今年もやります!年1回恒例のシティボーイズミックス、今回は若手お笑いコンビの注目株、ザ・ギースとラバーガール2組がゲストとして参加することが決定。シティボーイズの大竹まこと、斉木しげる、きたろうに、おなじみメンバーの中村有志も加わり、それぞれ笑いにこだわる8人の男たちが個性を戦わせながら取り組む舞台となる。シュールでナンセンス、時にはベタで人情味に溢れてたりもする独特のシティボーイズワールドは今年も健在だ。稽古突入を前に、シティボーイズ3人とザ・ギース2人に集まってもらい、新作のヒントを語ってもらった。


「このタイトル、語呂がいいので口に出して言ってみたくなりますね」(尾関)
「オファーが来た時「俺たちもその位置に来たか!」と思いました(笑)」(高佐)

――まずは今回のタイトルについてなんですが、またどうして大豆なんですか?

大竹 ねえ。なぜ大豆なんだろう。

斉木 2時間かけて大豆にたどりついたんだけどね。いつも、こんな感じなんだよ。

きたろう シュールなタイトルにしたいという意志はまったくないんだけど。いろんな人の意見と面白がり方の最終地点が結局、シュールになっちゃうんだよね。ちなみに俺は『男の日傘』ってタイトルを主張したんだけどさ。

大竹 誰にも受け入れられなかったな。

きたろう ザ・ギースの2人は、このタイトルどう思うの。

高佐 僕らの単独ライブが『Alternate Green』ってタイトルだったとき、きたろうさんが「わけわからなすぎてこんなタイトル、ダメだよ」って。

きたろう 「きどってんじゃねーよ」って。

高佐 そうおっしゃってたんですけど。今回このタイトルを見て、あんまり僕らのと変わらないんじゃないかと思ったんですが。

きたろう ばっかやろ、全然違うよ。

斉木 きたろうさんは英語を使うと「きどってんじゃねーよ」って必ず言うんだよ。

きたろう 尾関はどう思った?

尾関 いやー、僕はなんかかわいいタイトルだなと思いました。

きたろう 大豆がちっちゃいから?

尾関 今まではもっとシュール感が強いイメージがあったんですけど。今回はそれよりもかわいいというか、語呂がいいのでなんだか覚えやすくて。口に出して言ってみたくなる感じがあります。

斉木 『ごとく』っていうのが古典的な響きをちょっと感じていいよね。

大竹 略しやすいしね、“トツダズ”とか(笑)。

高佐 “トツダイ”じゃないんですか。

大竹 いや、“トツダズ”だよ。

きたろう でもこんなに年くってるのに、前向きなタイトルではありますよね。

大竹 それが情けないのと恥ずかしいのと。なんか妙にこのタイトルは前向きだよ。

斉木 うんうん、なんかハジケた感じがある。

大竹 だけど、いい年こいて前向きって、どうよ。

きたろう いや、斜め向いたり後ろ向いてちゃダメ。前を向かなきゃ。

大竹 若い人たちへの熱いメッセージではあるよね。「もういい年なのにこいつらまだ前向いてるんだ!」っていうのは。俺たちは気恥ずかしいけど、若い人たちには「おまえらもっと前向けよ!」ってことは言いたいの。だからといって俺たちが率先して前向くことはないんだけどさ(笑)。

きたろう そこに恥ずかしさを持ってるから、俺たちはまだ救われるんだって。恥ずかしさを持たないで、若い奴にあんまり前向かれると俺、ぶん殴りたくなっちゃうもん。

大竹 今、一番ぶん殴りたいのはおまえだよ。

――今回はザ・ギースとラバーガールの2組4名が参加されます。

大竹 若いものの代表ってことだよ。「おまえら、前向け」って話だね(笑)。後ろ向きのラバーガールに「おまえらなにそこで滞ってるんだ、面白いくせに」って言いたいわけ。ザ・ギースみたいに「面白くもないのになんで前向いてるんだ」っていうのもあるけどさ(笑)。

きたろう 1組だけだとなんか俺たちに負けちゃうかもしれないけど、4人もいれば委縮せずにパワーが出せるんじゃないかと。ま、今回の若手はワールドカップのベンチみたいに、俺たちを支える感じがどうかなと思うんだけど。

尾関 ええっ! それじゃ舞台に出られないじゃないですか!(笑)ちょっとは出たいですよ!

きたろう いやいやいや(笑)。チームワークがテーマだから。ベンチにいて応援するイメージでもいいじゃない。

斉木 じゃあ、私たちは前半飛ばしに飛ばしますから、後半はまかせますよ。

高佐 ええ〜?(笑)交代するんですか。せっかくなのでできれば一緒にやらせていただきたいんですけど。

きたろう レッドカードが出た場合は、素直に交代するから君たちの出番。

大竹 じゃ、きたろうを俺が踏んづけたら、それを合図に出てくればいいよ。

――ザ・ギースのおふたりは今回、参加することになってどう思われましたか。

尾関 今までは著名な方が出ていて、その人たちとシティボーイズさんとの組み合わせがすごい面白いなと思っていたんです。だから、そんなところに自分たちが出て、今までのものを越える面白いものが作れるんだろうかっていうのはすごいプレッシャーで。でもなんとか足を引っ張らないように、同じ事務所ということもあるんで甘く見ていただきながら(笑)、がんばりたいです。

高佐 僕らにオファーが来て。「ああ、俺たちも、とうとうそういう位置まで来たか!」と思いました(笑)。

大竹 おい、おまえら、ずうずうしいぞ。

きたろう だから、ベンチスタートだって言ってるだろ。

尾関 えーっ、やっぱり交代なんですか?

斉木 俺が期待するのは、ドリフターズにおける志村けんに4人のうちの誰かがなってほしいなと。

大竹 なんでドリフターズにたとえるの? 意味がわからないよ。じゃ、おまえがドリフターズに入れよ。

斉木 いやあ、たとえば尾関がシティボーイズのメンバーになっちゃうくらいのパワーを出してほしいってことだよ。

きたろう でも全員で顔合わせして話したら、すごくいい雰囲気だった。(中村)有志を入れて今年は全部で8人か。なんかみんな、匂いが似てるんだよね。

大竹 それは俺もそう思う。

「俺たちって、いい男が笑いをやるグループの走りだよね」(きたろう)
「お客様が喜ぶようにするのはもちろん、それ以上に自分を喜ばせたいよ」(斉木)
「今回は「見てほしいなあー!」って、かなり本気で思ってる」(大竹)

――ラバーガールさんが今日いらっしゃらないので、読者に向けてちょっと2人を紹介していただけますか?

尾関 孤独が好きで、現代的な人たちというか。

高佐 2人とも、常に自分の場所を持ってて、そこにずっといるみたいなイメージですね。あまり人と交わろうとしない。まあ、普通に飲みに行ったりはしますけど。

きたろう 2人ともそれほどいい男じゃないのに、ものすごい二枚目だと思ってるよね、自分のことを。

高佐 そうそうそう!

尾関 絶対、思ってますね。

きたろう おかしな顔してるのに。

斉木 自分の世界観というか、知的世界の中にめいめいが入ってる感じがするね。変わりモノだよ。まあ、俺が言うのもなんだけど。

高佐 確かに変わってますね。

尾関 2人とも飄々としているように見えて、めっちゃ女の子にモテたい気持ちが根底にあるんです。

きたろう ああ、あるな。俺はそういうの、すぐ見抜くから。

斉木 同じ匂いを感じた?

きたろう いやあ、俺は全然違うよ。俺の若いときの二枚目ぶりを知らないの?

大竹 全然!年とってからならよーく知ってるけど。斉木は強烈な二枚目で、すごかったけどなあ。

斉木 よく黙ってろって言われたよ。黙ってりゃいい男なのに、って。

きたろう そういう意味じゃ、俺たちはいい男が笑いをやるグループの走りだよね。

大竹 いやいやいや。ピピー!

――レッドカードが出ました(笑)。

尾関 あ、きたろうさん、出場停止ですか(笑)。

――今の時点では、どういう方向で作っていこうとされていますか?

斉木 俺なんか、わりと今までになかった形を提示できそうな予感がしますけど。

きたろう でも演劇チックにはなりたくないんだよなあ。絶対、コントがいい。

大竹 じゃ、俺が演劇担当でいくよ。演劇チックなのをやりたいんで。島田正吾か!というようなものを。

斉木 演劇というか、新国劇だな。

きたろう じゃあ、大竹さんはベンチスタートで。

大竹 いやいや。だから俺はちょっとお笑いを捨てて、立ってるだけで感動を生み出す方向でいくからさ。

斉木 俺は大衆演劇路線をやりたいな。泣かせるような。

大竹 泣かせるのは俺がやるって言っただろ。

斉木 じゃあ、俺は泣き笑いでいくよ。

――ザ・ギースのおふたりは、どういう風に取り組みたいと思われてますか。

尾関 2カ所だけ、自分が超ウケたいんです。それが目標です。

――2カ所だけでいいんですか?

きたろう 充分だよな、2カ所で。

尾関 むしろ2カ所も難しいと思うんです。クスッと笑えるところが1カ所くらいが、リアルな路線かも。

斉木 いやあ、でも最初の登場で1カ所笑えるじゃない。

大竹 それは、おまえと同じやり方でやれってことじゃないか。

一同 (笑)。

高佐 僕は漠然と、エキセントリックなことをやりたいな、と。

きたろう ああ、いいねえ。

大竹 うん。それは、いい。

斉木 うん、見たいな。

大竹 そういうヤツがいないとダメだよね。

きたろう ただし恥ずかしくなく、やってくれよな。

大竹 それでエキセントリックなのをちゃんとできたら、すごいよ。

――今、まさに目の前でハードルが上がった気がして、こちらまでドキドキしますが。

高佐 いきなり自分で上げちゃいましたね。ちょっと今、後悔しています。

きたろう 道具は使っちゃダメだよ。バットとか持つなよ。

高佐 え、道具ナシですか。

きたろう じゃ、ちいちゃいモノ、携帯電話くらいだったらいい。

大竹 そうだな、ナスくらいならいいよ(笑)。

――では最後にお客様に一言ずつ、メッセージをいただけますか。

きたろう 俺は本当に「もうシティボーイズはこの先、見られないかもしれないんだからぜひ見に来なさい」と言いたいね。

――毎年そうおっしゃってますが(笑)。

きたろう でも毎年、内容は違うからさ。今回の感じも絶対に見ておいてもらいたい。

斉木 僕はお客様が喜んで下さるものを、というのはもちろんだけど、それ以上に自分を喜ばせたいよ。今回は、ぜひハンカチをお持ちください!

高佐 僕たちはベンチを温めているだけにならないように、大豆のように飛び出していきますよ!

きたろう お、うまいこと言ったね。

高佐 いや、それほどうまくなかったです……。

尾関 僕はシティボーイズさんの昔を見ているようだと言われるように、がんばりたいです。

大竹 またこいつも、うまいこと言おうとして。だけど俺たちが昔どれだけ浅はかだったか、知らないな(笑)。

一同 (笑)。

大竹 いや、正直に言うとね。年とると本当に時間がなくなるの。でもそのことが、若い人にはわからないんだよね。時間がないって、大変なことなんだよ。その時間のなさ加減は人を狂気に走らせるからね。

きたろう この年齢でしかできないものってある。だからこそ、今のうちに見ておかなきゃソンだってことだよね。

大竹 俺は今まで何度も「見て下さい」と言ってきたけど、社交辞令だった気がするんだ。うぬぼれもあって、どうせ客席はいっぱいになるだろうからって気持ちもあったかもしれない。だけど今回は「見てほしいなあー!」ってかなり本気で思ってる。ま、いいものがちゃんとできるかどうかは、本番当日までわからないんだけどね。


2010-07-23 16:14

 映画監督であり、大泉洋らTEAM NACSが所属する芸能事務所の社長でもあり、そして企画・構成に携わった人気番組『水曜どうでしょう』(HTB)では“ミスター”として自ら出演もしていた鈴井貴之。彼がまた、新しいことを企んでいるという。“OOPARTS”、かつて彼が結成していた劇団の名前でもあるこのプロジェクトが、この秋からスタートする。一体、どんなことを仕組もうとしているのか、鈴井本人を直撃した。




「OOPARTSプロジェクトは北海道発信なんでね、僕らはあくまで邪道なんです(笑)」

――今回は“OOPARTS”のVol.1ということですが、これが旗揚げ公演になるということでしょうか?

 いえ、“OOPARTS”は劇団ではなく、あくまでも僕のソロプロジェクトなんですよ。その第1弾の取り組みが、たまたま演劇であるというだけです。このプロジェクトに関しては今後、可能性は制限せず、この名義で映像を作ったり、もしかしたら音楽や出版みたいなこともやるかもしれないし、極端なことをいうと“OOPARTS”という名前のラーメン屋さんを札幌で出すかもしれません(笑)。そういうところまで含めた枠にとらわれない幅広い活動、と考えていただければと思います。

――このプロジェクトを始動しようと思われたいきさつは。

 僕の場合は全国的に知っていただくきっかけになったのが、大泉洋君とやってる『水曜どうでしょう』(HTB)という番組なんですね。そこで僕は“ミスター”と呼ばれておりまして。さらには映画監督としても活動しているのですが、今までに作った作品がたまたま家族を中心軸にしたハートウォーミングな内容のものが多かったので「鈴井さんってそういう人なんですね」というイメージが定着してしまったみたいなんです。すると、ちょっと残酷な、ダークな話を僕がやろうとしたときに「“ミスター”のイメージじゃない」と言われてしまって。かつて僕は北海道で演劇をやっていて、そのころはダークな世界観のものもやっていたし、ラジオも10年くらいやらせていただきましたけど、かなり毒舌だったので、そういう面もあることは北海道では知っている方もいるかと思いますが、だけど全国の方にはどちらかというと“大人しくていい人”というイメージがあるらしい。じゃあ、鈴井貴之という名前で「イメージじゃない」と言われるのであれば、わかりやすく違う名前“OOPARTS”という名前でやらせていただこうかなと思ったわけです。

――今回は場所がライブハウスだったりして、普通のいわゆる演劇とは違う匂いがプンプンするなと思ったんですが。

 ちょっと違った演劇をやりたいという思いはありますけど、特に新しい取り組みをしようというわけでもないんですよ。過去の、非常に才能あふれる演劇人がいろんな取り組みを既にしておりますので、僕が今さら新たに提示するものはないです。ただ、今はそういうことはやらなくなったけど昔はやっていたよねっていうようなこと、たとえば寺山修司さんや状況劇場の唐十郎さんたちがやっていたことに近い実験的なことを、今の時代に反映させてやるようなことはあろうかなとは思います。だから、それを知らない人は新しいと思うかもしれないですね。

――実験的なこと、ですか。

 ええ。それとOOPARTSプロジェクトは北海道発信なんでね、僕らはあくまで邪道で行きたいと思います。僕の考え方としては王道、正道なことというのは東京が作り上げているものだと思いますので。財力、才能、人材いろんなものが東京にはありますけど、地方にはそういうものが足りない。お金も限られて、優れた人もそんなにはいない、ノウハウもあまり持ってない。そこで正道なことを目標としてやっても到底、東京には及ばない。であれば、僕らは邪道なことをやるしかないですからね。で、今おっしゃっていただいたとおりで、ZEPPでやることでまず面白がっていただけるじゃないですか。これが普通のホールであれば引っかからないと思います。僕らはそういうことをやらなきゃいけないんです(笑)。

「初日、バッキバキに緊張している自分が想像できます」

――映画の現場が舞台になるそうですが、こういう物語にしようと思ったのはなにかきっかけがあったんですか。

 これは結局、自分が体験、体感している世界観であり、その中のバックヤードの話なんですね。そこには、表に出せないことって、いろいろあるじゃないですか。それを演劇という完全なる虚構の世界に反映させれば、言えるんじゃないかなと思ったんです。つまり「これはウソですよ」という大前提があるわけなので。

――演劇である、ということで。

 だけど、その中に真実もいくつか散りばめていくことによって、もしかしたらそこに観客の推測が生まれ、その物語をどう受け取っていただけるか。それが、僕の興味があるところなんです。ですから観る人によっては「えっ、映画業界ってあんななの?」ってすべて信じ込む人もいれば、一方では「あんなことあるわけないじゃん、現実の世界では」っていうような、両極端の意見が生まれると思う。それに対して僕は、どこまでが本当でどこまでがウソですよとはあえて言いませんし。

――正確なところは、教えない(笑)。

 はい。でも、根本的には「演劇はウソです、架空のドラマですから」とは言いますけどね。でもそこには、僕が実際に映画監督であり、タレント事務所の社長でもあるという事実もある。全部、僕が実際にやってきたことなのでね。そういう人間がやるっていうところで、リアリティが出てくると思うんです。だからこそ、観てくださった方に「どこまでがホント?」というようなせめぎ合いが生まれて面白いんじゃないかなと思います。

――今回は個性の強いメンバーが集まりましたが、キャスティングのポイントは?

 まず脚本を先に作って、その役柄にあてはめてどういうキャラクターの人がいいかなということで選ばせていただきました。本当にひと癖もふた癖もありそうな、個性的な方ばかりですよね。ひとつの系統に偏らない、てんでバラバラな人たちを集めることによって、どんな相乗効果が生まれるのか、期待値はかなり高いです。

――今回は鈴井さんも役者として出られますが、役者としての面白さとは。

 うーん、わからないですねえ。役者として出ると言っちゃったことを今、実は後悔しているんでね(笑)。本当にもう30年近く前になりますけど、舞台に初めて立った時と同じ感覚を得られるんじゃないかと思うんですよ。初日が札幌なんですが、今から想像できますよ、バッキバキに緊張している自分が。「やるって言わなきゃよかったー」って言いながら、情けない感じで楽屋にいるのが想像つく。でもたぶん舞台(イタ)の上にあがったらスイッチがポーンと入って、初日が終わったときには「うわーっ、またヤバイこと始めちゃったなあ、これはクセになるなあ」って思うんじゃないかと思います。

――初日、楽しみですね(笑)。

 初日……なければいいのに!(笑) ま、そんなことはありえないですけどね。

――今回のキャストで、緊張している鈴井さんを面白がりそうな方はいらっしゃいますか?

 みんな面白がるんじゃないですか?特に増沢望君、彼は20代のころ、札幌の違う劇団だったんですが同じ稽古場をシェアしていたり、テレビとかでもちょっと二人でユニットを組んでコントをやったりしていたこともあるんで。彼だけが唯一、僕が昔、役者だったことを知ってるんですよね。そうだよ、ヤバイなあ、彼は知ってるんだ、僕のすべてを(笑)。とか言いながらも、今回の僕の心のよりどころは彼でもあるんですけどね。

――では最後に、お客様へお誘いのメッセージをお願いします。

 地方からの発信で、またなんかちょっとヘンなことをやろうかなとしているので、それに興味を持って下さった方はぜひ!意外とキャストは40代のオッサンが多いので、昔を懐かしんでいただくような年齢の方、僕らと同年代やもっと上の方も「昔はこういう芝居があったよな」とか思っていただいてもいいですし。それと今回、若い方にも来ていただきたいということで、後ろのほうの席にはなってしまうかもしれませんが、学割席というのを設けました。だからちょっと覗いてみようかなという若い方は、それを利用して気軽に観ていただけたらと思います。

〈取材・文/田中里津子〉
〈写真/渡辺マコト〉

2010-07-21 20:43

 2010年の締めくくりを飾る超話題作『ジャンヌ・ダルク』の制作発表が都内で行われ、その全貌が明らかになった。

 15世紀初頭、フランス――。イギリスとの長い戦争が行われていたさなか、国を救うべく立ち上がり、17歳から19歳の2年間を鮮烈に駆け抜けていったひとりの少女、ジャンヌ・ダルク。彼女の波瀾万丈の生涯をドラマティックにエンターテインメントに描くこの作品で、堀北真希が待望の初舞台を踏む。演出は白井晃、脚本は中島かずきという小劇場出身の2人が強力タッグを組み、ジャンヌと運命的な出会いをするシャルル七世に伊藤英明を始め、演技派・個性派がズラリと顔を揃える共演陣も実に華やかだ。

今の日本の光明となるような作品にしたい。白井

 キャスト・スタッフが一堂に会した会見では、まずは演出を手掛ける白井が「閉そく状況だといわれる今の日本の光明となるような作品にしたいですね。ひとりの純粋な女の子の強い想いが人を動かし、周りを動かしていく。そういうことが本当にあってもいいと信じられる瞬間を作ってみようじゃないか、ということです。堀北さんならきっと意志の強いジャンヌを演じていただけると思って、ぜひにとお願いしました。ジャンヌとシャルル、2人の間になにがあったのかに焦点を絞った話にしていきたい。その周りを支えていただくのは百戦錬磨の実力ある俳優さんたちばかりです。今までに経験したことのない、濃い作品にできるのではと思っています」と意気込みを語った。さらに脚本を担当する中島は「世の中には勝てる企画というのがありまして、今回は堀北さんのジャンヌ・ダルクということでこれは基本的にもう勝てる企画なんですね。僕も観たいと思うし、たぶん皆さんも観たいと思うだろうし。これで面白くなかったら、演出か脚本のせいでしょう(笑)。今回のジャンヌとシャルルというのは、両極ではあるんですがどちらも自分に対して正直に生きている2人なんですね。ところが、その周りにいる当時の人々というのは生きていくために貪欲で、複雑な人間性を持っている人たちなんです。ある種、怪物のような人間たちが万華鏡のようにいる中で、2人の青春が浮かび上がるようなものにしたい」と、力強くコメント。また、音楽を手掛けるのは三宅純。「思い返すと幼少のころにジャンヌの逸話を母親から聞かされたことがあって。そのときにはフィクションだと思っていたのですが、先日、白井さんがパリに来たときにジャンヌにまつわる土地を訪ねてみて、気づくと日常の中に今も、ジャンヌがたった2年にわたって残した痕跡がそこらじゅうに残っていることを改めて認識しました。壮大なロマンとフィクションが現代と交わるところを音楽で埋めていく、言葉ではない部分を担当させていただきたいと思っています」と作品への想いを話した。

ぜひひとりでも多くの方に観に来ていただきたい。堀北
どんな脚本になるのか楽しみです。伊藤

 そして初舞台にしてタイトルロールを演じる堀北は「ジャンヌ・ダルク役といっても、自分の中ではまだしっくりきていなくて。ただ、まっすぐでとてもエネルギーのある人だなという印象はあります。これから脚本を読んで私なりに解釈していきたいと思いますが、初舞台ということで今は自信もなく、不安でいっぱいです。今から一生懸命がんばって、自信を持って舞台に立てるようにがんばっていきたい。ぜひひとりでも多くの方に観に来ていただきたいです」と、少々緊張しつつも笑顔を見せた。
 続いて、共演陣も口々に抱負を語った。まずフランス国王シャルル七世を演じる伊藤は「どうしてもジャンヌ・ダルクというとシャルル七世という役ははずせないイメージですが、今回はどんな脚本になるのか楽しみです」。傭兵ケヴィン役の石黒英雄は「未熟な自分がこんな素晴らしい作品に参加で来てうれしい。ジャンヌの死を見届けるひとりでもあるので、稽古中にすべてをさらけ出して本番で全部出し切りたい」。ベッドフォード公役の山口馬木也は「昔、六平さんと共演したとき、僕が六平さんを何度斬っても死なないという不思議なシーンだったんです。今回は殺陣も多いそうですし、ぜひ六平さんを斬りたいので中島先生、そういうシーンを追加でお願いします(笑)」。マリー・ダンジュー役の柴本幸は「私の役はとにかく良妻とありました。私自身はまだ結婚したことがないのですが将来のために、夫を支えるいい妻を皆さんの力も借りながら演じたいと思います」。アランソン公役の塩谷瞬は「ジャンヌを愛し、共に闘う騎士を演じます。ジャンヌの物語がすごく好きなので、苦しみや葛藤、愛を舞台上に表現できるようにがんばりたい」。幻影の少年役の高杉真宙は「僕が演じるのはジャンヌだけに見える心の中の少年です。演出の白井さんに指導していただき、僕なりに表現力を研究して精一杯がんばります」。タルボット役の上杉祥三は「同じ小劇場の出身ですが、白井さん、中島さんとご一緒するのは初めてなので非常に楽しみ。しかも今回は俳優陣が濃ゆい、何をするかわからない方々がいっぱいいるので、どうなるか皆さんも楽しみにしていてください」。エア・イール役の春海四方は「小劇場どころか私はホコ天出身です(笑)。フランス屈指の豪傑という役をやらせていただくので、自分でもどうなっちゃうんだろう?と楽しみにしております」。傭兵レイモン役の田山涼成は「なんと私、フランス人でございます!もうどうしようと迷いましたが、六平さんを見て安心しました、こちらもフランス人ですから(笑)。堀北さんとは映像の現場で会うときによく「舞台やったらどう?」と言っていたのが私なので、こんな形で実現してすごくうれしいですね」。コーション司教役の六平直政は「小劇場、ホコ天出身どころか私は劇場のないテント出身で、発声練習もストレッチもしない、何年たっても演劇の素人でございます。白井ちゃんとはドラマで昔からご一緒していましたが、今では演出家の大先生になりましたので私も高杉くんのように白井さんにお芝居のやり方を教わって毎日がんばります(笑)」。ヨランド・タラゴン役の浅野温子は「私は、伊藤さんと柴本さんのお母さんの役です。どうなるかまだわかりませんが、母性ある母をめいっぱい、やらせていただきます。がんばって母性を出します!」。ラ・トレムイユ役の西岡徳馬は「六平さんと田山さん、浅野さん以外は初めてご一緒するのでそれがものすごく楽しみです。2010年暮れに贈る、情熱をもった素晴らしいパフォーマンスになるはずです。みなさん、ぜひご覧になってください!」
 それぞれ実にバラエティ豊か、まさに濃い顔ぶれで、笑いを誘うコメントも多数。非常に和やかで、アットホームな雰囲気の会見となった。

なお、イープラスではこの会見後に主演・堀北真希の独占インタビューも決行!その模様は追ってご紹介します!お楽しみに。

〈文/田中里津子〉

2010-07-15 15:55

 ネタものの季節到来!ということで、劇団☆新感線が3年に1度上演するおポンチ系芝居“チャンピオンまつり”の最新作が動き出した。タイトルは『鋼鉄番長』。成り行きで鋼鉄の体を手に入れた不死身の男が次々に巻き起こす事件とは!? ――誰もが大好きな少年漫画的ドタバタ学園モノを、オーバー40の俳優たちが燃え尽きるほどの勢いと全力のギャグで舞台に刻み付ける本作。新感線メンバーの“滅びの美学”に彩られたステージは色んな意味での危険な香りが満載。ネタもの初体験のお客さんはくれぐれも要注意で!!

アナログ精神――そういう匂いのする世界にはしたい。いのうえ

――そもそも『鋼鉄番長』のアイデアはいつ頃生まれたんですか?

いのうえ 名前としてはもう大分前ですよ。『犬顔家の一族の陰謀』(07)よりももっと前。

橋本 あ、そんな前からあったんですか?

いのうえ うん、タイトルだけはね。どういう話にするかとはそんなのは全然別に、コトバとして『鋼鉄番長』、いいんじゃない?って、最初はフレーズだけで存在してた。

橋本 まるで『メタル マクベス』のようですね。

いのうえ そうそう。でも芝居なんかそういうもんでしょ? 最初にタイトルありきで、そこに向かってどう作って行くか、みたいな。

橋本 “メタル”とか“鋼鉄”とか、カッコイイですもんね〜。特に野郎にとっては。まあ…単純に英語か日本語かの違いっていうのもあるけど(笑)。

いのうえ 新感線っぽいじゃん。なんかわかりやすくてドカーンっいうニュアンスが。ビジュアルも想像出来るし。あと学園モノをやりたいっていうのも前あったから、『鋼鉄番長』ここで出すか。これはもう少年漫画みたにいこうかなって、特になんのヒネリもない。

橋本 (笑)。

――その鋼鉄番長を演じるのが橋本さんで。

橋本 いのうえさんには随分前から「『鋼鉄番長』はお前が投げろよ」って言われてて、「ええっ、それ、俺!? うーんそうかぁ…」って、まあネタもののときはいつも最初そんな風に「どうしよう」って思うんですけどね。細かいことは考えてません。とにかくしんどいのは覚悟の上で乗っかって行くだけですよ。ケガをしないようにっていうのだけはあるけどね。それを踏まえて準備しつつ、あとはもう走ってしまえ!みたいなところで。

――鋼鉄番長は本名が“兜剛鉄”(かぶと・ごうてつ)なんですね。マジンガーZっぽい!

いのうえ こいつは改造される役なんだけど、元々“兜剛”ってヤツが機械に改造されたから“剛鉄”…って、鉄くっつけただけじゃねーかよっ。ぞんざいな名前つけやがって!っていう突っ込みもありの(笑)、そういう名前。

橋本 まあ、キャラ芝居ですよ。

いのうえ 『轟天』とあんまり変わらない(笑)。

――速報にある“小六魂(昭和)!”っていう但し書きもとても気になります。“中学生レベルの…”なんて言い方はよくありますけど、今回はさらにその先の小学生。

いのうえ さらにレベルが低いと(笑)。うんこ、しっこ、おならの世界ですよ。

――いわば『ガキデカ』ですね。

いのうえ うん。こまわりくんとか『ハレンチ学園』とか。パンツが見えるってことに一生懸命になってるようなさ。

橋本 ハハハハッ(笑)。とりあえず覗くとか(笑)。

いのうえ (笑)。覗きに行くのに〔写ルンです〕を持って行って…あ、〔写ルンです〕って今のお客さん解るかねぇ?その辺がちょっとね、最近不安ではあるな。いのうえ歌舞伎なんかで若いお客さんも増えてるし。

橋本 あー、解らないでしょうねぇ。でもまあそんなもんわからんでもいいでしょ。知らない人には教えてやるくらいの勢いで行けば。

――アナログ精神ですね。

いのうえ そうね、そういう匂いのする世界にはしたいよね。それにはやっぱり“昭和”なんだよね。

橋本 世の中には楽をしてては解らないモノがある、と。ま、知ってる人は“そうそうコレ!”ってなるだろうし、画面の前のキー操作だけで何でも見える今の人たちには“なんかちょっと珍しいモノ観た”って思ってもらえれば。

いのうえ とは言っても新感線のメインのお客さんは意外と年寄り多いから(笑)。

しんどいのは覚悟の上で振り切ってやってナンボ。橋本

――客演も新感線でもお馴染みの役者さんたちですね。田辺誠一さん、坂井真紀さん、池田成志さん。

いのうえ 池田さんはお客さんも「あ、池田さんが出てる。そうか今回ネタものか」って安心してくれるネタもの印。田辺くんも俺たちにしたら元々「本人、ちょっとヘンだな」ってところがあったんだけど(笑)、最近は世の中的にも「もしかして…」と少しずつバケの皮が剥がれて浸透しつつありますからね。彼はずっと「ネタものやりたい」って言ってくれてて、それこそ『IZO』のときも「いやぁ、俺はホントはこっちじゃないんだよ〜」みたいなことすら(笑)。だから満を持して、ですね。真紀ちゃんも笑いのセンス持ってるし、やっぱり本人も出たいって言ってくれてて。それでこの機会に。

橋本 「出たい」って言ってくれる人は多いんですよ。でもなかなかそうはいかんのよっていうところがねぇ。

いのうえ 「何をやるか知っとるんか?」と(笑)。

橋本 そう。それでも「いい」と言ってくれて、さらにいのうえさんもOKのポテンシャルがないと。

いのうえ 古田がよく「ネタものは報われない」って言うんだけど、その報われないところに美学を感じてくれる人じゃないと難しいんだよ。いのうえ歌舞伎とかなら立ち回りがあってもちゃんとそこで「カッコイイ」とか「スゲェ〜」ってことになるんだけど、ネタものはバーッて闘ってるのが結果的に壮大なフリじゃん(笑)。いのうえ歌舞伎以上に動き回ってるのにも関わらずただのフリ。絶対そのあとオチがある。それってホントに報われないんですよ。

橋本 それと、全体に体力的に非常に大変っていうのはもちろん、喉にしてもね、(大声で)「アホかーっ!!」「それかーーっ!!」「ええーーーっ!!」って、不必要なまでのツッコミをその日の体調も度外視で間をはずさずにガッツリ入れ続けるというのは、やっぱり過度な負担をかけてやらなきゃいけないことで。でもすべては自己責任。段取りも多いけど、そういう体力的なところで長丁場を体験していただく客演のみなさん。…無事ならいいのに。

いのうえ そうだね。『薔薇とサムライ』のときだって、2回回しの日はね、みんなもう裏で死人のようでしたよ。

橋本 ハハハハハ(笑)。

いのうえ まあやらせといてアレだけど、だからこそ今回はネタものってことで本当に危険だからさ。週8ステージっていうスケジュールは死守した。ホント危ないもん。

橋本 危ないですよ〜。まあそうやって屍を乗り越えて行った先には何もないんですけどね(笑)。それでも幕だけは降ろさんと。しんどいのは覚悟の上で振り切ってやってナンボ。その辺はもう痛々しく見えて来るかもしれないですけど(笑)、それが現実なんでね、「これが生き様じゃい」ってところで。あとはもう僕に何が出来るかはいのうえさんが一番良く知ってはるんで、俺は準備だけして。

いのうえ そうだね。まあ、行けるところまで行きましょう。

――むしろ行けないところまでも行きましょう、と。

いのうえ (笑)。ネタものって体力測定期みたいなところがあるんだよ。「あー、昔はこれ出来たのに」って。でもまあ「実は僕たちはもうそういう年齢の人たちなんですよ」っていうところですよ。楽して出来るネタものはないですから。だってもう出てくる人たちはみんなアタマがおかしくて…

橋本 ハハハハッ!

いのうえ ハイテンションでね、冷静な人なんてほとんどいない。どうしたんだお前らっていう。そういうところも昭和っぽいんだと思うけど。

橋本 確かにそうですね。俺たちはそういうテンションを面白がって育ってきた。今の人たちにもぜひそういうアタマのおかしな人たちを見てもらいたいですよね。

いのうえ ドリフターズの『全員集合』も、あの大転換のステージを正味50分くらい、毎週毎週生でやっててさ、あれこそ昭和のハイテンションだよ。

――セットにパトカー突っ込んで来たり、凄かったですからね。じゃあ、ネタものの理想はドリフ?

いのうえ だろうねぇ。

橋本 金だらいにしたってヘタしたら死にますからね。

いのうえ うちのやつらもね、その辺命かけてますよ。「ガーンッて音しないとダメだぞ」「ガランガランガラーン」って。それを嬉々としてやってるのを「ドリフみたいだなぁ」って思って見てたり。

橋本 落とす人・受ける人。お互いの真剣勝負。

いのうえ あれだね。昭和の芸人さんはやっぱり芸に関しても厳しかったんだよね。

――ちなみにいのうえさんはどんな小六だったんですか?

いのうえ やっぱりうんこやおならの話をしてゲラゲラ笑ってた。あと、お楽しみ会でなんかやって友だちがゲラゲラ笑ってくれるのがうれしかったり。小学生だからまだ色気はないよな。モテたいよりウケたい。

橋本 それもう新感線の源泉じゃないですか! そうか〜、最初の一滴は小六のお楽しみ会か。

いのうえ 俺はみんなを笑わせたい、と。

橋本 (笑)。子ども時代で言えば、いのうえさんとも古田くんともバイブルにしてた漫画が被ってましたよね。『ガキデカ』『マカロニほうれん荘』…

いのうえ あと永井豪さんとかね。まあそういうことですよ。今回は小六な男子の学園もの、アクションのあるドタバタ。それ以上あまりここに書くこともないでしょ(笑)。

小六って言い切って振り切ってる男芝居をお見せ出来ると思います。いのうえ

――(笑)。では…劇団30周年ともなると新しいお客さんも常に増えていると思います。ネタもの初体験の方に向けてのアドバイスなどあれば。

いのうえ やっぱりね、「何だコレ?」って怒る人はいると思うんだよ、絶対。「金返せ!」とかさ。でも俺たちは「すいませんねぇ」としか言えないので、そこは解った上で来て欲しいかな。

橋本 チケット代も貴重ですからね。事前にDVDで『レッツゴー!忍法帖』か『轟天』あたりを観て頂いて、これなら大丈夫と思ったら観に来て頂ければ。今回はさらにそれらの上を行くかもしれませんし、事前のチェック、これもう逆に僕らからのお願いですね(笑)。できればちょっと大きい字で書いておいて欲しいですわ。

いのうえ でもね、『犬顔家』のときもあれは特に番外編だしどうかなぁって思ってたら意外とみんなゲラゲラ笑ってて、「アレ?」って思ったりはしたんだよ。みんな広い意味でお笑いに飢えてるのかなって。

――確実に求められていますよ。

いのうえ なんだよね。でもドタバタをやり続ける劇団としては、ここまで続けて来てるのって結構な挑戦だと思うんですよ。ドタバタやってた人たちの大抵はだんだんウェルメイドな喜劇に移行して行きますし、実際自分が今この年齢になると「そりゃそうなるよね」っていうのも全然わかる。たぶん僕らはいのうえ歌舞伎や音モノっていろいろやってるからこそ、ネタものも続けられてるんだろうな。ドタバタだけやり続けてたら、とっくにみんな疲弊してたでしょうね。

――だからこそ観る側も待ちに待ってしまうんですよね。

橋本 お客さんは貪欲ですからね〜。

いのうえ ネタものはやっててホントに大変なんだけど、ホントに面白い。そろそろ自分の中でネタも出揃って来てるし…まあ基本は下ネタですけどね(笑い)。小六って言い切って振り切ってる男芝居をお見せ出来ると思います。

橋本 楽屋はもう想像出来ますよ。「なんかみんなしゃべらんな…」って。田辺くんに「そんな橋本さん見たくないです!」とか言われたり(笑)。でも面白いモノを見せるためにやっぱり最後の一滴まで舞台上で絞り出さんと。そのための死人の山です。

〈取材・文/横澤由香〉
〈スタイリスト 中川原寛(CaNN)〉
〈ヘアメイク 杉山裕則〉

2010-07-14 12:17

 昨年、 結成30周年という節目を迎え、ますます血気盛んな劇団スーパー・エキセントリック・シアター(SET)。座長・三宅裕司を筆頭に小倉久寛ら芸達者な劇団員たちが勢揃いで贈る、 歌に笑いにダンスにアクションと、まさに盛りだくさんのエンターテインメント劇団だ。「30周年は単なる通過点」と、今年も引き続き徹底してミュージカル・アクション・コメディーにこだわり続ける三宅座長に今回の新作の構想を聞いた。




「今までの作品で一番、人間の内面を壮大に描くストーリーになりそうです」

――次回作『オーマイ ゴッド ウイルス』は、どういうお話になりそうなんでしょうか。

 テーマは“必要悪”です。悪のススメということですね。今って教育でもなんでも、いい子を育てるためのもので、非常に厳しい母親が多かったりするじゃないですか。みんな、とにかくいい子にならなきゃいけないような教育状況になっているように思うんですが、果たしてそれでいいのか?ということ。もちろん法律を破るような悪さはいけないんだけれども、つまり人間の心の中にある悪の部分の魅力みたいなものを、もう一回考えてみたほうがいいんじゃないか?というのがテーマなんです。だいたい、男っていうのは自分の学生時代にした悪いことをとかく自慢しがちじゃないですか。そして女性もちょっとワルのほうにひかれる部分もあるでしょう。そのワルの魅力ってなんなんだろうという、そういうところから発想したものなんですよ。ストーリーとしては、わりと普通のシチュエーションから、だんだん奇想天外なところに行くんですが、その部分を詳しく話すと。

――ネタバレになって、つまらなくなっちゃいますね。

 そうなんですよ。まあ簡単に言うと、あるウイルスが突然流行してあちこちに感染していくんですが、それが実はとんでもないウイルスで……、というところから始まるんです。現代の日常生活から、非常に壮大なテーマのほうへ向かっていきます。現在制作中なんですが、今回のポスターやチラシを見ていただけるとイメージがわかるんですが、天使と悪魔、 エンジェルとデビルの顔が僕と小倉になってます(笑)。人間の心の中にある善と悪、 エンジェルとデビルの部分。それと現代の社会のこと、さらに実はもう一つ世界があって、そっちにもリンクしていくという流れですね。

――舞台は現代なんだけど、だんだんSFっぽくなっていくような?

 そうですね。SFっぽくもなるし、日本昔話風にもなるし。

――いろんな展開が待っているんですね。

 そうです。ある意味、今までの作品で一番、人間の内面を壮大に描くストーリーになりそうです。人間の心の中の善悪を大きくクローズアップしていくので。

――テーマを善悪にしようと思いついたきっかけは、なにかあったんでしょうか。

 子育てをしていく上でどうしても起こることだと思うんですよ、そういう悪いことと向き合うというのは。息子には自分が昔ちょっとワルだった思い出を話したくなるじゃないですか。僕なんかはマジメなほうでしたけど、それでもちょっとはそういうところもあったと言いたくなるものなので。それともうひとつは、鳩山さんのことかな(笑)。鳩山さんを見ていると学者的にはすごく頭のいい人で、宇宙人だって言われるくらい、なんかちょっと今までの首相とは違う感じがして期待もしていたんだけど。でも結局、周りも悪かったんでしょうけどいろんなことがうまくいかなかった。それでも近くにいる人たちはみんな「いい人なんだけどね」って言うでしょ。そのあたりがきっかけですね。

――演出面で、なにか狙ってることはありますか。

  そうですね。今回は舞台に小説とか日本の昔話とか、そういう世界も出てくるんですが。

――日本の昔話?

 お客さんたちもみんな知っている、悪のヒーローたちっていますよね。その主人公たちとの戦いになるんです。そこでミュージカル的な音楽の要素を使いたいと思っていて。僕は、急に感情が高まって歌い出すミュージカルがあんまり好きじゃないんですね(笑)。ですからこれまでも、芸能事務所を舞台にした話なら歌手が出てきて歌うシーンができるとか、そういうことを考えて設定をつくってきた。そういう意味でいうと、今回はその悪のヒーローたちが出てきて歌うというのは不自然ではないと思うんです。物語の中の架空の人物たちが音楽を使ってなにか表現をするなら、お客さんも不自然には思わないと思うので。そのミュージカルシーンの表現をどういうふうにするかというのが、今回の一番の演出ポイントかな。そこの音楽的要素が悪のヒーローたちとうまくリンクしたとき、いいミュージカルシーンができるんじゃないかなと思っているんですけどね。

「本当にSETの演出は難しいんですよ(笑)、いろいろ欲張り過ぎているんで」

――三宅さんご自身は伊東四朗一座や熱海五郎一座など劇団外の活動も数多くやられていますが、こうして改めてSETに戻ってきたときに感じる劇団ならではの楽しさ、醍醐味はどういう点でしょうか。

 まず、準備期間が長くとれるというのはありますね。でも最近はだいぶ劇団員も忙しくなってきて、昔ほどはとれていませんが…。一時は、プロデュース公演とは違う劇団公演をやらないと意味がないと考えてまして。それで劇団員にはミュージカル・アクション・コメディーのなかの何かひとつを1年間練習して披露させたりしていたんですが、最近はミュージカル・アクション・コメディーの全体のバランスを考えるようになりましたね。それぞれにレベルの高い人間が育ってきているので。そこをどう使って、劇団の特徴や良さを出すか。たとえば熱海五郎一座だとみんな笑いのプロですから、笑いに関してはものすごいラクなんです。ただ、ちょっと立ち回りやらせると動けないヤツが多かったり、ということはありますが(笑)。それがSET本公演の場合は、あまり知名度のない人間が笑わせるわけなので、台本のセリフの面白さと表現力とで勝負しなければならない。そうやって笑いの部分のレベルを上げつつ、肉体を動かす部分ではふだん訓練している部分を出して全体にレベルアップしていくという。その上でミュージカル・アクション・コメディーのバランスのいいものを作るというのが、今の劇団公演で前面に押し出している部分ですね。

――劇団の演出をするときに、一番苦労されることは。

 やっぱり知名度のない劇団員にギャグをやらせることですかね。どんどん経験させていかなきゃいけないんですけど、でもそのとき、お客さんにとって本当におもしろいギャグじゃないとやはり笑ってくれないですから。

――厳しいですね!

 厳しいけど、しょうがないんですよ。ふだんテレビで見ている人だと舞台に出てきたってだけで心を開いてくれるものだけど、それが劇団公演だとまったくなくなりますから。しかもSETの場合は、笑いだけがテーマじゃないんで。さっき言ったようなテーマなので、ストーリー的に無理なギャグというのはカットしなきゃならない。シリアスなテーマを進めていく上で邪魔になる笑いもできなくなってくる。ここでこのギャグを入れるとラストでテーマが壊れてしまうと思えば、どんなにおもしろくてもカットせざるを得ないこともあるという、そういう難しさが出てきますね。本当にSETの演出は難しいんですよ(笑)、いろいろ欲張り過ぎているんで。

――さまざまな要素がたっぷり盛り込んでありますものね。テーマが社会的なことだと、さらに笑いを生み出すのが難しくなるし。

 そのテーマを大切にすればするほど、難しくなってきます。

――かといって、笑いを排除するわけにもいかないし。

 まあ、お客さんとしてはもちろん、笑いは期待しているでしょうからね。そこははずせません。ラストの緞帳が下りるときに、お客さんがどのくらい感動してニコニコ拍手してるかっていうところはいつも考えます。僕たちは、そのためにやっているのでね。

――やはり、最終目的はお客さんの笑顔。

 ええ。そういうことが書いてあるアンケートも多いですから。「最近いいことが何もなかったんだけど、この芝居を観ている間だけはイヤなことが忘れられました」とかね。そこに、僕たちのやる意味があるんだなと感じます。

――では、お客様にお誘いのメッセージをお願いします。

 なにしろミュージカル・アクション・コメディーですから、まったく何も考えずに楽しんでもらいたい。シリアスなテーマはあっても、そこはSETなので。あまり構えずに、気軽に観に来てほしいですね。

――リピーターの方も多そうなんですが、特に初心者の方へ座長から観劇のおすすめポイントをいただけますか。

 三宅・小倉の台本を無視した自由な時間があるので、そこをぜひお楽しみください。そんなコーナーもありますよ、ということです(笑)。初心者の方は知らないでしょ、そういう場面があること。リピーターの方はそこを非常に楽しみにしている人が多くてですね。簡単に終わると許さないぞ、みたいな空気になったりすることもありますから。

――いつも、小倉さんを困らせる方向のアドリブが多そうですよね?

 いや、小倉の場合は実生活から困ってるんで。だから方向とかではないんです。

――常に困っているんですか(笑)。

 そうです。小倉は困れば困るほど、おもしろいんです。だいたい僕が台本を書いて、そこから小倉がいろんなリアクションをしていくんですけど。僕も毎日ツッコミが変わっていきますし。昨日やったからといって、今日もやるとは限らない。そういう場面があることを知っていると、きっと初心者の方も最初から楽しめますよね。ここはどうなるかわからないんだとスリルも感じられて。ま、僕自身もそのスリルを楽しんでいるんですけどね(笑)。

〈取材・文/田中里津子〉
〈写真/渡辺マコト〉


2010-07-07 18:52

 ホームグラウンドである歌舞伎で次々と大役に挑む一方で、この秋は蜷川幸雄演出のシェイクスピア作品『じゃじゃ馬馴らし』にヒロイン役で主演するなど、活躍の場を拡げている若手歌舞伎役者・市川亀治郎。彼が8年前に立ち上げた自主公演「亀治郎の会」が、この夏で8回目を迎える。



ナマの舞台の面白さは、一生に一度だけでも味わっていただいて損はないと思うんです。

――なぜ「亀治郎の会」を始めたのですか?

 これは要するにリサイタルで、自分のやりたいことをやりたいようにやろうという会です。現在活躍していらっしゃる先輩方もかつては自主公演をやっておられますし、ここでは演者としてだけでなく、プロデューサーとしての眼も養われる。もの作りの勉強ができる場なんです。

――今回の演目のひとつ「義経千本桜」について。

 『義経千本桜 四ノ切』は伯父・市川猿之助が選定した猿之助四十八撰≠フ中でも、一番の代表作。澤瀉屋の家の芸ですから、主人公の狐忠信はいずれやるだろうと思っていました。静御前役の中村芝雀さん、義経役の市川染五郎さんをはじめすばらしい共演者に恵まれて、最高の配役で上演できます。

――歌舞伎屈指の人気演目ですが、その魅力はどこにあると思いますか?

 子狐の親を慕う純粋な思いが、人間たちの胸を打つ。現代の観客が涙することができる、普遍的な物語であるという点に尽きると思います。歌舞伎というと「よく分からないけど、キレイ」といった見方もあるけど、分からない物語をやってもしょうがないと僕は思う。現代においても理解でき、感動できる物語、そして役者の魅力でも成立するものを目指しています。

――新演出や工夫など、何か暖めているアイデアは?

 目的は古典歌舞伎の継承ですから、奇をてらうことなく、あくまで伯父の猿之助の指導通りにやります。新作の歌舞伎に比べて古典が非常に優れているのは、決して古いからじゃない。普遍的な素晴らしいものが詰まっているから、時代に左右されることなく伝えられているんです。古典を学ぶことで、僕ら歌舞伎役者は芸の引き出しを増やし、新作をやる上で必要となる部品を仕入れることができる。そして、澤瀉屋はものを作ることが伝統。その勉強をしようと思ったら、自主公演では古典の継承だけじゃなく、仕入れた部品を組み合わせた新作に取り組まないといけません。

――それが現代劇俳優・福士誠治さんとのコンビで見せる『上州土産百両首』ですね。

 牙次郎と正太郎、幼なじみの男ふたりの友情を描いた、心温まる作品です。それに初演は歌舞伎ですが、新国劇や藤山寛美さんといった歌舞伎以外の役者が手掛けることで、新たな生命が宿ってきたということもある。福士くんとは以前ドラマで共演して、「いつか一緒に芝居をやろうね」と話していました。ちょうど正太郎のキャラクターとも合うし、同じドラマで出会った渡辺哲さんも出て下さいます。ただ、福士くんが舞台でどんな演技をするかはまだ僕にも分かりませんから、これは一種の賭け。その意味において楽しみだし、お客さまも楽しみにして下さったらうれしいなぁ。

――キャスティングの決め手は?

 やっぱり仲間でひとつのものを作るときはチームワークが大事。このチームワークを前提にキャスティングを考えてゆきます。人柄が第一条件というのは、どんな世界でも一緒でしょ? ちなみにこちらは全くの新演出になりますし、脚本にも手を入れています。

――今回演じられるのはふた役とも立役=男性役で、女形をなさらないんですね。

 女形専門と決めたわけではないし。まぁ、うちの家の芸がほとんど立役だっていうのもあるし、歌舞伎は封建制の強い時代に生まれた演劇だから、どうしても女形が主になる作品が少ないんです。

――TVで亀治郎さんを知って、これが初観劇という方も多いかもしれません。

 今は芝居のチケットを取って劇場に行くのを面倒に感じてしまうような時代ですが、ナマの舞台の面白さは、一生に一度だけでも味わっていただいて損はないと思うんです。演者と観客が一体となっているその瞬間は、舞台から投げかけられたものを受取るだけじゃなく、お客さんから僕らに投げ返すことができる。それを僕は作品づくりで目指しているので、ぜひ参加≠オてほしいですね。それから「亀治郎の会」の目玉のひとつがプログラム。お陰様でプログラム売り場に大行列ができるほどですからね。舞台以外の要素も大いに楽しんでください。

〈取材・文/山上裕子〉
〈写真/渡辺マコト〉

2010-06-28 13:58

 1年間のロンドン留学から帰国した長塚圭史が、帰国後、最初に演出に挑む翻訳作品である『ハーパー・リーガン』。現代のロンドン、父親の危篤の報を受けたハーパー・リーガンは上司に仕事を休みたいと申し出るが叶わず、その瞬間に心の"何か"が動き出す。そして夫や娘にも何も告げないまま自分自身を見つめ直そうとあてもなく歩き出して――。ひとりの女性の2日2晩の旅を追う本作で主人公のハーパー・リーガンを演じるのは、これが5年ぶりの舞台となる小林聡美。初のタッグとなるふたりに、これから始まる"創造の旅"について聞いてみた。

自分たちの置かれている環境に対して、しっかり「今」というモノを見つめている作家だと思う。長塚

――本作とはロンドン滞在中に出会ったそうですね。

長塚 僕はロンドンではナショナルシアターってところにいたんですけど、そこのボスに一度「こっちのいいホンを教えてください」ってインタビューを試みたことがあったんです。そこで何人かの現代作家を教えてもらったうちとても興味を引かれる戯曲がいくつかあって、中でも一番インパクトが強かったのがこの作品だったんです。

――どんなところが魅力的でした?

