(笑)。そっちがこう来たらこっちはこうしようって、そういう闘いに持って行ってますね、僕は。


――今回はどんな雰囲気の作品になりそうですか。

生瀬 これまで、戦争ものであったりとか、戦後すぐの時代であったりとか、人の生き死にとかっていうことがテーマにあったんですけれども、今回は僕自身のチャレンジとして、もうちょっとライトな感じの設定にしたんです。大人のライトコメディになると思うんですが、それをさんまさんにどう演じていただけるのかなというのがあって。今まではかっこいいさんまさんというのがテーマとしてあったんですけれども、今度はもっとずるいさんまさんを見てみたいなと。だから今回、書くのがものすごく大変なんですけど(苦笑)。

水田 すごい言い訳ですね(笑)。

生瀬 いや、言い訳やないんですけど(苦笑)。

さんま まだまとまってないんやなと(笑)。監督(水田さん)は、シアターコクーンを意識しないでやれって言うんやけど、やる方としてはコクーンやっぱり意識するからね。例えば今回ワンセットで行こうっていうのが今のところあるんやけれども、それでコクーンのお客さんは満足するんやろうかとか。そのあたりは稽古しながら、ここはもっとこうした方がお客さんは驚くんやないやろかとか、そういったアイディアが生まれていけばいいなと思いますけれども。昔やった「恋のバカンス」っていうドラマ、僕の周りにも結構ファンがいてね。あちこち女作って楽しく暮らしていくという男をいかにやらしく見せないか、演じていてけっこう難しくて。日常だったらあんなにうまいこといかないからね(笑)。でも、やっていて非常にやりがいのある役どころで、そのとき水田さんが演出で、生瀬くんと初めて共演して。昨日の女とはどうなったっていうのを、階段歩きながらワンカットでぐわーっとしゃべる、誰もほめてくれたこともないんですけど、今見てもすごいシーンだなと思うんです。それをできたということは、それだけ僕のことをわかってくれてたんやなと。

生瀬 もうずっと、さんまさんの才能に憧れ続けてきてますから、僕は。今だって二人きりになるの絶対嫌なんですよ。何話していいかわからない。バラエティ番組に出演しても、あ、さんまさんやって思ってしまって、マックスで力出せないところがある。とにかく、こわいんです。対等になれるのは、お芝居のときだけ。このカンパニーの舞台上でだけ、唯一ぶつかることができる。でも、歳を取っていくと、そういうこわい存在の人ってだんだんいなくなってくるからな…とも思うんですよね。

水田 僕にとって師匠は、テレビであれ舞台であれ、とにかく何でもいいから、一日でも長く、一回でも多く、一緒に仕事したい、そんな存在ですね。

さんま 監督は、テレビ出身ながら舞台を非常によく勉強しているというか、何か新しいことをしかけていこうというこだわりが非常にあるなと。失敗を恐れるより、チャレンジを恐れる方がよくないと思うからね。

水田 今回も、相武(紗季)さん、音尾(琢真)さん、中尾(明慶)くんと新たなキャストがいますので、その方たちも取り込んでいけば、自ずと新しいものが生まれていくんじゃないかなと。

さんま 新しい人とやらせていただくと、新鮮な空気を味わえるところがあるからね。参加してよかったとちょっとでも思ってもらえるようになったらええなと。前に「JOKER」で小栗(旬)くんが出て、がんばってくれたんやけど、その後僕に会ってもそのときの話とか、また一緒にやりたいですねとかいう話、一切しないからね。ま、今の小栗旬からは考えられない、舞台上でほぼ素っ裸状態にさせてしまったわけやから。(笑)


――お笑いと舞台との相違点はどんなところにあるのでしょうか。

さんま 僕は、コントとドラマと舞台、全部違うと思ってやってますね。そんな中で、自分の軸はぶれないようにと思っていて。テレビは、ドラマもバラエティも、自分が出る以上はひとくくりでやってるんですけれども。前にやったコントを、舞台で演劇の役者の方と一緒にやると、違った味わいが生まれてまったく違う仕上がりになる、そんなおもしろさがあるんですよね。コントだと、自分の素に戻らなあかん瞬間ってあるんですわ。役者の方だとそこまでも演じようとするからね、そんな違いがあったりするし。コントはチャンチャンで終われるけれども、芝居は続いていくわけだから、そのあたりのもって行き方も違ってくるし。