長塚 彼女(ハーパー)の場合はお父さんの死が契機だったけど、人間誰しも生活の中で突然「あれ?」っていう疑問が起きる契機に出会い、自分の人生を振り返ることってあると思うんですよ。ハーパーほどドラマチックでないとしても何かこう…陥ってしまうことが。僕は英語で読んだんですけど―

小林 凄ーい!

長塚 仕方なくですよ(笑)。まあ単語なんかは難しいところもあるけれど、不思議なものでね、英語なのにすごくリズミカルに一気に読めてしまったっていうところがまず「スゴイな」って思った。

小林 物語にチカラがあるんですね。

長塚 で、怖くなるんですよ。読んでるうちに。最初の上司との会話のところなんかも、真正面から完全に向き合ってないとなかなか生まれないような相手に対する緊張感だったり威圧感だったり相手の恐怖につけ込んだりっていうモノが凄く描かれていて。どのキャラクターもそうなんだけど、お互いグッと向き合って来るからみんな正直にならざるを得ない。根本は家族の話なので一番近くにいる人たちとどう向き合うかっていうところがキチンと描かれているし、しかも、僕らの許容量を超えた情報が溢れる現代の闇のような中でいかに人間が生きて行くかってことをしっかり見つめている。

――作者のサイモン・スティーヴンスは長塚さんと同年代の作家です。

長塚 そこも大きいですね。英国人の特性もあるのかもしれないんだけど、自分たちの置かれている環境っていうものに対して、経済的にも政治的にも人種的にもしっかり「今」というモノを見つめている作家だと思う。それでこれはもう日本に持ち帰って絶対どこかでやってやろうと思ったんですよ。

――素晴らしいお土産です。

小林 留学した甲斐がありましたねぇ(笑)。

長塚 それはもうホントに(笑)。

俳優さんにはぜひやったことないものをやって欲しいし、自分は現場でそれに一緒に立ち向かっていきたい。長塚

――小林さんは5年ぶりの舞台になりますね。

小林 そうなんですよ。特に舞台はやらないとか決めてないんですよ。でもあんまり舞台の出演依頼がこないんです(笑)。

長塚 ホントですか!?

小林 ホント、ホント。それで気がついたら5年も経ってたっていう。

――お2人はこれが初顔合わせですが、お互いの印象はいかがでしょう?

長塚 実は僕、子どもの頃に…

小林 あ、子どもの頃とか言ってる(笑)。

長塚 (笑)。子どもの頃、父の仕事場に連れて行ってもらって見学してたときに紹介して頂いたのが最初で、「あ、見たことあるお姉さんだ」って思いました(笑)。なにしろまだチビッコでしたから。

小林 (笑)。私が二十歳くらいのときですかね。今思えばあの子だったのか、と。スタジオで、ホントにごあいさつ程度だったんですけれど。

長塚 いや、でも僕からすると子どもの頃に会ってるっていうのは割とデカイですよ! 勝手な親近感が湧いてしまうというか。

小林 フフフフ(笑)。私はお父様に大変お世話になっているので…長塚さん、年々お父様に似て来ているじゃないですか。そういった意味ではホントに昔から知っているような気持ちが強いです。

長塚 良かった(笑)。僕が小林さんのお仕事で一番印象的だったのは舞台の『おかしな2人』ですね。本来男の人たちの話(陣内孝則/段田安則)で、そちらもとても良かったんですが、個人的には女性バージョン(小林聡美/小泉今日子)のほうがより面白かったんですよ。

小林 へぇ〜。

長塚 男と女をすり替えたことでそこにまた一個大きな嘘が生まれて劇的なモノが増えるというか。とにかく主演のお2人がとてもチャーミングで「2人とも好き!」って。で、僕もどっかでなにかをと思いつつ…僕の話って大概イヤ〜な(笑)、話ばっかりでしょ。

小林 血みどろ!

長塚 そう。だから絶対…いや、絶対ってことはないだろうけど、やっぱりどうなのかなぁ、僕の話の中では小林さんはなかなか出て来て頂けないんじゃないかなぁって思っていて。ずっと興味はあれど機会がないという状態でした。

小林 舞台、何本も拝見してますよ。

長塚 でも…苦手な作品も多いんじゃないですか?

小林 突然、バーンッ!とか、ガーンッとかね。そういうところは「あー、来る来る来る…ギャーッ!」ってなってますけど(笑)。でも非常にナイーブで劇的な作品をたくさんやってらっしゃって。もちろんご一緒してみたいという思いもあったんですけど、でもあの血みどろの世界に私の場所はあるのかって感じてて…。

長塚 ほらね、やっぱり! お互いそうだったんですよ!

――片想い同士。

長塚 (笑)。それで今回の作品の打ち合わせのときにふっと小林さんのお名前が挙がって、これは…!と。

小林 ちょうどいい!

長塚 ちょうどいい! もちろんハードな部分もいっぱいあるんだけど、いろいろ考えて…やっぱりね、見たことないモノを見たいんですよね。俳優さんにはぜひやったことないものをやって欲しいし、自分は現場でそれに一緒に立ち向かっていきたいと思うし。

小林 ご一緒するにはとてもいいタイミングでしたよね。ハーパーは私の年齢にも近いですし、物語の内容が読んでいていちいち腑に落ちるというか、凄くわかるっていうか。長塚さんがおっしゃったように、人と人がちゃんと向き合って正直に自分をさらけ出して行くっていうことは普段の生活ではなかなかないことだし、そこはきっと見てる人も気持ちいいところでもあるので…うん、そういうところをちゃんとやっていきたいですね。

――逃れられないモノに対峙して行くのは怖いけれど、同時に清々しさもありますからね。

長塚 現代の現状に対して劇作家が筆を執って書くっていうのはね、やっぱり、非常に強いんですよ。僕自身は偏っているので(笑)ここまで現実味のあるタイプの作品を書けなかったりするんだけど、でも演出だけをやらせてもらえるというところで、こういう戯曲を見つけたときに上演することが出来る。「俺が書いた」みたいな気持ちにさせてもらえるのは幸せですよね。

――"今"の物語を"今"やる意味。

長塚 そう。僕の頭の中にある構想では、翻訳モノだっていう抵抗感を持たずに見られる作品だって思ってるんです。今回は初演だし、言葉にしても例えば「うん」なのか「はい」なのか「ええ」なのか。そういうところをひとつひとつホントにぎりぎりまで探りながら、この作品をこのキャストでどう上演するのかっていうところを突き詰めていきます。

小林 今回ご一緒するキャストの皆さんも素晴らしい方たちばかりなので、「いい作品だね」って言われるよう、みんなの力が最大限に出ていいお芝居が出来たらいいですよね。台本も読めば読むほど深いところにいける感じがするので…まあ、そこを探っているあいだは頭がずっと働いていて眠れなくなったりもしますけど。

長塚 やっぱりそうなりますよね。神経おかしくなるほど考えてすり減らすような作業をたくさん経験した上で、稽古場のみんなで持続できる道順を見つけていく。そこからさらにスリリングでフレキシブルなところで芝居をやっていけたらいいなぁとは思いますけど。

小林 そうですね。舞台は肉体的だけじゃなく、精神的な強さも持っていないと出来ないですからね。

――クリエイティブで刺激的な稽古場になりそうですね。では最後に改めて本作の魅力をお聞かせください。

小林 けっこうタフな部分もある内容ですけど、見終わったあとは、「よし、頑張ろう」っていう気持ちになれる作品だと思います。終わり方がね、いいんですよ。ここから再びみんながそれぞれに歩き出して行く、人生を続けて行くっていう。結婚して家庭を持っている方には特に共感していただけるんじゃないかと思います。

長塚 登場人物もみんな魅力的。あの風景の中、ハーパーと旅、冒険をして、そのあとの一歩をまた踏み出していく…たぶん今どこへ歩き出してもマイナスには行かないんじゃないかっていう余韻がいい。本当に、誰にでもシンパシーを感じ共有出来る部分が大きくある物語だと思います。自分自身今まで書いて来た作品を思い返すようなところもあったし、いい出会いでした。

小林 大人が楽しめる物語ですね。

長塚 そうですね(笑)。女性の方はもちろん、僕を含めた男性の面々も「おお、女性ってこうなんだ」という発見もいろいろ出て来ると思いますし、また夫の視点も大変興味深いものになっていますよ。たくさんの人に観て欲しい家族の話。お友達をいっぱい連れて来てくださいね(笑)。

〈取材・文/横澤由香〉
〈写真/渡辺マコト〉

公演概要

パルコ・プロデュース「ハーパー・リーガン」

作:サイモン・スティーヴンス
訳:薛珠麗
演出:長塚圭史
出演:小林聡美 山崎一 美波 大河内浩
    福田転球 間宮祥太朗 木野花

【東京公演】
公演日:2010/9/4(土)〜9/26(日)
会場:PARCO劇場

【大阪公演】
公演日:2010/10/2(土)〜10/3(日)
会場:梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ

2010-06-22 13:22

 日本を代表する劇作家のひとり、つかこうへいによる、激しくも哀しい名作『広島に原爆を落とす日』。タイトルからしていかにも刺激的だが、祖国とは、戦争とは、そして人を愛することとは……? といった深く重いテーマをカタルシスたっぷりに、ドラマティックに描いていく、まさに衝撃作だ。

 この作品に取り組むのが、今年も映像に舞台にと大活躍中の筧利夫。「つかが書いたセリフを、ぜひとも筧の声で聞きたい」とのファンのアツい想いに応える形での、久しぶりのつか作品への登板となる。しかも『広島に〜』には1982年、1989年以来の3回目の挑戦となる筧。作品への思い入れも、一段と深いようだ。


『広島に〜』は、つかさんの芝居と最初にちゃんと触れあった作品

――『広島に原爆を落とす日』には筧さんは3度目の出演となりますが、これは以前に上演されたバージョンとはまた違うんですか。

 それはもちろん、全然変わりますね。今回はつかさんの『広島に原爆を落とす日』の小説の方をもとにして、そのエキスと心意気を残しつつ、解体して演劇に再構成する感じです。

――やはり、作品への思い入れが強そうですね。

 そうですね、思い入れはありますよ。僕が、つかさんの芝居と最初にちゃんと触れあった作品ですし。そのときは、つかさんの演出ではなくて劇団☆新感線のいのうえ(ひでのり)さんの演出だったんですけどね。しかも、この作品でいのうえさんとも初めて一緒に芝居をやったんですよ。確かに、記念すべき作品ではありますね。

――2回目の"ペーパーカンパニー"プロデュース公演のときのことは、小劇場界では伝説に残る舞台とよく語り継がれていますが。

 本多劇場で3日間だけやってね。珍しくギャラをとっぱらいでもらったことを覚えてるよ(笑)。チラシは、かわぐちかいじさんでさ。よく描いてくれたよね。演出の"市堂起立"は、実はマキノノゾミさんだったんだ。

――改めて、つかさんの芝居ならでは感じる醍醐味とか、面白さとは。

 うーん、言葉で言うのがすごく難しいんだよなあ、つかさんの芝居って。あの感覚は、なんて言えばいいんだろうねえ。あの、足し算引き算感というか。たとえばリンゴとモモの半分ずつのモノがぴたーっとくっついて、しかもそれがちょっとズレてる感じを出せるのはね、つかさんの演出じゃないとできないんだよね。音の選び方や、照明の入れ方とか、セリフとかも含めて全部、見事なんですよ。あんな人はね、ほかに見たことがないね。だからまた、今回もつかさんの作品にぶつかり稽古をしていく、という感じですよ。演出は岡村(俊一)くんだから、これはまるっきり新作ということにもなりますしね。

――新作となると、これまでの『広島に〜』と比べてどのへんが変わりそうですか?

 もっと物語っぽくなりますよね、きっと。お話としては、わかりやすくなるのかも。アジアの演劇として、ブロードウェイで3年くらいできるような作品になるんじゃないの。岡村くんは、そういう芝居を作るから。つかさんの考え方と精神力を借りて、岡村くんの作り方で岡村ワールドにするという作品になるはずです。

――岡村さんはもう何度も舞台を一緒に作られてきている盟友のような存在だと思いますが、ここで改めて岡村演出の魅力とは?

 そうだね、岡村くんのスゴイところはね。「この人とはどこでどう知り合ったんだろう?」という人をカンパニーに連れてくるんだよ。役者とかスタッフとかも含めて。昔からそうなんだ。プロデューサーとして、関西で演劇をやっている学生で人気があるヤツみんな集めて芝居をプロデュースしたりしていたしね。演出的には、とにかく最後にはなんとかする男だね! だから、そのへんはいつも安心してる。僕は性格的にイラチなんでアセっちゃうんだけど、時間がなくても絶対なんとかしてくれる男だからさ。

舞台の仕事が面白いのは、毎日毎日ゼロから始まるところだよね

――今の時点で、山崎という役をどう演じようと思われていますか。

 とにかく、まずはセリフをよどみなく覚えて、よどみなくしゃべることがすべてなんですよ。演じるもなにもないです。どういう方向の芝居になるのかなあ。あんまり僕自身は歌って踊ってって芝居ではないという感じはするけど。そうだな、わかりやすく言うと、8月ごろにあるテレビの終戦特番で、ドキュメンタリーと半々になってるようなスペシャルドラマみたいな演劇になるかも(笑)。いや、ともかく本当に、コクーンでやるのにふさわしい方向のお芝居になるんじゃないですかね。きっと、ためにはなると思うな。

――ここのところ、映像のお仕事が多かったようでしたが、今年は舞台への出演も続きます。舞台の仕事の魅力は、どういうところに感じられていますか。

 舞台の仕事が面白いのは、毎日毎日ゼロから始まるところだよね。スタッフとキャストがお客さんの様子を見ながら毎日細かく、手を入れて編集していく作業をするのが舞台なので。映画みたいに完全にできあがったものだと、お客さんが沸いているときでも静まっているときでも同じものを見せますけど、お芝居だと音の大きさや間をその場でちょっと変えたりするので。そういう面白さがありますね。バトンリレーやってるようなところがあるんですよ、芝居は。まあ、照明はなかなかその場では変えられないけど、音響さんとは録音の音を使っていても音量の調整をしたりして、意思を合わせられたりするんで。芝居の本番の醍醐味っていうのも、たぶんそこにありますね。

――特に今回、本番に向けて楽しみにしていることは。

 演出の岡村くんが新しモノ好きなので、またどんな新しい技術をこの舞台に投入してくるつもりなのかが楽しみですよ。最先端のものを製作費そっちのけで投入するからね。今回もラスベガスで仕入れたネタがあるらしいですよ。マジシャンの人が、今回のステージではどんな新しいネタをやってくれるんだろう?みたいなところがあるんですよね。それは照明かもしれないし舞台装置かもしれないし、まだわからないんだけど。

――では最後に、お客様にメッセージをお願いします。

 この夏、ぜひ私と一緒に見えない何かを乗り越えに劇場にいらしてください。私も、みなさんと一緒に乗り越えたいと思います!(笑)

2010-06-07 12:00

 岸谷五朗と寺脇康文による演劇ユニット〔地球ゴージャス〕の11作目『X day』。未だ明かされていないストーリーは「まさに"X"」と悪戯っぽく微笑む二人がこの最新作で挑むのは、6人の俳優(岸谷五朗 寺脇康文 中川晃教 陽月華 藤林美沙 森公美子)だけで繰り広げる濃密な世界だ。前作『星の大地に降る涙』では迫力ある群衆劇でエンターテイメントの爆発力を見せつけてくれた地球ゴージャス。さらなる一歩に向かって創作活動を続けるココロの内を聞いてみた。

基本的にやりたいことをやるのが俺たちの芝居。アタマで考えるんじゃなく、カラダが自然と求めるているモノを大事にしてそこに向かうというか。(岸谷)

──本作の構想はいつ頃からあったんですか?

岸谷 前回公演をやっている頃にはもう「次は少人数の芝居をやろう」っていうのは決まっていて…。

寺脇 ああ、いや、もうちょっと前からあったよね?

岸谷 そうだね。次の芝居、その次の芝居っていうことは常に別の回路として動いてるからね。前回の『星の大地に降る涙』は大人数の群衆芝居でとても地球ゴージャスらしいエンターテイメントでしたし、今後もゴージャスがお客様に見せていきたい芝居の形態だとは思うんですよ。でもそうすると一方でまったく違う系統の芝居にも欲が出て来る。

寺脇 決して戦略を話し合うとか、計算しているというわけではないんですよ。五朗ちゃんがよく「何に飢えてるか」っていうことを言うんだけど、基本的にやりたいことをやるのが俺たちの芝居。アタマで考えるんじゃなく、カラダが自然と求めるているモノを大事にしてそこに向かうというか。前作の『星の大地に降る涙』をひとつの集大成としてやり遂げられた次に求めているのは何? 何に飢えてる?っていう答えがここだったんですよね。

──違う人間同士でそこの感覚が合致するのは素敵ですね。ふたりのバイオリズムがしっかり同調している。

岸谷 まあ、そうなんでしょうねぇ。

寺脇 …ですね。この15年で徐々に大きな劇場でやれるようになってきて、「もっと行きたい!」「もっと行ける!」っていうときは二人でガンガン行きましたし、そこを経て今はまたちょっと人間の感情のほうにグッと入って行きたい気持ちになってるんですね、たぶん。

岸谷 それに、6人でやっても30人、40人でやるエンターテイメントを超えるモノが創れると思うんです。音楽と踊りという肉体表現と共に、ココロの隅っこをくすぐるような芝居を、ね。

──では、キャスティングのポイントと言うと?

岸谷 求めているのはやはり"板の上のエンターテイメント"なので、劇場に立つことを一番の仕事にしている人、オンステージのプロフェッショナルに集まってもらいました。

寺脇 ふたりでまず歌のうまい人、そして浮かれることなく舞台に足がガッチリついている人とやりたいっていうところから始めて…抜群のキャスティングになったと思います。

──現代劇ですか?

岸谷 そうですね。決して飛ばない…いや、ある意味飛んでいるとも言えるけど…。

寺脇 不思議な空間にはなるでしょうね。

──でもやっぱりストーリーは未だ秘密(笑)。

岸谷 そうなんですよ。まさに『Xday』。良かった〜、このタイトルにして(笑)。

俺と五朗ちゃんが25年前に始めて出会った日、これは確実にX day。(岸谷)

──(笑)。『星の〜』では"反戦"が大きなキーワードになっているというお話がありましたが、例えば今回は何かそういった物語の核になるようなコトバはありますか?

岸谷 うーん、ひと言でいうのは難しいですね。『X dax』っていうのは元々は何十年先でしたか、惑星が当たって地球が滅亡しちゃうかもしれないっていう話しがあってそこから取ったんですけど、実際、もの凄い数の星がある中で衝突する確立なんてまずないんですよ。それでふと思ったのは、実は僕らは毎日がx dayなんじゃないかって。僕らが創る芝居もそうだし、今回の6人の俳優が一同に揃うということももうX day。人間にとって誰かと出会うって、一番素敵なことでしょう? それが一生のつき合いにあるか本当にその場だけで終わってしまうのかはわからないけど、そういう"毎日の出会い"みたいなことは一個、テーマではあるのかなぁ。

寺脇 例えば俺と五朗ちゃんが25年前に始めて出会った日なんて、これは確実にX dayでしょうね。

岸谷 あ〜、そうだよねぇ。

寺脇 まだ不良みたいな格好してた五朗ちゃんが稽古場にいてね(笑)、その日僕が(スーパーエキセントリックシアターに)入団してそのまま飲み会に流れて…会った初日なのに気づいたら最後の最後、二人で残ってまだ飲んでた。

岸谷 当時40人くらい劇団員がいたのにな。考えてみればなんでアレ、二人だったんだろう。

寺脇 恐らく支払い済んでたからでしょうね。「まだ飲める!」って(笑)。

岸谷 そうか!

寺脇 ま、そのときの二人の想いはまだ劇団の中でいい役を取るっていうのが一番大きな目標だったんですけどね。

──でもそこからもう今日までずっと、変容し続ける目標に向かって共に走り続けてきたわけですよね。好きなものが似ている?

岸谷 そうですね。意見調整をしたっていうのでもなく、自然にここへ向かってたっていう感じですから。

寺脇 最終的にはね、そうですよね。例えばAとBの村があったら俺たちは迷わずAに行くんですよ、一緒に。で、着いてからはそれぞれ好きなことをしてるんだと思う。そこがいいんでしょうね。

──お客さんも芝居を通してそういう絆が結ばれてるふたりの創るモノが見たくて劇場にくるんだと思います。

岸谷 それはホントにありがたいです。今回も取材も何もまだ始まっていないうちにチケットが売れて、もう追加公演も出せることになって…。そういうのを見ていると、なんかね、「地球ゴージャスを観に行くとその度に新しいモノが観れて楽しめるよね」っていう意識が少しずつ広まって行ってるのかなっていうのは感じますね。「ゴージャスあるよ」「じゃあハズせないね」って思ってくれる人がたくさんいるんだなって。

寺脇 ゴージャスのファンクラブがあるのもそういうことなんでしょうね。だって、俺や五朗ちゃんが個人のファンクラブなんて持ったとしても…。

岸谷 あんなにはこないだろうねぇ〜(笑)。やっぱり芝居なんだよ。

寺脇 来ないね(笑)。芝居だね。だから地方にもどんどん行こうって決めてるんです。やっぱり東京・大阪だけだと来たくても来られない方がいらっしゃると思いますし。

──前回、三浦春馬さんが出演されたことをきっかけに、またゴージャスファンの裾野が若い人にも広がったような気がしますが。

寺脇 そうですね。春馬のファンで芝居を観に来てくれた若い子たちから「地球ゴージャスがすごく好きになりました」っていうお手紙ももらいましたし、芝居を通じて何か感じてもらえるものがあったと思うとそれがうれしいですよね。

岸谷 『星の大地に降る涙』をきっかけにいろんな芝居を観に行くようになったっていう声も届いてます。ゴージャスを体験して芝居自体を好きになって興味を持ってくれた。演劇人口を増やすという使命を果たせてるかなって思うと、それはもうホントにうれしい。

──だからこそ続けて行くプレッシャーみたいなモノを感じることは…。

岸谷 全然ないです。もちろんゼロから芝居を創るのはしんどいし憂鬱なんですけど、これはもう誰にやらされているのでもなく自分たちから勝手にやってることなので。泳ぐことが当たり前の魚のように、芝居を創るのがあたりまえっていうか。

寺脇 だからと言ってそこにあぐらをかいちゃいけない。毎回ゼロになって一生懸命創るってことを怠ったらお客さんにはすぐ見抜かれてしまいますからね。本当に苦しんで創らなければ伝わらない、これでダメだったら全部おしまいだぞっていうくらいの気持ちで挑むっていう意味での危機感は常にありますけど。

岸谷 作品はやっぱり僕らの年表ですよ。作品タイトルを見たらたぶん我々がそのとき何を思っていたかとか、そこに込められてますから。

──『X day』、ますます意味深なタイトルに聞こえてきます。

岸谷 結局ね、僕が本を創ると…まあそれがゴージャスのテーマでもあるんだけど、「生きること」になるんですよ。いかにして死ぬかはいかにして生きるかっていうような…大きく言えばね。でも今回はそこをもっともっと日常的に見つめて、非常にセンシティブに描こうと思ってるんです。誰もが抱えているような"小さなお話し"を。

寺脇 うん。小さなひとつひとつを乗り越えるステップが実はすごく大事なんだよっていう、より個人に返っていく作品になるんじゃないでしょうかね。

岸谷 まあ…頑張りますよ。これから本番に向けて稽古して飲んで稽古して飲んで稽古して。

寺脇 飲んで稽古して飲んで。

岸谷 稽古しないで飲んで。

寺脇 アッ。それ、一番だよ(笑)。

〈取材・文/横澤由香〉
〈写真/渡辺マコト〉

2010-06-03 11:00

 これまで歌舞伎作品では何度もタッグを組んで世間をアッと言わせてきた野田秀樹と中村勘三郎が、またしても新たな挑戦をすることがわかった。この秋、NODA・MAPの番外公演として上演される『表に出ろいっ!』は野田と勘三郎による"現代劇"ならぬ"現在劇"となるという。上演場所は、野田が芸術監督を務める東京芸術劇場、しかも小ホール。濃密な空間で、野田と勘三郎によるがっぷり四つの演技合戦が観られるという趣向だ。

私ども、このたびめでたく結婚をすることになりました。

 5月某日、「野田秀樹と中村勘三郎の二人からお話ししたいことがございます」というなんだか謎めいた記者会見のお知らせが届き、詳細はなにも明かされないままに会場に集まったマスコミ陣。その前に野田と勘三郎が揃って登場し、早速その"企み"についてが語られ始めた。

 まずは野田が「私ども、このたびめでたく結婚をすることになりました」と、いきなり衝撃の告白! とはいえそれはもちろん、このNODA・MAP番外公演で上演する芝居のなかでのお話。

 「9/5〜28までの短期間の結婚でして、どちらが夫で妻かというと、私が妻の役です。古いタイプの夫唱婦随の家庭で、その家庭が崩壊していくドラマをお見せしたいと思っています」と、野田はいたずらっ子のような表情で企画の内容を明かしていく。

 タイトルの「表に出ろいっ!」は、実際に勘三郎の口癖なんだとか。

 「新橋かどこかで飲んでいるとき、若い女の子と芝居談議になって、その子が生意気なことを言ったら彼(勘三郎)は憤然と立ち上がり、その若い女に向かって「表に出ろいっ!」って言ったんです。それが私の頭に残っていたので、それをそのまま今回のタイトルにしました」

 といっても、当の勘三郎は「私は覚えがございません」と苦笑い。野田と夫婦役を演じるのはもちろん初めてなうえ、今、現在を舞台にした芝居も勘三郎は「今まで一度もやってない気がする」とのこと。

 「だから、よく一緒にやることになったなあと思ってね。これでもし僕が降ろされたら、ひとり芝居になっちゃうかもしれないよ(笑)。だけど僕もどうして引き受けちゃったんだろう。歌舞伎座が建て替えで、仕事がないんだよね。この芝居で食いつなぎますよ!」といかにも楽しそうに、笑いを誘うコメントを連発する。

ぜひ若い人にも、なんとか劇場に足を運んでほしい

 そして今回はもうひとつ、企みごとがあると言い「二人は現在、娘を募集中です」との野田の言葉に、どよめく会場。

 「夫婦の新居には、娘がほしいんです。それで、今からオーディションをしたいということですね。ちなみにオーディションは7/12に行います!」

 つまり今回の芝居は夫婦とその娘による、三人芝居ということになる。それにしても、この夫婦の娘となるとどんな女の子を想定しているのだろうか?

 「20歳から25歳に見える方で、性別はやはり女性のほうがいいかな。だって野田秀樹が女形をやるわけですから。まあ、女性に見えればいいんですけど。有名な方でもいいけど、無名な方でもOKです。とにかくイキのいい、可愛らしい人がいいですね」と勘三郎。野田によると、登場する家族は三人ともなにかにハマっているものがあるそうで……。

 「夫はアミューズメントパークが大好きな能楽師。私が演じるのはアイドル系にハマっている妻。そして娘はファーストフード好きのロンドン帰りの留学生ということになります。ただ、セリフの分量がすごくある。だからかなり達者じゃないと……って、でもあまり最初からプレッシャーをかけてもよくないか(笑)」

 その野田は、昨今の文化状況を憂える意味もあって、今回この経験未経験を問わないオーディションを考えたとも。

 「若いところから新しい力が出にくくなっているなとは感じていたんです。大きな事務所とか、そういうものによって俳優が作られていきやすい状況なので、そうではないところ、演劇からも育てられないかなと思って。僕らのころは若い人の動きによって文化が始まっていたのに、それが今では若い人たちがだんだん文化に入れなくなってきている気がして、なんだかもどかしくて。それでぜひ若い人にも、なんとか劇場に足を運んでほしいということです。そして、この試みはこの芝居に限るわけではなく、第1弾としてはその前に上演されているNODA・MAP『ザ・キャラクター』(6/20〜8/8、東京芸術劇場中ホールにて)でも、限られた枚数ではありますが高校生には割引チケット1000円で観ていただきたいと思っています」

 またそのあとの質疑応答では上演期間が近いということで、その『ザ・キャラクター』と『表に出ろいっ!』との関連性を聞かれた野田が「モチーフが"人が信じるもの"ということで関連性はあるのと同時に、実は仕掛けとして『ザ・キャラクター』のなかのある部分の話が『表に出ろいっ!』のなかにもちょっと出てきます」、そして「人が一回信じてしまうと、なかなかその呪縛からとけないというか、離れられなくなる。ちょっと向きを変えればその信じているものから逃げられるのに、というような話です」と芝居のヒントを少し教えてくれたほか、野田と勘三郎の初めての出会いは20代で、渋谷の道路ですれ違ったのが最初だったなど、思い出話にも花を咲かせていた。

 会見の最後に行われた写真撮影ではなんと、よく観光地にある顔出しの記念写真用のパネルも登場。その穴から顔を出して、満面の笑顔の野田と勘三郎。25年以上にもなるという長年の付き合いから既に息もピッタリ、まさに固い絆で結ばれた夫婦のような二人の姿がそこにはあった。今回の企みもまた大きな話題を集め、演劇史に残る伝説の舞台となりそうだ。

〈文/田中里津子〉

NODA・MAP 公演情報

■NODA・MAP 第15回公演「ザ・キャラクター」

公演日:2010/6/20(日)〜8/8(日)

会場:東京芸術劇場 中ホール

作・演出:野田秀樹

出演:宮沢りえ/古田新太/藤井隆/美波/池内博之/チョウソンハ/田中哲司/
   銀粉蝶/野田秀樹/橋爪功

★追加席販売決定! 6/5(土)10:00〜先着順受付


■NODA・MAP 番外公演「表に出ろいっ!」

公演日:2010/9/5(日)〜9/28(火)

会場:東京芸術劇場 小ホール1

★ヒロインオーディションの詳細はこちら
NODA・MAP公式サイト http://www.nodamap.com/


2010-05-31 13:02

 グレアム・グリーンの小説『叔母との旅』を読んだことがある人なら、こんな叔母さんがいたらなあと、必ずうらやましく思うに違いない。75歳で年下の恋人あり、年をとってもチャーミングで、バイタリティにあふれている。もっとも、彼女に振り回されることになる甥っ子にとっては、災難だったかもしれないが。無類に面白いこの長編傑作小説の舞台版は、日本でも演劇集団円が上演しているが、今回、久しぶりの登場となった。

 銀行の支店長を務めあげ、引退して静かな生活を送っていたヘンリーは、55歳。ダリアの栽培だけが趣味の平凡な男で、結婚もしていない。このまま何事も起こらない人生のはずだったのに、母の葬儀で50年ぶりに叔母オーガスタと再会したことから、ヘンリーの生活は大きく動き始める。叔母に誘われるままに、最初はブライトンへの小旅行、次はオリエント急行に乗って、イスタンブールへ。ついには、南米アルゼンチンからパラグアイへ。

 旅の途中で、叔母が語る昔話は、途方もないものばかりで、犯罪の匂いさえする。自由奔放で、かなり冒険的な人生を送って来た叔母にびっくりしながらも、ヘンリーは、次第に叔母に共感していく。叔母が提案する旅は、実はみんなある目的があってのもので、時には警察が介入してきたりもする。冒険などとは、一切縁のなかったヘンリーが、叔母との旅を通して、人生の喜びを知り、まるで違う生活を選びとることに。常識やモラルにとらわれない叔母の生き方や考え方は、痛快そのもの! ユーモアとアイロニーたっぷりの、そして密やかなロマンスもある冒険物語は、面白い!の一言につきる。

 小説では登場人物も多く、時代もいろいろで、舞台もイギリスから南米までころころ変わる。スピード感を活かすために、舞台版では、4人の俳優が老若男女24人もの役を演じ分ける。主人公のヘンリーは3人の俳優が交互に演じ、その一人はオーガスタ叔母さんの役も演じる。会話の途中でも役が変わるので、大げさな衣裳の変更などはなく、例えばスカーフ一枚やスカートなどで、女性役も表現することになる。一瞬で、そこがどこなのか、誰が話しているのか、観客に分からせなければならない。この難しさに挑戦できるのは、選ばれた俳優だけに許される特権のようなものだ。今回は、段田安則、浅野和之、高橋克実、鈴木浩介の4人。実力派証明済みの俳優ばかりで、きっと、素晴らしい「旅」に連れて行ってくれるに違いない。劇場の椅子の座っていても、世界旅行が、そして魂の旅ができるのだということを、体験してほしい。

文/沢 美也子

公演概要

日程:8/20(金)〜9/19(日)

会場:青山円形劇場 (東京都)

最速プレオーダー:5/31(月)12:00〜

一般発売:7/3(土)


2010-05-28 12:19

 モーリス・ベジャールやマシュー・ボーンの舞台で高い評価を得ている日本を代表するダンサーの首藤康之と、カンパニー"水と油"での活動、そしてパリへの留学を経てますますその表現力に磨きをかけている演出家・振付家で自身もパフォーマーでもある小野寺修二。この、世界を相手に活躍するパフォーマンス界の異才が、伝説の作品で再びタッグを組む。

 2008年に、180席という小さい空間であるベニサン・ピットで約1ヶ月半にわたり53回公演を決行した『空白に落ちた男』。その完成度や新鮮味のあるパフォーマンスが話題となったこの作品が、PARCO劇場に場所を変え、さらにキャスト2人を入れ替えてリニューアル上演される。この舞台で、クラシック・バレエのステージで見せる姿とはまた一味違う魅力を発揮する首藤に、作品への想いを語ってもらった。

「約14週間かけてつくりあげていった初演の舞台。稽古はまるでジグソーパズルのようでした」

――そもそも、首藤さんと小野寺さんとの接点、出会いはどこにあったんでしょうか。

 実は僕、ずっと"水と油"のファンだったんです。でも初めて小野寺さんにお会いできたのは、"水と油"が活動休止する直前で。本当は客演みたいな形で、あのなかに自分も入ってみたかったくらいなんです。音楽の選曲のセンスや小道具の使い方も素晴らしいし、隙のない演出、パフォーマンスですしね。言葉を持たないマイムというのも、僕のやっている世界とすごく共通していましたし。あの世界に自分もいつか身を置いてみたいなと、ずっと思っていたんです。そうしたら、小野寺さんがパリに留学されているときに、ちょうど僕もベルギーでずっと仕事をしていたので向こうで何度か会っているうちに、このプロジェクトの話になってきてね。

――じゃ、パリで生まれた企画なんですね。

 ええ、そうなんです。

――それで、初演をやってみての手応えはいかがでしたか。

 これは75分くらいの作品なんですが、約14週間、4カ月近くかけてつくりあげていったものなんですね。まずは出演者5人で自分たちになにができるのか、お互いの身体を感じたりするところから始めて。

――本当にゼロからスタートだったんですね。

 はい。まさに、みんなでつくりあげていった感じです。直接的な動きの稽古に入ってからは6週間くらいで、それだけでも普通の作品より稽古期間が長いんですけど。なんだか、ジグソーパズルのような感じでした。もともと絵があって、それをピースに分けますよね。小さい子なら4つに分割するようなものを、1万ピースくらいに分けていったような感じかな。だからこそ、完成したときの満足感、達成感はすごくありました。

――改めて、小野寺さんのつくりあげる作品の面白さ、魅力とは。

 不条理の世界といいますか、すぐに観客を不思議な世界に連れてってくれるんですよね。そして、いつも自分の人生とリンクさせながら観ることができる。その不思議な感覚が面白いんです。

――それは首藤さんご自身が、お客さんとして観ていて感じられていたことですか。

 はい。でも、実際に自分が舞台に立ってやってみても同じ感覚でした。どこか違う箱の中に、ポンと入れられる感じで。

――箱の中の世界の住人になるような。

 そうです。しかも、自分がまったく想像してないようなところにまで、連れてってくれるんですよね。

「これはいずれ古典になるような作品だと思うんです。今回の再演はそのための次への一歩ですね」

――今回は再演とはいえ、劇場もかなり雰囲気が違ってきますね。

 はい。劇場は少し大きくなりますし、渋谷という街で上演されるという点も違いではありますが、でもPARCO劇場という空間にも、渋谷という街にも、この作品は合っていると思いますね。ただ今回はキャストが2人、変わるので。5人のうち2人変わるというのは、やはり大きいですからね(笑)。そこはもう、まったく同じものをやったとしても、自然と違ってくるのではないかとは思います。僕自身も、その点はすごく楽しみなところです。それと僕、これは本当にいずれ古典になるような作品だと思うんです。キャストが変わっても、今後も長く、上演され続けてほしいんです。今回の再演は、この作品が古典になるための次への一歩だと思いますね。

――cobaさんの音楽も、とても印象的です。

 あれはすべてオリジナルで、先にあった音楽ではないんですよ。cobaさん自身がリハーサルに何度も来てくださって、あとからつけていったんです。"水と油"時代から小野寺さんは何度もcobaさんの音楽を使ってらっしゃったんですが、オリジナル曲をつくっていただくのは初めての作業だそうです。でもやはりcobaさんも鋭い方なので、リハーサルを見て「じゃあこんな曲を合わせてみたらどう?」って音をつくってきてくださって。その曲でやってみると、驚くほどぴったりなんですよ。それまでの稽古は無音でやっていたんですが、本当にイメージ通りの音楽をつくっていただけたので、僕たちはより演じやすくなりましたね。

――今回は、ダンスファン以外のお客様も大勢いらっしゃるのではないかと思います。でも、もしかしたらダンス作品を敷居が高いと敬遠してきた方もいるかもしれません。首藤さんにぜひ、そういう方の背中を押してもらいたいのですが。

 演劇をよくご覧になっている方にとっては、言葉のない世界って不安だとは思うんですよ。「セリフがないのにわかるのかしら?」とか。でも、誰でも初めて外国に行くときって言葉も通じないし、不安じゃないですか。それでも初めてフランスに行ったら、フランス語はわからなかったけどとにかくすごくキレイだったとか、そういうことってあるでしょう。それと同じで、思い切って飛び込めば本当に素敵な世界なので、ぜひ足を運んでいただければと思うんです。それに、言葉のない世界を観ると、より言葉の重要性を感じるということもありますしね。逆に僕らがストレートプレイをやったときには、動きの重要性を感じますから。その両方の世界を行ったり来たりするというのも、とても素敵な旅になるんじゃないかと思うんです。

――確かに、セリフがないのになぜここまで物語が伝わるんだろう?と驚くことがありますね。

 そうですよね。(笑) 言葉のない世界も言葉のある世界もどちらも偉大なので、尊重しながら両方を行ったり来たりすると、とても楽しい旅になるんじゃないかと思います。今回はきっと特に不思議な世界観になるはずなので、ご覧いただいた方それぞれがいろいろなことを感じてもらえたら、僕もとてもうれしいですね。

公演概要

「空白に落ちた男」

作・演出:小野寺修二
音楽:coba
出演:首藤康之 安藤洋子 藤田善宏(コンドルズ) 藤田桃子 小野寺修二

公演日:10/7/24(土)〜8/3(火)
会場:PARCO劇場 (東京都)


【e+Movie】初演ダイジェスト映像!「水と油」小野寺修二&ダンサー首藤康之&coba

2010-05-25 14:33

 自身の劇団、ペンギンプルペイルパイルズ(PPPP)だけにとどまらず、劇団外のプロデュース公演などでの活躍も顕著な、今、注目の劇作家で演出家でもある倉持裕。2006年にM&O plays+PPPPプロデュース公演の第1弾として上演した『ワンマン・ショー』では、岸田國士戯曲賞も受賞している。その彼の最新作にあたる『窓』は、ロシアの文豪・ツルゲーネフの『はつ恋』に想を得た恋愛劇だ。舞台を日本に移し、ある女優をめぐる男たちの愛憎が渦巻く中で、成長していく青年の姿が描かれていく。悪女とも思える女優役に挑戦するのは野波麻帆、そして青年を演じるのは高橋一生。倉持作品にはどちらも初参加となる二人と、新境地ともいえるこの作品に取り組む倉持に話を聞いた。

「こういう悪女みたいな役ってやったことがないので、今回はすごく楽しみです」(野波)

――――M&O playsとペンギンプルペイルパイルズの共同プロデュースという形では2回目の公演になりますが、やはり前回の『ワンマン・ショー』をやられたときに、手応えを相当感じられたということでしょうか。

倉持 そうですね。手応えは確かにありました。あの公演以降、ペンギンでゲストの方を呼ぶ場合も怖気づかずにやれるようになりましたし。あれからいろいろなことをやってきて、そしてこの第2弾ということになるので、今回はまたちょっと違う形の公演になるかもしれないですね。

――――ツルゲーネフの『はつ恋』を下敷きにされるとのことですが。このモチーフを選んだのは、なにかきっかけがあったんでしょうか。

倉持 初めは若い男女と中年の男という設定で、違う流れのプロットを書いていたんですが、途中から『はつ恋』の物語を思い出してきて。まあ、実はそれほど好きな小説だったわけでもないんですけど、プロット自体は気に入っていて。あの相関図はわりと使えるんじゃないか、あれを自分なりに発展させて書きたいなと思ったんです。

――――高橋さん、野波さんはこの舞台に参加されることになって、まずどんなことを思われましたか。

野波 私は、今回のお話をいただいたとき、とにかくめちゃくちゃうれしかったんです。ペンギンさんの舞台は以前から観させていただいていて、「ああ、私も出たい!」とずっと思っていたので。だからすーっごい、うれしかったです! しかも今回は私、男性を魅了していくような役なので。果たして自分にそんな引き出しあるのかなあ?とも思いつつ、でもここは一生懸命がんばりたいと思います。

倉持 いや、野波さんなら大丈夫ですよ(笑)。

野波 だけど、こういう悪女みたいな役ってやったことがないんです。なんだかだんだん年齢があがるごとに、すごいアホな役ばかりやってる気がしていて(笑)。だから悪女役をやらせていただけるのは、すごく楽しみです。

高橋 僕は倉持さんとは『アイスクリームマン』(2005年)のときに、倉持さん演出の舞台ではないほうに出ていたんですけど。

――――岩松了さんの作品を連続上演するという企画の、別の作品に出られていたんですね。

高橋 ええ。でも倉持さん演出のほうも観させていただいたりしていたので。今回のも面白そうだなあ、ツルゲーネフを下敷きにするなんて一体どんなものになるんだろうなあって、すごく楽しみでした。人間の面白いところって、大戦慄より小戦慄だと思うんです。ちっちゃく戦慄しちゃうときが一番ゾゾ―ッとするというか、そのほうが人間味がものすごく出てきてしまったりする気がして。ツルゲーネフの『はつ恋』にはそれがあって、倉持さんの書かれたあらすじにもそれを強く感じましたね。

「あるときは滑稽であるときはすごく怖い。倉持作品は観ていて小気味良いです」(高橋)

――――倉持さんとしては、おふたりにはどういうふうに演じてほしいと思われていますか。

倉持 そうですねえ。そんなに、役を作り込まなくてもいいなとは思っていて。だから、野波さんだったら確かに悪女的な役なんだけれど、だからといっていかにも悪女っぽく振る舞わないほうが結局、男はひっかかるじゃないですか。ただ普通に会話しているだけなのに、っていうほうが。

高橋 うんうん。

野波 ふうん、そういうものですか。

倉持 話す相手によって、それぞれ違う過去をしゃべる女がいいなと思っているんです。生い立ちみたいなものを話すんだけど、全部ウソというか、どれが本当なのかわからない。それもひとつひとつ、ちょっとだけかわいそうな生い立ちだったりして。

野波 ああ〜、なるほど。

倉持 「そんな話を俺だけにしてくれた」ってことで、男は単純にグッときたりするから(笑)。ただ、結局、憎たらしい女だったなっていうイメージにはしたくなくてね。

野波 それって、難しそうですね! 

倉持 そう?いや、演じる側としてはいつも通りで大丈夫。セリフで語られる内容の真偽の程がわからなくて観客は戸惑うとしても、役者はすべて本当のこととしてしゃべればいいわけだから。自然体でいいとは思うんですよね。

野波 それを聞いて少し、気が楽になりました(笑)。

倉持 一生くんに演じてもらうのは、人間観、人生観みたいなものをどんどん更新していくような役なんですよね。一応、シナリオライターになりたい人の役だけど、そんなにまだ人生経験もなくて。人間とはこうなんだ、恋愛とは、人を愛するとはというような固定観念があるところから物語がスタートして、そこから、ある種異常な愛憎の形を見ることになり、その固定観念を更新していくというような役なので。なんか、揺れててほしいですね。最初はわりと達観した感じなんだけど、それがだんだん揺らいでくる不安定な感じ。そういった起伏は見せたいし、それを楽しんで演じてくれたらいいなと思います。

高橋 はい。楽しみたいと思います(笑)。

――――おふたりは倉持作品の、どういうところに魅力を感じていますか。

野波 私は倉持さんの舞台を初めて観たとき、独特の空気感を感じたんですよね。ちょっとモヤがかかってるみたいな、そういう空気感があって。さらにまた次の違う舞台では、人間の怖さとか、人の闇みたいなものを感じて。それも「こうです!」というわかりやすい感じではなくて、じわじわじわじわ、あとから来るんですよね。観終わったあともずーっと考えちゃうようなあの感じが、大好きなんですよ。そういう世界に今回は自分も入れるのかなと思うと、すごい楽しみです。

高橋 なんか、「激しい川ほど、表にはそういうふうに見えない」みたいなことわざがあった気がするんですけど。倉持さんの作品を初めて観たとき、まさにそういう感じだなと思ったんです。急流ほど、表面は穏やかに見えるらしいんですよね。それと同じで表層と内側の差、見た目の温度差。一見ドライですごく静かに見えるんだけど、暗部がすごいことになってる、みたいな。人間の本質って、実はそうだと思うんです。そこを描いているのが面白かったですね。それがあるときは滑稽で、あるときはすごく怖い。そこは観ていて、小気味良いですね。

――――倉持さんとしては今回、お客さんにはどんなことを感じてもらいたいですか。

倉持 作品の内容としては、平たく言っちゃえば愛の形ではあるんですよね。特殊だろうけどこういう愛もありますよっていうような。恋でも愛でも、反応の仕方は人それぞれ違うわけで、それをバリエーション豊かに見せたいと思っています。それとは別に、もう少し自由な芝居の作り方をしたいなとも思うんですよ。これも最初に考えたときにはワンシチュエーションで、別荘のひとつの部屋の中でやるつもりだったんですが、ちょっと今はもっと飛躍させたくて。なるべく、脱線したいんです。

――――脱線、ですか?

倉持 劇中劇みたいなものも、いくつか散りばめていきたいなと思っていて。

――――本筋とは違う物語も織り交ぜていく?

倉持 そうですね。それを散りばめることで本筋を目立たせるような作り方をしようかな、と。無意識に自分の中で演劇というものはこうだって考えが固まってきつつある気もするので、ここでもう一度疑って、改めて芝居という表現はもっと自由だということを自分で確認したいし、お客さんにも再確認してもらいたいんです。

「昔の作品を下敷きにしていますが、わりと目新しい恋愛劇になる気がします」(倉持)

――――本番に向けて今、楽しみなことは。

野波 楽しみはいっぱい、ありますよ! 稽古が始まってみたら、私の気持ちがどういう風に動くのかとか、みなさんのお芝居と共鳴したときにはどうなるかとか。こればかりはやっぱりやってみないとわからないですしね。そのへんの面白さは一番、演じるものとしては感じるところですし。お稽古ではこうだったけど、いざ本番を迎えて舞台に立ってみたらまた違う気持ちになったりもするので、その揺れというか、そういう心の動き方みたいなものが、今は一番楽しみです。

高橋 そうだなあ、一番楽しみなのは人との出会いじゃないですかね(笑)。人を知れるというのは、舞台の醍醐味だと思うんですよ。年をとればとるほど、人と知り合えることが少なくなってくるじゃないですか。こんな年になって、初対面の人と出会って「よろしくお願いします」ってこと、人生ではあまりないことなので。特に、舞台の稽古場って独特なんですよね。本当に、大勢が団結していく現場ですし。でもちなみに、実は僕と野波さんって同じ学校の同級生なんですよ。だからそういう意味では、既に知り過ぎてるくらいに知ってるんですけど(笑)。

――――えっ、本当に同じクラスにいらしたんですか?

野波 ええ、そうなんです。高校の3年間、ずっとクラスメイトだったんです。

倉持 僕は全然、そのことは知らずにキャスティングしていて。今日、さっき初めて聞いたんですよ。

――――なんだか、不思議ですね。

野波 そうなんですよ。

倉持 だけど、なかなか考えられないよね。同級生と一緒に仕事をする、一緒に芝居をするっていうのは。

高橋 しかも、本当にただ同級生だったってだけで、これまでまったく一緒にやったことはなかったから。

――――初共演なんですか?

野波 ええ、初めてなんですよ。

高橋 まさか高校生のころ、こうなるとは思ってなかったし。

野波 まったく思ってなかったよね。

――――再会というか、これも一種の出会いですよね。

高橋 そうですよ、出会いですよ(笑)。

野波 うん、ホントにそうですよね。

――――では最後にお客様へ、メッセージをいただけますか。

野波 もちろん面白い、いい舞台にしたいですし、本当に大勢の方に観に来ていただきたいですね。いやホント、私自身もどういう舞台になるのか、すごく楽しみなんですよ。もうとにかく、がんばります!(笑)

高橋 僕も自分が出ていなかったら、ぜひ観たいと思うくらいに楽しみな作品です(笑)。現実離れしている話も確かに面白いとは思うんですけど、こういう、現実と並行してあるような世界で展開していくものって、隣り合わせの喜びだったり恐怖だったりが感じられて、それがより面白いんじゃないかと思うんですよね。覗き見感覚というか、そのへんも楽しんでみてください。

倉持 確かに、ツルゲーネフという昔の作品を下敷きにはしているんですけど、わりと目新しい恋愛劇になる気がしています。描き方もさっき言ったように、いろいろ脱線しながら蛇行しながら進んでいきますし、たぶん見た目にも新しい芝居にできるんじゃないかなと思っているんですよ。


■M&O plays+PPPPプロデュース『窓』
作・演出:倉持裕
出演:高橋一生、野波麻帆/小林高鹿、ぼくもとさきこ、玉置孝匡、
   近藤フク、吉川純広、内田亜希子/河原雅彦
東京公演:2010/9/16(木)〜9/26(日) 下北沢本多劇場
大阪公演:2010/9/29(水) 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ

2010-05-19 19:08

 管理人の女性を除く住民全員がゲイ、というアパートを舞台に、哀しくて笑えるテンポの良い会話劇が繰り広げられる『−初恋』。作・演出の土田英生さんと、出演者の田中美里さん、片桐仁さんにお話を伺いました。

ひとりひとりの個性を活かしつつ、いいパス回しができる芝居をつくりたいですね。(土田)

――この作品は97年に初演されましたが、この作品にまつわる思い出は何かありますか?

土田 実は僕の役者仲間の女の子が、ゲイのお店の人を好きになっちゃったんです。それで「男性が行った方が喜ぶから一緒に来て」と言われて僕もお店について行ったんです。すると、彼女は彼のことを好きなのに、彼は僕の方に寄って来ちゃって…(笑)。その彼女の切ない気持ちを思うと、どう振舞ったらいいかと迷ったりして…そんな実話がベースになってできたお話なんです。初演時はゲイの方たちからたくさんのお手紙をいただき、中には厳しいご意見もありましたが、逆に自分達の理解者と思ってくれて、その後、他の芝居も色々と観に来てくださった方もいます。

――現在はゲイに対する見方も変わり、初演の時とは状況も違ってきているのかもしれませんね。

土田 そうですね。それで設定が古くならないようにするため、場所を過疎の漁村に移しています。

片桐 脚本を読んでみて、ゲイうんぬんではなく、会話劇として面白いと思いました。「ゲイは卑屈になるか居直るしかない」というセリフがあって、そういう気持ちを内包している者たちのやり取りだから、けんか腰になっていても、なんか笑える部分があって…いい設定だな、と思います。

――東京公演の会場である三鷹市芸術文化センターについての印象は?

土田 大きさ的にやりやすいですね。今までに色々なところでやってきましたけど、ポンポンと弾む会話劇には、1000席以上もある所では成立しにくいですよ。

――片桐さんは三鷹市芸術文化センターは2回目ですね。

片桐 ええ、そうです。前回はホールの裏手にある公園で、四つ葉のクローバーを見つけて盛んに取っていた覚えがあります(笑)。

――田中さんは、土田さんの舞台への出演は2回目ですね。どのような感想をお持ちですか?

田中 そうですね。前回の土田さんの印象は、舞台上によく出てきてよく動く、熱血演出だな、という感じです。お芝居がひとつのセリフで完結せず、みんなで繋いでいって最後に落ちがある、というのが楽しかったです。

――今回の出演者に関しては、土田さんのどんな思いがあったのでしょうか。

土田 このような組み合わせはめったに見られないと思うんです。これまでの枠を全部はずして、今回は自分のやりたい人に声をかけさせてもらいました。だから本当に楽しみです。どう機能するかはわからないけど、うまくいけば間違っていなかったってことになりますし。

――あらすじを少々教えていただけますか?

土田 ゲイの皆さんが集まっているアパートがあって、田中美里さんはそこの管理人さんです。なぜこんな方がそこの管理人をしているのだろうということについては伏せます。言えないです!(笑) 芝居のタイトルに係わってくる…とだけ言っておきます。片桐さんは、そのアパートのリーダー(今井朋彦さん)とライバル関係にあり、過去の因縁から一度そのアパートを飛び出したが、また同じアパートに戻ってきているという役です。その飛び出した理由にもタイトルが関係していて…つまりみんなの『初恋』をモチーフにして、それぞれの初恋が描かれているというお話です。

――人を愛する気持ちには、異性が好きな人も、同性愛の人も変わりがないということですね。

土田 そう、そうです!「愛することに変わりはない」それもらいましょう!

――今回、「土田英生セレクション」という名前をつけられたのはどうしてでしょうか。

土田 Vol.2があるかどうかは定かではないんですけど(笑)。今回、三鷹さんと一緒にやらせていただいた後に地方のホールにも回るので、何か名前をつけたいと思って。まさか『土田MAP※1』なんておこがましい名前はつけられない(笑)ので、考えているうちにこうなったんです。好きな俳優さんたちと一緒にやれる機会を持つための第一歩としたい、という気持ちからです。

――今回の舞台への皆様の抱負をお聞かせいただけますか?

田中 土田さんとまた一緒にやりたいと思っていたので、初めてのことづくしですが、飛び込んでみようと思っています。今井さんとは先日初めてお会いしましたがチャーミングな方で、どんな風にお芝居で掛け合いができるのかも楽しみです。

片桐 僕はこれまでオカマコントや女装はありましたけど、お芝居でゲイ役というのは初めてで…しかも男全員ゲイでしょ。今井さんという、ストイックなスッーと背筋の伸びた方がライバルという設定なので、自分なりの「ゲイ」をどう表すか、何か仕掛けられたらいいな、と思います。

土田 今井さんはたたずまい自体が綺麗なんですよね。同姓でもちょっとドキッとするくらい。部屋が散らかっているとかは絶対ありえないだろうなぁ。

片桐 こたつとかないでしょうね(笑)。

土田 絶対ないね。こたつで袢纏にみかんとかは…

――もう一人の女性、千葉さんのイメージは?

田中 姉御肌で厳しい方かと思っていたら、とても謙虚な方でびっくりしました。

土田 そうなんですよ。僕は同業者※2ということで、「台本が書けない」とか「稽古場を上手くまとめきれない」とかそんな後ろ向きの話をし合って前向きになれる相手なので…今回もつらいことがあったら千葉さんに話そうと思ってます(笑)。

片桐 初めての役で勉強と思ってますので、土田さん、何か気付いたら言って下さいね。

土田 いやぁ、とにかく気が弱いので…僕がまわりをウロウロし出したら、言いたいことがあるのに言えないんだと思ってください(笑)。

――他の役者さんたちもご紹介いただけますか?

土田 犬飼君は僕と一緒に89年に劇団を旗揚げした時からの付き合いです。その後、彼はうちの劇団を辞めたので、芝居を一緒にやるのは94年以来久しぶりですね。根本君は今回、漁村の住民代表の役をやってもらうんですが、いいクッションになってくれると思います。川原さんは本当に若い、アイドル的な存在ですね。綺麗な顔立ちをしていて、この芝居でブレイクするんじゃないかと。千葉さんとかなり年の離れたカップルの設定です。あと奥村は……劇団員なのでコメントはなしです(笑)。

――最後に土田さんから意気込みを一言お願いできますか?

土田 いいアンサンブルを作りたいと思います。皆さんの個性を立たせつつ、チームとしていいものを作りたいですね。際物きわものの芝居を作ろうとはしていないので、自然な形で見ている人たちに「ゲイ」ということを意識させない芝居にしたいと思っています。
皆様、ぜひお越しください。

3月8日
インタビュー:(財)三鷹市芸術文化振興財団
協力:赤坂レッドシアター

*1 土田MAP:演劇界の第一人者野田秀樹さんがプロデュース公演を行う時のユニット名が『野田MAP』であることをもじったもの。
*2 同業者:千葉雅子さんが人気劇団「猫のホテル」の主宰者でかつ作・演出・出演を務めており、土田さんと全く同じ立場なので。

2010-05-19 15:32

 ゲームだとかパズルだとか、完全にインドア系のイメージが定着している、京都の劇団「ヨーロッパ企画」。しかしその新作公演の題材は、なんとサーフィン! およそ彼らからは縁遠そうなこのテーマを、どのようにあの"ゆるいけど緻密"なコメディで表現するのか? 今回は作・演出の上田誠と、毎回絶妙なボケ・ツッコミ会話で楽しませてくれる役者の諏訪雅&石田剛太に、その内容を直撃。実は前作『曲がれ! スプーン』の公演中から始まっていたという稽古の話や、「ヨーロッパ企画はコメディじゃない?!」と一瞬ドキッとする発言も飛び出した、最新&独占インタビューです。

今回はサーフィンをしないサーファーたちの話。諏訪

──今回のタイトルは、初めて見た時に笑っちゃったほど秀逸ですよね。チラシ画像と合わせて推察するに、ネットサーフィンの話なんですか?

上田 そのニュアンスも入ってくるでしょうが、どちらかと言うと、実際に波に乗るサーフィンの話になります。というのも、今回はとにかく「波」を扱った舞台にしたくて。波や風って、たとえば(テーブル上のコップを指して)このように形状がハッキリあるわけじゃなく、瞬間の物というか、現象みたいな物。そんな物についてあれこれ語るのって、すごく演劇的だなあと思うんですよ。

石田 たとえばサーフィンの世界では、波にいろいろ名前が付いてるんです。固定の形があるわけではないけど、いろんな流れや形に合わせて名前を付けているという。

上田 「掘れた波」(註:斜面が急なカール状の波)とかね。お芝居を作るのも結構、これと似た作業。たとえばこの世にありえないようなモノのタイトルを付けて、それに合う感じの芝居を作っていったら、もともと存在しなかった物質や世界ができあがったりする。波には何か、それに近い面白みがあるのでは? とは、ずっと考えてました。

石田 でも実際に僕らがサーフィンをやるとか、そういうことにはならないんだよね?

上田 舞台上で本物のサーフィンをするなんて、まあ不可能ですから(笑)。それで陸にいるサーファーたちが、サーフィンという遊びや波や海などについて、いろいろと語り合う芝居にしようと思っています。

諏訪 しかも全然、サーフィンをしないサーファーたちの話。

──サーファーなのにサーフィンをしない?

上田 今回のもう1つのモチーフに「伝説」があるんです。「昔こんなすごいサーファーがいた」とか「あの波はどうだった」とかいう感じで、話を進めていく。こういう話をする人たちっていうのは、ほぼ間違いなく伝説の当人じゃない(笑)。その"伝説じゃなさ"が、伝説を語らせるわけで。そういう人たちの群像にも、興味があったんです。

──ということは、実際に動いてサーフシーンを見せるのではなく、会話ですべてを見せるという感じになるんでしょうか?

上田 そうですね、会話中心の芝居になると思います。というのもここ最近、しっかり美術を作りこんだ上で、どうしてもビジュアル化できない部分を台詞で補うというやり方が、一番現実から遠いイメージを作れるということがわかってきたんですよ。たとえば前々回の『ボス・イン・ザ・スカイ』では、ドラゴンの尻尾だけを出しておいて……。

石田 実際にどのように戦うのかは、口で語るだけ。アクションはまったくない。

──でもそうやって身振り手振りで説明するだけでも、観ている側は案外勝手に、ドラゴンと戦うシーンを脳内で作り上げていくものなんですよね。

上田 そうやって観ていただくのが、一番ありがたい(笑)。ただそういう会話に説得力を持たせるには、舞台美術をしっかりと作りこんでおく方が、素舞台で演じるよりも全然効果があるんですよ。

諏訪 それと単純に、美術が面白い方が、観ている人も面白いんとちゃうかなあ?

石田 そうだよね。そういうユニークな舞台美術の地形を生かしながら、ゆるくて笑える会話をするというのが、今のヨーロッパ作品の重要なポイントだと思う。

上田 ただここ最近テーマにしている「高低差のある場所での会話」は、普通に会話をしていても変な雰囲気になるという面白さがあるので、今回も続けたいですね。なので平面的な海辺ではなく、海の上にどこか別の世界があるような……そういう何か、立体的な美術の仕掛けが可能な状況を、今考えているところ。多分現代ではなく、何らかの理由でサーフィンという文化がなくなった、近未来の話になるんじゃないでしょうか。

一般的な"コメディ"ほどには、温度が高いものじゃないかもしれない。上田

──メンバーの日記などによると、すでに稽古が始まってるそうですね。

諏訪 2回ぐらいやりましたね。

上田 僕らの芝居作りは、いつも「どんな群像を描くか」というところから始まるんです。だから1人1人のキャラクターが明確でなくても、集団としてのキャラクターが決まれば、どんな舞台になるのかが大体決まってくる。だけど一口に「サーフィン伝説を語る集団」と言っても、サーフィンに詳しい人たちと全然知らない人たちとでは、果たしてどちらの会話が面白いんだろう? と。それを探るために、エチュード(註:1つの題材に沿って、役者に即興で芝居を演じてもらう稽古)をやりました。

諏訪 ちなみに1回目は、「海の家での会話」というエチュードだったんです。

石田 カキ氷のシロップの話を、30〜40分ぐらい集中的にやったりして(笑)。

上田 で、そのカキ氷の話だけでもう、芝居の概要が見えました(一同笑)。

──ちなみにメンバーで、サーフィン経験者はいるんですか?

石田 いないです。

諏訪 でも石田君は、サーフィン行くって言ってたよなあ?

石田 僕の友達で、すごくサーフィンが好きな子がいるんですよ。一緒に行く時間が全然合わなくて、結局まだ行けてないんですけど。

上田 でもね、今回の舞台の記者発表なんかで「サーフィンをしたことがない人たちが作る、サーフィンの芝居」とか言ったら、単純にキャッチーじゃないですか? だから石田君がサーフィンを始めるにしても、その事実はちょっと……伏せてほしい(一同笑)。

──ちなみに諏訪さんは、何かサーフィンへのアプローチは?

諏訪 いやあ、ないですねアプローチとか。サーフィンに思いを馳せる以外は(笑)。

上田 概念的なアプローチ(笑)。

諏訪 そうそう。でもそれが、最高のアプローチだと思うんですよ。家でダラダラしていても、頭の中では波に乗っているという感じの方が、今回は近いんじゃないかなあ?

上田 確かにスピリットのようなものは、大事な気がしますね。

諏訪 そうよね。何かサーフィン文化って「あそこにいい波が来る」と言ってあちこち移動するところとか、すごく挑戦的な気がする。

石田 完全にサーフィンに、ライフスタイルを合わせたりしますからね。さっき言った僕の友達も「日本で一番いい波が来るのは高知だから」という理由で、高知県に移住する計画を進めているぐらいなんですよ。それって「農業がやりたいから」という理由で田舎に住んだりするのとは、だいぶ違いますよね?

上田 波という全然つかみどころがないものに、自分の生活を合わせるというのがね。しかもその気持ちよさって、波に乗る瞬間だけのモノじゃないですか? ずっと持続する幸せではなく、来るかどうかもわからない瞬間の快楽に、軸足を乗せた生活をしている。そういう人たちは、やっぱり1つの群像としてすごく面白い。

──そんな不確定なモノを追い求める人たちを描くには、確かに具体的なビジュアルがシビアに求められる映像よりも、演劇の方が表現しやすいのかもしれませんね。

上田 それにサーフィンのドラマや映画って、あまりストーリーがなくても、キレイな海の映像さえあれば良い感じになったりしますよね? でも舞台だと、当然そういう風景に助けを借りることができない。だから逆に、話に集中しやすいかもしれないです。

諏訪 いつも新しい試みみたいなのが、作品ごとにあるじゃない? 今回そういうのは?

上田 ……今回はないんじゃないですか?(一同笑)

諏訪 いやいや、それは単に、まだ考えてないってだけだよね?(笑)

──ただ前回、典型的な会話劇コメディだった『曲がれ! スプーン』を観て再認識したんですけど、最近のヨーロッパ企画の笑いは、単純に「シチュエーション・コメディ」とは言いにくい世界になってきてますよね。

石田 確かに『ボス……』なんか、シチュエーション・コメディとは違う気がする。

上田 何でしょうね? コメディと名乗るには、あまり「人間」を笑うようにはできてない。コメディって、もっと人間の言葉の綾(あや)だとか感情の機敏だとか、もう少し近視眼的な視点で世界を描いてると思うんです。でも僕らは、人間や社会をもっと引いた視点で見せる……いわば、水槽の中を観て笑ってもらうというイメージがすごくある。だから一般的な"コメディ"ほどには、温度が高いものじゃないかもしれない。

諏訪 新しい名前付けたいよね、何か(笑)。「コメディ」ってずっと言ってるけど。

──人間そのものより、全体の世界観を見せることに意味があるという点では、オーバーだけどアートパフォーマンスのコンセプトに近づいてる、と言えるかもしれない(笑)。

上田 あー……それはおこがましいですけどね(笑)。でもホンマにね、そんな感じなんですよ。自分では絶対言わないですけど(一同笑)。

石田 ただ芝居って、主に台詞をしゃべってる人を目で追うのが普通じゃないですか? ヨーロッパも一応そういう作りにはなってますけど、そこ以外の部分……舞台美術の細部だとか、後ろで何かしている役者とか、そういう別の所も観たくなる人は多いかもね。

上田 台詞ってだから、そうなんですよ。台詞回しが観客の視線……映像で言うところの、カメラワークを誘導するものなんです。それも悪くはないけれど、もう少し他のカメラワークがあるんじゃないか? と思うんですね。たとえば舞台上にカーソルの矢印が出てきたら、観客は台詞をしゃべってる役者よりも、カーソルの方を観るんやなあ、とか。そういう新しい見せ方を探るのは難しいけれど、可能性は追求していきたいです。

諏訪 でもまあなんだかんだ言っても、観てる人には普通に笑ってほしいですけどね。

上田 そうですね。まあ『サーフィンUSB』なんてタイトルを付けた時点で、真面目なことをやるとは思われないでしょうけど(笑)。

──今回も、挑戦的だけどキッチリ笑える芝居が期待できそうですね。その辺の意気込みを、何かサーフィンにたとえて語っていただけませんか?

石田 そうですね、大きな笑いのウェーブを起こして……。

上田 その笑いのビッグウェーブから、ワイプアウト(註:サーフボードから転落すること)するお客さんがいないように……。

諏訪 で、その笑いのウェーブのパイプライン(註:波が作る筒状の空間。あるいはハワイにある、有名なサーフポイントの名前)を、全国ツアーでくぐり抜けていきたいな、と思います(笑)。


〈取材・文/吉永美和子〉
〈写真/渡辺マコト〉
〈取材日/2010年4月19日〉

2010-05-14 13:47
劇団、本谷有希子の新作『甘え』は、夜這いという風習を現代に持ち込んだ設定で、いつになく不穏で妖しげな空気を際立たせる舞台になりそうだ。大河内浩と小池栄子が演じる父子の関係性を軸に、アンチ・モラルな振る舞いが生々しく描かれる、本谷言うところの「深いエンタメ」。観る者の価値観を揺さぶり、ぐらつかせることにこそ、本作の真価や本質があるはず。


観た人の中になかった価値観が芽生えたりとか、知らなかったことが分かるようになったらいいな

本谷 『甘え』のプロットは、「夜這い」っていう設定をどう料理するかっていうところから始まりました。以前、知り合いから、「今でも夜這いの文化がそのまま残っているところがある」っていう話を聞いて、興味を持って。ちょうど、不道徳というか、ダーティーな芝居が書きたいなあと思っていたので、面白いな、と。

――不道徳なものを書きたいっていう衝動は、どこから?

本谷 自分の中に、誰かを遠慮なしに傷つけたいっていう衝動があるみたいなんですよ。でも、普段の私が日常的に人を傷つけたり貶めているわけじゃない。そんなことしたら自分に自己嫌悪が跳ね返ってくるだけですしね。でも、お芝居とか小説の中でだったら、登場人物を自由に傷つけられるから、刀の切れ味を試したくなるんです(笑)。いつも峰打ちばかりしているから、たまには思いっきり人を斬っておかなきゃ、みたいな(笑)。もちろん、現実でやったら迷惑がかかるし、自分の胸も痛むけど、劇の中でだったら許される。役者さんたちだって、ある意味、斬ったり斬られたりするために舞台に出てきているわけだし(笑)。

――『甘え』という舞台を語るキーワードとして、「深いエンタメ」という形容を使っていますね。これはどういう意味で?

本谷 自分で「深い」って言ってるところがいいなぁというのと、お客さんのものの見方や価値観が、観劇前と観劇後で変わるような舞台にしたかったんです。例えば、夜這いっていう設定に眉をひそめる人もいるかもしれないけど、それが日本ではかつて日常的に行われていたって知ったら、価値観が少し変わりますよね。今回、お話の最後に、常識的に考えたら"とんでもない"ことが起こるんですけど、最初から物語を追っていくとそれが"有り得る"ことだと思えるようになるはず。で、それができたら「深いエンタメ」として成功だと思う。だから、観た人の中になかった価値観が芽生えたりとか、知らなかったことが分かるようになったらいいなって。

――舞台の登場人物も、今までにない体験をすることで、価値観が揺らいだり、がらっと変わったりしますよね。

本谷 そうそう。「これは風邪薬だから」って騙されて覚せい剤を打たれて、最後にはシャブ中になってしまう、みたいな話、週刊誌によく出てるじゃないですか?(笑) まさにああいう感じ。軽い気持ちである習慣を身につけたら、それを皮切りに、自分のことを直視できないほど価値観がぐらついてしまう。で、そのきっかけを作った人に対して「お前、俺の人生めちゃくちゃにしやがって!」みたいな気持ちが芽生えたり……。だから今回の舞台、設定やディティールは「夜這い」や「不道徳」だったりするけれど、ある意味、人の価値観についての話でもある。変えられないと思っていた価値観が変わるっていう体験を、真正面から描いてみたかったんです。

本谷有希子(もとや ゆきこ) プロフィール

1979 年、石川県出身。「劇団、本谷有希子」主宰。『遭難、』で第10回鶴屋南北戯曲賞受賞。『幸せ最高ありがとうマジで!』で第53回岸田國士戯曲賞を受賞。小説では『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』が三島賞候補、『あの子の考えることは変』が芥川賞候補にノミネート。

オフィシャルブログ 劇団、本谷有希子の「現実日記」

2010-05-07 19:34

Bunkamuraシアターコクーンにて上演中の『2人の夫とわたしの事情』。第一次世界大戦直後に上演された文豪W.サマセット・モームの戯曲ながら、日本ではこれが初上演。コメディエンヌとしての魅力を発揮する松たか子を中心に、現代の感覚にもマッチする“進んだ”結婚観がテンポよく描かれて行くライトコメディーの秀作だ。

主人公・ヴィクトリアは戦争で最初の夫・ビルを亡くす。今の夫はビルの親友フレディ。ヴィクトリアは貞淑な未亡人の常識として1年間(素敵な喪服で)きっちりと喪に服し、その後結ばれた。悲劇を乗り越え手に入れた平穏な日々。ところが、ある日死んだはずのビルがひょこり我が家に帰って来る。まさか、愛する妻が信頼する友人と結婚しているなど思いもしないで――。

美しい妻・ヴィクトリア役の松は「女の幸福」を逃さないよう、常に女磨きを怠らないバイタリティ溢れるレディを好演。自身の体験を辿りながら独自の結婚観を(あくまでも上品に)まくしたてていく物語の冒頭から、そのあっけらかんとした生き様に一気にひきつけられてしまった。己の美徳を信じて疑わない可愛い人。こんな女性になら振り回されても仕方ないかもと思わせる説得力はさすが。

渡辺徹演じるフレディは一見堅物の軍人に見えるが、思いやり溢れたソフトな紳士。押しの強いヴィクトリアの前では言いたいことも言い切れないもどかしさを抱えている。一方の段田安則演じるビルは、3年ぶりの感動の再会にもおちゃらけて登場するような楽天家。ヴィクトリアを持て余しながらも何気に色っぽいトークではしゃいでみたりと人生を楽しむタイプだ。しかし、立ちはだかるのは現実。一家に2人の主はいらない、というわけで、物語の焦点はどちらがこの家で愛する妻と生きて行くのかに絞られて行くのだが…。

本来なら1人の女性を巡って決闘でもしかねないシチュエーションなのに、男2人は至って平和。むしろ、今が手に余る妻をどうにかするチャンスだとお互い遠回しに夫の座を譲り合う始末。当のヴィクトリアも「どちらかを選ぶなんて無理。ドングリの背比べだもの」と、どこかのんきである。気づけば観客も「まぁ誰にでも事情はあるし、結婚と恋愛は違うものね」などと納得し、登場人物たちの思惑のすれ違いをクスクス笑いで楽しみながら事の成り行きを見守り始める。

戦争中は愛国心から(2人もの)少佐と結婚したヴィクトリアだったが、戦争が終わった今、実は次の夫候補にと、皆川猿時演じる商売人のペイトンをロックオン中。いかにも成金だがジェントルマンなペイトンに対してあくまで人妻、世間知らずのか弱いレディーとして接しつつ、「ここぞ」というところで発揮する愛され攻撃は天晴!(天性のセンスで時流を読み、自身の売り時を心得て行動するヴィクトリアの抜群の機動力、“婚カツ”なんて生温いこと言っている今ドキの女子は絶対に見習うべき!)

シンプルながらモダンでポップな色使いのセットはキュートでクセのあるヴィクトリアの存在感を引き立て、同時に男たちのいたたまれない居心地の悪さを象徴するようにも見える。とにかく事態は常に女性主導で進めざるを得ないムードなのだ。

上演台本も手がけた演出のケラリーノ・サンドロヴィッチは、時代を超えても変わることのない夫婦の機微、人間が持つずるさや可愛らしさをいい塩梅の毒気でコーティング、絶妙のさじ加減でサバサバとしたテンションを生み出している。職業婦人代表のコック(池谷のぶえ)、トリッキーな手腕で活躍する弁護士(猪岐英人)と協力者のミス・モンモラシー(水野あや)といった屋敷への訪問者たちも、ピンポイントで強烈な印象を残して行く巧さが光った。

幕切れもオシャレ。人生は喜劇、「でも結局やっぱり結婚っていいかもね」と、笑って劇場を後に出来る“軽さ”の余韻がいい。

(文:横澤由香)
(写真:谷古宇正彦)
2010-04-28 22:28
 自分の顔がとんでもなく醜いと知らされショックを受けた男は、整形手術で素晴らしい顔を手に入れるが…。ドイツの若手劇作家、マリウス・フォン・マイエンブルグの'07年初演作『醜男』は、山内自身「台本を読んでいて久しぶりに笑ってしまった」と語る、人間の可笑しみと哀しみを描いた非常に魅力的な物語である。



個人的に何か面白いなぁと思ってた感覚と、この『醜男』は非常に近かった。

――『醜男』、ストレートなタイトルですが、山内さんが演じられるのがズバリその"醜男"ということで。

 僕、翻訳モノってほぼ初めてになるんですけど、台本を読んだときにまあ…おこがましい言い方ですが、「なんか感覚的に近い方が書いてはるなぁ」と思いましたね。つまり、面白かったんですよ。昔、早川義夫さんというシンガーの方が『かっこいいことはなんてかっこ悪いんだろう』っておっしゃってたのにもリンクするというか、僕自身そういう感覚でモノを考えることがよくあったので、この『醜男』も非常にリアルな話しとして興味深く読むことができました。

 この作品で僕が演じる男は、ある日、長年すごくいい関係を築いて来た妻に「今まで聞かれへんから言わへんかったけど、あんためちゃめちゃブサイクやで」って言われるんですよ。そんなのすっごいショックやろうけど、でも彼は「えー、そうやったんや。なら顔変えるわ」っていう(笑)。

――価値観の崩壊。

 それこそ僕自身もここ何年か「正しいことって何なんやろう?」ってすごく考えていて…ほら、どんなに近しい人でもよくよく話してみると違うことって多々ありますよね。「えっ、これって君にとってそんなに重要なことなんや」みたいな。だからこそ世の中上手く回すために一定のルールがあるんだろうけど、それだって決めた人からして守ってへんし。制限速度40kmって言ったって、誰が40kmで走ってるんやろうとか(笑)。あと、何故か人は人を不変だって思っちゃうんですよね。例えば自分にとっていつも穏やかだった上司がある日その態度を豹変させる。そんなの人間なんやから実は当たり前のことなのに、こっちは互いの関係は不変だと思い込んで安心してたもんで、そこでものすごくショックを受けるわけですよ。いらないショックを。葬式だって、「人はいつか必ず死ぬんだから、まぁ死に方はいろいろあるにしてもそんなに悲しまなくてもいいんじゃない?」って思えて来たり。個人的に「そんなんが何か面白いなぁ」なんて思ってた感覚と、この『醜男』は非常に近かった。

――確かに自分にとっての「普通」が必ずしも他の人の「普通」ではないことって多いですよね。

 そうそう。あとね、長塚圭史くんとかともよく話すんですけど、最近の演劇って全部説明しちゃってる情報過多の作品が多いじゃないですか。それこそもう、チラシ見ただけで内容がわかっちゃうような。まあ…Piperは全部台詞で説明しちゃってますけど(笑)。

――それはそれで全然、アリですよ!

 うん。でもそうじゃないところでわかりやす過ぎるモノばかり増えて来てて、「そんなのは僕らがやってもしょうがないよな」なんていう中、この『醜男』と出会えたのはホントにいいタイミングだと思いましたね。最初は「まさか整形なんて」って思うかもしれないけど、これは案外リアルな話しですよ。むしろ実際にはもっと「やっちゃってる」人、いますからね〜。例えば食品の偽造なんかもそうでしょう? いろいろ混ぜちゃってたのにバレたら会見で堂々と逆ギレとか(笑)、そんな人のほうがよっぽど僕なんかよりドラマチックで演劇的ですよ。そこの感覚が楽しめる話しなんだよなぁ。自分がちょうど翻訳モノに興味を持ってたっていうのもあったけど、やっぱり現実の方がすごく面白いこととすごく怖いことがたくさんあるってことも確認出来たし。

あまり演劇に触れたことのない人にとってもこれはすごくいいソフトなんじゃないかな。

――カンパニーは山内さん、内山理名さん、斎藤工さん、入江雅人さんの4人の座組。山内さん以外はそれぞれ複数の役を演じるという構成ですね。

 そこにこの戯曲の面白さがあって。ほら、『ピーターパン』もフック船長とウエンディのパパを同じ役者がやるってところに意味があったりするでしょう? たぶんね、小劇場というか、演劇ってもともとそういうもんなんやと思うんですよ。このホンにはそういう演劇の面白さが非常に濃縮されて入ってる。しかも、情報過多ではないけれど、決してわかりにくくもないですからね。むしろ演劇初心者の人でも入門編として素直に「ああ面白いなぁ」って思えるもんやと思うから、あまり演劇に触れたことのない人にとってもこれはすごくいいソフトなんじゃないかな。もちろん、僕にとってもね。とにかく台本読んでてホンマに笑ったし、俄然感情移入できました。それはたぶん見ている人も同じだと思いますよ。人間誰しも自分の容姿ってすごく気になってるはずだし、毎日たくさんの顔と出会いながら社会人として働いてる方たちなんかは特に思うこといっぱいあるだろうし。だから、普段演劇なんて見ないような彼氏を誘ってアベックで観に来てもらったりしたらいいなぁと思いますね。見終わったあと、お互いにいろんな話しが出来るハズですよ。

――では見所としては…

 人って、どこかで許して欲しいと思ってるじゃないですか。直接的には言ってないけどそういうこともここには絶対ある。なんかの歌じゃないけど(笑)、「今、ここに観に来てる君がいいやん」「そのままでいいやん」っていう、ね。きっと、観ているうちに自分のコンプレックスも愛せるんじゃないかな。

――ヒューマンですねぇ。

 そういうのをね、ホンマに一生懸命演じたいなって。「この作品の中の役として生きたい」という思いはいつもありますけど、今回、特に強く感じてるんです。稽古が始まってみないとまだわからないことは多々ありますけど、ホントにもう、かなり楽しみですね。今年はずっと舞台が続いていて…でも新しいことが出来るのは非常にうれしいことなので、今は文句なんて言われへん、多少休まれへんでも全然いいかなって思ってます。うん、幸せですよ。

〈取材・文/横澤由香〉
〈写真/坂野則幸〉

公演概要

世田谷パブリックシアター プロデュース「醜男」

【東京公演】
日程:7/2(金)〜7/12(月)
会場:世田谷パブリックシアター (東京都)

【大阪公演】
日程:7/15(木)
会場:サンケイホールブリーゼ (大阪府)

一般発売:5/22(土)

2010-04-23 18:52

「"この舞台版があって映画が出来た"とイメージして書いた」
―脚本・演出 マキノノゾミ

 この舞台『ローマの休日』は、主役のジョー・ブラッドレー、アン王女、そして、ジョーの友人であるカメラマンのアーヴィングの3名だけで構成。映画の視点に変化を加え、当時の時代背景をベースに、新聞記者ジョーにもスポットをあて、彼の生い立ちや背景をしっかりと捉え、人物像をより深く描き出します。そしてジョーと、彼の友人であるカメラマン・アーヴィングのコンビネーションを軽妙に、時に男同士だから分かり合える胸のうちを切なくもあたたかく描きます。
 映画よりも凝縮された舞台空間で、ジョーとアンの恋愛模様、ジョーとアーヴィングの友情、そして3人の人間模様、それぞれの役の人間性を感じることができるでしょう。

e+(イープラス)プレイガイド独占販売!"オードリー・ヘップバーン"バースデー記念クルーズ!セットチケット販売中!

 東京公演中の5月4日は、映画『ローマの休日』のヒロインである【オードリー・ヘップバーンさんのお誕生日】にあたります!皆でこの日をお祝いするために、物語の重要なシーンである「船上パーティ」をイメージした、“バースデークルージング”が開催されます!
 銀河劇場から運河をはさんで反対側にある、美しいレストラン「クリスタルヨットクラブ」 (http://www.crystal-yc.co.jp/)のクルーズ客船が、この日だけ『ローマの休日』ヴァージョンに!
レインボーブリッジをくぐる東京湾の景色に加えて、なんと“舞台『ローマの休日』特典映像”が船内限定でお楽しみいただけます!しかも嬉しいワンドリンクつき!
 皆さんもジョーやアン王女のように、優雅なひと時をお過ごしください。
 さらに、夜公演をご観劇頂くと、出演者のアフタートークもあります!スペシャルな一日をお楽しみ下さい☆
 スペシャルクルーズと観劇がセットになった特別チケットは、イープラスにて絶賛発売中!

開催日時:5月4日(火・祝)
※東京公演限定
※定員になり次第受付終了

■マチネ観劇&クルーズセット
《マチネご観劇》13:00開演 & 《クルーズ》16:00〜17:00(予定)

■ソワレ観劇&クルーズセット
《クルーズ》16:00〜17:00(予定)& 《ソワレご観劇》17:30開演(アフタートーク有)
チケット料金:観劇+クルーズ(1ドリンク付)10,000円
※クルーズは、今回販売する上記観劇セットのみの販売です。
※クルーズ出航時間は、若干変更になる可能性があります。詳細は銀河劇場ホームページ(http://www.gingeki.jp/)にてご確認ください。

さらに耳寄り情報!

■出演者と記念写真♪ 客席集合写真をプレゼント!
日本初のストレートプレイ化となる、「ローマの休日」。この新たな挑戦を記録に残す、出演者とお客様のコラボレーション企画が決定!
東京公演5月6日(木)18:30公演の終演後、出演者3人が客席へ座りお客様と一緒に集合写真を撮影します。この写真は、希望される方全員にプレゼント!
※5月6日18:30の回を観劇された方全員が対象です。
※写真は、当日会場にてご希望された方のみ後日郵送。

■初日プレミア写真プレゼント
東京・大阪ともに初日公演をご観劇のお客様全員に未公開の扮装写真(3人バージョン)サインプリント入りを当日劇場にてプレゼント!

■アフタートークショー開催決定!
東京公演:4/29(木・祝)夜公演、5/2(日)夜公演、5/4(火・祝)夜公演
大阪公演:5/15(土)夜公演
出演者はキャスト3名に加え、4/29・5/2のみマキノノゾミも参加予定です。
※いずれの回も公演終了後に開催。各該当公演をご観劇のお客様はどなたでもご参加いただけます。

キャスト・スタッフ

 この3人芝居に臨むのは、スタッフ・出演者ともに強力な布陣。
 ジョー役には、最近ではNHK「だんだん」の父親役も好評、テレビのみならず映画・舞台にと活躍目覚しい実力派俳優【吉田栄作】。バツグンのスタイルで映画に劣らぬ二枚目ぶりと確かな演技力で、映画の素晴らしさを残しつつも、舞台ならではの奥深さを表現します。
 アン王女には、東宝ミュージカル「エリザベート」でタイトルロールを演じ、最近では日生劇場「シラノ」においてヒロインであるロクサーヌ役を演じ、ますます磨きがかかる元宝塚歌劇団雪組トップスター【朝海ひかる】。オードリー・ヘップバーン主演映画『暗くなるまで待って』の舞台化で主演も務めたばかり。多くのファンから是非『ローマの休日』のアン王女をという声に応え、今回の上演・配役が実現。
 アーヴィング役には、スーパー・エキセントリック・シアターの【小倉久寛】。劇団のみならず、テレビドラマやバラエティで活躍するその個性を活かしたアーヴィング役ぶりに期待がかかります。
演出は、作品の中に時代を投影させ人物を描くことにかけては定評があるマキノノゾミ。脚本は鈴木哲也・マキノノゾミの共同執筆。そして音楽はさだまさし氏の音楽プロデューサーであり、NHK大河ドラマ「利家とまつ」・映画「UDON」「解夏」「リング」などの音楽監督でもおなじみの渡辺俊幸が手がけます。


ジョー:吉田栄作

アン王女:朝海ひかる

アーヴィング:小倉久寛

公演概要

舞台「ローマの休日」
【東京公演】
日程:2010/4/27(火)〜5/9(日)
会場:天王洲 銀河劇場(東京都)

【大阪公演】
日程:2010/5/12(水)〜5/16(日)
会場:シアター・ドラマシティ (大阪府)

2010-04-09 19:26

 TBS系で放送されたドキュメンタリー番組で大きな反響を呼び、のちに書籍化、2009年には映画化されて多くの人々に感動を与えた『余命1ヶ月の花嫁』。この実話を2010年初夏、なんと舞台化することが決定!
 桜が咲き誇る3月末、赤坂Sacasの野外ステージにて、この舞台の制作発表が行われた。

 赤坂を訪れた一般客も多く入場した会場に、今回の舞台のイメージソングでもある平原綾香の『AVE MARIA〜カッチーニ〜』の切ないメロディーが流れたあと、主演の二人、貫地谷しほりと渡部豪太が登場。ウエディングドレスとタキシードという純白の衣裳を身にまとった初々しい二人の姿に、集まった一般客はもちろん、記者たちからもほうっと溜息がもれる。

思い切り肩ひじを張って、感動をお届けできるようにがんばりたい(貫地谷)
正面から向き合って素晴らしい作品にしたい(渡部)

 乳がんによって24歳という若さでこの世を去った長島千恵さんの役を演じる貫地谷は、まず「今、一生懸命台本を読んでいるところなんですが、まだ第三者として見ているせいか涙が止まらなくて。稽古に入るまでにはもっと千恵さんの気持ちに近づいて表現できればと思っています。舞台は3年ぶりになります。今まで、ドラマの主役をやらせていただくときは「主役といってもひとつのコマなので」と言っていたのですが、今回は肩ひじ張らずに、ではなくて思い切り肩ひじを張って、観客のみなさんに感動をお届けできるようにがんばりたいと思っています」と意気込みを語り、今回は特に思い入れが強い様子。
 さらに千恵さんを支える恋人の赤須太郎さんを演じることになった渡部は「この作品を通して自分に何が残るのかも楽しみです。生きることだったり、愛だったりを、この舞台を通して気づけたらと思います。これから稽古が始まるのがすごく楽しみで、ワクワクしています。題材としては悲しい話かもしれませんが、そこに正面から向き合って素晴らしい作品にしたいと思いますので、みなさんぜひ観に来てください」と、爽やかな笑顔を見せていた。

 続いて、千恵さんの父親である長島貞士さんに扮する天宮良も花嫁の父親風の正装でステージに登場し「このドキュメンタリーや映画などで広く知られている作品に、我々は今回“演劇”という手法で挑んでいくわけですが、そこで千恵さんの伝えたかったメッセージをどうやって表現できるかというのは、とてもいいチャレンジになると思っています。なんとか千恵さんの想いが伝わるように、みんなで力を合わせてがんばりたい。いい意味で期待を裏切れるような、非常に意味のある舞台をつくれるのではと思っています」と力強くコメント。
 さらに、今回の脚本と演出を担当する鈴木勝秀が「この作品を引き受けた理由としては、まずなぜ千恵さんはドキュメンタリーに出ることを選択したのかというところを考えたことが一番大きくて。それはきっと、自分が生きていたことを証明したかったのと、自分のことを長く覚えていてほしいという思いからだったんじゃないかと強く感じたんです。そして、この脚本をぜひ無料で公開するなどして、たとえばリーディングでもいいし、今回の舞台とは違う形でいいので延々と続いていく物語として語っていきたいと思うんです。僕らは100年前、200年前の戯曲や小説を演劇にしてやってきた経緯もありますし、演劇にはそういう力があると思うので。そしていろいろな人の口から千恵さんの言葉が発せられていくことによって、彼女が永遠に生き続ける力にもなると思う。出演者も今回、素晴らしい方ばかりが揃っているので、エネルギーのある舞台がつくれそう。悲しい話だけれど、観終わったとき、生きる力を持てるような作品になると思います」と、熱く作品への思いを語った。

 次いでステージ上ではイメージソング『AVE MARIA〜カッチーニ〜』について平原綾香から「自分が千恵さんだったらどういう気持ちだったろうと思いながら、自分にとっての祈りって?ということを考えながら歌詞にさせていただきました。私にとっての祈りが、たくさんこめられている曲です。今回は舞台ならではの感動もあると思いますので、私も実際に観に行くのを楽しみにしています」とのビデオメッセージが披露され、さらには千恵さんの友人たちが、千恵さんに似ているといって彼女を励ますためにプレゼントしたというキャラクター“さくらパンダ”も登場し、場を和ませた。ちなみに、この“さくらパンダ”は公演中に劇場ロビーのどこかに隠れているかも?とのこと。
 また、最後には貫地谷のブーケトスも行われ、ポーンと勢いよく投げられたブーケは一般客の11歳の女の子が見事にキャッチ!明るい笑い声と拍手とともに会場全体があたたかいムードに包まれたまま、会見は終了した。

 キャスト、スタッフたちの思い入れの強さがひしひしと伝わってくる、“演劇”ならではの力をも感じさせてくれる良質の作品が誕生しそうだ。そして劇場に足を運ぶ際には、どうぞハンカチをお忘れなく!

公演概要

舞台「余命1ヶ月の花嫁」
【東京公演】
公演日:2010/6/15(火)〜6/27(日)
会場:世田谷パブリックシアター (東京都)

【大阪公演】
公演日:2010/7/2(金)〜7/4(日)
会場:イオン化粧品 シアターBRAVA! (大阪府)



【e+MOVIE】舞台「余命1ヶ月の花嫁」CM映像をチェック!

【e+MOVIE】舞台「余命1ヶ月の花嫁」平原綾香のイメージソングで贈るPV映像!

2010-04-09 18:28

 2008年に日本で公開後、翌年には米国のアカデミー賞外国語映画賞に輝き、そのほかにも数々の映画賞を受賞して大きな話題となった映画『おくりびと』(滝田洋二郎監督)。なりゆきで死者を棺に納める“納棺師”という仕事に就くことになった主人公と、その家族や周囲の人々の姿を通して生と死を描いたこの秀作が、2010年春、なんと舞台化されることになった。
 物語は、映画版のエンディングから7年後の世界。主人公と妻の間には無事に息子が生まれ、幸せに暮らしてはいたのだが……。主人公・小林大悟に扮するのは、歌舞伎だけでなく映像に現代劇にと精力的に活動している中村勘太郎。その妻・美香には、2008年『思い出トランプ』で初舞台を踏み舞台女優としての才能も見事に開花させた田中麗奈。さらには真野響子、柄本明といった演技派共演陣が顔を揃える。
 また、舞台の脚本を初めて手がけるという小山薫堂が映画と同じく今回の脚本も手がけるほか、音楽も久石譲が担当。そして、ここ数年は自身のプロデュース公演だけではなく、時代劇にミュージカルにと幅広いジャンルの舞台に引っ張りだこのG2が演出にあたる。
 社会現象ともなったあの大ヒット映画に、果たしてどのような形で新しい息吹が吹きこまれるのか。現代劇としては実に6年ぶりの出演となる中村勘太郎に、作品への思いや意気込みなどを語ってもらった。

「映画版の気持ちというか、魂は引き継いでいきたいと思っています」

――映画版はご覧になっていたんですか?

 もちろん!公開中に観にいきまして、凄い映画だなあ〜と思っていましたね。ただ単に感動させるというだけではなく、本当にいろいろな想いが込められている作品で。納棺師という職業のことも、そのときに初めて知りました。生と死というものをいろんな形で表現している作品で、とてもおもしろかったです。

――でも、まさかそのときは、舞台版でご自分が演じることになるとは?

 ええ、夢にも思っていませんでしたよ!(笑)

――では、この舞台化のオファーを聞かれたときは、どう思われましたか。

 いやー、映画の舞台版って難しいじゃないですか!(笑) ましてや、あんなにヒットした映画ですからね。どうなのかなあ?と最初は思ったんですけれども。でも、この舞台版は物語が7年後の世界になる完全オリジナルだというので、それだったら!と思いまして(笑)。だって、あの作品をあのまんま舞台化するというのは、相当難しいことだろうと思うんですよ。

――確かに7年後ということであれば、また全然違う切り口になりそうですね。

 そうですよね。映画の終わりの方で、主人公の奥さんが身ごもってらっしゃった子供が、7年後の世界では生まれていて、小学生になっているくらいですから。あの夫婦も父親になり、母親になっていて、また違う形で親子の絆が描かれるのではないでしょうか。主人公は今回、子供に自分の職業が納棺師というのを言い出せないわけなんですが。

――映画版では、奥さんになかなか言い出せなかったように。

 そうそう(笑)。で、そのことをめぐって周囲がどう変わっていくかというような作品になるんじゃないかと思いますね。

――映画では本木雅弘さんがやられた納棺師の役を演じるということに関しては、いかがですか。

 この作品は、そもそも本木さんが15年間もあたためていたという大切なものじゃないですか。ですから、その気持ちというか、魂は引き継いでいきたいなということはすごく思いますね。題材は死という重いものにはなりますけれど、映画を観たときに僕はとてもあたたかいものを感じたんです。なので、舞台版も同じようにあたたかいものに見えたらいいなというのはありますね。

――舞台版を演出されるのはG2さんです。G2さんとお仕事をされるのは。

 はい、初めてなんですよ。だけど、叔父(中村橋之助)が『魔界転生』(2006年)と『憑神』(2007年)で二度ほどお世話になったので、よく芝居を観に来てくださるんです。なので、歌舞伎座の楽屋とかで、ちょこちょことはお会いしていたんですね。だけど、おそらく物語的には派手なものではないですし、まだ現時点では具体的なプランはお聞きしていないので、どう演出されるのかは想像もつかないですねえ!(笑) 今はとにかく、稽古に入るのが楽しみです。

――田中麗奈さんと夫婦役で共演することに関してはいかがですか。

 歌舞伎のときにも夫婦役を演じることはよくあるんですけど、なにしろ相手は男ですから、そこはかなり大きな違いがあります(笑)。でも本当に、田中さんも最近いろいろなことをやられていらっしゃるので、ずっと発信し続けている方なんだなーと思いましたね。

――真野響子さん、柄本明さんと共演することについてはいかがでしょう。

 お二方とも、とても素敵な役者さんですよね。真野さんはもちろん存じ上げてはいるんですけど、本当に初めてお会いする感じなのでやはり楽しみですし。柄本さんとは『ご存じ浅草パラダイス』(2000年)という、父(中村勘三郎)と藤山直美さんとでやられている舞台に僕も一度出させていただいているので、そのときにご一緒させていただきました。それに、実はふだんでもよくお会いしているので、柄本さんがいてくださることは心強いです。柄本さんって、やっぱりカッコイイですし、で、怖いですしね(笑)。本当に尊敬する人でもありますから、今回共演できるのはとてもうれしいです。

「舞台版も、映画と同様に心があたたまる作品になるはずです!」

――今回は、映画版を観たお客さまも大勢いらっしゃる気もしますが。

 そうですよね。だけどもちろん観ていない方でも、オリジナルの脚本なので充分に楽しんでいただけると思います。でもまあ、あの映画を観ていない方はあまりいないんじゃないですかね(笑)。映画を観終わった後ってやっぱり、この夫婦はこの先どうなっていくんだろう?とか、想像するじゃないですか。今回の舞台は、その姿が確かめられる続編になるわけですし。また、それをいい意味で、裏切ってみたいとも思いますけどね。

――映画と同じく脚本は小山薫堂さんですし、音楽は久石譲さんなので。

 ええ、すぐに『おくりびと』の世界に入り込んでいただけるんじゃないかと思います。それと僕、映画を観に行ったときにも思ったんですけど、お年寄りから若い人たちから、すごく幅広い年齢層の方が観ていらっしゃって。だから舞台版のほうも、同じように幅広い年齢層の方に観ていただけるような作品になるんじゃないかなとも思いますね。

――そして今日は勘太郎さん、チェロをお持ちのようなので、それもとても気になるんですが……。

 はい。でも実はあれ、カバンなんですよ(笑)。……というのはもちろん冗談で、今、実は練習中なんです。

――ということは、舞台上で披露されるかもしれないんですか?

 うーん、どうですかね? まあ、納棺師ではありますけど、でも元チェロ奏者の役なので……。

――そういうシーンがあるかも?

 ハハハ、どうでしょう? とりあえず、あったら困るんで稽古しているという感じです。たぶん、今後の稽古次第、その出来次第ということになるんじゃないでしょうか(笑)。

――まだやりはじめたばかりなんですね。手ごたえはいかがですか?

 それが……ダメですね(笑)。洋楽器はまったくやったことがないんです。ギターすら弾いたことがないですから。

――お稽古で三味線とかはやられていても。

 いやいや、だって全然違いますから! 糸の太さも本数も弾き方もまったく違うし(笑)。

――それはそうですね(笑)。では、相当苦労されている。

 はい、しております。本当に大変です(笑)。だけど、こうやっておかげさまでいろいろなことをやらせていただけるのは楽しいことでもあるので。だってなかなか、普通はできないことばかりじゃないですか。

――そういう意味では、納棺の儀式の稽古というのもしなければいけないですね。あの所作も、美しく見せるようにやるのが難しそうだなと思ったんですが。

 既に納棺協会の方にお話を伺いました。ただ、形よりも気持ちだと思います。もちろん形も美しくなければいけないんですけれども、そこに気持ちがなかったらただの形なので。その点は歌舞伎と同じです。

――そうですね。舞踊をやられるときと、似た感じなのかなとも思いました。

 うんうん。やはりどんなときも、ここ(胸を指す)ありきです。

――では、最後にお客様にメッセージをお願いします。

 やはり、とにかくいろんな方に観ていただきたいなというのはあります。映画を観た方、特に登場人物のそののちの物語が気になる方にはぜひ来ていただきたい! また、舞台を観てから映画を観直しても、たぶん感じ方が違ってくるような気もするんですよね。もちろんこの舞台版も映画と同様に心があたたまる作品になるはずですので、みなさんどうぞ劇場にお越しください!

(取材・文/田中里津子)
(写真/渡辺マコト)

公演概要

【東京公演】
公演日:5/29(土)〜6/6(日)
会場:赤坂ACTシアター

【大阪公演】
公演日:6/9(水)〜6/13(日)
会場:イオン化粧品 シアターBRAVA!

【愛知公演】
公演日:6/16(水)〜10/6/24(木)
会場:御園座


【e+MOVIE】 舞台「おくりびと」 スポット映像が到着!
【e+MOVIE】 中村勘太郎&田中麗奈 舞台「おくりびと」新CM映像到着!

2010-04-07 17:30

「プロペラ犬」がホーム(劇場)を飛び出し、アウェー(赤坂BLITZ)に舞い立つ! ロックから程遠い面々が(※一部出演者を激しく除く)、筋肉少女帯の音魂と共に、ライブハウスを舞台に繰り広げる、あまりに無謀なロックン演劇「アウェーインザライフ」。
2月25日、都内で行われた制作発表では、主演の水野美紀をはじめ共演の、村上知子・ソニン・小林顕作・伊藤明賢・市川しんぺー・木野花、脚本の楠野一郎、演出の河原雅彦、そして筋肉少女帯の大槻ケンヂが登壇した。

出演者・スタッフからのコメント

■水野美紀(主演/プロペラ犬共同主宰)
赤坂BLITZというライブハウスで演劇をやること自体がそもそもアウェー。
芝居もやって音楽もやる、ミュージカルとも違う前例のない無謀な企画ですが、後にも先にもない企画なので、吉と出るように全力を尽くします。
是非、BLITZに目撃しに来てください!!