――今回の舞台はスポーツ新聞社ということですが、スポーツ新聞というと、これまで追われる立場だったのが、今回は追う立場を演じることになるわけですね。

さんま 昔、エレベーターに乗ってるところを、スポーツ新聞の人にカメラ向けられたことがあってね。後ずさりしながら撮ってて、転んだんですわ。で、大丈夫ですか?って手を出したら、その、大丈夫ですか?って顔をパシャパシャ撮ってね、紙面に使って。なんちゅう根性でやってるんやって思いましたけどね(苦笑)。その同じスポーツ新聞がね、僕が結婚するときに、「これがしのぶこいのあかしや」って見出しをつけてね。おお、こいつはやられたと思いましたね。迷惑かけられたり、そうやって思わずほめてしまったり、いろいろありましたけれども、そのあたりの思いを演じるということをしっかりやっていきたいですね。

――シアターコクーンを意識されるというのは?

さんま やっぱり、いつもシェイクスピアとかそういった芝居をやっているというイメージが強いところやからね。コクーンでやらせていただけるということで、場所柄、お客さんを意識するところがあるというか。最初にやったときかな、コクーンのスタッフも、こんな軽い芝居うちで初めて見ましたゆうて。

水田 今回も、リニューアルして最初の作品が蜷川(幸雄)さん演出の「下谷万年町物語」で、その次の上演ですからね。

さんま だから、何がコクーンじゃ!と(笑)、なめてかかったものをやっていきたいなと思いますね。

〔取材・文/藤本真由(舞台評論家)〕
〔インタビュー写真/平田貴章〕

公演概要

PRESS〜プレス〜

<公演日・会場>
2/17(金)〜3/4(日) Bunkamuraシアターコクーン (東京都)

<キャスト&スタッフ>
出演:明石家さんま、生瀬勝久、相武紗季、中尾明慶、丸山智己、音尾琢真、
    山西惇、温水洋一、八十田勇一、新谷真弓、小松利昌、大河内浩
作:生瀬勝久 演出:水田伸生


2012-01-24 16:54


(左から)マギー、福田雄一

 バラエティー番組の放送作家として、計算された笑い=コントを多く生み出し続け、 ドラマ『勇者ヨシヒコと魔王の城』『プロゴルファー花』『33分探偵』やオリジナルビデオ 『3名様』シリーズの監督・脚本を勤め、『SMAP×SMAP』構成、映画『逆境ナイン』脚本など、 自ら主催する劇団『ブラボーカンパニー』においても笑いにこだわった舞台を展開している福田雄一。
 ジョビジョバのリーダーとして「ライブでの笑い」を追求し、活動休止後もドラマ『こちら葛飾区亀有公園前派出所』 脚本や舞台『大人は、かく戦えり』演出など多方面で活躍。また、脚本・演出を手掛けた『おじさんスケッチ1・2』では、 コント番組としては初のギャラクシー賞月間賞獲得の快挙を得るなど、計算された笑い=コントへのアプローチを展開しているマギー。
 タッグを組んだ、シス・カンパニー公演「バンデラスと憂鬱な珈琲」では世田谷パブリックシアター1ヶ月公演をも無事に満員御礼で終了。 2012年1月にはついに日本初上陸を果たす「モンティ・パイソンのスパマロット」も控えている、そんな二人が結成したユニット、 それが『U−1グランプリ』。
 福田雄一とマギーに、『U-1グランプリ』について、お話を伺いました。
 

インタビュー

――まず、お二人がこのユニットで、コントをやることになったいきさつから、お話し願えますか。

マギー 実はそこについて福田さんと話し合った記憶がないんです。もう最初から組むとなったらコントをやることになっていた。たぶん僕らにとって、条件に縛られずに面白いことをやれる、最短距離のところにあるのがコントなんじゃないかと思うんですよ。

福田 面白いけどドラマや舞台にならなくて、捨ててしまうアイディアってあるんです。でもコントだったらそういうアイディアも形にすることができる。ずば抜けて面白いんだけど、これは4、5分しか持たないぞというようなものでも…(笑)。

マギー それをそのまま4、5分でやればいいじゃん、と。打ち合わせのファミレスでは、僕と福田さんがもう二人にしかわからないようなことを話して、笑っていたりするわけじゃないですか。そこでの面白さをほぼ、そのままの形でボン! とお見せできるのが、コントの素晴らしいところなんです。器の形にアイディアが縛られないんですよ。