■村上知子(森三中)
人生の中で、ロック的な事をして来なかったので、この機会に“ロックな村上”が出せればと思います。実は、吉本興業以外の舞台は初めてなので、緊張していますが、チカラのある役者さんたちの中で、面白い事が出来るのは本当にありがたいので、皆様の胸をかりるつもりで頑張りたいです。

■ソニン
私自身、常にアウェー感を感じていますが、逆を言うといつもHOMEを探しているんだと思います。ぶっ飛んだ作品に仲間入りする事を夢みていたので、この作品に参加できることは本当に嬉しい!この作品で、自分自身が生まれ変われるかもしれないと思っているので、お客様にも新しい感情が生まれればと思って演じます。

■小林顕作
舞台だけやっているので、稽古場をどう楽しく過ごすかにかけてます!
稽古が終わった後の飲み屋の手配は素早くやろうと思ってます!(笑)

■伊藤明賢
素晴らしいメンツに囲まれて光栄です。稽古場がぶっとんだ感じになりそうで、
今から不安です・・・。(笑)

■市川しんぺー
ロックな人生を歩んでこなかったので、アウェー感はすでに満載だと思います。
その感じを埋めない方がいいのかなと・・・。

■木野花
自称17才で60才の役なんて・・・。非常に難しい役柄で、今までにない意気込みです。バンドは好きだけど、何も楽器のできない私がバンドを組めるのはとっても楽しみなので、命がけで取り組みます。期待してください!

■楠野一郎(脚本/プロペラ犬共同主宰)
ニッポン放送の「オールナイトニッポン」の構成をやらせていただいて大槻さんと知り合って、その縁で水野とも出会いました。筋肉少女帯の音楽が大好きで、いつか一緒に何かを出来たらいいなと思っていました。素晴らしい出演者の方々と演出家の力をかりて、できる限りのことをしたいです。
最新情報はブログを見てください!(http://www.engekirock.com/blog/
ツイッターもはじめました(kusunopropeller

■大槻ケンヂ(筋肉少女帯)
筋少を休止している間に、世間では大きなロックフェスをやるようになっていて、復活したら自分たちも出ることに…。
若いバンドばかりで、モーレツな アウェー感 を感じましたが、オーディエンスからすると目新しいという事。アウェーは “ウィークポイント”ではなく、アウェーだからこそ目立てるチャンスでもある。そんなことを 舞台にぶつけたらどうかね!と、脚本の楠野さんに伝えたんです。自分たちの楽曲がどう演劇に取り入れられていくのか、今からワクワクして楽しみです。

■河原雅彦(演出)
責任は全部自分が取ります!
うまくいったら「プロペラ犬」と「筋少」の手柄。
ダメだったら自分が悪い・・・。
本当に大胆な企画、無謀と言えば無謀。
でも、水野美紀さんの生き様に、もの凄く惹かれてしまう。
筋少のニューアルバム(6/2発売)にも貢献できればと思います。

公演概要

エンゲキロック in 赤坂BLITZ・プロペラ犬×筋肉少女帯「アウェーインザライフ」

【東京公演】
日程:2010/6/4(金)〜6/18(金)
会場:赤坂BLITZ(東京都)

【大阪公演
日程:2010/6/23(水)〜6/25(金)
会場:サンケイホールブリーゼ(大阪府)

2010-04-07 17:07

嵐の相葉雅紀主演の舞台『君と見る千の夢』の製作発表会見が都内にて行われた。

本作は『燕のいる駅』『忘れられない人』『グリーンフィンガーズ』に続き、相葉主演舞台4度目の演出となる宮田慶子からの「相葉さんに純粋なラブストーリーを」という要望を受け、『ナースのお仕事』シリーズや『陰日向に咲く』『ロミオとジュリエット』など、数々の作品を手がける脚本家・金子ありさが書き下ろした作品。


<あらすじ>
交通事故で昏睡状態となり、自分の身体を抜け出した池辺春也(相葉雅紀)は事故の原因を探るべく、今までの人生を振り返る。恋人・美智子(上原美佐)との出会い、諦めた夢、家族や友人との日々、周囲の人間との絆……
そしてたどり着いた事故の真相とは?

会見には相葉雅紀、上原美佐、春也の父親役の田山涼成、春也が運ばれた病院の看護士長役の藤田朋子、院長役の相島一之の出演者陣に加え、演出の宮田慶子、脚本の金子ありさが登壇した。

来ていただく皆さんに何か感じてもらえる舞台にしようと頑張ってます。相葉
綺麗なラブストーリーにうっとりします。涙します。宮田

相葉は最初に脚本を読んだ印象について「台詞の量が多くて半分くらい読んだ後に最初に戻っちゃったんですけど」と彼らしいコメントをしながらも、「幽体離脱したところから始まるので現実からかけ離れたお話かと思いましたが、キャラクターにリアリティがあって。笑える所もあって、春也くんがいろんな顔をする作品だなと思いました。」と語った。4度目のタッグとなる演出の宮田については「いつもアドバイスをたくさん貰って、色々な部分を引き出してもらっていると思います。」と語り、「来ていただく皆さんに何か感じてもらえる舞台にしようと頑張ってます」と意気込んだ。

それに対し、宮田慶子は「(相葉くんの)俳優として信頼できるところは、誠実さ・ナイーブさ・並外れた集中力だと思います。それは(初めて仕事をした)5年前から変わりません。昨年の嵐の大活躍で大変な1年を乗り切って『よし、いい男になってきたぞ!』と母のような心境でいます。『今現在の(相葉くんの)等身大で、色々な面を投入できる作品、また貪欲な相葉雅紀の次へのステップになるような作品にしたい』と、金子さんに書いていただいて脚本が仕上がりました。いい作品になると思います。」「本当に綺麗なラブストーリーにうっとりします。涙します。人を愛することの素敵さと大切に紡いでいかなきゃいけないものだという事に気づかされる作品です。」と早くも作品の仕上がりへの手ごたえを感じているようだった。

また相葉から「宮田さんだけでなく、たくさん先輩方も共演してくださるので、先輩からも色々とアドバイスをいただいて、楽しい現場になりそうです。」との言葉もある中、相島から「藤田さんから相葉くんに、初日から"渡鬼"仕込みのダメ出しがあって素敵な現場だと思いました(笑)」というエピソードが暴露されたり、田山からは「(相葉くんと)親子役という事で『ここから相葉くんが出てくるかしら?』とリアリティの心配をしましたが、稽古場で一緒に過ごしていて段々『あれ?相葉くんに似てきたかも』と自信がついて参りました」と笑いを誘う(?)場面もありながら、田山から「嵐の一員だということを忘れるくらい『演劇人・相葉雅紀』の一面を見て感動しました。」とのコメントが出るなど、舞台初挑戦となる上原美佐も含め、すでに稽古に入っているというカンパニーの雰囲気の良さが感じられる終始笑顔の溢れる会見となった。

昨年、グループとしての活躍はもちろん、舞台のみならず初の連続ドラマ主演と俳優としてのキャリアも重ねてきた相葉雅紀。これまでもテレビで見せる天真爛漫なキャラクター以外の部分を引き出してきた宮田慶子の手によって、今回はどんな新たな魅力を見せるのか。

公演概要

『君と見る千の夢』
公演日:2010/5/2(日)〜5/24(月)
会場:東京グローブ座(東京都)
一般発売日:4/4(日)


2010-03-31 16:21

3/5(金)、翌日に公演初日を控えた舞台「変身」の囲み取材(登壇者:森山未來、穂のか、永島敏行)と、 脚本・演出・美術・音楽のスティーブン・バーコフの合同取材が行われた。




【スティーブン・バーコフ】
イスラエル、ドイツ、英国など、色々な国で演出してきましたが、日本の俳優は感応性も 学習意欲も高く、とても楽しかったです。演劇はとても普遍的なものだし、芸術は人間の 類似性を引き出してコミュニケーションを円滑にできる、と思うので、もっと盛んになったらいい と思います。

【森山未來】
(演出の)バーコフさんやカフカの世界を自分なりに解釈し、理解するのに頭と体を使って 必死でした。“虫”になりますが、“虫”という表現はデフォルメだと思うので、様々に解釈でき る作品だと思います。

【穂のか】
初舞台で、右も左も、どこがわからないのかもわからない、というところから始まりましたが、み なさん優しく教えてくださいました。稽古場では、毎日勉強の日々で、贅沢すぎる初舞台 です。色々な方に、ハチャメチャに頑張っている姿を観に来ていただきたいです。

【永島敏行】
「変身」は凄まじいファミリードラマ、と見ることもできると思います。現代の親子関係にも通 じる、普遍的なことが描かれていて、それを見据えていたカフカはすごい、と思います。異空 間に入れる舞台です。是非、観にいらしてください。





公演名
「変身」
フランツ・カフカ
脚本・演出・美術・音楽
スティーブン・バーコフ
出演
森山未來 穂のか 福井貴一 丸尾丸一郎(劇団鹿殺し) 久世星佳/永島敏行
公演日程
2010年3月6日(土)〜22日(月・祝)
会 場
ル テアトル銀座 by PARCO
お問合せ
パルコ劇場 03-3477-5858 www.parco-play.com
■岡山公演■
公演日程 3月31日(水) / 会場 岡山市民会館
■大阪公演■
公演日程 4月2日(金)〜4日(日) / 会場 サンケイホールブリーゼ
■福岡公演■
公演日程 4月6日(火) / 会場 福岡市民会館
■富山公演■
公演日程 4月11日(日) / 会場 富山オーバード・ホール
■新潟公演■
公演日程 4月13日(火) / 会場 りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館・劇場



2010-03-17 13:40

オペラやバレエに興味はあるけど、何を観るのがいいかわからない。そんな方にお勧めするのが、新国立劇場のシーズン・セット券です。
世界最高水準の舞台を一般発売にさきがけ優先的に、しかも、お得な料金で、多岐にわたるセットのなかからライフスタイルにあわせて選べるのが魅力です。

>>オペラ公演セット券はこちら

新国立劇場は、海外の第一線で活躍する歌手やダンサー、スタッフが集結し、世界水準の舞台を提供し続けている、日本が世界に誇るオペラハウス。豊富で多彩な演目も魅力で、2010-11シーズンには、バレエ6演目・35公演が予定されています。

ビントレーの「ペンギンカフェ」

バレエを楽しむすべての要素がそろった、豪華なトリプル・ビル。『ペンギン・カフェ』は、80年代一世を風靡したペンギン・カフェ・オーケストラに触発されて創られたとってもおしゃれな作品。ウェイター姿のペンギン、舞踏会のドレスに身を包んだ羊など次々に踊りを披露します。でもこの陽気なダンス(ボールルームダンスやスコティッシュダンスなど!)を披露している動物は実は絶滅あるいは絶滅危惧種ばかりなのです。楽しいなかにも、ちくりと現代を風刺する珠玉の傑作バレエです。視覚の美しさを追求したバランシン振付『シンフォニー・イン・C』、ロシアのダイナミズムの溢れるフォーキン振付『火の鳥』などバレエ・ファン垂涎の公演となること間違いなしです。

アシュトンの「シンデレラ」

今年はちょっと早いクリスマスを『シンデレラ』でお楽しみください。かわいそうなシンデレラのもとに仙女が訪れ、魔法によって美しいドレス姿となったシンデレラは舞踏会で王子と恋に落ちる…。皆さん良くご存じの、誰もが憧れるようなおとぎ話がそのままバレエとなりました。自身も秀逸なキャラクターダンサーだった振付家アシュトンの傑作で、その小気味よい振付は、豪華な舞台美術、そしてプロコフィエフの魅惑的な音楽とブレンドされ夢のひとときを醸成します。見すぼらしい姿のシンデレラが一瞬のうちに豪華なドレス姿へと替わるシーン、シンデレラと王子の夢のようなパ・ド・ドゥ、意地悪な義理の姉たちのユーモラスな踊りなどバレエが初めてというお客様にも十分お楽しみいただける多彩な魅力が満載です。

牧阿佐美版「ラ・バヤデール」

プティパの大スペクタクルバレエを牧阿佐美が改訂した作品。次期芸術監督のビントレーが、世界で一番素晴らしい『ラ・バヤデール』と絶賛する舞台が再び新国立劇場に登場します。オリエンタルな雰囲気にあふれた壮麗な舞台で繰り広げられるのは、インドの寺院に仕える舞姫ニキヤをめぐる愛憎に満ちた物語―― 戦士ソロルの舞姫ニキヤへの裏切り、大僧正の横恋慕、女同士の争い、そして罠…。全身を金色に塗った神像の踊りや、神殿が崩れていく場面など見どころの多い作品ですが、中でもつづら折りにスロープとなった舞台を一人ずつアラベスクを繰り返しながら降りてくるシーンは圧巻。この豪華な舞台は世界中で新国立劇場だけです。圧倒的なスケールと詩情あふれる名作を心ゆくまでお楽しみください。

ビントレー監督が贈る「ダイナミック・ダンス!」

若き振付家としてアメリカに滞在したことのあるビントレーが、アメリカの持つダイナミックな魅力にあふれた3作品をセレクトした必見の舞台。アメリカで活躍した巨匠バランシン振付の宝石のような作品『コンチェルト・バロッコ』、本格ジャズカルテットの生演奏で贈るビントレー振付『テイク・ファイヴ』、そして、掉尾を飾るアメリカ人振付家サープの『イン・ジ・アッパールーム』はスタンディング・オベーションが毎回巻き起こるという超人気作品。音楽にフィリップ・グラス、衣裳デザインにノーマ・カマリを起用するという贅沢な布陣にも注目です。クラシカルバレエとサープ特有の現代的な振付が融合したサープの最高傑作とも言われている作品、ぜひお見逃しなく!

ビントレーの「アラジン」

2008年11月にここ新国立劇場で次期芸術監督ビントレーにより世界初演され、大成功をおさめた舞台です。そのスケールの大きさ、ストーリーの面白さ、踊りの多様さで子どもから大人まで楽しめる、芸術とエンターテインメントが見事に融合した作品として話題になりました。宙に舞う空飛ぶじゅうたん、宝石が踊りだす洞窟、神出鬼没のランプの精ジーンなど、楽しい場面が目白押しです。バレエで物語を紡いでいくことにかけてビントレーは今世紀随一と言っても過言ではなく、その手腕がいかんなく発揮されたこの『アラジン』は、お客様を一瞬のうちにアラビアンナイトの世界へとお連れすることでしょう。

マクミランの「ロメオとジュリエット」

シェイクスピアの最も有名な同名悲劇を20世紀英国を代表する振付家、マクミランがバレエ化した作品です。人間の内面を描くことに長けたマクミランの傑作の一つで、若さゆえの破滅をも恐れない一途な愛を見事に描ききっており、観るものを感動させずにはいられません。新国立劇場でも2004年の上演から7年ぶり、待望の再演となります。バレエ初心者にも、バレエ通にも胸をしぼるような感動をお約束します。

初日限定のシーズン通し券

バレエ公演のシーズン通し券「プルミエ」では、各公演を初日限定でお楽しみいただくことができます。
ファーストキャストで楽しむ初日の贅沢。幕あけの感動をご堪能ください!
※中劇場公演『ダイナミック ダンス!』はお好きな公演日が選択できます。


>>オペラ公演セット券はこちら
2010-03-04 18:47

旗揚げ25周年という節目となった昨年、『無駄な力』と題した全体公演を派手にブチあげ、全国的に大好評だったWAHAHA本舗。彼らが今年も“力(POWER)シリーズ”第二弾として、またまたにぎやかなお祭り騒ぎを企んでいる。そのタイトルからして「バカの力(チカラ)」!
 アイデア満載の群舞などのダンスネタから、舞台でなければ見られないお下劣なネタまで、ワハハならではの笑いがてんこもりのステージが期待できそう。そこで、演出を担当する主宰の喰始と、メンバーの久本雅美、佐藤正宏、梅垣義明を直撃!今回はどんなステージになりそうなのか、探ってみた。

「前回の舞台で、もっとヘンなことや新しいことをやれる手ごたえがあった」(喰)
「過激すぎて苦情も来るけど、その一方で感動も与えられるんだよね」(佐藤)

――前回公演『無駄な力』を振り返ってみて、特に印象深かったことは?

佐藤 印象深いということでは、きっと久本が一番だよね。

久本 そうそう、訴えられた、というか苦情が来ちゃったんですよ(笑)。

 匿名メールで「某有名女優が卑猥な言葉を舞台で連発している。子供に悪影響なのではないか」ってね。

久本 だけどね、そのあとに来た子供からのファンレターには「観に行ってよかった。私、実は落ち込んでたんだけど、まちゃみは訴えられてもがんばってる。私も負けません」って書いてあったんですよ。

佐藤 へえ! 何年生?

久本 まだ小学生だったかな。おかあさんからも「ありがとうございました、おかげで元気になりました」と。

梅垣 逆に、そういう子供もいるというのも事実なんですよね。

久本 そうなのよ。

佐藤 過激すぎて苦情もあるけど、その一方で感動も与えられるというね(笑)。

 きっと、影響力が強くなってきたってことですよ。だから、それもいいことなんです。昔、小劇場で公演をやっていたころはもっと過激なことをしてたのに、たいして話題にされてなかったんだから。

佐藤 そうだよねえ。だけど実はね、前回は俺の子供の小学校の校長先生や担任の先生も観に来てくれたんです。帰りに楽屋にも寄ってくれて「おまえの娘はもう退学だ」とか「よくて転校だ」なんて言ってましたけど、大丈夫でした(笑)。校長先生ですら、非常に喜ばれてましたよ。

久本 私の友達も「キレイだった」って言ってくれてた。オープニングのダンスとか、男性陣がドラッグクイーンに扮して踊るところとか。

佐藤 それは、俺たちの女装のビジュアルがキレイだったってこと?

久本 なんかね、キラキラ輝いてたって。

佐藤 つまり、衣裳がってこと?(笑)

久本 衣裳も照明も全部含めて、とにかく豪華さがあってキレイだったって。でもそれってすごくいいことだと思うんですよ。ひとつの絵になってるってことだから。

梅垣 俺の友達は「金平糖みたいだった」って言ってましたよ。これもなんかいい表現だなと思うけど。

佐藤 おいしそうだなってこと?(笑)

久本 どうせなら、宝石みたいだとか言ってほしいのに。それを金平糖て(笑)。

 知り合いのディレクター、演出家も観に来てくれたんだけど、その人も最初の10分間のダンスがすごいと言ってくれたよ。要するに、端の端まできちんと踊ってるから。なかなか他のところでは観られないくらい、素晴らしかったって。

久本 うれしいね。本当に、端の端までみんな一生懸命やってたもん。でもやっぱり、そうやって全体の力がひとつになってるところを観てもらえるのがいいですよね。個々のシーンもあるけど、全体としてワハハがおもしろかったー!って言ってもらえることが一番うれしい。

――ネタ的に群舞も多いですもんね。

久本 そうなんです。

 以前の“踊るショービジネス”のシリーズのときには実を言うと、リメイクものが3分の1くらいあったんですよ。だけど前回の「無駄な力」ではほとんど新作だった。実際、リメイクものって過去にウケたってことがあるから、演出としては結構安心してやれるわけ。だけど初めてのネタだと、どっちだろう?って不安感があったんだけど。まあ、それなりにみんなウケてくれて。あ、これならもっともっと、ヘンなことや新しいことをやれるなっていう、手ごたえがすごくありましたね。

――では今回も新作中心で?

 オール新作です。

――大変ですね(笑)。

久本 オソロシイですよ! もう、全部新作だなんて、私たちは正直コワイです(笑)。

「半世紀生きてきたなかで今回は最高級、最低級のバカになります!」(久本) 「単に観に来るというより、参加するような気持ちで来てほしい」(梅垣)

――今度はどんな舞台になるか、ちょっとネタを予想するとどんなものがありますか?

 やりたいと思っているのはね、“相撲ダンス”。

久本 みんなで、関取のカッコするの?

 うん。まわしをちょっとマンガっぽく分厚くして。

佐藤 肉襦袢は?

 つけないほうがいいと思ってるんだけど。

梅垣 裸のほうがいい、と。

 客席から順番に「東方〜」って呼ばれてぞろぞろ登場するの。「佐藤正宏〜山形出身〜」とか。横綱は久本と柴田でね。

久本 アハハ、なんかうれしいねえ。

佐藤 じゃ、女性陣の衣裳はどうします?

 そこはもちろん、裸タイツでしょ。

久本 もうね、私はなんだってやっちゃいますよ〜(笑)。

佐藤 もう、50歳過ぎたからねえ(笑)。

 客席には、うすっぺらい座布団を事前にひいておいて、ラストでお客さんにうわーって投げてもらう。

久本 いいねえ、それ!

梅垣 やるほうは、絶対楽しいと思うな。

佐藤 アナウンスで「座布団を絶対、ぜーったい投げないでくださーい!」って、わざと言うのもいいね。

久本 喰さんの選曲はセンスいいから、どんな曲で踊るのか、すごい楽しみ! こういうネタだって、美しく仕上げちゃいますから、うちの喰は! ファンタジーの世界に、ちゃんと持っていきますからね〜!

――あと、前回の『無駄な力』の時に“座長引退宣言”が出たそうですが、あれはどういういきさつで?

 あれはね。僕が座長引退させたかったの、ホントのこと言うと。佐藤くんって本当におもしろいのが、実は舞台よりも稽古場なんですよ。

佐藤 え? この25年間ずっとそうだったってこと?

一同 (笑)

 稽古のとき、無駄でバカなアイデアや思いつきをバンバン言ってくるのがすごいおもしろいんだよ。それはワハハを作った当初からそうだった。だけど座長という立ち位置にいると、どこかちょっと立派なふるまいをしなきゃいけないという責任みたいなものがどうしても生まれるじゃないですか。だからもっとラクな立場にして、ノーテンキにしていたほうがいいだろうと思ったわけ。

久本 喰さんって、優しいねえ。

 あともうひとつは、新しい座長は誰になるかわからないけど、そういう部分で動きがあったらまたおもしろいかなと思ったの。それで今回の『バカの力』で、お客さんに新座長を決める投票をしてもらうんです。各劇場ごとにそれをやって、最終的にはそれを集計して決める。だから今年の座長はまだ決まってないわけ。今は空白なの。

梅垣 なるほど。

佐藤 じゃ、来年は襲名公演とかやるつもり?(笑)

久本 ハハハ。決めるのはお客さんだから、誰がなるのか本当にわからないね。

 だけど、たとえば久本や柴田や梅ちゃんが候補になると人気投票になっちゃうから。そこは応援、後援にまわってもらって。

久本 なるほど、了解です、わかりました。そうだよね、梅垣とかが候補になったらみんなわざと投票しそうだもん。それでもし本当に梅垣が座長になっちゃったら正直、私はワハハ辞めるよ!(笑)

一同 (笑)

佐藤 となると、立候補の権利は?

 まだ決めてないけど、なるべく全員にチャンスがあるようにしたいね。

――では、若手から候補者を募るんですか。

 というより、無理やり立候補させちゃう。

久本 そのほうがおもしろいよ(笑)。若手全員出したほうがいいよ。で、新しい座長が決まったとして、その人にも満期とかあるの?

 あるでしょうね。やっぱりコイツじゃ失敗だったー!ってこともあるでしょうし。

――じゃ、また1年くらいで交代したり?

久本 1年もてばいいけど、みたいな(笑)。なんか、すぐ代わりそうだな。結局誰もいなくなった、ってことにならなきゃいいけど。

――じゃ、これで佐藤さんはとりあえず肩の荷が下りた感じですか?

佐藤 いや、どうなんだろう。自分では、そんなに背負ってたものがあるようにも思えないんだけどなあ(笑)。

――では、最後にそれぞれ、お客様へメッセージをいただけますか。

久本 今まで半世紀にわたって生きてきましたけど、今回は最高級、最低級のバカになります!ぜひ見に来てください!!

佐藤 しかも、小学校の校長先生からのお墨付きでございますからね!

 人間っていつもこれをやっちゃいけない、あれをやっちゃいけないって、自分を抑えている部分があると思うんだ。だけどこの舞台を観に来たら、お客さんもバカになれる。やるほうも、お客さんも一緒になってバカになれるっていうのは、こういうお祭りみたいな舞台以外にはないですから。

梅垣 特に、ワハハ本舗の場合は単に観に来るというより、参加するような気持ちで来てほしい。ぜひ大勢の方が参加しに来てくれたら、うれしいですね。

久本 ホントそうだよね! みんなで一緒にバカになろう!!

2010-02-16 11:16

 2010年2月3日、『飛龍伝 2010ラストプリンセス』が新橋演舞場で開幕しました。作・演出のつかこうへい氏が、病床から稽古ビデオを見て指示を飛ばすという異例の演出を経て迎えた初日。しかし、その圧倒的な出来映えは、どこからどう見ても、紛うかたなき、完全無欠の「つか芝居」でした。感動でした。
 この公演を開幕早々にご覧になられたのが、毛皮族を主宰する江本純子さん。現在、東京芸術劇場の『農業少女』に向けた稽古に毎日多忙の江本さんですが、つかこうへい作品にはひとかたならぬ思い入れがあるとのことで、今回e+は無理を言って、観劇レポートを緊急執筆していただきました。

私流・つか作品の楽しみ方〜『飛龍伝 2010ラストプリンセス』を観て
江本純子(「毛皮族」主宰)

 これは極・私的な、とても私(わたくし)流のつかこうへい作品の楽しみ方であるので、あまり参考になるかはわかりませんが、「つかってどんな?」「難しいんじゃない?」「暑苦しいんじゃない?」と首を傾げてしまいそうになる私と同世代の方(ちなみに私は現在31歳、演劇歴約10年)や、私よりも若者な者達の首をまっすぐにして差し上げたいので、そして願わくばそのまま首をまっすぐにした状態で現在『飛龍伝 2010ラストプリンセス』が上演されている新橋演舞場に直行して頂きたいので、記しておきます。

 余裕がある方はお弁当代も持参して下さい。そして30分ある休憩中には是非演舞場名物のお弁当を食べて…と、それはそれぞれの意志に任せましょう。お腹空いてない人もいるでしょうし、その後デートの食事がある人もいるでしょうし…と、無駄に饒舌な私が芝居とは関係ない食べ物の話を始める前に、とっとと芝居の話をしましょう。はい。

 私が近年観たつか作品は『売春捜査官』『幕末純情伝』そしてこの度の『飛龍伝』である。いずれの物語もヒロインは大多数の男達に「やらせろ」と野卑なことを必ず言われ、「うん、わかる」と私は芝居をみながら大多数の男達と同じ感情を抱かずにはいられない。彼女達は「やりたい」と思わせるに十分な魅力がある、それぞれがそれぞれの理由で戦っている強く美しい女性達なのだ。
 そんな罪作りなヒロイン達が、物語が進行していく上で時に繊細に、時に大胆にこぼしていく、その人間性溢れる凄まじい程の色気を「絶対逃さないぞ」と拾い集めながら鑑賞するのが私の常だ。ヘンゼルとグレーテルが帰り道を忘れないために道にお菓子をこぼしていったように、このつかヒロイン達の目的は何かとわからないままだが、彼女達も進むべき道を進みながら必ずや色気を落としていってくれているので、それを拾って連れ添ってやらなきゃ男じゃない(私は女だが)。そうしていつ帰れるかもわからない物語の渦中に自らの身を置く。
 ちなみに、私にとっての色気とは「人間らしさ」みたいなものであり、転じてそれが「色気」と感じ、つまり「やりたさ」と同意となる。だから「やりたい」と言う気持は野蛮ながらも非常に人間らしい感情であると認識しているし、つか芝居における「やらせろ」と言うセリフに代表される人間らしさの諸々が私は観たくてつかこうへい作品を好んで観に行っている。

 さて、『飛龍伝』の主人公・神林美智子(黒木メイサ)は、分厚い瓶底メガネをかけてマンガのようなガリ勉女スタイルで登場する。彼女は早々にして、愚直気味に描かれている貧弱な青年・ひょっとこ(矢部太郎)に「やらせろ」と言わるがまま処女を奪われるも、それまで相手にされていなかった初恋相手である全共闘のカリスマ・桂木順一郎(東幹久)の前でメガネを外した途端「美女だ。やらせろ」と桂木に見初められ、彼の女になる。その後、あれよあれよと全共闘40万人の委員長に納まり、革命闘争の作戦のためと、常々「やらせろ」と言われていた機動隊員・山崎一平(徳重聡)の女になり、子供を産み、いよいよ愛の関係で結ばれた山崎と殺し合わなくてはならない日を迎える。

 この美智子・桂木・山崎3者の狂おしき三角関係を中心に激しい人間感情のあれこれが学生達の革命闘争の社会背景(他、「核」のことなど諸々)を以て描かれる。戦うあばずれ女の一代記だ。すごく雑な説明をしてしまって申し訳ない。(「やらせろ」を中心に筋を紡いでみました。本当はもっと・・色々あります。)

 とにかく、その最中で描かれている「細かいこと」への理解は、もうそれぞれ観る者の知識レベルに委ねられているわけで、私なんかは例えば核関連の話は難しすぎて大雑把にしか理解しえず、自分の頭の悪さを嘆くばかりだが、どうだっていいんだそんなこと。話が難しくなってついていけなくなってもヒロインについていけばいいんだ、ヒロインの激情にその生き様に理屈なく陶酔して身を委ねればよいのだ、と思う。
 なんせ、ヒロインや登場人物達の向うべき先は人として間違っていない。生きるための愛があり、だからこそ傷が生まれ、悪がある。その汚くて美しい人間らしい姿に、私は感動する。胸がいっぱいだ。実に「やりたい」女だ、なんて不埒な気持で観ていた私の俗な性根を打ち崩し、明日からは聖人になりたいような清らかな気分が訪れる。

 とそこへ、さっきまで唾を飛ばしまくって叫び狂っていた俳優達がタキシードを着てバリっと踊っている。聖人気分はグッとアップ?いや、その姿はただただカッコいい。あれ、カッコいい、なんてのは俗っぽい気分だぞ。そして他の俳優達と同じく上下黒ジャージだったヒロインも、いよいよ女らしいドレスを纏って登場する。これです、これ。これが観たかったんです、私は。休憩入れて約3時間、「女」を封印するような姿でずっと焦らされていたけども、ようやくエロス決壊の時です。

 「やらせろー!」私もつか作品に出てくる野蛮な男達が言うようにヒロインに叫びたい。それが最も人間らしい姿だと、思いたい、帰り道でありました。



<執筆者プロフィール>

江本純子:千葉県出身。女優、劇作家、演出家、小説家。2000年9月に町田マリーと共に劇団毛皮族を結成。以後、主宰として全作品の脚本・演出を手がける。2009年には、新プロジェクト「劇団、江本純子」シリーズ開始。2010年3月1日〜『農業少女』(作:野田秀樹、演出:松尾スズキ)に出演。

2010-02-12 18:53

1982年のニューヨーク初演以降、多くの人々に愛され上演され続けているオフ・ブロードウェイミュージカル『リトルショップ・オブ・ホラーズ』。日本でも人気の高い本作の2010年版がいよいよ始動する。小さな花屋で働くさえない主人公・シーモアを演じるのは、これがミュージカル初出演のDAIGO。シーモアの片想いの相手・オードリーに安倍なつみ、2人の恋に立ちはだかる歯科医・オリンに新納慎也というフレッシュな顔合わせによる“B級ホラーロックミュージカル”。「楽しさ満載の舞台にしたい!」と盛り上がる3人が、作品にかける意気込みを語ってくれた。

★オフィシャル先行プレオーダー:2/1(月)〜2/14(日)
★一般発売:2/27(土)


――DAIGOさん初のミュージカル。出演が決まったときのお気持ちは?

DAIGO ミュージカルやお芝居は人並みには観に行ってましたしすごく興味はあったんですけど、やっぱり最初は「まさか!?」っていう感じで。でも自分の人生的にはいろいろチャレンジしたいっていう気持ちがホントに強いので…とはいえいきなり出番の多い主人公っていうのはちょっとビビリましたけど(笑)、新しい挑戦っていうのはいつも楽しみですし、せっかく声をかけて頂いたんだから全力でやろうと思いましたね。

――安倍さんは舞台に出る機会が増えていますね。

安倍 そうですね。この作品のことは知らなかったんですけど、ミュージカルで、B級ホラーで、面白い部分もいっぱいあるし、しかも本多劇場でっていうお話しを聞いてたらうれしくなってきて「ぜひやらせてください!」って。とにかくすっごい楽しみでわくわくニコニコしてます。私、稽古に入ると結構壁にぶつかってしまうほうなので(笑)、今のうちいっぱい笑っておきます(笑)。

――新納さんはオリンは「いつかやってみたい役」だったそうですが。

新納 好きで気になる役でしたし、いつかは来るんじゃないかな〜とは思ってたんですよ。だから「とうとう来たか」と。年齢的にはもうあと10年くらいはできる役柄だと思うので、これを機会に10年間は演じ続けます。

DAIGO おぉ〜。

新納 だから振付けもね、今は出来るけど10年後はキツくなって来ることも多いだろうし、激しいのはやめてくださいとか、長いスパンを感じながら作っていこうかなって(笑)

――それはある意味、プロデューサー的な目線で作品創りに関わっていこうという決意ですね(笑)。

新納 まあ…そういうことなんでしょうかね(笑)

安倍 新納さん、スゴ〜イ!(笑)

新納 でもほら、やっぱり再演出来るのが舞台のいいところでもあるから。

DAIGO この3人が、10年後も…。

新納 出来たら、ね。いいでしょ?

安倍 フフフッ。

――それぞれの役柄についてはいかがですか?

DAIGO さえない青年、シーモア。まあ俺もやっぱシャイだし照れ屋だし…って、そんなの知らねえよって感じ??

安倍・新納 (爆笑)

DAIGO (笑)。傷つきたくない草食系なんでね。まあ客観的に見て自分は頼りがいのないタイプだと思うので、そこはあえて役づくりの必要もないかと。でもちょっと気弱なんだけど上手く行くと調子ブッこいちゃうみたいな、人間らしいといえば人間らしいキャラクターだなって自分なりにすごく理解出来るところがあるので、そこを手がかりに楽しく演じられたらいいなと思ってます。

――そのシーモアの想い人が、安倍さん演じるオードリー。

安倍 彼女、とっても天然ですよね。オードリーのような役はこれまで演じたことがないし台本もこれから頂くのでまだ見えないモノもいっぱいあるんですけど、映画版を観て感じたのは、オードリーは私が持ってないモノをいっぱい持ってるすごく魅力的な女の人だってこと。オリンに殴られても「やっぱり好き」って思えるほど愛に真っすぐで…どうなんだろう、でも…そう、ひとつだけじゃない、いろんな表情のオードリーを演じたいな。

――そしてオードリーを殴ってしまうサディスティックな歯科医、オリン。

新納 今さら僕に王子様的な役は回ってこないんです(笑)。もうね、際物役を全うしますよ! オリンはこれまでもいろんな素敵な役者さんが演じて来た役ですけど、陣内孝則さんが演じられた印象が強いと思うんです。5年くらい前に共演させて頂いた際、その陣内さん本人が「俺の次に歯医者が出来るのはニイロ、お前だよ」って言ってくださった。だから自分の中では陣内さんが観に来てくださって「よし」と言ってくれたらOKかなっていう密かな目標はありますけど、影響されるのも悔しいので(笑)、僕はまた新たな“平成のオリン”を創りあげたいですね〜。ガ・ン・バ・リ・マ・ス!

――DAIGOさんにとって初体験尽くしの初舞台。稽古を前に改めて今の心境は?

DAIGO いろいろ勉強させて頂きます! 自分たちのライブでもリハーサルにひと月とかそんなにはやらないし、毎日ステージで歌って、しかも1日2回公演もあってとか、ホントにそこはやってみなくちゃわからない未知数なことばかりなので、正直今はつかめない部分もたくさんあります。でも先ほど新納さんが“プロデューサー的な視線で”って言ってくださったんで、これからは何か言いにくいこととかあったらまず新納さんに伝えて、と(笑)。

新納 やだよ〜、責任取れないよ(笑)。でも武道館を満員にしちゃうロックスターが下北でB級ミュージカルなんてイイよね! 超近くで観れてお得だし。それに今回本多劇場って聞いて思わず「最高〜!」って拍手しちゃった。この作品はもともとオフブロードウェイ作品で100人、200人って劇場で上演されてる作品だから、シチュエーション的にも本来持ってる空気感が存分に出ると思う。

安倍 歴史ある劇場だから楽しみです。『三文オペラ』のときに(宮本)亜門さんに「舞台上で裸になっている位の気持ちでいなさい」って言われて、あのときはもう恥ずかしいって感覚よりも「どこまで行っちゃえるか」みたいな感覚でやっていて…もちろん、作品によっていろいろですけど、今回も「お客さんが近い!」っていうこととかは特に気にせず、みんなに伝わるよう、全力で歌っていければいいですね。

DAIGO 俺、本多劇場の前はもう何百回も通り過ぎてるぞっていう下北育ちなんですけど、そんな場所に初めて足を踏み入れるのが自分の主演ミュージカルっていうのは、何かとても運命的なものを感じます。

――では改めて本番へ向けての意気込みをお聞きかせください。

安倍 ドキドキするちょっと怖いシーンも愛情いっぱいのシーンもある素敵なお話しなので、やっぱり一番は「お客さんに楽しんで欲しい」ってことですね。あとこれは私自身も楽しみにしてる部分なんですけど、人喰い花のオードリーIIがどんな風に出て来るのか。気になる〜。オードリーとしてはもう愛の溢れる作品にしたい、それだけです。

新納 今回、DAIGOファンをはじめ「これが初ミュージカル」っていうお客さんもたくさんいらっしゃるだろうけど、この『リトルショップ・オブ・ホラーズ』は初ミュージカル体験にぴったりの作品だと思うんですよ。曲もポップだしロックだし……

安倍 ゴスペルやバラードもあるっ。

新納 そう! とにかくナンバーはどれもカッコイイし、物語は“花が人を食べちゃう”っていうホントにおバカな世界。この素晴らしきB級の世界を大いに楽しんで、盛り上がって、帰りに喧騒溢れる下北の街でちょっと飲んでほろ酔い気分で帰る、とか。

DAIGO コース、完璧じゃないですか。

新納 ね。若い人たちからファミリー層まで、カジュアルに楽しんでもらえる作品をお届けしたいと思います。

DAIGO まさに“お子さまからおじいちゃんまで”。ライブもそうですけど、SFホラーロックミュジーカルってことで、劇場にいる間はいつもの現実を忘れて「来てよかった」「メチャ楽しかった」って思ってもらえるような舞台になったらいいですね。そのためにも自分がやるべきことをちゃんとやって、あとはチームワークでイイ感じに、共演者のみなさんとうまくコミュニケーション取って、足を引っ張らないようにしたいと思います。

(取材・文/横澤由香〉
(写真/坂野則幸)

公演概要

『リトルショップ・オブ・ホラーズ』

東京公演
2010/5/13(木)〜5/30(日) 下北沢・本多劇場

宮城公演
2010/6/1(火) 仙台市民会館 大ホール

千葉公演
2010/6/5(土) 君津市民文化ホール 大ホール

福岡公演
2010/6/11(金) 福岡市民会館 大ホール

大阪公演
2010/6/12(土)〜6/13(日) 森ノ宮ピロティホール

神奈川公演
2010/6/19(土) 神奈川県民ホール 大ホール

富山公演
2010/6/21(月) オーバードホール(富山市芸術文化ホール)

★オフィシャル先行プレオーダー:2/1(月)〜2/14(日)
★一般発売:2/27(土)


※訂正のお知らせ(2/1)
東京公演の会場表記に誤りがあり修正いたしました。大変申し訳ございませんでした。
2010-01-28 11:31

窮屈な毎日の中で抱える不満を爆発させ、女性だけのロックバンドを結成した主婦たちの姿を描いたミュージカル『イカれた主婦』。自ら行動を起こすことで愛する人たちとの関係を見つめ直し、新しい自分と出会っていくという痛快なストーリーは観客の心をつかみ、劇場は連日スタンディングで盛り上がった。あの興奮から20年。初演で主演を務めたベブ役の木の実ナナを中心に、新たなキャストとスタッフが再び開く『イカれた主婦』の幕。イカれたママ・木の実ナナとその息子・山崎育三郎が語る新たな決意とは――。


今の自分だからこそ出来るティム像をやっていきたいですね。(山崎)

――まずは何と言っても20年ぶりの再演。うれしいニュースです。

木の実 そうですね。でもね、この前改めてシノプシスを読み直したら「えーっ、こういう話しだったっけ?」なんて思うくらいにすっごく新鮮で新しくて。時間を経てもその時その時で違う輝きを見せてくれる作品なんだなって感じました。

――ティム役の山崎さんとは初共演ですね。

木の実 そう、ハンサムよね〜。20年前のティムよりも…なんて言ったら怒られちゃうか(笑)。ご一緒するのは初めてだけど、お仕事ぶりは以前から拝見してましたから、こうして共演出来るのはやりがいがあるな、と思いますよ。

山崎 こちらこそ光栄です。僕もナナさんのことは小さい頃から拝見してましたし、さっきちょうど20年前の公演パンフレットを見ていたんですけど、何にもお変わりなくて。

木の実 フフフッ!(笑)。ねぇ〜、上手いわよね〜。


山崎 ホントですよ〜(笑)。もちろん舞台を拝見してもいつもパワフルでエネルギッシュでいらっしゃるから、僕も負けずに気持ちでぶつかっていかなきゃって。今23歳なんですけど――

木の実 えっ、あら、じゃあ初演のときは3つの坊やだったの!? うわ〜っ。それがこうして息子役で共演ですものね。そうか。じゃあもううーんとティムを悩ましちゃうお母さんになろうっと(笑)。

山崎 今の自分だからこそ出来るティム像をやっていきたいですね。僕もたくさんママを困らせて(笑)。


――反抗心いっぱいのパンク少年ティム。実際の山崎さんはティーンの頃、ティムのような気持ちってありました?

山崎 それが、ほとんどないんですよ。この仕事をやりたくて、大学でも歌のために、クラシックを勉強してたので…。だから逆にこういう自分にはない部分を持った役を演じられるのはうれしくて。

木の実 そうよね。

山崎 台本も読み始めたら面白くて一気に読んでしまいました。こういう痛快なコメディーのミュージカルって、最近余りないような気がして新鮮でしたね。ティムはパンク少年だけど、芯にはとにかく真っすぐで純粋な心があると思ったので、そこを大事 にしながら…あとはもう、お母さんとガンガンぶつかっていければ。

木の実 ママが息子に「パンクやめてやめて!」って言っていたのが逆に息子が「ママ、パンクなんてやめてやめて!」って逆転しちゃって、でも最後は応援してくれる。この親子の関係って、物語の中でも一番重要なところだものね。だからケンカシーンもほんとに遠慮ナシにリアルにぶつかって、でも数秒後にはもうケロッとしてる。そんな“本当のつながり”をお客さんに見てもらって楽しんで頂きたいんです。オープニングからカーテンコールまで、2人の強い血の繋がりを感じさせたいわ。どのカップルよりも目立っちゃうように(笑)。


今回、私の中では“LOVE”がひとつのテーマ。イカるってことは裏返すと「周りにいる人たちすべてにもっと愛を持って接しましょうよ」っていう気持ちだから。(木の実)

――久しぶりの再演としては、前回観劇したお客様が今度はママの世代になって観に来る、みたいな楽しみもありますね。

木の実 ええ。すでにそういうお手紙もたくさん頂いてますし、当時すでにママ世代で、「すっかり歳を重ねてしまったけど、また『イカれる〜』が観れるなんてうれしいです」っていう方もいらっしゃいます。それだけみなさんの中に残る作品だということだから、こうして再演っていうのは素直にうれしいけれど、だからこそみなさんの期待を裏切れないぞって思いもあります。ただね、私はどこかに“慣れ”みたいな精神を持ちたくはないって思いがすごくあるの。再演っていってもいつも初めて臨む気持ちでいるんです。『阿国』なんかもそうだけど、バージョンアップというよりはやはり毎回新作という気持ち。こちらが新鮮な気持ちで演じれば、それは絶対お客様にも伝わるはずですし。だから初参加のティムと同じ気持ち。真っ白な状態で一緒にスタートするんだ、って。

山崎 僕もなるべく余計なことは考えず、稽古場ではスポンジのような気持ちですべて吸収していこうって思っています。

木の実 スポンジか。いいわね、素敵。

山崎 みなさん先輩ばかりなので、もう気持ちで身体ごとぶつかっていきますよ!

木の実 キャストは全部で8人。その8人でもう100人、200人ものパワーを出せるくらい、自分の持ってるあらゆるチカラを出し切っていかなくちゃ。


――そのパワーが弾けるクライマックス、ライブシーンはやはり必見。

山崎 楽しみですね。ロックを聴くのは元々好きですし、今は地道にコツコツとギターのレッスンをしてるところですが(笑)。

木の実 私も! 前はどうしても三味線みたくなっちゃったけど(笑)、今回はもうバシッと決めていくからね。ライブシーンは出る前はもうドキドキで本当に大変。それだけにキマるとカッコイイし、本当に気持ちいいの。私、舞台って、SHOWって、やっぱりお客さんも参加してくださって役者と一体になってこそだと思うのよね。この作品はまさにそのSHOWの醍醐味が感じられるのが素晴らしいところ。

――舞台もお客さんも大いに爆発!

木の実 こんな時代だからこそね、ホントにアングリーに爆発よ。今回、私の中では“LOVE”がひとつのテーマなんです。イカるってことは裏返すと「周りにいる人たちすべてにもっと愛を持って接しましょうよ」っていう気持ちなの。だから常に自分の周りを小さなハートが飛び回ってるような気持ちでベブを演じてみたい。もう愛が溢れて大変! ティムもしっかり受け止めるのよ!って(笑)

山崎 もちろんです! 大変だ〜。何倍にもハートを返せるように頑張らないと(笑)。

木の実 うん。楽しくやろうよね。

――そしてまた20年後に再演を?

木の実 ヤダ〜ッ(笑)。うーん、いつもね、あんまり先のことって考えないの。でもそうだなぁ、実際パワー溢れてるし、そういうの嫌いじゃないほうだから、その時になったら…やるんでしょうね。きっと(笑)


〈取材・文/横澤由香〉

公演概要

「イカれた主婦」

公演日:2010/5/15(土)〜5/23(日)

会場:ル テアトル銀座 (東京都)

※その他各地ツアーあり

2010-01-28 11:24

 その過激かつ豊かで大胆な表現力で、人間の本質をえぐり出す作品を上演してきた、ポツドール主宰の三浦大輔。新作を発表するごとに演劇界に刺激を与え続けている彼が2010年、また新たなステップを上がり始めた。注目の書き下ろし作品『裏切りの街』は、秋山菜津子、田中圭、松尾スズキといった、三浦とは初顔合わせの個性はキャストがズラリと揃う。果たして、どんな舞台を作り上げようとしているのか、三浦と秋山に話を聞いた。

「人が人を裏切る行為を、共感を持たせながら見せたいというのが狙いです」(三浦)

――この作品を書かれるにあたって、三浦さんとしてはどのような狙いがあったんでしょうか?

三浦 タイトルどおりに、人が人を裏切る瞬間というものをしっかり描きたいなと思ったのが発端なんです。人が人を裏切る瞬間って、悪だけじゃないような気がするんですよ。裏切りという行為自体は悪意にとられがちなんですが、そこには罪悪感とか後悔とかいろいろな感情が含まれていると思うので。そのあやふやなというか、善と悪が振り子のように行ったり来たりする感じを丁寧に描きたいんです。裏切る行為を、共感を持たせながら見せたいというのが今回の狙いです。

――観ているお客様が、自分にもそうやって人を裏切ることがあるかもしれない、と思えるような?

三浦 そうですね。その行為自体は本当に見るに堪えないものではあると思うんですけれども。でも、やはり皆思い当たる節のあることだと思うので、そこに共感してほしいですね。人は、一貫性がないものだと思うんですよ。もうやめようと思うのに、一晩寝ると翌日は結局また同じことをやってしまう。そういう人間のつかみどころのなさを、エンターテインメントとして見せようという目論見なんです。

――そして今回、秋山さんをキャスティングした一番のポイントというと?

三浦 ぶっちゃけて言いますと、秋山さんに出てほしいなというのがまずあって。そこからストーリーを考えたんです。

秋山 そうでしたっけ? 私がいかにも人を裏切りそうなイメージだったから、とかじゃなくて?(笑)

三浦 いえいえ(笑)。ポツドールの劇団公演だと、どうしても若い人たちの物語しかできないんですが、実は夫婦の話とかも書いてみたいという気持ちが前からあったんですよ。秋山さんには、色気があるのはもちろんですが、いい意味で大人気ない感じもあるかなと。

秋山 ふふふ。

三浦 美しいんだけれどもダメで弱い感じを見てみたいなと、僕が思ってしまったんですよね。そもそも、この芝居の始まりはそこなんです。

――秋山さんは、このお芝居に出ることになって、まずどう思われましたか。

秋山 三浦さんの舞台はこれまでに『顔よ』(2008年上演)という作品1本しか観させていただいていなかったんですよ。でも、なんだか楽しそうですし。私、挑戦することが好きだから、やってみようかなと思いまして。その『顔よ』を観たときは、ちょっとビックリしましたけどね(笑)。噂には聞いていたんですけど。でも、以前はもっとすごかったそうですね。

三浦 はい(笑)。今は結構、落ち着きました。

秋山 なんだか、新しいことをやるときってすごくいいじゃないですか。初めてパルコ劇場でやる、とか。私、そうやって初めてのことに関わるのが好きなんです。気付くと、そんなことになっていることが多いんですよね。

――智子という役を、三浦さんとしては秋山さんにどう演じてもらいたいですか?

三浦 そうですねえ。秋山さんのままで演じてくださればいいと思うんですけれども。

秋山 そうですか。今回の役の場合は現代が舞台なので、自分自身が置かれている立場にちょっと近かったりすると思うんですよね。年齢的にもそうだし、場所も東京だったりするし。そういう役を演じるのって、意外と照れくさいんです(笑)。近いからこそある壁を乗り越えなきゃいけないので。

――三浦作品ということは、やはり激しい絡みのシーンがあったりするんでしょうか。

秋山 あるの?(笑)

三浦 まあ、妥協はしないつもりでいます。

秋山 松尾さんはやる気マンマンですよ(笑)。

三浦 ハハハ! 本当ですか。ただ、普段からいつも思っているのは、そういう表現が目的になっちゃだめだということなんですよ。そのテーマを描くために、演出として露骨な表現が必要であればやらなきゃいけないとは思うんです。そこを省略しちゃうとテーマが弱くなると思えば、きちんと描かなくてはいけない。でも、その点は役者さんとしっかりコンセンサスをとってやっていきます。役者さんも同じようにそういう表現が必要だと思ってくれたならば、きっとやってくださると思うんです。それが単に露悪的なものだったら、誰だってやりたくないですからね。だからそこは慎重に考えていきたいと思っています。

――秋山さん、ご覚悟のほうは。

秋山 いや、今の話を聞いてすごく安心しました。私も、必要だと思えばやっていくほうだから。そんな感じなら大丈夫です。だけど、三浦さんって、もっとガーッて自分からやっていく感じの方かと思ってました。

三浦 そんなことないですよ。逆に、役者さんが自ら「ここは脱いだほうがいいですよね」って言ってくれることのほうが多いんです。

秋山 へえ〜、そうなんだ。

三浦 無理やり脱がせるわけにはいかないので。ただ、うちの劇団はそういうことをやり過ぎて、感覚が多少マヒしちゃってるところはあるかもしれないですけどね(笑)。

「ポツドールらしさと私たちらしさを出しつつ、新しい何かを生み出したい」(秋山)

――田中圭さんと共演されることに関しては、いかがですか。

秋山 圭くんとは岩松了さんの芝居で一緒だったこともあって、なんだかやっぱり照れくさいんです。

三浦 でも先ほど、二人が並んでいる姿を見ていたんですが、すごくいい雰囲気でしたよ。

秋山 息子みたいじゃなかった?(笑)

三浦 いやいや、逆にこの二人が…というのがグロいというか、生々しいんですよ。田中さんってあまりセックス的なアピールはないじゃないですか。それが逆に秋山さんとだと、いい意味でちぐはぐになる。

秋山 そうだよね。ちょっとちぐはぐ感があるよね(笑)。

三浦 そこがいいなあと思いました。そこが逆にピッタリ。

秋山 ハマり過ぎてもね。

三浦 ええ。どこかマヌケだったりするので。そのデコボコな感じがいいんです。

――松尾さんとはもう、何度も共演されていますが。

秋山 今回、夫婦役をというのがまたこれも照れくさいんですよ(笑)。圭くんよりも、もっとよく知っている相手だから。でもまあ、気心が知れてるからやりやすいと言えばやりやすいし、心強いです。だけど松尾さんのお芝居はすごく面白いから、オイシイところをみんな持って行かれそうな気もする(笑)。

三浦 ハハハ!

秋山 だけど今回、二の線でいくんでしょ?

三浦 そうですね。エキセントリックな感じではないです。そこら辺にいそうな中年おじさん役をやってほしいと思っているので。

――三浦さんは松尾さんとは、今回が初顔合わせですよね。

三浦 そうなんです。僕はもともと、松尾さんに影響されて芝居をやってきたというところもあって。だから、自分の作品に出演していただけるのは、とても光栄です。

秋山 ああ、だから三浦さんの作品もちょっとダークな感じがあるんだ。

三浦 そうですね。でも、作品の空気は違うと思います。結局、今みたいな作品を書くようになったのは、松尾さんのマネをしちゃいけないというところから始まっているんです。

――では最後にお客様へ、お誘いのメッセージをいただけますか。

秋山 ポツドールらしさを出しながらも、そこに若くない私とか松尾さんも出ているので私たちらしさも出しつつ、みんなでぶつかりあって、新しい何かを生み出したいと思っています。大勢の方に、観に来ていただきたいですね。

三浦 パルコ劇場進出ということで「ひよったな!」とは思われたくないので(笑)、ポツドール色はなくさないつもりです。だけど本当に、いろいろな人が観にいらっしゃると思うんです、たぶん今までポツドールを一度も観たことない人もいらっしゃるでしょうし。せっかくの機会なので、だからこそ自分のやりたいことは曲げないで、いつものようにやるつもりです。こういう作品をやってはいますが、実はいろいろな人に観てもらいたい欲は人一倍あるんです。普遍的なことをやっているという自負はあるので、受け入れられる気はするんですよ。

――初めて観る人は、ビックリするかもしれないですけどね。

三浦 その驚きと嫌悪感も含めて(笑)、ぜひ楽しんでいただきたいですね。

(取材・文/田中里津子)
(写真/渡辺マコト)
(衣裳協力:VICTRIA WEBB)

2010-01-28 11:18

 個性派俳優として、あらゆる舞台や映像でインパクトのある演技を披露してきた池田成志。実は演出家としての顔も持つ彼が、今回取り組むのはここ数年、自らの劇団外の公演でも注目を集めている猫のホテルの千葉雅子による書き下ろし脚本だ。日本統治の幕切れが迫る台湾を舞台にしたこの『博覧會』という作品は、芸人の師匠と弟子を中心にした物語になるという。

 この弟子を演じるのが、どんな作品に出ていても強烈なキャラクターがひときわ目を引く大人計画の人気役者、荒川良々。役者同士として共演経験はあるものの、演出家と役者という関係になるのは今回が初めてという池田と荒川に、話を聞いた。

「いろいろな役者さんを横に並べたときに、そこに良々がいると面白そうだなと思ったんだ」(池田)

――池田さんは、この公演の企画段階から関わられているんですか?

池田 はい。2年半くらい前から。千葉さんとは以前、"月影十番勝負"(2006年上演『SASORIIX 約束』)でも一緒に芝居をやっていまして、「いつかまたやろうね」って言っていたんです。それから何度も頓挫しそうになりながら、ようやくここまでこぎつけました。

――ということは、千葉さんと一緒に芝居をやりたいという思いが、この公演のそもそものきっかけだった。

池田 そうです。千葉さんを男にしたい、というかね。

荒川 えっ、千葉さん、男なんですか?

池田 いやいや(笑)。千葉さんって、書き手として本当に面白いことを書くんだけど、ものすごく遅筆で、なかなかふんぎりがつかない人なんですよ。だから「なんか、やろうよ! 千葉さんはもっともっと面白いはずだよ!」みたいな気持ちがあって。それで今回、一生懸命たきつけてみようかと。まあ、今もたきつけている最中なんですけどね(笑)。

――千葉さんには、こういう物語を書いてほしいと注文されたりしたんですか?

池田 いや、千葉さんが書きたいものを書くべきだと思ったので、特にしていません。でも案の定なかなかアイデアが出てこないので、いくつか候補を出してもらって。その中で台湾を舞台にした戦時中の話というのがあって、面白そうだからそれでいきましょうということになったわけです。

――そして今回、荒川さんをキャスティングした狙いというのは。

池田 いろいろな役者さんを横に並べたときに、そこに良々がいると面白そうだなと思ったから。良々と、(篠井)英介さんや大谷(亮介)さんが並ぶことって、めったにないんじゃないかな。あまり一緒にやったことないでしょ?

荒川 ええ、ないですね。共演しても、あまりからんでいないし。

池田 そうやって「これって、どうなるかわからんわい」と思える組み合わせのほうが、面白そうじゃないですか。

――荒川さんはそのオファーを受けて、どう思われましたか。

荒川 「じゃ、やらせてください!」と二つ返事でした。千葉さんの脚本の舞台は何本か観ているけど出演したことはないし、成志さんの演出した舞台も観たことはあるけど、演出を受けたことはなかったですし。

――今回の、演出のポイントとしては。

池田 あまり、ふざけるのはよそうかなーとは思っていますけどね。みなさん、なんでもできちゃう人たちが多いから。骨太なというか、そんなに軽くならないようにしたいなと。ふだん、軽いのばかりやっているのでね(笑)。

――物語としては、芸人さんの話なんですよね。

池田 そうです。なにをやってもうまくいかない人たちがたまたま、台湾のある地点に集まって、なんとかしようとあがく話にしたいんです。終戦間近、1940年代の台湾を舞台にするつもりなので、社会全体もうまくいっていないはずだし。そうなると、ふざけるにしてもきっと逆に悲壮感のあるふざけになると思うんですよね。だから、あまり軽はずみなノリでやるのではなく、しっかり作っていこうかなと思っています。

「初めての成志さん演出で、見たことのない自分を見せられるといいなと思います」(荒川)

――荒川さんは今回、どういうキャラで、どう演じようと思われていますか?

荒川 どうなんでしょうかね。まだよくわかっていないですけど。芸人の師匠と弟子の話なんですよね。

池田 うん。英介さんが師匠で、良々が弟子。そして、その師匠がこさえるつもりのなかった娘を、弟子のほうが親代わりに育てているという関係があって。この弟子が、師匠になぜか盲目的にずっとついていっているので、彼はどうして師匠から離れないのか、結局は離れるのか、みたいなお話を軸に持っていこうとしているんです。だけど、英介さんが師匠で良々が弟子っていう、その絵づらがもうおかしいよね。全然、合ってなくて。ただこれも今のところの話ですわ、もうしわけないけど、今から大幅変更もあるかもです。

――池田さんとしては、荒川さんにどう演じてほしいと思われていますか?

池田 今の時点では、特にないですね。まだ、どう転ぶかわからないんでね。ただ、良々の場合はいじめている役が多いじゃない?

荒川 はい。

池田 いじめられている役ってあまりなかったと思うんだよね。いじめられてても気づかないというのはあるかもしれないけど。

荒川 ああ、そうですね。

池田 すごく人がいい役もいいんじゃないかなと、僕は思っているんですけどね。そのへんは、これから千葉さんがどう書いてくるか、僕自身も楽しみですよ。

――では最後に、お客様へお誘いの言葉をいただけますか。

池田 僕はもう20年以上芝居をやっていて、英介さんや大谷さんとも長い付き合いなんですけど、仕事を一緒にするのは実は今回が初めてなんです。それに、たとえば(星野)真里ちゃんに英介さんとか大谷さん、良々、(菅原)英二たちをここで紹介するというか、こうやって人と人とを会わせることができるだけでも、いいことができたなと思っていて。きっと、面白い化学反応が起きるはずですよ。今回って、みんなそれぞれバイプレイヤーみたいな人が多いじゃないですか。自ら看板しょってやってるような人は英介さんくらいでしょ。意外と、ありそうでない組み合わせだと思うので、その顔合わせの妙をぜひ確認しに来てもらいたい。それに今回はお値段もお手ごろになっております!(笑)ホント、このメンツにしては出血大サービスですから!

荒川 僕は……ただひたすらがんばります、としか言えないなあ。

池田 もっといいこと言ってよ(笑)。

荒川 いいことですか。まあ、英介さんと大谷さんとの化学反応をですね……。

池田 俺と同じことじゃないかよ(笑)。

荒川 いやいや本当に。僕としては、千葉さんの脚本が初めてなので、これまで見たことのない自分を。

池田 見たことのない荒川良々を出す? いいねえ!(笑)

荒川 はい。初めての成志さん演出で、それが見せられるのではないかと思います。

池田 言っちゃ悪いけど、良々って不気味じゃないですか。そういうキャラも多いしさ。

荒川 いや、本当は好青年ですよ。

池田 意外にこう見えてイイヤツなんだよね。それも含めて出していこう、と。

荒川 ええ、自分の殻を破って。みなさんに、力を貸していただきながら。僕も貸します。

池田 貸すんだ(笑)。新しい自分を見つけるために。

荒川 はい、絶対。

池田 あとで笑っちゃわない、そんなこと言っちゃって?(笑)

荒川 そうですね、かなり恥ずかしいかも(笑)。まあとにかく、僕は一生懸命やらせていただくだけですよ!

(取材・文:田中里津子)
(写真:渡辺マコト)

公演概要

「博覧會〜世界は二人のために〜」

公演日:2010/4/8(木)〜4/21(水)

会場:東京グローブ座 (東京都)

作:千葉雅子   演出:池田成志

出演:荒川良々/星野真里/大谷亮介/菅原永二/千葉雅子/池田成志/篠井英介


2010-01-25 18:13

 『ゴッドハンド輝』など数々のテレビドラマや映画、CMで活躍中の平岡祐太が、待望の初舞台に立つ。『相対的浮世絵』は、劇作家・土田英生率いる京都の劇団MONOが2004年に上演した作品だ。

ある事件から十数年。友人の前に死んだとばかり思っていた弟と同級生がひょっこりあらわれ、不可思議な再会を果たす。思い出話をする彼らの会話から、それぞれの想い、兄弟愛や友情が浮き彫りになっていく。土田独特の可笑しげな世界観、不思議なムードに満ちたこの快作を、平岡のほか袴田吉彦、安田顕、内田滋、西岡徳馬という顔合わせで改訂上演する。

演出を手掛けるのは、自身のプロデュース公演だけでなく、ミュージカルから時代劇までジャンルを越えて様々な舞台にひっぱりだこの人気演出家・G2。この『相対的浮世絵』ニューバージョンは、果たしてどんな舞台になりそうか、平岡とG2に語ってもらった。

土田さんの脚本は、ちょっとズレてるような会話のやりとりがとても面白い。最初の設定からして変わっていますしね(平岡)

――平岡さんは今回初舞台ですね。この舞台への出演が決まって、率直なご感想としてはいかがですか。

平岡 「ああ、ついに舞台ができる!」と。以前からよく舞台は観に行っていて、いずれやれればいいなと思っていたんです。だから「いよいよ来たな!」という感じでした。

――G2さんがMONOの作品を演出するという、この顔合わせはちょっと意外かなとも思ったんですが。

G2 そうですか? でも実は、MONOの作家の土田くんが外部のために初めて書き下ろした作品は、G2プロデュース公演だったりするんですよ。

――そういえばそうでした。『いつわりとクロワッサン』(1999年上演)ですね。

G2 だから、全然共通項がない話ではないんですよ。まあ、その時は僕が演出ではなくて、プロデュースだけだったんですけど。そのあと『ラフカット』という企画公演でも一緒にやっているので顔合わせとしては3回目なんですが、本格的に彼の脚本を演出するのは今回が初めて。でも、いずれやるだろうなと思っていたので、それこそ僕も「ついに来たか!」という感じですよ。

平岡 おぉ〜、そうなんですか。

G2 土田くんって基本的にアッサリ味なんですね。僕はどっちかっていうと作りたいものがコッテリ味というか、濃縮系。そういう意味で、意外な顔合わせだと思われるのかもしれないね。ただ『相対的浮世絵』という脚本の場合は、ツッチーの作品の中でも特に僕のコッテリ味を刺激するエッセンスがあるんですよね。

――平岡さんは、初演の脚本を読まれた感想としてはいかがでしたか。

平岡 ちょっとズレてるような会話のやりとりがとても面白いなと思いましたね。最初の設定からして、いきなり変わっているし。その辺がすごく面白かったです。

――どの役を演じられるんですか?

G2 平岡くんには、兄弟の弟役のほうをやってもらいます。

平岡 実は最初、どの役をやるか聞かされずに台本を読ませていただいたんです。そのあと「どの役がいい?」って聞かれて、そのときちょうど「弟役がいい」って答えているんですよね。

――では、希望通りだったんですね。

平岡 そうなんです。今の自分が一番やりやすくて魅力が出せる場所は、弟役なのかなーと思って。いきなり難しい、深みのあることはできないかもしれないですしね。だけど弟役なら、わりと前のめりにガンガンいけるんじゃないかなって思ったんです。

G2 うん、その分析は当たってると思うな。

――G2さんは、平岡さんにどう演じてほしいと思われていますか。

G2 僕は、今はただ単純に楽しみにしていますけどね。土田くんからも「平岡くんは初舞台だから長ゼリフは少なめに書き直したほうがいいですかね?」って聞かれたので「いやいや、ハードルは高めに設定してください!」って言っておきました(笑)。たぶん、そのほうが燃えるタイプじゃないかなと、勝手に思ってるんだけど?

平岡 ああ〜、確かにそうかもしれません。切羽詰まってるときのほうが、余裕があるときよりも、自分でもいいような気がします。だけど、この間G2さんが僕のことを「まだ化けるかもしれない」ってコメントしてくださっている記事を読んで、すごくうれしかったんですよ。ちょっと今、僕、変化したいな、と思っているので。

――この舞台で化けたい、と?

平岡 はい!(笑) 僕、ずっと好青年役を演じることが多かったので。そういうものとは違うエッセンスが今回、自分でも見つけられたらいいなと思っているんですよ。

平岡くんは「うっそー、そんなの飛べない!」って思うくらい高いハードルをぶつけたほうが面白い人だと思うんだ(G2)

――土田さんには、どのあたりを書き直してもらおうとしているんですか?

G2 一番大きな変更部分は、初演の脚本は"土田語"で書いてあるじゃないですか。セリフがみんな「わちは、〜だで」みたいな、どこの方言だかわからない独特の言葉でしょ。

平岡 ああ、そうでしたよね。

G2 それは今回いらないんじゃないか、と。

――あの独特の言葉づかいを、すべて標準語に?

G2 ええ。基本的には標準語にします。なかにはヘンなしゃべり方の人がいるかもしれないけどね。

――ということは、雰囲気はだいぶ変わりそうですね。

G2 変わりますね。だけど、そこを書き直すことによって、また違う面白さが出てくると思うんです。ツッチーの今の香りみたいなものが新たに入ったりするだろうし。

――では、演出的には今の時点ではどうしようと思われていますか。

G2 キャストが男優だけ5人なので、やることはひとつですよ。一番のポイントは、とにかくこの男優同士のからみとかズレとか、空気感をいかにしてつくるか。劇場のサイズ的にも、この5人の役者ならちょっとがんばれば、まったく大丈夫だと思いますしね。

平岡 おお〜、本当ですか!(笑)

G2 だから、演出的にはそれほど大がかりなことは考えていません。ひとつだけ、アッと驚く仕掛けを考えていますけどね。そこ以外は、役者の芝居をいかに見せるかということに尽きると思います。大仕掛けなものでずっと走りまわっているような芝居じゃなく、とことん役者同士の濃密なからみを追求したほうが面白くなるし、作品もより生きてくるような気がするんですよ。

平岡 それ、すごくガチですよね!!

G2 ハハハ、そうだね。そういう意味でもハードルは高いほうがいいでしょ。

平岡 やり遂げた時の達成感もありそうですよね。

G2 うん。平岡くんは「うっそー、そんなの飛べない、飛べない!」って思うくらいにすごく高いハードルをぶつけたほうが面白い人だと思うんだよね。

平岡 ふふふ。なんだかやっと今、この舞台に立つことが現実味を帯びてきた感じがしてきました(笑)。でもやっぱり、きちんと目標を定めておかないと、どっちみちツラいことになりますよね。なんとなくやるのではなく。

G2 だけどそういうのは、今回はありえないな。特にこのツッチーの本は、やりようによってはサスペンス感もあるわけじゃない?

平岡 ええ、そうですね。

G2 うすら怖さもあり、でもズレたギャグもあり。設定からして突飛だから、場合によっては役者はそのことに負けがちになってしまう。設定や脚本にゆだねていればいいんじゃないか、ってことになりがちなので。

平岡 ああ、なるほど。

G2 そこを、その面白い設定以上にぐーっと人物像を掘り下げてもらわないと。そうしないと逆に、別に誰がやってもいいんじゃないのってことになっちゃうからね。

――そのためにも、それぞれの役者がガチで取り組んでいかないと、ということですね。

平岡 そうですよね! でももう、とにかく僕は今、いろんなことをめっちゃ吸収したいんです。テレビや映像の仕事とも違うものが吸収できそうなので、今からものすごく楽しみなんですよ。

G2 いや〜、平岡くんはこの舞台で、絶対に大化けするはずですから!

平岡 アハハハ、本当にそうだといいなあ!

G2 だからホント、その瞬間に立ち会わないなんて、すごくソンだと思いますよ! あとね、今回はわりと不思議なキャスティングになっていて、この味わいの顔合わせって最近あまりないとも思うんですよ。この5人の男どもが織りなすハーモニーが、本番で果たしてどうなるのか、ぜひナマでみなさんに体験していただきたいですね。

(取材・文/田中里津子)

(写真/渡辺マコト)

2010-01-12 18:55

 全国の読者に感動を与えた実話集『届かなかったラヴレター』。シリーズ累計35万部のこのベストセラーを、歌手・クミコとミュージカルスター・井上芳雄が朗読し、そして歌うハートフルコンサートが2009年に引き続き、再び開催される。前回の好評に応え、今回はさらにパワーアップ! 朗読&ナビゲーター役として徳光和夫、上柳昌彦という大御所アナウンサーがふたりも参加することになった。

「なんだか家族写真を撮っているみたい!」と顔合わせの時点から和やかなムード満点だった4人に、今回のステージへの想いを語ってもらった。

「ナマで朗読をするというのは、実は初めての経験なんです」(徳光)
「いつかクミコさんと何か一緒にしたいと話していたんですよ」(上柳)

――クミコさんと井上さん、おふたりにとっては2回目の『届かなかったラヴレター』になりますが。徳光さんは、この企画に初めて参加することになって、まずどんなことを思われましたか。

徳光 僕はほら、もう“アラシチ”ですから。

上柳 “アラシチ”?(笑) 今、おいくつなんでしたっけ。

徳光 68歳。このトシだとどんな仕事をやってももう仕事慣れしちゃってて、いただく仕事をどっちかというと“こなす”という感じだったんです。だけど、今回のように舞台で。ちゃんと声づくりをするというか、毎日、声に出して読んで準備をしておきたいです。手紙には微妙なニュアンスが書かれていますから、その言葉のニュアンスを音で出せるようにしていかなきゃいかんかな、と。

――上柳さんも同じく、初参加ですね。

上柳 そうです。そもそも、僕はクミコさんの『わが麗しき恋物語』という曲を7年前、勝手に自分の番組で毎日かけていたという、そんなご縁があってね。いつかクミコさんの歌に合わせて、僕が何かを読むのか司会をするのかわからないけど、とにかく何か一緒にしたいですよねって話はしていたんです。それが、小さな炎みたいにチョロチョロ燃え続けていて、今に至るわけなので。だから今回は本当にうれしいですね。

クミコ だけど徳光さんと上柳さんという最強の、言葉を伝える達人がおふたりもいらっしゃるんですから。きっと、ものすごく助けていただけるんだと思って、心強いですよ。

井上 僕も、こういう試みはずっと続けていきたいなと思っていたんです。だからこうして2回目があってとてもうれしいし、新しい形でおふたりとご一緒できることは、すごく幸せで、すごく楽しみです。

――前回やってみて、感想としてはいかがでしたか。

井上 もう、とにかく稽古が大変だったんですよ。演出が結構しっかりあって、芝居とか舞台に近かったので。

クミコ そうなんですよね。最初はセリフを覚えるわけじゃないし、ただ手紙を読んで、歌うだけじゃない?って簡単に考えていたら(笑)、それどころではなくて。これってなんなんだろう?っていうくらい、あれほど疲れた舞台もなかったですね。

井上 アハハハ、本当ですよ。

クミコ なんでこんなに疲れるの?って、ふたりでゼイゼイしてました。それって、手紙に詰まった何十人分の想いを背負ってやるせいなのかな、と思うんです。ひとつひとつ、いろんな人の想いに沿わなきゃならないので、それで自分の体がバラバラになっていくような緊張を強いられたのかもしれません。

井上 僕も、読んでみて初めてわかることがいっぱいあって。手紙を書いたのは一般の方、つまり文章のプロじゃない方じゃないですか。だからどうしてもリズムが難しかったりして、読みにくい部分もあって。でも、だからこそリアルに届くものもあるんですよね。

クミコ 芳雄くんは、よく泣いたよね(笑)。

井上 もう、舞台上でもボロボロ泣きながら。

クミコ 私は最初「え、なんで泣くの?」と思っていたのに、結局は同じような状態になってました。鼻水の処理の仕方を、芳雄くんを見ながら覚えましたよ(笑)。

――だけど、涙といえば徳光さんですよね。

徳光 そうなんですよ。だから、今から困っててね。涙って、こらえていると一度噴き出したときにはもう尾を引いて、止まらなくなるんです。

クミコ ああ〜。

井上 そうそう!

徳光 これもまた、僕のひとつの課題だな。 

上柳 いや、実話っていうのは、僕もよくラジオで読むんですけども、演者は泣いちゃいかんよって言われるわけですよ。

徳光 うん、本当はそうなんだよね。

上柳 自分の感情は置いておいて、その上でいろんなことを想像するのはお客さんの力なので。だから僕の仕事は、どこまで自分の感情を抑えられるかってことなんですが、これがひとりが泣き始めるとね。

クミコ そう、そうなの、そうなの!

上柳 女子中高生みたいな連鎖になるんじゃないかと、今、ふと思ってね。これはなんとかしなきゃな。

クミコ 気をつけます。

徳光 一番心配なのは、やっぱり僕ですかね。今朝も、電車でスポーツ紙を読んでいて、これがまたうまいこと書いてあるもんだから。

クミコ アハハハ、電車の中で泣いちゃうんですか。

徳光 いや、ホントそうなんです。もう、嗚咽ですよ。みっともないけど、止めようと思っても止まらなくなっちゃってね。

上柳 周りの人、ビックリするでしょうね(笑)。だけど、人がそうなると逆に自分は冷静になるかもしれないなあ。

クミコ じゃ、上柳さんを船長と呼ぼう! みんなが沈みかけたら、よろしくお願いしますね!

井上 最後の砦として頼りにします!(笑)

「おのおのの中で見えてくるものがいっぱいあるコンサートにしたい」(クミコ)
「実人生が全面に出てくる手紙や歌からいろんなことを受け取りたい」(井上)

――朗読を実際にやってみて、難しさは感じられましたか?

井上 いや、本当に難しかったです。僕はふだん役を演じることが多いので。朗読では、演じてその人になって読むのがいいのか、ある程度距離を置いて、聴いている人の想像にまかせて読むようにしたらいいのか、悩んでしまって。まあ、正解というものもはっきりはないんでしょうけど。手紙によっては方言だったり、おじいさんだったり、女の人だったりっていうのもありますし。ふだん自分がやらないような人物の手紙も読ませてもらったので、すごく勉強になりました。だから今回は、徳光さん、上柳さんおふたりが読まれるのを見て、さらに勉強しようかなと。

クミコ 私もこの、言葉を伝える達人おふたりがどういう風に読まれるのかが、本当に楽しみ。私も同じように、勉強するつもりでおります。

上柳 だけど、クミコさんは歌もいいけど、実は朗読もいいんですよ。

クミコ ええ〜?そんなことないですよ。

上柳 MCはちょっとオバチャンぽいですが。

クミコ アハハハ!

上柳 このちょっと、ハスキーな声がまたいいんだ。

徳光 隣で声を拝聴していましても、ああこの声でナレーションするのは、いいんじゃないかと僕も思いますね。どっちかっていうと歌は語れっていうほうでしょ。

クミコ 語るように歌うとか、よく言われますけど。それって結構極意かもしれないなって、このごろ思うんですよ。語るように歌う、歌うように語る。まさしく今回はそれですね。

――では最後にお客様へ、それぞれからお誘いのメッセージをいただけますか。

上柳 まずはクミコさんと井上芳雄さんのファンの方にはぜひ、歌をじっくりと聴きに来ていただきたい。そして朗読という表現には日ごろそんなに接する機会がないと思うんですが、これが意外とハマるんですよ!意外と人間っていろんなことを想像しますよ!っていうことを、多くの方に体験してもらいたいですね。

徳光 ああ、確かにそれは非常にいい経験かもしれないね。

クミコ 実は先ほど、演出のほうから「これは目を閉じて聴くコンサートにしたい」というコンセプトを言われまして、それってすごく正しいなと思ったんです。私のお客様でも、目の悪い方がすごく多いんですよ。私の声なんて目を閉じて聴く声でもないだろうと思ったんですが、そんなことないって言ってくださってね。ということは、まさしく今回なんて、もっともっとそういう方に来ていただいたら、喜んでいただけるような気がしていて。目の見える方は目を閉じていただいて、もし目の見えない方はそのままで、おのおのの中で見えてくるものがものすごくいっぱいある、そんなコンサートにしたいですね。

井上 うーん、もう僕は本当にひとりだけ、本当に未熟者なので……。

クミコ っていうか、ひとりだけすごく若いのよね(笑)。

井上 まあ、しょうがないと思うんですけどね、実際に若いから(笑)。

徳光 ハハハ。

井上 でも今、皆さんのお話を聞いていたら、年だけの問題だけではないと思えてきて。新しい取り組みとして向き合おうとしていらっしゃる皆さんがすごく素敵で、僕なんかもっとそうしないといけないなと改めて思いました。こういうステージってごまかしがきかないというか、実人生がボーンと全面に出てくる手紙や歌ばかりになると思うので。本当に一生懸命になって僕もいろんなことを、歌や手紙から受け取りたいです。前回知ったんですが、人生で最後に人が言うのは「ごめんなさい」と「ありがとう」だと。これは僕にとっては大きな発見だったんです。それを知っているだけで何か心に灯がともるみたいなところがあったので、今回もそういう経験をまたもうひとつしたいな、と思っています。

徳光 僕も本当に今、皆さんがおっしゃられた通りの想いなんですけどね。でも、ちょっと開き直りみたいに聞こえるかもしれないですけど、僕は放送屋なんでね。“放送”という字は“送りっ放し”って書きますから。

クミコ あ、本当だ!

徳光 送りっ放しで、こちらはナレーションいたしますんで、皆さんは自由にお受け止めください、と。

クミコ ピッチャーですね!

徳光 うん。たまに暴投になるときもあるかもしれませんが(笑)、皆さんにはぜひともいいキャッチャーになっていただきたいと思っております!

2009-12-28 14:22

ミュージカル史上に輝く、傑作ミュージカル「キャバレー」を新たに翻訳上演!

 2010年の年明け早々に、華やかな『キャバレー』の幕が開く。この作品は1966年にNY・ブロードウェイで初演され、1972年にはボブ・フォッシー監督、ライザ・ミネリ主演で映画化もされた傑作ミュージカル。これまでに日本でも何度も翻訳上演されている、世界的にも人気の高い舞台だ。

 1929年のドイツ・ベルリンにあった"キット・カット・クラブ"というキャバレーを舞台に、アメリカ人作家のクリフとキャバレーの歌姫サリー・ボウルズの哀しい恋の行方、さらにナチスドイツが台頭する直前の退廃感に満ちたベルリンの街、そしてそこに暮らす人々の姿がドラマティックに描かれていく。

 ヒロインのサリー・ボウルズ役には昨年の『ドロウジー・シャペロン』でミュージカルに初挑戦した藤原紀香が扮し、キャバレーのEMCEE役を諸星和己、クリフ役を阿部力が演じる。演出を手掛けるのは、宝塚歌劇団の小池修一郎だ。

 開幕を前に着々と稽古が進む都内のスタジオで、年の瀬も押し迫った12月某日、公開稽古が行われた。この日、披露されたのは『キャバレー』の代表曲でもあるナンバーから2曲。

 まず、2階建てになっているセットの中央の赤いカーテンが上がると、周囲の歓声を浴びながら、小花模様の可憐なワンピースを着て帽子をかぶった藤原が登場。舞台上にあるテーブル席にはキャバレーの客でもあるクリフとして阿部が座り、熱い目で歌姫・サリーを見つめている。「ママはね、私が修道院にいると思ってるの…」というセリフから始まる『ママには内緒よ』を、キュートな仕草でお茶目に歌い踊る藤原。だが途中でバッとワンピースの前を開くと、中味はなんと黒のボンテージ下着風の衣裳! 見事な身体のラインを強調したランジェリー姿で6人の女性ダンサーを従えた藤原は堂々としていて、まさに歌姫そのものだ。

 また2曲目は諸星を中心に20人弱のダンサーたちが登場し、にぎやかに享楽的に『キャバレー』のメインテーマでもある『ヴィルコメン』を。諸星は胸元のあいたタキシードにハット姿で、ステッキもうまく使いながらキレのいいダンスを披露している。テーブル席にたまたま座っていた女性記者をとっさに観客に見立てて客いじりをして笑いをとったり、怪しげにニーッと歯を見せたりと、EMCEEという難役をいかにも楽しんで演じている様子だった。そして、曲が終了すると同時にアンサンブルたちからは拍手と笑顔があふれ、そんな彼らの姿からも今回のカンパニーのチームワークの良さが窺えた。

 さらに公開稽古終了後には藤原、諸星、阿部が、本番に向けて意気込みを語った。

藤原 稽古が進むにつれ、みんな徐々にかたまってきました。本当に、毎日楽しくお稽古しています。

諸星 モチベーションはどんどん上がってますけど、でもまだまだですね。とはいえキャバレーが舞台なので、その日その日のライブ感が大事。だからきっとどれが正解かは、わかりませんね。

阿部 稽古では日々、いろいろなことが変化していっているので、僕は一生懸命それについていくだけです。でも毎日、楽しいですよ。

藤原 私が演じるサリーはショーガールですからね。こういう衣裳だけじゃなく、歌ごとにいろんな衣裳で出てきます。私が今までに着たことのないようなもの、持ったことのないようなムチとかまで使ったりしますし(笑)。

諸星 僕は諸星和己という、今までに培ったものをいかに出さないようにするかってところを探ってる途中なんです。まだ、どうしても自分が出ちゃうんで。

阿部 僕の場合は歌ったり踊ったりするシーンはないので、お芝居の部分が自分の役目というか。だから、プレッシャーはすごくありますね。

藤原 阿部さん演じるクリフとのお芝居部分はすごく切ない物語。汗だくになって稽古しているベッドシーンもあったりしますけど、いい感じですよ(笑)。体力的にもバッチリですし、3時間をしっかり、歌姫サリー・ボウルズとして生き切るつもりです。この『キャバレー』は、セクシーでゴージャスなエンターテインメントです。お正月から思いっきり楽しませますから、どうぞ劇場にお越しください!

諸星 もしかしたら紀香の下着がポロリといくかもしれない(笑)『キャバレー』を、みなさんぜひ観に来てください!

阿部 そうですね。そのポロリが出るかどうかは、僕に責任があるかもしれないけど(笑)。ぜひ、まあ、そこを。

藤原 そこを?(笑)

阿部 そこも含めて(笑)。この『キャバレー』っていうのは人間ドラマを描いている舞台ですし、今の日本にすごくふさわしい作品だとも思います。ぜひ大勢の方に、観に来ていただきたいですね。

(取材・文/田中里津子)

2009-12-25 12:01


1973年の初演以来、時代を象徴する旬の女優が主演して来たつかこうへいの名作『飛龍伝』。12月9日、都内にてその『飛龍伝』の最新作『飛龍伝 2010ラストプリンセス』の製作発表記者会見が行なわれた。今回のヒロインは黒木メイサ。つか作品でデビューを飾った彼女が6年ぶりにつかこうへいとタッグを組み、全共闘の委員長に祭り上げられる神林美智子役に全力で挑む。会見にはほかに美智子と恋に落ちる機動隊員・山崎一平役の徳重聡、学生運動のカリスマ的リーダー・桂木順一郎役の東幹久、東京公演のみ出演する演歌歌手の大江裕が登壇。人気作にふさわしく大勢の取材陣が詰めかける中、作品にかけるそれぞれの思いを語ってくれた。

製作発表記者会見レポート



 つかとの出会いは中学生の頃という黒木は「6年ぶりのつか作品です。うれしいのと同時に、今までにはない緊張感とプレッシャーがあります。美智子は強い。でも女性として、人間として、強さだけではなく弱さも抱えているはずなので、そこを身体と心を使って表現して行きたいです。稽古が激しいものになるのは明らかだし、体力的にも精神的にも正直疲れますが、それがだんだん気持ちよくなってくるんです(笑)。ここにいるみなさんがあの稽古場でどう戦うのかも楽しみですね」と、年月を経ての恩師との再会と新たなチャレンジに向け、静かなる闘志の炎を燃やして見せた。

 これが自身にとって2度目の舞台出演となる徳重は「学生運動の時代については本などで得た知識しかありませんが、歩道のレンガを剥がして投げつけたとか今では想像出来ない激しさがあるので、背景も勉強しながらしっかり表現したいですね。これもひとつの修行。すべてをつかさんに委ねて頑張って行きたい」と、真摯に抱負を語った。

 映像を中心に活躍、久々の舞台出演となる東は「やりたくてもなかなかできない役者が多い中、こうしてつかさんとご一緒できるのは本当にうれしい。稽古を通じて自分の弱さ、足りなさを感じることも幸せだと思うと今からウズウズと心が昂ります。スポンジのような吸収力でゼロから頑張りたいです」と、大いなる刺激を前に掻き立てられる役者魂をむき出しにした。

 「新人なものでとにかく何でもチャレンジしたいと考えております。舞台のことについては黒木先輩にたくさん教えてもらいたいです。若輩者ですがよろしくお願いいたします」とは、演歌界からの異色の抜擢となった大江。真面目で朴訥としたキャラクターながら舞台上では“狂犬”がキーワードになるとか。その変貌ぶりにも注目したい。

 『飛龍伝』で描かれるのは、“国家を救う”という信念を持って生きていた若者たちの姿。残念ながら当日は風邪による発熱で欠席となったつかだが、会場には「21歳の大人の黒木メイサとまともにぶつかり合えるのが楽しみ」とのコメントも届いた。そしてその思いを受け黒木も「時代の流れを受け、つかさんもホン(台本)を書き換えてくださっていますし、“今やることに意味がある”『飛龍伝』になっているはず。新しい『飛龍伝』を楽しみにしていてください」と応えた。まさにタイトル通り、“2010年の『飛龍伝』”が動き出した。

徳重聡×東幹久 スペシャルインタビュー

――おふたりはこれが初共演ですか?

 いや、5年くらい前にドラマで共演してますね。結構一緒にいる時間もあったんだけど、彼はねぇ、真面目で不器用で…しかも頑固(笑)。まあ5年も経てばいろんな出会いがあるだろうから、徳重くん自身も引き出しが増えていろいろと変化しているとは思うけど。

徳重 今でも頑固は頑固です(笑)。東さんとはホントに「お久しぶり」という感じで、なんだか新鮮ですね。東さんは何でも器用にこなすし社交的な方っていうイメージだったんですけど、実はそうではなくて意外に照れ屋さんなところがあったりしていて…。

 俺、人見知りでシャイなんですよ〜。

徳重 そうそう! 僕は色々面倒見て頂いたりしてましたけど、こうしてまたご一緒出来てうれしいです。

 久しぶりの共演。あれからお互いどんな風に成長しているんだろうって僕も楽しみだよ。

徳重 はい。

――おふたりの恋の相手であり本作のヒロインである黒木さんの印象はいかがでしょう?

 いろんなお仕事をされてますけど、その経験をひとつひとつしっかり積んで生かされてる方ですよね。もちろんお綺麗だし。それと、実際お会いすると目力がなんとも言えないんですよ! 強さの中に優しさが垣間見えるというか、とてもチャーミングな目で。

徳重 カッコイイタイプの綺麗な方というイメージだったんですけど、台本を読むと可愛らしい仕草や台詞も多いので、僕はそういう黒木さんを目の前で拝見できるのが今から楽しみだし、幸せですね。しっかり恋しようと思います。

――徳重さんと東さん、互いに映像での活動が多いかと思いますが、舞台にはどのような思いをお持ちですか?

徳重 僕は去年初舞台を踏んだんですけど、正直こんな早いタイミングでまた舞台が経験出来るとは思ってませんでした。しかもつかこうへいさんの作品ということで、有り難いなぁという思いと同時に、ほとんど舞台経験がない自分がそこへ入ってくことにかなり不安も感じています。舞台は毎公演毎公演が本番で、ミスもその場で即挽回しなくちゃいけないし、やっぱり怖いですよね。でもそれを怖がってばかりもいられない。やはり一発一発が勝負だから、そのための準備を稽古でちゃんとやっておかなくちゃいけないんだってことは初舞台の時にかなり痛感しました。

 今年40歳になったんですけど、そこでまた舞台をやる、厳しいところに飛び込んでいけるのはやっぱり出会いなんだなぁって思ってます。ともすれば守りに入ったり腰が重くなってしまいそうなところでつかさんとご一緒できる。実際始まったら何を感じるのか、どうなっちゃうのか…。今はまだ全然想像もつかないんですけど、いいことなのか悪いことなのか、とにかくここで自分が変わるだろうなって思うとわくわくしますね。

――『飛龍伝』は何度も上演されてきている名作ですが、作品自体からはどんな魅力を感じていますか?

 人間の生々しさ。それは決して負の部分だけじゃなく、プラスの部分もしっかり描かれている。強さと弱さ、美と醜さ…相反するものが同時に存在しているところにすごくひかれます。同時に、つかさん自身が生きて来られた人生のあらゆるものが詰まっているような気もしますし。

徳重 「人間って生きて行くのは大変なんだよ。ぐちゃぐちゃ言っててもしょうがない、なんとか笑って生きて行こうよ」みたいなことを言いたいんじゃないかなぁって思いました。辛くても踏ん張ったら何かいいことあるんじゃない?っていう気持ちというか、そういうところの力強さや生々しさを吐き出す…役者としての僕自身もそんな気持ちで作品に臨んで、そういう生々しいモノを見せられたらいいですね。

 わかるわかる。

徳重 山崎一平という男の生き方はすごいしんどい生き方だと思います。ただ稽古場ではもう僕なんかがいろいろ細かいところ考えてても仕方ないですから、そこを表現するためにとにかくしっかり台本と向きあって、あとはもうどーんと飛び込む。まな板の上の鯉じゃないけど、つかさんの世界にいかに乗っかっていけるか、だけでしょうし。

 俺も同じ気持ち。映像は自分の持っているモノで演じていく瞬発力が求められるけど、舞台は“無”というか、俺の考えなんか全くかなわない領域。自分の得意不得意とかも考えずに、つかさんの演出に委ねるのみですよ。とにかくニュートラルな状態で稽古場に入って、何か新しいモノを出す…出さなきゃいけない。意外とくじけないタイプなので、いろいろ言われるのは好きですしね。なんかホントにどうなるかわかんないですけど(笑)、桂木順一郎が持つ熱さを表現するため、くたばりながらやっていきたいですね。

――気持ちはすでに稽古場ですね。それでは改めて本作に寄せる意気込みをお聞かせください。

 僕にとって久しぶりの舞台。1ヶ月かけて稽古して芝居を創って行くというのは役者として、また人間としてとても貴重な場になると思いますし、真摯に取り組んでいきたい学ぶべき場だと思っています。僕は舞台のライブ感がすごく好きだし、劇場という同じ空間の中でお客さんと同じ空気を感じられる幸せは僕ら役者の元気の源なので、みなさん是非観に来て頂ければうれしいです。

徳重 台本を読んでてもすでにとても面白いパワーのある作品だと感じています。また、僕にとってはダンスを始め新しいチャレンジ尽くしの作品。今までにない徳重聡を観て頂けると思います。もちろんつか作品ファンの方々にも楽しんで頂ける舞台になると思います。ぜひ観にいらしてください!

〈取材・文/横澤由香〉

〈写真/渡辺マコト〉

2009-12-24 18:11

 川下大洋、後藤ひろひと、山内圭哉、竹下宏太郎、腹筋善之介というコメディのスペシャリスト5人で構成される演劇ユニット、Piper。彼らが約1年半ぶりの新作のモチーフに選んだのは海底だ! 相武紗季、岡田義徳、川田広樹(ガレッジセール)という意外性のある豪華ゲストを迎え、爆笑必至の舞台が今回も繰り広げられるはず!

舞台となるのは、最優秀な海底作業員を選ぶための研究施設!

――今回は、なぜ海底のお話にしようと思われたんですか?

後藤 前回の公演が宇宙がらみの話だったから、今回は海底にしようかと思っただけなんだけどね(笑)。でも、海底って面白そうでしょ。

川下 宇宙は「行きたーい!」ってみんな思うけど、「海底に行きたーい!」っていう子供はまずいないよね。

後藤 確かに。宇宙で死んでもいいって思うけど、海底で死んでもいいって思わないかも。

川下 どっちも生身の人間は生きていけない場所なんだけどね。

腹筋 でも僕「もし何か人生で一個だけ買うなら何?」って聞かれたら、子供の時からずっと「潜水艦」って答えてましたよ。

後藤 ほお〜。乗ったこと、ある?

腹筋 ないな。

山内 俺も、ないっす。

後藤 こーちゃん(竹下)、ないの?

竹下 うん、ないよ? なんで?

後藤 いや、島に住んでいるからありそうな気がして(笑)。

竹下 見たことならあるよ。それに、島の近所で駆逐艦が大島を標的にした訓練をしたりしているしね。釣りしてると、4隻揃ってきれいに方向転換して、こっちに向かってきたりするんだよ。

後藤 絶対、冗談で「あいつを狙え!」とか言われてそうな気がする(笑)。でもさ、コバさん(腹筋)がほしい潜水艦って、そういう潜水艦じゃないんでしょ。

腹筋 うん。一番安いヤツ。4人乗りの黄色い潜水艦で、アームがあってね。

川下 おぉ、それはいいねえ。そういえば俺も、サンダーバードで一番ほしいのが4号だったなあ〜。

山内 ……というわけで、今回は海底です。

――舞台は、潜水艦の中ということになるんですか?

後藤 いえ、違います(笑)。海の中ですら、ないです。最優秀な海底作業員を選ぶための研究施設が舞台になります。実際にJAXA(宇宙航空研究開発機構)でやっていたことなんですけど、公募した中から1人だけ宇宙飛行士を選ぶっていう試験があってね。その最終試験がまさに今回のテーマになっているんです。一部屋、といっても広いスペースに7日間、見ず知らずの人たち同士で共同生活をさせるという試験というか実験みたいなもので。それを30〜40人くらいの人がモニターで24時間監視していて、いろいろな事件を彼らにふっかけていく。そのときにどういう行動をとるかを観察するわけです。

――では、皆さんの役どころは?

後藤 今はまだちゃんと決まってはいないんですけど、たぶん俺は部屋の外にいる人だと思います。実験をする側の人。俺以外のPiperのメンバーは、その部屋の中に入る人になるんじゃないかな。今回のゲスト3人も一緒にそこに閉じ込めて。その部屋でいろんな実験をしていく中で、人間関係がぎくしゃくしていく、というお話です。その実験の中のいくつかは、お客さんにその場で決めてもらおうと思っているんですよ。

――じゃ、芝居の流れが毎回、変わるかもしれない? すごく実験的な舞台なんですね。

後藤 ええ、そうなんです。だからそこでの俺の立場は、お客さんと部屋の中の人間たちをつなぐ唯一の人になると思います。

メンバーにとって、Piperはホームみたいなものです

――改めて、Piperで舞台に立つことの面白さ、醍醐味はどこに感じられていますか?

山内 ヨソでやったらアカンことがここではできることかな。それがやっぱり一番の醍醐味じゃないかなと思いますね。

川下 逆にヨソでやってることを、やったらアカンって言われてる人もいるけどね。

腹筋 そう。僕の場合、Piperではパワーマイム禁止だから(笑)。

山内 後藤さんが他の演出家と違うのは、稽古場で6割ほどできればいいよっていうところ。残りはお客さんと100%にしようっていうスタンスで稽古しているのでね。それを不安に思うゲストもいらっしゃるかもしれないですけど。それはお客さんの前じゃないとわからないことがあるからで。でも他の稽古場ではそうそう、そういうことはできないですからね。

後藤 コメディの場合は8割まで作って舞台に立っちゃうと、お客さんの笑い声でどうしていいかわからなくなる瞬間が役者にはあったりするんです。だから「俺は100%作ってから出たいんだ」っていうような人は、舞台でコメディをやること自体が難しいのではないかと思う。100%作っていっちゃうと、お客さんの笑い声との間合いがつかめなくなるので変な笑い待ちをしてみたりして、大混乱になってしまう。だけどこのメンバーにとっては、Piperはホームですからね。今更、特に気を遣うこともないし。

竹下 Piperの稽古が始まると「ただいまー!」って感じがする。久しぶりに、遊べる親戚に会ったような、「今回は何して遊ぶの?」って感じ。

山内 根本的な考え方からして違うんですよね。お仕事をしに行こうっていうのと、家に帰ってきたっていうのでは。だから、良い意味でまったく仕事感覚じゃない。

川下 いや、仕事って本当はそうあるべきなんだと思うよ。

山内 まあ、そういう意味では僕らは本当に幸せですよ。

腹筋 うん。僕もいつも、早く稽古始まらへんかなって思う。稽古が終わったら、普通は「ああ終わった―」ってなるのに、Piperの稽古の時はすぐに「早く明日にならないかな」って。そんなこと、他ではあまりないですよ。

後藤 だけどさ、大洋さんだけは何を考えてあれをやってるんだろ?って、わからない時があるよね。

全員 (笑)

後藤 稽古の最終日に、いきなりキャラクターを変えてきたりするしさ。

川下 みんなもチャレンジし続けようや! 千秋楽まで、全員で前に進んで行くべきだって!(笑)

山内 アンタ、いつも後退してるやん! 途中で手を引っ張ってあげる時、あるよね。「ホラ、遅れてるよ!」って。

全員 (笑)

――では最後に、まだPiperを知らないお客さんに向けて、どんな心構えで劇場に行けばいいかアドバイスをいただけますか。

山内 演劇の中ではかなり敷居の低いほうだと思うので、何も気を遣わないで大丈夫ですよ。演劇が初めてという人にも、ここは絶好の機会だと思います。

竹下 ちょっとしたダーツバーで、お酒をいっぱいやるくらいの気持ちでいいと思うな。

腹筋 老若男女の方に来てほしいですね。お年寄りにもぜひ。子供も絶対喜ぶよね。

竹下 毎回、子供の笑い声を聞くたびに「やった!」って思うよ。

後藤 俺は、圧倒的に女性客が多い演劇界の中で男性ファンが多いということがものすごく誇りではあるんだよね。俺らは女の子にモテたいって気持ちでやってるんじゃなく、俺らみたいな男も楽しめるものを作っていこうと思ってるので。

竹下 まぁ、(川下に)中には違う人もいるみたいだけど。

川下 モテたくないのかよ、おまえら!(笑)

全員 (笑)

後藤 いや、だから女性の方はぜひ彼氏、もしくは彼になりそうな予感がする相手を連れてきたらいいと思います。その相手にも、ものすごく楽しい思いをさせた上で、きっとあなたの愛も上手に手に入りますよ!(笑)

(取材・文:田中里津子)


2009-12-09 10:39

 約1年半ぶりに活動を再開した阿佐ヶ谷スパイダース。待望の新作『アンチクロックワイズ・ワンダーランド』は1年間のロンドン留学を経験してきた長塚圭史の、注目の帰国後第一作目となる。キャストは阿佐ヶ谷スパイダースのメンバー、中山祐一朗と伊達暁はもちろん、長塚作品の常連ともいえる役者陣がズラリと顔をそろえるほか、初参加となる花組芝居座長の加納幸和、映像での活躍が目覚ましい光石研らも加わり、新鮮かつ豪華な座組が実現することになった。

これまでの作品と、今回改めて感じている劇的なものに回帰するという意識が、うまく融合していけばいいなと思う

――今回の作品を書かれるきっかけになったのは、どんなことからでしょうか。

長塚 あらすじとしては、ある作家が事件に巻きこまれ、そこから逃亡していくという一晩の話ではあるんですけど。それに、僕が常々思っていることなんですが、どこからが夢でどこからが現実かわからないというか、そもそも時間なんていう感覚は誰が作ったものなのか、とか。未知なるもの、ものさしではかることができないものって、この世の中にはたくさんあると思うんですね。そういう、現実と非現実があいまいに融合していく世界を作り出したかった。そして、それを演劇としてどうやって表現できるかということを、考えてみたかったんです。

――稽古前に、ワークショップを行ったそうですね。

長塚 はい、5日間かけてやりました。そのワークショップに、僕はこういうことをやりたいという漠然としたアイデアだけを持って行って。それを伊達、中山2人と、今回出演する何人かの俳優さんに加え、出演しない俳優さんにも参加してもらってね。

伊達 俳優さんだけじゃなく、スタッフさんとかも加わって、遊び感覚からスタートしたんですよ。ひとつの空間にいろんな人がいるから、いろんな思いや考えが聞けるし見られるし。人に出会う場って感じの5日間でした。今までに何度か共演したことのある俳優さんの新たな面を知ることもできれば、初めて会う方とも知り合えて。本稽古の前に、ああいう場が設けられたということはすごく良かったですね。

中山 知り合えるという意味で言うと、たとえば加納さんはスケジュールの都合で少ししか参加できなかったんだけど、そのことで逆に、今後の稽古がますます楽しみになったというか。ちょっと仕掛けてきそうな匂いみたいなものを感じて、すごく面白そうだなと思った。

伊達 加納さんは「若い人に呼んでもらってうれしい、光栄です」って言ってくれてましたからね。僕らも、すごく楽しみです。

中山 光石さんは光石さんで、フルに参加してもらったから、ああ、こういうスタンスで役者としてお仕事をされている方なんだ、だからほとんど舞台をやったことがなくてもこうやってスッとなじめるんだなーと思ったりして。

長塚 うん、うん、確かに。

中山 それと今回は村岡(希美)さんとか(小島)聖とか、昔から何度も共演している役者さんも多いんだけど。ワークショップみたいなことをやったことはこれまでなかったから、そういう意味ではなんだか、わけへだてなく同じ場所にいられるような感覚もあって。ちょっとしたクラス替え感覚みたいなさ。

長塚 ハハハハ。なるほどね。

中山 ちょっと新学期が始まる匂いがするというか(笑)。「慣れない場所だからそわそわするよね〜」みたいな気持ちを共感しながらスタートできる感じ。そういう気持ちを共感することすら、新鮮な感じがしたんだよね。

長塚 そういえば馬渕(英俚可)も言ってたよ、「なんかよくわからないけど、楽しかった!」って(笑)。まあ、今回は実際にこういう役作りをしましょうってことじゃなく、何かしらの発想を得るための、そういう入口にするためのワークショップだったから。その5日間で果たして何ができるんだろう?って考えることが、僕はすごく面白かった。

――この1年間のイギリス留学で、変わってきた部分はありますか?