――U-1グランプリでは、ワンシチュエーションでコントが展開されていきますね。

福田 このユニットをやる上では、このフレームを発明したのが大きかったですね。ワンシチュエーションでどれだけコントを作れるかというパッケージが、台本を書くときの指針にもなったし。ただなんでもありでコントをやっていたら、ちょっと難しいことになっていたかもしれない。ただU-1グランプリは、それ以外には縛りがないから、僕にとってはほぼ自由創作の場ですね。もちろん出演する役者さんが輝くことは第一に考えますけど、まあ本当に…、自分の劇団でもテレビでも絶対書かないような台本を書いては、マギーに託しているような感じで(笑)。

マギー 自由という部分に関しては僕もまったく同じ感覚なんです。付け加えるなら、僕の場合はさらにマギーという役者に、自分の書いた台本を託すことができる場所でもある。台本の足りない部分を演出家として補い、さらに演出の足りない部分を役者として補うこともできる場所。それができるのは今の活動のフィールドでは、U-1グランプリだけですね。

――シチュエーションとしてはこれまでに、取調室、厨房、職員室が登場していますが、今回は一転、宇宙船になりました。

福田 ファンタジーな場所を舞台に設定すると、わりとリアルな感じのコントができるという傾向があるんですね。逆にふだんの生活の中にある場所を舞台にするとファンタジーなコントになったりする。それで今回は人間のリアルなキャラクターで遊ぶコントのほうが面白いんじゃないかと思ったんですよ。それで日常的な場所からポンと飛んで宇宙船を舞台を設定にしてみました。だから今回、僕が書くコントはしみったれたものが多いんじゃないかと予想しているんですけど(笑)。

マギー (笑)。まあ、別段宇宙船で話すことでもないじゃない、という方向性もあるだろうし、いわゆる『スタートレック』のような、SFのパロディの方向にいっても、パッケージ感がはっきりしていて面白いですよね。だからこの設定には、ちょっと今までにないことができそうなワクワク感を感じています。

――そして今回も、お二人の笑いに対するこだわりが伺えるキャスティングですね。

マギー 池谷(のぶえ)さんは、もう安心して4番を任せられる人ですから。この人が4番にいることで安定した座組を作ることができる。なかなかこういう女優さんっていないですよね。

福田 優秀な役者さんはみんなそうなんですけど、池谷さんも自分がどう見たら面白いかがわかっている方なんですよ。『勇者ヨシヒコと魔王の城』(TX)でご一緒したときに、それをすごく感じたな。

マギー 笑いの必殺技を持ってるからね、池谷さんは(笑)。あと、池谷さんとご一緒したときに、本読みの段階から芝居の完成度が高いのを見て、びっくりしたことがありましたね。本読みなのにもうキャラクターができあがってる! って。

福田 まいまい(高橋真唯)は『プロゴルファー花』(NTV)でご一緒して、笑いに対してうずうずしている人だなと思っていたんです。そのときはさほど笑いをとるような役ではなかったんだけど、場面的にちょっとでもチャンスがあったらぶっ込んでくる。だからその意気買うよ! と思っていて。今度はもっとがっつり笑いができる仕事でという話をしていたら、今回のU-1グランプリでご一緒できることになって。

マギー U-1グランプリではキャスティングに関しても互いに半分ずつ一緒にやりたい人を挙げて協議するんですけど、互いの人選には全幅の信頼を置いていて。今までも違うと思ったことが一度もないんです。だから高橋さんとは、チラシの撮影で初めてお会いしてお話してたんですけど、どういう台本を書けば面白くなるのか、すごくイメージをかき立ててくれる人でした。

福田 そしてジューシーズなんですけど、やっぱり座組の中に芸人さんがいると、舞台での笑いの跳ね方が別物になるんですよ。

マギー あれは独特ですよね。あと、彼らを見ていると、自分たちが面白がっているものに対するピュアさが伝わってくるし、ふりの芝居とかもすごく上手で。そしてやっぱり三人ともかわいいじゃない。

福田 だから今回の宇宙船というパッケージに合うと思ったんだよね。パッと見で面白そうというところも設定にはまると思ったし。そして僕はやっぱり坂田とやれることが、ジョビジョバのファンとしては一番の楽しみで(笑)。

マギー 解散したバンドが久しぶりに再結成することってあるじゃないですか。そういうときにインタビューで「やっぱり出す音がしっくりくるんだよね」みたいなことを言ってるのを見て、そんなことってあるのかとずっと疑問に思っていたんですよ。でもこの間、隣に坂田がいる状態でコメント映像を収録したんだけど、なんだかマギーという人が坂田が隣にいることに、しっくり来ている感じがあった。

福田 (笑)。

マギー 気持ち的にもしっくりきているけど、俺の存在的にもしっくりきてるぞ、みたいな(笑)。たかだか10年間ではありますけど、一緒にやってきた同士というのがあるんでしょうね。まあ、これまでの出演メンバーと同じで、今の活動を見ていて一緒にやりたいと思ったんですよ。 だから久しぶりに坂田と共演できることを、単純に楽しみにしています。

――では最後に意気込みなどがありましたら、一言いただけますでしょうか。

マギー そうですね…、最近の劇場にはツイッターやブログのレビューを見て、その答え合わせをしに来ているような人が多いんですよね。レビューの通りだったかどうか、確認だけをしに来るような。

福田 あれってなにが楽しいんだろうと思うよね。

マギー そしてそういうものが普及したせいなのか、一人でいらっしゃるお客様が多いんです。昔だったら、友達を誘って観に行ったら、逆に誘われた友達のほうがはまった、みたいなことが、もっとあったんですよ。でも今はわずらわしいから、一人で行って感想はツイッターにつぶやくのがストレスがなくていい、という世の中ではございますが。どうか、われわれがやっているものは、無理してでも友達を誘っていただいて…。

福田 誘っていただいて、観たあとにはお酒でも飲みながらあれは面白かった、あるいは面白くなかったと言い合っていただければ。

マギー 誘った友達には、「ありがとう誘ってくれて」と言ってもらえるものにしますのでね。ぜひお友達を誘って、一緒にお越しいただけたらと思います。


【関連動画】U-1グランプリ case04「宇宙船」マギーさん、福田雄一さんメッセージ!

2011-12-26 13:04

■舞台『パレード』&『豆之坂書店〜読みたがりたちの読書会〜』お得なセット券を好評発売中!


 映画にもなった全米ベストセラー小説『ジェイン・オースティンの読書会』からも窺い知れるように、ここ数年、彼の国アメリカでは読書会が大流行、その波はひたひたと此の国にも寄せて来ているとか。
 読書という行為において、おそらく今、孤独な快楽という側面よりも、皆で共有されるべき知的なエンタテインメントとしての側面のほうが、輝いているということなのでしょう。
 一冊の書物にも読む人によりそれぞれの違った読み方が存在する。読書会でそれらが語り合われることは、様々な人生が交わること。そこから共感や違和感、驚愕や愛憎の絡まりあうドラマが生まれる…。読書会の醍醐味とは、かくも“劇的”なるものなんです。  ならばいっそ、それを“劇”として楽しめるはずだよね、ということで、企画されたユニークな舞台が12月に天王洲 銀河劇場で上演される『豆之坂書店〜読みたがりたちの読書会〜』。朗読の魅力と、芝居の面白さが一挙両得できちゃいます。
 主演は、某TV番組でも深みある読書家ぶりを披瀝してやまない谷原章介。こだわりの書店主という、彼にピッタリの役を演じます。これに、ラーメンズの片桐仁、ナイロン100℃の村岡希美、ミュージカル等で活躍する高畑充希、海賊戦隊ゴーカイジャーの小澤亮太、小林賢太郎作品でおなじみ久ヶ沢徹ら、個性の強い顔ぶれが絡みます。
 リーディングに取り上げられる本が、ジュンク堂書店の達人店員によってセレクトされるという趣向も、本好きには心ニクイ。さらに、そんな舞台の作・演出を務めるのが、いま各方面から引っ張りだこの人気者、福原充則(ピチチ5)というのも頼もしい。
根は肉体派の福原だけに、本を読むという平板な行為をどう豊かに肉化して見せるのか期待感が高まります。


 さて、今回はこれで終わりではありません。本の肉化、小説の身体化というテーマを見出した私たちは、同じ天王洲 銀河劇場で1月に上演される『パレード』という舞台にも注目しました。
 吉田修一によって書かれ、第15回山本周五郎賞を受賞した傑作小説『パレード』は、2010年2月に名匠・行定勲監督により映画化され、大変な評判を呼びました。同作品が、今度は人気劇作家・蓬莱竜太の脚本を得て、行定勲の演出で新たに舞台されることになったのです。出演は、山本裕典、本仮屋ユイカ、原田夏希、竹内 寿、そして福士誠治という、これまた魅惑の顔ぶれ。
 ルームシェアで生活する若い男女の日常を通じて現代の人間関係を浮き彫りにするという衝撃の問題作が、小説から映画というメディアに変換され、更に今度は生の舞台世界に変換されるのです。かつて私たちの愛読した文字の羅列が新たな生身の身体を得て、どのような肉化を果たし、どのようなリアルを現出させるのか、本好きにとっても芝居好きにとっても、これは興味津々ですよね。