長塚 変わったというより、確かになったという感じかな。前作の『失われた時間を求めて』のときも、メンバーといろいろ話をして作ったんですけど、まだそのときのほうが自分の作家性みたいなものが強かった気がする。ワークショップもやったけど、事前に僕が台本を書いていって、それをもとにしてやっていた感じだったしね。やっぱり阿佐ヶ谷スパイダースでは、阿佐ヶ谷スパイダースでしかできないことをやりたいんですよ。プロセスを大事にしていきたいということは、今も変わらずに思っていることで。そして阿佐ヶ谷スパイダースっていうのは、この3人が核にはなっているけど、あくまで他の人を巻き込んでの阿佐ヶ谷スパイダースだからね。

――これまでの集大成でもあり、この作品が新たな一歩にもなりそうな気がします。

長塚 今までの僕の作品と、今回改めて感じている、劇的なものに回帰するという意識がうまく融合していけばいいなと思いますね。そういう不思議な世界で、面白いことが提示できればいいな、と。また光石さん、加納さん、あと内田(亜希子)さんという初めて参加していただく人たちと同時に、まあ、言ったらおなじみの阿佐ヶ谷スパイダースの仲間たちがこれだけ大勢出ているというのもいいですよね。ちょっと僕が留学中に再確認できたことを、この作品で中山と伊達と彼らとシェアすることがお客さんにはどう映るのか、僕自身もとても楽しみです。

(取材・文:田中里津子)


2009-12-03 15:10

上川氏の主演する舞台『蛮幽鬼』の公演真っ只中である、11月某日。都内のスタジオで次回主演作『ヘンリー六世』のポスター撮影中の同氏に、今作にかける意気込みを伺った。

──意外にもシェイクスピアは初めてだそうですが、今のお気持ちは?

上川 身構えてはいません。そんなにたくさん見ているわけではないにせよ、どの作品を拝見しても、やっぱり面白いのがシェイクスピアなんですよね。その大半が蜷川(幸雄)さんが演出された作品なんですが。既存のウエルメイドな脚本の作品に出るような気持ちで、今はいます。

── 『ヘンリー六世』の3部作を凝縮するとはいえ、大変長い上演時間ですよね。大作に出演するということについては?

上川 それに対しても、不安は正直、ないですね。直接比較すべきかどうか、わからないですけど、『表裏源内蛙合戦』でも、マチネとソワレを合わせれば8時間ですから。『蛮幽鬼』でも3時間の芝居のマチネ、ソワレを今、やっていますしね。『ヘンリー六世』は剣を振るうこともありませんし(笑)。

── その長さに耐える体力は、どうやってつくるんですか?

上川 あまり耐えている感はないんですよね。鈍感さがいいように作用しているんじゃないでしょうか。そういうことに対して、あまり神経質に捉えないというか。長くても、その時間全部が楽しいんですよ、やっぱり。例えば、『蛮幽鬼』でも、壮大な音楽と作り込まれた映像が流れるその幕の裏側にスタンバイしながら、毎回新鮮ですし、ワクワクします。そこで、「ああ、また今日も3時間やらなきゃいけない」という思いに駆られることはないんです。とても幸せな時間を毎回、迎える感じなんです。

── 『源内〜』で蜷川作品はご経験済みですが、蜷川演出に対してどう思われましたか?

上川 テレビ番組で、なぜか動物と仲よくなっている飼育員とかが、紹介されることがありますよね。特に餌を与えて懐柔するわけでもなく、叱責して従えるわけでもないのに、動物が意のままに動く。すごくいい関係が成立している、魔法のような飼育員、みたいなのが紹介されていることがあると思うんですけれど、そんな感じです。

── 飼育されているんですか(笑)。

上川 「こうやれ」と示唆されるわけでもなく、「いいね、いいね」と持ち上げられて、蜷川さんの思惑に近づくわけでもないのですが、出来上がってみると、蜷川さんの作品の中にいつの間にか、いるんですよ。あれよあれよ、というのが、一番端的でわかりやすいかもしれません。

── 原作を圧縮して上演するシェイクスピアは蜷川さんも初の試みです。その新しい冒険に参加するお気持ちは?

上川 先日、新国立劇場で9時間の『ヘンリー六世』を作拝見してきたんですけれど、純愛以外は全部あるような感じがしたんですね。作品の中に悲劇も喜劇もある。さらに今回は6時間に凝縮してお届けするので、結構、贅沢な経験になりそうですね。僕にとっても。

── ヘンリー六世という役については?

上川 むしろ想像がつかなくなりました。浦井健治さんのヘンリーが無垢でイノセントだったものですから。僕自身は到底、ああはなれないという思いのほうが強かったんです。ただヘンリーの無垢さや、殉教への思いを、例えば、ヨーク公やグロスター公が持っている出世への欲や、サフォークの持っていた色に対しての欲と同じように「業」と捉えると、ちょっとわかりやすくなるかな、というふうに今は思っています。

――ヘンリー六世も、また業を抱えていると?

上川 ヘンリー六世の崇高であろうとした思いも、これまたカルマなんじゃないかという気がするんですよね。責められる要素が少ないだけで。でも強い思いであるという点では、例えばサフォークの「女を手に入れたい」というのと一緒だと思うんですよ。キリスト教で言う「七つの大罪」じゃないですけど、その大罪の中に入らない罪がある気がするんです。彼がやっていることは、正当性があるかって言ったら、疑問だと思うので。隠された「八つめの罪」の中に足を浸していた男なんじゃないかな、って。

――とても楽しみになってきましたが、共演の方については、どんな印象ですか?

上川 ほとんどの方が初めてなので、新鮮な経験になりそうです。大竹しのぶさんとも初共演なんですが、登場人物の中で一番、身のうちに猛るものを携えていたのは、大竹さんが演じるマーガレットなんじゃないかという気がしますね。僕が男で女性を見ているからかもしれませんが。男性の出世欲って、どこか容認できるというか、わかってしまう部分があるので。その勇猛果敢なマーガレットが、とても楽しみです。

(取材/文:沢美也子)

(写真:渡辺マコト)

彩の国シェイクスピア・シリーズ第22弾『ヘンリー六世』

【埼玉公演】2010/3/11(木)〜4/3(土)
会場:彩の国さいたま芸術劇場 大ホール
【大阪公演】2010/4/10(土)〜4/17(土)
会場:シアター・ドラマシティ

作品紹介はこちら!

2009-11-20 11:42

 松尾貴史が演出家のG2と組み、1998年に結成した演劇ユニット“AGAPE store”。さまざまなジャンルから個性の強い共演者たちを招き、シチュエーションコメディから、不条理劇、時代劇、翻訳劇などあらゆるスタイルで上演を続けて、はや12年。だが、残念なことにこの第14回公演が解散公演となることが決まった。タイトルからして、まさに『残念なお知らせ』だ。松尾に、果たしてどんなラストステージになりそうなのか、そしてAGAPE storeへの思いなどを聞いた。

計算できないおかしみが掛け算になって出てくる、しずる感あふれるメンバーが今回も揃いました

――AGAPE storeが、今回なんと最終公演ということなんですけれども。

 実は、最初から10年間続けようと言って始めたユニットだったんですよ。でも気づいたらもう12年もたっていて。ちょうど政権も交代したし、もう僕らの役割は果たしたんじゃないかと……いや、それは全然関係ないですけどね(笑)。

――松尾さんから見て、今回はどんな舞台になりそうですか。

 タイトルは『残念なお知らせ』ですけれども、その中味はちょっと、ストレス解消していただけるようなものになると思いますよ。

――松尾さんから作家さんや演出家さんに注文されたりすることはあるんですか?

 いえ、こんな感じの物が好きだろうということは作家も演出家も既にわかっているので、そういう意味では僕は細かい注文などはしませんね。ただ現場で作っていくときには、もっとこうしたいとか、そういうような小さなことは言いますけどね。そうやって実験したり試したりってことが、とめどなく楽しいので。だから、ここでは僕は好きなように泳がせてもらってるような感じになっています。もちろんアイデア出しをしたり、こうしたほうが説得力があっておかしみが増すんじゃないかとか、そんなような意見は言いますけれども。僕はわりと枝葉末節とか、重箱の隅しか見られない人間なのでね。その点、演出家と作家が大きなところで見ていくというような役割になっています。

――今回のスタイルとしては、シチュエーションコメディみたいな感じですか?

 そうですね。ほぼ密室劇です。

――キャストの顔ぶれを見て、どんな座組になったなと思われますか?

 そうですね、しずる感あふれるメンバーばかり、というか(笑)。稽古場の雰囲気はきっと和やかになるでしょうね。塩梅とか融通とか、そういうのがききそうな人が多いので。こういう世界じゃなきゃいやだみたいな人はいない気がします。だからこそ、計算できないおかしみが掛け算になって出てくるんじゃないかとも思いますね。

――今更ですが、改めてG2演出の面白さはどんなところに感じられていますか。

 三次元的なレイアウトの巧みさというかね。それが空間だけじゃなくて、時間がどう過ぎて、物がどう動いたりどう配置されていたら、それがその次の瞬間、何分後にはこうなってるみたいなことを、ものすごく高所から見てる人なんですよ。あ、これは背がでかいってことじゃないですよ、確かにあの人はでかいけれども(笑)。逆算して物を作っていくことがすごく巧みなんですよね。僕自身は目の前に起きている現象しか見えてない人間なもんですから。その代わり細かいことは見ているんですけどね。だから、そういう点でも演出家っていうのはこうあるのが王道なんだろうなっていう感じがします。それに彼はビジュアリストですから。ともすれば僕が通俗的というか下世話な表現をしても、それをちゃんとしたことをしているようにオシャレ感でくるんでくれるような、そんなところもありますね。

僕にとってAGAPE storeは期間限定のテーマパーク。お客さんと一緒に自分の人格形成もやってきた気がします

――今回、松尾さんはどういう役柄で登場されるんですか?

 人形師、ということになっていますね。でもこのままでいくのかなあ。今のところ僕はそのつもりですけど。ま、人形師といっても、とりあえず辻村ジュブローさんみたいな雰囲気にはならないと思います(笑)。

――いつものように、松尾さんならではの声を使った見せ場がありそうな?

 きっとね、こういう珍しい職業をあてがうということは、そういうことを目論んで逆算して種がまかれているような、外堀を埋められているような気はします。僕はそこから、どうやって逃げていくかということですね。

――逃げちゃうんですか? でもお客さんはそれを待っている気もしますが。

 まあ、最後ですからね。そこはできるだけ凝縮した感じでいきたいですよね。といっても別に、持ちネタを見せる場所じゃないですけど(笑)。もちろん、気持ちとしてはそういうサービス精神を盛り込んでやるつもりでいますよ。

――振り返ってみると、松尾さんにとってAGAPE storeはどういう場所だったんでしょうか。

 期間限定のテーマパークかな。毎年、稽古期間も入れて通算で約3カ月、年間4分の1くらいは遊んでもらえる場所、移動テーマパークですね。

――この12年間やってきて、ここで得たものはなんですか。

 得たものは大きいと思いますよ、ものすごく。もともと僕はナレーターから出ているんですけど。最初のころはスタンダップコメディアンとして、いろんなお笑い番組にもいっぱい出してもらったんだけど、だけど自分のなかではコンスタントにお客様の前でやっているわけではないという、コンプレックスというかフラストレーションみたいなものがずっとあったんですね。そんななか、劇場というひとつの空気の中にお客さんが来てくれて、それもお金を払って足を運んでくれて。同じ空間で同じ空気を吸って、笑ったり拍手をしてくれたり、シーンとしてくれたり。こうして舞台をやることで、ホントいろんなことがありますよね。そういうことがすごく、有形無形で面白く自分の中に折り重なっているんだろうなと思います。そうやって、お客さんと一緒に自分の人格形成みたいなことをやってきたような気が、すごくします。

――では、最後にお客様に向けて、今回の見どころを含めてメッセージをいただけますか。

「えー、ホントに最後〜!?」という感じで観てもらいたいです。いぶかしみつつ。舞台はひとつの部屋だけど、ひとつの部屋だけじゃないような感じもするでしょうし、キャストは6人ですけど、10人くらいに感じるかもしれない。それは、いろんなキャラクターが出てくるという意味じゃなくてね。織りなしていく関係性ということ。6角形だと対角線がいっぱいできるじゃないですか。正方形だと2本だけだけど。でもそれが、あれ?6角形でもないな?みたいな。20角形の対角線にも見えるような。そこらへんはG2マジックで、そう見えるようにしてもらいましょう!(笑)

(取材/文:田中里津子)

(写真:渡辺マコト)



2009-11-18 12:15
 今年夏に即日完売となった、ミュージカル「ウーマン・イン・ホワイト」のプレ・イベントMusical Boxを再び開催! 今回は“丸の内オアゾ”の「OO(おお)広場」にて、笹本玲奈を始め、キャストによるトークイベント及びミニコンサートとしてお届けいたします。しかも、無料で参加できます。


ミュージカル「ウーマン・イン・ホワイト」プレイベント Musical Box Vol.2

【日時】2009年11月18日(水)   開場=19:00  開演=19:30

【場所】東京 丸の内オアゾ「OO(おお)広場」 
【出演】笹本玲奈、ウーマン・イン・ホワイト キャスト
※会場はフリースペースのため、基本的にどなたでもご観覧いただけます。
※会場警備の都合上、観覧を制限させていただく場合がございます。


★e+特別キャンペーン!
下記キャンペーン期間内に「ウーマン・イン・ホワイト」東京公演チケットをお申込みの上、ご購入いただいた方には、イベントに参加する楽しみがさらに倍増するキャストとの貴重な時間を共有できるチャンスをご提供します。是非、この機会にお求めください。

◆◆キャンペーン期間:2009/11/11(水)0:00〜11/15(日)23:59◆◆
※期間中にお申込みのうえお支払いをお済ませ頂いた方が対象です。


対象チケットご購入の方【全員に当たる】特典

 オアゾショップ&レストランで使用できるクーポン券(2,000円相当 一部店舗を除く)を購入された方にもれなくプレゼント
※クーポン券の受取方法は登録メールアドレスあてに11/16頃ご連絡いたします。
なお、クーポン券はイベント当日の会場のみでのお渡しとなり、後日のお渡しはできませんので予めご了承ください。

対象チケットご購入の方から【抽選で当たる】特典

 キャンペーン期間中にミュージカル「ウーマン・イン・ホワイト」のチケットを購入された方から抽選で10組20名様には、イベント終了後にキャストとの記念撮影(グループ撮影、写真は1月の本公演会場でお渡し)、イベント会場への優先入場をさせていただきます。(当選者には、11/16頃に登録メールアドレスあてにご連絡いたします)
※キャストとの撮影は会場のカメラマンが行います。お手持ちのカメラでの撮影はお断りしておりますので、あらかじめご了承ください。


2009-11-10 20:08

2004年師走の渋谷で誕生した
三谷幸喜の傑作一人芝居「なにわバタフライ」が
2010年待望のニューバージョン「なにわバタフライN.V」として上演決定!

 浪花の喜劇女優「ミヤコ蝶々」をモチーフに、“一人芝居”のイメージを塗り変えたと絶賛された、三谷幸喜の傑作一人芝居「なにわバタフライ」のニューバージョン上演が決定!仕事に生き、恋に生きた一人の女の生涯と彼女を取り巻くさまざまな人物との物語を戸田恵子が一人で演じ切り、観客を笑いと涙の感動の渦に巻き込んだ「なにわバタフライ」。 前回は生演奏とともに進行してったが、今回は音楽は使わず、「言葉」のみで構成され、タイトルもあらたに「なにわバタフライN.V」に。
 磨きをかけ、シンプルに、練り直された新たな「なにわバタフライN.V」に期待したい。


恋に生き、仕事に生きた一人の女の人生

 誰の人生でも、そこには出会いがあり、別れがあり、喜びがあり、悲しみがあり・・・。それは女優だろうと主婦だろうとキャリアウーマンだろうと一緒。もしも、そこに「違い」があるとしたら、その瞬間瞬間に何を大切にして、何を犠牲にするかかもしれない。だから私たちは誰一人として、「同じ」がなく、それはそれぞれの一代記を日々創作しているのだ。
 浪速の喜劇女優、ミヤコ蝶々も私たちと同じ一人の人間であり、一人の女性である。同じように苦しみ、恋に破れ傷つき、しかし、凛として自分の人生に向き合っている力強い姿を、三谷幸喜が愛情深く、この「なにわバタフライ」の何気ない台詞のひとつひとつに織り込み、そしてその紡がれた言葉に戸田恵子が息吹を吹き込む。
一人の女の人生とともに、劇場で多いに「笑い」、「泣き」、してみては!?

【作・演出】三谷幸喜(みたに・こうき) 【出演】戸田 恵子(とだ・けいこ)



パルコプロデュース公演『なにわバタフライ N.V』

【東京公演】2010/2/7(日)〜2/28(日)
会場:シアタートラム
【大阪公演】2010/3/20(土)〜3/31(水)
会場:サンケイホールブリーゼ
【九州公演】2010/3/5(金)〜3/7(日)
会場:北九州芸術劇場
【愛知公演】2010/3/9(火)〜3/10(水)
会場:名鉄ホール
【京都公演】2010/3/13(土)
会場:京都芸術劇場・春秋座
【新潟公演】2010/3/16(火)
会場:りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館・劇場



2009-11-10 18:20

 1年間の充電期間を経て、今年2009年から俳優活動を再開した石丸幹二。1月に上演した『イノック・アーデン』を皮切りに、『ニュー・ブレイン』『サンデー・イン・ザ・パーク・ウィズ・ジョージ』『コースト・オブ・ユートピア』と、それぞれに個性の違う大作に切れ目なく出演が続くという、華やかな再スタートの1年となった。そんな大きな節目となった2009年の締めくくりの作品となるのが『兵士の物語』だ。これは『イノック〜』に続く“言葉と音楽のシリーズ”の第2弾となる。ストラヴィンスキーの名曲にのせ、石丸は“朗読”というスタイルで兵士、ストーリーテラー、悪魔、王女という4役をひとりで演じ分ける。この1年間の多彩な経験で何段階もステップアップを果たした感のある彼に、改めて“朗読”という表現の可能性や魅力を語ってもらった。

“朗読”は、自分の世界観みたいなものがお客さんと共有できる表現方法

――今回この『兵士の物語』という作品をやることになって、まずどんなことを思われましたか。

 もともと僕、学生時代にクラシック音楽を学んでいたんです。このトシになってというか、クラシックからかなり離れてしまった今、ストラヴィンスキー作曲の作品ができるなんて夢のようだなと思いました。しかも、役者、語り部として参加できるというのは嬉しいですね。

――朗読というのは、お芝居でする演技とはまただいぶ違うものだと思うのですが。

 そうですね。でも朗読にも多種多様な形があると思うんです。今回は台本を手に4つの役を演じ分けていく、もしかすると動きもかなり入ってくるかもしれない、……俳優としての朗読になると思います。

――前回の『イノック・アーデン』で語りの舞台を実際にやってみて、感想としてはいかがでしたか。

 朗読という形態をとりながらも、ひとり芝居を演じているような感覚がありました。演出の白井晃さんが、台本の文章を眼で追いながら読むばかりではない状況を創られたんですね。だから、椅子にじっと座っていることが少なく、身体でかなり演じることにもなって、「こんなに動くのか!」って驚きました。

――そうなると、朗読でもなく演劇でもない、新たなジャンルというか。

 自分にとって何か新しい形態のものを、と思っていましたので、とても面白くチャレンジできました。「今までの石丸幹二じゃないものをお届けしたいと思います」と言って再スタートした最初の作品としても良かったんじゃないかと思います。何より、自分の世界観のようなものをお客さんと共有できる貴重な表現方法だと改めて確認できました。だから、朗読は今後も続けていきたいですね。

――朗読だからこそ表現できることって、どういうことだと思われますか?

 耳を傾けてくださる方のイマジネーションの扉を、言葉で叩く、ということでしょうか。語り手の想いと、聴衆の想いとは一致しないかもしれない。味わい方は多種多様であっていいと思うんです。僕は、作家の言葉を聴き手に届ける調理人のような存在だと思っています。

――なるほど! それほどたくさん調味料は使わない、素材を生かした料理みたいなものですね。シンプルで、でもとても奥深い感じがします。

 今回の舞台も、そういう料理になるといいんですが。そうなったら理想的ですよね(笑)。

とても上質で、相当に聴きごたえも見ごたえもある作品になると思います

――今年はたくさんの華やかな作品に次々と出演されて、大きな節目の年になったのではないかと思います。振り返ってみて、ご自分としてはどんな1年でしたか。

 これまで僕を応援してくださった方たち、さらには、初めて僕を知ってくださった方たちに、「石丸幹二って一体どんな俳優なんだろう?」と思っていただけるような仕事の積み重ねをしたくって、様々なことに臨んでみたのですが、自分としてはとても満足な1年になりました。自身の可能性を、色々な角度から見つめられたことも、大きな収穫だったかと思います。

――見事なほどに、すべて雰囲気の違う舞台でしたね。

 ええ、違いましたねえ(笑)。そして、ちょうど1年を経たタイミングでもう一度、「言葉と音楽のシリーズ」に立ち返ることができるのも良かった。

――今後も続けたいとおっしゃっているということは、節目、節目でこの朗読というスタイルが続いていったら。

 きれいな竹になるかもしれませんね!(笑)

――そして、来年はどんな年にしたいですか。

 こうして今年、多くのことを経験させていただいた結果、さらに未知のものに挑戦できるんじゃないかと思えるようになりました。そういう新たな石丸幹二をいっそう模索していきたい。そのひとつとして、歌手活動を展開していく予定です。来年の春先あたりにオリジナルのCDを出し、6月にはコンサートで東京、名古屋、大阪、福岡を訪れます。歌手として、また違った意味での自分らしさを発信できたらと思っています。

――では最後に、お客様に向けて今回の舞台のおすすめポイントを教えていただけますか。

 『兵士の物語』は、とても上質な作品だと思います。年末年始の一番忙しい時期ですが、少し日常から離れて、劇場に足を運んでいただき、この作品に触れていただけたらなあって思います。ピアニスト、パーカッショニストのお2人との少人数でのセッションです。こんな『兵士の物語』は滅多になく、聴きごたえも見ごたえもある作品になるかと思います。劇場でお待ちいたします!

(取材・文:田中里津子)

(写真:坂野則幸)

【東京公演 アフタートークショー決定!】
12/26(土)と27(日)の16:30公演終了後、アフタートークショーが決定いたしました!

12/26(土)16:30公演終了後 出演:石丸幹二
12/27(日)16:30公演終了後 出演:白井晃 石丸幹二

※各日の該当公演のチケットをお持ちのお客様が対象となります。
公演終了後、約10分ほど休憩をはさみ、30分程度のアフタートークを行います。


2009-11-10 12:13

 本広克行監督とタッグを組んだ『サマータイムマシーン・ブルース』に続いて、彼らの過去作品『冬のユリゲラー』が、『曲がれ!スプーン』というタイトルになって、再び本広監督によって映画化された(11月21日公開 http://magare-spoon.com/)。そこで原作舞台の方も、映画と同じタイトルに改名し、公開に合わせて全国8ヶ所でドドンと再演! 映画版は、超能力番組のADである女性(長澤まさみ)が、エスパーたちの集まる喫茶店に偶然まぎれ込んだことで起こる騒動を描いてるけれど、舞台版は逆に、その超能力者グループ側の立場から描かれた密室会話コメディとなっている。
 ちなみに同作は、これが4回目の再演。その全部に出ている劇団員も少なくないため、10月の時点で早くも立ち稽古の段階に突入したという。そこで今回は、稽古場リポート+作・演出の上田誠(映画版の脚本も担当)と、諏訪雅・中川晴樹(映画版にも同じ役で出演)のインタビューというスタイルで、お送りさせていただきます。この冬は劇場と映画館で、ヨーロッパ企画の世界をたっぷりとご堪能あれ!



 稽古開始直前に、京都市内にある某稽古場に到着すると、そこにはすでに全役者たちの姿が。みんな台本の読み直しや、ストレッチなどのウォーミングアップに余念がない……と思っていたら、そんな「いかにも役者」なことをしている人は、1人もなし。コーヒーを飲みながら談笑していたり、一生懸命携帯のメールを打っていたり。まあこの、緊張感皆無のユルユルなムードが、ヨーロッパ企画らしいっちゃヨーロッパ企画らしい。

 作・演出の上田誠いわく、今は「台本に沿って演じてもらい、不自然な所をチェックしている段階」だそう。まず昨日の稽古の続きで、自称「どこでもくぐり抜けられる男」こと細男が、実はエスパーではないと判明するシーンから演じられた。さすが今まで何度も上演した演目だけに、はた目にはすっかり安定しているように見える。が、上田は途中で芝居をストップ。「『ウォーミングアップ』や『一旗揚げる』は、日常会話として通ります?」など、役者たちへのダメ出しというよりは、確認を取るような言葉が続く。

 対する役者側からも、上田の「コメディくさい部分をなるべく切りたい」「人間の生理に近い本にしたい」という言葉を受けて「生理って具体的にどういうこと?」などの、探るような質問が次々に飛び出す。一瞬写真を撮るのすらためらわれるほど、真剣なディスカッション。普段のヨーロッパ企画の舞台からは、なかなか想像しがたい光景だ。 20分ほど話し合った後、そのシーンの続きが演じられた。結論は特に出たようには見えなかったが、上田は演技を止めることもなく、むしろ「いい感じ」と、納得したような表情。言葉にこそ出さなかったけれど、上田の意図がしっかり伝わっていることを、役者たちはその演技で証明してみせたのだろう……なんていうと、カッコよ過ぎるか?

 続いて、今回の『曲がれ! スプーン』オリジナルの、オープニングシーンの稽古が行われた。なんでも、本編部分の構造がしっかりとし過ぎているゆえに、現在の劇団員の数に合わせてリライトすることができなかったそう。そのため土佐和成&西村直子は、オープニングとエンディングのみの登場となる。しかしこの部分は、単なる付け足しなどではなく「喫茶店の外側の世界では、今何が起きているか」を印象づけるための、結構重要なシーン。実際本日の稽古中で唯一、上田が演出席を立って具体的な動きを指示したぐらい、気合いが入っているのだ。ちなみにこのオープニングは「映画版『曲がれ! スプーン』と、連動するような仕掛けを考えています」とのことです。

 その後休憩をはさんで、映画版では長澤まさみが演じる超能力番組のAD(舞台版では山脇唯)が喫茶店に現れ、彼女にある危険が迫っていることをエスパーたちが知るまでのシーンが演じられた。ここでは前半の稽古と違い、彼らを見る上田の表情はなんとも楽しげ。時に声を上げて笑うところなんか、演出というよりも1人の観客だ。その柔らかいムードに乗せられたのか、役者の動きも俄然イキイキとし始める。
 そしてADを助けるため、彼らがそれぞれの能力を生かして動き出す……という、ストーリーが大変盛り上がりそうなところで、残念ながら本日の稽古は終了。あー、このお預け状態はかなり辛い(泣)。これは早く、舞台上で続きが観たいですっ!!

●  ●  ●  ●  ●  ●  ●  ●  ●  ●  ●  ●  ●  ●  ●  ●  ●

──今日の稽古は、かなり演出と役者が話し合う時間が長かったですが、いつもこんな風に、ディスカッションが稽古の中心になってるんですか?

上田 今日はたまたまですね。今回はすでに完成した脚本があって、僕は演出をするだけという立場になっていまして。なので、脚本に書かれた言葉と役者の身体を、ちゃんとつなげることができるのか? という演出方法を、一度真面目にやってみようかなと。

諏訪 ただ今日は、上田が今までぼんやりと考えてきたことを言葉にしたために、話がどんどんややこしくなってしまったんですね。またそこに別の言葉を足して、さらに役者が混乱するという、ちょっと悪いスパイラルに入ってしまった(笑)。

上田 まあそんな風に、今回は役者たちといろいろしゃべりながら作ってみようかなと考えているんです。新作だと脚本を書くのに追われて「この作品では、こういうことをやろうと思っている」という意図まで、なかなか共有できませんからね。

諏訪 今は一回、ぶっ壊しているという段階?

上田 ぶっ壊すというよりは、一度分解して、掃除して、また組み立て直してるというイメージ。「これって、何でここにあったんだっけ?」みたいな物が、今見直すとやっぱり存在するんですよ。そういった物は、脚本のリライト段階で処理したつもりだったけど、まだ役者の身体にも少しずつ残っているので。

中川  正直4回も演じていて、作品をすごく理解しているつもりになっているけど……。

諏訪 あえてそれをリセットしていく?

上田 みたいなことですね。

──「コメディくさくないように」という言葉が印象的だったんですが、この真意は?

諏訪 形式みたいになっちゃうと観ている人が冷めちゃうから、あまりコメディに見えないようにするというのを、僕は気にしているのかなあと思ったけど。

上田 そうですそうです! コメディに限らず、恋愛物でも何でも、方程式みたいなのがあると思うんですよ。脚本にも、演じ方にも。それに乗っかってしまうと、舞台の中だけで成立して、あまり現実と対応しなくなったりする。それはすごく、避けていきたい。

諏訪 だから役者も、一度身体をリセットした方がいいよね。その方が多分面白く演じられるというか、いわゆる血が通った演技になるんじゃないかなと思います。

中川 ただこの作品って、ヨーロッパの作品の中では一番というぐらいウケるけど、演じていて毎回しんどい作品でもあるんですよ。

上田 ああ、リライトしててもしんどいですね。途中で暗転も入らなければ、外部から何かの情報が入ることもない。つまり役者の会話だけで、話を進めないといけない

中川 だからボケとツッコミのやりとりが、すごく細かいんですよ。前作の『ボス(・イン・ザ・スカイ)』はもっと大きなブロックで区切られてる感じがしたけど、この作品はすっごく小さなブロックで区切られたまま、最初から最後までやってる感じ。

上田 それとすごく、お客さんを当て込んだ作品だからというのもあるかも。お客さんがいるいないに関わらず、舞台の雰囲気だけを拠りどころにしてできる作品もあれば、完全にお客さんの反応を拠りどころにする作品もある。これはもともと、かなりエンタテインメント指向で作られた芝居なので、お客さんの反応に割と支えられてる世界。

諏訪 うん。だからこの作品は、客席がウケんかったら、かなり気になるね(笑)。

──上田さんは映画版の脚本も担当していますが、タイトル以外にも映画に影響されて変更したところはあるんでしょうか?

上田 映画版は、この作品の世界をいっそう深める方向で脚色したんですよ。店の外の世の中では、ちょっとした超能力のムーブメントが起こっている状況であるとか。あるいはエスパーたちが、実は自分たちの能力をもてあましていて「生まれる時代を間違ったんじゃないか?」と考えている感じだとか。舞台版でも、そういう深みのある描き方ができるんじゃないかなと思って、今回実際にやってみているところです。

──諏訪さんと中川さんは映画版にも同じ役で出ていますが、舞台と映画の違いは?

中川 まあ、相手(の役者)が違いますね、当然(一同笑)。

上田 でもそれは、すごい違いなんですよ。この作品は自分1人でキャラクターを作るというよりは、他の人との関係性で人格ができていく部分が結構大きい。だから相手が変わると、自分の半分ぐらいが変化しちゃうようなところが……あるんですよね?

諏訪 そうですね。たとえば細男は、今回永野(宗典)君が演じてるけど、前回の再演では土佐君が演じていて。同じ劇団のメンバーが相手でも、自分自身の演技が変わってしまうぐらいに違ってくるんですよ。ちなみに映画版の岩井(秀人)さんの細男は、意外と大柄な方だったので、「細く……ないな」と思いながらやってました(笑)。

──映画版のいいところって、まず何がありますか?

諏訪 映画はねえ、まず長澤まさみがカワイイ(一同笑)。それとCGがすごい。

中川 超能力の再現がね。舞台版だと、基本何も起きてないから。

上田 あとはズームや引きが、自由自在な点ですよね。長澤さんの視点で見せるカメラワークもあれば、名刺の文字が見えるぐらいまでクローズアップしてみたり、果ては宇宙まで引いて見せるとか(笑)。その語り口のスケールは、舞台ではやれないこと。それは映画の脚本を書く時にも、結構意識してやりましたから。

──逆に舞台版のいいところは。

上田 まさに、この作品の原型ですからね。映画は完全に長澤さんの視点で語られているけど、舞台は単に出来事が目の前にあって、それをのぞき見するような感覚で観ることになる。だからお客さんの好きな視点で、どんな感じで見てもらってもいい。この視点を操作しない所が、舞台ならではの楽しみ方ですね。かと言ってストイックにはなりすぎず、その中でどれだけ遊べるのか? というのを意識していこうと思ってます。

──とはいえやはり、舞台と映画の両方を観た方が、何倍も楽しめそうですよね。

諏訪 もちろんそうです! しかも、2回ずつ観る方が楽しい。

中川 映画を観て舞台を観て、さらに映画を観て舞台を観る(笑)。

上田 それに『サマータイムマシーン・ブルース』よりも、映画版と舞台版との印象が違っていると思うので、ぜひそれを見比べてもらいたいです。

諏訪 そうそう。映画の方は感動作になっているから。

──舞台は感動作ではないとしたら、何になるんでしょうか?

諏訪 笑いとか?

中川 うーん、単に笑いっていうのもねえ。感動作にしときます?(一同笑)

上田 確かに「笑い」って言い切っちゃったら、それはそれでハードル上がるから。でもまあ、笑える……完全にエンターテインメントな作品ですね。

諏訪 そうそう。もう「楽しい楽しい」って言って、手を叩いて観てほしいです。

(取材・文:吉永美和子)




2009-11-04 19:39

サンプル「あの人の世界」 (フェスティバル/トーキョー09秋) 上演間近!
【e+特別インタビュー】 松井周 × 山内ケンジ

人気CMディレクターと演劇界の鬼才、異色の顔合わせ
ソフトバンクCM白戸家「お父さん入院する」篇、白戸家「お父さん感謝される」篇に医師役で出演中の松井周。演出を手がけたのは人気CMディレクターにして、山内ケンジ名義での「城山羊の会」作・演出の評価も高い山内健司。
CM界、演劇界が注目する2人にCM演出の裏側から松井周新作「あの人の世界」まで幅広く話をきいた。

>>チケット詳細・申込みはこちら!

ソフトバンクCMの反響

――ソフトバンクCM白戸家「お父さん入院する」篇、白戸家「お父さん感謝される」篇へ出演されていますね。

松井 僕もCMであんなに画面に出たのは初めてですね。髪型とメガネが普段のままなので、指差さしはしないけど人に「はっ」とされる経験は何度かありました。どんな人か分からないらしくて、話かけられなかったけど(笑)

山内 昔はもっとCMが最初っていう役者の使い方が多かったんだけど。小劇場でいえば風間杜夫とか平田満とか。面白い役者がいたらCMで発掘する、みたいな。最近は逆というか映画とかテレビで面白い人をCMで、というパターンが多いから、そういった意味では、あんまり面白くないんですよね。

松井 山内さんってそういう感じですよね?

山内 面白い人がいたら一番最初に使うぞ、みたいのはあるんですよ。

松井 ははは・・・
山内さんの画面の切り方かどうか分からないんですけど、あ、これ山内さんの演出だって、ぱって分かる"シルシ"がありますよね?

山内 間を詰めるってことなんですけどね。

松井 あ、そうなのか。ソフトバンクの犬篇の最初の方で「あ、これ山内さんかな」って思ったんですよ。まず映像でも山内さんのリズムというのはあって、演劇でもそれは感じます。

2004年から作・演出を始めた同期

山内 演劇はまだ全然勉強中です。始めたばっかりなんで。

松井 え、でも2004年だから僕と一緒じゃないですか。

山内 いや、それは知ってるんだけど・・・

――今何本目ですか?

山内 7本目です。

松井 そんなに変わらないじゃないですか(笑)。

――サンプルにはどのような印象をもたれていますか?

山内 サンプルの芝居は難しくないのに、アフタートークで松井さんが説明すると難しくなってしまう・・・(笑)

松井 僕の芝居は、仮説を立てるときには、人がこういて、絵の具を混ぜるように混ざっていったらいいな、みたいにコンセプト自体は絵の具で話せば分かるんですけど、それを人でやっていくとグチャグチャになってしまう。

山内 松井さんはほら、役者として知っていたから、その本人のイメージとはかけ離れた「淫靡」というか「ダーク」な、良く言われるでしょう?

松井 言われますね。

山内 「閉鎖的」な感じがしますね。僕は全作品見ているんですけど、1本目(『通過』)から始まって2本目(『ワールドプレミア』)は抽象的で、3本目の『地下室』、あれが普遍的な印象。特殊な状況は特殊なんですけど、あるパターン、宗教、というか実際のモデルがあるような状況で。あれで感心しまして。

松井 はあ。

山内 その次に『シフト』でまたもや特殊な世界に戻るでしょう?

松井 はい。

山内 それで、あまりにも自分からかけ離れた、距離感を感じて。
比べて、この前の『伝記』は『地下室』のようにモデルがあるかのような、社会人や会社に焦点をあてた設定が珍しかった。僕のクライアントに実際にああいう家族経営の会社なんかがあるわけですよ。劇団ではあまりとりあげないですよね。

松井 そうですね。

山内 ピーター・ブルックの「マルキ・ド・サドの演出のもとにシャラントン精神病院患者たちによって演じられたジャン=ポール・マラーの迫害と暗殺」っていうすごく長いタイトルの映画があるんですけど、最後がカオス状態で、あれを思い出しました。

松井 『伝記』をほめてもらえるのは凄く嬉しいですね。口語表現から演劇ですよ、っていうのをもっとできないかな、というのに取り組んだ最初の作品で。
口語的表現から距離のある世界なんですね。メロドラマとかソープオペラ、昼ドラみたいな感じを少し残しつつ、家族経営や地下シェルターという、あるのかないのか分からない、そういう感じと、手作りな感じはもともと持っているもので。結局今行われているのは家族の痴話喧嘩なのか、歴史が絡んだ再現なのか分からなくなるような。例えば戦争表現で場内を赤く照らして空襲で逃げ惑うシーンを演じているつもりの本人達は、ショボイセリフの中で小麦粉を投げるしかない、という、日常を演じているのか、演劇を日常にもってこようとしているのか分からないというか。

山内 面白かったですよ。導入が面白いし。

松井 山内さんの芝居も、口語的過ぎない感じもありますよね。

山内 もうねえ、全然新劇ですよ(笑)

松井 全然そうは思わないです。それを選んでいる感じがします。そういう言葉遣いをどうしても俳優に言わせたい、みたいな山内さんの欲望を感じます。

山内 ああ、それは岩松さんの影響は大きいですね。

松井 僕もそれは自分に感じます。岩松さんの欲望と直結している言葉を、ブレーキかけつつ暴走していくっていうか・・・

山内 岩松さんは、演劇っぽいというか、あまりに美しいセリフ回しになってても、それが許せてしまう瞬間、そのセリフに向かっていく面白さ、がありますよね。あれが快感というか。

――山内さんは2004年から「城山羊の会」の作・演出をやられているのですが、CMディレクターのお仕事と演劇は山内さんにとってどのような位置づけですか?

山内 はじめは長く続ける気はなかったんですよ。もともと深浦加奈子さんに出演してもらう企画として始めて、キャストがきまってから完全にあて書きしていたんです。今もそうですけど。

松井 そうなんですか?

山内 だから、いきあたりばったりというか、何をしたいとか松井さんがいうコンセプトみたいなものはなくて。キャストがどういう人かとか、どういう役がいいかとか、どういう関係性にしようとかいうことですね。
それと、なんで演劇を続けているかというと、僕は映像しか知らないから単純に勉強ですね。

松井 なるほど、映像は瞬間ですから。舞台は時間による変化もありますものね。

山内 1ヶ月半稽古するとか、映像ではありえないですから。
僕けっこう、演出が淡白で。通しながら稽古するんですよ。青年団系の役者さんはもっと細かく切って稽古してくれないと、っていいますね。

松井 ああ、そうですか。そういう演出する方もいますよね。

山内 深浦さんは、どちらかというと、そのシーンを最初から最後までとにかく繰り返して通すっていうタイプだったので、僕は彼女から稽古そのものを学んだようなものだから、そういうやり方になる、というか、それしか知らなかったわけですが、そうしたら青年団系の役者さんは戸惑っていました。ほんと、役者さんによりますよね。松井さんは役者として細かく注意されたいですか?

松井 役者として?僕が俳優としてやるときに一番気にしているのは、演出家の視線そのものなので、長くやっても細かくやっても演出家が喜ぶならそれでいい、というか。そういうSMでいうとM的なものが俳優だと物凄く大きくて、全部指示通りにしたくなってしまう。

山内 その指示が出ない場合があるじゃないですか?

松井 それは放置プレイですよ。

山内 僕はむしろそうだから。

松井 それは待ちますよ。

山内 お任せします、というのも変ですが自分で考えてきてください、というか。

松井 そうなったときには、少しご褒美が欲しい、じゃないですけど、ちょっと違うことやってみようかな、これで何も言わないのかな、みたいな。そういう俳優の心理になってくるんですよ。そこから面白いもの出してくるパターンもあるんじゃないですか。

山内 結局青年団の俳優さんなんかは、何も言わないと本番近づくにつれて、どんどん出してきてくれる、それでいいです、あっちの方がいいです、といえたりして。結局最終的には変わらないんじゃないかなって思っていて。最初の方で細かく吟味してやるかという違いで。

松井 それは、人によるし、目標というかゴールはそんなに変わらないことがあるかもしれないですね。

山内 ただ、ひょっとして、役者さんによっては本番まで出してこれないかもしれない、という場合があるじゃないですか。それは凄く不安になりますよね。

松井 そうですね。
地図をちゃんと自分で持っている人というか世界を作っていけるひとはいますよね。例えば動物的にカンが鋭くて、この先どういう風に転がっていくか本能的に分かる人と、地図がない状態で指示がないと自分がどこに立っているかわからない状態でぼんやり過ごす人の違いは、あるかもしれないですね。

それぞれの今後について

山内 「あの人の世界」は台本はもう上がっているんですか?

松井 あがっているんですけど、もう一回書き直しているんですよ。
つまり確率の低い方へと書き進めていたら、線が繋がってなくて。その線を稽古しながら作っていっている感じなんですよね。

山内 難しいですね。

松井 潜在的には何か(つながる線)あったと思うんですけど、出しながらつなげているという感じですね。

山内 設定はどういうのなんですか?

松井 一応、墓場の上と下、みたいな感じです。

山内 ・・・ゾンビですか?

松井 そうですね、ゾンビみたいのもあります。上からも下からも横からも呼び合う、というか。「嵐が丘」のヒースクリフとキャサリンみたいな感じで、男と女が呼び合って会うみたいな、男と女が会う話です。

山内 墓場ということは、女は死んでいるんですか?霊的な?

松井 死者の視点から死者の物語を作ったらどうなるかという話と、逆に生きている側の妄想と、混ぜるじゃないんですけどそれぞれの妄想で、それぞれの登場人物を包んでみたいっていう。

山内 ヘンリー・ジェームズみたいなのかな?この俳優さん達なら何やっても楽しみですね。

松井 そうですね。

山内 あの、今の演劇、下手すると面白いのはアゴラと春風舎ばかりになっちゃうじゃないですか?
で、深浦さんが亡くなって、僕は深浦さんとやっていることが松井さんら若い世代と違うことをしているという存在理由だったところがちょっとあったんですよ。で深浦さんが亡くなってみたら僕が演劇をやる必要があるんだろうか?って考えた部分があるんです。

松井 なるほど。

山内 つまり岩井君(注1)にしろ、柴君(注2)にしろ、クオリティーの高いものを観ると圧倒されるわけですよ。自分がどこのポジションにいればいいのかっというか。深浦加奈子がいなくなったら何を武器にやっていけばいいんだろう、って。今も思っているんですけど。
アゴラと春風舎以外に演劇は沢山あって、このままどっぷり漬かっていると、演劇に煮詰まっちゃうなって思った。

松井 それはめちゃくちゃ面白い話で。同じことを考えることはあります。アゴラから離れようということではないけど、柴君がやっていることも岩井君がやっていることもどっちも面白いし、本当にショックを受けます。全く山内さんと同じことを思います。その中で、山内さんが別のポジションでやっているとか、松田正隆さんがやっていることが・・・、

山内 (松田さんのやっていることは)どかんと変わりましたしね。

松井 そう、ああいうことが面白いし、あんまり悲観してないんです。そういうマッピングがあることが僕にとっては凄く重要で、それぞれのメディア、着地はあるから、どれかにひっぱられることはなくていいと思っているんですよ。春風舎・青年団系というひとつの流れはあるかもしれないけど、僕は当事者として在るというよりは、僕は自分のポジションでやっているという感じですね。山内さんは山内さんのままやっていればいいと思うんですけど・・・。

(注1)岩井秀人 ハイバイ
(注2)柴幸男 ままごと


【山内健司:CMディレクター】
1958年東京都出身。CMディレクター。『NOVA』、『クオーク』、『コンコルド』(静岡のパチンコチェーン)、『ソフトバンク/ホワイト家族』、『サッカーくじBIG』などあきれるほど多くのCMを手がけている。
2004年から突然、演劇の作・演出を開始。深浦加奈子を主演に迎えた『葡萄と密会』から、2009年の『新しい男』まで7本を上演している。プロデュース・ユニット名は「城山羊の会」。
▼関連リンク/ソフトバンク モバイル CMギャラリー


【松井周】
1972年東京生まれ。1996年、平田オリザ率いる劇団青年団に俳優として入団。その後、作家・演出家としても活動をはじめ、処女作『通過』、2作目『ワールドプレミア』が日本劇作家協会新人戯曲賞入賞。
2007年に「サンプル」という劇団を起ち上げ、主宰と作・演出を担当する。
2008年にサンプルとして公演した『家族の肖像』(作・演出:松井周)が第59回岸田国士戯曲賞最終候補にノミネートされる。
海外の戯曲を演出する機会も多く、『Phaedra's Love』(作:サラ・ケイン)や『Fire Face』(作:マリウス・フォン・マイエンブルグ)などの演出も手掛ける。
http://www.samplenet.org


フェスティバル/トーキョー09秋
サンプル『あの人の世界』
公演日:2009/11/6(金)〜15(日)
会場:東京芸術劇場 小ホール1
作・演出:松井周



>>チケットの詳細・申込み

2009-10-28 16:21
アイルランド演劇界をリードする気鋭の若手劇作家、コナー・マクファーソンがロンドン ナショナル・シアターでデビューを飾った傑作であり、ブロードウェイ公演でも人気を博したストレートプレイ『海をゆく者』が、11月のパルコ劇場にて日本初演の幕を開ける。 クリスマス・イブの夜に集まった男5人が過ごす時間と、その先にあるものとは――?
演出の栗山民也、ミスター・ロックハート役の小日向文世、リチャード役の吉田鋼太郎が、作品の持つ魅力を語ってくれた。

▲左から小日向文世、栗山民也、吉田鋼太郎
>>チケットの詳細・申込み

「まずは順番を覚えるのが大変」(吉田)

――お稽古拝見させて頂きました。いよいよ動き出したという手応えはいかがですか?

栗山 今日で2度目の本読みだったけど、この作品はやっぱり非常に熱い。それはとても面白いってことなんだけど。日本の芝居って最近低調な芝居ばかりでしょ? そんな中これはちょっと刺激的で、鋭角的な芝居で、いいと思うよ。

小日向 1度目の本読みで何の準備もせずにワァーッと読んだときにすでに面白かったですからね。

吉田 今日も後半のほうが面白かったね。みんな温まってきてさ。

―― 一晩中酒を呑みポーカーをする男たち。会話劇といっても誰が何を飲むかとか、ゲーム中での駆け引きや戯れ言など、短い台詞の応酬が多いですね。

吉田 そうそう。「次俺だっけ?」って、まずは順番を覚えるのが大変で。しかもリチャードはまたよく喋るからなぁ(笑)。

小日向 感覚的なコトバが多いから実は難しい。今日も思ったけど、何かの拍子にパンッと台詞が切れたら、思い切りそこで止まっちゃうよ。芝居自体はね、絶対楽しくなると思うの。でもそこに行き着くまでにはもがき、苦しむんだろうなって感じてる。

吉田 それこそ稽古も後半になればかなり温まってるだろうから、早くそこに行っているであろう自分たちを見たいですね。

栗山 今回はいろんなことを試したほうが面白い結果になるだろうね。例えばリチャードの喋っているところなんかも、他の人も一緒にやいのやいの、もう邪魔するぐらいにさ、そういうシーンになったほうが面白いよ。

吉田 うーん、栗山さんがそうおっしゃるなら、GOが出たってことですね。だったらもうガンガン行きましょう。

小日向 通し稽古をたくさんやりたいなぁ。

栗山 どこが誰の順番かも見えなくなるくらい稽古したら楽しいだろうね。

小日向 日常だってそうだもんな。「えっ、何?」って何度も聞き返したり。そもそもみんな酔っぱらっちゃてるし。

吉田 なんかもう理屈じゃなくなってますよね。

栗山 だからね、この脚本(ホン)は緻密に書かれてもいるんだけれど、どこをカットしても成立するの。そのへんのアバウトなやりとりっていうのが実は凄い。人間をリアルに描くっていうのはこういうことなのかなって。  今、特にイギリス演劇は〈in your face〉って言うコトバがあって、〈あなたの前に置かれているもの〉を描く作家が凄く多くなった。昔の作家は神や家族愛、何か大きなテーマを絞り込んで書いていたんだけど、今はもうそうじゃないんだよね。サラ・ケインなんかもそうだけど、ある生活の断面をバサッと切り取って、そこにある生々しいものにあなたたちは向かい合うんですよっていう演劇。この作品もその一端なんだろうな。

「暗い部分を押し隠して男だけでワァーっとやってる感じがすごくいい。」(小日向)

――物語を楽しむのではなく、男たちそのものを見る。

栗山 うん。だって5人でポーカーしてるだけだから、物語にそんなに比重はない。役者が持っているモノのぶつかり合い。リアルタイムでずーっとつながっていく、その中の微妙なところに人間性がどう絡んでいくのか、どう立ち回っていくのかっていうところだよね。

吉田 そういうことなんでしょうね。そのぶつかり合いの中に人間の一生…っていったら大げさだけど、人間の持つエネルギーとか静かな情熱とかが見えてくるドラマなのかも。

栗山 実際行ったこともあるんだけど、この作品の舞台であるアイルランドって町のあちこちに本当にたくさんのパブがあって、観光名所もほとんど酒がらみだし、人間は本当に嫉妬するくらいゆったりと生きてる。抑圧の歴史の中で身につけた国民性なんだろうけど、まさにあそこは酒と妖精と魂の国。だからクリスマスの奇跡のような出来事がリアルな中に描かれてても、「ああホントにこういうことあるかもな」って、違和感なくリアルなまま感じられるわけ。日本にはその感覚はちょっとないよね。

吉田 やっぱり翻訳劇だから、自分にもそのあたりの"大きなもの"の存在はスッとコチラに入って来ない部分はありますね。まだ少しモヤがかかっている。そこは稽古で解消していきますけど。

小日向 ただ彼らは本当にエネルギッシュ。イブに男だけで一晩中酒飲んで…って端から見たら侘しいんだけど、彼らは嬉々として過ごしてて力強さがある。ああ、こういう人たちは神様が祝福してくれるんだなって、ジーンとくるものを感じるんですよ。リチャードなんて、特にそうじゃない?

吉田 確かにリチャードは魅力的な男ですね。まあ酒に目も頭もやられちゃってるんだけどさ(笑)、悪意がなくて、腹は綺麗で弟が大好きで。

――ポーカーのメンバーはリチャードとシャーキー(平田満)の兄弟に、彼らの友人アイヴァン(浅野和之)とニッキー(大谷亮介)、そしてふいの客人であり少し謎めいた存在のミスター・ロックハート。4人に負けず、ロックハートもかなり呑んでますが。

小日向 呑まなきゃ普通に強いのに、どんどん呑んでどんどんダメになっちゃう。彼は「俺はあんたたちにとって驚異の存在なんだ」っていうのをあえて口にしちゃって、グーッと頑張り過ぎちゃって…。でも実は誰よりもいじけたり嫉妬したり、一番人間臭い、ちょっと可哀想な人。みんなの力に負けて、酔うほどに崩れてしまう感じも出せたらいいんだけど。

栗山 彼らはものすごく寂しいんだよね。あそこには土の中の深いところにあるような、癒されない魂が集まってるんだよ。

小日向 その一方で非常に無邪気。背中合わせというか、暗い部分を押し隠して男だけでワァーっとやってる感じがすごくいい。僕はそこに色っぽさすら感じるし、人間ってそういうものだよなぁって思うな。

「観る人によってバラバラの印象を与える作品になればいい。」(栗山)

――5人の男優が生み出す空気感にも大いに期待したいです。

吉田 そうだね。同年代5人が集まっての芝居なんて、最近ほとんどなかったからな。何しろ顔合わせで最初に出た話題が頻尿だからね。…俺は違うけど(笑)。

小日向 「またトイレかよ。近いな〜」って(笑)。でもやっぱり同世代が集まって同じ時間を共有する稽古場は、それだけで楽しいんですよ。みんなに影響されて刺激されて、僕ももっと熱くなりたいって思ってる。栗山さんのダメ出しをいっぱい受けながら、ね。

吉田 日本で名優と呼ばれている方々と一緒にやる。それだけでドキドキしていて…。今はまだ本読みの段階ですからね。まだみなさん10%くらいの力なのかなって思うと、これからどうなるのか楽しみでもあり、「これは置いていかれたら終わりだな」と(笑)。

栗山 僕も楽しみはいっぱいあるんだけど、演劇って人間を描くことなんだよね。とにかく5人の人間がいる。そこでいろんな感情が無数に対決していくその瞬間、観客は予期せずして良いものがいっぱい見えてくるっていう、そういう作品になったらいいね。最近、客席全員が総立ちっていう凄く気持ち悪い現象があるけど、ああはならないほうがいい。終わっても涙で立てない人もいれば、「なんだあの汚い中年は」ってあきれて帰っていく人もいるような、観る人によってバラバラの印象を与える作品になればいい。

小日向 底辺に生きる中年男の芝居、いいよなぁ。あれだよね、若い人たちに「これは絶対自分たちじゃ出来ないな」っていう風に思わせたいよね。50歳、みんな若い頃からずっと芝居やって来てるんだぞ、そんなに簡単にはここに立てないぞってさ。

吉田 やるからにはそうですよね。くれぐれも「ああはなりたくないね」と言われないように(笑)。

小日向 (笑)。

栗山 芝居っていうのはこういうもんだっていうのを見せますよ。

小日向・吉田 おおーっ。

栗山 「これがホンモノだ」っていう舞台をね。


〈取材・文/横澤由香〉

〈写真/渡辺マコト〉


パルコプロデュース公演「海をゆく者」
【東京公演】11/14(土)〜12/8(火)
会場:PARCO劇場
【大阪公演】12/11(金)〜12/13(日)
会場:サンケイホールブリーゼ
【愛知公演】12/22(火)〜12/23(水)
会場:名鉄ホール


>>チケットの詳細・申込み

2009-10-23 19:34
 言葉の壁を軽々と飛び越え、パントマイムという武器を使って、様々な国の人々の心をつかんできた"が〜まるちょば"。結成10年を経て、彼らはまた新たな一歩を踏み出した。北海道から沖縄まで、日本の各地を巡る2010年のJAPAN TOURは、彼らの代表作『BOXER』を軸にした構成になるという。公演に向けて、二人に意気込みなどを聞いた。

>>チケットの詳細・申込み

「『BOXER』は、僕らの代表作にしてターニングポイントになった作品です」(HIRO-PON)

――『JAPAN TOUR 2010』、これはどういうステージになりそうでしょうか?

ケッチ! このツアーでは、メインとなるのは僕らの代表作で、エジンバラでやって大ヒットした作品でもある『BOXER』になると思うんですけど。

HIRO-PON まだ構成ははっきりとは決まっていないんですが、たぶん前半は僕らのショーと、10分くらいの短いスケッチを、そして後半は『BOXER』を。これは40〜45分くらいの長い作品になります。

――『BOXER』というのは、セリフのない二人芝居のような作品だそうですね。お二人にとっては、どういう位置づけの作品になるのでしょうか。

HIRO-PON 2004年に僕らは初めて海外に自分たちの舞台作品を持って行ったんですね。それまでも大道芸というスタイルではずっとやっていたんですけれど、舞台公演という形のものを、日本人以外の海外の人たちに初めて受け入れてもらったのがこの作品だったんです。だからある意味、僕らのターニングポイントになった作品ですね。こういう長編の作品を作ったのは4作目だったんですが、それまでもいろいろと試行錯誤があって。この作品である程度、自分たちでやっていける自信が生まれたというのもあります。二人でまったくしゃべらずに表現する、いわゆる、が〜まるちょばのカラーが確立できた作品でもあると思いますね。

――しかも、その作品を今回はリニューアルするとのことですが。

HIRO-PON ええ、まだちょっと考え中なんですけどね。根本的なところは変えるつもりはないんですけれど、おかげさまで何回もやってることもありますし。あと今回は舞台も、今まで使っていたものよりも大きな劇場を使えるようになったので、それだったら有効に使いたいなということで。ただ、なるべくマイムの良さは生かしたいんです。つまり、僕らは理由があってモノを使わずに、理由があってしゃべらずにやっているので。そういうところ、パントマイムのいいところは壊さないで、なるべく効果的にいい演出ができるようにと考えているところなんですよ。


「お客さんの顔が見えた瞬間、「うわ、全員笑顔だよ!」と思えた時は本当にうれしい」(ケッチ!)

――作品をつくるとき、どんなことに苦労されていますか。

ケッチ! やはり、ゼロから作り出すということが一番大変ですね。今回みたいなリニューアルとかなら、まだ何かもとになるものがあって、それを眺めてここは直そうとかってできますけど、何もないところから生み出すというのはなかなか大変です。

――発想を思いつくまでが、苦しい。

ケッチ! ええ。今までは一応、映画とかをモチーフにすることが多かったですけど。それは僕らがやりやすいってこともありますが、お客さんにも理解してもらいやすいモチーフなので。やはり、セリフをしゃべらないので、新しいことをパントマイムでやろうとすると相当な負荷がお客さんにかかるものなんですよ。それだとわからない可能性、伝わらない可能性が出てきてしまうので。

――お客さんとの共通言語がないと、伝わりにくいですよね。

ケッチ! そうなんですよ。だからたとえば『BOXER』だったら、チャンピオンになるまでのストーリーなんだなってことがすぐにわかるじゃないですか。そういう、誰もがわかる共通項として持てるものを下敷きにして考えることが多いかな。短編のほうに関してはわりと、自由な発想でやってますけどね。

――お二人で話し合いながら、作っていくんですか。

ケッチ! そうですね。

HIRO-PON いかにセリフをしゃべらないで面白いものを作るか。そのことに関しての頭の使い方っていうのは、すでにある程度やってきているので慣れてはいるんですけれどもね。でもやっぱり、難しいものではあります。この二人だけで、すべてを考えるんですからね。ま、好きでやってることではあるんですけれども(笑)。

――こうしてパフォーマンスをやり続けてきて、やってて良かったなと思うのはどういう瞬間ですか。

HIRO-PON やっぱり、終わった時のお客さんの拍手です。面白いもので、拍手もおざなりの拍手と、そうじゃない、ちゃんと喜んでもらってる拍手って違うんですよ。

――舞台上から、わかりますか。

HIRO-PON ええ。全然、違いますから。だから、本当に喜んでもらえたんだって感じられた時は、やはりとてもうれしいですね。

ケッチ! 舞台に立っているときって照明が当たっているので、客席ってほとんど見えないんですよ。でも、それでもお客さんの顔が見える瞬間があって。そういう時に「うわ、全員笑顔だよ!」って思えた時は本当にうれしいですね。

――今回、どういうお客様に観に来てもらいたいというのはありますか?

ケッチ! 想像力の豊かな人に、ぜひ来てもらいたいです。

HIRO-PON 想像力があると、パントマイムってものすごく楽しめるんですよ。あとは、まだ僕らを知らない人にももちろん来てもらいたい。そして、これからパントマイムを志したいなという人にも大勢、観に来てもらいたいです。僕らの仕事のひとつには、やはりパントマイムの普及というか、すそ野を広げたいという思いがあるので。いわゆるパントマイム人口はまだ少ないし、いまだにマイナーでつまらないものだと思いこんでいる人もいたりしますからね。僕らがパントマイムのすべてではないですけれど、でも、僕らの舞台を見てパントマイムってこんなに面白いんだとか、こういう形もあるんだってことを知ってもらえたら、すごくうれしいです。

(取材・文:田中里津子)

(写真:渡辺マコト)

が〜まるちょば
サイレントコメディー JAPAN TOUR 2010
【日程】
2010/1/27(水)〜2/7(日) 他
【場所】
天王洲 銀河劇場 (東京都) 他



>>チケットの詳細・申込み

2009-10-22 17:56
 ジュード・ロウ、ナタリー・ポートマン、ジュリア・ロバーツ、クライヴ・オーウェンという豪華キャストで2004年に映画化された『クローサー』。複雑に絡み合う男女4人の恋愛模様をスタイリッシュに描いたこのラブ・ストーリーの原作となったのが、英国の人気劇作家、パトリック・マーバーによる舞台劇だ。世界各国で上演されているこの作品が、日本でも上演されることになった。脚本、演出は鈴木勝秀が担当し、注目の日本版キャストには眞木大輔、福士誠治、佐藤江梨子、辺見えみりという個性派キャストが顔を揃える。劇団EXILEでの舞台や映画出演等、ここ最近、俳優としての活動も顕著な眞木に、日本版『クローサー』への思いを聞いた。

>>チケットの詳細・申込み

「ラリー役には「あ、それ、あるある!」って思えるところがたくさんありました」

――日本版の『クローサー』への出演が決まったとき、まずどんなことを思われましたか。

もともと映画版は観ていて、面白い作品だなとは思っていたんですよ。登場人物は男女4人だけで、とても濃い人間模様ですし。それぞれの恋愛観や、ある意味で人間のエロい部分というか(笑)、泥臭さ、人間臭さがとても出ていた映画だったので。そのへんは舞台版ではどうやるんだろう、しかも自分がやったらどういう風になるのかなーって思いましたね。

――登場するのは4人だけとはいえ、かなり入り組んだ人間関係ですよね。

めっちゃめちゃ入り組んでますね!(笑) プライベートでも、あそこまでぐちゃぐちゃな関係ってなかなか聞いたことがないんじゃないかな。少なくとも、僕の知っている中ではいないです。まあ、表だって言ってないだけで実はいるのかもしれないですが(笑)。

――眞木さんが演じるのは、医者のラリー役です。今の時点で、どう演じようと思われていますか。

今までやったことのない感じの役柄なんですよ。ラリーって、どっちかっていうと悪い男になるのかな。ズルさもあるし、エグさもあるし。自分の中で恋愛観っていうのはもちろんあって、女の子と仲良くなっていく過程とか手法とか(笑)、そういうのが生かしていけたらとは思うんですけどね。だけどラリーはインターネットのチャットに始まり、ちょっとマニアックなエロさを持ってるからなぁ。一応、自分の引き出しを最大限に生かして、経験に基づいて出す部分と、自分の経験とは別にラリーならではの変態さというか、エロさというか。人間味もすごいある人だと思うんですけど、それに加えてダークサイドなところも出せたらいいなと思いますね。

――ご自分の中に、ラリーとの共通部分ってありますか?

いや、ものすごく、ありますよ(笑)。ふだんは出せないようなエロさとか。表に出してはいないけど、人間だったらみんなやってることなんだろうなっていう感じとか。特に男はそういうの、絶対あると思う。

――男性が共感しやすいキャラクターかも?

「あ、それ、あるある!」って思えるところはたくさんありましたからね。それは、ラリーにもダンにもどっちもありました。「その気持ち、わかるなー!」って。だから、そういう部分を赤裸々に表現していったら、より面白くなるのかな、と。

――ある意味、演じていてストレス解消になるのでは?

そうですね。でも、さらに深い世界に行っちゃいそうですけどね。僕の眠れるエロスが目覚める可能性がありますよ(笑)。自分のリアルな部分が出てきても、まあ、それはそれで、『クローサー』的に面白くなればそれでいいんじゃないかなと思いますしね。

「見どころはラブシーン。どこまでリアルに、ゾクッとさせられるかがポイントかな」

――今回のキャストとは全員と初共演だそうですか、それぞれにはどんな印象を持たれていましたか?

辺見えみりさんは自分も昔からよくテレビで拝見していて、すごく包容力があって、大人の色気がありそうな方だなって、勝手に思っていました。佐藤江梨子さんはダイナマイトなセクシーボディを持ちながらも、なんだか天真爛漫な明るい感じがありますよね。福士誠治くんとはちゃんと会ったのは実は今日が初めてなんですが、すごい気さくに話ができて。僕より若いと思うんですけど、いい意味でそういう感じがしないというかね(笑)。それぞれ、登場人物のキャラクターにはみんなよくハマってるなと思いますよ。実際に、これから稽古をやっていく中で、いろいろな変化はあると思いますけど。その変化によってこの作品がどう面白くなっていくのか、その点もとても楽しみです。

――お客様には、どんなことを感じてほしいですか。

大人の恋愛観と、そしてふだんはあからさまにされない部分、それでもやっぱりみんなが持っているエロティックな世界というかね。見てみたいけど、でも見せるのは恥ずかしい部分みたいなところを見て、感じてもらえたら、それがエンターテインメント的な面白みにもつながるのかなって思うんですよ。あとは、出会いと別れというもの。ちょっとしたタイミングで出会って、思いもよらぬきっかけから本当に好きになって恋愛に発展しちゃうみたいな、そういう偶然の出会いってあると思う。そういった恋愛の面白さと、踏み込んじゃいけない甘い罠に、ぜひハマってほしいです。また、そこにどっぷりハマってしまう人間の弱さ。そういうものも、感じ取っていただけるんじゃないかと思いますね。

――やはり、ラブシーンはいっぱいあるんでしょうか?

はい、たぶん(笑)。まあ、多いでしょうね。またそれも、ひとつの見どころなんじゃないでしょうか。どこまでリアルに、ゾクッとさせられるかがポイントかな。

――では最後に、楽しみにしているお客様にお誘いのメッセージをいただけますか。

 男女4人のこの入り組んだ大人の恋愛を、セクシーさも含めて大人っぽく表現していきたいなと思っています。たぶん、今まで自分の中ではやったことのない新しい世界に挑戦することになるはずで、きっと新しい自分を見せられるチャンスになるのかな、と。ちょっと、実際にはなかなか口にできないようなセリフも口にしていく役ですしね。たとえば、自分がこういう恋愛にハマっちゃうような、疑似体験をする気持ちで観に来ていただいてもいいと思いますよ。来てくださった方がその世界に入りこめるような、そこまで想像で飛べるような舞台になったらいいですね。

(取材・文:田中里津子)

(写真:渡辺マコト)


>>チケットの詳細・申込み

2009-10-15 11:24


「劇団、江本純子」の連続公演を経て、毛皮族がこの秋再び始動する。その第一弾として、毛皮族軽演劇シリーズより生まれた異端文芸作品「ふれる」が、10月9日〜10 日の二日間、下北沢駅前劇場にて再演される。再演に際し、キャスティングも改められた新生「ふれる」とは。 本番を目前に控えた江本純子さん、町田マリーさん、柿丸美智恵さんに話を伺った。

>>チケットの詳細・申込み

毛皮族流軽演劇とは

――まずは、軽演劇作品を再上演することになった経緯を教えてください。

江本 今回は、今年の11月に予定している本公演を上演する前に「毛皮族を初めて見る人」に向けて、毛皮族を知る一つの入り口として公演自体を企画しました。毛皮族本公演が製作期間も製作費用も莫大にかかる大作なんで(笑)、毛皮族の面白さを瞬発的に堪能できる作品を上演したいな、と思って、軽演劇演目の中から1作選びました。

――軽演劇シリーズと江本さんが活動されてきた「劇団、江本純子」では決定的に違う点はありますか?

江本 基本は会話劇、と言う意味では「劇団、江本純子」と重なってしまう部分があると思うけれど、決して現代口語ではないし、テーマや物語性を重視する'まじめ'さもないです。軽演劇シリーズではとにかく「笑い」を一番に考えて作っていましたので、例えば「リアル系」なものを想像されるとちょっと違うかも(笑)。

町田 リアル系・・。

柿丸 軽演劇はだいぶエンタメ芝居だよね。

江本 完全な娯楽作です。そもそも軽演劇シリーズはお客さんがふらっと遊びに来て、小一時間ひたすら笑っていってもらうと言う、ただそれだけを目的として作った作品が多いんです。例えば毛皮の本公演が全国ロードショーの気分だとしたら、「劇団、江本純子」はこじゃれた単館系、で、「軽演劇」は雑多なシネコン、たまに名画座にもなり、ピンク映画館にもなり・・映画館に例えたらちょっと分かりずらいですね、とにかく特殊な実験作をいっぱい作れる場としてノンジャンルでやっているシリーズです。演劇工場、ですかね。

柿丸 もはや例えにもなってないね。

町田 本公演がデパートで、「劇団、江本純子」がセレクトショップで、軽演劇シリーズが・・商店街みたいな?

江本 うーん。じゃあそんな感じで。

柿丸 映画館の例えよりはわかりやすいね。


なぜ「ふれる」なのか

――数ある軽演劇作品の中で、なぜ「ふれる」を選ばれたのですか?

江本 雑多でシュールな店が軒を連ねる商店街に、その中でもクロウト好みの品揃えで、それでいてお客さんが入りやすい雰囲気のお店な気がしたからですかね。

柿丸 すっごい分かりずらい。

町田 商店街の例えが生きになった!

江本 見た目は至って平凡なお店なんだけど、中に入ったらベーシックな茶葉からちょっと変わったマニアックな茶葉まで色々置いてあって、なんか一周したら結構いいお店だった、みたいな。

柿丸 しかもお茶屋なんだ。・・全然わかんないな。

町田 地元の人達の間でじわじわと口コミで流行りそうなお店かね、また来たくなるようなね。

江本 そうだね。それいいね。そんな作品だからです。地元以外の人達もやってくるといいですね。

柿丸 「ふれる」はストーリーにちゃんと喜怒哀楽があるよね。

江本 あ、まじめに答えてる。

町田 グッとくるものもあると思うんで、そういうところも感じてもらえたらいいいな〜

江本 あ、町田さんまで。そうですね、単純にふざけた作品が多い軽演劇の中でも『ふれる』はバカバカしくもちょっとまじめな優等生演目なんです。「人間らしさ」についてとことん変化球で攻めていってます。

町田 変化球?

江本 フォークとかカーブとか。

柿丸 例え禁止ね。

江本 はいそれで、この演目を、今このメンバーで作ったら、ただの現代口語演劇でも軽演劇でもない、毛皮族なりの新種のストレートプレイが生まれるのではないかと、そういう可能性も感じられる本だったからです。まあ単純に「好評作だった」と言うことも勿論あるのですが。

柿丸 ということは、初演をなぞるだけじゃないということですね。

江本 初演の「ふれる」もそうだったけど、いつも毛皮族ではどれだけお客さんに笑ってもらうかと言うことに重点を置いて稽古していて、でも今回は人物自体の人間性をもうちょっと突き詰めていこうかなと思っています。それが出来れば、もうちょっと説得力のあるドラマが作れるのではないかと。

――稽古はいかがですか?

柿丸 今日から稽古が始まったところなんです。今日稽古に来るときは軽演劇と思っていたので、割とラフな気持ちで稽古に臨んだんですけど・・。

町田 いきなりジャック・ニコルソンの話から始まってましたね(笑)。

柿丸 江本は今回女版ジャック・ニコルソンを目指すそうです。役作りとして。

江本 昨日も『シャイニング』を観たばっかりなのでしばらくマイブームです。ジャック・ニコルソンが。町田さんにも柿丸さんにも「ジャック・ニコルソンになろうよ」って話をしていたところです。軽演劇用に作った台本だから軽演劇的な笑いを求めてやるのは簡単じゃないですか、既に一度は正解が出てるし。だからキャストに対して、演じる上でのハードルを上げて欲しい意味でまずはジャックニコルソンの魅力について語ってみたと。

柿丸 ちなみに前回の『ふれる』では私は志村喬さんの研究を強いられました。今回は・・ジャックってこと?

江本 そうすね、私もジャックニコルソンを目指しますので、是非柿丸さんもジャックを目指して頂き、ジャックニコルソンVSジャックニコルソンでいきますか。

柿丸 ・・・。

江本 町田さんはどうしましょうか。ジャック・・?

町田 ジャックは置いておいて、もういいから(笑)。

柿丸 カッコーの巣の・・

江本 郵便配達は・・

町田 はいはいはい。とにかく初演の時以上にそれぞれが演じる役の人物をもっと掘り下げていくってことで私は解釈しています。

江本 でも今日久しぶりに本読みして、気持ちをつなげようとしても絶対繋がらないセリフがいっぱいあった。やっぱりギャグ重視でやろうとしてた本なんですね。最近、現代口語の世界に傾きかけていたから(笑)、その方法論でやろうとすると全然できないんです。一旦「笑い」のことを忘れてちゃんと芝居しようとすると、必ず笑いのためのセリフに出会うから、「笑い」の方向にすっごいいきたくなっちゃって、「あ〜どっちでやろう」って常に迷ってしまうんです。すごい難しい本ですね、これ(笑)。初演で今回私が演じる役を演じていた2人(町田、柿丸)は、相当大変だったろうな、と改めて同情しました。あー難しい。あー大変だ。

町田 軽演劇の面白さも残した状態で、一体どんな方向で終着するのか、楽しみですね。

柿丸 とりあえず稽古の終盤でジャックじゃない人が登場する可能性はおおいにあるからね。

毛皮族のバース、掛布、岡田

――最後に、「ふれる」を再演するにあたって何かメッセージはありますか?

柿丸 少ししか出ない役なんですけど、重要な役なので・・

江本 今回初演とあきらかに変えようと思っているのは、心理的な「サスペンス」が強いものにできないかと。そういうところで柿丸さんの役は、会話の中でもその存在感だけでも色んなことを脅かせる役だと思います。柿丸さんの役は初演では私がやってたんですけど、この稽古に入る前に、「私がやった時よりも、爆発的に笑いを取らないと、死刑だよ」みたいなことを言ってたんですけど(笑)。でももはや、それは重要じゃなくなったんだよね。もう今は、笑いじゃなくていいよとも思ってる。

柿丸 じゃあ、サスペンスを生み出せるように。あと、初演の時、今回私がやる役をやっていた江本に対して、この人うざいわ。って心底思って。すごい殺意を持って演じていました(笑)その「うざさ」をだせるように頑張ろうと思います。

町田 私は、初演よりも作中の年齢的な関係性のリアリティがあるので、そういうところで入り込みやすいんじゃないかなと思っています。そこに頼りながらも役を真剣に取り込もうと思います。

あとは、初演とは全く違う作品になりそうなので、初演をご覧になっている方にもぜひ見てもらいたいと思います。

江本 そうね。この毛皮族のバース、掛布、岡田の三人でやるんだから、はずすことは絶対にないと思ってます。誰が三振しても誰かがフォローみたいな。三人でホームラン打ったら最高だよね。

町田 それって結局笑いをとれって要求してるよね(笑)?

江本 まぁまぁ。ホームラン笑いも生みつつ、サスペンスのバントをして、感動でホームベースに戻ってくるって感じの作品に仕上がると思います(笑)。

柿丸 (江本に)実はそんなに野球好きじゃないよね?

江本 初演をご覧になった方も、初めての方もぜひぜひご期待くださいね〜。

町田 わ〜。

柿丸 わ〜。

――ありがとうございました。


>>チケットの詳細・申込み

2009-10-02 15:05

 グルジア語で「こんにちは」という意味を持つ“が〜まるちょば”。彼らの結成10周年記念公演が、めでたくこの秋、開催される。セリフが一切ない“サイレントコメディー”で世界各国の人々を魅了し続けてきた彼らの実力を、改めて堪能できるチャンスだ。しかも今回はオーストラリアからスペシャルゲストとして“アンビリカル.ブラザーズ”を迎えるという趣向になっているのも一興。ケッチ!(赤いモヒカン)HIRO-PON(黄色いモヒカン)に、この10周年記念公演のこと、そしてこれまでの10年、これからの10年を語ってもらった。


>>チケットの詳細・申込み

「アンビリカル.ブラザーズのことを、日本の人たちに紹介したいんです」
(HIRO-PON)

――まずは、気になるこのタイトル、『ブッ、ブッ、キュ!!』の意味からお聞きしたいのですが。

HIRO-PON 実は10年以上前、ある番組でナインティナインの岡村さんがふとしたはずみで出したギャグに『ブッ、ブッ、キュ!!』というのがあったんです。それが異常に面白くてですね。
ケッチ! 僕も当時、その話は聞いてて。でも最初は『ブン、ブン、キュ!!』って言ってたんだよね。
HIRO-PON そう、当時はそうだと思ってたんで。でも正確には『ブッ、ブッ、キュ!!』だったんですよ。去年、番組で岡村さんとご一緒させてもらったとき「10年以上前にそういうギャグやりましたよね」って言ったら岡村さんも覚えてて。「あれ、僕にとってすごく面白くてすごい印象に残ってるんですけど、使わないんですか?」と聞いたら、「いやー、好きに使ってもらってもいいですよ」って言ってくれたんです。

――じゃ、岡村さん命名のタイトルみたいなものなんですね。

HIRO-PON そうなんです。直々に公認していただきました(笑)。

――内容としては、どんな感じのステージになりそうでしょうか。

HIRO-PON まずはやはり、アンビリカル.ブラザーズと一緒にできることが大きいですね。僕らも世界各国をかなりまわっていますが、彼らもそうで。結成する前、だから10年以上前から僕ら二人ともがリスペクトしているコンビなんですよ。マイクパフォーマンスもあるにはあるんですが、彼らも僕らと同じように、いわゆる言葉でお客さんにアプローチするっていう感じではないんです。同じ二人組だし、意外と共通性があったりもして。直接、初めて会ったのは……いつだっけ。
ケッチ! たぶん、2004年だったと思う。
HIRO-PON それまでにも日本には何回か来ていると思うんですが、僕らが初めて間近で会ったのはあるイベントで。僕らは違うカテゴリで出演していたんですけどね。
ケッチ! たまたま会場が隣で、通りがかったらリハーサルしていたんで、勝手に入り込んで「僕たち、リスペクトしているんです!」って声をかけたのが最初。そうしたら次の日に僕らのショーも見に来てくれて。流れで彼らの前座をやることになり、そこから世界中のフェスティバルでよく顔を合わせるようになって仲良くなったんです。

――ここまでガッツリ一緒にやるのは、今回が初めてになるんですか?

ケッチ! ええ、即興でちょっと一緒にやったことはあるんですが、ガッツリというのは確かに初めてですね。
HIRO-PON だけど彼らも忙しいんで、そのガッツリっていうのが果たしてどこまでできるのかっていうのは今のところ未定なんです。稽古期間があまりとれないこともあって。

――じゃ、本番になってみないとどこまでできるかはわからない。

HIRO-PON そうなんですよ。だけど彼らも、日本できちんとやってみたかったらしくて。だから、とりあえず僕らは一緒にやることができればそれでうれしいんですけど、この機会に彼らのことを日本の人たちに広く紹介したいという気持ちもあるんです。

「二人でやってて良かったなと思うのは、表現の幅が広がったことです」
(ケッチ!)

――結成してからの10年間を振り返ってみると、どんな10年だったと思いますか。

ケッチ! まあ、あっという間でしたけど。でも、よく考えると長かったような。
HIRO-PON 早いような、遅いような。でも、すごく密な10年だったとは思いますね。とはいえ、欲を出せばもっともっと密にできたかなあという気もするけど。だけど、欲を言えばきりがないのでね。

――そもそもはソロでやられていたお二人が、コンビになって良かったなと思うことは?

ケッチ! 表現の幅が広がったことですね。あとは、性格が違うからおのずと役割分担的なことも違ってくるので、ひとりでやるときよりも広いエリアをカバーできるようになった。そういうところは、二人でやってて良かったなと思う点ですね。
HIRO-PON 本当に、性格が見事に違うんですよ。それでうまく、補い合えるというか。僕が苦手とすることを、彼が得意だったりするので。

――たとえば、どういうところですか。

HIRO-PON ケッチ!くんはすごい社交的なんです。ところが僕は、そういうところが全然ダメなんですね。

――そうなんですか? 今日はHIRO-PONさんのほうが、たくさんしゃべっていただいているような気もしますが(笑)。

HIRO-PON あれ、そうですかね?(笑) まあ一応、自分のことやパントマイムのことに関してなら、しゃべれるんです。
ケッチ! 僕の友達も、いつもビックリするんですよ。テレビやこういうインタビューのときはきちんとしゃべっているので「へえ、HIRO-PONがたくさんしゃべってる!」って(笑)。

――これから先は、どんな10年にしていきたいですか。

ケッチ! 10年後は……49歳か。
HIRO-PON まあ、いいトシだよね。身体も昔のようには動かなくなってるかもしれないけど……。でも、まだまだですよ。僕らはパントマイムでこうやって表現していますけれど、パントマイムの可能性をすべて網羅したとは思っていないし。おかげさまでここ2、3年くらいで映像の世界とかに少し足を踏み入れたりもしているので、その映像の中でパントマイムがどういう風に生かせるかということもたぶん、これからの課題になっていくだろうし。もちろん舞台も、今までのものがすべて完璧だと思ってはいないので、もっともっとベストに近いものをやり続けていきたいと思いますね。
ケッチ! だけど、世の中がどうなってくかにもよりますよね。たとえば映像にしたって、今まではテレビがあり、やがて録画できるようなビデオが出て、それがDVDになりっていう流れがあって。今では、ユーチューブがこんなに広まっていたりするしね。そういうメディア自体が、これからどうなるかにも対応していかないと。その中で僕らはどうやったら、パントマイムを世の中に広く伝えられるのかとかも考えなきゃいけないし。
HIRO-PON そうだね。あ、あと今後のことでいうと“テレフォンショッキング”に出たいっていうのもあります(笑)。

――それも、夢のひとつですか。

HIRO-PON 今までも僕ら、よくいろんなところでこうなったらいいねってことを語ってきたんですけどね。それがいろいろと叶ってきているので、その中のひとつに入れてもいいかな、と。だけど、特に僕のほうは友達が少ないからなあ(笑)。そのへんのことはケッチ!くんにまかせておきます。
ケッチ! え〜、僕だって、芸能人の友達なんていないよ(笑)。
HIRO-PON まぁ、とりあえずタモリさんにはもうちょっと長くがんばってもらわないといけないかもしれないな(笑)。


が〜まるちょばの10周年だよ!
ブッ、ブッ、キュ!!

【日程】11/26(木)〜11/27(金)
【場所】新国立劇場 中劇場(東京都)

>>チケットの詳細・申込み

2009-09-28 12:16

東京芸術劇場イチオシの才能を紹介するシリーズ「芸劇eyes」に、噂のハイバイが登場する。上演作品は、岩井秀人(ハイバイ主宰・作・演出)自身の80%私実を描いた人気作品にしてハイバイの代表作といえる「て」。10月1日〜12日まで東京芸術劇場小ホール1で公演がおこなわれる。好評のアフタートークの追加に加え、イープラス購入者だけの日時限定特典も緊急決定。そんな、話題目白押しのハイバイに初出演する菅原永二(猫のホテル)さんと岩井秀人さんの稽古場対談が急遽実現できた。開演目前の「て」の魅力に肉迫する!

東京公演アフタートーク追加!!
10月1日(木)19:30/岩井通子氏(岩井母)、10月2日(金)19:30/本広克行氏(映画監督)、10月6日(火) 19:30/千葉雅子氏(猫のホテル)

イープラス購入者日時限定特典!!
10月9日(金)19:30の回をイープラスで購入されたお客様の中から抽選で3名様に、ハイバイ特製Tシャツをプレゼント!(ご当選のかたには事前にメールにて通知のうえ、会場にて賞品をお渡しいたします。)


>>チケットの詳細・申込み


岩井のお母さん役でハイバイ初出演する菅原の気持ち

――まず、猫のホテルの菅原さんがハイバイに初参加されている経緯を伺えますか?

岩井:「て」の初演を観てもらってるんです。あれ、何で来てくれたんでしたっけ?

菅原:TOKYO HEADLINEの方に連れられて。絶対観たほうがいいよ、好きだと思うよ〜って言われて。ペローンって(眼から鱗が)はがれました。

岩井:僕が出演してほしいと思っていたのは結構前からで。サモアリナンズに市川さんと二人で客演したのを見てて、笑わせようとしている意図が見えないけど笑えて。きっと、ちゃんと切実にやってるからだなあと思って。
菅原:そう言ってもらえるとすごく嬉しいです。笑わせるぞっていうのが見えちゃうと、なんか…。

岩井:もう、それが笑えるシロモノじゃないじゃないですか?

菅原:頑張り、とか来るぞみたいのがバレちゃうと。

菅原:「て」は去年上演して、今年再演って早いなと思いました。

岩井:(東京芸術劇場に)呼んでもらえたので。

菅原:初演やっている兄弟のみんなの「あうん」の呼吸がすごいなって、思います。

岩井:あそこはもう兄弟役というより、もう何年来の友人なんでね。

菅原:あ〜そうか!

岩井:顔も骨格も似てるし、ついでに二人とも髪の毛うっすらしてきたりもしてるし(笑)

菅原:僕、初演観た時に、結構お兄ちゃん役とかは衝撃的だったんですよ。ああいう人いるじゃないですか?理屈っぽいというか。

岩井:はいはい。

菅原:だから役者さん(兄役:吉田)もそういう人なんだって思ってて、顔合わせの時に横に座って「やっばいの隣に座っちゃった」とか思ったら結構普通の人で。

岩井:ははは!

菅原:町田(水城)君とかも「はえぎわ」と雰囲気全然違うじゃないですか?攻守交代みたいな。

岩井:舞台上でおしっこしないですもんね。

菅原:町田君、(「はえぎわ」に比べて)静かだな〜って思いますもんね。

岩井:めちゃくちゃな役をやってるところしかみたことないけど。

菅原:ニヤニヤしてるとことかが、すっごい面白くて。たまに喧嘩終わったシーンとかでニヤニヤしつつうっすら涙入る、みたいな。ニヤニヤ涙。

岩井:人様のウチの喧嘩に巻き込まれて大ピンチだけど隠して、って、台詞一個もないけど全部伝わるから、あの弱者側の感じ。しかもそれを毎回キープできるのははすごいな、と思いますよ。

菅原:(泣きながら出てった)妹呼びに行こうとか、やさしいんだよね。

岩井:そうですね。良かれと思って甘んじて色々引き受けてます。彼の役は。

菅原:無理やりカラオケ歌わされたり。

岩井:台詞適当に言わせてたら、稽古何回目かで、ラップ歌ってることになってた、面白い。

――ハイバイには初参加ですけれども、印象はいかがですか?

菅原:やっていいことといけないことの線がすごい微妙だなって。ちゃんと決めないとやりすぎちゃうなって。お母さんの気持ちでやるだけですよ。女をあんまり出さないようにっていう演出なので。ホモのカップルにだけは見えないようにしたいです。

――女装、お似合いですよ。女を出さないようにというのはどういう意図なんでしょう。

菅原:たぶん嘘っぽくなっちゃうからだと思うんですけど。

岩井:そうだと思う。そもそも嘘をついているから、それ以上頑張ってちょっとした嘘をつくと面倒くさくなっちゃうので。菅原君が女の人をやろうとする時点でもう無理だから、無理は承知でちょっとまじめにやればいいという。

菅原:岩井君の演じたお母さんを観たとき、すごい衝撃的だった。

岩井:あれ本当、楽しかったです。

菅原:いるいる、と思って。全然違和感がなくて。

岩井:でも、違和感ないのは菅原君も一緒ですよ。見てる方も最初はうわ、やっちゃったくらい思うんですけど、そのうち慣れるんですよ。声とかそのまんまで、「しょうがない、今たまたまオカマみたいな格好しているけど、(母としての)自分のポジションわかっててほかの人に接する時にどういった接し方になるか」というのを普通にやっていけば大丈夫。

菅原:(旦那役の)猪股俊明さんは・・・

岩井:ちょっと辛いかもしれないけど(笑)


違和感にタッチする

岩井:菅原君は普段と舞台上がだいぶ違うなと思う。普段も空気は読んでいるんだけど比較的ノータッチでいるタイプじゃないですか?でも舞台上で何か異物が出てきたら…。

菅原:絶対タッチしていきます。

岩井:だからそこの違い、すごい面白いなと思って。僕、よく役者さんに「ほら、いま絶対違和感があるんだから、その違和感を絶対お客さんももっているんだから、それをうまく説明して、それは普段と同じじゃん」っていうんだけど、菅原君に関しては普段と違う。それがどうして舞台上では積極的になるのかなって。

菅原:あ、でもタッチしたらやけどしそうなやつは絶対しなかったり。ここは拾っても広がんないだろうな、とか考えます。

岩井:計算だね。もう一枚広く空気を読んでいるんだろうね。普段は拾っても見返りないですからね。

菅原:お客さんありきの、ですね。僕は舞台上だと、ちょっとひいた感じで見ているところがあると思う。お客さんと同じ、お客さんが気付いた時に言うのがいいかな、って。

岩井:そこはすごい、タイミングとか見てて感じる。

菅原:あんまり早いと、つっこんだものをお客さんが見て、違和感を後から共有することになっちゃうから。

岩井:そうそうそう、リアルタイムで共有できるっていう。

――それは菅原さんが演じる母役にも生かされていることなんですか?かなり引いた視点だと思うのですが。

岩井:母役というか、ひいた視点というのはみんな必要だと思っていて。ざっくりいうとボケる側にも必要なことで。牧師、葬儀屋のような(本作の中で)他者で異物みたいのが来た時に、初演ではなかったけど、今菅原さんが葬儀屋の頭を思いっきりはじいていて、見ている側ではちょうどいいタイミングで、誰も何もやれないけど唯一やれるとしたら、っていうやり方で。

菅原:ほかの子供たちは叩けないだろうけど、自分の母親を雑にされているイライラで叩いている。加減しないとちょっと…。

岩井:あれ、葬儀屋が祖母を棺桶に入れる時に「ゴキッ」て言わせたのは本当できっとうちの母ちゃんは(叩くのをみて)相当スッとすると思います(笑)。


普段の菅原永二

岩井:菅原君って、暗いの?明るいの?

菅原:どうだろう、暗い方じゃない?

岩井:そうかな。一人には強いじゃない?一人で呑みにいけるって相当一人な人だと思う。

菅原:行ける、行ける。一人で飲み屋に入ったりするのは全然大丈夫。ただ、大勢ってどうですか?大勢好き?

岩井:僕は大勢の方が好きです。菅原君は前から見ていると大勢でいても結構マイペース。

菅原:そうなんです。大勢いても全員とは話せないから、遠かったり仕切って自分の話に持っていったりできないし、とりあえず自分の目の前にあるもの飲もうって。

岩井:仕切って自分の話できないんでってすごい、よくわかる。

菅原:別に厭じゃないんですけど。大変かな、って。たとえば呑みに行こうよって自分がどんどん誘って10人位になっちゃった時、「やっべ、俺、すごい今帰りたいんだけど」って思ったとしても、じゃ帰るわって言えないじゃないですか?

岩井:なるほど自分の勝手なのを知ってて、後でそれが来るかもしれない、みたいな。

菅原:だから、3人位にしといて、しかもよくわかってる人で「ちょっと酔ってきたから帰っていいかな」って言えるような。

岩井:「酔ってきたから帰っていいかな」ってもう不思議だ…。舞台の上で何かしら違和感が出てて、お客さんがクエスチョンなんだけど、っていう時にくさびを打てるタイプって、そういう「他の人に責任持てない」っていうマイペースな人にいない気が僕は勝手にしてるから、不思議。刹那な空気だけ読んでいる人と、2時間たった先の酔っぱらった時の自分を読める人との違いかな。

菅原:いや、楽しんでほしいとは思ってて、3人位だったら頑張って楽しませられるんじゃないかなって。わかんないけど。これで今度3人位で呑みに行って俺がずっと黙ってたら申し訳ないけど(笑)


ハイバイサッカー部

菅原:この間(ハイバイサッカー部)サッカー行ったとき思ったけど、みんな学生時代からの友達っていうのが、本当に楽しそうで。僕も楽しかったし。

岩井:昔はドロケイやってたんですよ。夜中に小金井公園でやるんですよ。黒い服着てマグライトもって20人対20人位で。

菅原:怖い!!

岩井:本当、怖い。垣根の中にこうやって立って隠れてたり、そばを探られてるときなんて、打ち震えるくらい怖いの!

菅原:それ、映像にすればいいのに。

岩井:やってみたいなぁ。

菅原:今回は稽古期間もたっぷりあるしね。この作品、初演はお客で観ていたけれどやっぱり面白いです。

岩井:僕も演出に専念してやっと外からこの作品を見れるようになったんですけど、面白いと思います。

菅原:(イープラスのみなさんに)ぜひ見に来てください、絶対外せないんで!

岩井:お願いします!


>>チケットの詳細・申込み

2009-09-18 11:05

ザ・ポケット、劇場MOMOの隣に二つの新しい劇場が誕生。その中のひとつ「テアトルBONBON」のこけら落とし公演を東京ヴォードヴィルショーが上演する。

 作品は2004年劇団創立30周年興行第2弾で好評を博した、劇団史上初の女優を中心とした 傑作喜劇「その人、女優?」の再演。作・演出は人情味の溢れる喜劇で大人気の中島淳彦を迎えて いる。物語は昭和の終わり頃。一瞬の間だけ人気女優だった片桐沙代子は夫で脚本家の橋岡との 結婚生活が破綻。しかもその橋岡の新作舞台の主演女優が後輩の天野千里に決定する。片桐はし つこいマスコミから逃れるべく九州の田舎町にある古ぼけた連れ込み旅館にたどり着く。女と男、妻と夫、そして女優と女優の闘いが、いま可笑しくも情けなく始まる!
 入団が同期のあめくみちこと山本ふじこ。二人の女優に本作品への意気込みを聞いてきた。


>>チケットの詳細・申込み

――「その人、女優?」5年ぶりの再演で、しかも、今回はこけら落とし公演だそうですね?

あめく:そうなんです!こけら落としをさせて頂くのは凄く嬉しいです。そんな経験は初めてですし、なかなかそういうチャンスには出会えない。劇場さんがヴォードヴィルに決めて下さって本当に嬉しい。

ふじこ:はい、本当に嬉しいですね。

あめく:かなり自慢できるよね、だって最初だよ(笑)

ふじこ:だから作品をよくしないとね。「面白い」と、評判が良かった作品なので、期待が高くなるぶんプレッシャーはある。でも凄く楽しみです。

あめく:ちょっと心配なのは、劇場が完成するのか(笑)。今はギリギリの予定らしくて。劇場はキャパが120と小さめですが、このお芝居にピッタリだと思う。連れ込み旅館の小さな部屋の設定だから。

ふじこ:登場人物もそれぞれ個性的で面白い。見逃すかもしれない程、細かい面白いところも盛り沢山。舞台と客席が近い方がそういうところも観てもらえるから、いいと思う。

あめく:狭い舞台に登場人物総勢12人もでるからね。

ふじこ:色々な人が色々なところに出入りするからね。楽しみだね。

あめく:この前初演のDVD観たら、いや、みんな若い!

ふじこ:若かったね(笑)。5年も経ってるのかぁ…。

あめく:私の役は女優だけど、だんだん役が貰えなくなって外されていく役。歳をとった分、そこをいい感じに表現できるといいなと思う。
ふじこ:私は、いい歳をした息子がいるお母さんの役。初演はそんな歳ではなかっ たけど、今はだいぶ近づいた。やっぱり役に対する心境も変わる。あと、今回は、演出も作家の中島さんがして下さるから、前回苦労した方言(宮崎弁)を中島さん(宮崎出身)に指導していただける。

あめく:初演より濃い感じの舞台になるんじゃないかな。やっぱり、作家が直接、演出して下さるからね。


――初演の時に印象に残っている事はありますか? 

ふじこ:公演の時にもの凄い台風がきて調光室も雨漏りして、お客さんが来ないかと思ったら、それでも来てくれていて、それに感動して、皆テンションがあがって素敵なお芝居になった。それが忘れられないです。

あめく:「もしかしたら途中で照明が全部消えるかもしれません。それでもやりますか?」って照明さんが言ったんですよ。「やります!」って言って。幸い何事もなかったんですけど。


――初の女優中心の企画ということでいつもと違う心境でしたか?

あめく:凄く面白い台本を中島さんが書いてくださったので、絶対に、その面白さを伝えないと申し訳ないと思いました。稽古からかなりの興奮状態が続いていて、とにかく初日まで必死でした。台本の面白さと出演者の皆が、お客さんにうけて欲しいという思いが強かったですね。

ふじこ:脇を固める俳優が先輩方で、凄く頼もしかった。やっぱりたくさん経験されている方は違うなと。「面白くなるよ、大丈夫だよ」って盛り上げて、助けてもらっている感じがしました。お客さんからもエネルギーをもらいました。笑いももらって、私たちはそれをエネルギーにして、また還元する。それがすぐ感じる事ができるのが客席と舞台の近い小劇場の良さかなぁって思いました。
今はまだ劇場の作りもわからないけど、「新しくものを知る」っていう事が、凄く楽しみです。

あめく:新しい劇場ができて嬉しいね。中野には2つできるわけだし、高円寺にもで
     きたしね。そうやって演劇が賑やかになる事は嬉しいですね。


――今回の公演に対する意気込みをお願いします。

ふじこ:いつも通り、自分のやれる事をせいいっぱいやるだけです。もう少ししたら、もっとそういう気持ちが強くなると思います。

あめく:初演は、御陰さまで凄く評判も良かったし、チケットが完売で観損ねたって声も聞いて、いつかまたやりたいなって思っていました。それをこの機会に再演できるのが嬉しいです。絶対、前よりは面白くなるはずなので。

ふじこ:新たな発見も、すでにかなりある(笑)。5つも歳をとれば感じ方も変わってくるしね。

あめく:変わりますよ〜。肉体が変わってるんだから(笑)。

ふじこ:この台詞は、こういう風に感じるんだとかね。それで、深みとか厚みもでてくる。

あめく:セットも新しい劇場にあわせて前と変わると思いますし、その辺も楽しみですね。 前回ご覧になった方も絶対楽しめますので、是非中野にお出かけ下さい!!



>>チケットの詳細・申込み

2009-09-04 18:45

 日本初のマルチタレントとしてテレビ創世時より第一線で活躍し続けている黒柳徹子。彼女がこの20年間、女優として毎年自身の主演舞台を務め続けて来たことは、素晴らしい快挙と言えるだろう。

 始まりは1989年、ピーター・シェーファーの傑作『レティスとラベッジ』。おしゃべりな観光ガイド役の黒柳とお堅い歴史保存委員役の山岡久乃との辛口でユーモラスなやりとりは多くの演劇ファンをとりこにし、以来、『カラミティ・ジェーン』『幸せの背くらべ』『マスター・クラス』『ローズのジレンマ』など、数々の名作が発表されてきた(1999年まで銀座セゾン劇場、2000年以降はルテアトル銀座にて)。


>>チケットの詳細・申込み

 黒柳徹子という、いわば唯一無二のジャンルを生きる彼女の類い稀なるバイタリティと大いなるチャレンジ精神は、常にその時代にピタリとフィットする作品を届けてくれた。そうして様々な役、様々な女性像を演じて来た彼女の舞台は多くの観客たちの支持を得、いつしか“毎年恒例”の大きなお楽しみとなっていったのだ。「今年は何を見せてくれるのか」。観客の大きな期待をしっかりと受け止め、大人だからこそ共感し、感動する、人生の輝きを映し出す質の高い舞台を生み続ける。しかも、ひらりと軽やかに。そんな彼女が20周年記念作品として選んだのがこのジョン・トビアス作『ベッドルーム・ファンタジー』である。

  ニューヨーク・マンハッタン。欲求不満のオリヴィア・グリフィン夫人(黒柳)と夫のチャールズ・グリフィン(団時朗)は、豊かな夫婦生活を取り戻すべくセラピーにまで手を出し果敢に試行錯誤中。そこへマンションの管理人(石田太郎)、神経質な空き巣(田山涼成)、オリヴィアの姉(立石涼子)が加わって思いもかけない展開に…という、抱腹絶倒の艶笑コメディ。まさに大人の役者と大人の観客が同じ空間を共有するにふさわしい、切実だけど大いに笑えてしまう男女の機微が描かれていく。

 演出は「黒柳徹子主演海外コメディ・シリーズ」の多くを手がける高椅昌也。黒柳との信頼関係もバッチリ、コメディには欠かせないテンポの良い舞台作りが期待される。また、本シリーズの『ブロンドに首ったけ』『ふたりのカレンダー』に出演した団時朗、同じく『カラミティ・ジェーン』以来16年ぶりの出演となる石田太郎に加え、田山涼成、立石涼子ら芸達者な役者陣が揃ったシチュエーション・コメディ。今年も劇場が笑いに包まれるのは確実。

 かつて黒柳はこの海外コメディ・シリーズについて、「世の中には辛いこと悲しいことの方が多いので、せめて芝居を観ている2時間は、それを忘れて笑って欲しい」と語った。そんな純粋な思いを存分に込めて演じて来た彼女は、本シリーズの『幸せの背くらべ』と『マスター・クラス』で毎日芸術賞と読売演劇大賞の大賞及び最優秀女優賞に輝いている。「継続は力なり」とは言うけれど、20年間、18演目22作品の舞台に立って来た彼女は、もちろんここがゴールだなんて思ってはいない。ガーターベルトに漆黒のドレス、ボロをまとって華麗に“豊胸”(!)して――変幻自在、笑いと感動を届けるため、今日もまた素敵な戯曲を探し、豊かな役者仲間と語らい、大きな声で笑い、果てることなく表現者としての人生を走り続けているのだ。

 『ベッドルーム・ファンタジー』の幕開けは2009年10月10日。毎年観劇しているというファンの方も、テレビでの黒柳徹子しか知らなかったという方も、日本が誇るコメディエンヌのパワーを感じ、ひとときでもいい、“それを忘れて”思い切り笑って過ごそうではないか。

(文:横澤由香)


>>チケットの詳細・申込み

2009-08-21 16:41
慶應義塾大学の演劇サークルで知り合ったメンバーが集まり、2008年に正式に独立したコメディユニット「ゴジゲン」。悲劇的なテーマを、笑えるが優しい世界観へ昇華させる、軟弱なシチュエーションコメディが作品の特徴。結成以来、東京のみならず全国を視野に入れて活動を展開し、既に大阪と福岡でも公演を行っている。一方で、映像製作にも力を入れ、主宰者はTVドラマの脚本も手がける。そんな順風満帆な彼らだが、最新公演のタイトルは『ハッピーエンドクラッシャー』(新宿THEATER BRATS 9/9〜9/15)。どういう心境で今回の舞台に臨むのか。全ての作・演出を手がけている、主宰の松居大悟に話を聞いた。



>>チケットの詳細・申込み

慶應のおしゃれな雰囲気に溶け込めない寂しさから旗揚げ

――まず、今回のインタビューが「e+ Theatrix!」に掲載される心境を教えてください。

「きたな!」と。いや違う(笑)。ありがたいです。でも、他の取材を受けている方々と肩を並べたとは全然思ってないので、プレッシャーを感じてます。ゴジゲンは知名度もまだまだなので、この記事を読んでくれた方には、とりあえず興味を持って頂きたいです。観に来てもらえたら最高で、作品で答えたい。ゴジゲンは出会いで今までやってきたので、これがまた新しい出会いを生むきっかけとなれば、と思います。

――ゴジゲンは、旗揚げしてから1年足らずで1公演1000人以上を動員するようになりましたね。来年の4月には吉祥寺シアター公演も決定とのことで、小劇場の劇団としては、順調な経歴だと思います。それなのに、いつも描くテーマは「悲劇」なんですね。最新公演に至っては、「幸せをぶっ壊す」と?