 さて、本好きで芝居好きの皆さんならば、『豆之坂書店〜読みたがりたちの読書会〜』も見たいし、『パレード』も見たい、しかしそんな欲張ってよいものか、と悩まれるかもしれません。でも大丈夫。存分に欲張ってください。
 イープラスでは今回、『豆之坂書店〜読みたがりたちの読書会〜』(全席指定5,800円)と(全席指定8,500円)を、2作品セットでなんと10,000円(税込)という特別お得企画をご用意させていただきました。販売期間も枚数も限定ですので、この機会ぜひ、お急ぎご利用くださいませ。

舞台『パレード』&『豆之坂書店〜読みたがりたちの読書会〜』
お得なセット券!

<販売期間>
2011/11/30(水)10:00〜12/11(日)18:00 ※枚数限定販売

<販売金額>
2作品セットで10,000円(税込)

<セット券対象公演日>
「豆之坂書店〜読みたがりたちの読書会〜」2011/12/27(火)〜12/29(木)
「パレード」2012/1/16(月)〜1/28(土)

<会場>
いずれも、天王洲 銀河劇場(東京都)

※「豆之坂書店」当日引換券と「パレード」座席指定券のセット券です。「豆之坂書店」は観劇当日、劇場入口にて当日引換券を座席指定券にお引換えのうえご入場ください(開演1時間前よりお引換えいたします)。


◎「豆之坂書店〜読みたがりたちの読書会〜」
作・演出:福原充則
音楽・演奏:ロケット・マツ(パスカルズ)
うえむらまさゆき(mamaclio)
出演:谷原章介/片桐 仁 村岡希美 高畑充希 小澤亮太 久ヶ沢徹

◎「パレード」
原作:吉田修一「パレード」(幻冬舎文庫)
脚本:蓬莱竜太
演出:行定勲
出演:山本裕典 本仮屋ユイカ 原田夏希 竹内寿・福士誠治


2011-12-01 14:57

 あの「千手観音」で日本中をとりこにした中国障がい者芸術団が、新作を携えて再来日!
冬の渋谷で、心温まるひとときを。聴覚や視覚に障がいを持った若者たちが、数々の舞踊や音楽によって、人々の心を感動へと導くエンタテインメントショー。


中国障がい者芸術団 千手観音「新作・My Dream」について

 中国全土約6000万人の障がい者の中から選出され、中国が誇る文化と芸術を体現するアーティスト集団、中国障がい者芸術団。同団は2007年初の全国ツアーにおいて15万人以上を動員するなど、これまでも日本中を感動の渦に巻き込んできました。世界的にも高い評価を受け、特に同団の代名詞とも言える「千手観音」は、現代における究極の美と評されています。
 2012年はその「千手観音」に加え、満を持して「手話舞」、「耳に響く」、「白鳥の湖」、「命のキー」などの新作を日本初公開!中国障がい者芸術団にとって、新作を創り上げることは容易ではありません。監督が長年練り上げた構想と手話コーチの的確な伝達、そして聴覚障がい者が重ねた訓練の3つが融合して完成させる作品は、想像を絶する過酷な環境の中で生まれます。
 しかし、だからこそ完成された作品は「天女の舞のようだった」「生きる勇気をもらった」「諦めないことの大切さを教えてもらった」と世界中の人々を魅了するのです。それは幻想世界とでも言うべきか、人間が演じているとは思えないほどに美しく、強く感じられます。耳が不自由な分、他の感覚が鋭く、感じる力が強い彼女たちは美しい芸術のみならず、「夢を持ち、強く生きる力」を伝えてくれます。時を経て更にパワーアップした彼らの舞踊と音楽を是非ご期待下さい。

公演概要

中国障がい者芸術団 千手観音「新作・My Dream」

<公演日程>
2012/1/14(土)16:30開場17:00開演
2012/1/15(日)10:30開場11:00開演
2012/1/15(日)14:30開場15:00開演
渋谷公会堂 (東京都)

<発売日程>
オフィシャル受付(先着先行):2011/11/12(土)〜11/27(日)
一般発売:2011/12/2(金)〜


2011-11-11 12:31

 80年代を代表するキラ星のごときロックナンバーでつづられるブロードウェイ・ミュージカル「ロック・オブ・エイジズ」。ジャーニー、ボン・ジョヴィ、MR.BIG等のヒット楽曲の魅力が炸裂、トム・クルーズ出演での映画化が決定するなど話題の作品だ。この時代の音楽を原体験にもち、今年T.M.Revolutionとして