うーん……僕は全然順調だとは思っていないです。というのも、全然一つの場所に留まっていたくなくて。演劇だけじゃなくて、映画もラジオも喫茶店もやりたい。ミーハーですね(笑)。変化し続けること。これ、人生の目標にもなってます。

――どこからその気持ちが来るのでしょうか?ゴジゲンを旗揚げするに至った経緯を教えてください。

元々芝居にそんなに興味はなかったんです。高校生まではずっと漫画家になりたかった。でも、上京して出版社に漫画を持ち込みしたら、「こういうのは芸人さんがやってるよ」と言われたんです。悔しいから、じゃあ芸人目指そうと思って。そのために大学でコントや演技を勉強しようと。第一志望は早稲田大学でした。でも、早稲田全部落ちて、慶應しか受からなくて。いざ入学しても、慶應のおしゃれな雰囲気にとけこめなくて、毎日学校の図書館にある立入禁止の場所に入り、1人でお昼食べてました(笑)。

――その後、「創像工房 in front of.」という演劇サークルに入りますね。

友達欲しいなと思って。そしたら、同じように下を向いてる人たちばかりが集まってる演劇サークルがあったんです。飲み会でもコールなんてしないし、自虐ネタとか下ネタとか下世話なことばっかり話してるけど、絶対人を傷つけようとしない。どこか暖かくて、コントも出来るって言うし、最高だなと思って入りました。そんな気持ちで入ったから、1年ちょっとで演劇自体に飽きてしまった。そんな時に、ヨーロッパ企画の『サマータイムマシン・ブルース2005』を観て、衝撃が走った。こんなに面白いことができるならと、それがきっかけで、僕も芝居を書いてみようと思ったんです。仲間にも「ヨーロッパ企画みたいなことやろう」って言って。

――それが、2006年5月、事実上の第1回公演『かけぬけない球児』ですね。この時はサークル「創像工房 in front of.」としての公演で、ゴジゲンはまだ旗揚げされてませんが。

その後、第2回公演『ロックンロール逃げる』で池袋シアターグリーンの学生芸術祭に参加して、大阪選抜に選んで頂いて。その大阪で第3回公演『エイトビートニート』をやっている頃ですね、劇団を旗揚げしようと思ったのは。4年間、ずっと芝居しかしてなくて、気がついたらサークルを卒業しちゃう。しかも休学中。寂しくなって、慌てて1人で劇場を押さえた。それまで、全ての作品に出演してくれていた同期の目次立樹(めつぎりっき)と第3回公演で制作をしてくれていた後輩の半田桃子をメンバーに誘いました。そうして、今でもサークルの延長で、ズルズルと続けてしまっている感じです(笑)。

カッコ悪い人やダサい人を肯定したくて、コメディ作ってます

――ヨーロッパ企画の第26回公演『あんなに優しかったゴーレム』では、文芸助手を務めていますね。どんな影響を受けましたか?

ヨーロッパ企画の上田さんとは、2007年の池袋シアターグリーンの学生芸術祭をきっかけに知り合いました。とにかくストイックで、笑いだけではなく、その芝居の世界観を大切にしているんです。しかも、上田さんは役者からボランティアスタッフの方まで、色んな意見を聞くんですよ。辛い意見もあるはずなのに、受け止める。一方で、「努力する姿は人に見せちゃいけない。作品で伝えればいい」と言っていて、それがまたカッコいい!完全に憧れて、上田さんと同じノートパソコンとスケッチブックを使ってます。ストーカーみたいだけど、面白くなれるんじゃないかと思って。これ読まれたらやばいです(笑)。上田さんだけじゃなく、ヨーロッパ企画の方々には、お世話になりっぱなしです。でも、先にヨーロッパ企画がいるから、コメディでは太刀打ちできないと思って、より一層コンプレックスを描くようになりました。

――そもそも、何故コメディを作ろうと思うのですか?

コメディにするのは舞台だからです。実際、自主制作で作った映画は、完全な悲劇で、何も笑えないんです。笑いって、お客さんの反応の中で一番分かりやすい。お客さんの笑いによって、役者の演技も変わって、芝居の形までも変わっていく様子が面白い。映画や小説じゃ出来ないことですよね。それに、笑ってしまうっていうことは気持ちが理解できたということだから。僕は、カッコ悪い人やダサい人が好きで、それを肯定したくてコメディをつくっています。稽古でも、笑いについては特に言及しません。

――今までの稽古場で一番インパクトに残っている役者さんは?

最新公演に出演する予定の田中美希恵ちゃんですね。インパクトのある外見なのに、シャイ。でも、シャイゆえの堂々とした演技が面白いんです。ゴジゲンのメンバーの目次もストイックですよ。チェ・ゲバラに憧れている役の時は、ゲバラの映画20本くらい見てた。「チェ・ゲバラ」ってワードは一言しか出てこないのに(笑)。とにかく役目線で、想像以上のことをしてくるんです。だから、演技の上手下手じゃなくて、次の瞬間何をするか分からない人をキャストに選んでいます。演出の言うことは聞かなくていいんです。

――じゃあ、何を演出しているんですか?(笑)

最低限、話が分かるように演出しています。それと、とにかく傷つきたくないんで、人を傷つけるような表現はできるだけ遠まわしに見せます。あとは空間の見栄え。見栄えはこだわります、視覚的情報は何よりも強いと思うんです。だから、舞台はいつもグチャグチャしているし、小道具もやたらと多い。

――過去6回の公演で一番気に入ってるシーンは?

第2回公演の『ロックンロール逃げる』で、主人公たちがパンツ被りながら、女の子のパンツ覗くシーン。あれは芸術ですね(笑)。負け組で、汚くてダサいんだけど、目的を達成するために必死で。いやらしさを超えた、切なさと愛があるシーンなんです。今年5月にやった第6回公演『チェリーボーイ・ゴッドガール』でも「女子なんかムカつく」と言いながら、女の子の匂いが残る座布団をみんなで嗅ぐ。「やっぱり好きなんじゃん!(笑)」と。台詞と行動が逆になっていた方が、気持ちがお客さんに伝わる気がするんですよ。感情が溢れすぎて、バレたら恥ずかしいから、言えない。気持ちを素直に伝えられる人より、素直に伝えられない人の方が、その気持ち自体は勝ってると思うんです。思いたいんです。

テーマは現実逃避。見えないフリをするという思いやり

――今回の公演のストーリーとテーマを教えてください。

簡単に言うと、不幸な人たちが不幸だと悟られないように、幸せなフリをするけど、結局最後はぐちゃぐちゃになってしまう話。テーマは現実逃避。過去の事件のせいで、彼らの関係が変わりそうなんだけど、主人公は変わりたくない。一見幸せそうに見えても、本当は不幸せ。だけど、それを見ないフリをする、という思いやり。そんな、壊れそうでギリギリな世界ですね。まあ壊れるんですけど(笑) 。

――今までの公演と違うところは?

毎回世界観が違うのでなんとも言えませんが、今までは皆で一つの目標に向かっていたけど、今回は自殺・漫才・告白・謝罪…と、皆の行動や動機がそれぞれ違っていて、色んな話が錯綜します。役者もワークショップで色んなところから集めたので、テーマは決まってるけど、どうなるか分からないです。気を抜くと調子に乗ってしまいそうな自分をぶっ殺していきたいですね。ラストも、『ハッピーエンドクラッシャー』と銘打ってハードルも上げていますが、まだ悩んでます。僕の中でやりながら、答えを見つけていきたいです。

――最後に今回のテーマに因んで、人生最大の現実逃避を教えてください。

与那国島に行ったことですね。日本の最西端に。その時は失恋して、体調も悪化しちゃって。もうわかんないですけど、世界変えてやろう、と思って。そのためにひとまず、日本の端に行けば日本のトップになれるんじゃないかと思いました。あれは寂しかったですね。

(取材・文:上野紗代子)


>>チケットの詳細・申込み

2009-08-14 19:35
2001年に劇団「ラッパ屋」が上演し好評を博した『斎藤幸子』(作・演出:鈴木聡)が、この夏、プロデュース公演で上演される。今回美貌とガッツは人一倍だが"画数が悪く"波瀾万丈な人生を送って行くサチコを演じるのは、『ゼブラ』の好演も記憶に新しい斉藤由貴。そして演出は様々なタイプの作品を手がけ、その柔軟&刺激的な発想から今や引っ張りだこの河原雅彦が指名された。
物語は東京の下町・月島を舞台に、サチコと彼女を取り巻く人間味溢れるキャラクターたちが繰り広げるハートフルコメディの世界。
斉藤由貴と河原雅彦。本作が初顔合わせとなる2人の作品に寄せる期待と愛情をうかがうべく、始動直前の稽古場を訪ねた。

>>チケットの詳細・申込み

斉藤さんはクリエイターが信頼出来る女優さん──河原

──お2人がご一緒するのは本作が初。これまではお互い相手にどのような印象をお持ちでした?

河原:"ものすごくピュア"。本当に勝手な印象ですけど、例えば台本に感情でつながらない台詞があったとき、自然とそこで止まれるというか…そういうの、全然言えちゃう役者さんもいますけど、そうじゃなくて、斉藤さんはナチュラルに役にアプローチをして、やり辛いところはちゃんとやり辛くなれる人なんだろうなって。僕はそういう感覚の方のほうが好きだし、クリエイターからしても信頼出来るんですよね。そういった感覚があるから歌であっても演技であっても、斉藤さんはいつもちゃんと斉藤さんの表現になっている。僕はそんなところにひかれながらずっと拝見してました。

斉藤:ありがとうございます。

河原:実際お会いしてみても、その印象にブレはないですしね。親近感とは違うけれど、あまり緊張せずいられる方。もうね、こうして一緒のお芝居を作る機会を与えられて非常に幸せですね。稽古の一ヶ月間、斉藤由貴さんっていう女優を見れるっていうのは。

斉藤:うわぁ、どうしよう…私、言い辛くなって来た(笑)。

河原:あっ(笑)。僕、最初の印象って大体悪いんです。いいですよ…慣れてますから。

斉藤:えーと、私の中での河原さんは、「触ると切るぜ」みたいな狂犬のようなイメージ。『人間風車』で舞台に立っているのを拝見したんですけど、怖いというより…危ない? だって、そのあともお見かけする写真がどれもこれも悪人面なんですもん(笑)。

河原:うわっ、僕"ヅラ"って言われてますよー。

斉藤:フフッ。だから河原さんが演出って聞いたときに、「とんでもないことになってしまった」と。私はよく周囲の方に真面目で努力家って言われるんですけど、それはとんでもない勘違いで、あの…すっごくいい加減でぬる?く生きてる人間なんです。なのでもし河原さんに現場で「そんなんじゃないっ!」「ビシッ!」なんてされたらどうしよう。絶対泣いて帰っちゃうって…。

河原:ああ?。僕が役者めがけてバンバン投げる用のナイフを用意してあってね。

斉藤:(笑)。でもスチール撮影で初めてお会いしたらあまりにも印象が違ったんです。もしかして私の知ってる河原さんとは違う河原さんなんじゃないかって思うくらいに。

河原:僕は呑んでるときとお芝居やってるとき以外は生き生き出来ない。生気がないんですよ(笑)。

斉藤:えっ、じゃあそれ以外は人生の余白ってカンジなんですか?

河原:なんてことを! 僕もそれなりに楽しく生きてますよ。あんまりだぁ(笑い)。

斉藤:私、結構辛辣なんです(笑)。

河原:わかります(笑)。他にも取材の機会があったりこうしてお話ししていると「スゴイなぁ。天才肌なんだなぁ」と思い知らされる瞬間が何度もありますし。でも斉藤さんはこういう方なんだってことは早くみんなにわかってもらっておくと、稽古場が非常にリラックスすると思いますよ。

──粟根まことさん、千葉雅子さん、明星真由美さん、中山祐一朗さん。ほかにも共演者のみなさんはいわば小劇場界の代表選手揃い。そんなカンパニーが銀座のど真ん中で…っていうのも今回大きな魅力ですね。

河原:そうそう。たぶん銀座なんて地下鉄の出口もわからずマゴマゴしちゃう人種だから、小屋入り初日はみんなで待ち合わせて行くんじゃないかな(笑)。まあでも僕の中ではすべてにおいてそんなに違和感なく、演出もこれまでやってきた感じで楽しめそうだなって思ってます。やっぱり僕はエンターテイメントが好きなんですよ。下町って聞くと一見エンターテイメントとはギャップのあるシチュエーションかもしれない。実際大事件も起きないし、ちょっとした人たちのちょっとした日常ですからね。そこをちゃんと鈴木さんがエンタメという切り口で描いている。…確かに下北公演はあっても良かったかなっていうメンツですけど(笑)。

押しつけられずに生きるサッちゃんは一番の幸せ者──斉藤

──斉藤さんは初演をご覧になっていて元々大好きな作品だったそうですが、ご自身が愛すべきサッちゃんをいよいよ演じるにあたり、改めて感じていることなどはありますか?

斉藤:言葉にすると月並みですが、不幸なことが起きるからって必ずしも不幸ではない。『斎藤幸子』のサッちゃんを見て、「こんなんだったら不幸なことあってもいいのかも」って思ってもらえたらうれしいです。そのためにはやっぱりすごく魅力的じゃないといけないと。今って人間、押しつけられることがいっぱいじゃないですか。心的に。でもさっちゃんは押しつけられてる感じがないんですよね。「これは私の心の中で大事」「これは私の心の中で大事でない」ってことを、頭で考えるのではなく瞬時に取捨選択してる。結果挫折しても本人はいつも一生懸命でそれなりに楽しい。本当はそうやって生きるのがたぶん一番幸せなんじゃないかな。だからお客さんも劇場を出る時にはサッちゃんの生き方を観て〔幸福論〕なんて概念からちょっと自由になって帰ってもらって、で、次の日に不幸になってもらうっていうのも--ありかな、と思ってますけど(笑)。

河原:あり、かぁ???(笑)

斉藤:フフフッ。

──不幸は不幸じゃない。それが人生、ということですね(笑)。さて。台本も上がり、いよいよお稽古開始です。

河原:鈴木さんの筆が新たに入った『斎藤幸子』は、やっぱり面白い。顔合わせでどういうホンを配るかっていうのもスタートとして重要だし、舞台ってそこでホントに"決まる"と思ってるんですけど、もうこれをやりゃあ面白くなるしかないでしょう。コメディですけど狙ったことはそんなになくて、普遍的なテーマもすごくある。この下町のルールの中での人間関係で起きること、ここに書かれている"状態"が微笑ましかったり面白かったり。演出家と役者もこの面白さをどう個性豊かに表現するかっていう一点に向けてキャッチボールすればいいだけです。自分たちはそこの関係を純粋に楽しんで毎日の稽古を積んでいけばいい。優れた脚本という、しっかりとした共通認識があるなんて、恵まれていますよね。

──ではもう不安はナシ、で。

河原:いやいや。ある…というか、最初から万全だと思ったら引き算になりますからね。不安だ不安だって思っててちょうどいいんじゃないかなぁ。だって、「恵まれてる」ってこんなに言ってるにも関わらず、実際は数日で殴り合いの稽古場になってるかもしれないし。それはそれで面白いけど(笑)。

斉藤:河原さん、けっこう出たとこ勝負?

河原:うん…まあね(笑)。

〔取材・文=横澤由香〕

パルコ・プロデュース 「斎藤幸子」
公演日:2009/8/14(金)〜30(日) 会場: ル テアトル銀座 by PARCO (東京都)


>>チケットの詳細・申込み

2009-08-07 13:33

19世紀の英国を舞台に、孤独と戦いながらも強くたくましく生きたひとりの女性をドラマティックに描き、今もなお世界中の人々に読み継がれている『ジェーン・エア』。この不朽の名作がブロードウェイでミュージカル化されたのが2000年のこと。当時、自ら脚本を執筆したという演出家、ジョン・ケアードが、このたび日本版として改めてこの作品に新たな息吹を与えることになった。脚本を練り直し、音楽も再構成、劇場に合わせ新たな演出を加える完全版ともいえる舞台となる。

ジェーンを演じるのは、今回が初のミュージカル単独主演となる松たか子。彼女と運命の恋に落ちるロチェスターにはここ数年、大作ミュージカルでの活躍が目覚ましい橋本さとしが扮する。

 

この待望の日本初演を迎えるにあたり、6月某日、製作発表が行われた。


>>チケットの詳細・申込み

「ダンスもコーラスもない、演劇的要素の強い“ミュージカル・ドラマ”です」
(J・ケアード)

 まず、演出を手掛けるジョン・ケアードは、この作品を「いわゆる普通のミュージカルとは違う素晴らしさを持つ作品。ダンスもコーラスもないので、演劇的要素の強い“ミュージカル・ドラマ”と考えてください」と説明。さらに「人類史上で一番のラブ・ストーリーでもあります。ただ、演技ができ、歌をしっかり歌える人であると同時に、自分の心の中に強い精神力を持っている女優がいないと、この作品は成立しない。でも、たか子さんの舞台を観たとき、それらを全部兼ね備えていたので「ジェーンをやる人が見つかった!」と思いました」と語り、また「ロチェスターのキャスティングも同様に、簡単なヒーローではないので難しいのですが。今日、橋本さんは素敵なスーツとネクタイ姿ですが、これは仮の姿。本当は原作者のシャーロット・ブロンテが描いたロチェスターのようなワイルドさを持つ人なんです。もしブロンテが関西弁を知っていたら、小説も関西弁で書いてくれたんじゃないかと思うくらいですよ」と、メインキャストのふたりを大絶賛。

 凛とした佇まいがいかにもジェーンにぴったりな松は「ついに来たなという感じがします。まだ稽古もこれからという段階なので、今は少しでも多くの希望と期待を持って、稽古に臨みたいです。ジョン・ケアードさんとの初めての出会いの作品であるということや、非常に限られた登場人物のなかで物語が進んでいくユニークなミュージカルであることなど、挑戦し甲斐のある作品。9月の1カ月間を集中して、この舞台に捧げたいと思っています」と、やや緊張した面持ちで語った。

 橋本も「台本を読んだときは「うわー、こんなビターで大人っぽい、ひとすじ縄ではいかない恋愛ストーリーなんだ。こういう恋をしてみたい!」と思いました。でも松さんと一緒に、演技ではありますけどそういう世界に自分が入れるというのは、改めて役者っていい仕事やなーと思います」と笑いを誘いつつも、「最近すっかりトキメキを忘れたという中年の方、もしくはこれからいろいろな恋を経験していきたい若人たち、老若男女の方々に観ていただきたいです」と力強くコメント。

 イープラスでは、この会見の直後に松と橋本の独占取材を決行! この舞台への思いを語ってもらった。

「ラブ・ストーリーで共演できるなんて、もう、ごちそうさま!って感じです!」(橋本)

――おふたりはこれまでに『ミス・サイゴン』と『ひばり』で共演されていますが、今回は初めて恋人役での共演になりますね。 

松 この『ジェーン・エア』という、初めての挑戦要素が非常に多い舞台をやる上で、さとしさんがロチェスターであるってことは本当に心強いんですよ。歌のうまさはもちろんですけど、ハートがあること、そして何よりもジョン・ケアードさんの信頼もありますし。しかも今回は、お芝居の要素のあるミュージカルですから。いろんな課題に一緒に立ち向かっていってくださることを、すごくありがたく思っています。

橋本 僕も、めっちゃうれしいですね!(笑) あえて今、コテコテの関西弁で言うてもうたんですけど。これが本心なので。たかちゃんとは何回か一緒の舞台に立たせていただいていますが、今回は今までになかった距離感で共演できるわけですから。ラブ・ストーリーですから。もう、ごちそうさま!って感じです。世の男性諸氏、ゴメン!(笑)。

――それぞれ、ジェーン、ロチェスターという役をどう演じようと思われていますか。

橋本 台本を読んだ上での自分のイメージで、浮かんできたのはなぜか音楽教室に貼ってあったベートーベンの肖像画でした(笑)。でも偏屈な男というか、いろいろ素直に物事を表現できない理由が彼にはあると思うんですね。でもジェーンとの出会いで救いの光が見えて、そこから彼女のことをまっすぐに見るようになる。そして、聞こえることのない声を届かせるくらいの奇跡を起こすような、そんな男ですからね。アツイものは常に気持ちの中に流していたいなと思いますね。

松 私は、観た方に最初は疑問を持ってもらってもいいと思うんです。初めてジェーンを観たとき「え? こんな地味な人のことを、私たちずっと観ていくの?」って思っちゃってもいい(笑)。だけどジェーンの生き方を観ていくうち、最終的には「見届けて良かった」と納得していただけるようにしたいんです。そんなジェーンを演じるにあたっては、感情をいかに閉じ込め、抑えるかが大事なんじゃないかと。感情を爆発させるのは簡単だけど、そうではないキャラなのでそこが辛抱どころ。自分との戦いですね(笑)。

橋本 でも、ジェーンのそういうところってまるで“大和撫子”みたいやねえ。

松 あ、そうかもしれないですね。

橋本 すごく芯の強いところもあるし。きっと、日本人の女性はすごく共感できるんじゃないかな。

「J・ケアードさんは愛嬌があって、ズルイ距離感のある人だなと思うんですよ(笑)」(松)

――演出はジョン・ケアードさんです。松さんとは初顔合わせですが、橋本さんは『レ・ミゼラブル』『ベガーズ・オペラ』で演出を受けていますから、今回が三度目ですね。ジョン・ケア―ドさんの演出の魅力はどういうところに感じられていますか?

橋本 稽古場の雰囲気がとても柔らかいんですよ。あと、役者のどんな質問にもわかりやすく対応してくれて、言葉の壁を乗り越えてこっちの気持ちを理解してくれる。自分で気づかないところもふっと突っついてきたりするんですよね。

――実際にお会いした印象は、いかがでしたか?

松 いかにもイギリス人っていうか。すごくズルイ距離感があるような気がするんですよね(笑)。

橋本 ああ、それ、わかるな!

松 すごくチャーミングに、スーッてこちらの心に近づいて来られるんですよ。そこが、ズルイなーって感じ。日本語で言うと“愛敬”がある人だなと思います。ヘンな意味でなく包み込むような目線を持っている。上からじゃない、人をちゃんと見る目があるというか。

橋本 いや、よく見てるなあ!(笑) まさにそうで、稽古でもニコニコしながら試練を与えてくるわけですよ。

松 へぇ〜、そうなんだ!

橋本 リラックスムードで言われるから気づかないんだけど、あとから考えるとものすごく高度なことを要求されていたり。それで「ジョン、これは僕にとって最高の試練だよ」って言うと「何を言うんだ、ビッグチャンスじゃないか!」って。

松 うわぁ、ポジティブですね〜!(笑)

――では最後に、お客様にお誘いのメッセージをいただけますか。

松 女性はすごく感情移入しやすいストーリーだと思うんですよ。男性は男性で、ロチェスターのような気分を味わいつつ、世界に入り込んでもらいたいですしね。そうそう、さっき舞台装置のスケッチを見せていただいたんですけど、非常にユニークだったんですよ。

橋本 うん、今までに見たことない感じでね。役者が、あの装置をどう使いこなすかってところも。

松 ちょっと想像がつかないけど、すごく楽しみ。

――舞台上に客席も作るそうですね。

松 ええ、そこも楽しみなんですけどね。素材からして、見たことのない世界なんですよ。

橋本 ちょっと非現実的だけど、どのシーンにも合うようになってて、あれはすごいね。外にもなり、室内にもなり。派手に舞台転換するわけではなさそうだけど、その辺の演出の仕方も上品な感じになりそう。

松 すごく工夫があるし。そういう舞台の上に気品あふれる……。

橋本 このふたりが現れるわけで(笑)。

松 そうそう。劇場で、みなさんをお待ちしています!(笑)

>>チケットの詳細・申込み

2009-07-30 17:20
夏の暑さに浮かされて見る白昼夢のような、切なさとユーモアと懐かしさが入り交じった、あまりにも不条理で幻想的な世界。もはや小劇場ファンの間では夏の風物詩となっている、名古屋の劇団「少年王者舘」本公演の季節が、今年もやってまいりました。とはいえ昨年は『アジサイ光線』再々演が、大阪で上演されたのみだったので、物足りなく思った方もさぞ多かったことでしょう。しかしその分今年は、主宰・天野天街の3年ぶりの新作で、名古屋・京都・東京の3都市を巡演! しかも京都での本公演は、劇団創立27年目にして初めてのことだそうです。そこで天野天街に、題名通り「夢」がテーマとなるという新作の構想について、いろいろとうかがって参りました。

>>チケットの詳細・申込み

──このタイトルって、一瞬『夢十夜(ゆめじゅうや)』と読みそうになりますけど、夏目漱石の同名短編小説とは何か関係あるんですか?

  あの字面から発想はしたけど、単純に「十」が「+(プラス)」に見えたという、遊戯でしかないですね。あれに出てくる夢の話や、漱石の無意識がどうっていうことは、今やろうとしている芝居とは全く関係ない。ただ書いてるうちにネタに困ってきたら、何か引っ張ってくるかもしれないけど(笑)。

──「これを次の芝居のタイトルにしよう」と思った決め手みたいなのは、何かあったんでしょうか?

“夢+夜”って見えた瞬間に、まず「夢と夜を足すってどういうことだろう?」と。そこからいろいろこねくり回すと、何か変なモノがピョッと出てきそうだなと思ったんです。それと「夢」というのはものすごく個人的な物だけど、「夜」は完全な共有物……地球とか太陽とか月とか、すべての関係でできている物。そういう対照的な要素を、同じフィールドに持ち込んだらどうなるか? というのもありました。

──ただの言葉遊びから始まったものが、どんどん広がりを持ち始めたと。

王者舘の芝居のタイトルは、割とそんな感じで決めてますね。フッと何かの言葉が出てきた拍子に、そこからまた別のモノが浮かんできたり、何かとつながりそうだなという感触が発生すれば。たとえば『それいゆ』(98年)だと、太陽(soleil)と原爆というつながりから、話を作っていきましたし。

──その2つの言葉から連想される物事やシーンを、とにかくガンガンつなげていくって感じの作品でしたもんね。

  それで今回のタイトルの話に戻すと、これまで自分の作品の中では、なるたけ「夢」って言葉を使わないようにしていたんですよ。夢って言葉を使っちゃうのはダサイというのもあるし、あと芝居の中で「夢だ」と言い切ってしまうと、安易に流されてしまいそうだなあという恐れがあって。

──確かに王者舘の世界は全体的に夢っぽいから、「これは夢です」と言い切ってしまうと、身も蓋もなくなっちゃう気がしますね。

  うん、それで終わってしまう。『くだんの件』(95年)という作品で「夢」って言葉を執拗に使ってからは、割と「夢」が芝居中に出てくるようにはなったけど、それでも極力避けてました。なのに最初っから、タイトルに「夢」なんて付けてしまったら、自分自身がどうなっちゃうのか? という、そういう興味もありますね。

──あえて「夢」って言葉で自分を縛り付けちゃおう、と。

  実際夢というか「眠る」という人間の特質については、昔からズーッと興味を持ち続けていること。だからこの機会に、無理をして失敗することになってもいいから、一度このテーマを全面に出してやっとくべきかなとも思ったんです。

──夢や睡眠のどの辺りに、一番興味を惹かれるのでしょうか?

  詩的に言うと、眠るってことは「軽い死」だから。アタシという者の意識から一時離れて、もう一個の意識に移行してるという状態。それは軽い死であり、アタシがこの世からいなくなることの予行演習とも取れるわけ。そうやって寝ている時の意識と、覚めた時の意識がある……と、俺らは思ってるでしょ? でもよくよく考えたら、自分の中ではそれが結構揺らいでいたりすることがある。このどっちがどっちだかわかんないような状態っていうのは、すごく面白いなと思います。

──ただ「夢」というテーマは、古今東西の数多くの表現者がすでにモチーフにしてきたものですが、天野さんとしてはどういう切り口で描いていこうと思ってますか?

  夢的な状態をいろいろ組み合わせて、入れ子のように見せていこうとは思ってますが、夢や睡眠って何? ということを解明しようとは、全然考えてないんです。俺が観せたいのは「夢を見ている状態とは、一体どういう状態か?」ということ。夢を見てる時って、みんな「夢を見てる」という意識はないわけでしょ? だから目が覚めてから夢のことを語ることはできても、「今現在夢を見ているその状態」を他の人に語るということはできない。

──漱石じゃないけど「こんな夢を見た」という、過去形の語り方でしか伝えられない。

  それだけは、一番したくないこと。本当に人が知りたいと思ってるのは、すでに誰かが見た夢の話ではなく、まさに人が夢を見ているその現場のはず。つまり実際にその現場にいなければ、本当の意味で「夢を語る」ということにはならないと思うんです。なので今回は、演劇で“夢の現場”にどこまで近づけられるか? ってことがやりたい。それこそとことんまで、いろんな手法を使ってね。そもそもどうしても行き着けない所や、不可能なことにギリギリまで近づきたいというのが、俺が芝居を作る上での一番の初動なわけだから。それで、こういう夢の現場の状態を「覚(かく)」の意識において考えてしまうと、きっと気が狂ってしまうでしょう……という話がしたい。

──相当危険な世界ですね。

  ただ夢というのは極私的な題材だから、別の意味で危険というか、自己満足に陥りやすいんですよ。誰もが落ちてしまいそうな罠がいっぱい隠されていて、それをどう回避するかということに、力点がある感じがします。油断してると「あいつ“俺は落ちない”と言いながら、結局落ちやがった」ってなりかねない(笑)。

──具体的にどういう見せ方にしようとか、そういうのは考えてますか?

  最終輪郭地帯での話というか……人間が生まれる前か、生きてる状態か、死んだ後かはわからないけれど、この先にはもう“輪郭”がないという、そんな場所での話を考えてます。もはや場所かどうかもわからないけれど。それと主観と客観、つまり「夢を見る/見られる」の関係を、観客と役者の関係性に当てはめてみるとどうなるか? というのも、ちょっとだけ見せてみようかなとも思ってます。

──というと?

たとえば夢の話を芝居にした時に、夢を見る主観となる人物が、役者として舞台の上にいるっていうのは、俺はおかしいと思うわけ。夢主はそこには存在しないか、登場しても台詞とかだけで、視界に入ってくることはないはず。本当なら、Point Of View(註:映画撮影用語。『クローバーフィールド/HAKAISHA』などのように、登場人物の視線とカメラの視線を一致させたカメラワークを指す)みたいな見え方になるはずなんですよ。ただこの見せ方を演劇でやろうとすると、かなり無理がある。カメラと違って、客席は動かないから(笑)。だから全編、この見せ方で通すってことはないだろうけど。

──やれたらすごい! とは思いますけどね(笑)。

  そういう演劇の見せ方に「夢」を荷担させると、どういうモノがにじみ出てくるかという、そんな作業になるでしょうね。もともと演劇という表現自体が、観測不可能なことを観測させるような状態なわけですから。そんな背反したモノを、どうアウフヘーベンするかですよ。2つのモノを寄り添わせて、1つのモノを見せるっていう。

──その1つのモノが、どんなモノになるかという、予想とか希望みたいなものはありますか。

  俺じゃなくて誰かが言ってたんだけど、水の底にある石ってものすごくキレイに見えるけど、地上に出して乾かした途端、あんなにキレイだった物がすごく色あせて見えてしまうって。その感じは、夢と全く一緒だと思う。

──つまり水底の石のキレイさを、地上でも保てるようにというか……夢を見ている状態の楽しさや不思議さを、極力そのままの状態で舞台上に提示するのが、今回の究極の目標だということで?

  うん。その感触が、瞬間でも見えたらいいなと思います。

(取材・文:吉永美和子)

※京都公演の期間中に、天野天街のアートワークを展示する「天野天街萬華鏡展」が、大阪で開催されます。詳細は展覧会ブログにて。http://amanomangekyo.seesaa.net/


>>チケットの詳細・申込み

2009-07-21 16:31

前田美波里

このミュージカル「ステッピング・アウト」も、今年で8年目になりまして、私は今回のこのショーで最後となります。皆心を一つにして、頑張っております。

この作品の見どころは、なんと言っても、皆さんがカルチャースクールで持っている友達の悩み、辛さ、色んな問題を解決はできないけれど、皆の心が一つになった時に、そんな事背負っていても仕方がないことだ、明日に向かって立ち向かってワンステップ踏み出そうという輝きにあり―それがステッピング・アウトであり、見どころだと思います。そして、もちろん素敵なタップ・ダンスも。劇場で皆様をお待ちしておりますので、是非見にいらして下さい。


>>チケットの詳細・申込み

  榛名由梨×末次美沙緒×宮内良 (プチ座談会)

宮内:初演以来、ずっとジェフリー役をやっております宮内良です。

末次:黒一点!

宮内:ステキな熟女の皆さんに囲まれながら、一方痩せる思いでタップに汗を流しております。

そして、今回始めて参加して下さいました、元劇団四季の末次さんです。

末次:ヴェラ役をしております末次美沙緒です。もう楽しくて楽しくて、毎日を新鮮な気持ちで迎えています。

この作品は、劇団を辞めて初めての公演なので、まさしく“ステッピング・アウト”なんですよ。

宮内:そして、やっと戻ってきてくれたオスカル様!榛名由梨さんです。

榛名:5年ぶりに戻ってまいりました榛名由梨です。フレイザーさんという役で、お客様にはピアノを弾いている背中姿をよくお見せしていました。メイヴィスの母親代わりのような役で、久しぶりに皆さんと息を合わせて演じています。

この作品は、もう本当に大人のミュージカルで、しかも観ていて元気の出る舞台です。

末次:私たちもやっていて元気が出ます。

榛名:皆さんが元気なので、そのパワーに負けないように、しっかりピアノを弾いています。

宮内:末次さんは、タップは今回が初めてなんですよね。

末次:そうなんです!大変なんですが、でもスゴク楽しくて…!はまっています。

宮内:そして、最後は皆さん、ハイレグのダルマ姿で!

末次:どうぞお楽しみに。

宮内:とにかく元気の出るミュージカルです。是非観にいらして下さい。

末次:お待ちしています!


>>チケットの詳細・申込み

2009-07-10 13:29


嵐の二宮和也の4年ぶりとなる主演舞台『見知らぬ乗客』の製作発表会見が、6月11日に都内で行われた。

本作品は心理サスペンスの名手、パトリシア・ハイスミスの小説を原作とし、海外ではアルフレッド・ヒッチコックによる映画や舞台、ラジオドラマも製作された作品。舞台作品としては日本初演となる。

演出は、ニューヨーク・ロンドンをはじめ世界の演劇シーンで活躍し、日本でも『蜘蛛女のキス』『トイヤー』などを手懸ける、ロバート・アラン・アッカーマン。

[あらすじ]資産家の息子チャールズ・ブルーノ(二宮和也)は、自分を束縛する父親に異常な憎しみを抱きながら、若く美しい母親エルシー(秋吉久美子)と恋人のように親しく過ごしている。若き建築家ガイ・ヘインズ(内田滋)は、浮気性の妻との離婚のため、故郷に帰る途中の列車の中でブルーノと出会う。ガイの妻が離婚に応じようとしないという話を聞いたブルーノは「自分の父を殺してくれたら、妻を殺してやろう」、と“交換殺人”の計画をガイに持ちかける。ガイはその提案を断るが、ブルーノは計画を実行に移してしまう…。
>>チケットの詳細・申込み

“ガイ”に焦点を当てた映画版とは異なり、今回は“ブルーノ”に焦点を当てての舞台化となる。作品にちなんで列車の客車内をモチーフとした会見会場には、二宮和也、秋吉久美子、内田滋、そしてロバート・アラン・アッカーマンが登壇した。

二宮演じるブルーノは、殺人者であり、狂気を秘めた役どころ。「怒ったり泣いたり、素直な感情表現ではなく、“普通”にしていることで、読み取れない感情の“怖さ”を表現したい」と意気込みを語った。自身の中の狂気については、「あるのかなぁ…」と考え込みながらも「ゲームだとかトランプマジックだとか好きなことを見つけたときの集中の仕方は、人と違うのかもしれない」と役との共通点をのぞかせていた。

ブルーノの母親エルシー役は、秋吉久美子。「エルシーは、息子に愛情を注ぎながらも、その息子と甘美な関係も持っているとても矛盾した女性。そして女性らしい魅力的な面と嫌な面とを併せ持っている役なので、女優としてはとても演じて楽しい役だと思います。私は実は“オヤジっぽい性格”なので重なる所は少ないかもしれないですが、お酒が飲めない方が酔っ払いの演技が上手なように、第三者から見て“魔性だな”と思う面を体現できれば」と語ると、横で二宮が「(秋吉さんは)魔性ですよね!」と大きくうなずく場面も。

二宮と秋吉は映画『青の炎』以来、奇しくも“殺人者”と“母親”として2度目の親子役となる。「殺し方が巧くなった」と秋吉から褒め言葉(?)が飛び出し、場内に笑いが起こる場面もあり、すでに“仲の良い親子”としてのコミュニケーションは順調なようだ。

そんな二人について、ガイ役・内田滋からは「仲良くていいなー」と羨ましがりながらも、「ガイは(ブルーノに翻弄されて)3人の中で一番観客に近い目線の役なので、ひとつひとつ誠実に取り組んでいきたい。二宮くんとはふたりだけの場面も多いので……仲良くしてね!」との要望も。それに対して二宮は「滋さんとは表裏一体でなければいけない。逸れていながらもその逸れ具合を合わせて一体感を出していけたら。…好きですよ!」と返し、内田からも「僕も好きです!」と相性の良さも見せていた。

個性的な3人の役者をまとめる演出のアッカーマンは、「どの作品を演出する時も、その作品やキャラクターの“真実”を引き出すことを心がけています。ここにいる3人はその私の考えと同じ方向を向いて取り組んでくれているので安心できる。日本の役者は、あまり自分の意見を言わない印象を持っていたが、この3人は自分の意見や提案を言ってくれるので、これから仕事していくのをとても楽しみにしています」「ブルーノは狂気を秘めた青年だが、一方で明るく、フレンドリーでとてもチャーミングな青年。そういった面は二宮さんと重なるので、ブルーノの“狂気ではない部分”を引き出していけたら」と、カンパニーでひとつの作品を創り上げることを楽しみにしている様子で語った。

役者陣からは「普段から、少し話をしてから稽古に入り、演出家と役者の上下関係を取り除いてくれるとてもいい現場だと思います」(二宮)、「役者へヒントを投げて、役柄や状況を役者自らが納得できるようになるまで待っていてくれる、強い、広い、深い演出法」(秋吉)、「役者が不安のない状態でステージに立てるよう仕向けてくれる」(内田)とアッカーマンならではの演出法について語り、こちらもカンパニーとして演出家に対する信頼をうかがわせていた。

記者から「“アメリカ人演出家とのコミュニケーション法”として、アッカーマンさんと二宮さんでハグをして見せてください」とのリクエストに、演出家と座長がにこやかにハグをする一幕もあり、サスペンス・交換殺人という作品イメージとは対照的に、会場には終始和やかな空気が流れていた。

これまで、蜷川幸雄や倉本聰、クリント・イーストウッドと名だたる巨匠とのキャリアを持ち、先日も第46回ギャラクシー賞個人賞受賞、とさらに演技の評価が高まる二宮和也。ロバート・アラン・アッカーマンとのタッグで、「サスペンスの古典」と言われる名作にまた新たな魅力を加えてくれるに違いない。

公演は2009年7月18日(土)〜8月11日(火)、東京グローブ座にて。
チケットは、6月21日(日)10:00より一般発売開始

>>チケットの詳細・申込み

2009-06-17 00:00
高木珠里。劇団宝船の看板女優として、繊細さと大胆さ、そして、キュートさとエキセントリックさを持ち合わせた、その稀有なる演技力によって、私たち観客を釘付けにしてきた、まさに<日本小劇場界の至宝>。そんな彼女が原宿のリトルモア地下で、ひとり芝居に挑む。題して『一人オリンピック〜千の仮面をもつ女』 。脚本・演出を担当するのが、福原充則とブルースカイという、今をときめく二人の演劇クリエイター。福原は「ピチチ5」「マンションマンション」「ニッポンの河川」など次々に主宰する傍ら、最近では宮崎あおい主演舞台の脚本・演出で注目を集めた、いま話題の異才。一方、ブルースカイは、「劇団猫ニャー」「演劇弁当猫ニャー」を通じて、日本のナンセンス・コメディ演劇の歴史を塗り替えた天才。劇団解散後も舞台や放送の世界で旺盛に活動を続け、いまなおリスペクターを増やしている。そんな最強の布陣でおこなわれる高木珠里ひとり芝居を、イープラスは心底から猛プッシュします! そこで、高木さん・福原さん・ブルースカイさんに話を伺ってまいりました。

>>チケットの詳細・申込み

  この人の書く台詞は、わたしが言わないとダメだ!

――今回の、高木珠里ひとり芝居『一人オリンピック〜千の仮面をもつ女』を企画されたのは高木珠里さんご自身なんですよね。

高木珠里(以下、高木):そうです。ひとり芝居は以前からやりたいと思ってて、ずっとタイミングを探っていました。福原充則さんとブルースカイさんに出会って、このお二人とならやれると…、背中を押された感じです。

――ひとり芝居は今回が初めてなんですね。

高木:はい。でも、子供の頃から、学校の休み時間や放課後などに「高木珠里のコーナー」というのを披露してました。空いてる教室で。

ブルースカイ(以下、ブルー):コントをやってた?

高木:物真似とか。ツタンカーメン王とか樋口一葉とか。授業で習ったことをすぐにやってみせてたんです。

――今回、脚本・演出を担当されるお二人(福原充則さん、ブルースカイさん)との出会いについて、少し詳しく教えていただけますか。

高木:まず福原さんですが、彼の主宰するマンションマンションという劇団の第一回公演を私が見に行ったのが最初で、その時、なんて美しいんだろうって思いました。あ、いや、福原さんが、じゃなくて(笑)、作品がですよ。作品がなんて美しいんだって。それですぐに「出たい」というようなことを彼に言ったんですよね。

福原充則(以下、福原):言いました。

高木:私は普段、自分からそういうことを働きかけるようなタイプじゃないんですけど…。

福原:その時ぼくが、マンションマンションじゃなくてピチチ(福原の主宰する別の劇団)のほうに出てくださいって言ったら、「え? ピチチですか…?」って、ちょっと納得いかないようだったのを憶えてます(笑)。

高木:そんなこと言ってないよぉ。

福原:いや、言いました。

高木:あれ? 言ってないよぉ…。

福原:「ピチチもいいですけど、マンションマンションに出たいです」って珠里さんが言うから、その時に二本、立て続けに出演することが決まったんですよ。

――ピチチとマンションマンションには、どのような違いがあったんですか?

福原:いや、最初は特に違いはなかったんですが…(笑)。ただ、しょうがないので、ピチチはオムニバスで男メインの芝居。マンションマンションは一本の芝居で、しかも女の人が主役をとるっていうルールを後で決めました。もっとも観るほうは、完全にゴッチャになっていたと思います(笑)。

高木:とにかく、その時は、「この人の書く台詞は、わたしが言わないとダメだ」という思いがあって…。

ブルー:ぼくも、福原さんの芝居を初めて観た時、実に面白いと思って、「ぼくはこの人の書く台詞を喋らなくてはいけない、どうしても演じなければいけない」って…。

高木:ちょっと待ってよ。そういう話しじゃないでしょ。(一同笑い)

ブルー:いや、本当に。彼の芝居に出たいって思ったんです。

高木:出たいの?! そうやって、すぐ自分のほうに持って行こうとするんだから。

ブルー:いや、だから珠里さんの気持ちはわかるってことを言いたいわけで。

高木:わかるんだ? 同じ役者として。ああ、そういうことね。(一同爆笑)

ブルー:喋りたくなる台詞を書くんですよ、福原さんは。

高木:そうですね。台詞がウソ臭くないんです。ウソなんだけど、どう考えても出鱈目なんだけど、だけどウソ臭くないんです。ちょっと矛盾したような言い方ですけど。だから、役者さんによっては、やりにくいという人がいるかもしれないけれど、私にはすごく合っている気がするんです。

――もう一方の、ブルースカイさんとの出会いは?

高木:猫ニャーを初めて観た時に、私、すごい号泣しちゃって。

ブルー:劇団猫ニャーの解散公演の時?

高木:いや、弁当になった時(劇団猫ニャーは解散後ほどなくして、演劇弁当猫ニャーという弁当屋名義で演劇活動が再開された)。猫ニャーをちゃんと生で観たのは、その時が初めてだったんですよ。感動して泣いちゃって…。自分でもどうしてかわからないんだけど、ブルースカイさんのお芝居観ると毎回泣いちゃうんですよ。うるるるるっって体を震わせて。

――あの深遠な馬鹿馬鹿しさが高木さんの琴線に触れたんでしょうか。

ブルースカイ:(神妙な表情)

高木:なに、そんな顔してるの?

ブルースカイ:いや、その頃のことを思い出して…。

高木:それで猫ニャーが団員募集をしていたから、入りたいって思ったんです。で、ちょうどその頃、KERA・MAPで小村裕次郎さん(元・劇団猫ニャー代表)と一緒だったから、「私、入りたい。オーディションを受けたい」って言ったら、彼が…「入らなくていいよ」って。(一同笑い) 「でも私、ああいうのやりたいんだよ」「いや、入らなくていいと思う。だって、あそこは弁当だって作れないじゃないか」って(笑)。それで「あぁ、そっかぁ」って。

――その時、オーディション受けてたら、団員になってたかもしれませんね。

ブルー:でも、「こんな劇団でいいんですか」って言ってたかもしれません(笑)。

高木:その後、ブルーさんとは同じ事務所になって。忘年会の席でちょっと喋るようになった…って言うか、ブルーさんはあまり喋らないんです。こっちから「あれは面白かったです」と話しかけても、「あぁ、あぁ」って答えるだけで話しが一向に拡がらない。それで一年以上進展なし、1ミリも動かないっていう状況だったんですけど、『レミゼラブ・ル』(作・演出:ブルースカイ)という舞台に出演させていただいて。それがきっかけで、一緒にカラオケ行ったり、セクハラ受けたりして(笑)、ようやくちょっとは心を開いてくれたのかなという…そういう流れでしたね。

ブルー:随分前から事務所は一緒だったんですけど。ぼくは、珠里さんの出演する芝居を観る機会がなかなかなかったんです…。

高木:劇団宝船の第三回公演の時、初めて観に来てくれたんです。

ブルー:宝船…? マンションマンションだったと思うけど。

高木:え? 三鷹に来て、「あ、どうも」って挨拶したじゃない。一緒に来ていた池谷のぶえさんに「面白かったでしょ」ってうながされてたじゃない。

ブルー:うーん…。珠里さんを最初に見て、これは凄い人だなって思ったのは、芝居じゃなくて…。

高木:え、なに? こわい。

ブルー:KERAさんのワークショップを事務所がやったことがあって、そこにぼくも呼ばれて行ったんです。その時、珠里さんが短いネタをやってて、「凄いな、この人は」って思いました。それから珠里さんの出る芝居をチェックするようになりました。

  自分が何をやりたいか、というよりも、人が自分を使って何をやらせたいか。

――今回ひとり芝居をおこなうにあたって、福原充則さん、ブルースカイさんという二人の鬼才に対して、高木珠里さんからの要望事項は何ですか?

高木:お二人がやりたいようにやってくれればいいなって思います。私は歌を歌いたいくらいで、他には、特に自分の何かを見せたいっていうのは、ないんです。自分が何をやりたいか、というよりも、人が自分を使って何をやらせたいと思うかっていうほうに興味があります。

――ならば福原さんのほうは高木さんをどうしたいと思ってますか。

福原:そうですねぇ。でも、どうしたいかというより…。いままで珠里さんとは何度かやってきましたけど、自分が書いて持っていった脚本の字面が、彼女を通して立ち上がる瞬間。これがとても楽しいんですよ。ぼくの場合、書いてる段階では“これはこの方向で”みたいな作為的なものはないんです。ただ、そうやって好き勝手に自由に書いちゃうと成立しない役者さんも結構多いんですが、珠里さんは作家の気持ちを汲んだうえで足し算して返してくれる。だから彼女となら、久しぶりに何の制約もなく自分のことばかり考えて自由にやれるなぁ、と。

――相互に信頼しあってる感じがいいですね。ところで演出家のタイプとしては、福原さんは役者にまかせるタイプなんですか?

福原:わりと好きにやってもらうタイプですね。でも、馬鹿だと思われない程度に最低限の指示はしますけど。

高木:まあ、福原さんはそう言ってますけど、意外と妥協のない気がします。結構きびしいところがある。でもそこが私は好きです。やりたいことをしっかり持っている人なので、言われたとおりにやればいいのかなぁって、私は思っています。

――ブルースカイさんは高木さんをどうしたいですか?

ブルー:珠里さんの面白さの表面的な一部分なのかもしれませんが、彼女の瞬間的な変わり目、これが気持ちよくて。大泣きしたその一秒後には大笑いできるとか、なんか、そういうのはぜひやってもらいたいです。あと、『レミゼラブ・ル』というミュージカルに出てもらった時に歌がすごく良かったんで、今度も歌ってもらいたいと思ってます。

  二人とも「オレがオレが」っていうタイプではないからこそ…。

――